説明

損傷検出方法、タイヤ更生方法およびタイヤ更生装置

【課題】検査部位に青色光を照射することにより、撮影装置による検査部位の損傷部の検出効率の向上および検出精度の向上を図る。
【解決手段】タイヤ更生装置Rは、使用済みタイヤから形成された台タイヤ1にバフ加工により加工された加工面2における損傷部を検出する損傷検出装置20と、前記損傷部に削り加工を施すスカイブ装置50とを備える。損傷検出装置20は、黒色の加工面2の検査部位2aに青色光を照射する照明装置21と、検査部位2aを撮影するカメラ22と、カメラ22からの画像データに基づいて前記損傷部の有無を判定する画像処理装置23とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の検査面を撮影した撮影装置からの画像データに基づいて検査面の損傷部を検出する方法、および、更生タイヤの製造において前述の検出方法が使用されるタイヤ更生方法と、該タイヤ更生方法が実施されるタイヤ更生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、使用済みタイヤから更生タイヤを製造するにあたり、使用済みタイヤから形成された台タイヤには、バフ加工が施された加工面が形成される。そして、この加工面に亀裂などの凹部からなる損傷部がある場合には、該損傷部を除去する必要があるため、加工面における損傷部の有無を検査する作業が行われる。従来、この作業は、作業員が目視で加工面を検査し、損傷部にマークを付けるというものである。そして、該検査後、前記マークが付された加工面を撮影装置により撮影することで得られる損傷部の位置情報などに基づいて、制御装置により制御されるスカイブ装置が損傷部に削り加工を施す。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開平4−341835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、黒色の台タイヤの加工面の損傷部に作業員がマークを付すなど、損傷部の検出が人為的に行われるのでは、損傷部の検出に手間がかかるために検出作業の効率が悪いので、結果的に更生タイヤの生産性が低くなり、しかもコストが増加する原因になる。また、スカイブ装置による削り加工の加工深さを設定するために、台タイヤのベルト部のコードの有無をスカイブ装置とは別個の検出装置により検出するのでは、損傷部の削り工程を中断してコードの検出工程を行う必要があるため、やはり更生タイヤの生産性の低下やコスト高を招来する。さらに、スカイブ装置による削り加工が施された損傷部において、該削り加工により露出したコードに錆が発生している場合には、その錆を除去することが望ましい。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜7記載の発明は、検査部位に青色光を照射することにより、撮影装置による検査部位の損傷部の検出効率の向上および検出精度の向上を図ることを目的とする。そして、請求項2,5記載の発明は、さらに、更生タイヤの製造にあたり、台タイヤの加工面における損傷部の検出を自動化して、更生タイヤの生産性の向上およびコスト削減を図ることを目的とし、請求項3,6記載の発明は、さらに、加工深さをスカイブ装置を利用して検出することにより、更生タイヤの生産性の向上およびコスト削減を図ることを目的とし、請求項4,7記載の発明は、さらに、撮影装置およびスカイブ装置を利用することにより、コードの錆の検出および除去の自動化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、検査対象物の検査面における損傷部を検出する損傷検出方法において、黒色の前記検査面の検査部位に青色光が照射され、前記検査部位を撮影した撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無が判定される損傷検出方法である。
請求項2記載の発明は、タイヤを更生するためのタイヤ更生方法において、前記タイヤから形成された台タイヤに施された研削加工により形成された加工面の損傷部を検出する損傷検出工程を含み、前記損傷検出工程では、黒色の前記加工面の検査部位に青色光が照射され、前記検査部位を撮影した撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無が判定されるタイヤ更生方法である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のタイヤ更生方法において、スカイブ装置が前記損傷検出工程で検出された前記損傷部に削り加工を施す削り工程を含み、前記削り工程では、前記スカイブ装置が前記台タイヤに埋設されたコードに達して前記スカイブ装置の負荷が所定負荷以上となるときに、前記削り加工が終了するものである。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のタイヤ更生方法において、前記削り加工が施された前記損傷部における前記コードの錆を除去する錆取り工程を含み、前記錆取り工程では、前記コードの錆の有無が前記画像データに基づいて検出され、検出された錆が前記スカイブ装置の削り加工により除去されるものである。
請求項5記載の発明は、タイヤを更生するためのタイヤ更生装置において、前記タイヤから形成された台タイヤに研削により加工された加工面の損傷部を検出する損傷検出装置を備え、前記損傷検出装置が、前記加工面の検査部位に青色光を照射する照明装置と、前記検査部位を撮影する撮影装置と、前記撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無を判定する画像処理装置とから構成されるタイヤ更生装置である。
請求項6記載の発明は、請求項5記載のタイヤ更生装置において、前記損傷部に削り加工を施すスカイブ装置と、前記台タイヤに埋設されたコードの露出の有無を検出するコード検出手段と、前記損傷検出装置により検出された前記損傷部を削るように前記スカイブ装置を作動させる制御装置とを備え、前記コード検出手段は、前記スカイブ装置の負荷を検出する負荷検出手段により構成されて、前記スカイブ装置が前記コードに達して前記負荷が所定負荷以上となるときに前記コードの露出を検出し、前記制御装置は、前記負荷検出手段により前記所定負荷以上の前記負荷が検出されたときに前記削り加工を終了させるものである。
請求項7記載の発明は、請求項6記載のタイヤ更生装置において、前記損傷検出装置は、前記画像データに基づいて前記削り加工が施された前記損傷部における前記コードの錆の有無を検出し、前記制御装置は、前記損傷検出装置により錆が検出されたとき、錆を除去するように前記スカイブ装置を作動させるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、検査面の検査部位に照射される青色光は、可視光のうちでも波長が短いために回折が発生しにくく、しかも紫色光に比べて明るいことから、黒色の検査部位において明暗がより鮮明となるので、損傷部と損傷部以外の部分の識別が容易になって、黒色の検査面での撮影装置による損傷部の検出作業の効率が向上し、しかも損傷部の検出精度が向上する。
請求項2記載の事項によれば、台タイヤの黒色の加工面の検査部位が青色光で照射されるので、台タイヤの加工面における損傷部の検出効率および検出精度に関して、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が奏される。そして、更生タイヤの製造にあたり、台タイヤの加工面の損傷部の検出が自動化されるので、更生タイヤの生産性が向上し、コストが削減される。
請求項3記載の事項によれば、スカイブ装置による削り加工の加工深さが、損傷部に削り加工を施すスカイブ装置を利用して設定されるので、スカイブ装置による削り加工を中断してコードの露出の検出を行う必要がなく、コードの露出を検出するための専用の検出手段が不要になるので、更生タイヤの生産性の向上およびコスト削減に寄与する。
請求項4記載の事項によれば、撮影装置を利用して削り加工が施された損傷部に露出するコードの錆が検出され、さらに損傷部に削り加工を施すスカイブ装置を利用してコードの錆が除去されるので、撮影装置およびスカイブ装置を利用することにより、コードの錆の検出および除去が自動化され、しかも更生タイヤの品質が向上する。
請求項5記載の事項によれば、タイヤ更生装置において、台タイヤの黒色の加工面の検査部位を青色光で照射する照明装置および撮影装置からの画像データに基づいて損傷部の有無を判定する画像処理装置から構成される損傷検出装置により、台タイヤの加工面における損傷部の検出効率および検出精度に関して、請求項1記載の発明の効果と同様の効果が奏される。そして、更生タイヤの生産性およびコストに関して、請求項2記載の発明と同様の効果が奏される。
請求項6記載の事項によれば、スカイブ装置の負荷を検出する負荷検出手段が台タイヤのコードの露出の有無を検出するコード検出手段を構成し、スカイブ装置による削り加工の加工深さが、損傷部に削り加工を施すスカイブ装置を利用した負荷検出手段の検出信号に基づいて設定されるので、請求項3記載の発明と同様の効果が奏される。
請求項7記載の事項によれば、損傷検出装置の撮影装置およびスカイブ装置を利用することにより、請求項4記載の発明と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
図1,図2を参照すると、本発明が適用された装置としてのタイヤ更生装置Rは、使用済みの空気入りタイヤから更生タイヤを製造するために使用される。タイヤ更生装置Rに位置決めされた台タイヤ1は、使用済みタイヤがピーリング加工などの切削加工が施されるトレッド部除去工程においてトレッド部などが除去されて形成されたタイヤである。そして、台タイヤ1には、新たにトレッド部を成形するために、前記トレッド部除去工程で切削加工により形成された切削面を滑らかにする研削加工としてのバフ加工による加工が施されて、研削面である加工面2が形成されている。
ここで、前記トレッド部除去工程と、前記バフ加工が施される工程とは、タイヤ更生装置Rにて行われる後述する損傷検出工程の前に行われる前工程である。
【0008】
また、台タイヤ1において、径方向で加工面2とカーカス3との間には、複数のベルト層4a,4b,4cが積層されて構成されるベルト部4が埋設されて設けられる。そして、各ベルト層4a〜4cは、多数のコード、ここではスチール製のコード5を有している。
なお、明細書において、軸線方向、径方向および周方向は、台タイヤ1の中心軸線Lの方向、中心軸線Lを中心とする径方向および周方向を意味する。
【0009】
タイヤ更生装置Rは、基台11と、黒色の材料を主体とする検査対象物、この実施形態では黒色のゴム材を主体とする台タイヤ1を回転可能に支持すると共に基台11に移動可能に設けられた支持装置と、黒色の検査面としての加工面2の損傷部41,42(図4(a)参照)を検出する損傷検出装置20と、損傷部41,42に研削加工または切削加工(以下、「削り加工」という。)を施して損傷部41,42を削るスカイブ装置50と、損傷検出装置20およびスカイブ装置50を制御するマイクロプロセッサからなる制御装置60と、台タイヤ1の回転位置を検出する回転位置検出手段としてのロータリエンコーダ71と、スカイブ装置50の負荷を検出する負荷検出手段72とを備える。
【0010】
前記支持装置は、台タイヤ1が載置される回転可能な1対のローラ12aを有する載置部12と、載置部12に載置された台タイヤ1の1対のビード部6に嵌合して台タイヤ1をその軸線方向から支持する1対の側方支持部13とを備える。基台11に対して軸線方向に互いに接近および離隔可能に設けられる各側方支持部13は、基台11に固定されたレール11a上を移動可能な基部13aと、基部13aに上下方向に位置調整可能な可動支持部13bと、可動支持部13bに回転可能に支持される軸部14aを有すると共にビード部6に嵌合する回転支持部14と、1対のローラ12a上で台タイヤ1を回転駆動する駆動機構15と、から構成される。
【0011】
駆動機構15は、一方の側方支持部13の可動支持部13bに取り付けられたサーボモータ15aと、サーボモータ15aの回転を減速して一方の回転支持部14に伝達するベルト式の伝動機構15bとを有する。
なお、1対のビード部6が1対の回転支持部14により密閉されることにより台タイヤ1の内部に形成される内部空間7は、空気圧調整装置(図示されず)から供給されて台タイヤ1の形状を保持するための加圧空気で満たされている。
【0012】
加工面2全体を検査することで、該加工面2に存在し得る損傷部41,42を自動的に検出する損傷検出装置20は、加工面2の検査部位2aに青色光のみを照射する照明装置21と、検査部位2aを撮影する撮影装置としてのカラー用のテレビカメラであるカメラ22と、カメラ22からの画像データを処理する画像処理装置23と、カメラ22で撮影された映像を表示する表示装置としてのモニタ24とから構成される。
【0013】
照明装置21は、検査部位2aに対するカメラ22の撮影方向とは異なる方向で、かつ検査部位2aを異なる方向から照射する複数の、ここでは1対の照明器21aを有する。青色の光を発する両照明器21aは、軸線方向でカメラ22を挟んで台タイヤ1の赤道面の両側にそれぞれ配置される。支持部材(図示されず)に支持される各照明器21aの作動および台タイヤ1に対する位置は制御装置60により制御されて、その光度、照射位置および照射方向が制御される。
【0014】
同様に、支持部材(図示されず)に支持されるカメラ22の作動および台タイヤ1に対する位置は制御装置60により制御される。より具体的には、カメラ22は、制御装置60により制御されて、加工面2全体を周方向に分割して形成される複数の検査部位2aを1つずつ、順次撮影する。さらに、この実施形態では赤道面上に配置されるカメラ22は、例えば赤道面上以外の位置にも配置されるように、その撮影位置および撮影方向が制御される。
【0015】
図1,図3,図4を参照すると、マイクロプロセッサを備える画像処理装置23は、加工面2の損傷部41,42の有無を判定する損傷判定手段31と、スカイブ装置50により削り加工が施された損傷部41,42(以下、「加工済み損傷部」という。)で露出しているコード5における錆の有無を判定する錆判定手段32と、損傷部41,42および錆発生部の位置を特定する位置特定手段33とを備える。
【0016】
損傷判定手段31は、カメラ22からの画像データに基づいて撮影された検査部位2aの輝度マップ(図4(b)参照)を作成する輝度マップ作成手段35と、該輝度マップに基づいて検査部位2aの損傷部41,42を判別する損傷判別手段36とから構成される。
【0017】
輝度マップ作成手段35は、検査部位2a毎に、検査部位2aの画像データを構成する多数の画素39について、各画素39の輝度を測定して輝度マップを作成する。
例えば、輝度マップ作成手段35は、図4(a)に示される検査部位2aを撮影したカメラ22の画像データを処理して、図4(b)に示される輝度マップを作成する。バフ加工された加工面2に存在する損傷部41,42は、亀裂や穴などの凹部であることから、画像データでは損傷部41,42が小さい輝度の画素39として認識される。このため、検査部位2aにある損傷部41,42(図4(a)参照)はもちろん、損傷部41,42とはいえない浅い凹部43(図4(a)参照)も、輝度マップ上では周囲に比べて輝度が小さい画素39a,39b,39cとして認識される。なお、便宜上、図4(b)においては、凹部となっていない部分の画素39が空白で示され、加工面2上の凹部を示す画素39が、輝度が小さい順に、実線、破線および点線のハッチングで示される画素39a,39b,39cとして示されている。なお、図4では、説明の便宜上、分かり易さの観点から損傷部や画素が描かれている。
【0018】
併せて図4(c)を参照すると、損傷判別手段36は、各画素39の輝度を予め設定された損傷用設定輝度と比較して二値化することにより、各画素39を、輝度が損傷用設定輝度以下の暗画素39dと、輝度が損傷用設定輝度よりも大きい明画素39eとに二分して、暗画素39dの部分を損傷部41,42である判定する。ここで、凹部43を示す画素39cの輝度は、損傷用設定輝度よりも大きいため損傷部であると判定されない。
【0019】
そして、損傷部41,42の検出にあたり検査部位2aに照射される可視光である青色光は、可視光のうちで波長が短いために回折が発生しにくいうえ、紫色光より明るいために、カメラ22で撮影される黒色の加工面2での損傷部41,42と損傷部41,42以外の部分との境界をより鮮明にする。このため、青色光の使用により、カメラ22による損傷部41,42の識別が容易になって、損傷部41,42の検出精度が向上する。
【0020】
位置特定手段33は、損傷判別手段36で判定された損傷部41,42の位置を、ロータリエンコーダ71から画像処理装置23に入力される基準位置からの台タイヤ1の回転角度と、検査部位2aにおける各画素39の位置を特定する座標系としての直交座標のX座標およびY座標とに基づいて、損傷部41,42の位置を特定する。そして、位置特定手段33により損傷部41,42の位置が画素39単位で特定されることで、各損傷部41,42を構成する暗画素39の数により該損傷部41,42の大きさも測定される。そして、位置特定手段33からの損傷部41,42に関する信号、すなわち損傷部41,42の位置および大きさを含む信号が制御装置60に入力される。
【0021】
錆判定手段32は、損傷判定手段31の一部である輝度マップ作成手段35と、輝度マップ作成手段35により作成された輝度マップに基づいて各加工済み損傷部のコード5の錆を判別する錆判別手段37とから構成される。
スカイブ装置50での削り加工の結果、露出した最外層のベルト層4aのコード5において、画像データでは錆が小さい輝度の画素として認識される。このため、損傷判別手段36と同様の機能を行う錆判別手段37は、各画素の輝度を予め設定された錆用設定輝度と比較して二値化することにより、各画素を、輝度が錆用設定輝度以下の暗画素と、輝度が錆用設定輝度よりも大きい明画素とに二分して、暗画素を錆発生部として判定する。
そして、スチール製のコード5に発生する錆は、通常、赤みまたは黄みを帯びていることから、錆の検出にあたり加工済み損傷部に青色光が照射されることにより、例えば白色光が照射される場合に比べて、カメラ22による錆の識別が容易になる。
【0022】
また、位置特定手段33は、錆判別手段37からの画像データに基づいて損傷部41,42と同様にして錆発生部の位置を特定すると共に、1つの錆発生部を構成する暗画素の数により錆発生部の大きさを測定する。そして、位置特定手段33からの錆発生部に関する信号、すなわち錆発生部の位置および大きさを含む信号が制御装置60に入力される。
【0023】
図2を参照すると、スカイブ装置50は、制御装置60によりその作動が制御される電動モータ53(図3に模式的に示されている。)で回転駆動される複数の加工具としての研削具54を備えるマシニングセンタにより構成される。スカイブ装置50は、電動モータ53が載置される可動支持部材51と、可動支持部材51に回動可能に支持されて研削具54が取り付けられた円柱状の工具取付部52とを備える。可動支持部材51は上下方向および軸線方向に移動可能である。また、複数の研削具54は、例えば大小の荒削り用工具54a,54bと、大小の仕上げ用工具54c,54dとで構成される。
【0024】
図3を併せて参照すると、制御装置60は、画像処理装置23から入力される信号に基づいて、工具取付部52を回動させて損傷部41,42(図4(a)参照)や錆発生部の大きさなどに応じて適切な研削具54を選択すると共に、可動支持部材51を移動させたり、工具取付部52を回動させたりすることにより、研削具54を損傷部41,42および錆発生部に移動させて、損傷部41,42および錆発生部に削り加工を施す。
【0025】
制御装置60は、電動モータ53を駆動するための駆動信号としての電流量を制御して所定の回転速度で研削具54を回転させる。そして、スカイブ装置50による損傷部41,42の加工深さは、負荷検出手段72により検出されるスカイブ装置50の負荷に基づいて、研削具54が台タイヤ1に埋設されたベルト層4aのコード5に達したときの深さに設定される。
具体的には、スカイブ装置50の研削具54が損傷部41,42に削り加工を施しているとき、研削具54が加工面2を形成しているゴム材よりも硬度が大きいコード5に接触すると、研削具54に作用する負荷が大きくなるため、制御装置60は電流量を多くして、研削具54の回転速度を維持するように電動モータ53を制御する。そこで、負荷検出手段72は、この電流量の変化からスカイブ装置50の負荷を検出する。そして、負荷検出手段72が、研削具54が損傷部41,42を削る過程でコード5に達して研削具54の負荷が所定負荷以上に増加し、電流量が所定値以上になること、すなわちスカイブ装置50の負荷が前記所定負荷以上になることを検出したとき、制御装置60は、スカイブ装置50による損傷部41,42の削り加工を終了する。
また、研削具54がコード5に達したとき、加工済み損傷部ではコード5が露出することになることから、負荷検出手段72は、加工済み損傷部でのコード5の露出の有無を検出するコード検出手段を構成する。
【0026】
図1〜図4を参照して、このタイヤ更生装置Rにより行われるタイヤ更生方法での各工程について説明する。
まず、タイヤ更生装置Rにセットされた台タイヤ1の加工面2の損傷部41,42を検出する損傷検出工程が行われる。損傷検出工程では、1対の照明器21aから黒色の加工面2の検査部位2aに青色光が照射され、検査部位2aを撮影したカメラ22からの画像データに基づいて、画像処理装置23により損傷部41,42の有無が自動的に判定される。
より具体的には、制御装置60により撮影位置および撮影方向が制御されたカメラ22が、制御装置60により光度、照射位置および照射方向が制御された各照明器21aにより青色光で照射された検査部位2aを撮影する。画像処理装置23の損傷判定手段31では、輝度マップ作成手段35がカメラ22からの画像データに基づいて撮影された検査部位2aの輝度マップを作成し、損傷判別手段36が輝度マップに基づいて加工面2の損傷部41,42を判定し、位置特定手段33が損傷部41,42の位置および大きさを含む信号を制御装置60に出力する。
【0027】
次いで、画像処理装置23から制御装置60に入力される損傷部41,42に関する位置信号などの信号に基づいて、制御装置60が、損傷検出工程で損傷検出装置20により検出された損傷部41,42に削り加工が施されるように、スカイブ装置50の研削具54の選択および位置を制御して、スカイブ装置50を作動させる削り工程が行われる。削り工程では、研削具54により損傷部41,42が削られて、亀裂や穴が除去されて加工済み損傷部に加工される。そして、損傷部41,42が削られている過程で、スカイブ装置50の研削具54がコード5に達して負荷検出手段72によりスカイブ装置50の負荷が所定負荷以上となることが検出されたとき、制御装置60は、スカイブ装置50による削り加工を終了させる。
【0028】
このようにして、すべての検査部位2aに対して、順次、損傷部41,42の検出と、検出された損傷部41,42への削り加工が施されて、加工面2全体における損傷検出工程および削り工程が終了する。
【0029】
その後、加工済み損傷部におけるコード5の錆を除去する錆取り工程が行われる。この錆取り工程は、損傷検出装置20により、加工済み損傷部でのコード5の錆の有無がカメラ22からの画像データに基づいて検出される錆検出工程と、錆検出工程で検出された錆がスカイブ装置50の削り加工により除去される錆除去工程とから構成される。
【0030】
錆検出工程では、損傷検出工程と同様にカメラ22が各照明器21aにより青色光で照射された検査部位2aを撮影する。そして、画像処理装置23の錆判定手段32では、輝度マップ作成手段35がカメラ22からの画像データに基づいて撮影された検査部位2aの輝度マップを作成し、損傷判別手段36が輝度マップに基づいて加工面2の加工済み損傷部での錆発生部を判定し、位置特定手段33が錆発生部の位置および大きさを含む信号を制御装置60に出力する。
錆除去工程では、制御装置60は、位置特定手段33からの錆発生部に関する信号に基づいて、スカイブ装置50の仕上げ用工具からなる切削具により錆発生部に削り加工が施されて錆が除去されるように、スカイブ装置50の研削具54の選択および位置を制御して、スカイブ装置50を作動させる。
【0031】
そして、1つの検査部位2aでのすべての錆発生部の削り加工が一旦終了した後、錆検出工程が再度行われ、加工済み損傷部に錆発生部が検出された場合には、錆除去工程が再度行われる。そして、この錆検出工程および錆除去工程が、1つの検査部位2aに対して、錆発生部が検出されなくなるまで繰り返して行われる。
このようにして、すべての検査部位2aに対して、順次錆取り工程が行われて、加工面2におけるコード5の錆が除去されて、錆取り工程が終了する。
【0032】
そして、タイヤ更生装置Rによる前述の損傷検出工程、削り工程および錆取り工程が終了した後、加工済み損傷部には、セメントが塗布され、さらに未加硫のゴムが充填されて、加工済み損傷部がゴムにより穴埋めされる。次いで、加工面2にセメントが塗布された後、加工面2に未加硫のトレッド部が貼付けられる。このようにしてトレッド部が貼り付けられた台タイヤ1が金型に入れられて加硫が行なわれて、台タイヤ1に新たなトレッド部が成形される後工程が行われて、更生タイヤが製造される。
【0033】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
タイヤ更生装置Rにおいて、加工面2の損傷部41,42を検出する損傷検出装置20が、加工面2の検査部位2aに青色光を照射する1対の照明器21aと、検査部位2aを撮影するカメラ22と、カメラ22からの画像データに基づいて損傷部41,42の有無を判定する画像処理装置23とから構成されて、台タイヤ1の加工面2における損傷部41,42を検出する損傷検出工程において、黒色の加工面2の検査部位2aに青色光が照射され、検査部位2aを撮影したカメラ22からの画像データに基づいて損傷部41,42の有無が判定される。これにより、加工面2の検査部位2aに照射される青色光は、可視光のうちでも波長が短いために回折が発生しにくく、しかも紫色光に比べて明るいことから、黒色の検査部位2aにおいて明暗がより鮮明となるので、損傷部41,42と損傷部41,42以外の部分の識別が容易になって、カメラ22による黒色の加工面2での損傷部41,42の検出作業の効率が向上し、しかも損傷部41,42の検出精度が向上する。そして、更生タイヤの製造にあたり、台タイヤ1の加工面2の損傷部41,42の検出が自動化されるので、更生タイヤの生産性が向上し、コストが削減される。
【0034】
タイヤ更生装置Rが、スカイブ装置50と、台タイヤ1のコード5の露出の有無を検出する前記コード検出手段と、スカイブ装置50を作動させる制御装置60とを備え、該コード検出手段は、スカイブ装置50の負荷を検出する負荷検出手段72により構成されて、スカイブ装置50の研削具54がコード5に達して負荷が所定負荷以上となるときにコード5の露出を検出し、制御装置60は、負荷検出手段72により前記所定負荷以上の負荷が検出されたときに削り加工を終了させることにより、スカイブ装置50による削り加工の加工深さが、損傷部41,42に削り加工を施すスカイブ装置50を利用した負荷検出手段72の検出信号に基づいて設定されるので、スカイブ装置50による削り加工を中断してコード5の露出の検出を行う必要がなく、コード5の露出を検出するための専用の検出手段が不要になるので、更生タイヤの生産性の向上およびコスト削減に寄与する。
【0035】
損傷検出装置20は、カメラ22からの画像データに基づいて加工済み損傷部におけるコード5の錆の有無を検出し、制御装置60は、損傷検出装置20により錆が検出されたとき、錆を除去するようにスカイブ装置50を作動させることにより、錆取り工程では、カメラ22を利用して加工済み損傷部でのコード5の錆が検出され、さらに損傷部41,42に削り加工を施すスカイブ装置50を利用してコード5の錆が除去されるので、カメラ22およびスカイブ装置50を利用することにより、コード5の錆の検出および除去が自動化され、しかも更生タイヤの品質が向上する。
そして、加工済み損傷部がある加工面2の検査部位2aに青色光が照射されることにより、スチール製のコード5に発生する赤みまたは黄みを帯びている錆がより鮮明にカメラ22に映るので、錆の識別が容易になって、錆の検出精度が向上する。
【0036】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
検査部位は、前記実施形態では加工面が周方向に分割されて形成されたが、加工面が周方向および軸線方向に分割されて形成されてもよい。
損傷検出工程が行われる領域と削り工程が行われる領域とを仕切部材で仕切るなどして、削り工程での加工粉などが損傷検出工程に影響を与えないようにすることで、損傷検出工程および削り工程が並行して行われてもよい。
前記実施形態では、損傷検出装置は、タイヤ更生装置以外に使用されてもよく、したがって検査対象物はタイヤ以外の円環状部材または柱状部材などの部材、例えばローラであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用されたタイヤ更生装置の要部の図である。
【図2】図1のII−II矢視での要部の側面図である。
【図3】図1のタイヤ更生装置の画像処理装置および制御装置を説明するための図である。
【図4】(a)は、図1のタイヤ更生装置のカメラで撮影される検査部位を説明する図であり、(b)は、(a)の検査部位の輝度を示す画像データ(輝度マップ)を説明する図であり、(c)は、(a)の検査部位の損傷部を判定するための画像データを説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1…台タイヤ、2…加工面、5…コード、20…損傷検出装置、21…照明装置、22…カメラ、23…画像処理装置、31…損傷判定手段、32…錆判定手段、41,42…損傷部、50…スカイブ装置、60…制御装置、72…負荷検出手段、
R…タイヤ更生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査面における損傷部を検出する損傷検出方法において、
黒色の前記検査面の検査部位に青色光が照射され、前記検査部位を撮影した撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無が判定されることを特徴とする損傷検出方法。
【請求項2】
タイヤを更生するためのタイヤ更生方法において、
前記タイヤから形成された台タイヤに施された研削加工により形成された加工面の損傷部を検出する損傷検出工程を含み、前記損傷検出工程では、黒色の前記加工面の検査部位に青色光が照射され、前記検査部位を撮影した撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無が判定されることを特徴とするタイヤ更生方法。
【請求項3】
スカイブ装置が前記損傷検出工程で検出された前記損傷部に削り加工を施す削り工程を含み、前記削り工程では、前記スカイブ装置が前記台タイヤに埋設されたコードに達して前記スカイブ装置の負荷が所定負荷以上となるときに、前記削り加工が終了することを特徴とする請求項2記載のタイヤ更生方法。
【請求項4】
前記削り加工が施された前記損傷部における前記コードの錆を除去する錆取り工程を含み、前記錆取り工程では、前記コードの錆の有無が前記画像データに基づいて検出され、検出された錆が前記スカイブ装置の削り加工により除去されることを特徴とする請求項3記載のタイヤ更生方法。
【請求項5】
タイヤを更生するためのタイヤ更生装置において、
前記タイヤから形成された台タイヤに研削により加工された加工面の損傷部を検出する損傷検出装置を備え、前記損傷検出装置が、前記加工面の検査部位に青色光を照射する照明装置と、前記検査部位を撮影する撮影装置と、前記撮影装置からの画像データに基づいて前記損傷部の有無を判定する画像処理装置とから構成されることを特徴とするタイヤ更生装置。
【請求項6】
前記損傷部に削り加工を施すスカイブ装置と、前記台タイヤに埋設されたコードの露出の有無を検出するコード検出手段と、前記損傷検出装置により検出された前記損傷部を削るように前記スカイブ装置を作動させる制御装置とを備え、前記コード検出手段は、前記スカイブ装置の負荷を検出する負荷検出手段により構成されて、前記スカイブ装置が前記コードに達して前記負荷が所定負荷以上となるときに前記コードの露出を検出し、前記制御装置は、前記負荷検出手段により前記所定負荷以上の前記負荷が検出されたときに前記削り加工を終了させることを特徴とする請求項5記載のタイヤ更生装置。
【請求項7】
前記損傷検出装置は、前記画像データに基づいて前記削り加工が施された前記損傷部における前記コードの錆の有無を検出し、前記制御装置は、前記損傷検出装置により錆が検出されたとき、錆を除去するように前記スカイブ装置を作動させることを特徴とする請求項6記載のタイヤ更生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−128790(P2008−128790A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313365(P2006−313365)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】