説明

携帯通信端末及び緊急事態通知システム

【課題】 緊急通知操作することなく、緊急事態の発生時にほぼリアルタイムで緊急通知を実行できる携帯通信端末及び緊急事態通知システムを提供する。
【解決手段】 本発明の携帯通信端末は、被監視者が携帯するものであり、当該携帯通信端末の移動速度を検出する移動速度検出手段と、検出された移動速度に基づいて、緊急事態の発生を認識する緊急事態発生認識手段と、緊急事態の発生が認識されたときに、外部装置に、緊急事態の発生を通知する緊急通知手段とを有する。例えば、徒歩で通学をしている児童が、車両に連れ込まれて移動しているときには、高速移動に基づいて、緊急事態の発生が認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯通信端末及び緊急事態通知システムに関し、例えば、通学時の児童の連れ去りなどに対処しようとしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、緊急通報のために携帯電話などの携帯通信端末を利用したものが多く提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものがあり、携帯通信端末は、いずれも通報者の緊急通報スイッチの操作に応じて、緊急通報の発信を行うものであった。また、徘徊者などが携帯する携帯通信端末を監視センタ側で検索し、緊急時に対応するシステムも既に提案されている。
【特許文献1】特開平11−112695号公報
【特許文献2】特開2001−95045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、児童の連れ去りなどの場合、通報したい者の手足などが拘束され、緊急通報スイッチを操作し得ないこともあり得る。
【0004】
このような場合を考慮すると、携帯通信端末を監視センタ側で検索して緊急事態の発生を認識することが好ましい。しかしながら、児童の連れ去りなどの場合、帰宅時間を過ぎても帰宅しないことにより、保護者が検索依頼すると考えられ、検索時点が緊急事態の発生時点からかなり遅れてしまい、検索が有効に機能し得ないことも考えられる。
【0005】
そのため、緊急通知操作を条件とすることなく、緊急事態の発生時にほぼリアルタイムで緊急通知を実行できる携帯通信端末及び緊急事態通知システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、被監視者が携帯する携帯通信端末において、(1)当該携帯通信端末の移動速度を検出する移動速度検出手段と、(2)検出された移動速度に基づいて、緊急事態の発生を認識する緊急事態発生認識手段と、(3)緊急事態の発生が認識されたときに、外部装置に、緊急事態の発生を通知する緊急通知手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、第2の本発明の緊急事態通知システムは、第1の本発明の携帯通信端末と、その緊急通知手段が送信した緊急事態の発生通知を受領する監視装置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、携帯通信端末が自己の移動速度に基づいて、緊急事態の発生を認識して通知するようにしたので、緊急通知操作を条件とすることなく、緊急事態の発生時にほぼリアルタイムで緊急通知を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による携帯通信端末及び緊急事態通知システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。第1の実施形態の緊急通信システムは、携帯電話システムを利用したものである。
【0010】
図1は、第1の実施形態の緊急事態通知システム1の全体構成を示すブロック図である。図1において、第1の実施形態の緊急事態通知システム1は、第1の実施形態の携帯通信端末である携帯電話機2と、自己の管轄エリア内の携帯電話機2との通信を適宜行う基地局3と、携帯電話網4を介して多数の基地局3を収容、管理している管理センタ装置5と、管理センタ装置5と公衆網又は専用回線などの所定回線6を介して通信可能な、携帯電話機2の状態を監視対象としている監視端末7とを有している。
【0011】
携帯電話機2は、後述するように、携帯者(例えば幼稚園児や小学生など)が緊急事態に陥ったことを自動的に検出して通報する機能(緊急事態の検出、緊急通知機能)を有するものであり、後述するような詳細構成を有するものである。緊急通知などには、携帯電話機2の待ち受けチャネル(発呼や着呼を待ち受けている状態で携帯電話機2及び基地局3が通信するチャネル)を利用するものであっても良く、発信処理して確立した通話チャネルを利用するものであっても良く、「110(警察署呼出)」、「1416(留守番サービス呼出)」と同様な特番発信を利用するものであっても良い。
【0012】
この第1の実施形態の場合、基地局3及び携帯電話網4は、携帯電話機2からの緊急通知を管理センタ装置5に与えるための中継機能を担っているものである。
【0013】
管理センタ装置5は、監視端末7と連携をとって、携帯電話機2の携帯者が緊急事態に陥ったことなどを監視者に通知するものである。一般に、どの携帯電話機2がどの基地局3の配下をあるかを一括管理しているセンタ装置が存在するが、このセンタ装置を、緊急通知用の管理センタ装置5として併用するようにしても良い。
【0014】
管理センタ装置5は、図2に示すような構成の緊急通知管理テーブル5aを有している。緊急通知管理テーブル5aの1レコードは、緊急通知サービスを締結している携帯電話機2の識別情報(電話番号や製品番号など)、携帯電話機2が現在収容されている基地局3の識別情報、緊急事態に陥っているか否かを表す緊急事態フラグ、緊急通知時刻、携帯電話機2の現在の位置情報、緊急事態発生時の通知先への通知方法(電子メールであればメールであること及びメールアドレス、電話機であればそのこと及び電話番号)などのフィールドが用意されている。ここで、緊急事態発生時の通知先への通知方法として、複数記述しておき、連絡がとれない場合には次順位の通知先に通知するようにしても良く、また、複数の通知先に並列に通知するようにしても良い。緊急事態フラグ、緊急通知時刻、携帯電話機2の現在の位置情報のフィールドは、緊急事態の発生以前においては空欄である。
【0015】
監視端末7は、携帯電話機2の携帯者に係る監視者が通信に供する通信端末であり、管理センタ装置5によって、緊急事態発生が通知される端末である。ここで、監視端末7は、パソコンその他の情報処理装置であっても良く、また、電話機であっても良い。但し、緊急事態発生の通知をリアルタイムに受け入れる端末であることが好ましい。電子メールの通信機能を有する携帯電話機は、電子メールの受信時に直ちにメールが読まれることが多いので、リアルタイム通信に供する端末と見なすこともできる。
【0016】
なお、監視端末7は、携帯電話機2の携帯者に関係する人間が所持、所有するものに限定されず、警察署や警備会社などの緊急通知の受付端末であっても良い。
【0017】
以上では、管理センタ装置5経由で監視端末7に緊急通知を与える場合を示したが、携帯電話機2が緊急通知時に、監視端末7に付与されている電話番号又はメールアドレスに直接発信又は発送を行うようにしても良い。
【0018】
第1の実施形態は、携帯電話機2が所定の場合に緊急通知を発信する構成に特徴を有するものであり、携帯電話機2が発信した緊急通知を監視端末7に転送する構成は、既存のいかなる転送方法を適用しても良い。
【0019】
図3は、第1の実施形態の携帯電話機2の内部構成を示すブロック図である。図3において、携帯電話機2は、携帯電話アンテナ10、電話無線部11、GPSアンテナ12、GPS受信部13、制御部14、記憶部15、音声処理部16、スピーカ17、マイクロフォン18、キー操作部19及びディスプレイ部20を有する。
【0020】
携帯電話アンテナ10は、携帯電話無線信号(シグナリング信号や通話信号)を捕捉したり放射したりするものである。電話無線部11は、携帯電話アンテナ10が捕捉した無線信号を復調したり、送信信号を変調して携帯電話アンテナ10に与えたりするものである。携帯電話アンテナ10及び電話無線部11は、既存のものと同様である。この第1の実施形態の場合、アナログ方式、ディジタル方式などの携帯電話方式は問われず、携帯電話アンテナ10及び電話無線部11は、採用されている携帯電話方式に応じた構成や特性を有するものである。
【0021】
GPSアンテナ12は、GPS人工衛星からの電波を捕捉してGPS受信部13に与えるものであり、GPS受信部13は、複数のGPS人工衛星からの電波信号を処理して、当該携帯電話機2の位置情報を得るものである。
【0022】
制御部14は、CPUなどを有し、当該携帯電話機2の全体を制御するものである。制御部14は、呼制御や通話時の音声処理(パケット組立、分解など)などを行うものである。なお、当該携帯電話機2がアナログ方式の場合、制御部14は、電話無線部11及び音声処理部16間の音声信号をそのまま転送するあたかも存在しないものとなっている。この第1の実施形態の場合、制御部14は、携帯電話機能に係る制御、処理だけでなく、後述するような緊急事態の検出、緊急通知機能をも担っている。
【0023】
記憶部15は、制御部14が実行するプログラムを格納しているものであり、また、制御部14が処理を実行する際に適宜ワーキングエリアとして利用するものである。
【0024】
音声処理部16は、制御部14からの音声信号や制御音信号に所定の処理(例えば、ディジタル/アナログ変換、フィルタリング、電力増幅など)を施してスピーカ17から発音出力させたり、マイクロフォン18が捕捉した音声信号に所定の処理(例えば、アナログ/ディジタル変換、フィルタリング、電力増幅など)を施して制御部14に与えたりするものである。
【0025】
キー操作部19は各種キーを備え、ユーザが操作したキーの信号を制御部14に与えるものであり、ディスプレイ部20は、制御部14の制御下で、所定画像を表示するものである。キー操作部19及びディスプレイ部20は、マンマシンインターフェース機能を担っている。
【0026】
図4及び図5は、携帯電話機2における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図である。緊急事態の検出、緊急通知機能は、制御部14によるソフトウェア処理と、制御部15と、GPS受信部13や電話無線部11との間の信号授受などによって実現されるものであるが、機能的には、図4及び図5のブロック図で示すことができる。なお、ソフトウェア処理部分をハードウェアロジック回路などで構成しても良いことは勿論である。
【0027】
携帯電話機2は、緊急事態の検出、緊急通知機能に関し、位置情報受信部30、緊急事態自動検出部31、緊急事態フラグ32、位置情報転送制御部33及び位置情報発信部34を有する。
【0028】
位置情報受信部30は、主としてGPS受信部13が該当し、位置情報を取得するものである。
【0029】
緊急事態自動検出部31は、位置情報受信部30が得た位置情報に基づいて、当該携帯電話機2の移動速度を算出し、その移動速度が閾値速度以上か否かに基づいて緊急事態の発生を検出するものである。例えば、低学年の小学生の歩行速度は時速3Km程度である。一般的に、連れ去りや誘拐では車両が利用され、車両の走行速度は時速40〜60Km程度である。この第1の実施形態では、児童(通学を徒歩を行っている児童)の携帯電話機2の移動速度が徒歩や走っている場合の速度を超える場合を緊急事態の発生とすることにした。
【0030】
緊急事態自動検出部31は、詳細には、図5に示すように、移動量計算部40、前位置記憶部41、速度計算部42、移動時間管理部43及び判定・制御部44を有する。
【0031】
前位置記憶部41には、判定・制御部44の制御下で、前回の判定時での位置情報が記憶されている。移動量計算部40は、位置情報受信部30が得た位置情報と、前位置記憶部41に記憶されている前回の位置情報とから移動量(2位置間の直線距離)を計算するものである。
【0032】
移動時間管理部43は、判定・制御部44の制御下で、前回の判定時の時刻を管理しているものであり、今回の判定時には、両判定時の時間差を移動時間として、速度計算部42に与えるものである。速度計算部42は、移動量計算部40が得た移動量(2位置間の直線距離)を、移動時間で除算することで速度を算出するものである。
【0033】
制御部14は、時分割によって各種の処理を並列処理するものである。制御部14は、待ち受け時にも適宜基地局と通信を実行しているため、緊急事態の検出、緊急通知機能を繰り返し実行する際の周期は所定周期を意図していても、必ずしも一定とはならない。すなわち、相前後する判定時の間隔(移動時間)は一定時間ではなく、移動時間管理部43が移動時間を管理することとした。なお、緊急事態の検出、緊急通知機能の処理ルーチンの割り込み優先度を最も高く設定し、相前後する判定時の間隔(移動時間)を一定時間とするようにしても良い。
【0034】
なお、移動時間を数秒程度(例えば1、2秒程度)とすることにより、2位置間の直線距離を移動量とみなしても判定へ悪影響を与えないと考えられる。例えば、交差点を曲がるような場合、2位置間の直線距離と移動量とは一致しないが、このような場合でも、移動時間を数秒程度に短く設定しておけば、その時間での移動量を2位置間の直線距離で近似しても誤差は小さく、後述する判定に悪影響は与えない。
【0035】
ここで、地図情報を内蔵し、相前後する判定時の位置情報を、その地図情報にマッピングし、移動経路を特定して移動量を正確に検出するようにしても良い。
【0036】
また、判定を正確に所定周期で繰り返す場合であれば、移動量をそのまま速度情報として用いるようにしても良い。
【0037】
判定・制御部44は、速度計算部42が得た速度を閾値(例えば、時速10Km;可変設定可能であっても良い)と比較し、その比較結果に応じて、緊急事態の発生を判定するものである。判定・制御部44は、1回の比較結果から判定するものであっても良い。すなわち、速度計算部42が得た速度が閾値以上という比較結果を得ると、直ちに緊急事態の発生と認識するようにしても良い。また、判定・制御部44は、複数回の比較結果から判定するものであっても良い。例えば、最新の5回の比較結果のうちの3回が、速度計算部42が得た速度が閾値以上という比較結果のときに始めて緊急事態の発生と認識するようにしても良い。判定・制御部44は、緊急事態の発生を認識すると、緊急事態フラグ32をセットしたり、位置情報転送制御部33に緊急事態の発生を通知したりするものである。
【0038】
また、判定・制御部44は、次回の判定時のために、前位置記憶部41に今回の位置情報を格納させたり、移動時間管理部43に今回の判定時刻を格納させたりするものである。
【0039】
なお、緊急事態自動検出部31は、緊急事態の発生を認識(検出)した後では、検出処理を実行しないものであっても良く、検出した後でも、継続して検出動作を行うものであっても良い。また、位置情報履歴部を内蔵し、緊急事態の発生を認識(検出)した以降では、所定周期(例えば1分)で時刻情報と共に位置情報を記録するようにしても良い。
【0040】
緊急事態フラグ32は、そのセット状態が緊急事態の発生を示すものである。そのため、当初は、緊急事態フラグ32はリセット状態になっている。なお、セット状態になった緊急事態フラグ32を電源オフ操作や電源オフでもリセット状態にできないようにしておくことが好ましい。セット状態になった緊急事態フラグ32をリセット状態に復帰させることは、例えば、キー操作部19に対する所定順のキー操作がなされたことを条件として認め、その操作の中には、パスワードやユーザIDの入力操作を含めることが好ましい。また、図示しない電源スイッチがオフ操作されても、制御部14は、緊急事態フラグ32がセットされているときには、電源オフ動作を実行しないようにすることが好ましい。
【0041】
位置情報転送制御部33は、緊急事態自動検出部31が緊急事態の発生を自動検出したときには、位置情報発信部34の自動発信機能によって、緊急事態の発生と現在の位置情報とを含む緊急通知(緊急事態発生通知)を送信させる。また、位置情報転送制御部33は、その後、緊急事態フラグ32がセットされていることを確認しつつ、位置情報発信部34の自動発信機能によって、所定周期で、現在の位置情報を含む移動位置通知を送信させる。
【0042】
この第1の実施形態の場合、監視端末7又は管理センタ装置5から、携帯電話機2に位置問い合わせを行うことができ、位置情報転送制御部33は、この問い合わせに対しては、緊急事態フラグ32がセットされていないことを確認しつつ、位置情報発信部34から、現在の位置情報を含む現在位置通知を送信させる。
【0043】
上述した緊急通知(緊急事態発生通知)、移動位置通知、現在位置通知などの各種通知は、通信に供するチャネルに応じた信号形態をとれば良い。例えば、通話チャネルを用いた音声通信を利用する場合であれば、各種通知を、合成音声信号で行う。また例えば、通話チャネルを用いたデータ通信や待ち受けチャネルを用いたデータ通信を利用する場合であれば、各種通知を、データとして送信する。
【0044】
位置情報発信部34は、上述のように、位置情報転送制御部33の制御下で、各種通知を送信するものである。なお、通知の送信に通話チャネルを用いる場合であれば、適宜、通話チャネルの確立動作も行う。ここで、緊急通知(緊急事態発生通知)後の移動位置通知の繰り返し送信では、緊急通知の際に確立した通話チャネルをそのまま用いるようにしても良い。
【0045】
上述したような携帯電話機2における緊急事態の検出、緊急通知機能を有効にさけるか否かを、キー操作部19における緊急通知モードキーの操作によって切換え可能としても良い。また、このような切換機能を設けず、予め設定されている時間帯などによって(例えば、設定は管理センタ装置5からの信号による)、その時間帯だけ、緊急事態の検出、緊急通知機能を有効にするようにしても良い。
【0046】
以上のように、第1の実施形態の携帯電話機2及び緊急事態通知システム1においては、携帯電話機2の速度が通学時の徒歩速度より大幅に速くなったときを、緊急事態の発生として自動検出して通知するようにしたので、緊急通知操作を条件とすることなく、緊急事態の発生時にほぼリアルタイムで緊急通知を行うことができる。
【0047】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による携帯通信端末及び緊急事態通知システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0048】
第2の実施形態の緊急通信システムは、第1の実施形態の緊急事態通知システムのような携帯電話機の移動速度に基づく緊急事態の発生の検出機能に加え、移動経路の所定経路からの逸脱に基づく緊急事態の発生の検出機能を設けたものである。移動速度に基づく検出機能と、移動経路に基づく検出機能との一方で緊急事態の発生を検出したときを、緊急事態の発生と認識するようにしても良いが、以下の第2の実施形態の説明では、移動速度に基づく検出機能と移動経路に基づく検出機能との両者で共に緊急事態の発生を検出したときを、緊急事態の発生と認識するとして説明する。
【0049】
図6は、第2の実施形態の携帯電話機(以下、符号2Aを用いる)の内部構成を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態に係る図3との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
【0050】
第2の実施形態の携帯電話機2Aは、第1の実施形態の携帯電話機と同様な構成に加え、RFIDタグ読取部21を有する。RFIDタグ読取部21は、当該携帯電話機2Aの近傍に存在するRFIDタグのIDを読み取って制御部14に与えるものである。
【0051】
第2の実施形態の制御部14は、RFIDタグ読取部21から与えられたRFIDタグのIDと、記憶部15に格納されている所定経路上のID列15aなどとの照合により、移動経路の所定経路からの逸脱に基づく緊急事態の発生有無を判別する。
【0052】
図7は、所定経路の説明図である。第2の実施形態の場合、道路上に、RFIDタグが多数設けられているとおり(例えば、信号機の支柱などに設けられている)、それぞれがユニークなIDが付与されているとする。携帯電話機2Aの携帯者の移動経路RTが、図7の実線矢印のような場合には、その移動経路RT上を携帯電話機2Aが移動したときに、RFIDタグ読取部21が読み取ることができるRFIDタグのID列(図7の例ではID1〜ID5)が所定経路上のID列15aとして登録されている。なお、この所定経路上のRFIDタグの近傍のRFIDタグのID列(図7の例ではID6〜ID12)も、警告ID列15bとして登録するようにしても良い。
【0053】
図8及び図9は、携帯電話機2における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図である。このうち、図8は、第1の実施形態に係る図4に対応する図面である。図9は、緊急事態発生検証部35の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【0054】
第1の実施形態の場合、緊急事態自動検出部31が移動速度に基づいて緊急事態の発生を検知すると、緊急事態フラグ32をセットし、位置情報転送制御部33に緊急事態の発生を通知するものであったが、第2の実施形態の緊急事態自動検出部31は、移動速度に基づいて緊急事態の発生を検知すると、緊急事態発生検証部35を起動するものである。
【0055】
緊急事態発生検証部35は、起動されたときに、移動経路の所定経路からの逸脱に基づく緊急事態の発生有無の判定を行い、移動経路から見ても、緊急事態の発生と認識したときに、緊急事態フラグ32をセットし、位置情報転送制御部33に緊急事態の発生を通知するものである。
【0056】
緊急事態発生検証部35は、詳細には、図9に示すように、ID受信部50、経路記憶部51、ID照合部52及び判定・制御部53を有する。
【0057】
ID受信部50は、主として、RFIDタグ読取部21が該当し、近傍のRFIDタグのIDを取り込む(受信する)ものである。
【0058】
経路記憶部51は、所定経路上のID列15aや所定経路近傍上のID列15bを記憶しているものである。
【0059】
ID照合部52は、ID受信部50が得たIDを、経路記憶部51に記憶されているものと照合するものであり、照合結果を、判定・制御部53に与えるものである。
【0060】
判定・制御部53は、ID照合部52の照合結果に基づいて、緊急事態の発生を検証するものである。
【0061】
判定・制御部53は、緊急事態フラグ32がリセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32をリセット状態のままとする。また、判定・制御部53は、緊急事態フラグ32が仮セット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32をリセット状態に戻し、警報状態の解除を位置情報転送制御部33に通知する。さらに、緊急事態フラグ32がセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32をセット状態のままとする。
【0062】
判定・制御部53は、緊急事態フラグ32がリセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上の近傍ID列15bのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32を仮セット状態にし、警報状態を位置情報転送制御部33に通知する。また、判定・制御部53は、緊急事態フラグ32が仮セット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上の近傍ID列15bのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32を仮セット状態のままとする。さらに、緊急事態フラグ32がセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上の近傍ID列15bのいずれかのIDとの一致を示しているときには、緊急事態フラグ32をセット状態のままとする。
【0063】
判定・制御部53は、緊急事態フラグ32がリセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aと近傍ID列15bのいずれかとも一致しないことを示しているときには(例えば、図7のID13)、緊急事態フラグ32をセット状態にし、位置情報転送制御部33に緊急事態の発生を通知する。また、判定・制御部53は、緊急事態フラグ32が仮セット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aと近傍ID列15bのいずれかとも一致しないことを示しているときには、緊急事態フラグ32をセット状態にし、位置情報転送制御部33に緊急事態の発生を通知する。さらに、緊急事態フラグ32がセット状態で与えられたID照合部52の照合結果が、所定経路上のID列15aと近傍ID列15bのいずれかとも一致しないことを示しているときには、緊急事態フラグ32をセット状態のままとする。
【0064】
この第2の実施形態の場合、緊急事態フラグ32は、上述のように、リセット状態、仮セット状態、セット状態の間で遷移するものである。
【0065】
この第2の実施形態の場合、位置情報転送制御部33は、判定・制御部53から、警報状態、警報状態の解除、緊急事態の発生のいずれかが通知されたときには、位置情報発信部34による情報発信を実行させるものである。この際の情報発信には、位置情報も含まれており、さらに、ID受信部50が得たIDを含めるようにしても良い。
【0066】
第2の実施形態によれば、携帯電話機2Aの移動速度だけでなく、移動経路に基づいても緊急事態の発生を判定するようにしたので、緊急通知操作を条件とすることなく、緊急事態の発生時にほぼリアルタイムで緊急通知を高精度に行うことができる。
【0067】
例えば、通学経路の一部区間にバスを利用する場合において、バスの乗車によって、携帯電話機2Aの移動速度が高速になっても、バス経路を逸脱しない限り、緊急通知はなされず、誤った通知を抑えることができる。
【0068】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態について言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0069】
上記各実施形態においては、携帯通信端末が携帯電話機であるものを示したが、電話機以外の携帯通信端末(電話機能を備えていても備えていなくても良い)であっても良い。また、携帯通信端末が利用する通信網も、携帯電話通信網に限定されるものではない。
【0070】
また、上記各実施形態においては、携帯電話機が、GPS受信部による位置情報から速度を得るものを示したが、他の方法によって速度情報を得るようにしても良い。例えば、速度センサを搭載して速度情報を得るものであっても良い。
【0071】
さらに、上記各実施形態においては、緊急事態の発生時に、外部装置へ通知するものを示したが、ブザーの鳴動や所定メッセージの合成音声の発話などにより、不正行為者を威嚇するようにしても良い。
【0072】
さらにまた、上記各実施形態においては、携帯電話機の移動速度が高速であることを、緊急事態の発生の認識要件とするものを示したが、携帯電話機の移動速度0の状態が所定時間(例えば、2分)以上継続することも、緊急事態の発生の認識要件とするようにしても良い。このようにすると、例えば、携帯電話機を内蔵するランドセルを放置した連れ去りの場合にも、緊急事態の発生と認識することができる。
【0073】
移動経路の所定経路からの逸脱の監視方法は、第2の実施形態のものに限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施形態の緊急事態通知システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の緊急通知管理テーブルの構成例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の携帯電話機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態の携帯電話機における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図(その1)である。
【図5】第1の実施形態の携帯電話機における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図(その2)である。
【図6】第2の実施形態の携帯電話機の内部構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係る移動経路の説明図である。
【図8】第2の実施形態の携帯電話機における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図(その1)である。
【図9】第2の実施形態の携帯電話機における緊急事態の検出、緊急通知機能の実現構成を示す機能ブロック図(その2)である。
【符号の説明】
【0075】
1…緊急事態通知システム、2、2A…携帯電話機、7…監視端末、11…電話無線部、13…GPS受信部、14…制御部、15…記憶部、21…RFIDタグ読取部、30…位置情報受信部、31…緊急事態自動検出部、32…緊急事態フラグ、33…位置情報転送制御部、34…位置情報発信部、35…緊急事態発生検証部、40…移動量計算部、41…前位置記憶部、42…速度計算部、43…移動時間管理部、44…判定・制御部、50…ID受信部、51…経路記憶部、52…ID照合部、53…判定・制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被監視者が携帯する携帯通信端末において、
当該携帯通信端末の移動速度を検出する移動速度検出手段と、
検出された移動速度に基づいて、緊急事態の発生を認識する緊急事態発生認識手段と、
緊急事態の発生が認識されたときに、外部装置に、緊急事態の発生を通知する緊急通知手段とを有する
ことを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
上記緊急事態発生認識手段は、検出された移動速度が閾値速度以上であることを、緊急事態の発生の認識要件の一つとしていることを特徴とする請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
当該携帯通信端末の移動経路を検出する移動経路検出手段と、
予め格納されている所定経路と、検出された移動経路とを照合する経路照合手段とを有し、
上記緊急事態発生認識手段は、上記経路照合手段の照合結果をも、緊急事態の発生の認識に利用する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
上記緊急事態発生認識手段は、検出された移動速度が閾値速度以上であり、かつ、検出された移動経路が所定経路から逸脱していることで、緊急事態の発生を認識することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の携帯通信端末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の携帯通信端末と、上記携帯通信端末の緊急通知手段が送信した緊急事態の発生通知を受領する監視装置とを含むことを特徴とする緊急事態通知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−323576(P2007−323576A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156030(P2006−156030)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】