説明

搬送ロボット用エンドエフェクタ

【課題】搬送物の状態に応じて使い分けることができるエンドエフェクタを、簡単な構造によって達成すること。
【解決手段】本発明のエンドエフェクタにおいて、アームの先端部に装着されるハンド基部と、ハンド基部に回転可能に設けられた複数の基板保持部材と、複数の基板保持部材を各回転軸線周りに回転させる回転駆動手段と、を備える。複数の基板保持部材のそれぞれは、回転軸線に沿って延在する細長部材を有し、回転軸線周りに細長部材を回転させることによって、細長部材の側面全体のうちの基板を保持する部分が変わるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボット用のエンドエフェクタに係わり、特に、半導体ウェハ等の基板の搬送に適した搬送ロボット用エンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウェハ等の基板を搬送するためにロボットが使用されており、この種の搬送ロボットは、そのアームの先端に、基板を保持するためのエンドエフェクタ(ハンド)が設けられている。
【0003】
そして、この種の搬送ロボットを用いて、カセットから処理対象のウェハを取り出して所定の処理装置内に搬送し、或いは逆に、処理装置から処理済みのウェハを取り出してカセット内に搬入する。
【0004】
ここで、ある種の処理装置からウェハを取り出すに際しては、その装置の特徴に応じて、その装置による処理を行う前のウェハと、処理後のウェハとで、搬送に用いるロボットのハンドを区別する必要がある場合がある。
【0005】
例えば、ウェハの洗浄装置におけるロボットにおいては、洗浄前の汚れた状態のウェハをハンドリングするためのハンドと、洗浄後の清浄なウェハをハンドリングするためのハンドとを厳密に区別する必要がある。
【0006】
このようにウェハの状態に応じてハンドを使い分けるための搬送ロボットとしては、従来、2つのアームを備えた搬送ロボットが知られている(特許文献1)。このダブルアーム式の搬送ロボットにおいては、例えば、一方のアームのハンドを清浄なウェハの搬送に使用し、他方のアームのハンドを汚れたウェハの搬送に使用する。
【0007】
また、従来の他のタイプの搬送ロボットとしては、1本のアームに複数のハンドを装着したものがある(特許文献2)。この種の搬送ロボットにおいては、特定のハンドを清浄なウェハの搬送に使用し、他のハンドを汚れたウェハの搬送に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/007516A1
【特許文献2】特開平10−41371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来のダブルアーム式の搬送ロボットは、その構造が複雑であり、また、2本のアームの動作を制御する必要があるために、その制御シーケンスが複雑になるという問題があった。
【0010】
また、1本のアームに複数のハンドを装着した搬送ロボットも、その構造が複雑であり、この構造の複雑さに起因して制御シーケンスが複雑になるという問題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、搬送物の状態に応じて使い分けることができるエンドエフェクタを、簡単な構造によって達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、ロボットのアームに装着されるように構成されたエンドエフェクタにおいて、前記アームの先端部に装着されるハンド基部と、前記ハンド基部に回転可能に設けられた複数の基板保持部材と、前記複数の基板保持部材を各回転軸線周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、前記複数の基板保持部材のそれぞれは、前記回転軸線に沿って延在する細長部材を有し、前記回転軸線周りに前記細長部材を回転させることによって、前記細長部材の側面全体のうちの基板を保持する部分が変わるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が多角形を成している。
【0014】
また、好ましくは、前記多角形が正多角形である。
【0015】
また、好ましくは、前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が円形を成している。
【0016】
また、好ましくは、前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が略H型を成している。
【0017】
また、好ましくは、前記基板保持部材によって前記基板を保持する際に前記基板の縁部に係合されるエッジグリップが、前記細長部材の先端部付近に設けられている。
【0018】
また、好ましくは、前記エッジグリップは、前記細長部材の先端部に嵌着された筒状部と、前記筒状部から、前記回転軸線に関して放射方向に延在する鍔状部と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搬送物の状態に応じて使い分けることができるエンドエフェクタを、簡単な構造によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるエンドエフェクタを備えた搬送ロボットを示した斜視図。
【図2】(a)は、図1に示した搬送ロボットのエンドエフェクタの部分を拡大して示した斜視図。(b)は、(a)の可動当接部の部分を拡大して示した図。
【図3】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材の基板保持部を説明するための図。
【図4】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材を回転駆動するための機構を説明するための図。
【図5】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材の動作を説明するための図。
【図6】図2に示したエンドエフェクタの他の使用態様を説明するための図。
【図7】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材の一変形例を示した図。
【図8】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材の他の変形例を示した図。
【図9】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材及びエッジグリップの一変形例を示した図。
【図10】図2に示したエンドエフェクタの基板保持部材及びエッジグリップの他の変形例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態によるエンドエフェクタを備えた搬送ロボットについて、図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示したように本実施形態による搬送ロボット1は、ロボットベース2を備え、このロボットベース2には昇降主軸3が設けられている。この昇降主軸3は、ロボットベース2内に設けられた昇降駆動機構及び回転駆動機構によって、第1垂直軸L1に沿って昇降可能且つその周りに回転可能である。
【0023】
昇降主軸3の上端には第1アーム4の基端部が装着されており、第1アーム4の先端部には、第2アーム5の基端部が第2垂直軸L2周りに回転可能に装着されている。第2アーム5の先端部には、半導体ウェハWを保持するためのエンドエフェクタ6が、第3垂直軸L3周りに回転可能に設けられている。
【0024】
図2に示したように搬送ロボット1のエンドエフェクタ6は、ハンド基部7を備えており、このハンド基部7は、第2アーム5の先端部に、第3垂直軸L3周りに回転可能に装着されている。
【0025】
ハンド基部7の前面には、一対の基板保持部材8A、8Bが回転可能に設けられており、一対の基板保持部材8A、8Bのそれぞれは、各回転軸線La、Lb沿って延在する一対の細長部材9A、9Bを有する。細長部材9A、9Bは、回転軸線La、Lbに垂直な断面が正三角形を成している三角柱部材で構成されている。
【0026】
図3に示したように、細長部材9Aを構成する三角柱部材の3つの側面のそれぞれが、ウェハWを保持する基板保持部10A、11A、12Aを形成している。同様に、細長部材9Bを構成する三角柱部材の3つの側面のそれぞれが、ウェハWを保持する基板保持部10B、11B、12Bを形成している。
【0027】
図2に示したように細長部材9A、9Bの基端部には連結部材13A、13Bが設けられており、連結部材13A、13Bは、ハンド基部7の前面に形成された各孔に挿通されている。
【0028】
図4に示したように連結部材13A、13Bには、ハンド基部7の内部においてベルト14が掛け渡されており、サーボモータ15によって一方の連結部材13Aを回転させることにより、ベルト14を介して他方の連結部材13Bが同期して回転する。これにより、一対の細長部材9A、9Bを同期して回転させることができる。
【0029】
従って、基板保持部材8A、8Bにおいて基板保持部を切り換える際には、サーボモータ15を駆動して一対の細長部材9A、9Bを同期して回転させ、例えば、図5に示したように基板保持部11A、11Bを基本保持位置に配置する。
【0030】
なお、図4に示したベルト駆動機構に代えて、ギヤトレイン機構によって一対の細長部材9A、9Bの回転を同期させても良い。
【0031】
図2に示したように、各細長部材9A、9Bの先端部付近には、ウェハWを保持する際にウェハWの縁部に係合されるエッジグリップ16A、16Bが、各基板保持部10A−12A、10B−12B(図3)のそれぞれに設けられている。
【0032】
ハンド基部7の前面中央部には、ウェハWの縁部に解放可能に当接される可動当接部17が進退自在に設けられている。この可動当接部17は、ハンド基部7内に設けられたエアシリンダ18によって進退駆動される。
【0033】
また、ハンド基部7の内部には、可動当接部17を回転させる回転駆動源(図示せず)が設けられており、この回転駆動源によって可動当接部17を180度回転させることによって、可動当接部17の前面におけるウェハWとの接触箇所17a、17b(図2(b)に示す)を変更することができる。これにより、清浄なウェハWを保持する場合と、汚れたウェハWを保持する場合とで、可動当接部17においてもウェハWとの接触箇所17a、17bを使い分けることができる。
【0034】
変形例としては、上述の回転駆動源に代えて、可動当接部17を上下に移動させる昇降駆動源を設け、この昇降駆動源によって可動当接部17を上下に移動させることによって、可動当接部17の前面におけるウェハWとの接触箇所17a、17bを適宜変更するようにしても良い。
【0035】
そして、上述したエンドエフェクタ6を備えたロボット1を用いてウェハWを搬送する際には、ウェハWの状態に応じて基板保持部材8A、8Bの基板保持部10A−12A、10B−12Bを適宜切り換えることができる。
【0036】
例えば、清浄なウェハWを搬送する際には図3に示したように基板保持部10A、10BによってウェハWを保持し、一方、汚れたウェハWを搬送する際には図5に示したように基板保持部11A、11BによってウェハWを保持する。
【0037】
このようにウェハWの状態に応じて基板保持部10A−12A、10B−12Bを適宜切り換えることによって、互いに状態の異なるウェハWを1つのエンドエフェクタ6によって適切に取り扱うことができる。
【0038】
以上述べたように本実施形態によるエンドエフェクタによれば、ウェハWの状態(清浄な状態/汚れた状態)に応じて使い分けることができるエンドエフェクタ6を、従来のエンドエフェクタよりも簡単な構造によって達成することができる。
【0039】
また、本実施形態における細長部材9A、9Bは正三角柱から成り、回転軸線La、Lbは正三角形の断面の中心を通っている。このため、細長部材9A、9Bを回転させて基板保持部10A−12A、10B−12Bを切り換えた場合でも、基板保持部7に対するウェハWの相対的な保持位置は変化しないので、ロボットアームを駆動してウェハWを取りに行く際の制御シーケンス(或いは保持したウェハWを所定の位置に置きにいく際の制御シーケンス)の複雑化がもたらされることがない。
【0040】
なお、上述した実施形態においては三角柱部材から成る細長部材9A、9Bの各側面でウェハWを保持するようにしたが、変形例としては、図6に示したように三角柱部材の稜線によってウェハWを保持するようにしても良い。このようにすれば、各基板保持部(稜線)同士が離間しているので、清浄なウェハWの汚損をより確実に防止することができる。
【0041】
また、他の変形例としては、三角柱部材から成る細長部材9A、9Bに代えて、図7に示したように円柱部材から成る細長部材9A’、9B’を用いることもできるし、或いは、図8に示したように断面が略H型の細長部材9A’’、9B’’を用いることもできる。
【0042】
また、図2に示したエッジグリップ16A、16Bに代えて、図9に示したようなエッジグリップ16A’、16B’を用いることもできる。即ち、この例におけるエッジグリップ16A’、16B’は、細長部材9A’’’、9B’’’(この例では四角柱部材)の先端部に嵌着された筒状部19A、19Bと、筒状部19A、19Bから、回転軸線La、Lbに関して放射方向に延在する鍔状部20A、20Bとを備えている。
【0043】
同様に、図10に示したように、円柱部材から成る細長部材9A’、9B’の先端部に、筒状部19A’、19B’及び鍔状部20A’、20B’から成るエッジグリップ16A’’、16B’’を嵌着しても良い。
【0044】
また、本発明によるエンドエフェクタの搬送対象は、上述した半導体ウェハ(円形基板)に限定されるものではなく、例えば、液晶表示パネルのガラス基板(方形基板)や、ソーラーパネルのガラス基板(方形基板)等を搬送することもできる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 搬送ロボット
2 ロボットベース
3 昇降主軸
4 第1アーム
5 第2アーム
6 エンドエフェクタ
7 ハンド基部
8A、8B 基板保持部材
9A、9B、9A’、9B’、9A’’、9B’’、9A’’’、9B’’’ 細長部材
10A−12A、10B−12B 基板保持部
13A、13B 連結部材
14 ベルト
15 サーボモータ
16A、16B、16A’、16B’、16A’’、16B’’ エッジグリップ
17 可動当接部
18 エアシリンダ
19A、19B、19A’、19B’ 筒状部
20A、20B、20A’、20B’ 鍔状部
La、Lb 回転軸線
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのアームに装着されるように構成されたエンドエフェクタにおいて、
前記アームの先端部に装着されるハンド基部と、
前記ハンド基部に回転可能に設けられた複数の基板保持部材と、
前記複数の基板保持部材を各回転軸線周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記複数の基板保持部材のそれぞれは、前記回転軸線に沿って延在する細長部材を有し、
前記回転軸線周りに前記細長部材を回転させることによって、前記細長部材の側面全体のうちの基板を保持する部分が変わるように構成されていることを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が多角形を成している請求項1記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記多角形が正多角形である請求項2記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が円形を成している請求項1記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記細長部材は、前記回転軸線に垂直な断面が略H型を成している請求項1記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記基板保持部材によって前記基板を保持する際に前記基板の縁部に係合されるエッジグリップが、前記細長部材の先端部付近に設けられている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記エッジグリップは、前記細長部材の先端部に嵌着された筒状部と、前記筒状部から、前記回転軸線に関して放射方向に延在する鍔状部と、を有する請求項6記載のエンドエフェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−130985(P2012−130985A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284921(P2010−284921)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】