説明

描画データ補正方法、描画方法、配線板の製造方法、及び描画システム

【課題】基板が変形した場合において、描画データで想定している基板の形状と実際の基板の形状とのずれを低減して、より実際の基板の形状に合った描画を可能にする。
【解決手段】描画データ補正方法は、描画領域を規定する位置座標と、描画領域に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを準備すること(ステップS12)と、被描画体の位置座標の変位態様を求めること(ステップS14)と、被描画体の位置座標の変位態様に基づいて基準位置座標を補正すること(ステップS15)と、補正後の基準位置座標に基づいて、描画領域の形状を維持したまま描画領域の位置座標を補正すること(ステップS16)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画データに基づいて被描画体を描画する描画データ補正方法、描画方法、配線板の製造方法、及び描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、描画システムが開示されている。この描画システムにおいては、描画データ上の描画領域(基準矩形)の頂点を構成するような4つのアライメントマークが、基板(被描画体)上に形成される。そして、描画システムは、基板が変形した状態でそのアライメントマークの位置を測定し、その測定したアライメントマークの位置から基板の変形態様を求める。そして、その基板の変形態様に応じて描画領域を変形させることで、描画データの位置座標を補正する。
【0003】
また、特許文献2には、別の描画システムが開示されている。この描画システムにおいては、描画データ上の描画領域(基準矩形)の頂点を構成するような4つのアライメントマークが、基板(被描画体)上に形成される。そして、描画システムは、基板が変形した状態でそのアライメントマークの位置を測定し、その測定したアライメントマークの位置から、描画領域を構成する複数の分割領域の各々について変形前後のスケール比を求める。そして、それら各分割領域の変形前後のスケール比に応じて各分割領域を矩形に補正することで、描画データの位置座標を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−3441号公報
【特許文献2】特開2008−3504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の描画システムでプリント回路基板上にソルダーレジスト層を形成する場合には、描画データの位置座標を補正する際に基板の変形態様に応じて描画領域を変形させる。ここで、プリント回路基板には、ソルダーレジスト層の形成時に複数の実装用パッドが形成される。各実装用パッドのピッチは、該パッドを介して基板に実装されるチップの各電極のピッチと一致している。このため、描画領域を変形させると、その変形に基づいて、プリント回路基板に歪んだ形状のソルダーレジスト層が形成されると考えられる。その結果、プリント回路基板の実装用パッドのピッチが設定値から変化してチップの電極のピッチからずれ、プリント回路基板上へのチップの実装が困難になることが懸念される。
【0006】
また、特許文献2に記載の描画システムでは、描画データの位置座標を補正した後においても描画領域の各ピースについて補正前の形状(矩形)が維持されてはいる。しかしながら、描画領域の変形前後のスケール比に基づいて各描画領域の形状が補正されることにより、各ピースの描画領域の大きさが変形前の描画領域の大きさと一致しなくなると考えられる。その結果、プリント回路基板の実装用パッドのピッチが設定値から変化してチップの電極のピッチからずれ、プリント配線板上へのチップの実装が困難になることが懸念される。
【0007】
本発明は、基板が変形した場合において、描画データで想定している基板の形状と実際の基板の形状とのずれを低減して、より実際の基板の形状に合った描画を可能にすることを目的とする。また、プリント回路基板上にソルダーレジスト層を形成する場合には、プリント回路基板へのチップの実装を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る描画データ補正方法は、描画領域を規定する位置座標と、前記描画領域に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを準備することと、被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記基準位置座標を補正することと、前記補正された基準位置座標に基づいて、前記描画領域の形状を維持したまま前記描画領域の位置座標を補正することと、を含む。
【0009】
前記被描画体は、アライメントマークを有し、前記描画データは、前記被描画体の変形前における前記アライメントマークの位置を示す第1アライメント位置座標を有し、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることは、前記被描画体の変形後における前記アライメントマークの位置を示す第2アライメント位置座標を検出することと、前記第1アライメント位置座標と前記第2アライメント位置座標との差異に基づいて、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、を含むことが好ましい。
【0010】
前記描画領域の形状は四角形であり、前記第1アライメント位置座標は、前記四角形よりも大きい四角形の頂点に相当する、ことが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る描画方法は、前記描画データ補正方法により補正した描画データに基づいて、前記被描画体に描画することを含む。
【0012】
本発明の第3の観点に係る配線板の製造方法は、電子部品の実装用パッドを有する配線板の製造方法であって、前記描画方法によりソルダーレジスト層を形成することを含む。
【0013】
本発明の第4の観点に係る描画システムは、描画領域を規定する位置座標と、前記描画領域に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを設定する手段と、被描画体の位置座標の変位態様を求める手段と、前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記基準位置座標を補正する手段と、前記補正された基準位置座標に基づいて、前記描画領域の形状を維持したまま前記描画領域の位置座標を補正する手段と、を含む。
【0014】
本発明の第5の観点に係る描画データ補正方法は、描画領域を構成する複数のピースの各々を規定する位置座標と、前記ピースの各々に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを準備することと、被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記ピースの各々の前記基準位置座標を補正することと、前記補正された各基準位置座標に基づいて、前記ピースの各々の形状を維持したまま前記ピースの各々の前記位置座標を補正することと、を含む。
【0015】
前記被描画体は、アライメントマークを有し、前記描画データは、前記被描画体の変形前における前記アライメントマークの位置を示す第1アライメント位置座標を有し、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることは、前記被描画体の変形後における前記アライメントマークの位置を示す第2アライメント位置座標を検出することと、前記第1アライメント位置座標と前記第2アライメント位置座標との差異に基づいて、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、を含むことが好ましい。
【0016】
前記描画領域の形状は四角形であり、前記第1アライメント位置座標は、前記四角形よりも大きい四角形の頂点に相当する、ことが好ましい。
【0017】
本発明の第6の観点に係る描画方法は、前記描画データ補正方法により補正した描画データに基づいて、前記被描画体に描画することを含む。
【0018】
本発明の第7の観点に係る配線板の製造方法は、電子部品の実装用パッドを有する配線板の製造方法であって、前記描画方法によりソルダーレジスト層を形成することを含む。
【0019】
本発明の第8の観点に係る描画システムは、描画領域を構成する複数のピースの各々を規定する位置座標と、前記ピースの各々に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを設定する手段と、被描画体の位置座標の変位態様を求める手段と、前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記ピースの各々の前記基準位置座標を補正する手段と、前記補正された各基準位置座標に基づいて、前記ピースの各々の形状を維持したまま前記ピースの各々の前記位置座標を補正する手段と、を含む。
【0020】
なお、「描画領域に設けられた」には、描画領域の中に設けられる場合も、描画領域の外に設けられる場合も含まれる。描画領域に関連付けられて設けられていれば足りる。
【0021】
また、「変位態様」には、変位量のみならず、変位の方向、歪みの分布なども含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板が変形した場合において、描画データで想定している基板の形状と実際の基板の形状とのずれを低減して、より実際の基板の形状に合った描画しやすくなる。また、プリント回路基板上にソルダーレジスト層を形成する場合には、プリント回路基板へチップを実装しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る描画システムの概要を示す図である。
【図2】描画装置の概要を示す図である。
【図3】描画システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】基板の断面図である。
【図5】描画データを設定(準備)する工程を説明するための図である。
【図6】描画領域の拡大図である。
【図7】ピースの拡大図である。
【図8】変形後の基板を示す図である。
【図9】被描画体の位置座標の変位態様を求める工程、及び各ピースの基準位置座標を補正する工程を説明するための図である。
【図10】基板にソルダーレジスト層を形成する工程を説明するための図である。
【図11】図10の断面図である。
【図12】回転方向に変位した場合の補正態様の一例を説明するための図である。
【図13】1つの描画領域を有する描画データの一例を示す図である。
【図14】ピースの頂点に基準点を設定した描画データの一例を示す図である。
【図15】ピースに分割されていない描画領域の一例を示す図である。
【図16】台形状のピースを示す図である。
【図17】異なる形状のピースからなる描画領域の一例を示す図である。
【図18】隣り合うピースが頂点を共有する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図中、矢印Z1、Z2は、それぞれ基板の主面(表裏面)の法線方向(又は基板の厚み方向)を指す。一方、矢印X1、X2及びY1、Y2は、それぞれ基板の主面に平行な方向を指す。基板の主面は、X−Y平面となる。また、基板の側面は、X−Z平面又はY−Z平面となる。本実施形態では、相反する法線方向を向いた2つの主面を、第1面(矢印Z1側の面)、第2面(矢印Z2側の面)という。
【0025】
描画システム100は、図1に示すように、描画装置10と、描画制御部20と、を有する。図2に、描画装置10の概要を示す。
【0026】
描画装置10は、ゲート11と、台12と、X−Yステージ13と、X方向駆動装置15と、Y方向駆動装置14と、露光装置16と、カメラ17と、を有する。描画装置10は、X−Yステージ13上に載置された基板200(被描画体)を描画することにより、基板200の表面にソルダーレジスト層等を形成する。
【0027】
台12上には、X方向駆動装置15、Y方向駆動装置14が順に配置される。Y方向駆動装置14上にはX−Yステージ13が配置され、X−Yステージ13上には、所定の前処理が施された基板200が載置される。Y方向駆動装置14及びX方向駆動装置15は、例えばモータ(図示略)を有する。Y方向駆動装置14は調整ネジ14aを有し、X方向駆動装置15は調整ネジ15aを有する。作業者が調整ネジ14a、15aを回すことで、Y方向駆動装置14は、X−Yステージ13をY方向に移動させ、X方向駆動装置15は、X−Yステージ13をX方向に移動させる。
【0028】
ゲート11は、上部11aと、壁部11bと、からなる。ゲート11の上部11aには、露光装置16が設けられる。露光装置16は、図1に示すように、光源16aと、露光光学系16bと、を有する。光源16aは、例えば半導体レーザからなる。露光光学系16bは、DMD(Digital Micro-mirror Device)等から構成される。なお、光変調素子はDMDに限定されず、LCD(Liquid Crystal Display)やAOM(Acoustic Optical Modulator)を用いてもよい。露光装置16は、X−Yステージ13の移動に合わせて動作する。本実施形態では、主走査方向をX方向、副走査方向をY方向とする。
【0029】
ゲート11の上部11aには、カメラ17も設けられる。カメラ17は、例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等からなる。カメラ17は、例えば基板200に形成されたアライメントマークの位置を検出するために使用される。カメラ17は、X−Yステージ13の移動に合わせて動作する。
【0030】
描画制御部20は、図1に示すように、制御装置21と、キーボード22と、モニタ23と、を有する。描画制御部20は、X−Yステージ13の移動及び露光装置16の動作を制御する。作業者は、キーボード22を操作することにより、露光装置16の露光条件等を制御装置21に設定することができる。
【0031】
制御装置21は、システム制御部21aと、露光制御部21bと、ステージ位置制御部21cと、アライメントマーク検出部21dと、データ演算部21eと、データ入力部21fと、データバッファ21gと、光源制御部21hと、を有する。
【0032】
システム制御部21aは、CPU、RAM、ROM等を含む。システム制御部21aは、描画装置10全体を制御する。露光装置16の露光条件等は、システム制御部21aに設定される。ステージ位置制御部21cは、X−Yステージ13に対する露光エリアの相対的位置を検出しつつ、Y方向駆動装置14及びX方向駆動装置15の動作(X−Yステージ13の移動量や移動速度等)を制御する。露光制御部21bは、例えば予めROMに格納された描画処理用プログラムに従って、露光光学系16bの動作(露光のタイミング等)を制御する。データバッファ21gは、一時的に記憶可能なメモリである。光源制御部21hは、光源16aの動作(光の照射等)を制御する。
【0033】
次に、描画システム100の動作について説明する。描画システム100は、例えば図3に示すような処理を実行する。制御装置21による処理は、例えばROM内のプログラムをCPUが実行することで、開始され又は進行する。本実施形態における描画データは、ソルダーレジスト層のパターンデータである。ただしこれに限定されず、描画データは任意である。また、基板200(被描画体)としては、例えばシリコンウェハ、フィルム、ガラス基板、又はプリント配線板用の銅張積層板、プリント回路基板等を用いることができる。本実施形態の基板200は、多面取り用のプリント回路基板であり、複数のピースを有する。
【0034】
作業者は、まず、ステップS11で、基板200を用意する。基板200は、例えば図4に示すように、コア基板1001と、コア基板1001の表裏両面上に交互の積層された層間絶縁層及び導体層と、から構成されている。導体層の形成の際に、アライメントマーク211〜214も同時に形成される。または、導体層の一部がアライメントマーク211〜214として用いられる。基板200は、例えば導体層の形成の際のエッチングに起因して基板200に応力が加わることにより変形(伸縮)している。なお、変形前においては、アライメントマーク211〜214の位置は描画データ(後述のアライメントマークP1〜P4)に対応した位置にあるが、変形後は、両者の位置がずれる。
【0035】
続く図3のステップS12においては、制御装置21が描画データを設定する。具体的には、作業者が、例えばワークステーションを操作して、制御装置21のデータ入力部21fに描画データを入力する。これにより、描画データは、データバッファ21gに記憶される。
【0036】
ここで入力される描画データは、例えばベクタデータ(CAMデータ)である。ベクタデータは、X−Y座標系に基づいた描画パターンの位置座標データをもつ。したがって、この描画データにおいては、X−Y座標系に基づいて、基板200上の位置が規定される。
【0037】
図3のステップS12の処理により、図5に示すように、基板200の主面に4つの描画領域300が設定される。各描画領域300の形状は、例えばX軸又はY軸に平行な辺を有する矩形である。図6に、基板200の主面上の4つの描画領域300のうちの1つの描画領域300を拡大して示す。各描画領域300の周囲には、アライメントマークP1〜P4が設けられる。アライメントマークP1〜P4は、描画領域300よりも大きい矩形300aの頂点になる。描画領域300は、複数のピース301a〜301f、302a〜302fで構成される。ピース301a〜302fは、互いに同じ形状(矩形)をもって、X方向及びY方向に規則正しく並べられる。ピース301a〜302fにおいて、隣接するピースの間には所定の隙間が形成されている。
【0038】
図7に、ピース301a〜302fの1つを拡大して示す。ピース301a〜302fの各々の形状は、例えばX軸又はY軸に平行な辺を有する矩形である。ピース301a〜302fの各々には、基準点P20が設定される。基準点P20は、例えばピース301a〜302fの重心である。
【0039】
描画データは、ピース301a〜302fの各々を規定する位置座標(以下、ピース位置座標という)と、ピース301a〜302fの各々の基準点P20の位置を示す位置座標(以下、基準位置座標という)と、アライメントマークP1〜P4の位置を示す位置座標(DX1,DY1)、(DX2,DY1)、(DX2,DY2)、(DX1,DY2)(以下、第1アライメント位置座標という)と、を有する。本実施形態のピース位置座標は、各ピースの頂点P11〜P14(図7)の位置座標に相当する。また、第1アライメント位置座標は、矩形300a(図6)の頂点(アライメントマークP1〜P4)の位置座標に相当する。
【0040】
基板200は、例えば図8に示すように、変形している。基板200における矩形200aは、描画データにおける矩形300a(図6)に対応した領域である。続く図3のステップS13においては、変形した基板200のアライメントマーク211〜214の位置座標(SX1,SY1)、(SX2,SY2)、(SX3,SY3)、(SX4,SY4)(以下、第2アライメント位置座標という)を検出する。以下、一例として、描画領域300の位置座標がX方向(矢印X2側)にのみ変位した場合について説明する。
【0041】
本実施形態では、アライメントマーク検出部21dが、カメラ17の検出信号に基づいて上記第2アライメント位置座標を検出する。その後、第2アライメント位置座標は、データバッファ21gに記憶される。基板200が変形することにより、第1アライメント位置座標と第2アライメント位置座標とは互いにずれる。
【0042】
続く図3のステップS14においては、第1アライメント位置座標と第2アライメント位置座標との差異、すなわちずれ量(位置座標の変位量)に基づいて、基板200の位置座標の変位態様が求められる。
【0043】
例えば図9に示すように、ピース301a〜301f、ピース302a〜302fの各基準点P20のY座標を、それぞれY座標DY21、DY22とする。また、矩形200aと矩形300aとのずれ量のうち、Y座標DY21における矢印X1、X2側の各ずれ量を、それぞれずれ量d11、d21とし、Y座標DY22における矢印X1、X2側の各ずれ量を、それぞれずれ量d12、d22とする。
【0044】
本実施形態では、データ演算部21eが、基板200の位置座標の変位態様として、ずれ量d11及びd21の平均値A1、ずれ量d12及びd22の平均値A2を算出する。その後、平均値A1、A2は、データバッファ21gに記憶される。なお、変位態様を求める手法は任意である。例えば有限要素法等に基づきコンピュータ解析するなどして、基板200における各部位の変位態様を精密に算出してもよい。
【0045】
続く図3のステップS15においては、データ演算部21eが、ステップS14で補正された基板200の位置座標の変位態様(平均値A1、A2)をデータバッファ21gから読み出し、それら平均値A1、A2に基づいて、ピース301a〜302fの各々の基準点P20の位置座標を補正する。具体的には、図9に示すように、ピース301a〜301f、ピース302a〜302fの各基準点P20の位置座標(基準位置座標)を、それぞれX方向(矢印X2側)に平均値A1、A2だけ変位させる。これにより、ピース301a〜302fの各基準位置座標が補正される。補正後の各基準位置座標は、データバッファ21gに記憶される。
【0046】
続く図3のステップS16においては、データ演算部21eが、ステップS15で補正された基準位置座標をデータバッファ21gから読み出し、それら基準位置座標に基づいて、ピース301a〜302fの各々の形状(矩形)を維持したまま、描画データ全体、すなわちピース301a〜302fの位置座標を補正する。
【0047】
続く図3のステップS17においては、作業者が、ステップS16で補正した描画データに基づいて、基板200に複数のピース201a〜201f、202a〜202fを描画する。具体的には、基板200の第1面全体にわたって液状の感光性樹脂を塗布する。次いで、フォトマスクを用いることなく露光装置16により基板200を露光した後、未硬化の樹脂を除去する。基板200の第2面に対しても同様の処理を行う。これにより、図10及び図11(図10の断面図)に示すように、基板200の第1面、第2面に、ソルダーレジスト層221、222を形成する。このとき、ソルダーレジスト層221、222の開口部において最外層の導体回路の一部が露出することにより、複数の実装用パッド230が形成される。そして、実装用パッド230上に半田バンプ231、232を形成することで、配線板が完成する。なお、配線板における各層の材質、サイズ、層数等は、任意である。
【0048】
1つの基板200に複数の配線板が形成されるため、配線板の形成後には、基板200から各配線板を切断する。このとき、複数の配線板を1つにまとめた状態で基板200から切断してもよいし、配線板毎に基板200から切断してもよい。
【0049】
本実施形態の描画データ補正方法によれば、基板200が変形した場合において、描画データで想定している基板200の形状と実際の基板200の形状とのずれを低減して、より実際の基板200の形状に合った描画が可能になる。具体的には、各ピース301a〜302fの基準点P20の位置座標の補正により、基板200の変形に応じて各ピース301a〜302fの位置座標が変更される。その結果、描画データで想定している各ピース301a〜302fの描画領域と実際の基板200における各ピース301a〜302fの描画領域とのずれを低減することができる。
【0050】
なお、図3のステップS16では、ピース301a〜302fの各々の形状が維持されたまま位置座標が補正される。描画データであるソルダーレジスト層221、222のパターンデータは、複数の実装用パッド230の位置データを含んでいる。各実装用パッド230の位置は配線板に実装されるチップの複数の電極の位置に対応している。また、各実装用パッド230のピッチは各電極のピッチと一致している。ステップS16ではピース301a〜302fの各々の形状が維持されることから、各実装用パッド230の位置も設定値のまま維持される。そのため、形成される各実装用パッド230のピッチも設定値のまま維持され、チップの各電極のピッチと一致している。その結果、配線板上へのチップの実装が容易になる。
【0051】
また、本実施形態では、複数の描画領域300の各々についてアライメントマークP1〜P4が設定されており、各描画領域300の各々でピースの位置座標を補正する。そして、その補正後の描画データに基づいて、基板200の各矩形200a内の描画をする。そのため、複数の描画領域300を1つの描画領域にまとめてアライメントマークを設定した場合に比べて、ピースの位置座標の補正精度を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、一例として、基板200の位置座標がX方向にのみ変位した場合について説明したが、Y方向に変位した場合も同様に考えることができる。また、X方向及びY方向の両方向に変位した場合には、各方向についてそれぞれ同様に補正すればよい。また、例えば図12に示すように、回転方向に変位した場合にも、回転モーメント等に関する所定の方程式などに基づいて補正することができる。このとき、ソルダーレジスト層221、222は、その形状が維持されたまま、向きが基板200の変位方向に対応して回転した状態で形成される。
【0053】
以上、本発明の実施形態に係る描画データ補正方法、描画方法、配線板の製造方法、及び描画システムについて説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば以下のように変形して実施することもできる。
【0054】
本実施形態では、基板200の主面に複数の描画領域300を設定したが、例えば図13に示すように、基板200の主面に1つの描画領域300のみを設定してもよい。
【0055】
基準点P20の位置はピースの重心に限定されず任意である。例えば図14に示すように、ピース301a〜302fの頂点に基準点P20を設定してもよい。また、基準点P20の数は1つに限定されず、各ピース301a〜302fに複数の基準点P20が設定されてもよい。複数の基準点P20が設定されることにより、基板200が回転方向に変位した場合に、該回転方向を容易に算出することができる。
【0056】
本実施形態では、複数のピース301a〜301f、302a〜302fを有する描画領域300について考えたが、ピースの数は任意である。また、図15に示すように、描画領域300は、ピースに分割されていなくてもよい。逆に、描画領域300は、図16、図17に示すように、より多くのピース、すなわちピース301a〜301f、302a〜302f、303a〜303f、304a〜304fに分割されていてもよい。
【0057】
ピースの形状は、矩形に限定されず任意である。例えば図16に示すように、ピースの形状は、矩形以外の四角形、すなわち台形であってもよい。あるいは、ピースの形状は、円や他の多角形(三角形や五角形等)であってもよい。また、図17に示すように、ピース同士が異なる形状であってもよい。
【0058】
ピースの配置も任意である。例えば図18に示すように、ピース301a〜304fにおいて、隣り合うピースが頂点を共有してもよい。
【0059】
アライメントマークP1〜P4(図6)の位置は矩形の頂点に限定されず任意である。例えば描画領域300の中に、アライメントマークP1〜P4を設けてもよい。
【0060】
その他の点についても、描画装置10や描画制御部20等の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変更することができる。
【0061】
上記実施形態の工程は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に順序や内容を変更することができる。また、用途等に応じて、必要ない工程を割愛してもよい。例えばベクタデータ以外の描画データに基づいて補正を行ってもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、「請求項」に記載されている発明や「発明を実施するための形態」に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る描画データ補正方法、描画方法、及び描画システムは、プリント配線板の製造に適している。また、本発明に係る配線板の製造方法は、電子機器の回路基板の製造に適している。
【符号の説明】
【0064】
10 描画装置
11 ゲート
12 台
13 X−Yステージ
14 Y方向駆動装置
15 X方向駆動装置
16 露光装置
16a 光源
16b 露光光学系
17 カメラ
20 描画制御部
21 制御装置
21a システム制御部
21b 露光制御部
21c ステージ位置制御部
21d アライメントマーク検出部
21e データ演算部
21f データ入力部
21g データバッファ
21h 光源制御部
22 キーボード
23 モニタ
100 描画システム
200 基板(被描画体)
201a〜201f ピース
221、222 ソルダーレジスト層
231、232 半田バンプ
300 描画領域
301a〜304f ピース(描画データとしてのピース)
211〜214 アライメントマーク
P20 基準点
P1〜P4 アライメントマーク(描画データとしてのアライメントマーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画領域を規定する位置座標と、前記描画領域に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを準備することと、
被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、
前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記基準位置座標を補正することと、
前記補正された基準位置座標に基づいて、前記描画領域の形状を維持したまま前記描画領域の位置座標を補正することと、
を含む、
ことを特徴とする描画データ補正方法。
【請求項2】
前記被描画体は、アライメントマークを有し、
前記描画データは、前記被描画体の変形前における前記アライメントマークの位置を示す第1アライメント位置座標を有し、
前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることは、
前記被描画体の変形後における前記アライメントマークの位置を示す第2アライメント位置座標を検出することと、
前記第1アライメント位置座標と前記第2アライメント位置座標との差異に基づいて、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画データ補正方法。
【請求項3】
前記描画領域の形状は四角形であり、
前記第1アライメント位置座標は、前記四角形よりも大きい四角形の頂点に相当する、
ことを特徴とする請求項2に記載の描画データ補正方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の描画データ補正方法により補正した描画データに基づいて、前記被描画体に描画することを含む、
ことを特徴とする描画方法。
【請求項5】
電子部品の実装用パッドを有する配線板の製造方法であって、
請求項4に記載の描画方法によりソルダーレジスト層を形成することを含む、
ことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項6】
描画領域を規定する位置座標と、前記描画領域に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを設定する手段と、
被描画体の位置座標の変位態様を求める手段と、
前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記基準位置座標を補正する手段と、
前記補正された基準位置座標に基づいて、前記描画領域の形状を維持したまま前記描画領域の位置座標を補正する手段と、
を含む、
ことを特徴とする描画システム。
【請求項7】
描画領域を構成する複数のピースの各々を規定する位置座標と、前記ピースの各々に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを準備することと、
被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、
前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記ピースの各々の前記基準位置座標を補正することと、
前記補正された各基準位置座標に基づいて、前記ピースの各々の形状を維持したまま前記ピースの各々の前記位置座標を補正することと、
を含む、
ことを特徴とする描画データ補正方法。
【請求項8】
前記被描画体は、アライメントマークを有し、
前記描画データは、前記被描画体の変形前における前記アライメントマークの位置を示す第1アライメント位置座標を有し、
前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることは、
前記被描画体の変形後における前記アライメントマークの位置を示す第2アライメント位置座標を検出することと、
前記第1アライメント位置座標と前記第2アライメント位置座標との差異に基づいて、前記被描画体の位置座標の変位態様を求めることと、
を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の描画データ補正方法。
【請求項9】
前記描画領域の形状は四角形であり、
前記第1アライメント位置座標は、前記四角形よりも大きい四角形の頂点に相当する、
ことを特徴とする請求項8に記載の描画データ補正方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の描画データ補正方法により補正した描画データに基づいて、前記被描画体に描画することを含む、
ことを特徴とする描画方法。
【請求項11】
電子部品の実装用パッドを有する配線板の製造方法であって、
請求項10に記載の描画方法によりソルダーレジスト層を形成することを含む、
ことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項12】
描画領域を構成する複数のピースの各々を規定する位置座標と、前記ピースの各々に設けられた基準点の位置を示す基準位置座標と、を有する描画データを設定する手段と、
被描画体の位置座標の変位態様を求める手段と、
前記求めた被描画体の位置座標の変位態様に基づいて、前記ピースの各々の前記基準位置座標を補正する手段と、
前記補正された各基準位置座標に基づいて、前記ピースの各々の形状を維持したまま前記ピースの各々の前記位置座標を補正する手段と、
を含む、
ことを特徴とする描画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−95742(P2011−95742A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227959(P2010−227959)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】