説明

揺動ミラー構造及びバーコード読取装置

【課題】バーコード読取装置に用いられるミラー面を有した揺動体の共振周波数を、容易に所望の大きさに調整できるようにする。
【解決手段】バーコード読取装置101の内部には、ミラー面209を有する揺動体203が揺動自在に設置されている。揺動体203の下面には、磁石体と鉄体とが取り付けられ、ミラー面209の面方向に揺動体203の揺動軸を跨いで循環する磁気回路を形成している。揺動体203の下方には、磁気回路に直交させてコイルが離反して配置されている。所定周期で電流方向を反転させてコイルに通電がなされると、磁石体や鉄体は電磁相互作用により上下方向に変位し、揺動体203が揺動する。磁石体や鉄体は、その重心位置が揺動体203の揺動中心位置の近傍に位置付けられ、揺動体203が揺動しても、磁石体及び鉄体は揺動体203の共振周波数に大きな影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動するミラー面を有しバーコード検出光を様々な向きに反射する揺動ミラー構造、及び、この揺動ミラー構造を用いてバーコード検出光をバーコードに照射し走査を行うバーコード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットなどの量販店には、商品に付されたバーコードを読み取るバーコード読取装置が導入され、販売時点管理業務等に利用されている。そして、多くのバーコード読取装置では、ミラー面が様々な方向に向くポリゴンミラーやガルバノミラーを用いてバーコード検出光を様々な方向に進行させ、より広い範囲でバーコードを読み取ることができるようになっている。例えば、特許文献1には、複数のミラー面を側部に有しモータ駆動により回転する回転体と、ミラー面を上面に有して揺動する揺動体とを備えたバーコード読取装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のバーコード読取装置901について、図13及び図14に基づいて説明する。バーコード読取装置901の本体ケース902の上面には読取窓903が設けられ、また、本体ケース902の内部には光源904が配置されている。光源904から発せられたバーコード検出光905は、レンズ906によって集光され、回転体908のミラー面907と揺動体909のミラー面909aとを経て読取窓903を通過し、バーコード910を照射する。バーコード検出光905は、バーコード910で反射し、読取窓903を通過し、集光ミラー911を経てバーコード検出光受光素子912に入射する。バーコード検出光受光素子912は、受光したバーコード検出光905に応じたバーコード検出信号を出力し、各部を制御する制御部951に入力する。制御部951は、デジタル回路により構成されていて、このバーコード検出信号に基づくバーコード情報を生成し、バーコード読取装置901に接続する情報処理装置(図示せず)にバーコード情報を出力する。
【0004】
ここで、揺動体909について、図14に基づいて説明する。揺動体909は、軸支持部913に取り付けられた揺動軸913aに揺動自在に保持され、一端側の下面には引張バネ914(図13参照)が、他端側の下面には永久磁石915がそれぞれ取り付けられている。永久磁石915に対向する本体ケース902の内側面には、電磁コイル等で形成された電磁石916が取り付けられている。
【0005】
制御部951は、モータを制御して回転体908を回転させる。また、制御部951は、電磁石916に対し電流方向を所定周期で反転させて通電を行う制御を行って、永久磁石915を電磁石916に対し引斥させて揺動体909を揺動させる。回転体908の回転や揺動体909の揺動の結果、バーコード検出光905は様々な方向(a,b,c,a’,b’,c’)に進行する。
【0006】
【特許文献1】特開平10−293808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のバーコード読取装置では、揺動体のミラー面を少ない消費電力で揺動させ変位角を大きくするために、揺動軸に板バネやシリコン等の弾性部材を取り付けてバネ定数を調整し、揺動体の共振周波数を所望の大きさに調整した上で、電磁石の通電方向を切替えて揺動体を振動させることが行われている。しかしながら、特許文献1に記載のバーコード読取装置のように、揺動体の揺動軸から離れた位置に永久磁石が取り付けられている場合、その取付位置や永久磁石の個体差(寸法及び重量)のバラつきによって揺動体の共振周波数を大きく変化させてしまう。このため、揺動軸に弾性部材を取り付けてバネ定数を変化させ揺動体の共振周波数を所望の大きさに調整することが難しくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、バーコード読取装置に用いられるミラー面を有した揺動体の共振周波数を、容易に所望の大きさに調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の揺動ミラー構造は、ミラー面を表側に有し、当該ミラー面が形成するXY平面方向のY方向中央でX方向に延びる揺動軸を中心に揺動する揺動体と、前記揺動軸を含むZ方向に延びる仮想面に重心位置を一致させて前記揺動体に取り付けられ、当該仮想面を跨いで循環する磁気回路をXY平面方向に形成する磁気回路形成部と、前記揺動体から離反して配置され、前記磁気回路をY方向に貫通する電流路を形成する導電体と、を備える。
【0010】
本発明のバーコード読取装置は、バーコード検出光を発する光源と、前記バーコード検出光の照射位置に位置付けられるミラー面を表側に有し、当該ミラー面が形成するXY平面方向のY方向中央でX方向に延びる揺動軸を中心に揺動する揺動体と、前記ミラー面で反射しバーコードに照射されて反射したバーコード検出光を受光しバーコード検出信号を出力するバーコード検出光受光素子と、各部を制御する制御部と、前記制御部が、前記バーコード検出信号に基づくバーコード情報を出力する手段と、重心位置を前記揺動軸からZ方向に延びる仮想面と一致させて前記揺動体に取り付けられ、XY平面方向に当該仮想面を跨いで循環する磁気回路を形成する磁気回路形成部と、前記揺動体から離反して配置され、前記磁気回路をY方向に貫通する電流路を形成する導電体と、前記制御部が、電流方向を所定周期で反転させて前記導電体に通電を行い前記揺動体を揺動変位させる手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電流と磁気回路との電磁相互作用によって変位する磁気回路形成部は、その重心位置が揺動体の揺動軸の近傍に位置付けられていて、揺動体の共振周波数に大きな影響を与えないため、バーコード読取装置に用いられるミラー面を有した揺動体の共振周波数を、容易に所望の大きさに調整できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、図1ないし図12に基づいて説明する。
【0013】
図1は、バーコード読取装置101の一部を透視した斜視図である。バーコード読取装置101の本体ケース102の上面には読取窓103が設けられている。また、本体ケース102の内部には光源104が配置されている。光源104から発せられたバーコード検出光105は、レンズ106によって集光され、回転体108のミラー面107と、揺動ミラー構造201を構成する揺動体203のミラー面209とを経て読取窓103を通過し、バーコード110を照射する。バーコード検出光105は、バーコード110で反射し、読取窓103を通過し、集光ミラー111を経てバーコード検出光受光素子112に入射する。バーコード検出光受光素子112は、受光したバーコード検出光105に応じたバーコード検出信号を出力する。
【0014】
図2は、バーコード読取装置101の縦断側面図である。バーコード読取装置101は、揺動ミラー構造201を備える。この揺動ミラー構造201は、本体ケース102の内部の底面に取り付けられていて、軸体212の軸回り方向に揺動自在になっている揺動体203を備えて構成されている。揺動体203は、上面にミラー面209を有し、コイル216(図3参照)に通電がなされることで揺動軸となる軸体212を中心に回転して変位する。
【0015】
バーコード読取装置101は、各部を制御する制御部301を備えている。制御部301は、デジタル回路301a(図9参照)によって構成されている。制御部301は、バーコード検出光受光素子112から入力されたバーコード検出信号に基づいてバーコード情報を生成し、バーコード読取装置101に接続する情報処理装置(図示せず)に生成したバーコード情報を出力する。
【0016】
制御部301は、モータ302(図9参照)を制御して回転体108を回転させる処理と、切替スイッチ218(図9参照)を制御してコイル216に対し電流方向を所定周期で反転させて通電を行い揺動体203を揺動させる処理とを行う。回転体108が回転したり揺動体203が揺動したりすることによって、バーコード検出光105は様々な方向(a,b,c,a’,b’,c’)に進行する。
【0017】
ここで、揺動ミラー構造201の構造の詳細について、図3ないし図8に基づいて説明する。なお、図3及び図4では、揺動体203が揺動して平板部材207が変位した様子を点線にて示しているが、実際には、平板部材207だけでなく、支持体208も揺動している。
【0018】
図3は、揺動ミラー構造201の外観斜視図である。揺動ミラー構造201は、基部202に揺動体203が揺動自在に取り付けられて構成されている。基部202は、バーコード読取装置101の本体ケース102の内側面に固定されており、平面視において矩形形状をなし、四隅のそれぞれから上方に向けて柱状部材204が突出している。図3において左下及び右上に位置する基部202の辺は短辺205をなし、図3において左上及び右下に位置する基部202の辺は長辺206をなしている。基部202の長辺206の中央から上方には、上面開口のU字孔211aが形成された軸受け部211が突出している。
【0019】
揺動体203は、平板部材207と、これを上方で支持する支持体208とにより構成されている。平板部材207は、上面にミラー面209を有し、平面視において対称な台形形状をなしている。平板部材207は、互いに平行な対辺210が基部202の短辺205と平行をなす向きに向けられている。以下、平板部材207の対辺210が向いている方向をX方向、平板部材207がなす面に沿うX方向に対する直交方向をY方向、平板部材207がなす面に対し垂直に延びる方向をZ方向として説明を進める。
【0020】
図4は、揺動ミラー構造201の正面図である。支持体208には、軸体212が、Y方向中央でX方向に貫通している。この軸体212は、ボス体225(図6に基づいて後述)を介して軸受け部211に支持されている。この揺動体203は、基部202に支持されて軸体212の軸回りに回転可能となっている。ここで、揺動体203は、コイル216(後述)に通電が行われることによって揺動する。このとき、軸体212は揺動体203の揺動軸として機能する。揺動体203の揺動に伴って、ミラー面209はシーソーのように揺れ動く。
【0021】
図5は、揺動ミラー構造201の左側面図である。支持体208の下側には、長尺状の磁石体214と、強磁性体としての二本の長尺状の鉄体215とが、いずれも長手方向をY方向に向けて取り付けられている。磁石体214の長手方向の両端はN極及びS極となっている。そして、磁石体214は、N極とS極とを結ぶ磁極方向をY方向に向けて、支持体208の下側でX方向中央に装着されて、下方に突出している。鉄体215は、磁石体214と平行になる向きに、磁石体214からX方向両側に離反する位置で支持体208の下側に装着されて、やはり下方に突出している。ここで重要なのは、磁石体214及び二本の鉄体215のいずれも、揺動軸をなす軸体212を含むZ方向に延びる仮想面213(図4)に重心位置を一致させて、支持体208に取り付けられているという点である。このように配置された磁石体214及び二本の鉄体215は、支持体208の下方で、仮想面213を跨いで循環する磁気回路B(図11参照)をXY平面方向に形成する磁気回路形成部を構成する。
【0022】
図3に基づく説明に戻る。基部202の上面で磁石体214と対面する位置には、導電体としてのコイル216が取り付けられている。コイル216は、揺動体203から離反して取り付けられて、揺動する揺動体203に干渉しないようになっている。このコイル216は、導線が筒状に巻回され、開口端から内部に磁石体214が遊びをもって挿入できる大きさに形成され、電源306(図9参照)からの給電を受けて電流が流れるものである。このコイル216は、開口部を上方に向け、磁石体214を開口部から筒状内部に挿入して導線で取り囲むように、磁石体214と鉄体215との間に位置付けて配置される。このようにコイル216が位置付けられることで、コイル216を形成する導線は、磁気回路Bと直交して磁気回路BをY方向に貫通する。この導線は、磁石体214及び鉄体215が形成する磁気回路BをY方向に貫通する電流路となる。
【0023】
基部202に突出している柱状部材204には、発光素子220と受光素子221とが設けられている。発光素子220は、柱状部材204の揺動体203を向く側面で、揺動体203が揺動して位置付けられる平板部材207の最大変位位置Dmax(図5も参照)と、基部202の底面と平行をなす平板部材207の最小変位位置Dmin(図5も参照)とのそれぞれに対応させて、X方向に揺動体検出光222を発光する向きに取り付けられている。この発光素子220は、制御部301(図9参照)の制御を受けて、揺動体検出光222を発する。受光素子221は、柱状部材204の側面で発光素子220と対向する位置に取り付けられている。受光素子221は、揺動体203が揺動して変位する平板部材207に干渉されずに基部202の上部空間をX方向に横切って到達した揺動体検出光222を受光した場合、制御部301(図9参照)に揺動体検出信号を出力する。
【0024】
図6は、揺動ミラー構造201の分解斜視図である。揺動体203を構成する支持体208の下面には、付勢体としての二つのトーションスプリング224が当接する。二つのトーションスプリング224は同じ形状のものであり、一端側は下方に延びる直線部224aをなし、途中部分は巻回されて筒状部224bとなっていて、他端側は水平に延びて水平面内でコ字形状に折り曲げられたコ字部224cとなっている。トーションスプリング224の取り付け方を含む揺動ミラー構造201の組み立て方を、以下に説明する。
【0025】
図7は、揺動体203の正面図である。支持体208の下面には、鉄体215の取付部227が下方に突出している。取付部227には、上方に向かって切り欠かれた凹部228が形成され、トーションスプリング224の筒状部224bを内在できるようになっている。そこで、作業者は、トーションスプリング224の筒状部224bをこの凹部228内に位置付け、トーションスプリング224のコ字部224cを支持体208の下面に接触させる。すなわち、コ字部224cは、揺動体203に当接する当接部をなす。
【0026】
図8は、揺動体203の一部を透視した平面図である。支持体208とトーションスプリング224との関係において重要なのは、各々のトーションスプリング224は、コ字部224cをY方向の相反する向きに向け、当接部をなすコ字部224cを揺動軸をなす軸体212を挟みこの軸体212まで等距離にある支持体208の下面の二位置の移動軌跡上に位置付けて、基部202に取り付けられているという点である。
【0027】
図6に基づく説明に戻る。基部202に設けられた軸受け部211のU字孔211aには、ボス体225を着脱自在に取り付けることができるようになっている。このボス体225は、全体的には円筒形状をなしており、円筒側面を軸受け部211のU字孔211aの内周面に接触させて摺動回転できるようになっている。また、ボス体225は、円筒両端にフランジが設けられおり、U字孔211aに装着されても軸受け部211から脱落しないようになっている。また、ボス体225の一方のフランジからは、トーションスプリング224の筒状部224bに嵌合可能な突部225aが突出形成されている。
【0028】
そこで、作業者は、トーションスプリング224を支持体208の下面に取り付けた状態で、支持体208の側面に形成された取付用孔229の外側からボス体225の突部225aを挿入し、トーションスプリング224の筒状部224bの筒内部にボス体225の突部225aを嵌合する。続いて、作業者は、このボス体225を軸受け部211のU字孔211aに装着し、基部202の長辺206側からボス体225の筒内部に軸体212を挿通する。このとき、作業者は、各トーションスプリング224の直線部224aを基部202の底面に設けられた嵌合孔226に挿入して、コ字部224cに力が加えられてもトーションスプリング224が回転しないようにする。このように軸体212が支持体208の取付用孔229に挿通されて支持体208をX方向に貫通することで、揺動体203は、基部202に接続され、軸体212を中心に回転自在となる。この状態で、作業者が取付部227の下方から鉄体215を装着することで、図3に示した揺動ミラー構造201の組み立てが完了する。
【0029】
図9は、バーコード読取装置101の電気的構成を示すブロック図である。バーコード読取装置101は、各部を制御する制御部301を構成するデジタル回路301aを備えている。デジタル回路301aは、各種の入出力回路(図示せず)を介して、光源104と、モータ302と、バーコード検出光受光素子112と、切替スイッチ218と、発光素子220と、受光素子221と、計時を行う計時回路303と、ブザー音を出力するブザー回路304とに接続している。モータ302は、ギア列(図示せず)を介して回転体108に連結しており、この回転体108を回転させる動力源となる。切替スイッチ218は、コイル216とこのコイル216に通電を行う電源306とを介在し、デジタル回路301aからの制御を受けて導線を流れる電流の向きを反転させる。
【0030】
また、デジタル回路301aは、出力インタフェイス305にも接続している。出力インタフェイス305は、バーコード読取装置101に接続されている情報処理装置(図示せず)に対する、バーコード読取装置101からのデータ出力を実現する。
【0031】
デジタル回路301aは、機器の起動中、光源104を発光駆動してバーコード検出光105を発光させたり、モータ302を駆動制御して回転体108を回転させたりしている。また、デジタル回路301aは、バーコード検出光受光素子112から入力されたバーコード検出信号に基づいてバーコード情報を生成し出力インタフェイス305を介して情報処理装置(図示せず)に出力する処理を行うよう、設計されている。さらに、デジタル回路301aは、バーコード読取装置101において、電流方向切替処理(図10参照)及び揺動状態検出処理(図12参照)を実現する。
【0032】
このように構成された本実施の形態のバーコード読取装置101において、制御部301を構成するデジタル回路301aは、光源104を発光駆動してバーコード検出光105を発光させ、バーコード検出光受光素子112が出力するバーコード検出信号に基づいてバーコード情報を生成し情報処理装置(図示せず)に出力する処理(バーコード読取処理)を実行する。このバーコード読取処理中、制御部301を構成するデジタル回路301aは、モータ302を制御して回転体108を回転させているとともに、次に述べる電流方向切替処理(図10)によって揺動体203を揺動させている。
【0033】
図10は、電流方向切替処理の流れを示すフローチャートである。すなわち、制御部301を構成するデジタル回路301aは、バーコード読取処理中に、所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS101)、所定時間が経過した場合には切替スイッチ218を作動させる(ステップS101のY、ステップS102)という制御処理を行っている。
【0034】
図11は、揺動体203が揺動する仕組みを示す模式的な平面図である。揺動ミラー構造201では、磁石体214のN極からS極に向かう向きに磁界が発生している。この磁界は、XY平面内で、磁石体214のN極から発せられ、鉄体215の一端側から入りその長手方向に他端側まで通り抜け、磁石体214のS極に入って循環するという磁気回路Bを形成している。本実施の形態では、図11(a)に示すように、磁石体214を中心にしてX方向に対称な二つの磁気回路Bが形成されている。磁石体214は、仮想面213と交差して配置されているため、磁気回路Bは仮想面213を跨いで循環する。
【0035】
コイル216を構成する導線は、図11(a)に示すように、磁気回路Bと直交しY方向に貫通している。ここで、図11(a)で示すような、コイル216に電流Iが時計回り方向に流れている瞬間について考える。この場合、図11(a)における仮想面213の左側の領域では、コイル216を構成する導線が磁気回路Bに直交方向に横切っているため、電流Iと磁気回路Bとの間の電磁相互作用によって磁石体214及び鉄体215は−Z方向に変位する。その結果、揺動体203の図11(a)における左側部分203Lは、コイル216と平板部材207が引き合うように、下方に変位する(図11(b))。一方、図11(a)における仮想面213の右側の領域では、同じくコイル216を構成する導線が磁気回路Bに直交方向に横切っているため、電流Iと磁気回路Bとの間の電磁相互作用によって、磁石体214及び鉄体215は+Z方向に変位する。その結果、揺動体203の図11(a)における右側部分203Rは、コイル216と平板部材207が斥け合うように、上方に変位する(図11(b))。ここで、電流Iの方向が反転した場合、電流Iと磁気回路Bとの間の電磁相互作用によって揺動体203は反対方向に揺動し、揺動体203の左側部分203Lは上方に、右側部分203Rは下方にそれぞれ変位する。ここで、制御部301を構成するデジタル回路301aは、図10に基づいて前述したように、切替スイッチ218を制御して、コイル216を構成する導線に流れる電流Iの方向を所定周期で反転させている。このため、揺動体203は、コイル216を流れる向きの反転するごとに回動方向に反転し、この電流方向の反転を繰り返すことによって、揺動体203が揺動する。
【0036】
このように構成される本実施の形態のバーコード読取装置101では、バーコード読取処理が行われて、光源104から発光されたバーコード検出光105が回転体108のミラー面107及び揺動ミラー構造201のミラー面209に反射して読取窓103を通過し、読取窓103の近傍にかざされたバーコード110にバーコード検出光105が照射されて反射し、その反射光が読取窓103を通過してバーコード検出光受光素子112に入射される。そして、バーコード読取装置101では、このバーコード検出光受光素子112が発するバーコード検出信号に基づいてバーコード情報が生成され、情報処理装置(図示せず)に出力される。バーコード読取装置101では、このようなバーコード読取処理が行われる中で、モータ302の駆動によって回転体108が回転してミラー面107が様々な方向を向き、さらに、揺動体203が揺動してミラー面209がシーソーのように揺れ動くため、バーコード検出光105は様々な方向に進行し、バーコード110の読み取り範囲を広くとることができる。
【0037】
ここで、本実施の形態のバーコード読取装置101では、ミラー面209を揺動させるために、磁石体214及び鉄体215によって形成される磁気回路Bと、コイル216を流れる電流Iとの電磁相互作用を利用している。そして、磁気回路Bを形成する磁石体214及び鉄体215は、重心位置を揺動中心位置の近傍に位置付けて揺動体203に取り付けられている。このため、揺動体203は揺動しても、磁石体214及び鉄体215は揺動体203の共振周波数に大きな影響を与えず、支持体208や軸体212等に板バネやシリコン等の弾性部材を取り付けてバネ定数を調整することが容易になる。
【0038】
また、本実施の形態のバーコード読取装置101では、揺動体203を構成する支持体208の下面にトーションスプリング224が配置されており、揺動体203が変位した場合、トーションスプリング224が揺動変位した揺動体203を復帰させる方向に付勢するため、よりシンプルな構造でミラー面209をより速く揺動させることができ、バーコード読取装置101、特に揺動ミラー構造201の小型化を図ることが可能になる。
【0039】
ところで、本実施の形態のバーコード読取装置101では、揺動体203の揺動動作に不具合が生じて平板部材207が所望の周期で振動しなくなった場合には、その旨を示す報知がなされ、作業者は、早期に揺動ミラー構造201の故障を知ることができる。この点について、図12に基づいて説明する。
【0040】
図12は、揺動状態検出処理の流れを示すフローチャートである。制御部301を構成するデジタル回路301aは、バーコード読取処理と平行して、揺動状態検出処理を実行する。この揺動状態検出処理では、制御部301を構成するデジタル回路301aは、計時回路303を制御して計時を開始し(ステップS201)、受光素子221が出力する揺動体検出信号の入力が中断されるまで処理をループさせている(ステップS202)。この揺動体検出信号の入力の中断は、発光素子220が発する揺動体検出光222が揺動中の平板部材207に干渉されて、受光素子221に揺動体検出光222が入力されなかった場合に起こる。
【0041】
揺動体検出信号の入力が中断された場合(ステップS202のY)、制御部301を構成するデジタル回路301aは、計時回路303による計時結果に基づいて、揺動体検出信号の入力が中断されるまでに要した時間が所定時間以内であるか否かを判定する(ステップS203)。この所定時間とは、揺動体203の共振周波数に応じて平板部材207が一往復振動するのに要する時間を目安にして予め設定されたものである。
【0042】
そして、揺動体検出信号の入力が中断されるまでに要した時間が所定時間以内であると判定した場合(ステップS203のY)、制御部301を構成するデジタル回路301aは、計時回路303を制御して計時をリセットし(ステップS204)、処理をステップS201に戻す。
【0043】
これに対し、揺動体検出信号の入力が中断されるまでに所定時間以上経過していると判定した場合(ステップS203のN)、制御部301を構成するデジタル回路301aは、エラー報知を行った後に(ステップS205)、計時回路303を制御して計時をリセットし(ステップS204)、処理をステップS201に戻す。制御部301を構成するデジタル回路301aが行うエラー報知処理は、一例として、ブザー回路304を駆動制御してビープ音を発生させる処理である。また、別の一例として、エラー報知処理は、バーコード読取装置101の本体ケース102に取り付けられたLEDランプ(図示せず)を点滅させる処理である。
【0044】
本実施の形態のバーコード読取装置101では、このような揺動状態検出処理が行われることによって揺動体203が所望の周期で振動しなくなった場合にはエラー報知がなされるため、作業者は、早期に揺動ミラー構造201の故障を知ることができる。
【0045】
なお、本実施の形態のバーコード読取装置101に用いられるミラー面209を有する平板部材207の形状は、台形形状に限られることはなく、これ以外の形状であってもよい。一例として、平板部材207として、矩形形状のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】バーコード読取装置の一部を透視した斜視図である。
【図2】バーコード読取装置の縦断側面図である。
【図3】揺動ミラー構造の外観斜視図である。
【図4】揺動ミラー構造の正面図である。
【図5】揺動ミラー構造の左側面図である。
【図6】揺動ミラー構造の分解斜視図である。
【図7】揺動体の正面図である。
【図8】揺動体の一部を透視した平面図である。
【図9】バーコード読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】電流方向切替処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】揺動体が揺動する仕組みを示す模式的な平面図である。
【図12】揺動状態検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】従来のバーコード読取装置の縦断側面図である。
【図14】従来のバーコード読取装置に備わる揺動体の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
101…バーコード読取装置、104…光源、105…バーコード検出光、112…バーコード検出光受光素子、201…揺動ミラー構造、203…揺動体、209…ミラー面、212…軸体(揺動軸)、213…仮想面、214…磁石体(磁気回路形成部)、215…鉄体(強磁性体、磁気回路形成部)、216…コイル(導電体)、220…発光素子、221…受光素子、222…揺動体検出光、224…トーションスプリング(付勢体)、224c…コ字部(当接部)、301…制御部、B…磁気回路、I…電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー面を表側に有し、当該ミラー面が形成するXY平面方向のY方向中央でX方向に延びる揺動軸を中心に揺動する揺動体と、
前記揺動軸を含むZ方向に延びる仮想面に重心位置を一致させて前記揺動体に取り付けられ、当該仮想面を跨いで循環する磁気回路をXY平面方向に形成する磁気回路形成部と、
前記揺動体から離反して配置され、前記磁気回路をY方向に貫通する電流路を形成する導電体と、
を備える揺動ミラー構造。
【請求項2】
前記磁気回路形成部は、磁極方向をY方向に向け前記揺動体のX方向中央で裏側から突出する磁石体と、前記揺動体の前記磁石体からX方向両側に離反する位置で裏側から突出する二つの強磁性体と、を含み、
前記導電体は、導線を巻回して前記磁石体を遊嵌可能な筒形状に形成され、当該磁石体を取り囲むよう当該磁石体と前記強磁性体との間に導線を位置付けて前記揺動体の裏側に対向配置されるコイルである、
請求項1記載の揺動ミラー構造。
【請求項3】
前記揺動軸を挟み当該揺動軸まで等距離にある前記揺動体の裏側の二位置のそれぞれの移動軌跡上に位置付けられる二つの当接部を有し、揺動変位した前記揺動体にいずれか一方の当接部が干渉し当該揺動体をその変位方向とは反対の方向に付勢する付勢体を備える、請求項1又は2記載の揺動ミラー構造。
【請求項4】
前記揺動体が揺動して通過する揺動軌跡空間に向けてX方向に揺動体検出光を発する発光素子と、
前記揺動軌跡空間を挟んで前記発光素子と対向する位置に配置され、前記揺動体検出光の受光に応じて揺動体検出信号を出力する受光素子と、
を備える、請求項1から3のいずれか一に記載の揺動ミラー構造。
【請求項5】
バーコード検出光を発する光源と、
前記バーコード検出光の照射位置に位置付けられるミラー面を表側に有し、当該ミラー面が形成するXY平面方向のY方向中央でX方向に延びる揺動軸を中心に揺動する揺動体と、
前記ミラー面で反射しバーコードに照射されて反射したバーコード検出光を受光しバーコード検出信号を出力するバーコード検出光受光素子と、
各部を制御する制御部と、
前記制御部が、前記バーコード検出信号に基づくバーコード情報を出力する手段と、
重心位置を前記揺動軸からZ方向に延びる仮想面と一致させて前記揺動体に取り付けられ、XY平面方向に当該仮想面を跨いで循環する磁気回路を形成する磁気回路形成部と、
前記揺動体から離反して配置され、前記磁気回路をY方向に貫通する電流路を形成する導電体と、
前記制御部が、電流方向を所定周期で反転させて前記導電体に通電を行い前記揺動体を揺動変位させる手段と、
を備えるバーコード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−8514(P2010−8514A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165018(P2008−165018)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】