説明

撮像装置及びテープ幅測定装置

【課題】視野の広い被写体の像を複数の撮像光学系を用いて撮像する際、他の撮像光学系の光源からの照明光による影響を受けない撮像装置を実現する。
【解決手段】複数の撮像光学系(2,3)を近接配置する。各撮像光学系は照明光源(10)と、撮像レンズ系(12)と、リニァイメージセンサ(13)とを具える。光源駆動回路(21)を設け、各光源を所定の周波数で順次発光させ、各光源の発光期間中に各リニァイメージセンサは読出サイクルを実行してビデオ信号を出力する。リニァイメージセンサ(13)の後段に配置したビデオ出力回路(23)により、各リニァイメージセンサから出力されるビデオ信号を順次切り換えてビデオ出力として出力する。ビデオ出力回路は、i番目の撮像光学系の光源の発光サイクルが終了した後とが撮像光学系のリニァイメージセンサからのビデオ信号を出力する。このように切り換え制御を行うことにより、他の撮像光学系の光源が発光する期間中に蓄積された電荷に基づくビデオ信号は廃棄されるので、別の撮像光学系の光源からの照明光が入射しても影響を受けることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野の広い被写体の拡大像を撮像するのに好適な撮像装置、並びに当該撮像装置を利用したテープ幅測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ等の製造工程においては、製造された磁気テープのテープ幅を厳格に管理する必要があるため、走行する磁気テープの幅をリアルタイムで測定するテープ幅測定装置の開発が要請されている。このテープ幅測定装置として、走行するテープの両側の縁部像をそれぞれ撮像する2つの撮像光学系を用い、走行するテープをはさんで光源とリニァイメージセンサとを配置し、走行するテープの縁部像を各リニァイメージセンサ上に拡大投影し、撮像された縁部像間の距離からテープ幅を測定する技術が提案されている(本願人から提案されている特願2004-13231号明細書参照)。このテープ幅測定装置では、リニァイメージセンサの各受光素子間の距離は予め既知のものとして設定し、テープの縁部像を検出した受光素子を特定し、2つのリニァイメージセンサの受光素子間の距離から走行するテープの幅を算出している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した本願人の提案テープ幅測定装置は、走行するテープの縁部像を検出した受光素子間の距離からテープ幅を検出しているため、走行するテープ幅をリアルタイムで高精度に測定できる利点がある。しかし、近接配置した2つの撮像光学系の一方の光源から投射された照明光が他方のリニァイメージセンサに入射してしまい、走行するテープの縁部像を鮮明に撮像できない不具合が生じてしまう。特に、テープ幅が3.8mmの幅狭な磁気テープの幅を測定する場合、他方の照明光源から放出された照明光が迷光となり、テープの縁部像を明確に検出できない不具合が発生している。この場合、隣接する撮像光学系間に仕切り板を配置し、一方の撮像光学系の照明光源からの照明光が他方のリニァイメージセンサに入射しないようにする方策が考えられる。しかし、仕切り板を配置した場合、当該仕切り板からの反射光が自己の撮像光学系のリニァイメージセンサに入射してしまい、ノイズが大きくなり過ぎ、縁部像を正確に検出できなくなってしまう。
【0004】
さらに、走行する磁気テープは走行中に蛇行するため、蛇行によりテープ縁部は走行方向と直交する方向に大きく変位するおそれがある。しかしながら、テープの縁部がリニァイメージセンサの撮像範囲を超えて変位すると、テープの縁部像がリニァイメージセンサ上に投影されず、縁部像が検出できなくなってしまう。この場合、テープの一方の縁部像を撮像するため、複数の撮像光学系を近接配置する方法が想定される。しかし、この場合にも、一方の撮像光学系の光源からの照明光が他方の撮像光学系のリニァイメージセンサに入射してしまい、テープの縁部の像を明確に検出できなくなる不都合がある。
【0005】
さらに、上述した課題は、走行するテープの幅を測定するテープ幅測定装置に限られるものではでなく、広い視野の被写体の拡大画像を近接配置した複数の撮像光学系を用いて撮像する種々の撮像対象、例えばシリコンウェハに形成されたチィップを観察したり、印刷物のインキ量を検出する場合にも適用される事項である。
【0006】
従って、本発明の目的は、視野の広い被写体の像を複数の撮像光学系を用いて撮像する際、他方の撮像光学系の照明光による影響を受けることなく、被写体の像を正確に撮像できる撮像装置を実現することにある。
さらに、本発明の別の目的は、近接配置した2つの撮像光学系を用いて走行するテープの幅を高精度に測定できるテープ幅測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像装置は、被写体に向けて照明光を投射する光源と、ライン状に配列した複数の受光素子を有するイメージセンサと、被写体の像をイメージセンサ上に投影する撮像レンズ系とをそれぞれ有し、隣接配置した複数の撮像光学系を用いて被写体像を撮像する撮像装置であって、
各撮像光学系の光源を順次駆動させる光源駆動回路と、
各撮像光学系のイメージセンサに蓄積された電荷の読み出し制御する読出制御回路と、
各イメージセンサから出力されたビデオ信号を順次切り換えて出力するビデオ出力回路とを具えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、複数の撮像光学系の各光源を同時に連続的に発光させるのではなく、一定の周波数fで順次に発光させる。一方、各撮像光学系のイメージセンサはnfの周波数(nは撮像光学系の数とする)で同期して蓄積された電荷を読み出す。そして、イメージセンサの後段に、各イメージセンサから出力されたビデオ信号を順次切り換えて出力するビデオ出力回路を配置し、i番目の撮像光学系の光源が発光した後直ちに当該i番目の撮像光学系のイメージセンサからのビデオ信号をビデオ出力として出力する。このように構成することにより、ビデオ出力回路からの出力は、ある撮像光学系の光源だけが発光し他の撮像光学系の光源が休止している期間中に受光したビデオ信号が出力されることになり、他の撮像光学系の照明光による影響を受けないビデオ信号を出力させることができる。この結果、隣接する光源からの照明光の影響を全く受けない広視野の撮像装置を実現することができる。
【0009】
本発明によるテープ幅測定装置は、走行するテープの一方の縁部に向けて照明光を投射する第1の光源、ライン状に配列された複数の受光素子を有する第1のリニァイメージセンサ、及び、前記テープの一方の縁部の像を第1のリニァイメージセンサ上に投影する第1の撮像レンズ系を有する第1の撮像光学系と、
前記走行するテープの他方の縁部に向けて照明光を投射する第2の光源、ライン状に配列された複数の受光素子を有する第2のリニァイメージセンサ、及び、前記テープの他方の縁部の像を第2のリニァイメージセンサ上に投影する第2の撮像レンズ系を有する第2の撮像光学系と、
前記第1及び第2の光源を交互に点灯させる光源駆動回路と、
前記第1及び第2のイメージセンサに蓄積された電荷を読み出すイメージセンサ駆動回路と、
前記第1のイメージセンサのビデオ出力と第2のイメージセンサのビデオ出力とを交互に切り換えて出力するビデオ出力回路とを具え、
前記テープの一方の縁部の像を検出した第1のリニァイメージセンサの受光素子と、前記テープの他方の縁部の像を検出した第2のリニァイメージセンサの受光素子との間の距離に基づいて走行するテープの幅を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、近接配置した複数の撮像光学系の各光源を順次に発光させ、イメージセンサの後段に配置したビデオ出力回路により各イメージセンサから出力されたビデオ信号を順次切り換えて出力しているので、他の撮像光学系の光源が発光している期間中に蓄積された電荷によるビデオ信号は廃棄され、隣接する撮像光学系の影響を全く受けることなく広い視野にわたって鮮明な画像を撮像することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明による撮像装置の一例の構成を示す線図である。本例では、走行するテープ1の縁部の拡大像を2つの撮像光学系2及び3により撮像してテープ幅を測定するテープ幅測定装置に適用した実施例について説明する。テープ1は、紙面と直交する方向に走行するものとし、当該テープ1の一方の縁部の拡大像を第1の撮像光学系2により撮像し、テープ1の他方の縁部の拡大像を第2の撮像光学系3により撮像する。第1の撮像光学系2は、照明光源とし作用するLED10aを有し、このLEDから放出された照明光を照明レンズ系11aを介してテープ1の一方の縁部1aに向けて投射する。テープの縁部を通過した照明光は撮像レンズ系12aを経てリニァイメージセンサ13aに入射する。リニァイメージセンサ13aは、テープ走行方向と直交する方向に配列された複数の受光素子を有し、テープの縁部の拡大像を受光する。リニァイメージセンサ上において、照明光の一部は走行するテープ1に遮光され残りの部分は遮光されることなく入射する。この結果、リニァイメージセンサ上において、入射光量が急激に変化する部分がテープ1の縁部像として検出される。
【0012】
第2の撮像光学系3は、第1の撮像光学系2の光軸と平行な光軸を有し、第1の撮像光学系と同一の構成とする。尚、図面上、第1の撮像光学系と対応する構成要素には、bの添え字を付し、その説明は省略する。尚、第1のリニァイメージセンサ13aと第2のリニァイメージセンサ13bとの間の距離は、高精度に位置決めされているものとする。従って、2つのリニァイメージセンサ間の距離及び各リニァイメージセンサの受光素子間の距離が予め既知の値として取り扱うことができるので、2つのリニァイメージセンサの画素ないし受光素子を特定することにより、特定された受光素子間の距離、すなわち走行するテープの縁部間の距離は信号処理回路により容易に特定することができる。
【0013】
図2は第1及び第2のリニァイメージセンサ13a及び13b上に投影されるテープエッジ1a及び1bの像について受光素子の位置と輝度レベルとの関係を模式的に示す線図である。リニァイメージセンサ上の輝度レベルは、テープ幅方向の内側の照明光が入射しない領域において低レベルとなり、テープのエッジを超える外側領域は高レベルとなる。従って、輝度レベルが低レベルから高レベルに変化する領域がテープエッジの像として捉えることができる。種々の実験結果によれば、テープエッジの像は、輝度レベルがほぼ直線的に変化するように投影された区域が該当する。従って、例えば直線補完法によりテープエッジが投影された受光素子の番号を特定することができる。よって、輝度レベルからエッジの像が投影された受光素子が特定され、特定された受光素子の配列番号によりテープ幅を求めることができる。
【0014】
次に、撮像動作について説明する。図1を参照するに、コントローラ20を設け、このコントローラ20により光源駆動回路21、リニァイメージセンサの読出回路22及びビデオ出力回路23のスィッチィング動作を制御する。コントローラ20からの駆動信号により光源駆動回路21を制御する。光源駆動回路は、LED10a及び10bを交互に発光させる。リニァイメージセンサ13a及び13bには、読出回制御路22を設け、リニァイメージセンサ13a及び13bに対して同期して各受光素子に蓄積された電荷を順次読み出す。尚、読出動作により、各リニァイメージセンサに蓄積された電荷は読出動作毎にリセットされる。リニァイメージセンサ13a及び13bからのビデオ出力信号はビデオ出力回路23に供給する。このビデオ出力回路23は、2つのリニァイメージセンサからの出力信号を交互に切り換え、ビデオ出力信号として出力する。
【0015】
図3は照明光源の発光サイクル、各リニァイメージセンサの読出サイクル、及びビデオ出力回路のスッチィングサイクルをそれぞれ示すタイミングチャートである。図3Aは第1の撮像光学系2の光源10aの発光サイクルを示し、図3Bは第1のリニァイメージセンサ13aの読出サイクルを示し、図3Cは第2の撮像光学系の光源13bの発光サイクルを示し、図3Dは第2のリニァイメージセンサ13bの読出サイクルを示し、図3Eはビデオ出力回路のスイッチングサイクルを示す。図3A及びCに示すように、第1及び第2の光源は周波数fで交互に発光動作を行う。第1及び第2のリニァイメージセンサは、光源の発光動作と同期して、周波数nf(ここで、nは撮像光学系の数とし、本例の場合n=2となる)で受光素子に蓄積された電荷を読出してビデオ信号を出力する。ビデオ出力回路23は、第1及び第2のリニァイメージセンサからのビデオ信号を交互に切り換え、ビデオ出力として出力する。この際、第1の撮像光学系の光源の発光動作が終了した後直ちに当該第1の撮像光学系のリニァイメージセンサに蓄積された電荷に基づくビデオ信号を出力し第2の撮像光学系のリニァイメージセンサからのビデオ信号は廃棄する。一方、第2の撮像光学系の光源の発光動作が終了した後直ちに第2の撮像光学系のリニァイメージセンサから読み出されたビデオ信号を出力し第1のリニァイメージセンサからのビデオ信号は廃棄する。すなわち、n個(nは2以上の自然数とする)の撮像光学系が存在する場合、i番目の撮像光学系の光源の発光動作が終了した後当該i番目の撮像光学系のリニァイメージセンサから出力されたビデオ信号をビデオ出力として出力する。このように構成こすることにより、ビデオ出力回路から、他の撮像光学系の光源が発光動作を休止して期間中のビデオ信号をビデオ出力として出力することができ、隣接する光源により影響を受けないビデオ信号を得ることができる。
【0016】
図4は本発明による撮像装置の変形例を示す線図である。本例では、広い視野にわたる被写体の像を、一例として光軸が互いに平行な4個の撮像光学系を用いて撮像する例を示す。本例では、各撮像光学系の視野が互いに重なり合うように千鳥状に配置する。すなわち、各撮像光学系を互いに離間するように配置すると、リニァイメージセンサ間に隙間が形成され、撮像不能の領域が発生する不都合がある。この問題を解消するため、光源、レンズ系及びリニァイメージセンサを千鳥状に配置し、撮像不能領域が生じないようにすることができる。尚、図4において、4個のリニァイメージセンサ42a〜42dは、光軸方向に千鳥状に配置されているように図示したが、これは作図上描いたものであり、実際には例えばテープ走行方向に沿って千鳥状に配置するものとする。
【0017】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、照明光源としてLEDを用いたが、例えば白熱灯や水銀ランプ等の連続発光するのに適している光源と液晶シャッタとを組み合わせた光源装置を用いて発光期間を制御することも可能である。
また、LEDアレイ及び照明レンズ系や撮像レンズ系については、複数の素子が集積化されたLEDアレイ及びマイクロレンズアレイを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による撮像装置の全体構成を示す線図である。
【図2】リニァイメージセンサの受光素子の位置と輝度レベルとの関係を示す線図である。
【図3】光源発光サイクル、リニァイメージセンサの読出サイクル及びビデオ出力回路のサンプリングサイクルを示す線図である。
【図4】本発明による撮像装置の変形例を示す線図である。
【符号の説明】
【0019】
1 テープ
2 第1の撮像光学系
3 第2の撮像光学系
10a,10b LED
11a,11b 照明レンズ系
12a,12b 撮像レンズ系
13a,13b リニァイメージセンサ
20 コントローラ
21 光源駆動回路
22 読出制御回路
23 ビデオ出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けて照明光を投射する光源と、ライン状に配列した複数の受光素子を有するイメージセンサと、被写体の像をイメージセンサ上に投影する撮像レンズ系とをそれぞれ有し、隣接配置した複数の撮像光学系を用いて被写体像を撮像する撮像装置であって、
各撮像光学系の光源を順次駆動させる光源駆動回路と、
各撮像光学系のイメージセンサに蓄積された電荷の読み出し制御する読出制御回路と、
各イメージセンサから出力されたビデオ信号を順次切り換えて出力するビデオ出力回路とを具えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、前記撮像光学系の数をnとし、光源駆動回路の駆動周波数をfとした場合、前記イメージセンサの読出周波数をnfとしたことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、前記ビデオ出力回路は、i番目の撮像光学系の光源の発光動作が終了した後直ちにi番目の撮像光学系のイメージセンサから出力されたビデオ信号を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
走行するテープの一方の縁部に向けて照明光を投射する第1の光源、ライン状に配列された複数の受光素子を有する第1のリニァイメージセンサ、及び、前記テープの一方の縁部の像を第1のリニァイメージセンサ上に投影する第1の撮像レンズ系を有する第1の撮像光学系と、
前記走行するテープの他方の縁部に向けて照明光を投射する第2の光源、ライン状に配列された複数の受光素子を有する第2のリニァイメージセンサ、及び、前記テープの他方の縁部の像を第2のリニァイメージセンサ上に投影する第2の撮像レンズ系を有する第2の撮像光学系と、
前記第1及び第2の光源を交互に点灯させる光源駆動回路と、
前記第1及び第2のイメージセンサに蓄積された電荷を読み出すイメージセンサ駆動回路と、
前記第1のイメージセンサのビデオ出力と第2のイメージセンサのビデオ出力とを交互に切り換えて出力するビデオ出力回路とを具え、
前記テープの一方の縁部の像を検出した第1のリニァイメージセンサの受光素子と、前記テープの他方の縁部の像を検出した第2のリニァイメージセンサの受光素子との間の距離に基づいて走行するテープの幅を測定することを特徴とするテープ幅測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−38663(P2006−38663A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219706(P2004−219706)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(592118457)大倉インダストリー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】