説明

揚力支援装置のための駆動システムおよびそのシステムにおいて用いられるローラーベアリング

【課題】厳しい条件下において用いられる改善されたベアリングを提供する。
【解決手段】駆動システムは、揚力支援装置に回転可能に取り付けられたトラックと、飛行制御信号に応じて回転し揚力支援装置を展開もしくは収納させるシャフトと、アーチ状の経路に沿って収納位置と展開位置との間で揚力支援装置を移動させる手段と、複数のトラックローラーベアリングおよび複数の側面ローラーベアリングを備える。ローラーベアリングはトラックに回転可能に接触し、トラックをアーチ状の経路に沿ってガイドする。トラックローラーベアリングは、外側リングと、分割内側リングと、外側リングおよび内側リングのベアリング表面間に配置されたライナーとを有している。分割内側リングは、トラックに近接するトラックローラーベアリングに取り付けられた取付ピンのたわみと屈曲を緩和するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厳しい条件下において用いられるローラーベアリングアセンブリに関し、より詳しくは、航空機アセンブリの駆動システムにおいて用いられる改善されたローラーベアリングアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
機械アセンブリの可動部品間の摩擦を低減するためにベアリングを用いることはよく知られている。同様に、第一の構成部を第二の構成部から伸張させるために、固定トラックの上で回転するベアリングを用いることはよく知られている。航空機の翼において、そのようなトラック型のベアリングの一実施例が利用されている。例えば、固定翼を持つ航空機は、通常、各々の翼の前縁部に沿って可動するように設けられたスラットと、各々の翼の後縁部に沿って可動するように設けられたフラップを有している。スラットとフラップを選択的に伸張、収縮および屈曲することにより、翼上の航空力学的な流れの条件が影響を受け、離陸時において翼により生じる揚力が増加したり、着陸時において揚力が減少したりする。例えば、離陸時においては、翼の有効翼弦距離が伸びるように前縁部のスラットが前方に移動し、揚力が増加する。飛行中は、前縁部のスラットと、後縁部のフラップは収縮位置に維持され、航空力学的な条件が最適化される。
【0003】
一般的に言えば、前縁部のスラットのデザインには、離陸および着陸における遅い速度において揚力を増加させるために前縁部のスラットを伸張する固定トラックをガイドする一連のローラー型ベアリングが用いられる。トラックには、例えば一般的なI形梁やPI形梁の形状などの多重構造が採用可能である。トラックそのものは通常、それらの構造において過度に頑強ではないので、多重負荷条件を満たすためにはトラック型ローラーベアリングが必要となる。同様に、側面荷重のローラーやピンは、通常、主要ローラーがトラック上の中心線上に位置するように、トラックに対しスライドする。翼はまた、スラットとフラップの位置決めを行うための駆動システムを有している。駆動システムは、例えば駆動モーター(油圧モーターや電動式モーターなど)、ドライブシャフト、そして、スラットやフラップの展開および収納を助ける球状ベアリング、軸受筒、連結ベアリング等の様々なベアリングを有している。好ましいことに、エンジニア達が航空機の性能の向上とともにシステムの機能の増加を追求しているため、航空機の翼のデザインは絶え間なく発展している。新しいデザインにおいては、翼の内部に配置されるシステムの数が増加する傾向にある。従って、翼の内部の空間は貴重である。そして、翼の内部の構成部の性能特性を向上すること(例えば、メインテナンスの減少)と、そのような構成部に要する空間を最小化することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、おしなべて言えば、厳しい条件下において用いられる改善されたベアリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一実施例として、航空機の翼の揚力支援装置を展開および収納するための駆動システムを提供する。駆動システムは、揚力支援装置に旋回可能に取り付けられたトラックと、揚力支援装置の展開もしくは収納を指示する飛行制御信号に応じて回転するシャフトと、揚力支援装置をアーチ状の経路に沿って収納位置と展開位置との間で作動させる手段と、複数のトラックローラーベアリングと、複数の側面ローラーベアリングとを備える。ローラーベアリングは回転可能にトラックに接し、アーチ状の経路に沿ってトラックをガイドする。一実施形態において、トラックローラーベアリングは、外側リングと、分割内側リングと、外側リングおよび内側リングのベアリングの表面間に配置されたライナーを備える。分割内側リングは、トラックローラーベアリングをトラック近くに取り付けるための取り付けピンのたわみおよび屈曲を緩和するように構成されている。他の実施形態において、トラックローラーベアリングは外側案内溝と、内側案内溝と、針状ころ部を備える。
【0006】
一実施形態において、駆動手段は、トラックに連結されるギアトラックと、シャフトに連結されるピニオンギアを有する。ピニオンギアはギアトラックと噛み合う歯を持っている。シャフトが第一の方向に回転すると、ピニオンギアはギアトラックと噛み合って回転し、揚力支援装置をアーチ状の経路に沿って収納位置から展開位置まで移動させる。シャフトが第二の方向に回転すると、ピニオンギアはギアトラックと噛み合って回転し、揚力支援装置をアーチ状の経路に沿って展開位置から収納位置まで移動させる。他の実施形態において、駆動手段は、トラックに取り付けられた駆動アームと、シャフトおよび駆動アームに取り付けられた駆動レバーとを備える。シャフトが第一の方向に回転すると、駆動レバーは駆動アームを駆動して、トラックおよび揚力支援装置をアーチ状の経路に沿って収納位置から展開位置まで移動させる。シャフトが第二の方向に回転すると、駆動レバーは駆動アームを駆動して、トラックおよび揚力支援装置をアーチ状の経路に沿って展開位置から収納位置まで移動させる。
【0007】
さらに他の実施形態において、複数のトラックローラーベアリングの各々は、内側ベアリング面を有する外側リングと、各々が外側ベアリング面を有する第一の部分および第二の部分を持つ内側分割リングと、外側リングの内側ベアリング面と内側リングの外側ベアリング面との間に配置された複数のライナーとを備える。内側リングの各々は17−4PH鋼でできており、外側リングの各々はAISIのタイプ422ステンレス鋼でできている。一実施形態において、外側リングの各々は、特定の窒化硬化処理の施されたAISIのタイプ422ステンレス鋼でできている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、前縁部に複数のスラットパネルが配置されている様子を示した、航空機の翼の平面図である。
【図2】図2は、展開位置と収納位置の各々に位置するスラットパネルの1つを示した、線2−2に沿って切断した場合の図1の翼を側方から見た断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるスラットパネルのための駆動システムを示した、翼部分を前面から見た部分的な断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるトラックローラーベアリングの断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる側面ガイドローラーベアリングを示した、翼部分を前面から見た部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、航空機8の翼10の前縁部12の平面図を示している。翼10は、翼10の前縁部12の前方に向かい展開する複数のスラットパネル20を備えている。以下に説明するように、駆動システムは、この技術分野において一般的に知られているように、飛行制御信号に応じて、前縁部12に対し選択的にスラットパネル20を伸張および収縮する。図2は、図1の線2−2に沿って切断した翼10の部分的な断面図であり、収縮位置20’および伸張位置20’’に位置している前縁部のスラット20の一つを示している。図2に示されるように、収縮位置(すなわち、飛行中の位置)において、スラット20’は翼10の前縁部12に寄り添う位置にあり、展開位置(すなわち、離陸時および着陸時の位置)において、スラット20’’は翼10の前縁部12から下方および前方に離れるように展開し、その結果、翼10の表面部が広がり、翼の揚力が増加するようにその特性に変化を与える。
【0010】
各スラット20の駆動システム40は、後方部分52から前方部分54に至るアーチ状の軸Aに沿って伸びるトラック50を備えている。好ましい態様において、トラック50は、例えばI形梁やPI形梁といった多重構造を備えていてもよい。一般的に言えば、トラックの支持部材を構成する網目材は過度に頑強ではない。そのため、動作中にトラックにおいて生じる様々な荷重状況は、ローラー型のベアリングにより、本願において説明されるように、例えば航空機の翼構造に対し伝達され配分される必要がある。
【0011】
図2に示されるように、トラック50の前方部分54はスラット20の内側面に枢動可能に取り付けられている。一実施形態において、トラック50は、例えば連結ベアリング60によりスラット20に取り付けられている。駆動システム40はまた、駆動レバー70を備えている。駆動レバー70は駆動アーム80を介してトラック50に取り付けられている。駆動レバー70はまた、シャフト90にも取り付けられている。この技術分野において一般的に知られているように、シャフト90は飛行制御指示に応じて翼10の前縁部12から前方へと伸張し、複数のスラットパネル20の各々に一つずつ取り付けられた複数の駆動レバー(レバー70と同様のもの)を動かし、第1の方向に回転する時はスラットを伸張させ、第2の方向に回転する時はスラット20を収縮させる。
【0012】
トラック50の第1の外側表面56と第2の外側表面58の付近には、複数のトラックローラーベアリング100が配置されている。トラックローラーベアリング100はトラック50の外側表面56および58と回転可能に接触し、展開および収納が行われる間、軸Aに沿ったアーチ状の経路にトラック50をガイドする。スラット20の移動経路は図2において矢印Bにより示されている。図2に示されるように、複数のトラックローラーベアリング100には、トラックローラーベアリング102および104からなる第1の組と、トラックローラーベアリング106および108からなる第2の組とが含まれる。ローラーベアリングの組の数が図示される2組より多い場合、少ない場合のいずれも、本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。例えば、3つのローラーベアリングがトラック50の第1の外側表面56および第2の外側表面58のいずれかの一方もしくは両方の付近に配置されてもよい。以下に詳しく述べるように、複数のトラックローラーベアリング100が、回転部分が針状ころ型であるトラックローラーや、自己潤滑性のトラックローラーを含む態様も本発明の範囲に含まれる。一実施形態において、取付用網目材110は、少なくともトラック50の一部を構成している。また、一実施形態において、取付用網目材110は航空機の翼の内部に配置される燃料タンクの中側に伸張している。
【0013】
図3に示される位置実施形態において、駆動システム40はトラック50の内側部分53に配置されたギアトラック130を駆動する歯122を有するピニオンギア120を備えている。好ましくは、ギアトラック130はトラック50の垂直方向の中心線55上に配置される。ピニオンギア120は飛行制御指示に応じて回転するシャフト124(例えば、シャフト90など)に取り付けられている。シャフト124およびピニオンギア120が回転すると、ギアトラック130に駆動力が加えられ、収縮位置20’と伸張位置20’’(図2)の一方から他方を結ぶ軸Aに沿って、トラック50を移動させる。図3に示されるように、トラックローラーベアリング100はトラック50付近において取付用網目材110に取り付けられている。例えば、図3に示されるように、トラックローラーベアリング100はトラック50の上側において取付用網目材110に取り付けられている。
【0014】
図2に示されるように、複数のトラックローラーベアリング100はトラック50の第1の外側表面56および第2の外側表面58の付近において取付用網目材110に取り付けられ、展開および収納が行われる間、トラック50を支持しガイドする。図3に示される一実施形態において、トラックローラー100は、対向軸受筒140と、取付ピン150と、ナット160とにより取付用網目材110に取り付けられている。また、一実施形態において、対向軸受筒140は偏心軸受筒により構成され、ナット160は菊ナットで構成され、トラック50の取付位置が調整可能である。図3に示されるように、トラックローラーベアリング100は複数の針状ころ部103(例えば、2本の溝に2列の針状ころを配置したデザインのもの)を備えている。針状ころ部103には、予め定められたメインテナンス手順の要求に応じて、例えば、エアロシェル33、モービル28、エアロスペック200、エアロプレックス444といった潤滑油が注油される。一実施形態において、トラックローラーベアリング100の外側リング105、内側リング107、そして針状ころ部103は、例えば、特定の窒化処理(例えば、エアロクレス(登録商標)処理)(「エアロクレス」は、RBC・エアクラフト・プロダクト・インク、米国、コネチカット州、オックスフォードの登録商標)の施された440C、52100、422ステンレス、XD−15NW、クロニジュール30といった、強化処理のされたステンレス鋼でできている。
【0015】
図4に示される他の実施形態において、トラックローラーベアリング100は、外側リング210と内側リング220とを有する列状トラックローラーアセンブリ200を備えている。内側リング220は第1部分230と第2部分240とからなる分割リングである。一実施形態において、第1部分230および第2部分240は、各々、本体部分232もしくは242と、ヘッド部分234もしくは244とを有する。ヘッド部分234および24は、各々、フランジ236もしくは246を有する。本発明によれば、第1部分230と第2部分240からなる分割リングは、一方が他方に対しずれる特性により、例えば航空機の離陸や着陸の間に生じる荷重から引き起こされる可能性のある取付ピン150のたわみや屈曲を緩和する。好ましい態様において、もし取付ピン150の屈曲対策がなされなければ、トラックローラー100もしくは200に強い摩擦や結合が生じ、飛行制御指示に応じたスラットの展開や収納が行われなくなる。フランジ236および246は、取付用網目材110においてトラックローラー100および200の取り付けに用いられる外側リング210と、対向軸受筒140とが、実質上接触しないように、外側リング210の軸方向の動きを制御する。
【0016】
図4に示されるように、列状トラックローラーアセンブリ200は外側リング210のベアリング面212もしくは214と、内側リング220のベアリング面222、224、226、もしくは228との間に配置されたライナー250を備えてもよい。一実施形態において、ライナー250はポリテトラフルオロエチレン(商業上、テフロン(登録商標)(「テフロン」は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー、米国、デラウェア州、ウィルミントンの登録商標)の名称で入手できる)、ポリエステル、グラファイト、ポリマーの含浸された繊維、ウレタン、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、もしくはその他の樹脂でできている。一実施形態において、ライナー250は型成型により作られ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリエステル、グラファイト、ポリエステルから作られた熱硬化性複合材料樹脂に浸された繊維、ウレタン、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、もしくはその他の樹脂でできている。一実施形態において、外側リング210と内側リング220は、例えば、440C、52100、カスタム455(登録商標)、カスタム465(登録商標)(「カスタム455」および「カスタム465」はCRSホールディングス・インク、米国、デラウェア州、ウィルミントンの登録商標)といった強化処理の施されたステンレス、もしくは、17−4PH、15−5PH、PH13−8Moといった耐腐食性鋼でできている。
【0017】
一実施形態において、列状トラックローラーアセンブリ200は、さらに、外側リング210の外径面の肩部216および218の付近に配置され、内側リング220の外径面223に伸びるシールド260および270を備えている。本願発明者は、シールド260および270が、外側リング210のベアリング表面212もしくは214と、内側リング220のベアリング表面222、224、226もしくは228との間における摩擦、入り口より入ってくる回転を弱まらせる埃やその他の汚染物質、そして望ましくない接触を低減させることを発見した。
【0018】
図5に示される一実施形態において、複数の側面ガイドローラーベアリング300がトラック50に対向する側面付近に配置されている。側面ガイドローラーベアリング300はトラック50の対向する側面の表面に回転可能に接触し、展開および収納が行われる間、軸Aに沿ったアーチ状の経路に配置されたトラックローラーベアリング100および200とともに、トラック50をガイドする。一実施形態において、複数の側面ガイドローラーベアリング300は、トラック50に貼り付けられた装着パッドに回転可能に接触する。一実施形態において、複数の側面ガイドローラーベアリング300は外輪および内輪と、例えば、特定の窒化処理(例えば、上述したエアロクレス(登録商標)処理)の施された440C、52100、422ステンレス、XD−15NW、クロニジュール30といった、強化処理のされたステンレス鋼でできた針状ころとを備えている。さらに他の実施形態において、側面ガイドローラーベアリング300は終端ワッシャとシールを有している。終端ワッシャは、例えば、カドミウムめっきの施された52100鋼や420ステンレス鋼等でできている。シールは、例えば、潤滑油充てん剤を伴うアセタール共重合体や、デルリン(登録商標)もしくはセルコン(登録商標)(「デルリン」は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー、米国、デラウェア州、ウィルミントンの登録商標であり、「セルコン」は、CNAホールディングス・インク、米国、ニュージャージー州、サミットの登録商標である)といった熱可塑性物質からできている。シールは潤滑油を常に保持し、汚れ、埃、その他の汚染物質がベアリング300に進入することを防ぐ。一実施形態において、ベアリング300の針状ころ部には、予め定められたメインテナンス手順の要求に応じて、例えば、エアロシェル33、モービル28、エアロスペック200、エアロプレックス444といった潤滑油が注油される。
【0019】
上述したように、ローラー型トラックベアリング100および自己潤滑型トラックローラーベアリング200はいずれも、ベアリングがその上を転がる係合トラック50と協働する硬質な外側リングもしくは案内溝を備えている。一実施形態において、トラック50はチタニウムもしくは鋼鉄でできている。一実施形態において、トラック50は、例えば、炭化タングステン等の物質でコーティングされていてもよいが、コーディングは本発明に必須の要件ではない。
【0020】
他に例をみないベアリングの取り付け構成に加え、本発明の他の側面は、ベアリングの製造に用いられる材料に関係する。歴史的に、列状トラックベアリングは比較的軟性の材料から製造されてきた。例えば、内側リングは、典型的には、例えば、ロックウェル硬さが約30s HRcから約40s HRcの範囲内である17−4PH鋼等のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼でできており、一方、外側リングは、典型的には、例えば、ロックウェル硬さが約40s HRcであるカスタム455鋼等の析出硬化型ステンレス鋼でできている。外側リングは、起こりうる変形による扁平化を回避するため、ロックウェル硬さが約50s HRcである高強度鋼から製造されてもよい。440C鋼もまた、外側リングに使用される。本願発明者は、いくつかの用途において、17−4PH鋼から製造された内側リングを用いるとよく、また、AISIタイプ422ステンレス鋼の外側リングを用いると望ましいことを発見した。一実施形態において、外側リングの各々は、特定の窒化硬化処理(例えば、上述したエアロクレス(登録商標)処理)の施されたAISIタイプ442ステンレス鋼でできている。エアロクレス(登録商標)硬化処理の施されたAISIタイプ422ステンレス鋼でできた外側リングは、440C鋼で製造された通常の外側リングと比較し、優れた耐腐食性と性能を示し、望ましい。
【0021】
本発明を、その具体的な実施形態を用いて説明したが、この技術分野の通常の技能・知識を有する者が上記の開示内容を読んで理解する際に、開示されている実施形態に対し様々な変形および代替を行ったものもまた、本発明および添付の請求の範囲の技術的思想および技術的範囲に含まれるものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0022】
8 航空機
10 翼
12 前縁部
20 スラット
50 トラック
52 後方部分
53 内側部分
54 前方部分
56 第1の外側表面
58第2の外側表面
60 連結ベアリング
70 駆動レバー
80 駆動アーム
90 シャフト
100 トラックローラーベアリング
102 トラックローラーベアリング
103 針状ころ部
104 トラックローラーベアリング
105 外側リング
106 トラックローラーベアリング
107 内側リング
110 取付用網目材
120 ピニオンギア
122 歯
124 シャフト
130 ギアトラック
140 対向軸受筒
150 取付ピン
160 ナット
200 列状トラックローラーアセンブリ
210 外側リング
212 ベアリング表面
214 ベアリング表面
216 肩部
218 肩部
220 内側リング
222 ベアリング表面
223 外径面
224 ベアリング表面
226 ベアリング表面
228 ベアリング表面
230 第1部分
232 本体部分
234 ヘッド部分
236 フランジ
240 第2部分
242 本体部分
244 ヘッド部分
246 フランジ
250 ライナー
260 シールド
270 シールド
300 側面ガイドローラーベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の翼の揚力支援装置を展開および収納するための駆動システムであって、
第1の外側面および第2の外側面と複数の側面とを有し、前記揚力支援装置に枢動可能に取り付けられたトラックと、
前記航空機の前記翼の内部に回転可能に取り付けられ、飛行制御信号に応じて、前記揚力支援装置を展開もしくは収納するためのシャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、アーチ状の経路に沿って収納位置と展開位置との間で前記揚力支援装置を移動する手段と、
前記トラックの前記第1の外側面および前記第2の外側面に回転可能に接触し、前記アーチ状の経路に沿って前記トラックをガイドする複数のトラックローラーベアリングと、
前記トラックの少なくとも1つの側面に回転可能に接触し、前記アーチ状の経路に沿って前記トラックをガイドする複数の側面ローラーベアリングと
を備える駆動システム。
【請求項2】
前記移動する手段は、
前記トラックに取り付けられたギアトラックと、
前記ギアトラックと係合する複数の歯車の歯を有し、前記シャフトに取り付けられたピニオンギアと
を備え、
前記シャフトが第1の方向に回転すると、前記ピニオンギアが前記ギアトラックと係合し、前記揚力支援装置を前記アーチ状の経路に沿って前記収納位置から前記展開位置へと移動させ、前記シャフトが第2の方向に回転すると、前記ピニオンギアが前記ギアトラックと係合し、前記揚力支援装置を前記アーチ状の経路に沿って前記収納位置から前記展開位置へと移動させる
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記移動する手段は、
前記トラックに取り付けられた駆動アームと、
前記シャフトと前記駆動アームとの各々に取り付けられた駆動レバーと
を備え、
前記シャフトが第1の方向に回転すると、前記駆動レバーが前記駆動アームを押し、前記トラックおよび前記揚力支援装置を前記アーチ状の経路に沿って前記収納位置から前記展開位置へと移動させ、前記シャフトが第2の方向に回転すると、前記駆動レバーが前記駆動アームを押し、前記トラックおよび前記揚力支援装置を前記アーチ状の経路に沿って前記展開位置から前記収納位置へと移動させる
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記複数のトラックローラーベアリングは、前記トラックの上面に回転可能に接触する少なくとも1のトラックローラーベアリングと、前記トラックの下面に回転可能に接触する少なくとも1のトラックローラーベアリングとを含む
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記トラックの少なくとも一部を取り囲む取付用網目材を備え、
前記複数のトラックローラーベアリングは、前記取付用網目材に取り付けられている
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項6】
前記複数のトラックローラーベアリングは、対向軸受筒と、取付ピンと、ナットとによって、前記取付用網目材に取り付けられている
請求項5に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記対向軸受筒は偏心軸受筒で構成され、前記ナットは菊ナットで構成され、前記トラックの取付位置が調整可能である
請求項6に記載の駆動システム。
【請求項8】
前記複数のトラックローラーベアリングは、少なくとも1の針状ころ部を有するトラックローラーベアリングと、少なくとも1の列状トラックローラーアセンブリを含む
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項9】
前記複数のトラックローラーベアリングは、少なくとも1の列状トラックローラーアセンブリを含み、
前記列状トラックローラーアセンブリは、
内側ベアリング面を有する外側リングと、
外側ベアリング面を有する第1部分と外側ベアリング面を有する第2部分とで構成される内側分割リングと
を備え、
前記分割内側リングは、前記列状トラックローラーアセンブリを前記トラックに取り付ける取付ピンのたわみと屈曲を緩和する
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項10】
前記外側リングの前記内側ベアリング面と、前記分割内側リングの前記外側ベアリング面との間に配置された複数のライナーを備える
請求項9に記載の駆動システム。
【請求項11】
前記ライナーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、グラファイト、ポリマーの含浸された繊維、ウレタン、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のうちの少なくとも1つを材料としている
請求項10に記載の駆動システム。
【請求項12】
前記ライナーは型成型により作られ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、グラファイト、ポリエステルから作られた熱硬化性複合材料樹脂に浸された繊維、ウレタン、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のうちの少なくとも1つを材料としている
請求項10に記載の駆動システム。
【請求項13】
前記外側リングの肩部付近に配置され、前記内側分割リングの外径面へと伸びる複数のシールドを備える
請求項10に記載の駆動システム。
【請求項14】
前記内側分割リングの前記第1部分および前記第2部分の各々は、本体部分とヘッド部分とを備え、前記ヘッド部分の各々は前記外側リングの軸方向の動きを制限するためのフランジを有する
請求項9に記載の駆動システム。
【請求項15】
前記複数のトラックローラーベアリングの各々は、
内側ベアリング面を有する外側リングと、
外側ベアリング面を有する第1部分と外側ベアリング面を有する第2部分とで構成される内側分割リングと、
前記外側リングの前記内側ベアリング面と、前記分割内側リングの前記外側ベアリング面との間に配置された複数のライナーと
を備え、
前記分割内側リングは17−4PH鋼を材料とし、前記外側リングは特定の窒化硬化処理の施されたAISIタイプ422ステンレス鋼を材料とする
請求項1に記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137574(P2009−137574A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−302409(P2008−302409)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507080950)ローラー ベアリング カンパニー オブ アメリカ インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Roller Bearing Company of America, Incorporated
【住所又は居所原語表記】United States of America 06478 Connecticut, Oxford, One Tribology Center
【Fターム(参考)】