説明

操舵装置

【課題】 送りねじ機構を用いた操舵装置の伸縮アクチュエータが騒音を発したり外力により伸縮したりするのを機械的に規制する。
【解決手段】 モータ36を駆動すると、その回転軸45の回転が送りねじ機構39で出力ロッド33の伸縮動に変換され、出力ロッド33に接続された車輪のトー角を変化させる。モータ36が停止して車輪のトー角が保持されているとき、送りねじ機構39の雄ねじ部材95と一体のスラスト受けフランジ74を、皿ばねよりなる弾発付勢手段113でハウジング32に対して軸方向に弾性的に支持してガタの発生を防止することで、出力ロッド33の意図せぬ伸縮を防止して車輪のトー角が不安定になったり騒音が発生したりするのを防止することができる。しかも、その際にモータ36に保持電流を流して出力ロッド33の意図せぬ伸縮を防止する必要がないため、モータ36の消費電力が増加する問題もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転軸の回転を送りねじ機構で出力ロッドの伸縮動に変換し、前記出力ロッドに接続された車輪のトー角を変化させる操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンション装置のアッパーリンクおよびロアリンクをアクチュエータで伸縮制御することで、車輪のバンプおよびリバウンドに伴うキャンバー角や対地トレッドの変化を抑制して操縦安定性能を高めるものにおいて、前記アクチュエータをモータで相対回転する雄ねじ部材および雌ねじ部材を備えた送りねじ機構で構成したものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特公平6−47388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、送りねじ機構を用いたこの種のアクチュエータでは、相対回転する雄ねじ部材および雌ねじ部材のうち、スラスト力を受ける部材とハウジングとの間に微小なガタが存在するため、そのガタによって騒音が発生したり、出力側から逆伝達される振動的な荷重や大きな荷重によって雄ねじ部材および雌ねじ部材が相対回転してしまい、アクチュエータが意図しない伸縮をする問題があった。従って、かかるアクチュエータを操舵装置に用いた場合には、騒音が発生するだけでなく、車輪側から逆伝達される荷重でアクチュエータが伸縮し、車輪のトー角が不安定になる可能性がある。これを防止するには、モータに雄ねじ部材および雌ねじ部材の相対回転を規制する保持トルクを発生させれば良いが、このようにするとモータの消費電力が増加してしまうという新たな問題が発生する。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、送りねじ機構を用いた操舵装置の伸縮アクチュエータが騒音を発したり外力により伸縮したりするのを機械的に規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、モータの回転軸の回転を送りねじ機構で出力ロッドの伸縮動に変換し、前記出力ロッドに接続された車輪のトー角を変化させる操舵装置であって、前記送りねじ機構の雄ねじ部材および雌ねじ部材の一方を前記出力ロッドに接続するとともに、前記雄ねじ部材および前記雌ねじ部材の他方を前記モータの回転軸に接続する操舵装置において、前記雄ねじ部材および前記雌ねじ部材の一方から他方に作用するスラスト力をハウジングに伝達するスラスト受けフランジを、前記雄ねじ部材および前記雌ねじ部材の他方に設け、前記スラスト受けフランジを弾発付勢手段を介して前記ハウジングに前記スラスト力の方向に弾発的に支持することを特徴とする操舵装置が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記モータの回転軸の回転を前記雄ねじ部材に伝達するカップリングを備え、前記カップリングに内部に前記弾発付勢手段を配置することを特徴とする操舵装置が提案される。
【0007】
尚、実施の形態の第2ハウジング32は本発明のハウジングに対応し、実施の形態の後輪Wは本発明の車輪に対応する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、モータを駆動すると、その回転軸の回転が送りねじ機構で出力ロッドの伸縮動に変換され、出力ロッドに接続された車輪のトー角を変化させることができる。モータが停止して車輪のトー角が保持されているとき、送りねじ機構とハウジングとの間にガタが存在すると、出力ロッドがハウジングに対して伸縮して車輪のトー角が不安定になったり、騒音の原因となったりする可能性があるが、送りねじ機構の雄ねじ部材および雌ねじ部材の他方(出力ロッドに接続されない側)に設けたスラスト受けフランジを、弾発付勢手段でハウジングに対してスラスト力の方向に弾性的に支持してガタの発生を防止することで、出力ロッドの意図せぬ伸縮を防止して車輪のトー角が不安定になったり騒音が発生したりするのを防止することができる。しかも、その際にモータに保持電流を流して出力ロッドの伸縮を防止する必要がないため、モータの消費電力が増加する問題もない。更に、弾発付勢手段でスラスト受けフランジを弾性的に支持するので、面積の広いスラスト受けフランジを支持してガタの発生を効果的に防止することができる。
【0009】
また請求項2の構成によれば、モータの回転軸の回転を送りねじ機構に伝達するカップリングの内部に弾発付勢手段を配置したので、弾発付勢手段をコンパクトに配置して操舵装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図6は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は左後輪のサスペンション装置の斜視図、図2は図1の2方向矢視図、図3は図1の3−3線拡大断面図、図4は図3の4部拡大図、図5は図3の5部拡大図、図6は減速機およびカップリングの分解斜視図である。
【0012】
図1および図2に示すように、四輪操舵車両のダブルウイッシュボーン式のリヤサスペンションSは、後輪Wを回転自在に支持するナックル11と、ナックル11を上下動可能に車体に連結するアッパーアーム12およびロアアーム13と、後輪Wのトー角を制御すべくナックル11および車体を連結するトーコントロールアクチュエータ14と、後輪Wの上下動を緩衝する懸架ばね付きダンパー15等で構成される。
【0013】
基端をそれぞれゴムブッシュジョイント16,17で車体に連結されたアッパーアーム12およびロアアーム13の先端は、それぞれボールジョイント18,19を介してナックル11の上部および下部に連結される。トーコントロールアクチュエータ14は、基端がゴムブッシュジョイント20を介して車体に連結され、先端がゴムブッシュジョイント21を介してナックル11の後部に連結される。上端を車体(サスペンションタワーの上壁22)に固定された懸架ばね付きダンパー15の下端が、ゴムブッシュジョイント23を介してナックル11の上部に連結される。
【0014】
トーコントロールアクチュエータ14を伸長駆動すると、ナックル11の後部が車幅方向外側に押されて後輪Wのトー角がトーイン方向に変化し、トーコントロールアクチュエータ14を収縮駆動すると、ナックル11の後部が車幅方向内側に引かれて後輪Wのトー角がトーアウト方向に変化する。従って、ステアリングホイールの操作による通常の前輪の操舵に加えて、車速やステアリングホイールの操舵角に応じて後輪Wのトー角を制御することで、車両の直進安定性能や旋回性能を高めることができる。
【0015】
次に、図3〜図6に基づいてトーコントロールアクチュエータ14の構造を詳細に説明する。
【0016】
図3および図4に示すように、トーコントロールアクチュエータ14は、車体側に連結されるゴムブッシュジョイント20が一体に設けられた第1ハウジング31と、ナックル11側に連結されるゴムブッシュジョイント21が一体に設けられた出力ロッド33を伸縮自在に支持する第2ハウジング32とを備えており、第1、第2ハウジング31,32の対向部は、シール部材34を介してインロー嵌合した状態で、各々の結合フランジ31a,32aを複数本のボルト35…で締結して一体化される。第1ハウジング31の内部には駆動源となるブラシ付きのモータ36が収納され、第2ハウジング32の内部には遊星歯車式の減速機37と、弾性を有するカップリング38と、台形ねじを用いた送りねじ機構39とが収納される。
【0017】
モータ36の外郭は、フランジ40aを有するをカップ状に形成されたヨーク40と、ヨーク40のフランジ40aに複数のボルト41…で締結されたベアリングホルダ42とで構成される。ヨーク40およびベアリングホルダ42を締結するボルト41…は第1ハウジング31の端面に螺合しており、このボルト41…を利用してモータ36が第1ハウジング31に固定される。
【0018】
ヨーク40の内周面に支持した環状のステータ43内に配置されるロータ44は、その回転軸45の一端がヨーク40の底部に設けたボールベアリング46に回転自在に支持され、他端がベアリングホルダ42に設けたボールベアリング47に回転自在に支持される。ベアリングホルダ42の内面には、回転軸45の外周に設けたコミュテータ48に摺接するブラシ49が支持される。ブラシ49から延びる導線50は、第1ハウジング31に設けたグロメット51を介して外部に引き出される。
【0019】
図4および図6から明らかなように、減速機37は第1遊星歯車機構61および第2遊星歯車機構62を2段に結合して構成される。第1遊星歯車機構61は、第2ハウジング32の開口部に嵌合して固定されたリングギヤ63と、モータ36の回転軸45の先端に直接形成された第1サンギヤ64と、円板状の第1キャリヤ65と、第1キャリヤ65に圧入により片持ち支持された第1ピニオンピン66…にボールベアリング67…を介して回転自在に支持され、前記リングギヤ63および前記第1サンギヤ64に同時に噛合する4個の第1ピニオン68…とで構成される。第1遊星歯車機構61は、入力部材である第1サンギヤ64の回転を、出力部材である第1キャリヤ65に減速して伝達する。
【0020】
減速機37の第2遊星歯車機構62は、第1遊星歯車機構61と共通のリングギヤ63と、第1キャリヤ65の中心に固定された第2サンギヤ69と、円板状の第2キャリヤ70と、第2キャリヤ70に圧入により片持ち支持された第2ピニオンピン71…にスライドブッシュ72…を介して回転自在に支持され、前記リングギヤ63および前記第2サンギヤ69に同時に噛合する4個の第2ピニオン73…とで構成される。第2遊星歯車機構62は、入力部材である第2サンギヤ69の回転を、出力部材である第2キャリヤ70に減速して伝達する。
【0021】
このように第1、第2遊星歯車機構61,62を直列に接続することで、大きな減速比を得ることができ、しかも減速機37の小型化を図ることができる。また第1遊星歯車機構61のサンギヤ64を、モータ36の回転軸45に固定することなく回転軸45に直接形成したので、回転軸45と別体の第1サンギヤ64を用いる場合に比べて部品点数を削減することができるだけでなく、第1サンギヤ64の直径を最小限に抑えて第1遊星歯車機構61の減速比を大きく設定することができる。
【0022】
減速機37の出力部材である第2キャリヤ70は、送りねじ機構39の入力部材であるスラスト受けフランジ74にカップリンング38を介して接続される。概ね円板状のスラスト受けフランジ74は、その外周部を一対のスラストベアリング75,76に挟まれて回転自在に支持される。即ち、第2ハウジング32の内周面にスペーサカラー77を挟むように環状のロックナット78が締結されており、一方のスラストベアリング75は第2ハウジング32とスラスト受けフランジ74との間のスラスト荷重を支持し、他方のスラストベアリング76はロックナット78とスラスト受けフランジ74との間のスラスト荷重を支持するように配置される。
【0023】
一方のスラストベアリング75と第2ハウジング32との間にワッシャ111が配置され、他方のスラストベアリング76とロックナット78との間にワッシャ112およびセット荷重を付与された皿ばねよりなる弾発付勢手段113が配置される。
【0024】
カップリング38は、例えばポリアセタールで構成された2枚の外側弾性ブッシュ79,79と、例えばシリコンゴムで構成された1枚の内側弾性ブッシュ80とを備えており、それらの外周には各8個の突起79a…,80a…および各8個の溝79b…,80b…が等間隔で放射状に突出する。一方、第2キャリヤ70およびスラスト受けフランジ74の対向面には、各4個の爪70a…,74a…が等間隔で軸方向に対峙するように突出する。
【0025】
外側弾性ブッシュ79,79および内側弾性ブッシュ80は突起79a…,80a…の位相が揃うように重ね合わされ、8個の溝79b…,80b…のうちの一つおきの4個に第2キャリヤ70の4個の爪70a…が係合し、8個の溝79b…,80b…のうちの残りの4個にスラスト受けフランジ74の4個の爪74a…が係合する。
【0026】
図5から明らかなように、第2ハウジング32の軸方向中間部の内周面に第1スライドベアリング91が固定され、また第1ハウジング32の軸方向端部に螺合するエンド部材93の内周面に第2スライドベアリング92が固定されており、これら第1、第2スライドベアリング91,92に前記出力ロッド33が摺動自在に支持される。スラスト受けフランジ74の回転運動を出力ロッド33のスラスト運動に変換する送りねじ機構39は、スラスト受けフランジ74の中心を貫通してナット94(図4参照)で締結された雄ねじ部材95と、この雄ねじ部材95の外周に螺合するとともに、中空の出力ロッド33の内周面に嵌合してロックナット97で固定された雌ねじ部材96とを備える。
【0027】
このように、出力ロッド33を第1、第2スライドベアリング91,92を介して第2ハウジング32に支持したので、出力ロッド33に加わる径方向の荷重を第2ハウジング32で確実に支持して送りねじ機構39のコジリを防止することができる。
【0028】
トーコントロールアクチュエータ14を伸縮制御する際に、その出力ロッド33のストローク位置を検出して制御装置にフィードバックすべく第2ハウジング32に設けられたストロークセンサ102は、出力ロッド33の外周面にボルト103で固定された永久磁石よりなる被検出部104と、この被検出部104の位置を磁気的に検出するコイル等の検出部105を収納するセンサ本体106とを備える。第2ハウジング32には、出力ロッド33の移動に伴って被検出部104が干渉するのを回避すべく、軸方向に延びる開口32bが形成される。
【0029】
第2ハウジング32と出力ロッド33との隙間に水や塵が侵入するのを防止すべく、第2ハウジング32に形成した環状段部32cと、出力ロッド33に形成した環状溝33aとにブーツ108の両端が嵌合し、それぞれバンド109,110で固定される。
【0030】
出力ロッド33が伸長すると第1、第2ハウジング31,32の内部空間の容積が増加し、逆に出力ロッド33が収縮すると第1、第2ハウジング31,32の内部空間の容積が減少するため、前記内部空間の圧力が変動してトーコントロールアクチュエータ14のスムーズな作動を妨げる虞がある。しかしながら、中空の出力ロッド33の内部空間とブーツ108の内部空間とが、出力ロッド33に形成した通気孔33bを介して連通しているため、前記圧力の変動がブーツ108の変形により緩和されてトーコントロールアクチュエータ14のスムーズな作動が可能になる。
【0031】
さて、路面の凹凸から後輪Wに伝達される荷重によってトーコントロールアクチュエータ14の出力ロッド33から送りねじ機構39の雌ねじ部材96に軸方向の荷重が入力したとき、第2ハウジング32に対して雄ねじ部材95が軸方向のガタを有していると、雄ねじ部材95および雌ねじ部材96の噛合部に充分な摩擦力が作用しないため、軸方向に移動しようとする雌ねじ部材96に対して雄ねじ部材95が次第に回転してしまい、後輪Wのトー角が変化してしまう可能性がある。このとき、雄ねじ部材95に接続されたモータ36に通電して回転を抑制すれば後輪Wのトー角の変化を防止することが可能であるが、このようにするとモータ36の消費電力が増加する問題がある。
【0032】
しかしながら本実施の形態によれば、スラスト受けフランジ74を皿ばねよりなる弾発付勢手段113で第2ハウジング32に対して押し付けるように付勢し、雄ねじ部材95および第2ハウジング32間のガタを消滅させるので、雄ねじ部材95および雌ねじ部材96の噛合部に充分な摩擦力を作用させ、後輪Wから伝達される荷重で雌ねじ部材96が軸方向に移動しようとしても、その雌ねじ部材96に対して雄ねじ部材95が回転して後輪Wのトー角が変化するのを防止することができ、しかも前記ガタの消滅により騒音を低減することができる。
【0033】
次に、図7に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0034】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の皿ばねよりなる弾発付勢手段113を、環状のゴムよりなる弾発付勢手段113で置き換えたものである。この弾発付勢手段113は軸方向にセット荷重を加えて圧縮した状態で装着される。この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0035】
次に、図8に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0036】
第3の実施の形態は第2の実施の形態の変形であって、その弾発付勢手段113は、環状の金属板114の外周部および内周部にゴムリング115,115を固定したもので構成される。ゴムリング115,115は軸方向にセット荷重を加えて圧縮した状態で装着される。この第3の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0037】
次に、図9に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0038】
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形であって、その弾発付勢手段113は、環状の金属板114に円周方向に所定距離で離間する複数の貫通孔114a…を形成し、各貫通孔114a…にゴムブッシュ116…を軸方向にセット荷重を加えて圧縮した状態で装着したもので構成される。この第4の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0039】
次に、図10に基づいて本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0040】
第5の実施の形態は、スラスト受けフランジ74に弾発付勢手段113を設けたものである。即ち、スラスト受けフランジ74に円周方向に所定距離で離間する複数の貫通孔74b…を形成し、各貫通孔74b…に軸方向にセット荷重を加えて圧縮した状態で装着したゴムブッシュ117…の両端が、一方および他方のスラストベアリング75,76のスラスト受けフランジ74側に配置したワッシャ118,119に当接する。この第5の実施の形態によっても、ゴムブッシュ117…が軸方向に伸長しようとする弾発力で、第2ハウジング32に対するスラスト受けフランジ74および雄ねじ部材95のガタを抑制し、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0041】
次に、図11に基づいて本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0042】
第6の実施の形態は、第5の実施の形態の変形であって、前記ゴムブッシュ117…の代わりにコイルスプリング120…を用いたものである。即ち、スラスト受けフランジ74の両側面に円周方向に所定距離で離間する複数の凹部74c…を形成し、これらの凹部74c…にそれぞれ圧縮状態で装着したコイルスプリング120…がワッシャ118,119に当接する。この第6の実施の形態によっても、コイルスプリング120…が軸方向に伸長しようとする弾発力で、第2ハウジング32に対するスラスト受けフランジ74および雄ねじ部材95のガタを抑制し、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0043】
次に、図12に基づいて本発明の第7の実施の形態を説明する。
【0044】
第7の実施の形態は、カップリング38の内部に弾発付勢手段113を収納したものである。即ち、カップリング38の外側弾性ブッシュ79,79および内側弾性ブッシュ80を支持する爪70a…が形成された第2キャリヤ70と一方の外側弾性ブッシュ79との間に、セット荷重が加えられた皿ばねよりなる弾発付勢手段113が配置される。この弾発付勢手段113は外側弾性ブッシュ79,79および内側弾性ブッシュ80を介してスラスト受けフランジ74を第2ハウジング32に向けて付勢するため、第2ハウジング32に対する雄ねじ部材95のガタを抑制し、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。しかも、カップリング38の内部の空間を利用して弾発付勢手段113を配置することで、トーコントロールアクチュエータ14の小型化を図ることができる。
【0045】
次に、図13に基づいて本発明の第8の実施の形態を説明する。
【0046】
第1の実施の形態では、スラスト受けフランジ74とロックナット78との間に弾発付勢手段113を配置しているが、トーコントロールアクチュエータ14に強い圧縮荷重が作用すると皿ばねよりなる弾発付勢手段113が完全に押し潰されてスラスト受けフランジ74にガタが発生する可能性があり、これを防止するには大型の弾発付勢手段113を大きなセット荷重を付与して装着する必要がある。
【0047】
そこで第8の実施の形態は、リヤサスペンション装置Sの特性により、トーコントロールアクチュエータ14に入力する圧縮荷重が引張荷重よりも小さくなるもの(図13(A)参照)と、トーコントロールアクチュエータ14に入力する圧縮荷重が引張荷重より大きくなるもの(図13(B)参照)とで、スラスト受けフランジ74に対する弾発付勢手段113の装着位置を変化させている。
【0048】
図13(A)に示すものは、トーコントロールアクチュエータ14に入力する圧縮荷重が引張荷重よりも小さくなることに着目し、比較的に小さい圧縮荷重が加わるときに弾発付勢手段113が圧縮されるように、弾発付勢手段113をスラスト受けフランジ74のロックナット97側に配置している。これにより、比較的に大きい引張荷重が加わったときに弾発付勢手段113が完全に押し潰されることがなくなり、弾発付勢手段113に小型のものを用いることができる。
【0049】
図13(B)に示すものは、トーコントロールアクチュエータ14に入力する圧縮荷重が引張荷重よりも大きくなることに着目し、比較的に小さい引張荷重が加わるときに弾発付勢手段113が圧縮されるように、弾発付勢手段113をスラスト受けフランジ74のロックナット78と反対側に配置している。これにより、比較的に大きい圧縮荷重が加わったときに弾発付勢手段113が完全に押し潰されることがなくなり、弾発付勢手段113に小型のものを用いることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0051】
例えば、実施の形態では送りねじ機構39の雄ねじ部材95および雌ねじ部材96のうち、雄ねじ部材95の軸方向のガタを弾発付勢手段113により抑制しているが、雌ねじ部材96をモータ36に接続して雄ねじ部材95を出力ロッド33に接続し、雌ねじ部材96の軸方向のガタを弾発付勢手段113で抑制しても良い。
【0052】
また第7の実施の形態において、カップリング38の内部に皿ばねよりなる弾発付勢手段113を配置しているが、その皿ばねをゴム等の弾性材に置き換えることができる。またカップリング38のシリコンゴム製の内側弾性ブッシュ80にセット荷重を付与して圧縮することで、その内側弾性ブッシュ80を弾発付勢手段113として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施の形態に係る左後輪のサスペンション装置の斜視図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図1の3−3線拡大断面図
【図4】図3の4部拡大図
【図5】図3の5部拡大図
【図6】減速機およびカップリングの分解斜視図
【図7】第2の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図8】第3の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図9】第4の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図10】第5の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図11】第6の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図12】第7の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【図13】第8の実施の形態に係る弾発付勢手段を示す図
【符号の説明】
【0054】
32 第2ハウジング(ハウジング)
33 出力ロッド
36 モータ
38 カップリング
39 送りねじ機構
45 回転軸
74 スラスト受けフランジ
95 雄ねじ部材
96 雌ねじ部材
113 弾発付勢手段
W 後輪(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(36)の回転軸(45)の回転を送りねじ機構(39)で出力ロッド(33)の伸縮動に変換し、前記出力ロッド(33)に接続された車輪(W)のトー角を変化させる操舵装置であって、
前記送りねじ機構(39)の雄ねじ部材(95)および雌ねじ部材(96)の一方を前記出力ロッド(33)に接続するとともに、前記雄ねじ部材(95)および前記雌ねじ部材(96)の他方を前記モータ(36)の回転軸(45)に接続する操舵装置において、 前記雄ねじ部材(95)および前記雌ねじ部材(96)の一方から他方に作用するスラスト力をハウジング(32)に伝達するスラスト受けフランジ(74)を、前記雄ねじ部材(95)および前記雌ねじ部材(96)の他方に設け、前記スラスト受けフランジ(74)を弾発付勢手段(113)を介して前記ハウジング(32)に前記スラスト力の方向に弾発的に支持することを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記モータ(36)の回転軸(45)の回転を前記雄ねじ部材(95)に伝達するカップリング(38)を備え、前記カップリング(38)に内部に前記弾発付勢手段(113)を配置することを特徴とする、請求項1に記載の操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−241833(P2009−241833A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92638(P2008−92638)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】