揺動体装置、光偏向器、光偏向器を用いた画像形成装置
【課題】 変位角を高精度に制御するのに適した揺動体装置を提供する。
【解決手段】 揺動体装置は、第1揺動体101と、第2揺動体102と、第1揺動体101を第2揺動体102に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部111と、第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部112と、を有する振動系100と、振動系を駆動する駆動手段120と、駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段150とを有する。駆動制御手段は、振動系の共振周波数をf1、f2、低周波側の駆動周波数をDf1、高周波側の駆動周波数をDf2、Δf=f2−2×f1とした場合、Df1×2=Df2、及び、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を駆動手段に供給する。
【解決手段】 揺動体装置は、第1揺動体101と、第2揺動体102と、第1揺動体101を第2揺動体102に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部111と、第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部112と、を有する振動系100と、振動系を駆動する駆動手段120と、駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段150とを有する。駆動制御手段は、振動系の共振周波数をf1、f2、低周波側の駆動周波数をDf1、高周波側の駆動周波数をDf2、Δf=f2−2×f1とした場合、Df1×2=Df2、及び、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を駆動手段に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の揺動体を有する揺動体装置の技術分野に関連する技術に関し、より詳しくは光偏向器に好適なものに関する。また、この光偏向器を使用した走査型ディスプレイやレーザービームプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラーが共振駆動される光偏向器が色々と提案されている。共振型光偏向器は、ポリゴンミラー等の回転多面鏡を使用した光走査光学系に比べて、次の様な特徴を備える。すなわち、装置を大幅に小型化することが可能であること、消費電力が少ないこと等の特徴がある。特に、半導体プロセスによって製造されるSi単結晶からなる光偏向器は、理論上金属疲労が無く耐久性にも優れていること等の特徴がある。
【0003】
一方、共振型偏向器においては、原理的にミラーの変位角が正弦波的に変化するため、偏向光の角速度が一定でない。この特性を補正するために、次の様な手法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1、特許文献2では、基本周波数とその3倍の周波数の振動モードを有する共振型偏向器を用いることで、ミラーの変位角が略三角波的に変化する駆動を実現している。図13に三角波駆動を実現したマイクロミラーを示す。光偏向器12は、揺動体14、16、弾性支持部18、20、駆動部23、50、検出部15、32、制御回路30から構成される。このマイクロミラーは基本共振周波数とその略3倍の共振周波数を持ち、基本周波数とその3倍の周波数との合成周波数で駆動される。これにより、ミラー面を持つ揺動体14は三角波的に駆動され、その変位角が正弦波駆動に比べ角速度変化の少ない光偏向が実現される。その際、検出部15、32により揺動体14の振動を検出し、制御回路30により三角波実現のために必要な駆動信号を生成し、駆動信号が入力する駆動部23、50によりマイクロミラーを駆動している。この様に、偏向走査の角速度は、変位角が正弦波的に変化するときと比べ、略等角速度となる領域が広く存在するため、偏向走査の全域に対する利用可能な領域を大きくすることができる。ここで、駆動は、基本周波数とその3倍の周波数、もしくは3倍の周波数とその3分の1の周波数の駆動周波数で行われるとされている。
【特許文献1】米国特許第4859846号明細書
【特許文献2】米国特許第5047630号明細書
【特許文献3】特開2005−208578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献により揺動体装置(光偏向器)の揺動体の三角波駆動や鋸波駆動が実現しているが、揺動体の変位角の制御性に関しては更なる改善が求められる。よって、本発明は変位角を高精度に制御するのに適した揺動体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、第1揺動体と、第2揺動体と、前記第1揺動体を前記第2揺動体に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部と、前記第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部と、を有する振動系と、前記振動系を駆動する駆動手段と、前記駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段とを有する。前記振動系は、前記ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、前記f2は前記f1の概ね2倍の関係である。前記駆動制御手段は、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号であると共に、前記第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たし、更にDf2が、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給する。
【0007】
また、本発明の光偏向器は前記揺動体装置において、前記第1揺動体が光偏向素子を有する。
【0008】
また、本発明の光偏向器は前記光偏向器と光学系と光源と感光体とを少なくとも含み、前記光源からの光ビームを前記光偏向器により走査し、前記光学系により前記感光体の目標位置に走査光を集光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の揺動体装置では、外乱に対してより安定した駆動が可能であり、揺動体の揺動時におけるジッタを低減することができ、高精度に揺動体の変位角を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明に係る揺動体装置の第1の実施形態について説明する。本実施形態の振動系100は、図1に示すように、第1揺動体101と、第2揺動体102とを有する。更に、第1揺動体101を第2揺動体102に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部111と、第2揺動体102を固定部121に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部112とを有する。
【0011】
また、例えば第1揺動体101の表面に反射部材などの光偏向素子を形成することで、揺動体装置を光偏向器として用いることができる。反射部材としてはアルミニウムなどの金属膜をスパッタ法などで形成する。
【0012】
また、本実施形態における振動系は図1に示すような片持ち構造の振動系以外に、例えば特許第4027359号公報に示されているような両持ち構造の振動系や片持ちと両持ちを組み合わせた構造の振動系などでもよい。
【0013】
駆動手段120は、電磁方式、静電方式、圧電方式などにより振動系100に駆動力を印加することが可能な構成となっている。電磁駆動の場合は、例えば少なくとも1つの揺動体に永久磁石を設け、この永久磁石に磁場を印加するコイルを揺動体の近傍に配置してもよいし、永久磁石とコイルをこれとは逆の配置としてもよい。静電駆動の場合は、少なくとも1つの揺動体に電極を形成し、この電極との間に静電力を働かせるような電極を揺動体の近傍に形成する。圧電駆動の場合は、圧電素子を振動系や支持部に設けて駆動力を印加する。
【0014】
振動系100は、ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、f2がf1の概ね2倍の関係にある。ここで概ね2倍の関係とは、f2とf1が1.98≦f2/f1≦2.02の関係にあることをいう。このように、f2がf1の丁度2倍の関係とならない場合もある理由は、振動系を作製する場合の製造プロセスに加工誤差があるためである。
【0015】
本実施形態の揺動体装置の変位角θは、次の様になる。第1の振動運動の振幅、角周波数、位相を夫々A1、ω1、φ1、第2の振動運動の振幅、角周波数、位相を夫々A2、ω2、φ2、適当な時間を原点ないし基準時間としたときの時間をtとしたときに、次式の様に表現できる。
【0016】
θ(t)=A1sin(ω1t+φ1)+A2sin(ω2t+φ2) 式1
また、揺動体装置の変位角θは、第1の振動運動の振幅をA1、角周波数をω1、第2の振動運動の振幅をA2、角周波数をω2、第1の振動運動の周波数と第2の振動運動の周波数との相対位相差をφ、時間をtとしたときに、次式の様に表現できる。
【0017】
θ(t)=A1sinω1t+A2sin(ω2t+φ) 式2
このような振動系100の振動運動を表したのが図3(a)である。つまり、振動系はθ(t)=A1sin(ω1t)であらわさされる振動運動と、θ(t)=A2sin(ω2t+φ)であらわされる振動運動とを合成した振動運動をしている。また、図3(b)にこの振動系の振動運動を表す式1を微分した結果をしめす。図3(b)に示すように、振動系100は略等角速度で運動する期間を有する。
【0018】
駆動制御手段150は振動系が前記式1、式2に示すような振動運動をするような駆動信号を生成し、この駆動信号を前記駆動手段に供給する。
【0019】
駆動信号は揺動体が上記式1、式2で表される振動となるような信号であればどのような信号でもよい。例えば正弦波を合成した駆動信号でもよいし、また、パルス状の駆動信号でもよい。正弦波を合成した駆動信号の場合は、例えば駆動信号は、B1sinω1t+B2sin(ω2t+Ψ)項を少なくとも含む数式で表される駆動信号とすることができる。ここで、B1、B2は振幅成分、Ψは相対位相差、ω1、ω2は駆動角周波数、tは時間である。この場合、各正弦波の振幅と位相を調整することで所望の駆動信号を得ることができる。また、パルス状の信号を用いて駆動する場合は、パルスの数、間隔、幅などを時間的に変化させることで所望の駆動信号を生成することができる。
【0020】
変位角検出手段140は、第1揺動体101と第2揺動体102の少なくとも一つの変位角を検出可能である。図1の場合、変位角検出手段140は光検出器であり、光源131から出射された光ビーム132が第1揺動体101で反射され、この反射光133を光検出器140で検出する。光検出器140は、例えば第1揺動体の最大変位角よりも中心寄りに2つ配置する。つまり、図3(a)のBD1、BD2に示す位置に光検出器を配置する。このように光検出器を配置することで、1周期内に4つの時刻(t10、t20、t30、t40)を検出することができる。駆動制御手段150はこの4つの時刻に基づいて揺動体の変位状態を検出し、この変位状態に基づいて振動系を駆動する駆動信号を生成する。
【0021】
尚、本実施形態では揺動体の振動を光検出器を用いて検出しているが、弾性支持部111、112にピエゾ抵抗体を設けて、このピエゾ抵抗体の出力信号に基づいて揺動体の変位状態を検出してもよい。
【0022】
本実施形態における揺動体装置の変位角の制御について説明する。
【0023】
図2は本実施形態の揺動体装置のブロック線図である。駆動手段120は、振動系100に駆動力を印加する。変位検出手段140は振動系を構成する揺動体の変位角を検出する。駆動制御手段150は揺動体が所望の変位角となるように駆動力を調整する。
【0024】
変位角検出手段140は前記第1の振動運動の1周期内において、揺動体が第1の変位角を取るときの互いに異なる2つの時刻(t10、t20)と、第2の変位角を取るときの互いに異なる2つの時刻の4つの時刻(t30、t40)を測定する。式1、式2に示す様に振動系の振動は4変数もしくは3変数で表されるため、測定した4つの時刻からこれらの変数を算出することが出来る。
【0025】
駆動制御手段150は、第1の周波数を有する第1の信号と第2の周波数を有する第2の信号とを合成した駆動信号を生成して前記駆動手段120に供給すると共に、測定した4つの時刻が、予め設定された時刻となるように駆動信号を調整する。そして、調整された駆動信号を駆動手段120に供給することで、揺動体装置を精度良く制御することができる。
【0026】
より具体的には、駆動制御手段150は変位角検出手段140の信号から揺動体装置の変位角を示す式1のA1、φ1、A2、φ2のうちの少なくとも1つの値を算出する。そして、これらの値の内少なくとも1つの値が予め設定された値となるように、駆動信号を調整することができる。また、式2の場合は、A1、A2、φのうちの少なくとも1つの値を算出し、これらの値の内少なくとも1つの値が予め設定された値となるように、駆動信号を調整する。このように調整された駆動信号を駆動手段120に供給することで、揺動体装置を精度良く制御することができる。
【0027】
しかしながら、本実施形態においては駆動信号の高周波側の駆動周波数Df2と第2の共振周波数f2の関係によりその制御性が異なる。すなわち、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号を駆動手段に供給する際に下記の関係を有する駆動信号を駆動手段に供給することで揺動体装置の制御性が向上する。まず、第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たすようにする。更に振動系の高周波側の共振周波数であるf2と、下記の式3で求められるΔfと、Df2とが、下記の式4の関係を満たすようにする。
【0028】
Δf=f2−2×f1 式3
f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2| 式4
揺動体装置の駆動周波数を決定する際に、以下のA,Bの決定方法がある。
【0029】
A.振動系の共振周波数f1と駆動周波数Df1とが一致するように、又は近づくようにDf1を決定する。Df2は、Df1を2倍して決定する。本明細書では、このようにf1を基準として駆動周波数を決定する場合を「f1基準駆動」と表現する。
【0030】
B.振動系の共振周波数f2と駆動周波数Df2とが一致するように、又は近づくようにDf2を決定する。Df1は、Df2を1/2倍して決定する。本明細書では、このようにf2を基準として駆動周波数を決定する場合を「f2基準駆動」と表現する。
【0031】
ここで揺動体装置の変位角を示す式2のφについての一巡伝達特性の違いについて説明する。図4は「f1基準駆動」の時の一巡伝達特性を示す。図4(a)がゲイン特性、図4(b)が位相特性である。図4におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2531Hz、Df2=5062Hz、Δf=6である。
【0032】
また、図5は「f2基準駆動」の時の一巡伝達特性を示す。図5(a)がゲイン特性、図5(b)が位相特性である。図5におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2534Hz、Df2=5068Hz、Δf=6である。
【0033】
図4(b)と図5(b)を比較すると、「f1基準駆動」の場合の方が、「f2基準駆動」の時と比べて特に100Hz以上の帯域において位相の遅れが顕著になる。
【0034】
例えば200Hzでの位相を比較すると、「f1基準駆動」の場合が−44degなのに対し、「f2基準駆動」の場合が52degと位相余裕が大きい。このように位相余裕が大きいと、外乱に対してより安定となる。また、位相余裕が大きいとゲインを増加させることができるため、制御の帯域が上がりジッタを低減することができる。
【0035】
逆に、位相余裕が小さいと、外乱に対して不安定となる。また、位相余裕を大きくするために、十分な位相余裕(例えば30deg)を得られるまでゲインを下げなければならない。つまり、この場合、ゲインを下げるので制御の帯域が下がりジッタが増加する。
【0036】
以上のことから、「f1基準駆動」の場合と比べ、「f2基準駆動」の場合の方がより光偏向装置を精度良く制御することができる。
【0037】
また、「f2基準駆動」の場合、駆動信号の高周波側の駆動周波数Df2が振動系の共振周波数f2からずれる割合により、揺動体装置の走査精度が変化することが実験により確認されている。図6に駆動周波数Df2と振動系の共振周波数f2との誤差[%]と走査ジッタの関係を示す。図6におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2531Hz、Df2=5062Hz、Δf=6である。走査ジッタとは揺動体装置の走査最大振幅の80%の位置を基準として、走査中央を通過通過する時間の変動を指し、Df2がf2の場合を1としている。本実施形態では、基準を走査最大振幅の80%の位置、観測点を走査中央とした。しかし、この基準は走査領域のいかなる位置を基準としてもよい。
【0038】
図6から分かるように、駆動周波数Df2とf2との誤差[%]が0の時に走査ジッタ比が最小となっている。図6より、走査ジッタを50%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.5以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式5のようにする。
【0039】
f2−f2×2.8×10−4<Df2<f2+f2×2.6×10−4 式5
この場合、駆動周波数Df2の調整精度が広くなることから、駆動部の回路の簡便化や、第2の共振周波数f2を検出する精度を低く出来ることから、走査ジッタをある程度抑えつつ、回路コストを低減することが出来る。
【0040】
また、走査ジッタを10%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.1以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式6のようにする。
【0041】
f2−f2×1×10−4<Df2<f2+f2×1×10−4 式6
この場合、揺動体装置の走査ジッタの個体差を低減することができ、かつ高精度な変位角の制御が可能となる。
【0042】
また、走査ジッタを30%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.3以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式7のようにする。
【0043】
f2−f2×2.1×10−4<Df2<f2+f2×2.1×10−4 式7
この場合、回路コストの低下と変位角の制御性を両立することが可能である。
【0044】
(第2の実施形態)
次に本発明に係る揺動体装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る揺動体装置の構成、駆動方法も、基本的には第1の実施形態と同様である。 第2の実施形態の揺動体装置では、更に、下記の条件を満たす振動系を用いることで制御特性を向上させることができる。即ち、式3に示すΔfの値が下記の条件式を満たすような振動系とする。
【0045】
Δf<0 式8
ここで、式8の条件を満たす振動系を有する揺動体装置で制御特性が向上することを説明するために、揺動体装置の揺動体の変位角を示す式1、式2の制御パラメータの一つであるA1の一巡伝達特性の違いについて説明する。
【0046】
図7はf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2534Hz、Df2=5068Hz、Δf=+6Hzの時の一巡伝達特性を示す図である。図7(a)がゲイン特性、図7(b)が位相特性である。
【0047】
また、図8はf1=2523Hz、f2=5040Hz、Df1=2520Hz、Df2=5040Hz、Δf=−6Hzの時の一巡伝達特性を示す図である。図8(a)がゲイン特性、図8(b)が位相特性である。図7(b)と図8(b)を比較すると、Δfが+6Hzの場合の方が、Δfが−6Hzの場合と比べて特に100Hz以上の帯域において位相の遅れが顕著になる。
【0048】
例えばゲインが0となる260Hzでの位相を比較すると、Δfが+6Hzの場合が18degなのに対し、Δfが−6Hzの場合が55degと位相余裕が大きい。
【0049】
このように位相余裕が大きいと、外乱に対してより安定となる。また、位相余裕が大きいとゲインを増加させることができるため、制御の帯域が上がりジッタを低減することができる。
【0050】
逆に、位相余裕が小さいと、外乱に対して不安定となる。また、位相余裕を大きくするために、十分な位相余裕(例えば30deg)を得られるまでゲインを下げなければならない。つまり、この場合、ゲインを下げるので制御の帯域が下がりジッタが増加する。
【0051】
以上のことから、Δfが+6Hzの振動系と比べ、Δfが−6Hzの振動系の方が位相余裕を大きくすることができ、その結果、よりジッタを低減することができ揺動体装置を精度良く制御することができる。よって、本実施形態の揺動体装置の振動系を上記式8の関係を満たすように作製することで、揺動体装置の制御特性が向上する。
【0052】
また、第1の共振周波数f1付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を図9に示す。図9からわかるように、揺動体の振幅値が最大となる共振点の位置から駆動周波数がずれると、揺動体の振幅値が小さくなる。つまり揺動体装置の駆動効率が低下する。上記条件では、Δfの範囲をマイナス側のみに限定したが、駆動周波数が共振周波数から大きく外れてしまうと駆動効率が低下してしまうため、消費電力の増加や熱の発生等が生じる。よって、この場合は、第1の共振周波数の駆動効率を考慮し、Δfの範囲を式9に示す範囲に限定すると、更に効率よく揺動体装置を駆動することができる。
【0053】
−2×(f1b−f1a)≦Δf<0 式9
ここで、前記第1の共振周波数f1の共振ピークの低周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をf1a、高周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となるを周波数f1bとする。
【0054】
また、第2の共振周波数f2付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を図10に示す。図10から分かるように、揺動体の振幅値が最大となる共振点の位置から駆動周波数がずれると、揺動体の振幅値が小さくなる。つまり揺動体装置の駆動効率が低下する。上記条件では、Δfの範囲をマイナス側のみに限定したが、駆動周波数が共振周波数から大きく外れてしまうと駆動効率が低下してしまうため、消費電力の増加や熱の発生等が生じる。よってこの場合は、第1の共振周波数の駆動効率を考慮し、Δfの範囲を式10の様に限定すると、更に効率よく揺動体装置を駆動することができる。
【0055】
(f1d−f1c)≦Δf<0 式10
ここで、前記第2の共振周波数f2の共振ピークの低周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をf1c、高周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となるを周波数f1dとする。
【0056】
また、揺動体装置の振動系の製造工程では、振動系を製造する際に弾性支持部のバネ定数や揺動体の慣性モーメントに誤差が生じる。よって、弾性支持部のバネ定数と揺動体の慣性モーメントから決まる振動系の共振周波数にも誤差が生じる。このような場合は、共振周波数の誤差から生じるΔfの誤差を予め見積り、その誤差量からΔfの範囲を求める。ここで、Δfの誤差はバネ定数や慣性モーメントの誤差量を算出することにより理論的に求めてもよいし、作製後のΔfの誤差から統計的に求めても良い。想定されるΔfの誤差量から、Δfの範囲を式11の様に限定することにより、作製ばらつきがあってもΔf<0の範囲に作製することが出来る。
【0057】
(Δfu−Δfl)≦Δf<0 式11
ここで、Δfのばらつき範囲での下限側の最小値をΔfl、上限側の最大値をΔfuとする。
【0058】
また、駆動信号の2つの駆動周波数のうち、低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが式12、式13、式14の条件を満たすように駆動すると更に制御特性が向上する。
【0059】
Df1<f1 式12
Df2≧f2 式13
Df1×2=Df2 式14
図11は、本実施形態の振動系の共振周波数f1、f2と、駆動周波数Df1、Df2の関係を例示する図である。式3、式8の条件を満たし、且つ式12、式13、式14の条件を満たす場合、2つの共振周波数f1、f2は図11に示すように、駆動周波数Df1、Df2の間に位置する。特に、本実施形態ではDf2=f2で駆動するか、又はDf2をf2に限りなく近づけることで、揺動体装置をより高精度に駆動制御することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
本発明に係る揺動体装置を画像形成装置に適用した実施形態を図12を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置に用いる光偏向装置500は、第1の実施形態に記載した揺動体装置である。光源510から出射した光ビームは、光学系であるコリメータレンズ520で整形された後、光偏向装置500によって1次元に偏向される。偏向された走査光は、光学系である結合レンズ530により感光体540の目標位置に集光され、感光体540上に静電潜像が形成される。さらに、光偏向装置の走査端に2個の光検出器550を配置する。光偏向装置500は第1の実施形態に記載の方法で揺動体の振動状態を検出し、駆動信号を決定する。
【0061】
本実施形態の画像形成装置では、第1の実施形態に示した条件で揺動体装置を駆動することで、従来よりも制御特性がよく高精度の画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る揺動体装置を説明するための図である。
【図2】本発明に係る揺動体装置のブロック線図である。
【図3】本発明に係る揺動体装置の振動運動を説明するための図である。(a)は時間と変位角の関係であり、(b)は(a)の変位角と時間の関係をあらわす式を時間で微分した結果である。
【図4】振動系の共振周波数f1を基準として駆動周波数を決定した場合の一巡伝達特性である。図4(a)がゲイン特性、図4(b)が位相特性である。
【図5】振動系の共振周波数f2を基準として駆動周波数を決定した場合の一巡伝達特性である。図5(a)がゲイン特性、図5(b)が位相特性である。
【図6】駆動周波数Df2と振動系の共振周波数f2との誤差[%]と走査ジッタの関係を示す図である。
【図7】Δf=+6の時の伝達特性を示す図である。(a)はゲイン特性であり、(b)は位相特性である。
【図8】Δf=−6の時の伝達特性を示す図である。(a)はゲイン特性であり、(b)は位相特性である。
【図9】第1の共振周波数f1付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を示す図である。
【図10】第2の共振周波数f2付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を示す図である。
【図11】振動系の共振周波数f1、f2と、駆動周波数Df1、Df2の関係を例示する図である。
【図12】本発明に係る揺動体装置を用いた画像形成装置を説明するための図である。
【図13】従来の光偏向装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
100 振動系
101、102 揺動体
111、112 弾性支持部
120 駆動手段
121 固定部
131、510 光源
140、550 変位角検出手段(光検出器、BD)
150 駆動制御手段
500 光偏向装置
520 コリメータレンズ
530 結合レンズ
540 感光体
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の揺動体を有する揺動体装置の技術分野に関連する技術に関し、より詳しくは光偏向器に好適なものに関する。また、この光偏向器を使用した走査型ディスプレイやレーザービームプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラーが共振駆動される光偏向器が色々と提案されている。共振型光偏向器は、ポリゴンミラー等の回転多面鏡を使用した光走査光学系に比べて、次の様な特徴を備える。すなわち、装置を大幅に小型化することが可能であること、消費電力が少ないこと等の特徴がある。特に、半導体プロセスによって製造されるSi単結晶からなる光偏向器は、理論上金属疲労が無く耐久性にも優れていること等の特徴がある。
【0003】
一方、共振型偏向器においては、原理的にミラーの変位角が正弦波的に変化するため、偏向光の角速度が一定でない。この特性を補正するために、次の様な手法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1、特許文献2では、基本周波数とその3倍の周波数の振動モードを有する共振型偏向器を用いることで、ミラーの変位角が略三角波的に変化する駆動を実現している。図13に三角波駆動を実現したマイクロミラーを示す。光偏向器12は、揺動体14、16、弾性支持部18、20、駆動部23、50、検出部15、32、制御回路30から構成される。このマイクロミラーは基本共振周波数とその略3倍の共振周波数を持ち、基本周波数とその3倍の周波数との合成周波数で駆動される。これにより、ミラー面を持つ揺動体14は三角波的に駆動され、その変位角が正弦波駆動に比べ角速度変化の少ない光偏向が実現される。その際、検出部15、32により揺動体14の振動を検出し、制御回路30により三角波実現のために必要な駆動信号を生成し、駆動信号が入力する駆動部23、50によりマイクロミラーを駆動している。この様に、偏向走査の角速度は、変位角が正弦波的に変化するときと比べ、略等角速度となる領域が広く存在するため、偏向走査の全域に対する利用可能な領域を大きくすることができる。ここで、駆動は、基本周波数とその3倍の周波数、もしくは3倍の周波数とその3分の1の周波数の駆動周波数で行われるとされている。
【特許文献1】米国特許第4859846号明細書
【特許文献2】米国特許第5047630号明細書
【特許文献3】特開2005−208578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献により揺動体装置(光偏向器)の揺動体の三角波駆動や鋸波駆動が実現しているが、揺動体の変位角の制御性に関しては更なる改善が求められる。よって、本発明は変位角を高精度に制御するのに適した揺動体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は、第1揺動体と、第2揺動体と、前記第1揺動体を前記第2揺動体に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部と、前記第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部と、を有する振動系と、前記振動系を駆動する駆動手段と、前記駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段とを有する。前記振動系は、前記ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、前記f2は前記f1の概ね2倍の関係である。前記駆動制御手段は、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号であると共に、前記第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たし、更にDf2が、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給する。
【0007】
また、本発明の光偏向器は前記揺動体装置において、前記第1揺動体が光偏向素子を有する。
【0008】
また、本発明の光偏向器は前記光偏向器と光学系と光源と感光体とを少なくとも含み、前記光源からの光ビームを前記光偏向器により走査し、前記光学系により前記感光体の目標位置に走査光を集光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の揺動体装置では、外乱に対してより安定した駆動が可能であり、揺動体の揺動時におけるジッタを低減することができ、高精度に揺動体の変位角を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明に係る揺動体装置の第1の実施形態について説明する。本実施形態の振動系100は、図1に示すように、第1揺動体101と、第2揺動体102とを有する。更に、第1揺動体101を第2揺動体102に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部111と、第2揺動体102を固定部121に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部112とを有する。
【0011】
また、例えば第1揺動体101の表面に反射部材などの光偏向素子を形成することで、揺動体装置を光偏向器として用いることができる。反射部材としてはアルミニウムなどの金属膜をスパッタ法などで形成する。
【0012】
また、本実施形態における振動系は図1に示すような片持ち構造の振動系以外に、例えば特許第4027359号公報に示されているような両持ち構造の振動系や片持ちと両持ちを組み合わせた構造の振動系などでもよい。
【0013】
駆動手段120は、電磁方式、静電方式、圧電方式などにより振動系100に駆動力を印加することが可能な構成となっている。電磁駆動の場合は、例えば少なくとも1つの揺動体に永久磁石を設け、この永久磁石に磁場を印加するコイルを揺動体の近傍に配置してもよいし、永久磁石とコイルをこれとは逆の配置としてもよい。静電駆動の場合は、少なくとも1つの揺動体に電極を形成し、この電極との間に静電力を働かせるような電極を揺動体の近傍に形成する。圧電駆動の場合は、圧電素子を振動系や支持部に設けて駆動力を印加する。
【0014】
振動系100は、ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、f2がf1の概ね2倍の関係にある。ここで概ね2倍の関係とは、f2とf1が1.98≦f2/f1≦2.02の関係にあることをいう。このように、f2がf1の丁度2倍の関係とならない場合もある理由は、振動系を作製する場合の製造プロセスに加工誤差があるためである。
【0015】
本実施形態の揺動体装置の変位角θは、次の様になる。第1の振動運動の振幅、角周波数、位相を夫々A1、ω1、φ1、第2の振動運動の振幅、角周波数、位相を夫々A2、ω2、φ2、適当な時間を原点ないし基準時間としたときの時間をtとしたときに、次式の様に表現できる。
【0016】
θ(t)=A1sin(ω1t+φ1)+A2sin(ω2t+φ2) 式1
また、揺動体装置の変位角θは、第1の振動運動の振幅をA1、角周波数をω1、第2の振動運動の振幅をA2、角周波数をω2、第1の振動運動の周波数と第2の振動運動の周波数との相対位相差をφ、時間をtとしたときに、次式の様に表現できる。
【0017】
θ(t)=A1sinω1t+A2sin(ω2t+φ) 式2
このような振動系100の振動運動を表したのが図3(a)である。つまり、振動系はθ(t)=A1sin(ω1t)であらわさされる振動運動と、θ(t)=A2sin(ω2t+φ)であらわされる振動運動とを合成した振動運動をしている。また、図3(b)にこの振動系の振動運動を表す式1を微分した結果をしめす。図3(b)に示すように、振動系100は略等角速度で運動する期間を有する。
【0018】
駆動制御手段150は振動系が前記式1、式2に示すような振動運動をするような駆動信号を生成し、この駆動信号を前記駆動手段に供給する。
【0019】
駆動信号は揺動体が上記式1、式2で表される振動となるような信号であればどのような信号でもよい。例えば正弦波を合成した駆動信号でもよいし、また、パルス状の駆動信号でもよい。正弦波を合成した駆動信号の場合は、例えば駆動信号は、B1sinω1t+B2sin(ω2t+Ψ)項を少なくとも含む数式で表される駆動信号とすることができる。ここで、B1、B2は振幅成分、Ψは相対位相差、ω1、ω2は駆動角周波数、tは時間である。この場合、各正弦波の振幅と位相を調整することで所望の駆動信号を得ることができる。また、パルス状の信号を用いて駆動する場合は、パルスの数、間隔、幅などを時間的に変化させることで所望の駆動信号を生成することができる。
【0020】
変位角検出手段140は、第1揺動体101と第2揺動体102の少なくとも一つの変位角を検出可能である。図1の場合、変位角検出手段140は光検出器であり、光源131から出射された光ビーム132が第1揺動体101で反射され、この反射光133を光検出器140で検出する。光検出器140は、例えば第1揺動体の最大変位角よりも中心寄りに2つ配置する。つまり、図3(a)のBD1、BD2に示す位置に光検出器を配置する。このように光検出器を配置することで、1周期内に4つの時刻(t10、t20、t30、t40)を検出することができる。駆動制御手段150はこの4つの時刻に基づいて揺動体の変位状態を検出し、この変位状態に基づいて振動系を駆動する駆動信号を生成する。
【0021】
尚、本実施形態では揺動体の振動を光検出器を用いて検出しているが、弾性支持部111、112にピエゾ抵抗体を設けて、このピエゾ抵抗体の出力信号に基づいて揺動体の変位状態を検出してもよい。
【0022】
本実施形態における揺動体装置の変位角の制御について説明する。
【0023】
図2は本実施形態の揺動体装置のブロック線図である。駆動手段120は、振動系100に駆動力を印加する。変位検出手段140は振動系を構成する揺動体の変位角を検出する。駆動制御手段150は揺動体が所望の変位角となるように駆動力を調整する。
【0024】
変位角検出手段140は前記第1の振動運動の1周期内において、揺動体が第1の変位角を取るときの互いに異なる2つの時刻(t10、t20)と、第2の変位角を取るときの互いに異なる2つの時刻の4つの時刻(t30、t40)を測定する。式1、式2に示す様に振動系の振動は4変数もしくは3変数で表されるため、測定した4つの時刻からこれらの変数を算出することが出来る。
【0025】
駆動制御手段150は、第1の周波数を有する第1の信号と第2の周波数を有する第2の信号とを合成した駆動信号を生成して前記駆動手段120に供給すると共に、測定した4つの時刻が、予め設定された時刻となるように駆動信号を調整する。そして、調整された駆動信号を駆動手段120に供給することで、揺動体装置を精度良く制御することができる。
【0026】
より具体的には、駆動制御手段150は変位角検出手段140の信号から揺動体装置の変位角を示す式1のA1、φ1、A2、φ2のうちの少なくとも1つの値を算出する。そして、これらの値の内少なくとも1つの値が予め設定された値となるように、駆動信号を調整することができる。また、式2の場合は、A1、A2、φのうちの少なくとも1つの値を算出し、これらの値の内少なくとも1つの値が予め設定された値となるように、駆動信号を調整する。このように調整された駆動信号を駆動手段120に供給することで、揺動体装置を精度良く制御することができる。
【0027】
しかしながら、本実施形態においては駆動信号の高周波側の駆動周波数Df2と第2の共振周波数f2の関係によりその制御性が異なる。すなわち、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号を駆動手段に供給する際に下記の関係を有する駆動信号を駆動手段に供給することで揺動体装置の制御性が向上する。まず、第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たすようにする。更に振動系の高周波側の共振周波数であるf2と、下記の式3で求められるΔfと、Df2とが、下記の式4の関係を満たすようにする。
【0028】
Δf=f2−2×f1 式3
f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2| 式4
揺動体装置の駆動周波数を決定する際に、以下のA,Bの決定方法がある。
【0029】
A.振動系の共振周波数f1と駆動周波数Df1とが一致するように、又は近づくようにDf1を決定する。Df2は、Df1を2倍して決定する。本明細書では、このようにf1を基準として駆動周波数を決定する場合を「f1基準駆動」と表現する。
【0030】
B.振動系の共振周波数f2と駆動周波数Df2とが一致するように、又は近づくようにDf2を決定する。Df1は、Df2を1/2倍して決定する。本明細書では、このようにf2を基準として駆動周波数を決定する場合を「f2基準駆動」と表現する。
【0031】
ここで揺動体装置の変位角を示す式2のφについての一巡伝達特性の違いについて説明する。図4は「f1基準駆動」の時の一巡伝達特性を示す。図4(a)がゲイン特性、図4(b)が位相特性である。図4におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2531Hz、Df2=5062Hz、Δf=6である。
【0032】
また、図5は「f2基準駆動」の時の一巡伝達特性を示す。図5(a)がゲイン特性、図5(b)が位相特性である。図5におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2534Hz、Df2=5068Hz、Δf=6である。
【0033】
図4(b)と図5(b)を比較すると、「f1基準駆動」の場合の方が、「f2基準駆動」の時と比べて特に100Hz以上の帯域において位相の遅れが顕著になる。
【0034】
例えば200Hzでの位相を比較すると、「f1基準駆動」の場合が−44degなのに対し、「f2基準駆動」の場合が52degと位相余裕が大きい。このように位相余裕が大きいと、外乱に対してより安定となる。また、位相余裕が大きいとゲインを増加させることができるため、制御の帯域が上がりジッタを低減することができる。
【0035】
逆に、位相余裕が小さいと、外乱に対して不安定となる。また、位相余裕を大きくするために、十分な位相余裕(例えば30deg)を得られるまでゲインを下げなければならない。つまり、この場合、ゲインを下げるので制御の帯域が下がりジッタが増加する。
【0036】
以上のことから、「f1基準駆動」の場合と比べ、「f2基準駆動」の場合の方がより光偏向装置を精度良く制御することができる。
【0037】
また、「f2基準駆動」の場合、駆動信号の高周波側の駆動周波数Df2が振動系の共振周波数f2からずれる割合により、揺動体装置の走査精度が変化することが実験により確認されている。図6に駆動周波数Df2と振動系の共振周波数f2との誤差[%]と走査ジッタの関係を示す。図6におけるf1、f2、Df1、Df2、Δfはそれぞれf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2531Hz、Df2=5062Hz、Δf=6である。走査ジッタとは揺動体装置の走査最大振幅の80%の位置を基準として、走査中央を通過通過する時間の変動を指し、Df2がf2の場合を1としている。本実施形態では、基準を走査最大振幅の80%の位置、観測点を走査中央とした。しかし、この基準は走査領域のいかなる位置を基準としてもよい。
【0038】
図6から分かるように、駆動周波数Df2とf2との誤差[%]が0の時に走査ジッタ比が最小となっている。図6より、走査ジッタを50%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.5以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式5のようにする。
【0039】
f2−f2×2.8×10−4<Df2<f2+f2×2.6×10−4 式5
この場合、駆動周波数Df2の調整精度が広くなることから、駆動部の回路の簡便化や、第2の共振周波数f2を検出する精度を低く出来ることから、走査ジッタをある程度抑えつつ、回路コストを低減することが出来る。
【0040】
また、走査ジッタを10%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.1以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式6のようにする。
【0041】
f2−f2×1×10−4<Df2<f2+f2×1×10−4 式6
この場合、揺動体装置の走査ジッタの個体差を低減することができ、かつ高精度な変位角の制御が可能となる。
【0042】
また、走査ジッタを30%以下に抑えるためには、走査ジッタ比を1.3以下にする必要がある。このとき駆動信号Pの駆動周波数Df2は、式7のようにする。
【0043】
f2−f2×2.1×10−4<Df2<f2+f2×2.1×10−4 式7
この場合、回路コストの低下と変位角の制御性を両立することが可能である。
【0044】
(第2の実施形態)
次に本発明に係る揺動体装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る揺動体装置の構成、駆動方法も、基本的には第1の実施形態と同様である。 第2の実施形態の揺動体装置では、更に、下記の条件を満たす振動系を用いることで制御特性を向上させることができる。即ち、式3に示すΔfの値が下記の条件式を満たすような振動系とする。
【0045】
Δf<0 式8
ここで、式8の条件を満たす振動系を有する揺動体装置で制御特性が向上することを説明するために、揺動体装置の揺動体の変位角を示す式1、式2の制御パラメータの一つであるA1の一巡伝達特性の違いについて説明する。
【0046】
図7はf1=2531Hz、f2=5068Hz、Df1=2534Hz、Df2=5068Hz、Δf=+6Hzの時の一巡伝達特性を示す図である。図7(a)がゲイン特性、図7(b)が位相特性である。
【0047】
また、図8はf1=2523Hz、f2=5040Hz、Df1=2520Hz、Df2=5040Hz、Δf=−6Hzの時の一巡伝達特性を示す図である。図8(a)がゲイン特性、図8(b)が位相特性である。図7(b)と図8(b)を比較すると、Δfが+6Hzの場合の方が、Δfが−6Hzの場合と比べて特に100Hz以上の帯域において位相の遅れが顕著になる。
【0048】
例えばゲインが0となる260Hzでの位相を比較すると、Δfが+6Hzの場合が18degなのに対し、Δfが−6Hzの場合が55degと位相余裕が大きい。
【0049】
このように位相余裕が大きいと、外乱に対してより安定となる。また、位相余裕が大きいとゲインを増加させることができるため、制御の帯域が上がりジッタを低減することができる。
【0050】
逆に、位相余裕が小さいと、外乱に対して不安定となる。また、位相余裕を大きくするために、十分な位相余裕(例えば30deg)を得られるまでゲインを下げなければならない。つまり、この場合、ゲインを下げるので制御の帯域が下がりジッタが増加する。
【0051】
以上のことから、Δfが+6Hzの振動系と比べ、Δfが−6Hzの振動系の方が位相余裕を大きくすることができ、その結果、よりジッタを低減することができ揺動体装置を精度良く制御することができる。よって、本実施形態の揺動体装置の振動系を上記式8の関係を満たすように作製することで、揺動体装置の制御特性が向上する。
【0052】
また、第1の共振周波数f1付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を図9に示す。図9からわかるように、揺動体の振幅値が最大となる共振点の位置から駆動周波数がずれると、揺動体の振幅値が小さくなる。つまり揺動体装置の駆動効率が低下する。上記条件では、Δfの範囲をマイナス側のみに限定したが、駆動周波数が共振周波数から大きく外れてしまうと駆動効率が低下してしまうため、消費電力の増加や熱の発生等が生じる。よって、この場合は、第1の共振周波数の駆動効率を考慮し、Δfの範囲を式9に示す範囲に限定すると、更に効率よく揺動体装置を駆動することができる。
【0053】
−2×(f1b−f1a)≦Δf<0 式9
ここで、前記第1の共振周波数f1の共振ピークの低周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をf1a、高周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となるを周波数f1bとする。
【0054】
また、第2の共振周波数f2付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を図10に示す。図10から分かるように、揺動体の振幅値が最大となる共振点の位置から駆動周波数がずれると、揺動体の振幅値が小さくなる。つまり揺動体装置の駆動効率が低下する。上記条件では、Δfの範囲をマイナス側のみに限定したが、駆動周波数が共振周波数から大きく外れてしまうと駆動効率が低下してしまうため、消費電力の増加や熱の発生等が生じる。よってこの場合は、第1の共振周波数の駆動効率を考慮し、Δfの範囲を式10の様に限定すると、更に効率よく揺動体装置を駆動することができる。
【0055】
(f1d−f1c)≦Δf<0 式10
ここで、前記第2の共振周波数f2の共振ピークの低周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をf1c、高周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となるを周波数f1dとする。
【0056】
また、揺動体装置の振動系の製造工程では、振動系を製造する際に弾性支持部のバネ定数や揺動体の慣性モーメントに誤差が生じる。よって、弾性支持部のバネ定数と揺動体の慣性モーメントから決まる振動系の共振周波数にも誤差が生じる。このような場合は、共振周波数の誤差から生じるΔfの誤差を予め見積り、その誤差量からΔfの範囲を求める。ここで、Δfの誤差はバネ定数や慣性モーメントの誤差量を算出することにより理論的に求めてもよいし、作製後のΔfの誤差から統計的に求めても良い。想定されるΔfの誤差量から、Δfの範囲を式11の様に限定することにより、作製ばらつきがあってもΔf<0の範囲に作製することが出来る。
【0057】
(Δfu−Δfl)≦Δf<0 式11
ここで、Δfのばらつき範囲での下限側の最小値をΔfl、上限側の最大値をΔfuとする。
【0058】
また、駆動信号の2つの駆動周波数のうち、低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが式12、式13、式14の条件を満たすように駆動すると更に制御特性が向上する。
【0059】
Df1<f1 式12
Df2≧f2 式13
Df1×2=Df2 式14
図11は、本実施形態の振動系の共振周波数f1、f2と、駆動周波数Df1、Df2の関係を例示する図である。式3、式8の条件を満たし、且つ式12、式13、式14の条件を満たす場合、2つの共振周波数f1、f2は図11に示すように、駆動周波数Df1、Df2の間に位置する。特に、本実施形態ではDf2=f2で駆動するか、又はDf2をf2に限りなく近づけることで、揺動体装置をより高精度に駆動制御することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
本発明に係る揺動体装置を画像形成装置に適用した実施形態を図12を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置に用いる光偏向装置500は、第1の実施形態に記載した揺動体装置である。光源510から出射した光ビームは、光学系であるコリメータレンズ520で整形された後、光偏向装置500によって1次元に偏向される。偏向された走査光は、光学系である結合レンズ530により感光体540の目標位置に集光され、感光体540上に静電潜像が形成される。さらに、光偏向装置の走査端に2個の光検出器550を配置する。光偏向装置500は第1の実施形態に記載の方法で揺動体の振動状態を検出し、駆動信号を決定する。
【0061】
本実施形態の画像形成装置では、第1の実施形態に示した条件で揺動体装置を駆動することで、従来よりも制御特性がよく高精度の画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る揺動体装置を説明するための図である。
【図2】本発明に係る揺動体装置のブロック線図である。
【図3】本発明に係る揺動体装置の振動運動を説明するための図である。(a)は時間と変位角の関係であり、(b)は(a)の変位角と時間の関係をあらわす式を時間で微分した結果である。
【図4】振動系の共振周波数f1を基準として駆動周波数を決定した場合の一巡伝達特性である。図4(a)がゲイン特性、図4(b)が位相特性である。
【図5】振動系の共振周波数f2を基準として駆動周波数を決定した場合の一巡伝達特性である。図5(a)がゲイン特性、図5(b)が位相特性である。
【図6】駆動周波数Df2と振動系の共振周波数f2との誤差[%]と走査ジッタの関係を示す図である。
【図7】Δf=+6の時の伝達特性を示す図である。(a)はゲイン特性であり、(b)は位相特性である。
【図8】Δf=−6の時の伝達特性を示す図である。(a)はゲイン特性であり、(b)は位相特性である。
【図9】第1の共振周波数f1付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を示す図である。
【図10】第2の共振周波数f2付近での共振特性(駆動周波数と振幅の関係)を示す図である。
【図11】振動系の共振周波数f1、f2と、駆動周波数Df1、Df2の関係を例示する図である。
【図12】本発明に係る揺動体装置を用いた画像形成装置を説明するための図である。
【図13】従来の光偏向装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
100 振動系
101、102 揺動体
111、112 弾性支持部
120 駆動手段
121 固定部
131、510 光源
140、550 変位角検出手段(光検出器、BD)
150 駆動制御手段
500 光偏向装置
520 コリメータレンズ
530 結合レンズ
540 感光体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1揺動体と、第2揺動体と、前記第1揺動体を前記第2揺動体に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部と、前記第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部と、を有する振動系と、
前記振動系を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段とを有する揺動体装置であって、
前記振動系は、前記ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、
前記f2は前記f1の概ね2倍の関係にあり、
前記駆動制御手段は、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号であると共に、前記第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たし、更にDf2が、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする揺動体装置。
【請求項2】
前記振動系は、Δf=f2−2×f1であらわすことができるΔfがΔf<0の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の揺動体装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
揺動体の変位角をθ、第1の振動運動の振幅をA1、角周波数をω1、第2の振動運動の振幅をA2、角周波数をω2(ω2=2×ω1)、2つの周波数の相対位相差をφ、時間をtとした場合、前記第1及び第2揺動体のうちの少なくとも1つが、θ(t)=A1sinω1t+A2sin(ω2t+φ)であらわされる振動をするような駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1に記載の揺動体装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、B1を低周波側の駆動信号の振幅成分、B2を高周波側の駆動信号の振幅成分、ω1を低周波側の駆動信号の角周波数、ω2を高周波側の駆動信号の角周波数(ω2=2×ω1)、Ψを相対位相差、tを時間とした場合、P=B1sinω1t+B2sin(ω2t+Ψ)であらわされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、f2−f2×2.8×10−4<Df2<f2+f2×2.6×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項6】
前記駆動制御手段は、f2−f2×2.1×10−4<Df2<f2+f2×2.1×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項7】
前記駆動制御手段は、f2−f2×1×10−4<Df2<f2+f2×1×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項8】
前記駆動制御手段は、更に、Df1<f1、及び、Df2≧f2を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項2に記載の揺動体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の揺動体装置において、前記第1揺動体が光偏向素子を有することを特徴とする光偏向器。
【請求項10】
請求項9に記載の光偏向器と光学系と光源と感光体とを少なくとも含み、
前記光源からの光ビームを前記光偏向器により走査し、前記光学系により前記感光体の目標位置に走査光を集光することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
第1揺動体と、第2揺動体と、前記第1揺動体を前記第2揺動体に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第1弾性支持部と、前記第2揺動体を固定部に対してねじり軸を中心にねじり振動可能に支持する第2弾性支持部と、を有する振動系と、
前記振動系を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に駆動信号を供給する駆動制御手段とを有する揺動体装置であって、
前記振動系は、前記ねじり軸まわりに少なくとも2つの固有振動モードの周波数である第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とを有し、
前記f2は前記f1の概ね2倍の関係にあり、
前記駆動制御手段は、第1の駆動周波数を有する第1の駆動信号と第2の駆動周波数を有する第2の駆動信号とを合成した駆動信号であると共に、前記第1及び第2の駆動周波数のうちの低周波側の駆動周波数Df1と高周波側の駆動周波数Df2とが、Df1×2=Df2を満たし、更にDf2が、f2−|Δf/2|<Df2<f2+|Δf/2|を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする揺動体装置。
【請求項2】
前記振動系は、Δf=f2−2×f1であらわすことができるΔfがΔf<0の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の揺動体装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
揺動体の変位角をθ、第1の振動運動の振幅をA1、角周波数をω1、第2の振動運動の振幅をA2、角周波数をω2(ω2=2×ω1)、2つの周波数の相対位相差をφ、時間をtとした場合、前記第1及び第2揺動体のうちの少なくとも1つが、θ(t)=A1sinω1t+A2sin(ω2t+φ)であらわされる振動をするような駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1に記載の揺動体装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、B1を低周波側の駆動信号の振幅成分、B2を高周波側の駆動信号の振幅成分、ω1を低周波側の駆動信号の角周波数、ω2を高周波側の駆動信号の角周波数(ω2=2×ω1)、Ψを相対位相差、tを時間とした場合、P=B1sinω1t+B2sin(ω2t+Ψ)であらわされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、f2−f2×2.8×10−4<Df2<f2+f2×2.6×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項6】
前記駆動制御手段は、f2−f2×2.1×10−4<Df2<f2+f2×2.1×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項7】
前記駆動制御手段は、f2−f2×1×10−4<Df2<f2+f2×1×10−4を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揺動体装置。
【請求項8】
前記駆動制御手段は、更に、Df1<f1、及び、Df2≧f2を満たす駆動信号を前記駆動手段に供給することを特徴とする請求項2に記載の揺動体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の揺動体装置において、前記第1揺動体が光偏向素子を有することを特徴とする光偏向器。
【請求項10】
請求項9に記載の光偏向器と光学系と光源と感光体とを少なくとも含み、
前記光源からの光ビームを前記光偏向器により走査し、前記光学系により前記感光体の目標位置に走査光を集光することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−217148(P2009−217148A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62785(P2008−62785)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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