説明

接続構造体の製造方法

【課題】電気素子を配線基板にハンダ粒子を利用して異方性導電接続する際、熱硬化性接着剤の本加熱温度を低下させ、良好な接続信頼性を実現する。
【解決手段】配線基板と電気素子とを異方性導電接続により接続構造体の製造する際に、異方性導電接着剤として、溶融温度Tsのハンダ粒子が最低溶融粘度温度Tvの絶縁性のアクリル系熱硬化性樹脂中に分散したものを使用する。第1加熱加圧工程では、異方性導電接着剤を溶融流動させて配線基板と電気素子との間隙からプレスアウトさせ、予備硬化させる。第2加熱加圧工程では、ハンダ粒子を溶融させて配線基板の電極と電気素子の電極との間に金属結合を形成させ、異方性導電接着剤を本硬化させる。第1加熱加圧工程の加熱温度をT1、加圧圧力をP1、第2加熱加圧工程の加熱温度をT2、加圧圧力をP2としたときに、Tv<T1<Ts<T2、P1>P2を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の電極と電気素子の電極とが異方性導電接続されてなる接続構造体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気素子、例えば半導体チップのバンプを配線基板の電極に異方性導電接続する場合、半導体バンプと配線基板の電極との間に、溶融温度180〜185℃のハンダ粒子を硬化温度195〜200℃のエポキシ系熱硬化性接着剤に分散させた異方性導電フィルムを配置し、加熱加圧することにより、ハンダ粒子を溶融させることにより半導体チップのバンプと配線基板の電極とを金属結合することが提案されている(特許文献1)。この場合、120〜130℃で予備加熱し、ハンダが溶融した場合にその流動範囲を規制できるようにエポキシ系熱硬化性接着剤をある程度硬化させ、更に200〜210℃で本加熱してハンダ粒子を溶融させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−186156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、本加熱温度が200〜210℃と高いため、半導体チップがダメージを受けかねないという問題があった。このため、より低い温度で本加熱できるようにすることが求められている。また、その場合にも、隣接端子間でのショートの発生を防止すると共に、ヒートショックサイクルテストや耐高温高湿テストにおいて接続信頼性が低下しないようにすることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、電気素子を配線基板にハンダ粒子を利用して金属結合により異方性導電接続する際に、ハンダ粒子の分散媒となる絶縁性の熱硬化性接着剤の本加熱温度を比較的低温に設定することができ、隣接端子間のショートの発生を防止すると共に、良好な接続信頼性を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意研究した結果、ハンダ粒子として、例えば、Sn−Bi系ハンダ粒子のような低温溶融ハンダ粒子を採用し、更に、比較的低温での硬化が可能なアクリル系異方性導電接着剤を使用し、しかも、ハンダ粒子の溶融温度と、アクリル系異方性導電接着剤が最低溶融粘度を示す温度と、予備加熱温度と、本加熱温度との間、更に、予備加熱時圧力と本加熱時圧力との間に、一定の大小関係があることを見出し、その知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、配線基板の電極と電気素子の電極とが異方性導電接続されてなる接続構造体を製造する方法であって、配線基板に異方性導電接着剤を介して電気素子を載置し、その電気素子を加熱加圧することにより、配線基板の電極と電気素子の電極とを接続する加熱加圧工程を有する製造方法において、
異方性導電接着剤として、溶融温度Tsのハンダ粒子が、絶縁性のアクリル系熱硬化性樹脂中に分散してなるものを使用し、異方性導電接着剤の最低溶融粘度を示す温度がTvであり、
加熱加圧工程が、第1加熱加圧工程とそれに続く第2加熱加圧工程を有し、
第1加熱加圧工程の加熱温度をT1とし、加圧圧力をP1とし、
第2加熱加圧工程の加熱温度をT2とし、加圧圧力をP2としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足しており、
第1加熱加圧工程において、異方性導電接着剤を溶融流動させて配線基板と電気素子との間隙からプレスアウトさせ、更に予備硬化させ
第2加熱加圧工程において、ハンダ粒子を溶融させて配線基板の電極と電気素子の電極との間に金属結合を形成させると共に異方性導電接着剤を本硬化させることを特徴とする製造方法、並びにこの製造方法により製造された接続構造体を提供する。
【0008】
【数1】

【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法においては、異方性導電接着剤を構成する導電粒子として低温溶融ハンダ粒子を採用し、異方性導電接着剤を絶縁性熱硬化性接着剤としてエポキシ系熱硬化性接着剤に代えて低温硬化可能なアクリル系熱硬化性樹脂を使用し、しかも、ハンダ粒子の溶融温度と、異方性導電接着剤の最低溶融粘度を示す温度と、予備加熱温度と、本加熱温度との間、更に、予備加熱時圧力と本加熱時圧力との間に、特定の大小関係を設定しているので、電気素子を配線基板にハンダ粒子を利用して金属結合により異方性導電接続する際に、ハンダ粒子の分散媒となる絶縁性の熱硬化性接着剤の本加熱温度を比較的低温(例えば、150〜170℃)とすることができ、しかも隣接端子間ショートを防止でき、良好な接続信頼性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の加熱加圧工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、配線基板の電極と電気素子の電極とが異方性導電接続されてなる接続構造体を製造する方法であって、配線基板に異方性導電接着剤を介して電気素子を載置し、その電気素子を加熱加圧することにより、配線基板の電極と電気素子の電極とを接続する加熱加圧工程を有する製造方法である。
<加熱加圧工程>
【0012】
本発明においては、加熱加圧工程が、第1加熱加圧工程とそれに続く第2加熱加圧工程を有する。図1に時間に対する温度T(一点鎖線)及び圧力P(実線)、並びに異方性導電接着剤の溶融粘度η(点線)の変化を示すグラフを示す。
【0013】
第1加熱加圧工程では、配線基板と電気素子との間に存在する異方性導電接着剤をその最低溶融粘度η0を示す温度(即ち、最低溶融粘度温度Tv)以上に加熱して流動させ、それらの間から過剰の異方性導電接着剤をプレスアウトして排除するための工程である。従って、この工程ではハンダ粒子を溶融させない。また、異方性導電接着剤を溶融して流動させ、異方性導電接着剤の一部を硬化させる。この場合、第1加熱加圧工程において、異方性導電接着剤の硬化率が8〜80%、より好ましくは10〜60%となるようにする。この結果、図1に示すように、異方性導電接着剤は最低溶融粘度を示した後、徐々に粘度が上昇する。ここで、硬化率は、赤外分光測定によりアクリル系化合物のオレフィンに起因する特性吸収の減少により定義される数値である。
【0014】
また、第2加熱加圧工程では、第1加熱加圧工程に引き続いて加熱温度をT1から上昇させて加熱温度T2まで上昇させる。これによりハンダ粒子をその溶融温度Ts以上に加熱して溶融させて配線基板の電極と電気素子の電極とを金属結合させると同時に、異方性導電接着剤を本硬化させ、異方性導電接着剤の硬化率を好ましくは少なくとも80%以上、理想的には100%とする。
【0015】
また、発明においては、第1加熱加圧工程の圧力P1よりも第2加熱加圧工程の圧力P2を低圧に設定する。これは、異方性導電接着剤により接続された配線基板の微細な配線パターン間からボイドを効率的に除去するためである。即ち、配線基板の微細な配線パターン間に残ったボイドを、配線基板と電気素子との間の異方性導電接着剤から外部に押し出すためには、接着剤の溶融粘度が低すぎるとボイドを押し出しにくくなるので、接着剤の溶融粘度が比較的高い間にボイドを押し出す必要がある。従って第1加熱加圧工程の圧力を高く設定することが必要となる。一方、ボイドを押し出した後に接着剤中の熱硬化樹脂を本硬化させる際には、圧力が高すぎると樹脂の硬化による収縮と電気素子(例えば、半導体チップ)の電極(例えば、金メッキバンプ)に集中する加圧力により、配線基板の微細な配線パターンに変形が生じる。よって、第2加熱加圧工程の圧力P2を第1加熱加圧工程の圧力P1よりも低圧に設定する。
【0016】
従って、本発明では、加熱加圧工程における温度と圧力に関し、以下の式(1)及び(2)の関係が満たされる必要がある。
【0017】
【数2】

【0018】
本発明において、異方性導電接着剤の具体的な最低溶融粘度温度Tvは、低過ぎると膜(フィルム)形成が困難となり、高すぎるとハンダが溶融してしまうことが懸念されるので、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。
【0019】
第1加熱加圧工程の具体的な加熱温度T1は、低過ぎると異方性導電接着剤の流動性が低下し、高すぎるとハンダが溶融してしまうことが懸念されるので、好ましくは80〜160℃、より好ましくは、90〜130℃である。
【0020】
ハンダ粒子の溶融温度Tsは、低過ぎると接続信頼性が低下し、高すぎると熱圧着時に金属結合が形成されないことが懸念されるので、好ましくは100〜210℃、より好ましくは130〜170℃である。
【0021】
第2加熱加圧工程の加熱温度T2は、低過ぎるとハンダが溶融せず、高すぎると異方性導電接着剤がスプリングバック(剥離)することが懸念されるので、好ましくは130〜220℃、より好ましくは130〜190℃である。
【0022】
T1とTvとの差は、小さすぎると熱圧着時の押し込み不足が生ずる傾向があり、大きすぎると異方性導電接着剤の硬化が進み過ぎ、熱圧着時に押し込み不足が生ずる傾向があるので、好ましくは10〜40℃、より好ましくは10〜30℃である。
【0023】
TsとT1との差は、小さすぎるとハンダの溶融が第1加熱加圧工程において生じてしまい、ショートの原因となり、大きすぎると圧着工程自体のタクトタイムが長くなり、生産効率が低下するので、好ましくは2〜110℃、より好ましくは10〜30℃である。
【0024】
T2とTsとの差は、小さすぎるとハンダが十分に溶融せず、大きすぎると昇温に時間を要し、圧着工程自体のタクトタイムが長くなり、生産効率が低下するので、好ましくは2〜100℃、より好ましくは10〜50℃である。
【0025】
本発明の製造方法において、圧力のP1からP2への切り替えのタイミングに関し、異方性導電接着剤の最低溶融粘度温度Tvの−10℃から+10℃の温度範囲内でその切り替えを開始させることが、ボイドレスの接続構造体を実現できる点で好ましい。また、最低溶融粘度温度Tv+40℃の温度に達するまでの間(即ち、図1のTm1の時点)に圧力P1が圧力P2に達することが、低圧接続を可能にする点から好ましい。なお、図1のTm2の時点で第2加熱加圧工程が終了する。
【0026】
<異方性導電接着剤>
本発明の製造方法において、異方性導電接続に使用する異方性導電接着剤としては、溶融温度Tsのハンダ粒子が最低溶融粘度温度Tvの絶縁性のアクリル系熱硬化性樹脂中に分散してペースト状あるいはフィルム状に成形されたものを使用する。
【0027】
ハンダ粒子は、異方性導電接続用の導電粒子として機能しており、その溶融温度Tsが比較的低温、好ましくは130〜210℃、より好ましくは130〜170℃のものである。成分的には、鉛フリーのものを使用することが好ましい。具体的には、Sn−Cd系ハンダ、例えばSn(67%)−Cd(33%)共晶ハンダ(Ts=176℃)、Sn(60%)−Cd(40%)共晶ハンダ(Ts=144℃); Sn−Bi系ハンダ、例えばSn(42%)−Bi(58%)共晶ハンダ(Ts=138℃)、Sn(40%)−Bi(56%)−Zn(4%)共晶ハンダ(Ts=130℃)、Sn(25.9%)−Bi(53.9%)−Cd(20.2%)共晶ハンダ(Ts=103℃); Sn−In系ハンダ、例えば、Sn(48%)−In(52%)共晶ハンダ(Ts=117℃)、Sn(17.3%)−Bi(57.5%)−In(25.2%)共晶ハンダ(Ts=78.8℃)等が挙げられる。
【0028】
ハンダ粒子の平均粒径は、小さすぎると接続に寄与しなくなり、大きすぎると接続端子間でショートを発生させる傾向があるので、好ましくは1〜70μm、より好ましくは2〜40μmである。
【0029】
ハンダ粒子の異方性導電接着剤中の含有量は、少なすぎると接続不良を招き、多すぎると隣接端子間でショートを発生させる傾向があるので、樹脂固形分(即ち、硬化性アクリル系化合物と成膜用樹脂との合計)100質量部に対し、好ましくは、1〜50質量部、より好ましく2〜30質量部である。
【0030】
異方性導電接着剤を構成する絶縁性のアクリル系熱硬化性樹脂は、少なくとも硬化性アクリル系化合物、熱硬化開始剤、成膜用樹脂を含有する。ここで、硬化性アクリル系化合物としては、アクロイル基またはメタクロイル基(以下(メタ)アクロイル基と称する)を1以上、好ましくは2つ有する化合物である。ここで、硬化性アクリル系化合物の一分子中の(メタ)アクロイル基の数は、導通信頼性向上のために2以上、好ましくは2つである。
【0031】
硬化性アクリル系化合物の具体的な例としては、ポリエチレングリコールジアクリル、リン酸エステル型アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、o−フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、及びこれらに相当する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0032】
なお、硬化性アクリル系化合物として、高い接着強度と導通信頼性とを得る点から、2官能アクリレート5〜40質量部と、ウレタンアクリレート10〜40質量部と、リン酸エステル型アクリレート0.5〜5質量部とをこれらの割合で併用することが好ましい。ここで、2官能アクリレートは硬化物の凝集力を向上させ、導通信頼性を向上させるために配合され、ウレタンアクリレートはポリイミドに対する接着性向上のために配合され、そしてリン酸エステル型アクリレートは金属に対する接着性向上のために配合される。
【0033】
硬化性アクリル系化合物のアクリル系熱硬化性樹脂中の配合量は、少なすぎると導通信頼性が低くなり、多すぎると接着強度が低くなる傾向があるので、好ましくは樹脂固形分(硬化性アクリル系化合物とフィルム形成樹脂との合計)の20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0034】
成膜用樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、EVA等の熱可塑性エラストマー等を使用することができる。中でも、耐熱性、接着性のために、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、特にフェノキシ樹脂、例えばビスA型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0035】
熱硬化開始剤としては、熱分解によりラジカルを発生する有機過酸化物やアゾ化合物を使用することができ、例えば、有機過酸化物を換算かジイソブチリル パーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジラウロイル パーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサイノイル)パーオキサイド、t−ブチル パーオキシピバレート、t−ヘキシル パーオキシピバレート、t−ブチル パーオキシネオヘプタノエート、t−ブチル パーオキシネオデカノエート、t−ヘキシル パーオキシネオデカノエート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシネオデカノエート、ジ−sec−ブチル パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル パーオキシジカーボネート、クミル パーオキシネオデカノエート等を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。また、アゾ化合物としては、アゾビスブチロニトリル等を挙げることができる。
【0036】
異方性導電接着剤における、熱硬化開始剤の使用量は、少なすぎると反応性が無くなり、多すぎると異方性導電フィルムの凝集力が低下する傾向があるので、硬化性アクリル系化合物100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。
【0037】
本発明で使用する異方性導電接着剤は、以上のハンダ粒子を、絶縁性のアクリル系熱硬化性接着剤に、必要に応じてトルエン等の溶媒と共に均一に混合分散させ、ペーストとしてあるいは常法に従ってフィルムに成形することにより作成することができる。更に異方性導電接着剤には、シランカップリング剤、ゴム成分、無機フィラーなどのフィラー類、各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
<配線基板、電気素子等>
本発明の製造方法が適用できる配線基板、電気素子、電極としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、配線基板としては、ガラス基板、セラミックス基板、ポリイミドフレキシブル基板、シリコン基板などを挙げることができる。電極としても、銅、アルミに無、銀、金等の金属電極、ITO等の金属複合酸化物電極などが挙げられる。この場合の電極形状は、特に制限はなく、パッド状でもバンプ状でもよい。また、電気素子としては、ベアチップ、チップサイズパッケージ、ICモジュール等の半導体素子、LED等の光学素子等、フレキシブル配線板等の種々の電気素子を使用することができ、その電極もパッド状でもバンプ状でもよい。
【0039】
なお、本発明の製造方法により製造された接続構造体は、低温溶融ハンダ粒子が低温硬化性のアクリル系熱硬化性樹脂に分散した異方性導電接着剤を介して、配線基板の電極と電気素子の電極との間を、所定の加熱加圧工程による異方性導電接続されている。このため、良好な接続信頼性を実現できる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0041】
実施例1〜3、比較例1〜5
まず、異方性導電接着接着剤A及びBを以下に説明するように作成した。
【0042】
(異方性導電フィルムA)
ビスA型フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学社)30質量部、液状アクリル化合物(EB3701、ダイセルサイテック社)30質量部、有機過酸化物硬化剤(パーオクタ0、日本油脂社)、アクリル系シランカップリング剤(A−172、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)1質量部を混合し、更に平均粒子径10μmの溶融温度138℃の共晶SnBiハンダを樹脂固形分中に20質量%となるように添加し、更にトルエンを加え、固形物50wt%の異方性導電組成物を作成し、剥離処理されたPETにバーコーターを用いて塗布し、70℃のオーブンで5分乾燥させ、35μm厚の異方性導電フィルムを作製した。
【0043】
(異方性導電フィルムB)
異方性導電フィルムAの共晶SnBiハンダを共晶SnInハンダに変えた以外は、異方性導電フィルムBと同様に作製した。
【0044】
(接続構造体の製造)
40℃に設定された平盤上に配線板(端子導体パターン幅50μm、パターンピッチ100μm)、異方性導電フィルムA又はB、更にフレキシブル配線板(端子導体パターン幅50μm、パターンピッチ100μm)を重ね、表1の条件で加熱加圧し、接続構造体を作成した。
【0045】
(評価)
得られた接続構造体について、隣接間ショートの発生の有無(30V、1分間チャージ)、Jedecのレベル3相当の耐湿性(30℃、70%RH、168時間)を確保できるプレッシャークッカー(PCT(60℃、95%RH))処理時間並びに熱衝撃処理(H/S(−55℃(15分)←→125℃(15分)))サイクル数を調べた。得られた結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1からわかるように、式(1)及び(2)を満足している実施例1及び2の場合、150℃又は170℃という比較的低い温度(第2加圧加熱工程)で本圧着が可能であり、得られた接続構造体は隣接端子間ショートが観察されず、また、金属結合が形成された結果、良好な信頼性を示した。
【0048】
一方、比較例1の場合、加熱加圧工程が2段階となっておらず、加熱温度が190℃であり、しかも圧力が低いレベル(0.5MPa)で一定であったので、押し込み不足となり、隣接端子間のショートは生じなかったものの、信頼性試験の結果に問題があった。比較例2の場合、加熱加圧工程が2段階となっておらず、しかも圧力が高いレベル(3.0MPa)で一定であり、更に加熱温度が190℃であったため、ハンダ粒子の溶融結合によるショートが隣接端子間で生じた。比較例3は、異方性導電フィルムBを使用し、加熱温度がハンダ粒子の溶融温度よりも低温であったため、ハンダ粒子による金属結合の形成が認められなかった。比較例4の場合、異方性導電フィルムBを使用する以外、比較例1を繰り返した例であるが、比較例1と同様に好ましくない結果であった。比較例5は、2段階加熱を行った例であるが、圧力が一定であり、しかも第2加熱加圧工程の加熱温度が180℃であったので、ハンダ粒子の溶融結合によるショートが隣接端子間で生じた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の製造方法においては、異方性導電接着剤を構成する導電粒子として低温溶融ハンダ粒子を採用し、異方性導電接着剤を絶縁性熱硬化性接着剤として低温硬化可能なアクリル系熱硬化性樹脂を使用し、しかも、ハンダ粒子の溶融温度と、異方性導電接着剤の最低溶融粘度温度と、予備加熱温度と、本加熱温度との間、更に、予備加熱時圧力と本加熱時圧力との間に、一定の大小関係を設定しているので、電気素子を配線基板にハンダ粒子を利用して金属結合により異方性導電接続する際に、ハンダ粒子の分散媒となる絶縁性の熱硬化性接着剤の本加熱温度を比較的低温(例えば、150〜170℃)とすることができ、隣接端子間ショートを防止でき、しかも良好な接続信頼性を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の電極と電気素子の電極とが異方性導電接続されてなる接続構造体を製造する方法であって、配線基板に異方性導電接着剤を介して電気素子を載置し、その電気素子を加熱加圧することにより、配線基板の電極と電気素子の電極とを接続する加熱加圧工程を有する製造方法において、
異方性導電接着剤として、溶融温度Tsのハンダ粒子が最低溶融粘度温度Tvの絶縁性のアクリル系熱硬化性樹脂中に分散してなるものを使用し、
加熱加圧工程が、第1加熱加圧工程とそれに続く第2加熱加圧工程を有し、
第1加熱加圧工程の加熱温度をT1とし、加圧圧力をP1とし、
第2加熱加圧工程の加熱温度をT2とし、加圧圧力をP2としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足しており、
【数1】

第1加熱加圧工程において、異方性導電接着剤を溶融流動させて配線基板と電気素子との間隙からプレスアウトさせ、更に予備硬化させ
第2加熱加圧工程において、ハンダ粒子を溶融させて配線基板の電極と電気素子の電極との間に金属結合を形成させると共に異方性導電接着剤を本硬化させることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
異方性導電接着剤の最低溶融粘度を示す温度Tvが70〜150℃であり、第1加熱加圧工程の加熱温度T1が80〜160℃であり、ハンダ粒子の溶融温度Tsが100〜210℃であり、第2加熱加圧工程の加熱温度T2が130〜220℃である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
T1とTvとの差が10〜40℃であり、TsとT1との差が2〜110℃であり、T2とTsとの差が2〜100℃である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
ハンダ粒子が、共晶SnBiハンダ粒子または共晶SnInハンダ粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造された接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−226140(P2010−226140A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−136180(P2010−136180)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】