説明

描画装置、および描画方法

【課題】描画対象物に均一な厚みの材料層を描画する描画装置および描画方法を提供する。
【解決手段】描画対象物50に描画すべきパターンの液状材料を付着させるべき領域を、主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影した像の連続する部分の長さ、つまり配線領域の長さLwに基づいて、ノズルヘッド23の1回の主走査で描画されるパス領域の幅Lpを、ノズルヘッドに設けられるノズルの配列長さLaよりも短く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状材料を吐出してパターンを描画する描画装置および描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルヘッド(インクジェットヘッド)からパターン形成用材料を含んだ液状材料を液滴として吐出して、描画対象物の表面に、材料層を所定パターンで描画する技術が知られている(たとえば特許文献1)。
【0003】
このような描画技術において、たとえば、描画対象物にはプリント配線板が、液状材料には液状ソルダーレジストが用いられる。プリント配線板は、基材および配線を含み、所定の位置に電子部品等がはんだ付けされる。ソルダーレジストは、プリント配線板への電子部品等のはんだ付けのために、必要な導体部分を露出し、はんだ付けが不要な部分にはんだが付かないように配線板上に形成される絶縁膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3544543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、描画対象物に均一な厚みの材料層を描画する描画装置および描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、基板を保持する保持機構と、前記保持機構に保持された基板に向けて絶縁性液状材料を吐出し、絶縁性液状材料を前記基板に付着させることによって描画を行う複数のノズル、および該複数のノズルに絶縁性液状材料を供給する供給路が設けられたノズルヘッドと、前記保持機構を移動させることによって、該保持機構に保持される基板を前記ノズルヘッドに対して第1の方向に走査する主走査と、前記第1の方向と交差する第2の方向に走査する副走査と、を行う移動機構と、前記基板に描画すべきパターンを定義する画像データを記憶し、前記画像データに基づいて、前記移動機構および前記ノズルヘッドを制御する制御装置と、を備え、前記複数のノズルは前記第2の方向に配列され、該第2の方向の一端側のノズルから他端側のノズルまでのノズル配列長さをLaとし、前記基板に描画すべきパターンの絶縁性液状材料を付着させるべき領域を、前記第1の方向に直交する仮想直線上に垂直投影した像の連続する部分の長さをLwとしたとき、前記制御装置は、前記基板の1回の主走査で描画されるパス領域の幅を、前記像の連続する部分の長さLwに基づいて、前記ノズル配列長さLaよりも短いLpに設定し、前記基板を主走査しながら前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させて、前記パス領域内に描画を行う描画装置、が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によれば、絶縁性液状材料を吐出する規則的に配列された複数のノズル、および該複数のノズルに絶縁性液状材料を供給する供給路が設けられたノズルヘッドにより、基板の表面を走査する主走査と、該主走査と交差する方向に走査する副走査と、を行いながら、前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させ、該液状材料で前記基板に描画を行う描画方法であって、前記規則的に配列された複数のノズルの一端側のノズルから他端側のノズルまでのノズル配列長さをLaとし、前記基板に描画すべきパターンの絶縁性液状材料を付着させるべき領域を、前記主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影した像の連続する部分の長さをLwとしたとき、前記ノズルヘッドの1回の主走査で描画されるパス領域の幅を、前記像の連続する部分の長さLwに基づいて、前記ノズル配列長さLaよりも短いLpに設定し、前記ノズルヘッドを主走査させながら前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させて、前記パス領域内に描画を行う描画方法、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
液状材料が均一な厚みで描画された描画対象物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aは、描画装置を示す側面図であり、図1Bおよび図1Cは、描画装置に備えられるノズルヘッドを示す断面図および底面図である。
【図2】図2は、ノズルヘッドに対して描画対象物を相対的に走査しながら、ノズルヘッドから吐出される液状材料を描画対象物の表面に付着させる様子を示す側面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、描画対象物に所定のパターンを描画する様子を示す平面図および側面図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、描画対象物に所定のパターンを均一な厚さで描画する様子を示す平面図および側面図である。
【図5】図5は、ノズルヘッドの主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影した液状材料を付着させるべき領域の像の連続する部分の長さと、ノズル配列長さよりも短い任意のパス領域の幅と、の関係を示すダイアグラムである。
【図6】図6Aおよび図6Bは、ノズルヘッドによりパス領域内に描画を行う様子を示す平面図、および実施例によるノズルヘッドの変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1Aは、実施例による描画装置の構成を示す側面図である。この描画装置は、定盤20、フレーム21、ステージ22、ノズルヘッド23、CCDカメラ30、および制御装置40を含む構成である。定盤20は、図中の座標系においてXY平面に平行な面内に設置される。ステージ22は、定盤20上に配置される。フレーム21は、定盤20に固定され、Y軸方向に沿って見たとき、ステージ22を門型に囲むように配置され、ノズルヘッド23およびCCDカメラ30が取り付けられる。制御装置40は、描画装置の動作を制御する。
【0011】
ステージ22は、たとえば、定盤20側から順に配置されるYステージ22y、Xステージ22xおよびθステージ22θ等の移動機構、およびチャックプレート22a等の保持機構を含む。Yステージ22y、Xステージ22xおよびθステージ22θは、それぞれボールネジやリニアモータ等の駆動機構を備える。チャックプレート22aは、描画対象物(たとえばプリント配線板)50を吸着保持する。θステージ22θは、保持された描画対象物50を、XY平面に平行な面内で、Z軸に平行な回転軸の周囲に回転させる。Xステージ22xおよびYステージ22yは、それぞれ描画対象物50を、X軸方向およびY軸方向に移動させることができる。チャックプレート22aによる描画対象物50の吸着は、制御装置40によって制御される。X,Y,θステージ22x,22y,22θによる描画対象物50の移動は、各ステージの駆動機構を介して、制御装置40によって制御される。なお、移動機構は、描画対象物をX,Y,θ方向にそれぞれ移動させることができる単一の可動ステージであってもかまわない。
【0012】
フレーム21は、2本の支柱21a、21b、及び梁21cを含む。支柱21a、21bは、定盤20のY軸方向の略中央に立設される。梁21cは、X軸方向に沿うように、支柱21a、21bに支持される。
【0013】
ノズルヘッド23およびCCDカメラ30は、フレーム21の梁21cに取り付けられる。ノズルヘッド23は、パターン形成用材料を含んだ絶縁性を有する液状材料(たとえば光硬化剤が添加された液状ソルダーレジスト)を液滴として保持機構22aに保持された描画対象物50に向けて吐出(滴下)する。ノズルヘッド23からの液状材料の吐出は、制御装置40によって制御される。CCDカメラ30は、保持機構22aに保持された描画対象物50の表面を撮像する。移動機構により描画対象物50を移動させることで、描画対象物50上の任意の位置の撮像データを取得することができる。取得された撮像データは、制御装置40に送信される。取得された撮像データにより、制御装置40は、描画対象物50に液状材料を付着させるべき位置の計測や、付着した液状材料の検査を行うことができる。CCDカメラ30による撮像、およびその撮像データの送信は、制御装置40によって制御される。
【0014】
制御装置40は、記憶装置40aを含み、記憶装置40aには、描画対象物50上に描画すべきパターンを定義する画像データ(ガーバデータ、ビットマップデータ等)が記憶されている。制御装置40は、CCDカメラ30による撮像データおよび記憶装置40aに記憶される画像データに基づいて、描画対象物50に描画すべきパターンが描画されるように、移動機構による描画対象物50の移動、およびノズルヘッド23からの液状材料の吐出を制御する。
【0015】
描画対象物50は、X軸およびY軸方向に移動され、ノズルヘッド23の鉛直下方(Z軸方向)において液状材料を付着される。
【0016】
なお、図1Aでは、ステージ22に移動機構を備え、フレーム21が固定される構成であるが、フレーム21に移動機構を備える構成であってもかまわない。
【0017】
図1Bおよび図1Cは、ノズルヘッド23の構成を示す断面図および底面図である。ノズルヘッド23は、図1Bに示すように、規則的に配列され、電気信号に基づいて液状材料を吐出する複数のノズル23a、およびそれらノズル23aに液状材料を供給する供給路23bを含む。ノズル23aは、ピッチPでX軸方向に沿って配列し、一端のノズル23aから他端のノズル23aまでの長さはLaである。たとえば、ノズルは、約30μmの開口径を有し、ピッチPが約160μm、ノズル配列長さLaが約30mmである。また、ノズルヘッド23は、図1Cに示すように、描画対象物50上に付着した液状材料、たとえば光硬化剤が添加されたソルダーレジスト、を光硬化させるための光源23cを備える。複数のノズル23a各々は、たとえばピエゾ素子を含んで構成され、電気信号の印加によって液状材料を吐出する。複数のノズル23a各々からの液状材料の吐出は、制御装置40によって制御される。
【0018】
図2は、ノズルヘッド23により描画対象物50を走査しながら、ノズルヘッド23から吐出される液状材料を描画対象物50の表面に付着させる様子を示す側面図である。制御装置40(図1A)は、ノズル23aに所定の基準電圧を印加した状態で、ノズルヘッド23に対して描画対象物50を、たとえばY軸方向に移動する。CCDカメラ30(図1A)による撮像データ、および記憶装置40a(図1A)に記憶される画像データに基づいて、たとえば吐出周期S(吐出周波数F)が33μs(30kHz)程度の条件で、液状材料を吐出させるノズル23aに電圧パルスを印加する。ノズル23aは、時刻T1に開始する電圧パルスの印加によって、液状材料を吐出し、液状材料を描画対象物50上の地点P1に付着させる。さらに、時刻T2に開始する電圧パルスの印加によって、液状材料を吐出し、液状材料を描画対象物50上の地点P2に付着させる。描画対象物への液状材料の吐出を繰り返し、描画対象物の表面に描画すべきパターンを描画する。たとえば、描画対象物50とノズルヘッド23のノズル23aとの距離は1mm程度であり、地点P1からP2までの距離は20μm程度である。
【0019】
本発明者らは、上記の描画装置を用いて、プリント配線板に光硬化剤が添加されたソルダーレジストを所定のパターンで描画する評価実験を行った。なお、以下では、便宜的に、ノズルヘッドがプリント配線板の表面を走査するものとして説明を行う。
【0020】
図3Aおよび図3Bは、プリント配線板にソルダーレジストパターンを描画する様子を示す平面図および側面図である。プリント配線板50には、たとえば、描画すべきソルダーレジストパターンが合同であり、X軸方向の幅がLwである複数の配線領域51が行列状に配置されている。配線領域51、およびプリント配線板に形成されるソルダーレジスト層60は、ハッチングにより示している。なお、図中のノズルヘッド23は、ノズル23aを示せるように、便宜的に、透視図として示している。
【0021】
本評価実験では、制御装置40(図1A)は、まず、CCD30(図1A)によりプリント配線板50に形成されたアライメントマークMを参照して、ノズルヘッド23に配列されたノズル23aの一端がプリント配線板50の描画すべき領域の隅に配置されるようにノズルヘッド23を移動する。さらに、ノズル配列長さLaに等しい幅でY軸方向に沿うプリント配線板50の一端側から他端側まで、つまり幅Laを有するパス領域52a上でノズルヘッド23を主走査する。同時に、ノズルヘッド23に設けられたノズル23aに所定の電圧パルスを印加し、パス領域52aのソルダーレジストを付着させるべき領域にソルダーレジストを吐出する。パス領域52a内の配線領域51部分に付着したソルダーレジストは、ノズルヘッド23に備えられた光源23c(図1C)によって直ちに光硬化される。
【0022】
次に、X軸方向に沿ってノズル23a配列長さLaずらした位置までノズルヘッド23を副走査し、幅Laを有するパス領域52b上でノズルヘッド23を主走査する。同時に、ノズルヘッド23に設けられたノズル23aに所定の電圧パルスを印加し、パス領域52bのソルダーレジストを付着させるべき領域にソルダーレジストを吐出する。パス領域52bの配線領域51部分に付着したソルダーレジストは、ノズルヘッド23に備えられた光源23cによって直ちに光硬化される。このように、ノズルヘッドがプリント配線板の一端側から他端側まで走査する主走査と、ノズルヘッドが主走査の方向と交差する方向に走査する副走査と、を繰り返し行い、プリント配線板の表面全面に描画を行う。
【0023】
このような配線領域が行列状に配置されるプリント配線板の描画操作において、ノズル配列長さLaは、通常、配線領域51の幅Lwを等分する幅にならない。そのため、プリント配線板50の表面に画定されるパス領域52a〜52dには、ノズルヘッド23の主走査方向に縦断してソルダーレジストを付着しない非付着縦断領域を含むパス領域52b,52dが存在することになる。非付着縦断領域とは、列方向に配列する配線領域群と隣接する配線領域群との間隙領域、プリント配線板の周縁領域、およびプリント配線板からはみ出して主走査されるはみ出し領域などに対応する。非付着縦断領域を含むパス領域52b,52dに描画を行う場合、ノズルヘッド23の非付着縦断領域に対応するノズル23aは、パス領域52b,52dの主走査に亘って、ソルダーレジストを吐出することはない。ここで、ノズルヘッド23に設けられた複数のノズル23aに対して、パス領域の主走査に亘ってソルダーレジストを少なくとも1回は吐出させるノズル23aの比率を、そのパス領域におけるノズルヘッドの吐出Dutyと定義する。非付着縦断領域を含まないパス領域52a,52cは、ノズルヘッド23の吐出Dutyが相対的に高く、非付着縦断領域を含むパス領域52b,52dは、ノズルヘッド23の吐出Dutyが相対的に低い。
【0024】
本発明者らの評価実験によれば、相対的に高い吐出Dutyで描画を行うパス領域52a,52cでは、1つのノズルから1回に吐出されるソルダーレジスト量が相対的に少なくなり、図3Bに示すように、プリント配線板50に形成されるソルダーレジスト層60の厚みが相対的に薄くなることがわかった。また、相対的に低い吐出Dutyで描画を行うパス領域52b、52dでは、1つのノズルから1回に吐出されるソルダーレジスト量が相対的に多くなり、図3Bに示すように、プリント配線板50に形成されるソルダーレジスト層60の厚みが相対的に厚くなることがわかった。このような現象は、ノズル23aからソルダーレジストのような比較的粘性の高い液状材料を吐出する場合であって、かつ、液状材料を供給する供給路23b(図1B)が複数のノズル23aに対して共通に設けられたノズルヘッド23を用いる場合に生じうる。
【0025】
プリント配線板に形成されるソルダーレジストの厚みは、外観品質上、均一であることが望ましい。上記の評価実験に基づけば、パス領域の幅をノズル配列長さよりも短くして配線領域の幅を等分する幅に設定し、各パス領域を描画するノズルヘッドの吐出Dutyを同程度にすることが望ましいと考えられる。各パス領域の描画を同程度の吐出Dutyで行い、各パス領域で1つのノズルから1回に吐出されるソルダーレジスト量を同程度にすることにより、プリント配線板に形成されるソルダーレジスト層の厚みを均一にすることができると考えられる。
【0026】
図4Aおよび図4Bは、プリント配線板にソルダーレジストパターンを均一に描画する様子を示す平面図および側面図である。配線領域51、およびプリント配線板に形成されるソルダーレジスト層60は、ハッチングにより示している。なお、図中のノズルヘッド23は、ノズル23aを示せるように、便宜的に、透視図として示している。本実施例では、制御装置40(図1A)は、まず、記憶装置40a(図1A)に記憶された画像データに基づいて、ノズルヘッド23の主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影したソルダーレジストを付着させるべき領域の像の連続する部分の位置、およびその長さを算出する。つまり、列方向に配列する配線領域51群のX軸上の位置、およびその幅Lwを算出する。そして、1回の主走査で描画するパス領域の幅Lpを、ノズル配列長さLaよりも短く、配線領域51の幅Lwを等分する幅に設定する。たとえば、ノズル配列長さLaが30mmであり、配線領域の幅Lwが50mmである場合、パス領域の幅Lpを50/2=25mmに設定する。
【0027】
制御装置40は、プリント配線板50に形成されたアライメントマークMを参照して、プリント配線板50の描画すべき領域の隅に配置されるようにノズルヘッド23を移動する。そして、ノズルヘッド23をプリント配線板50の一端側から他端側まで主走査する。このとき、ノズルヘッド23に配列される一端側のノズル23aから先に設定されたパス領域の幅Lpまでの範囲に含まれるノズル群からソルダーレジストを吐出させて、幅Lpを有するパス領域52eの描画を行う。なお、図中に黒塗りで示すノズルは、ノズルヘッド23に配列されたノズル23aの一端からパス領域の幅Lpまでの範囲に含まれずに、パス領域52eの主走査に亘って、ソルダーレジストを吐出しないよう制御されるノズルである。
【0028】
次に、制御装置40は、X軸方向に沿ってパス領域の幅Lpずらした位置までノズルヘッド23を副走査し、Y軸方向に沿ってプリント配線板50の一端側から他端側までノズルヘッド23を主走査する。このとき、ノズルヘッド23に配列される一端側のノズル23aからパス領域の幅Lpまでの範囲に含まれるノズル群からソルダーレジストを吐出させ、幅Lpを有するパス領域52fの描画を行う。このように、プリント配線板50のソルダーレジストを付着させるべき領域の隅にノズルヘッドを移動して、ノズルヘッドがプリント配線板の表面を走査する主走査と、ノズルヘッドが主走査の方向と交差する方向に走査する副走査と、を繰り返し行い、プリント配線板の表面全面に描画を行う。
【0029】
このような描画操作により、各パス領域におけるノズルヘッドの吐出Dutyが同程度(Lp/La)となり、各パス領域で1つのノズルから1回に吐出されるソルダーレジスト量を同程度にすることが可能となる。この結果、図4Bに示すように、プリント配線板50に形成されるソルダーレジスト層60の厚みを均一化することが可能となる。
【0030】
図5は、ノズルヘッドの主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影したソルダーレジストを付着させるべき領域の像の連続する部分、つまり配線領域の幅Lwと、ノズル配列長さLaと、ノズル配列長さLaよりも短い任意のパス領域の幅Lpと、の関係を示すダイアグラムである。配線領域の幅Lwは、たとえばノズル配列長さLaの2倍よりも大きく、3倍よりも小さい幅であるとする。パス領域の幅Lpは、(n×La)>Lw(nは自然数)の条件を満たす最小のnをn1(図中に示す関係においてn1=3)としたときのLw/n1に設定することが望ましい。なぜなら、各パス領域におけるノズルヘッドの吐出Dutyを同程度にし、かつ、最も少ない主走査の回数で幅Lwを有する配線領域全面の描画を行うことができるためである。
【0031】
ただし、パス領域の幅Lpは、配線領域の幅Lwを完全に等分する幅でなくてもかまわない。パス領域の幅LpをLaにして配線領域全面に描画を行うときのノズルヘッドの主走査の回数(図中に示す関係において3回)と、パス領域の幅LpをLaよりも短くして配線領域全面に描画を行うときのノズルヘッドの主走査の回数と、が同じ回数になる範囲で、パス領域の幅Lpを設定してもかまわない。つまり、パス領域の幅Lpは、Lw以上でn1×Laよりも短い長さをLdとしたときのLd/n1に設定してもかまわない。このようにパス領域の幅を設定することにより、パス領域の幅をノズル配列長さに設定したときよりも、各パス領域におけるノズルヘッドの吐出Dutyのバラつきを抑制することが可能である。したがって、パス領域の幅をノズル配列長さに設定したときよりも、プリント配線板に形成されるソルダーレジスト層の厚みのバラつきを抑制することが可能である。
【0032】
図6Aは、ノズルヘッドによりパス領域内に描画を行う様子を示す平面図である。実施例では、ノズルヘッドに配列された一端側のノズルからパス領域の幅Lpまでの範囲に含まれるノズル群からソルダーレジストを吐出させて、各パス領域の描画を行った。しかし、図6Aに示すように、ノズルヘッド23に配列されたノズル23aのいずれの端側にも偏らず、パス領域の幅Lpに対応するノズル群からソルダーレジストを吐出させてもよい。
【0033】
常温下において、ソルダーレジストの粘性は比較的高く、そのため、ソルダーレジストがノズルから吐出されない可能性がある。ソルダーレジストを含む液状材料は、一般的に、温度と粘性との間に正の相関関係を有する。ソルダーレジストは、ノズルから吐出しやすくするために、加熱して粘性を低下させてからノズルに供給することが好ましい。ノズルヘッドの両端付近に配置されるノズルは、外気によって温度が低下しやすいため、ソルダーレジストの粘性が増加しやすい。ノズルヘッドに設けられたノズルの端部と中央付近とでソルダーレジストの粘性が異なると、1回に吐出されるソルダーレジスト量が異なり、プリント配線板に形成される材料層の厚みが均一にならない可能がある。したがって、ノズルヘッドに設けられるノズルのいずれの端側にも偏らない、温度的に安定したノズル群により描画を行うことが好ましいであろう。具体的には、ノズルヘッドに設けられるノズルの端部からノズル配列長さの2〜3%を除くノズル群を用いることが望ましい。
【0034】
また、プリント配線板に描画すべきパターンのX軸方向の解像度を向上させるために、ノズルヘッドをX軸方向にずらして複数回の走査を行ってもかまわない。図6Aに示すように、Y軸方向にノズルヘッド23の走査を行い、そのノズルヘッド23の走査位置に対して、X軸方向にノズル23aのピッチPよりも短い距離、たとえばP/2ずらした位置で再度Y軸方向にノズルヘッド23の走査を行う。このとき、パス領域52eに描画されるX軸方向の解像度は、ノズルヘッド23の分解能のおよそ2倍となる。このような描画操作により、1つのパス領域に描画すべきパターンのX軸方向の解像度を容易に向上させることが可能となる。なお、このような描画操作において、ノズルヘッドの主走査は、Y軸方向への走査、およびノズルピッチよりも短いX軸方向への走査を含み、ノズルヘッドの副走査は、ノズルピッチ以上のX軸方向への走査を含む。また、パス領域の幅は、Y軸方向への1回目の走査においてソルダーレジストを吐出するX軸負方向最端部のノズル23aから、2回目の走査においてソルダーレジストを吐出するX軸正方向最端部のノズル23aまでの幅である。
【0035】
図6Bは、実施例によるノズルヘッドの変形例を示す底面図である。ノズルヘッドは、ノズルが千鳥状に配置された構成であってもかまわない。複数のノズル23aは、たとえばY軸負方向とY軸正方向とに1列ずつ、計2列のノズル列23I,23IIを構成する。各ノズル列23I,23IIを構成するノズル23aは、X軸方向にピッチPで配置される。一方のノズル列23Iを構成するノズル23aは、他方のノズル列23IIを構成するノズル23aに対して、X軸方向にP/2ずらして配置される。ノズルヘッド23をこのような構成にすることにより、ノズル23aにソルダーレジストを供給する供給機構やピエゾ素子の寸法・レイアウトなどの制約を受けることなく、X軸方向の分解能を容易に増加することが可能である。なお、このとき、ノズル配列長さLaは、ノズル列23IのX軸正方向最端部のノズルから、ノズル列23IIのX軸負方向最端部のノズルまでの長さである。
【0036】
以上、実施例を用いて本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。たとえば、プリント配線板は、複数の配線領域を含む構成でなく、単一のレジストパターンを含む構成であってもよい。そのほか、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0037】
21 フレーム
21a,b 支柱、
21c 梁、
22 保持機構、
22a チャックプレート、
22θ θステージ、
22x xステージ、
22y yステージ、
23 ノズルヘッド、
23a ノズル、
23I,II ノズル列、
23b 供給路、
23c 光源、
30 CCDカメラ、
40 制御装置、
40a 記憶装置、
50 描画対象物、
51 配線領域、
52 パス領域、
60 材料層、
F 吐出周波数、
La ノズル配列長さ、
Lw 配線領域幅、
Lp パス領域幅、
M アライメントマーク、
P ノズルピッチ、
V 電圧、
S 吐出周期、
T 時間、
Vh 電圧パルス高さ、
Pw 電圧パルス幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持機構と、
前記保持機構に保持された基板に向けて絶縁性液状材料を吐出し、絶縁性液状材料を前記基板に付着させることによって描画を行う複数のノズル、および該複数のノズルに絶縁性液状材料を供給する供給路が設けられたノズルヘッドと、
前記保持機構を移動させることによって、該保持機構に保持される基板を前記ノズルヘッドに対して第1の方向に走査する主走査と、前記第1の方向と交差する第2の方向に走査する副走査と、を行う移動機構と、
前記基板に描画すべきパターンを定義する画像データを記憶し、前記画像データに基づいて、前記移動機構および前記ノズルヘッドを制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のノズルは前記第2の方向に配列され、該第2の方向の一端側のノズルから他端側のノズルまでのノズル配列長さをLaとし、
前記基板に描画すべきパターンの絶縁性液状材料を付着させるべき領域を、前記第1の方向に直交する仮想直線上に垂直投影した像の連続する部分の長さをLwとしたとき、
前記制御装置は、前記基板の1回の主走査で描画されるパス領域の幅を、前記像の連続する部分の長さLwに基づいて、前記ノズル配列長さLaよりも短いLpに設定し、前記基板を主走査しながら前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させて、前記パス領域内に描画を行う描画装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記パス領域の幅をLpに設定して、前記像の連続する部分に対応する前記基板の表面に描画を行う場合の前記基板の主走査の回数が、前記パス領域の幅をLaに設定して、前記像の連続する部分に対応する前記基板の表面に描画を行う場合の前記基板の主走査の回数と同じ回数になる範囲で前記パス領域の幅Lpを設定する請求項1記載の描画装置。
【請求項3】
nを任意の自然数とし、(n×La)>Lwの条件を満たす最小のnをn1とし、Lw以上でn1×Laよりも短い長さをLdとしたとき、
前記制御装置は、前記パス領域の幅Lpを、Ld/n1に設定する請求項1記載の描画装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記パス領域に向けて絶縁性液状材料を吐出させるノズル群を、前記ノズルヘッドに設けられた複数のノズルのいずれの端側にも偏らないよう選択する請求項1〜3いずれか1項記載の描画装置。
【請求項5】
絶縁性液状材料を吐出する規則的に配列された複数のノズル、および該複数のノズルに絶縁性液状材料を供給する供給路が設けられたノズルヘッドにより、基板の表面を走査する主走査と、該主走査と交差する方向に走査する副走査と、を行いながら、前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させ、該液状材料で前記基板に描画を行う描画方法であって、
前記規則的に配列された複数のノズルの一端側のノズルから他端側のノズルまでのノズル配列長さをLaとし、
前記基板に描画すべきパターンの絶縁性液状材料を付着させるべき領域を、前記主走査方向に直交する仮想直線上に垂直投影した像の連続する部分の長さをLwとしたとき、
前記ノズルヘッドの1回の主走査で描画されるパス領域の幅を、前記像の連続する部分の長さLwに基づいて、前記ノズル配列長さLaよりも短いLpに設定し、前記ノズルヘッドを主走査させながら前記ノズルから絶縁性液状材料を吐出させて、前記パス領域内に描画を行う描画方法。
【請求項6】
前記パス領域の幅をLpに設定して、前記像の連続する部分に対応する前記基板の表面に描画を行う場合の前記ノズルヘッドの主走査の回数は、前記パス領域の幅をLaに設定して、前記像の連続する部分に対応する前記基板の表面に描画を行う場合の前記ノズルヘッドの主走査の回数と同じである請求項5記載の描画方法。
【請求項7】
前記パス領域の幅Lpは、nを任意の自然数とし、(n×La)>Lwの条件を満たす最小のnをn1とし、Lw以上でn1×Laよりも短い長さをLdとしたときのLd/n1である請求項5記載の描画方法。
【請求項8】
前記パス領域に向けて絶縁性液状材料を吐出させるノズル群は、前記ノズルヘッドに設けられた複数のノズルのいずれの端側にも偏らない請求項5〜7いずれか1項記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30506(P2013−30506A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163460(P2011−163460)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】