支承装置
【課題】小型にして大きな鉛直下向きの荷重を効果的に支持し得、且つ、大きな水平方向の荷重を支持しつつ変位制限すると共に、鉛直面内における回転追随性能を向上させる。
【解決手段】上沓42と、下沓43と、下沓43に固定される芯材44と、上沓42と下沓43との間に配設されて並列ばねとして機能する第一弾性体48,第二弾性体49とを備える。第一弾性体48と第二弾性体49とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている。芯材44は、水平方向の剪断力が作用しても上沓42と下沓43の相対変位を所定範囲内に制限することができる。芯材44は、上沓42の穴部52の周囲の支持部53によって抜け止めがされ、上沓42を上揚するような力が作用した際にも上沓42と下沓43とが乖離することを防止できる。
【解決手段】上沓42と、下沓43と、下沓43に固定される芯材44と、上沓42と下沓43との間に配設されて並列ばねとして機能する第一弾性体48,第二弾性体49とを備える。第一弾性体48と第二弾性体49とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている。芯材44は、水平方向の剪断力が作用しても上沓42と下沓43の相対変位を所定範囲内に制限することができる。芯材44は、上沓42の穴部52の周囲の支持部53によって抜け止めがされ、上沓42を上揚するような力が作用した際にも上沓42と下沓43とが乖離することを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、大別して、水平方向の荷重を支承する水平荷重支承機能、鉛直方向の荷重を支承する鉛直荷重支承機能、鉛直面内における回転荷重を支承する鉛直回転支承機能等が求められる。特に、橋梁用支承装置にあっては、平成7年の大震災以来、ゴムを主たる構成要素としたゴム支承装置が求められるようになっている。中でも鉛直荷重支持性能があって、水平力分散性能の高い積層ゴム支承装置は、広範に使用されるようになっている。
【0003】
この積層ゴム支承装置は、例えば特許文献1(特開2002−181129号公報)に記載されているように、ゴム板と鉄板を交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成され、その上部が橋梁の橋桁等の上部構造物に固定され、その下部が橋脚等の下部構造物に固定されて設置されて使用されている。
【0004】
しかしながら、積層ゴム支承装置にあっては、構造上、積層構造を採るため、必然的に所要厚さが大きくなって嵩張る上、高荷重を支持させるには広面積化する必要があり、特に長大橋向けには大型化する欠点がある。従って、性能要求上、支承装置が大型化してしまった場合には、下部構造物である橋脚や橋台の上面の面積がより大きく要求されることになり、橋梁全体として高コスト化してしまうという欠点がある。
【0005】
また、大型の支承装置が求められる場合であって、新設でない場合には、既存の支承装置が設置されていることから設置スペースが限定されるために支承装置の大きさが特に問題となり、高さが低く面積が狭い小型の支承装置でなければ交換設置出来ないという不具合があった。
【0006】
まして、近年、建築物や橋梁等の構造物の大型化や予想される地震規模の大型化に伴い、支承装置に求められる機能や性能も高度化してきており、積層ゴム支承で対応しようとした場合、大型化してしまうことは避けられない。
【0007】
この様な背景から先述のような鉛直高荷重支持性能の向上に伴う大型化という積層ゴム支承装置の問題の改善を図ったものとして、例えば特許文献2(特許第4377429号公報)に記載された機能分離型の固定支承としての弾性支承装置が提案されている。
【0008】
この弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たず、この機能を別の支承装置に持たせ、鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、下面に環状溝が形成された上板と、上面に環状溝が形成された下板とが互いの環状溝に隙間無く固着されて介在する弾性層を介して対向配置され、上板と下板の中央に設けられた貫通孔に剪断変形を拘束する芯状の突起が配設されている。
【0009】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、弾性層が厚くなく、弾性層と交互に積層されるような鋼板層が存在せず、支承装置としても積層ゴム支承装置に比して高さが低く、全体としてコンパクトに設定され、支承装置の大型化問題に対する解決策として提案されている。
【0010】
また、特許文献3(特開2005−337002号公報)の弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たないものの、水平荷重支持機能を持たせながら鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、上沓と下沓がそれぞれ互いに嵌合する同心円状の複数の円筒部と中心に位置する円柱部とからなる凸部と凹部とを有している。そして、嵌合状態の直径鉛直断面視において、これら互いに嵌合する凸部と凹部は、それぞれ断面矩形状をなし、それらの隣接する側面同士と互いに対向する底面と頂面との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填され、連続するゴム層が挟持されて結合されている。
【0011】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、互いに隣接する凸部の側面と凹部の側面とこれらの間のゴム層とで水平荷重支持部が構成され、凸部の頂面と凹部の底面とこれらの間のゴム層とで鉛直荷重支持部が構成されている。
【0012】
また、特許文献4(特開2009−46944号公報)に記載された支承装置も、特許文献3の弾性支承装置と同様に、上沓と下沓が互いに嵌合する多条の円筒状の構成となっており、上沓と下沓における各凸部と凹部とを構成する円筒部や円柱部は、それぞれ鉛直断面形状における両側面間距離が端面をなす頂面に向かって接近して狭まり、両側面が傾斜してなる断面台形状に形成されて互いに嵌合される。そして、これらの凹部と凸部との間には、ゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填されている。
【0013】
このような特許文献3及び4に記載された弾性支承装置では、支承装置の小型化や軽量化が図られ、鉛直荷重と水平荷重の支持性能の向上がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−181129号公報
【特許文献2】特許第4377429号公報
【特許文献3】特開2005−337002号公報
【特許文献4】特開2009−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、積層ゴム支承装置を含め、ゴム等の弾性体を用いた弾性支承装置の場合、特に橋梁用支承装置の場合には、鋼製支承装置と異なり、鉛直可撓性能があることから橋軸直角方向における鉛直面内での回転は、回転性能によってなされるのではなく、鉛直可撓性によって達せられ、橋軸方向における鉛直面内における回転は鉛直方向の圧縮撓みによってなされることになる。
【0016】
圧縮撓み性能、即ち鉛直可撓性能を向上させるには鉛直弾性を改善する必要が生じるが、この改善を図ろうとしたときには、鉛直荷重支持性能が低下するという二律背反が生じる。さらに、道路橋支承便覧によれば、ゴム支承においては、剪断変形は許容されるが、構成ゴムに引張力が作用することは許容されていない。従って、積層ゴム支承装置においては、鉛直面内における回転性能を持たせることは困難であった。況してや、特許文献2の弾性支承装置にあっては、弾性層の厚みが薄く、鉛直可撓性が低く、圧縮撓みが殆どとれないことから橋軸直角方向に対する鉛直回転性能と、橋軸方向に対する鉛直回転性能のいずれも良好な回転性能を得ることが出来なかった。
【0017】
また、上述した特許文献3、4に記載された弾性支承装置によれば、機能分離型固定支承装置としては、広面積化したり、厚さを増したりと支承装置を大型化させることなく、水平方向及び鉛直方向における荷重支持性能を向上させることが出来る。
【0018】
しかしながら、例えば、当該弾性支承装置を橋梁の橋桁と橋脚との間に配設して、これらの間の荷重伝達や荷重緩和を担わせた場合、橋桁に上揚力等が作用した場合には、容易に上沓と下沓が乖離してしまい、当該弾性支承装置自体が破損したり、落橋したりする虞がある。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、小さな面積で高荷重を支持することを可能とする新規な支承装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、コンパクトにして大きな鉛直下向きの荷重を効果的に支持し、且つ、大きな水平方向の荷重を支持しつつ、変位制限すると共に、鉛直面内における回転追随性能を向上させることが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る支承装置は、厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有し、前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有するものである。この支承装置は、前記第一弾性体が配設される第一配設部と前記第二弾性体が配設される第二配設部とを有した第一剛性体を有する。前記第二配設部は、前記厚さ方向視において、前記第一配設部と同じ向きに設けることが出来る。更に、この支承装置は、前記第一弾性体の前記第一配設部が配設された面と反対側の面が設定される第一設定部と前記第二弾性体の前記第二配設部が配設された面と反対側の面が設定される第二設定部とを有した第二剛性体を有する。前記第二設定部は、前記厚さ方向視において、前記第一設定部と同じ向きに設けることが出来る。
【0022】
ここで、例えば、前記第二剛性体は、内部に空間部が設けられると共に、該空間部を介した支承面と反対側の面に該空間部と連通する穴部が形成され、前記第一剛性体は、先端部が前記穴部より前記空間部内に挿入される芯材が一体に形成されると共に、前記第二剛性体の前記穴部が形成された面に対向して配置される。前記第一弾性体は、前記空間部内の前記芯材の先端部と前記空間部の天井面との間において第一配設部に配設されると共に、前記第二剛性体の穴部の周囲に形成された支持部によって前記空間部から抜け止めされる。前記第二弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間において前記第二配設部に配設される。そして、前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている。具体的に、前記第一剛性体を構成する芯材の先端面が第一配設部となり、前記第一剛性体の前記第二剛性体と対向して前記芯材の先端面に対して段違いに設定された面が、第二配設部となる。また、前記第二剛性体に設けられた空間部の天井面及びその付近の空間が第一設定部となり、前記第二剛性体の前記第一剛性体と対向する面が第二設定部となる。
【0023】
前記第一弾性体が配設される前記第二剛性体の第一設定部は、前記第一弾性体と当接し、又は当接し得る面を含んで成る略密閉された空間とすることも出来る。また、前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、略平行に配設することが出来る。更に、前記空間部内において、前記第一弾性体は、前記第二剛性体の天井面と全体的に又は部分的に密着させることが出来る。
【0024】
前記第二剛性体は、前記第一弾性体を収容する沓部材と、該沓部材に突き合わされて前記空間部を構成すると共に前記支持部が形成された中間部材とで構成することが出来る。また、前記第一剛性体は、当該第一剛性体の芯材に、前記第一弾性体が取り付けられる大径部を設けることが出来る。
【0025】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体的なものであってもよいし、別体であってもよい。
【0026】
空間部内において、前記第二剛性体の内面と前記第一弾性体との間に、該第一弾性体が設けられていない空隙部を設けることが出来る。前記空隙部には、充填材を充填することが出来る。前記充填材は、前記第一弾性体と同種でも異種の弾性体であってもよく、例えば非圧縮性の流体とすることも可能である。
【0027】
第一剛性体又は第二剛性体の下面或いは上面には摺滑部材を設けることが出来る。
【0028】
前記支承装置において、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓とすることが出来る。また、これとは逆に、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓とすることが出来る。
【0029】
例えば、前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台とすることが出来る。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る支承装置においては、並列ばねとして機能する第一弾性体及び第二弾性体を配設し、高さを異ならせ、第一弾性体と第二弾性体とが平面視で少なくとも一部が重なるように多段に配設するようにしたので、全体としての小型化を実現しつつ、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、上部構造体の揺動によって、第一剛性体と第二剛性体とに相対的な回転変位の力が作用しても、優れた回転追従性能を発揮出来る。更に、第一剛性体の芯材は、第二剛性体の穴部より空間部に挿入されているので、芯材の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても第一剛性体と第二剛性体の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、第一剛性体の芯材は、第二剛性体の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、第二剛性体を上揚するような力が作用した際にも第一剛性体と第二剛性体とが乖離することを防止することが可能である。
【0031】
また、第一弾性体は、略密閉された空間部に配設されることで、略密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0032】
更に、第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体化されているとき、第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される第一弾性体と第二弾性体とを同時に形成することも可能となる。また、第一剛性体の芯材の軸方向に垂直な方向からの入力があった際には、第一弾性体と第二弾性体とを繋いでいる部分、即ち芯材の側部を囲繞するように位置する部分等が、当該方向の入力を緩衝することが可能となる。
【0033】
更に、空間部内において、第二剛性体の内面と第一弾性体との間に第一弾性体が設けられていない空隙部が設けられているときには、第一弾性体が荷重を受けて変形する場合に空隙部に入り込むことが可能となり、第一弾性体の許容変形量を大きくすることが出来る。この空隙部に充填材が充填されているときには、充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0034】
第一剛性体又は前記第二剛性体の下面或いは上面に摺滑部材を固設したときには、第一剛性体又は第二剛性体を摺滑させることが出来、固定支承であったものを可動支承として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明が適用された支承装置の図であり(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】底部が湾曲した貫通孔を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図3】芯材が軸体とナット体とによって構成される本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図4】芯材の周囲に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図5】芯材の周囲に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の変形例の断面図である。
【図6】上沓の下面がその略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなる傾斜面とされ、下沓の上面がその略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなる傾斜面とされた本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図7】上沓の下面がその略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなる傾斜面とされ、下沓の上面がその略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなる傾斜面とされた本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図8】貫通孔に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図9】上沓の上面にすべり板を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図10】下沓の下面にすべり板を有する本発明が適用された支承装置の変形例の断面図である。
【図11】本発明が適用された更なる支承装置の図であり、(a)は平面断面図であって(b)はB−B’断面図、(b)は鉛直面断面図で(a)のA−A’断面図である。
【図12】凸部がその表面の一部に上沓側に向く傾斜面を有し、凹部を構成する壁部がその表面の一部に下沓側に向く傾斜面を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図13】凸部の上面に形成される複数の凹部と、凹部の天井から垂下される複数の凸部とを備える本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図14】凸部の上面に形成される単一の凹部と、凹部の天井から垂下される単一の凸部とを備える本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図15】中心から外方に向かってゴム層が厚くなる本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図16】中心から外方に向かってゴム層が薄くなる本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図17】凸部の断面形状が頂部を拡径した略T形状とし、壁部の断面形状が底部を拡径した略L形状或いは反転L形状とされた本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図18】下沓、上沓及び凸部の平面視形状が矩形である本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図19】凸部及び凹部が環状に設けられた本発明が適用された更なる支承装置の図であり、(a)が平面断面図であって(b)のD−D’断面図、(b)が鉛直面断面図であって(a)のC−C’断面図である。
【図20】下沓と上沓との間に空隙部を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図21】脆弱部として機能する肉薄部を下沓に有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図22】脆弱部として機能する肉薄部を上沓に有する本発明が適用された更なる支承装置の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図23】上沓の上面にすべり板を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図24】下沓の下面にすべり板を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図25】本発明の基本的考え方を示した支承装置の鉛直面の断面図である。
【図26】本発明が適用された更なる支承装置の鉛直面の断面図である。
【図27】空隙部を有する支承装置の鉛直面の断面図である。
【図28】支承装置を上下反転し、下沓を上沓として、上沓を下沓として用いる鉛直面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明が適用された支承装置について説明する。本発明の支承装置は、建築物や橋梁等の構造物を支承するための支承装置であって、厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有する。この支承装置は、前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有する。更に具体的に、この支承装置は、互いに間隙を存して位置する二つ構造体のうち、一方の構造体側に配設される第一剛性体と、この第一剛性体に対向して他方の構造体側に配設される第二剛性体とを備え、これらの第一剛性体と第二剛性体との間に第一弾性体と第二弾性体とが介挿される。
【0037】
ここで例えば、上述の一方の構造体を下部構造体、他方の構造体を上部構造体とし、本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁と、下部構造体としての橋脚或いは橋台との間に配設して使用される。この場合、支承装置は、水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、荷重伝達を果たしながら地震や風、或いは動的或いは静的な交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収分散しつつ、支承する。以下、上部構造体と下部構造体との間に配設して使用する例を用いて、本発明の支承装置の実施形態を説明する。
【0038】
本発明の支承装置は、少なくとも、下部構造体に直接或いは間接的に固定される第一剛性体としての下沓と、上部構造体に直接的或いは間接的に固定される第二剛性体としての上沓と、下沓に一体的に設けられる芯材とを備える。そして、芯材の先端部と上沓内面との間には、第一弾性体が配設され、上沓と下沓との間には、第二弾性体が配設される。従って、第一弾性体と第二弾性体とは、並列ばねとして構成される。更に、上沓には、内部に空間部が設けられ、上部構造体に固定される支承面と反対の面に、空間部と連通する穴部が形成されている。
【0039】
更に、上沓は、第一弾性体が配設される第一設定部と、第二弾性体が配設される第二設定部とを有している。第一弾性体が配設される第一設定部は、例えば、上沓の空間部内において、上沓の穴部より空間部内に挿入された下沓に設けられた芯材の先端部の上の空間部の天井面である。第二設定部は、例えば、上沓の支持部と下沓との間の空間部における上沓側の支持面である。
【0040】
第一弾性体は、穴部の径より少なくとも一部が大きく形成され、上沓の穴部の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部に係合することによって抜け止めがされている。
【0041】
下沓は、芯材が一体的に設けられ、芯材の先端部が第一弾性体が設けられる第一配設部となり、上沓の支持部と対向する面が第二弾性体が設けられる第二配設部となる。かくして、下沓は、第一弾性体や第二弾性体を介した荷重全体を受ける部材となる。厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設された第一弾性体と第二弾性体とは、多段の並列ばねとして機能する。具体的に、第一弾性体と第二弾性体とは、第一弾性体の外側面より内側に第二弾性体の内側面が位置するように配設されている。即ち、第一弾性体と第二弾性体とは、平面視で、少なくとも一部が重なるように配設される。そして、例えば、上沓の第一弾性体が配設される第一設定部と第二弾性体が配設される第二設定部は、同じ向きに設けられ、下沓の第一配設部と第二配設部も同じ向きに設けられる。これにより、例えば、第一弾性体と第二弾性体とは、例えば略平行に配設することが出来る。
【0042】
以上のような、支承装置では、第一弾性体と第二弾性体とが厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設され並列ばねとして機能するので、全体としての小型化を実現しつつ、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓と下沓とに相対的な回転変位の力が作用しても、回転力を減衰させるなど、優れた回転追従性能を発揮出来る。更に、下沓に設けられた芯材は、上沓の穴部より空間部に挿入され先端部に第一弾性体が配設されているので、芯材の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても上沓と下沓の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、下沓の芯材は、先端に基端部の外径よりも大径に設定され且つ上沓の穴部の穴径よりもる大径に設定される大径部が設けられ、上沓の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされているので、良好な回転追従性を得つつも、上沓を上揚するような力が作用した際にも上沓と下沓とが乖離することを防止することが可能となる。
【0043】
上部構造体に対する上沓の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓を上部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは上沓よりも広面積の板状をなす上部プレートの如くの上部固定手段を介して上沓を上部構造体に対して間接的に固定したり、適宜の方法で固定することが出来る。また、上沓の上部に摺滑部材を配設して、上部構造体と支承装置とを相対変位可能に固定しても好い。この摺滑部材としては、例えば、フッ化炭素樹脂ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓の上面に固定したり、或いは上部構造体や上部構造体に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0044】
上沓は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される上沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。尚、上沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0045】
また、上沓には、芯材の先端部を収容する空間部と連通する穴部が形成されている。芯材は、穴部より上沓の空間部内に位置し、第一弾性体を空間部内に位置させるように下沓に固定される。芯材の先端部は、第一弾性体を安定して配設出来るように、根元側より大きい大径部とすることも出来る。そして、第一弾性体が先端部に配設された芯材は、上沓の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされている。芯材の先端部或いは大径部は、第一弾性体の配設面であり、第一弾性体を介した荷重を受ける第一配設部となる。第一弾性体又は芯材の大径部の大きさは、少なくとも、一部が穴部より大きく設定され、抜け止めを実現している。この穴部の形状は、円柱形状とすることも出来るが、その他、多角形等であってもよい。また、穴部は、第一弾性体又は芯材の大径部の形状に合わせた形状としてもよい。例えば、芯材先端部の形状が第一弾性体側から窄ませた湾曲形状とするときは、穴部の開口端も、これに対応する湾曲面の凹状の受け面とすることが好ましい。
【0046】
更に、上沓の支承面の反対面となる下面は、平面の他、下面側から凹設される凹部及び/又は対向する下沓に向かって凸設される凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。また、上沓の下面、即ち支持部の下沓の上面と対向する面は、上沓の下面の略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなるように設定される傾斜面としたり、或いは、略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなるように設定される傾斜面とすることが出来る。例えば、上沓の下面を、その略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓の上面を、その略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなる傾斜面とした下沓と組み合わせて支承装置を構成した場合、上沓と下沓との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出される。従って、この空間を満たすように第二弾性体を配設した場合には、中心から外方に向かって弾性層が厚くなる支承装置を得ることが出来る。逆に、上沓の下面を、その略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓の上面を、その略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなる傾斜面とした下沓と組み合わせて支承装置を構成した場合、上沓と下沓との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出される。従って、この空間を満たすように第二弾性体を配設した場合には、中心から外方に向かって弾性層が薄くなる支承装置を得ることが出来る。
【0047】
尚、上沓は、例えば、第一弾性体を収容する沓部材と、支持部を形成された中間部材とを積層するように突き合わせ結合することによって、第一弾性体が収容される空間部を構成することが出来る。
【0048】
下部構造体に対する下沓の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓を下部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは下沓よりも広面積の板状をなす下部プレートの如くの下部固定手段を介して下沓を下部構造体に対して間接的に固定することも出来る。また、下沓の下部に摺滑部材を配設して、下部構造体と支承装置とを相対変位可能に固定しても好い。この摺滑部材としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓の下面に固定したり、或いは下部構造体や下部構造体に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。尚、上沓や下沓の直接的乃至間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0049】
下沓は、上沓同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。勿論、下沓の平面形状等は、必ずしも上沓と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓の設定と上沓の設定を互いに整合させる必要がある。尚、下沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0050】
下沓の第二配設部となる上面は、勿論平面とすることも出来る他、上面側から凹設される凹部及び/又は対向する基盤に向かって凸設される凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。特に、下沓の上面の略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなるように設定される傾斜面としたり、或いは、略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなるように設定される傾斜面とすることが出来る。
【0051】
芯材は、下端側が下沓に固定されると共に先端部が穴部と連続する上沓内の空間部に配置される棒状の部材である。この芯材は、上沓と下沓の間に配設される弾性体の剪断変形を抑制する機能と、上部構造物からの鉛直荷重を第一弾性体や第二弾性体を介することによって弾性的に支承する機能と、上揚力に抗して上沓と下沓とが乖離することを防止する機能と、第一弾性体を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割のいずれか一つ以上を果たす。芯材は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。
【0052】
適宜の素材から構成される芯材の横断面形状は、特に限定されるものではないが、略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来る。また、設定される全ての芯材の最小径部の総断面積が、支承装置の片面側の支承面積の50%以上に設定することも可能である。また芯材の縦断面形状に関しても特に限定されるものではないが、略矩形、略台形、或いは上部と下部の少なくとも一方が大きく中間が細い形状等に設定することが可能である。尚、芯材は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0053】
芯材は、先端部を基端部より大径に設定される大径部とし、ここを第一配設部とすることが出来る。尚、芯材として、ボルト部材を用いることにより、当該ボルトの頭部を前記大径部として用いることが出来る。ただし、これに限られるものではなく、例えば、芯材を、先端部に雄ねじ部を有する軸体と、当該軸体に螺合するための雌ねじ部を有すると共に前記大径部となるナット体とから構成することも出来る。また、芯材は、簡易な作業で高い接合強度が得られることから、下端が下沓に対して螺合することにより固定されることが好ましいが、これに限られるものではなく、圧入や溶接等を用いて下沓に対して固定するようにしてもよい。或いは、下沓と一体に形成してもよい。
【0054】
第一弾性体は、上沓の空間部内において、下沓の芯材の先端部又は芯材先端部の大径部を第一配設部にし、上沓の空間部の天井面を第一設定部として所定量配設される。また、第二弾性体は、下沓の上沓の支持部と対向する芯材の周囲の上面を第二配設部とし、上沓の穴部の周囲の下面を第二設定部にして所定量配設される。第一弾性体及び第二弾性体は、配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。勿論、第一弾性体や第二弾性体として採用する材料によっても荷重支持性能や回転追従性などの設定を行うことが出来る。特に、第一弾性体を、空間部において、略密閉状態としたときには、略密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、第一弾性体と第二弾性体とは、同じ材料であってもよく、また、異なる材料であってもよい。第一弾性体と第二弾性体の材料選択によっても、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。また、第一弾性体と第二弾性体とは、厚さも同じでもよく異なっていてもよい。更に、第一弾性体、第二弾性体のそれぞれの厚さも、必ずしも均一でなくてもよい。
【0055】
また、第一弾性体と第二弾性体とは、別体であってもよいが、一体化させてもよい。これによって、上沓と下沓との間に介挿される第一弾性体と第二弾性体とを同時に形成することが可能となる。
【0056】
第一弾性体や第二弾性体の主たる構成素材となるエラストマとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを1種単独、或いは2種以上を併用することが出来る。
【0057】
空間部内において、上沓の空間部の内面と第一弾性体との間は、空間部の内面に第一弾性体の少なくとも一部を密着させることも出来る。また、上沓の空間部の内面と第一弾性体との間には、第一弾性体が設けられていない空隙部を設けることも出来る。空隙部は、第一弾性体を上沓内の空間部より一回り小さく設けて形成することも出来、又、第一弾性体及び/又は空間部の内面に切り欠きを設けて形成することが出来る。上沓と下沓との間に第一弾性体が設けられていない空隙部を有する場合には、第一弾性体が荷重を受けて変形する場合に空隙部に入り込むことが可能となり、第一弾性体の許容変形量を大きくすることが出来る。つまり、空隙部を設けることによって、バネ定数の調整を行うことも可能となる。
【0058】
更に、空隙部には、充填材を充填することが出来る。この充填材の構成材料や充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0059】
充填材は、上述の空隙部に適宜量充填されるものであり、その充填量は、空隙部の容積よりも少量であっても、等量であっても、或いは多量であってもよい。少量の場合には、残存空隙分だけ圧縮或いは変形し得る余地が出来、支承装置の厚みを薄く設定出来、等量とした場合には、残存容積が無く元々の設計通りの支承装置の厚みを実現出来、また多量とした場合には、充填空間の容積が元々の設計値よりも増量して支承装置の厚みを厚く設定することが出来る。支承装置では、充填材の充填量によって支承装置の厚み若しくは高さを調整することが出来る。
【0060】
充填材は、少なくとも充填時には流体であることが好ましい。勿論、充填後も流体であってもよい。充填時に流体である充填材のうち、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものを採用することも可能である。また、一つの空間部内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、充填材は、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するものとして一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合して置いてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体を混入させて支承装置に対する外部入力の減衰性能を改善したり、気体を混入させてバネ定数や弾性を改質或いは調整するようにしてもよい。
【0061】
充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することが可能である。充填材の主成分として気体を採用する場合、気体は、圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きとなるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、充填材は、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くすることも可能である。また、例えば、充填材の主成分として液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の流体を採用した場合には、空隙部の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することが可能である。
【0062】
充填材には、非圧縮性の流体を採用することが可能であり、充填材として非圧縮性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0063】
また、充填材には、高粘性の流体を採用することも可能であり、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の充填材を充填した場合、第一弾性体が変形した際には、空隙部内の高粘性の充填材が粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。勿論、非圧縮性を有する高粘性の流体を採用した場合には、非圧縮性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、高粘性流体を充填材として採用した場合に得られる効果との両者の効果を得ることが可能となる。
【0064】
或いは、充填材には、上沓と下沓との間に介在させる第一弾性体や第二弾性体と異種又は同種の弾性体を採用することが可能である。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものである必要がある。例えば、弾性体が熱可塑性を示すとき、これを充填材として使用するには、弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また、例えば弾性体が熱硬化性を示すときには、硬化前の流動可能な状態の時点で充填し、適宜の条件で硬化させる。
【0065】
充填材の充填は、予めの充填であってもよく、或いは製造後に充填してもよい。予め充填材を充填する場合には、充填材の充填は予めの設計通り、また、手順通りに製造段階や出荷前に充填することになり、これによれば、製造上高効率化することが出来る。また、後から充填材を充填する場合、充填材の充填は、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することも可能となる。これによれば、従来施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0066】
以上のような本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁や下部構造体としての橋脚或いは橋台に設けた受容構造に対して着脱可能とし、交換を容易なものとすることが出来る。この場合、例えば、上沓と下沓と二つの弾性体(第一弾性体及び第二弾性体)を一つのカートリッジとして取り扱うことになる。受容構造は、例えば、カートリッジ式支承装置を受容する一方が挿脱用に開口されたコ字状に形成され、例えば、断面L字状に形成することで、鉛直方向及び水平方向に位置決め保持出来る。
【実施例】
【0067】
本発明の支承装置の実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の第一の実施例を図1を参照しながら説明する。
【0068】
図1に示す支承装置1は、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図1(a)は支承装置1の平面図である。また、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【0069】
支承装置1は、第二剛性体としての上沓2と第一剛性体としての下沓3とを、弾性体、具体的にはゴム等から構成される第二弾性体としてのゴム層4を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。上沓2は、上部構造物として例えば橋桁16を、二点鎖線で示す上部プレート6を介して上面に固定している。下沓3は、下部構造物として例えば橋脚17を、二点鎖線で示す下部プレート7を介して下面に固定している。勿論、ここでいう上部プレート6や下部プレート7は、必須ではなく、上沓2と上部プレート6を一体的に構成したり、下沓3と下部プレート7を一体的に構成したりして、上沓2や下沓3にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0070】
上沓2は、平面視において略長方形の板状部材からなり、上面に上部プレート6が固定されている。この上沓2には、特に図1(b)に示すように、表裏面に貫通する穴部となる貫通孔2aが穿設されている。この貫通孔2aには、上沓2の下面側から芯材8が挿入され、芯材8の先端部が上沓2の上面から突出することなく収容されている。つまり、貫通孔2aが有する両開口端のうち、上沓2の下面に位置する開口端2bには、芯材8が通過しており、上沓2の上面に位置する開口端2cには芯材8が通過していない。この開口端2b−2cに亘る領域は、後述する第一弾性体である充填弾性体9が収納される。尚、芯材8については、後に詳説する。
【0071】
貫通孔2aの形状は、円柱形状とすることも出来るが、支承装置1において芯材8の先端部が芯材8の他の部位よりも大径の大径部8aとされている。大径部8aは、貫通孔2aから抜け出ることを抑止するべく、芯材8が通過する開口端2b(つまり上沓2の下面に位置する開口端2b)を窄ませた形状を採用している。このように上沓2の下面に位置する開口端2bを窄ませる形状を採用することにより、貫通孔2aは、見かけ上、小径の貫通孔を有する有底の溝形状となる。そして、当該溝の底部2dの上面は、平面とされている。小径の開口端2bの周囲は、開口端2cが芯材8の大径部8aより小径となることで、芯材の抜け止めとなる支持部として機能する。尚、図2に示すように、当該溝の底部2dの上面を貫通孔2aの側面と滑らかに接続する湾曲面とすることも出来る。
【0072】
また、下沓3も略長方形の板部材であり、下面には、下部プレート7が固定されている。この下沓3には、図1に示すように、平面視における中央部に芯材8が固定されている。尚、芯材8は、下端が下沓3に対して螺合されており、これによって、簡易な作業にて下沓3に対して強固に固定することが可能となる。
【0073】
上沓2の下面と下沓3の上面との間は、第二弾性体としてのゴム層4が配設される。具体的に、下沓3の上面は、第二配設部となり、上沓2の下面は第二設定部となる。第二弾性体としてのゴム層4は、上沓2と下沓3との間に介挿されており、第二配設部となる下沓3の下面の芯材8の周囲に支持される。上沓2の貫通孔2aと同径であると共に芯材8が通過する貫通孔4aを有しており、当該貫通孔が上沓2の貫通孔2aと同軸になるように配設されている。具体的に、ゴム層4の貫通孔4aは、上沓2の貫通孔2aにおける小径の開口端2bと略同径で、芯材8の大径部8aより小径としている。
【0074】
尚、上沓2及び下沓3の材質は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属板、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等で形成することが出来る。同様に、ゴム層4も天然ゴム等の公知の素材を採用することが出来る。
【0075】
芯材8は、大径部8aとなる頭部を有する金属性のボルト部材からなり、先端部である大径部8aが上沓2の貫通孔2aの内部に収容可能な大きさに設定されている。この芯材8が、上沓2の開口端2bを通過して空間部である貫通孔2a内に至る構成とすることにより、上沓2と下沓3とが水平方向に相対移動しようとした際に、下沓3に固定された芯材8によって上沓2の移動が規制される。これにより、過剰に上沓2と下沓3とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。
【0076】
また、貫通孔2aが有する開口端であって上沓2の下面に位置する開口端2b(芯材8が通過する開口端2b)は、窄んだ形状を有している。この開口端2bの周辺部は、芯材8の大径部8aの抜けを防止すると共に第二弾性体としてのゴム層4に支持される支持部として機能する。このような構成を採用することにより、上沓2と下沓3とが離反しようとする際(即ち上沓2が下沓3に対して相対的に上揚しようとする際)に芯材8の大径部8aが、段付き形状となった貫通孔2aの底部2d(支持部)に係止され、上沓2と下沓3とが乖離することを抑制する。つまり、本実施例においては、芯材8及び貫通孔2aが上揚抑制機構10として機能する。
【0077】
尚、支承装置1は、図1(b)に示すように、芯材8の長さL1と支承方向から見て当該芯材8が設置される領域における下沓3の厚みL2とを合計した距離が、支承方向から見て芯材8が設置される領域以外の領域における上沓2の厚みL3と下沓の厚みL4とを合計した距離と一致されている。これによって、支承装置1は、相対的に剛性が高い部位の厚み(即ち剛性体の厚み)が均一化され、優れた鉛直荷重支持特性を発揮することが出来る。
【0078】
また、芯材8をボルト部材によって構成するのではなく、図3に示すように、芯材8を、先端部に雄ねじ部を有する軸体8bと、当該軸体8bに螺合するための雌ねじ部を有すると共に大径部となるナット体8cとによって構成することも可能である。
【0079】
そして、支承装置1は、芯材8の大径部8aが収容されている貫通孔2a内に充填配置される第一弾性体としての充填弾性体9を備えている。充填弾性体9は、第一配設部となる芯材8の先端部に設けられ、貫通孔2a内部に隙間無く配置されている。これによって、充填弾性体9は、芯材8の先端部全体を被覆し、貫通孔2aの開口端であって芯材8が通過しない側の大径の開口端2cを閉塞している。充填弾性体9は、貫通孔2aの内部において、芯材8の先端部の全体を被覆することによって、芯材8の先端部全体が充填弾性体9によって囲撓され、芯材8の先端部全体の発錆を抑制する。更に、充填弾性体9が貫通孔2aの開口端2cを閉塞している場合には、当該開口端2cから貫通孔2aの内部に水分等の芯材の劣化の原因となる物質が侵入することをより確実に防止することができ、芯材8の発錆をより効率的に抑制することが可能となる。また、充填弾性体9は、貫通孔2a内部に隙間無く充填されているため、万が一貫通孔2a内部に前記物質が進入した場合であっても、その進行速度を低減し、芯材8に到達することを遅らせることが可能となる。
【0080】
充填弾性体9の貫通孔2aから露出する領域は、上沓2の表面とほぼ面一となる平坦領域とされている。これによって、充填弾性体9が上沓2の表面と共に上部プレート6と接触することになり、荷重の受圧面積を増大させることが出来、更に、貫通孔2a内に充満された充填弾性体9はほぼ密閉状態となるため、密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0081】
以上のような支承装置1では、第一弾性体としての充填弾性体9と第二弾性体としてのゴム層4とが並列ばねとして機能し、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓2と下沓3とに相対的な回転変位の力が作用しても優れた回転追従性能を発揮出来る。また、第二弾性体であるゴム層4の内側面は、第一弾性体である充填弾性体9の外側面より内側に位置し、ここでは更に芯材8の大径部8aの外側面より内側に位置している。このように、ゴム層4は、充填弾性体9と一部が重複するように配設されることで、ゴム層4が配設される上沓2や下沓3の対向面の大きさの範囲内で最大限に大面積化することが出来、高荷重を支承することが可能となる。
【0082】
更に、芯材8は、上沓2の開口端2bより開口端2c側の空間部に挿入され、先端部に第一弾性体となる充填弾性体9が固定されるので、水平方向の剪断力が作用しても上沓2と下沓3の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、芯材8に固定された充填弾性体9は、上沓2の開口端2bの周囲の支持部によって抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、上沓2を上揚するような力が作用した際にも上沓2と下沓3とが離反することを防止することが可能となる。
【0083】
また、支承装置1では、図1(b)に示すように、芯材8の先端から芯材が通過しない側の開口端2cまでの離間距離L5がゴム層4の厚みL6と一致されている。これによって、充填弾性体9を含めると、支承方向における弾性体の厚みが均一化され、優れた鉛直荷重支持特性を発揮出来る。
【0084】
また、支承装置1では、充填弾性体9が、芯材8と貫通孔2aの内壁面との間の隙間を介してゴム層4と一体化され、当該ゴム層4と同一の材料によって形成されている。これによって、支承装置1は、充填弾性体9とゴム層4とを同時に形成することが可能となり、且つ、一種の材料にて充填弾性体9とゴム層4とを形成することが可能となり、量産性に優れたものとなる。
【0085】
尚、本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下の変形例について図面を参照して説明する。
【0086】
上記実施例においては、貫通孔2aに隙間無く充填弾性体9を配設する構成であったが、例えば、貫通孔2aの一部にのみ充填弾性体9を配設し、残りを空隙部9aとすることも出来る。例えば、図4に示すように、芯材8の上部にのみ充填弾性体9を配設することも出来る。この場合には、充填弾性体9の使用量を削減しつつ、受圧面積を向上させることが可能となる。また、図5に示すように、芯材8の周囲にのみ充填弾性体9を配設することも出来る。この場合には、充填弾性体9の使用量を削減しつつ、芯材8の発錆を抑制することが出来る。また、図5の空隙部9aは、充填弾性体9が荷重を受けて変形する場合に入り込むことで、充填弾性体9の許容変形量を大きくすることが出来、バネ定数の調整を行うことも可能となる。
【0087】
また、図6に示すように、上沓2の下面を、その略中心から外方に向かって上沓2の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓3の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。上沓2と下沓3との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層4を厚くすることが出来、ゴム層4は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0088】
また、図7に示すように、支承装置では、上沓2の下面を、その略中心から外方に向かって上沓2の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓3の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓2と下沓3との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層4を薄くすることが出来、ゴム層4の密閉性を高めることが出来る。
【0089】
また、図8に示すように、積極的に貫通孔2aの内部に充填弾性体9を配置しない空隙部となる空間11を形成する構成を採用することも出来る。そして、この空間11を充填空間として、充填材を充填する構成を採用することも出来る。例えば、充填材として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填量によって充填弾性体9やゴム層4のバネ定数を調整出来る。
【0090】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。
【0091】
また、空間11内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、空間11の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。
【0092】
また、充填材は、支承装置1の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。
【0093】
更に、図9に示すように、第一の実施例の支承装置1において、上沓2の上面にすべり板12を摺滑部材として固設することが可能であり、この場合、元々固定支承であった支承装置1を可動支承として利用することが可能となる。すべり板12は、例えばPTFE製とされる。
【0094】
また、図10に示すように、第一の実施例の支承装置1において、下沓3の下面にすべり板12を設けることも出来る。勿論、すべり板12の設定は、第一の実施例の支承装置1に限らず、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0095】
また、ゴム層4の厚さは、必ずしも一定である必要はなく、例えば、上沓の下面、或いは下沓の上面に環状の凹部を形成して、弾性体を当該環状の凹部に充満させた設定とすることも出来る。
【0096】
本発明の支承装置の更なる実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の実施例を図11を参照しながら説明する。
【0097】
図11に示す支承装置21は、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図11(a)は支承装置21の平面断面図であり、図11(b)のB−B’断面図である。また、図11(b)は、鉛直面断面図であり、図11(a)のA−A’断面図である。
【0098】
支承装置21は、第一剛性体としての下沓22と第二剛性体としての上沓23を、弾性体、具体的にはゴム等から構成され第一の弾性体及び第二の弾性体からなるゴム層24を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。下沓22は、二点鎖線で示す下部プレート25を介してその下面が下部構造物として例えば橋脚17に固定されている。上沓23は、二点鎖線で示す上部プレート26を介してその上面が上部構造物として例えば橋桁16に固定している。勿論、ここでいう上部プレート25や下部プレート26は、必須ではなく、上沓23と上部プレート26を一体的に構成したり、下沓22と下部プレート25を一体的に構成したりして、上沓23や下沓22にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0099】
下沓22は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等から構成される、平面視において略円形の板状部材からなり、下面に下部プレート25が固定されている。この下沓22の上面には、特に図11(b)に示すように、中央部に、芯材となる単一の凸部28が設けられている。
【0100】
凸部28は、その断面形状が上端に向かって徐々に幅が広くなる台形形状を有しており、全体としては、頂部が切断された略逆円錐形状を有している。凸部28は、このような形状を有する結果、下沓22側に向けられた円錐側面状の外側部面28aが設けられる。
【0101】
上沓23は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等から構成され、全体としての平面視において、略円形の板状部材からなり、上面に上部プレート26が固定されている。この上沓23の下面には、特に図11(b)に示すように、凸部28を囲繞するように環状に配設された壁部29が設けられており、当該壁部29によって上沓23の中央部に凸部28と嵌合する穴部となる凹部30が形成されている。この凹部30は、天井面が閉塞されおり、内部に配設されるゴム層24の一部の第一弾性体24aが密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積で高荷重を支承出来るようにしている。
【0102】
このような凹部30を形成する壁部29は、図11(b)に示すように、上沓23側を向く内側部面29aを有している。この内側部面29aは、凸部28の外側部面28aに対向配置されており、外側部面28aと平行に且つ支承方向に対して傾斜している。穴部を構成する凹部30の開口端30aは、凸部28の頂面或いは頂面に配設されゴム層24の一部である第一弾性体24aより小さく形成されており、下沓22に対して上沓23が上揚することを防止している。また、凹部30は、開口端30aと連続する空間部30bを、開口端30aの開口より大きくし、内部に凸部28の頂部及び第一弾性体24aを配設出来るようにしている。尚、上沓23は、後述のように、複数の分割体を組み合わせることによって下沓22に配設することが出来る。
【0103】
そして、本実施例の支承装置21においては、支承方向(図11(b)における上下方向)から見て、外側部面28aと内側部面29aとが重なるように、凸部28と壁部29とが近接して配置されている。
【0104】
更に、本実施例の上沓23は、図11(b)に示すように、支承方向と異なる方向に分割可能とされている。つまり、上沓23は、平面視における中心を通る直径線に沿って支承方向(鉛直方向)に切断したように支承方向と異なる方向に分割された互いに対向配置される二つの略半円状の分割体23a,23bから構成されている。そして、二つの分割体23a,23bは、これら分割体23a,23bの接合部にそれぞれ半径方向外向きに突設されたフランジ部23c同士を当接させつつ、互いにボルト/ナット31によって締結されることによって円板状の上沓23が形成される。尚、本実施例においてボルト/ナット31は、支承装置21に対して大きな荷重が作用した場合に、最も先に損壊する部位であって脆弱部とされ、外側から視認可能な箇所に配設されている。
【0105】
ゴム層24は、天然ゴム等の公知の素材を採用することが出来、下沓22と上沓23との間に介挿され、凸部28と壁部29との間にも充填されている。ここで、ゴム層24のうち、下沓22の凸部28の頂面の部分が第一弾性体24aとして機能し、凸部28の周囲の平坦な面が第二弾性体24bとして機能し、第一弾性体24aと第二弾性体24bとの間の傾斜部分が両者を一体化する一体化部24cとして機能する。
【0106】
このような本実施例の支承装置21では、下沓22に設けられた凸部28が当該下沓22側に向く外側部面28aを有し、上沓23に設けられた凹部30を構成する壁部29が上沓23側に向くと共に凸部28の外側部面28aに対向配置される内側部面29aを有している。下沓22と上沓23との間には、第一弾性体及び第二弾性体として機能するゴム層24が介挿される。即ち、ゴム層24は、凸部28の壁面及び凹部30を構成する壁部29の壁面に配設された状態となる。この結果、支承方向視において、下沓22に向く凸部28の外側部面28a及び上沓23に向く凹部30を構成する壁部29の内側部面29aが存在する領域では、外側部面28a及び内側部面29aに沿ってゴム層24の一体化部24cが存在し、下沓22と上沓23との間では、第一弾性体24aと第二弾性体24bとが介挿される。
【0107】
つまり、凹部30の底部(天井)は、第一設定部となり、凸部28の頂面は、第一の配設部となり、第一弾性体24aは、第一配設部と第一設定部との間の空間部に配設される。また、凸部28の周囲の下沓22の上面は、第二配設部となり、上沓23の下面は、第二設定部となり、第二弾性体24bは、第二配設部と第二設定部との間の空間部に配設される。かくして、第一弾性体24aは、凸部28の頂面の第一配設部で荷重が支持され、また、厚さ等が規定される。また、第二弾性体24bは、下沓22の平坦な面である第二配設部で荷重を支持され、また、厚さ等が規定される。更に、一体化部24cは、内側部面29aを設定部とした外側部面28aと内側部面29aとの間の配設部に配設される。
【0108】
従って、支承装置21では、見かけ上、ゴム層24が複数層配設されることとなる。このようにゴム層24が支承方向において複数配置されていることにより、鉛直荷重が分散して作用することになり、鉛直荷重支持特性が向上する。従って、本実施例の支承装置21によれば、特に鉛直荷重方向支持特性に優れ、鉛直下方及び鉛直上方の揺動に追従して振動を十分に吸収、分散出来、鉛直面内における回転追随性能や回転力分散性能を向上させることが可能となる。
【0109】
また、支承装置21では、ゴム層24の第一弾性体24aと第二弾性体24bとが並列ばねとして機能し、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓23と下沓33とに相対的な回転変位の力が作用しても優れた回転追従性能を発揮出来る。
【0110】
更に、凸部28は、上沓23に対する芯材となり、水平方向の剪断力が作用しても上沓23と下沓22の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。また、ゴム層24の第二弾性体24bは、ゴム層24の中で最も内側の部分であるため、略密閉状態となり、密閉ゴム支承のように、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0111】
また、本実施例の支承装置21においては、支承方向視において、凸部28の外側部面28aと、凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとが重なり合う部分を有するため、下沓22と上沓23が離間する方向に移動した場合に、凸部28が凹部30を構成する壁部29に引っ掛かり、下沓22と上沓23とが乖離することを防止することが出来る。つまり、支承装置21に対して上揚力が作用しても下沓22と上沓23とが乖離することによる落橋等を防止することが出来る。
【0112】
また、本実施例の支承装置21においては、凸部28の外側部面28a及び凹部30を構成する壁部29の内側部面29aが支承方向に対して傾斜しているため、外側部面28a及び内側部面29aにおいて水平方向の荷重を支持しつつ、水平方向における下沓22と上沓23との相対的な変位を制限することが出来、水平荷重支持特性をも向上させることが出来る。
【0113】
また、本実施例の支承装置21は、凸部28の外側部面28aと凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとが平行とされているため、外側部面28aと内側部面29aとの間に配設されるゴム層24の部位が均一な厚みを有することになり、支承方向視において均等に鉛直荷重を支持することが出来る。
【0114】
また、本実施例の支承装置1においては、上沓23が分割可能に構成されているため、凸部28と凹部30とを容易に嵌合させることが可能となる。
【0115】
また、本実施例の支承装置21においては、上沓23が下沓22から離間する方向に所定以上の力を受けた場合に、凸部28又は凹部30を構成する壁部29より先に損壊すると共に、損壊による変化が外側に現れる脆弱部として、上沓23の分割部位同士を締結するボルト/ナット31を備えている。このボルト/ナット31は、凸部28よりも剪断面積が少なく設定されており、凸部28等よりも先に損壊する。このため、地震等により大きな荷重が作用した際に、目視出来ない凸部及び凹部を構成する壁部が損壊することを防止することが出来、目視可能なボルト/ナット31が損壊する。従って、支承装置の損壊状態を容易に把握することが可能となる。
【0116】
尚、本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下に幾つかの変形例について図面を参照して説明する。
【0117】
例えば、図12の断面図に示すように、芯材となる凸部28がその表面の一部に上沓23側に向く傾斜面28bを有し、凹部30を構成する壁部29がその表面の一部に下沓22側に向く傾斜面29bを有するように構成することも出来る。このような構成を採用することによって、傾斜面28b,29bにおいて鉛直荷重を支持することが出来、鉛直荷重支持特性を向上させることが出来る。さらに、図13に示すように、芯材となる凸部28の上面に下方に向かうに連れて窄まる凹部28cを設け、凹部30の天井から垂下されると共に下方に向かうに連れて窄まる凸部30cを設け、これによって、実質的に傾斜面28b,29bの面積を増加させ、鉛直荷重支持特性をさらに向上させることも出来る。尚、凸部28の上面に形成される凹部28cと、凹部30の天井から垂下される凸部30cとは、図13に示すように複数であってもよいが、図14に示すように単数であってもよい。
【0118】
また、図15の断面図に示すように、上沓23の下面を、その略中心から外方に向かって上沓23の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓22の上面を、その略中心から外方に向かって下沓22の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。上沓23と下沓22との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層24を厚くすることが出来、ゴム層24は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0119】
また、図16の断面図に示すように、上沓23の下面を、その略中心から外方に向かって上沓23の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓22の上面を、その略中心から外方に向かって下沓22の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓23と下沓22との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層24を薄くすることが出来、ゴム層24の密閉性を高めることが可能となる。従って、この場合には、より大きな鉛直下向き荷重を支承することが可能となる。
【0120】
また、図17の断面図に示すように、支持装置は、凸部28の断面形状を、頂部が拡径された略T形状とし、壁部29の断面形状を、底部が拡径された略L形状或いは反転L形状とすることも出来る。この場合には、外側部面28a及び内側部面29aが支承方向に対して直交した形状となる。
【0121】
また、図18の断面図に示すように、下沓22、上沓23及び凸部28は平面視形状が円形である必要はなく、矩形状であってもよい。
【0122】
また、図19に示すように、凸部28及び凹部30が環状に設けられる構成を採用することも出来、この場合には、環状を成す凸部28或いは凹部30の半径方向における内側部分にゴム層24を略密閉状態で抱持することが出来、より一層の高荷重を支承することが可能となる。尚、凸部28の外側部面28a及び凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとは、必ずしも全周に亘って設ける必要はないが、全周に設けることによって荷重を均等に且つ細かく分散することが出来、より鉛直荷重支持特性及び回転追随性能を向上させることが出来る。
【0123】
また、図20に示すように、下沓22と上沓23との間にゴム層24を配置しない空隙部となる空間32を形成することも出来る。ここでは、ゴム層24の第一の弾性体24aの部分を切り欠いて空間32を形成しているが、凹部30の天井面を切り欠いて空間32を形成することも出来る。また、ゴム層24、凹部30の天井面の両方に空間32を設けるようにしてもよい。そして、この空間32には、充填材を充填するようにしてもよい。例えば、充填材として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填圧等によってゴム層24のバネ定数を調整出来る。
【0124】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層24と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。また、空間32内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合には、図示を省略するが空間32の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。
【0125】
また、上記実施例においては、ボルト/ナット31が脆弱部として機能する構成について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図21に示すように、下沓22に肉薄部33を設け、当該肉薄部33が最も先に損壊する脆弱部として機能するようにしてもよい。尚、図22に示すように肉薄部33を上沓23に設けてもよい。尚、このように下沓22及び上沓23に対して肉薄部33を設ける場合には、これらの肉薄部33が外部から目視可能なように、肉薄部33を下沓22及び上沓23の側面まで到達するように設けることが好ましい。
【0126】
更に、図23に示すように、支承装置21は、下沓22の下面に、すべり板34を摺滑部材として固設することが出来る。この場合、支承装置21は、元々固定支承であったものを可動支承として利用することが出来る。すべり板34は、例えばPTFE製とされる。また、図24に示すように、本発明の実施例の支承装置21において、上沓23の上面にすべり板34を設けることも出来る。勿論、すべり板24の設定は支承装置21に限らず、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0127】
更に、本発明の支承装置の更なる実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の実施例を図25を参照しながら説明する。
【0128】
図25に示す支承装置41も、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。
【0129】
支承装置41は、上沓42と下沓43を、高さが異なるように並列配置されたゴム等の弾性体を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。上沓42は、上部構造物として例えば橋桁16を、二点鎖線で示す上部プレート46を介して上面に固定している。下沓43は、下部構造物として例えば橋脚17を、二点鎖線で示す下部プレート47を介して下面に固定している。勿論、ここで言う上部プレート46や下部プレート47は、必須ではなく、上沓42と上部プレート46を一体的に構成したり、下沓43と下部プレート47を一体的に構成したりして、上沓42や下沓43にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0130】
この支承装置41は、少なくとも、橋桁16に上部プレート46を介して固定される第二剛性体である上沓42と、橋脚17に下部プレート47を介して固定される第一剛性体である下沓43と、下沓43に固定される芯材44と、上沓42と下沓43との間に配設されて並列ばねとして機能する二つの弾性体(第一弾性体48,第二弾性体49)とを備えている。更に、上沓42には、内部に空間部51が設けられ、上部構造体である橋桁16に固定される支承面と反対の面に、空間部51と連通する穴部52が形成されている。
【0131】
第二剛性体となる上沓42は、第一弾性体48が配設される第一設定部48aと、第二弾性体49が配設される第二設定部49aとを有している。第一弾性体48が配設される第一設定部48aは、例えば、上沓42の空間部51内において、上沓42の穴部52より空間部51内に挿入された下沓43に設けられた芯材44の先端部と対向する空間部51の天井面である。また、第二弾性体49が配設される第二設定部49aは、上沓42の支持部53の下沓43と対向する下面である。また、第一弾性体48は、穴部52の径より少なくとも一部が大きく形成され、上沓42の穴部52の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部53に係合することによって抜け止めがされている。
【0132】
第一剛性体となる下沓43は、芯材44が一体的に設けられており、芯材44の先端部が第一弾性体48が配設される第一配設部48bとなり、上沓42の支持部53と対向する面が第二弾性体49が配設される第二配設部49bとなる。第一配設部48bは、第一弾性体48が設けられ、第一弾性体48を介した荷重を支持する。また、第二配設部49bは、第二弾性体49が設けられ、第二弾性体49を介した荷重を支持する。
【0133】
下沓43の芯材44は、上沓42の穴部52より空間部51内に挿入される。空間部51内には、芯材44の先端部に固定された第一弾性体48が上沓42の天井面と対向するように配置される。芯材44は、穴部52の大きさより少なくとも一部が大きく形成され、上沓42の穴部52の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部53によって抜け止めがされている。
【0134】
上沓42の穴部52の周囲の支持部53(第二設定部49b)と下沓43の芯材44の周囲(第二配設部49a)との間には、第二弾性体49が配設される。即ち、第一弾性体48と第二弾性体49とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設された多段の並列ばねとして機能する。更に、第一弾性体48と第二の弾性体49とは、第一弾性体48の外側面より内側に第二弾性体49の内側面が位置するように配設されている。即ち、第一弾性体48と第二弾性体49とは、平面視で、高さを異ならせ段違いにすることで、少なくとも一部が重なるように配設される。そして、例えば、上沓42の第一弾性体48が配設される第一設定部48aと第二弾性体49が配設される第二設定部49aは、同じ向きに設けられ、これらに対向した向きとして下沓43の第一配設部48bと第二配設部49bとが互いに同じ向きに設けられる。これにより、例えば、第一弾性体48と第二弾性体49とは、略平行に配設することが出来る。
【0135】
上沓42は、図25のように一部材で構成しても良いが、図26に示すように、複数の部材で構成するようにしても良い。図26では、二部材を用いており、上沓42は、第一弾性体48を収容する沓部材42aと、支持部53が形成された中間部材42bとを積層するように突き合わせ結合することによって、第一弾性体48が収容される空間部51を構成する。尚、沓部材42aと中間部材42bとの結合は、ボルト・ナット等を用いても好いことは勿論、沓部材42aと中間部材42bの何れか一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設け、これらを互いに螺合して結合するねじ締結によったり、溶接したり、従来公知の結合方法等によってもよい。沓部材42aは、上部プレート46に固定される支承面を有していると共に、周囲に立ち上がり壁を設けて、空間部51の上側を構成する。また、中間部材42bは、底面に穴部52を有し、穴部52の周囲に支持部53を設けるようにし、更に、支持部53の外周より立ち上がり壁を設けて、空間部51の下側を構成する。沓部材42aと中間部材42bとは、芯材44の太径部の大径部44aを空間部51内に配置した後に、互いの立ち上がり壁を突き合わせ結合することによって組み立てられる。かくして、上沓42には、内部に、芯材44の先端部を収容する空間部51が形成されると共に、この空間部51と連通し、周囲を支持部53とした穴部52が形成される。ここでは、穴部52は、芯材44の直径よりやや大きい直径となるように形成されている。
【0136】
下沓43には、芯材44が固定される。芯材44は、下端側が下沓43に固定されると共に先端部が穴部52と連続する上沓42内の空間部51に配置される棒状或いは柱状、若しくは剪断キー状に設定される部材である。この芯材44は、上沓42と下沓43の間に配設される第一弾性体48や第二弾性体49の剪断変形を抑制する機能と、橋桁16等の上部構造物からの鉛直荷重を第一弾性体48や第二弾性体49を介することによって弾性的に支承する機能と、上揚力に抗して上沓42と下沓43とが乖離することを防止する機能と、第一弾性体48を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を果たす。芯材44は、第一弾性体48が配設されることや上揚力に抗する目的から、先端部を根本より太い大径部とすることが好ましく、ここでは、先端部に、大径の大径部44aが設けられている。この大径部44aの第一弾性体48が配設される配設面は、第一配設部48bであり、空間部51の水平方向断面とほぼ同じ広さとなっており、第一弾性体48が配設される。勿論、第一弾性体や大径部44aの配設面を、空間部51よりやや小さくして、ここを空隙部54とし、充填材等を充填可能としてもよい。
【0137】
第一弾性体48は、上沓42の空間部51内において、芯材44の先端部の大径部44aの第一配設部48bと空間部51の天井面の第一の設定部48bとの間に所定量配設される。また、第二弾性体49は、下沓43の上面(第二配設部49b)と上沓42の下面(支持部53の下沓43の上面と対向する面、第二設定部49a)との間に所定量配設される。第一弾性体48及び第二弾性体49は、この配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。尚、第一弾性体48は、空間部51において、大径部44aに取り付けられることで、密閉ゴム支承状態となる。
【0138】
以上のような、支承装置41では、上沓42が空間部51内において第一弾性体48によって支持されると共に、第二弾性体49によって、支持部53の部分で支持される。支承装置41は、並列ばねとして機能する第一弾性体48及び第二弾性体49を配設し、第一弾性体48と第二弾性体49とが平面視で少なくとも一部が重なるように配設するようにしたので、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。特に、第一弾性体48は、空間部51において、大径部44aに配設されることで、略密閉状態とすることも可能であり、この場合、略密閉ゴム支承状態となって、より小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体である橋桁16の揺動によって、上沓42と下沓43とに相対的な回転変位の力が作用しても、回転力を減衰させるなど、優れた回転追従性能を発揮出来る。
【0139】
更に、芯材44は、上沓42の穴部52より空間部51に挿入されているので、芯材44の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても上沓42と下沓43の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、芯材44には、大径部44aによって、上沓42の穴部52の周囲の支持部53で抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、上沓42を上揚するような力が作用した際にも上沓42と下沓43とが乖離することを防止することが可能となる。
【0140】
尚、本発明による支承装置41は、更に、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0141】
例えば、図27に示すように、上沓42の空間部51の天井面を断面略逆三角形状にして、その頂点51aで、大径部44a上の第一弾性体48を上から支持し、第一弾性体48上であって頂点51aの周囲に空隙部54を設けることも出来る。空隙部54は、第一弾性体48が荷重を受けて変形する場合に入り込むことで、第一弾性体48の許容変形量を大きくすることが出来、バネ状態の調整を行うことが出来る。
【0142】
更に、この空隙部54には、充填材55を充填するようにしてもよい。充填材55として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填量によって第一弾性体48のバネ定数を調整出来る。尚、上述のように充填材55としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。また、空隙部54内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、空隙部54の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。また、充填材55は、支承装置41の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。
【0143】
また、図28に示すように、支承装置を上下反転し、上沓42を下沓として、下沓43を上沓として用いることも可能である。この場合、下沓43は、橋桁16等の上部構造体に配設され、上沓42は、橋脚或いは橋台17に配設されることになる。また、支承装置の上下反転の考え方は、上述した図1乃至図24の支承装置に適用することもできる。
【0144】
更に、下沓43の上面と上沓42の下面(支持部53の下沓43の上面と対向する面)との間は、上記図6に示したように、上沓42の下面を、その略中心から外方に向かって上沓42の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓43の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。これにより、上沓42と下沓43との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かって第二弾性体49を厚くすることが出来、第二弾性体49は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0145】
また、下沓42の芯材44の先端部や太径部44aの第一弾性体48の第一配設部48bや下沓42の上面の芯材44の周囲の第二配設部49bは、平面で形成する他、凹部及び/又は凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。
【0146】
また、上記図7に示すように、上沓42の下面を、その略中心から外方に向かって上沓42の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓43の上面を、その略中心から外方に向かって下沓43の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓42と下沓43との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かって第二弾性体49を薄くすることが出来、第二弾性体49の密閉性を高めることが可能となる。
【0147】
更に、上沓42内の空間部51は、密閉空間を構成するものでなく、上記図1に示すように、天井面を開口するようにして、開口された空間部51に第一弾性体48を配設することも出来る。そして、芯材44には、先端部に雄ねじ部を設け、大径部44aを芯材44の先端部の雄ねじ部に螺合するための雌ねじ部を有するナット体として構成することも可能である。
【0148】
更に、上記図9に示したように、支承装置41において、上沓42の上面にすべり板12を摺滑部材として固設してもよいし、上記図10に示したように、支承装置41において、下沓43の下面にすべり板12を備える構成を採用することも出来る。
【0149】
尚、上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【0150】
また、支承装置を上下反転し、下沓を上沓として、上沓を下沓として用いることも可能であり、或いは支承方向を水平方向としたり、鉛直方向からずれた方向に設定することも可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 支承装置、2 上沓、2a 貫通孔、2b,2c 開口端、2d 底部、3 下沓、4 ゴム層、8 芯材、8a 大径部、8b 軸体、8c ナット体、9 充填弾性体、10 上揚抑制機構、11 空間、12 すべり板、21 支承装置、 22 下沓、23 上沓、23a 分割体、23b 分割体、23c フランジ部、24 ゴム層、25 下部プレート、26 上部プレート、28 凸部、28a 外側部面、28b 傾斜面、29 壁部、29a 内側部面、29b 傾斜面、30 凹部、31 ボルト/ナット、32 空間、33 肉薄部、34 すべり板、41 支承装置、42 上沓、42a 沓部材、42b 中間部材、43 下沓、44a 大径部、46 上部プレート、47 下部プレート、48 第一弾性体、48a 第一配設部、48b 第一設定部、49 第二弾性体、49a 第二配設部、49b 第二設定部、51 空間部、52 穴部、53 支持部、54 空隙部、55 充填材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、大別して、水平方向の荷重を支承する水平荷重支承機能、鉛直方向の荷重を支承する鉛直荷重支承機能、鉛直面内における回転荷重を支承する鉛直回転支承機能等が求められる。特に、橋梁用支承装置にあっては、平成7年の大震災以来、ゴムを主たる構成要素としたゴム支承装置が求められるようになっている。中でも鉛直荷重支持性能があって、水平力分散性能の高い積層ゴム支承装置は、広範に使用されるようになっている。
【0003】
この積層ゴム支承装置は、例えば特許文献1(特開2002−181129号公報)に記載されているように、ゴム板と鉄板を交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成され、その上部が橋梁の橋桁等の上部構造物に固定され、その下部が橋脚等の下部構造物に固定されて設置されて使用されている。
【0004】
しかしながら、積層ゴム支承装置にあっては、構造上、積層構造を採るため、必然的に所要厚さが大きくなって嵩張る上、高荷重を支持させるには広面積化する必要があり、特に長大橋向けには大型化する欠点がある。従って、性能要求上、支承装置が大型化してしまった場合には、下部構造物である橋脚や橋台の上面の面積がより大きく要求されることになり、橋梁全体として高コスト化してしまうという欠点がある。
【0005】
また、大型の支承装置が求められる場合であって、新設でない場合には、既存の支承装置が設置されていることから設置スペースが限定されるために支承装置の大きさが特に問題となり、高さが低く面積が狭い小型の支承装置でなければ交換設置出来ないという不具合があった。
【0006】
まして、近年、建築物や橋梁等の構造物の大型化や予想される地震規模の大型化に伴い、支承装置に求められる機能や性能も高度化してきており、積層ゴム支承で対応しようとした場合、大型化してしまうことは避けられない。
【0007】
この様な背景から先述のような鉛直高荷重支持性能の向上に伴う大型化という積層ゴム支承装置の問題の改善を図ったものとして、例えば特許文献2(特許第4377429号公報)に記載された機能分離型の固定支承としての弾性支承装置が提案されている。
【0008】
この弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たず、この機能を別の支承装置に持たせ、鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、下面に環状溝が形成された上板と、上面に環状溝が形成された下板とが互いの環状溝に隙間無く固着されて介在する弾性層を介して対向配置され、上板と下板の中央に設けられた貫通孔に剪断変形を拘束する芯状の突起が配設されている。
【0009】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、弾性層が厚くなく、弾性層と交互に積層されるような鋼板層が存在せず、支承装置としても積層ゴム支承装置に比して高さが低く、全体としてコンパクトに設定され、支承装置の大型化問題に対する解決策として提案されている。
【0010】
また、特許文献3(特開2005−337002号公報)の弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たないものの、水平荷重支持機能を持たせながら鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、上沓と下沓がそれぞれ互いに嵌合する同心円状の複数の円筒部と中心に位置する円柱部とからなる凸部と凹部とを有している。そして、嵌合状態の直径鉛直断面視において、これら互いに嵌合する凸部と凹部は、それぞれ断面矩形状をなし、それらの隣接する側面同士と互いに対向する底面と頂面との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填され、連続するゴム層が挟持されて結合されている。
【0011】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、互いに隣接する凸部の側面と凹部の側面とこれらの間のゴム層とで水平荷重支持部が構成され、凸部の頂面と凹部の底面とこれらの間のゴム層とで鉛直荷重支持部が構成されている。
【0012】
また、特許文献4(特開2009−46944号公報)に記載された支承装置も、特許文献3の弾性支承装置と同様に、上沓と下沓が互いに嵌合する多条の円筒状の構成となっており、上沓と下沓における各凸部と凹部とを構成する円筒部や円柱部は、それぞれ鉛直断面形状における両側面間距離が端面をなす頂面に向かって接近して狭まり、両側面が傾斜してなる断面台形状に形成されて互いに嵌合される。そして、これらの凹部と凸部との間には、ゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填されている。
【0013】
このような特許文献3及び4に記載された弾性支承装置では、支承装置の小型化や軽量化が図られ、鉛直荷重と水平荷重の支持性能の向上がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−181129号公報
【特許文献2】特許第4377429号公報
【特許文献3】特開2005−337002号公報
【特許文献4】特開2009−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、積層ゴム支承装置を含め、ゴム等の弾性体を用いた弾性支承装置の場合、特に橋梁用支承装置の場合には、鋼製支承装置と異なり、鉛直可撓性能があることから橋軸直角方向における鉛直面内での回転は、回転性能によってなされるのではなく、鉛直可撓性によって達せられ、橋軸方向における鉛直面内における回転は鉛直方向の圧縮撓みによってなされることになる。
【0016】
圧縮撓み性能、即ち鉛直可撓性能を向上させるには鉛直弾性を改善する必要が生じるが、この改善を図ろうとしたときには、鉛直荷重支持性能が低下するという二律背反が生じる。さらに、道路橋支承便覧によれば、ゴム支承においては、剪断変形は許容されるが、構成ゴムに引張力が作用することは許容されていない。従って、積層ゴム支承装置においては、鉛直面内における回転性能を持たせることは困難であった。況してや、特許文献2の弾性支承装置にあっては、弾性層の厚みが薄く、鉛直可撓性が低く、圧縮撓みが殆どとれないことから橋軸直角方向に対する鉛直回転性能と、橋軸方向に対する鉛直回転性能のいずれも良好な回転性能を得ることが出来なかった。
【0017】
また、上述した特許文献3、4に記載された弾性支承装置によれば、機能分離型固定支承装置としては、広面積化したり、厚さを増したりと支承装置を大型化させることなく、水平方向及び鉛直方向における荷重支持性能を向上させることが出来る。
【0018】
しかしながら、例えば、当該弾性支承装置を橋梁の橋桁と橋脚との間に配設して、これらの間の荷重伝達や荷重緩和を担わせた場合、橋桁に上揚力等が作用した場合には、容易に上沓と下沓が乖離してしまい、当該弾性支承装置自体が破損したり、落橋したりする虞がある。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、小さな面積で高荷重を支持することを可能とする新規な支承装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、コンパクトにして大きな鉛直下向きの荷重を効果的に支持し、且つ、大きな水平方向の荷重を支持しつつ、変位制限すると共に、鉛直面内における回転追随性能を向上させることが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る支承装置は、厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有し、前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有するものである。この支承装置は、前記第一弾性体が配設される第一配設部と前記第二弾性体が配設される第二配設部とを有した第一剛性体を有する。前記第二配設部は、前記厚さ方向視において、前記第一配設部と同じ向きに設けることが出来る。更に、この支承装置は、前記第一弾性体の前記第一配設部が配設された面と反対側の面が設定される第一設定部と前記第二弾性体の前記第二配設部が配設された面と反対側の面が設定される第二設定部とを有した第二剛性体を有する。前記第二設定部は、前記厚さ方向視において、前記第一設定部と同じ向きに設けることが出来る。
【0022】
ここで、例えば、前記第二剛性体は、内部に空間部が設けられると共に、該空間部を介した支承面と反対側の面に該空間部と連通する穴部が形成され、前記第一剛性体は、先端部が前記穴部より前記空間部内に挿入される芯材が一体に形成されると共に、前記第二剛性体の前記穴部が形成された面に対向して配置される。前記第一弾性体は、前記空間部内の前記芯材の先端部と前記空間部の天井面との間において第一配設部に配設されると共に、前記第二剛性体の穴部の周囲に形成された支持部によって前記空間部から抜け止めされる。前記第二弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間において前記第二配設部に配設される。そして、前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている。具体的に、前記第一剛性体を構成する芯材の先端面が第一配設部となり、前記第一剛性体の前記第二剛性体と対向して前記芯材の先端面に対して段違いに設定された面が、第二配設部となる。また、前記第二剛性体に設けられた空間部の天井面及びその付近の空間が第一設定部となり、前記第二剛性体の前記第一剛性体と対向する面が第二設定部となる。
【0023】
前記第一弾性体が配設される前記第二剛性体の第一設定部は、前記第一弾性体と当接し、又は当接し得る面を含んで成る略密閉された空間とすることも出来る。また、前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、略平行に配設することが出来る。更に、前記空間部内において、前記第一弾性体は、前記第二剛性体の天井面と全体的に又は部分的に密着させることが出来る。
【0024】
前記第二剛性体は、前記第一弾性体を収容する沓部材と、該沓部材に突き合わされて前記空間部を構成すると共に前記支持部が形成された中間部材とで構成することが出来る。また、前記第一剛性体は、当該第一剛性体の芯材に、前記第一弾性体が取り付けられる大径部を設けることが出来る。
【0025】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体的なものであってもよいし、別体であってもよい。
【0026】
空間部内において、前記第二剛性体の内面と前記第一弾性体との間に、該第一弾性体が設けられていない空隙部を設けることが出来る。前記空隙部には、充填材を充填することが出来る。前記充填材は、前記第一弾性体と同種でも異種の弾性体であってもよく、例えば非圧縮性の流体とすることも可能である。
【0027】
第一剛性体又は第二剛性体の下面或いは上面には摺滑部材を設けることが出来る。
【0028】
前記支承装置において、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓とすることが出来る。また、これとは逆に、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓とすることが出来る。
【0029】
例えば、前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台とすることが出来る。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る支承装置においては、並列ばねとして機能する第一弾性体及び第二弾性体を配設し、高さを異ならせ、第一弾性体と第二弾性体とが平面視で少なくとも一部が重なるように多段に配設するようにしたので、全体としての小型化を実現しつつ、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、上部構造体の揺動によって、第一剛性体と第二剛性体とに相対的な回転変位の力が作用しても、優れた回転追従性能を発揮出来る。更に、第一剛性体の芯材は、第二剛性体の穴部より空間部に挿入されているので、芯材の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても第一剛性体と第二剛性体の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、第一剛性体の芯材は、第二剛性体の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、第二剛性体を上揚するような力が作用した際にも第一剛性体と第二剛性体とが乖離することを防止することが可能である。
【0031】
また、第一弾性体は、略密閉された空間部に配設されることで、略密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0032】
更に、第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体化されているとき、第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される第一弾性体と第二弾性体とを同時に形成することも可能となる。また、第一剛性体の芯材の軸方向に垂直な方向からの入力があった際には、第一弾性体と第二弾性体とを繋いでいる部分、即ち芯材の側部を囲繞するように位置する部分等が、当該方向の入力を緩衝することが可能となる。
【0033】
更に、空間部内において、第二剛性体の内面と第一弾性体との間に第一弾性体が設けられていない空隙部が設けられているときには、第一弾性体が荷重を受けて変形する場合に空隙部に入り込むことが可能となり、第一弾性体の許容変形量を大きくすることが出来る。この空隙部に充填材が充填されているときには、充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0034】
第一剛性体又は前記第二剛性体の下面或いは上面に摺滑部材を固設したときには、第一剛性体又は第二剛性体を摺滑させることが出来、固定支承であったものを可動支承として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明が適用された支承装置の図であり(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】底部が湾曲した貫通孔を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図3】芯材が軸体とナット体とによって構成される本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図4】芯材の周囲に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図5】芯材の周囲に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の変形例の断面図である。
【図6】上沓の下面がその略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなる傾斜面とされ、下沓の上面がその略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなる傾斜面とされた本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図7】上沓の下面がその略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなる傾斜面とされ、下沓の上面がその略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなる傾斜面とされた本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図8】貫通孔に空隙部を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図9】上沓の上面にすべり板を有する本発明が適用された支承装置の断面図である。
【図10】下沓の下面にすべり板を有する本発明が適用された支承装置の変形例の断面図である。
【図11】本発明が適用された更なる支承装置の図であり、(a)は平面断面図であって(b)はB−B’断面図、(b)は鉛直面断面図で(a)のA−A’断面図である。
【図12】凸部がその表面の一部に上沓側に向く傾斜面を有し、凹部を構成する壁部がその表面の一部に下沓側に向く傾斜面を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図13】凸部の上面に形成される複数の凹部と、凹部の天井から垂下される複数の凸部とを備える本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図14】凸部の上面に形成される単一の凹部と、凹部の天井から垂下される単一の凸部とを備える本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図15】中心から外方に向かってゴム層が厚くなる本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図16】中心から外方に向かってゴム層が薄くなる本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図17】凸部の断面形状が頂部を拡径した略T形状とし、壁部の断面形状が底部を拡径した略L形状或いは反転L形状とされた本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図18】下沓、上沓及び凸部の平面視形状が矩形である本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図19】凸部及び凹部が環状に設けられた本発明が適用された更なる支承装置の図であり、(a)が平面断面図であって(b)のD−D’断面図、(b)が鉛直面断面図であって(a)のC−C’断面図である。
【図20】下沓と上沓との間に空隙部を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図21】脆弱部として機能する肉薄部を下沓に有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図22】脆弱部として機能する肉薄部を上沓に有する本発明が適用された更なる支承装置の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図23】上沓の上面にすべり板を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図24】下沓の下面にすべり板を有する本発明が適用された更なる支承装置の断面図である。
【図25】本発明の基本的考え方を示した支承装置の鉛直面の断面図である。
【図26】本発明が適用された更なる支承装置の鉛直面の断面図である。
【図27】空隙部を有する支承装置の鉛直面の断面図である。
【図28】支承装置を上下反転し、下沓を上沓として、上沓を下沓として用いる鉛直面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明が適用された支承装置について説明する。本発明の支承装置は、建築物や橋梁等の構造物を支承するための支承装置であって、厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有する。この支承装置は、前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有する。更に具体的に、この支承装置は、互いに間隙を存して位置する二つ構造体のうち、一方の構造体側に配設される第一剛性体と、この第一剛性体に対向して他方の構造体側に配設される第二剛性体とを備え、これらの第一剛性体と第二剛性体との間に第一弾性体と第二弾性体とが介挿される。
【0037】
ここで例えば、上述の一方の構造体を下部構造体、他方の構造体を上部構造体とし、本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁と、下部構造体としての橋脚或いは橋台との間に配設して使用される。この場合、支承装置は、水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、荷重伝達を果たしながら地震や風、或いは動的或いは静的な交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収分散しつつ、支承する。以下、上部構造体と下部構造体との間に配設して使用する例を用いて、本発明の支承装置の実施形態を説明する。
【0038】
本発明の支承装置は、少なくとも、下部構造体に直接或いは間接的に固定される第一剛性体としての下沓と、上部構造体に直接的或いは間接的に固定される第二剛性体としての上沓と、下沓に一体的に設けられる芯材とを備える。そして、芯材の先端部と上沓内面との間には、第一弾性体が配設され、上沓と下沓との間には、第二弾性体が配設される。従って、第一弾性体と第二弾性体とは、並列ばねとして構成される。更に、上沓には、内部に空間部が設けられ、上部構造体に固定される支承面と反対の面に、空間部と連通する穴部が形成されている。
【0039】
更に、上沓は、第一弾性体が配設される第一設定部と、第二弾性体が配設される第二設定部とを有している。第一弾性体が配設される第一設定部は、例えば、上沓の空間部内において、上沓の穴部より空間部内に挿入された下沓に設けられた芯材の先端部の上の空間部の天井面である。第二設定部は、例えば、上沓の支持部と下沓との間の空間部における上沓側の支持面である。
【0040】
第一弾性体は、穴部の径より少なくとも一部が大きく形成され、上沓の穴部の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部に係合することによって抜け止めがされている。
【0041】
下沓は、芯材が一体的に設けられ、芯材の先端部が第一弾性体が設けられる第一配設部となり、上沓の支持部と対向する面が第二弾性体が設けられる第二配設部となる。かくして、下沓は、第一弾性体や第二弾性体を介した荷重全体を受ける部材となる。厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設された第一弾性体と第二弾性体とは、多段の並列ばねとして機能する。具体的に、第一弾性体と第二弾性体とは、第一弾性体の外側面より内側に第二弾性体の内側面が位置するように配設されている。即ち、第一弾性体と第二弾性体とは、平面視で、少なくとも一部が重なるように配設される。そして、例えば、上沓の第一弾性体が配設される第一設定部と第二弾性体が配設される第二設定部は、同じ向きに設けられ、下沓の第一配設部と第二配設部も同じ向きに設けられる。これにより、例えば、第一弾性体と第二弾性体とは、例えば略平行に配設することが出来る。
【0042】
以上のような、支承装置では、第一弾性体と第二弾性体とが厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設され並列ばねとして機能するので、全体としての小型化を実現しつつ、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓と下沓とに相対的な回転変位の力が作用しても、回転力を減衰させるなど、優れた回転追従性能を発揮出来る。更に、下沓に設けられた芯材は、上沓の穴部より空間部に挿入され先端部に第一弾性体が配設されているので、芯材の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても上沓と下沓の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、下沓の芯材は、先端に基端部の外径よりも大径に設定され且つ上沓の穴部の穴径よりもる大径に設定される大径部が設けられ、上沓の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされているので、良好な回転追従性を得つつも、上沓を上揚するような力が作用した際にも上沓と下沓とが乖離することを防止することが可能となる。
【0043】
上部構造体に対する上沓の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓を上部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは上沓よりも広面積の板状をなす上部プレートの如くの上部固定手段を介して上沓を上部構造体に対して間接的に固定したり、適宜の方法で固定することが出来る。また、上沓の上部に摺滑部材を配設して、上部構造体と支承装置とを相対変位可能に固定しても好い。この摺滑部材としては、例えば、フッ化炭素樹脂ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓の上面に固定したり、或いは上部構造体や上部構造体に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0044】
上沓は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される上沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。尚、上沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0045】
また、上沓には、芯材の先端部を収容する空間部と連通する穴部が形成されている。芯材は、穴部より上沓の空間部内に位置し、第一弾性体を空間部内に位置させるように下沓に固定される。芯材の先端部は、第一弾性体を安定して配設出来るように、根元側より大きい大径部とすることも出来る。そして、第一弾性体が先端部に配設された芯材は、上沓の穴部周囲の支持部によって抜け止めがされている。芯材の先端部或いは大径部は、第一弾性体の配設面であり、第一弾性体を介した荷重を受ける第一配設部となる。第一弾性体又は芯材の大径部の大きさは、少なくとも、一部が穴部より大きく設定され、抜け止めを実現している。この穴部の形状は、円柱形状とすることも出来るが、その他、多角形等であってもよい。また、穴部は、第一弾性体又は芯材の大径部の形状に合わせた形状としてもよい。例えば、芯材先端部の形状が第一弾性体側から窄ませた湾曲形状とするときは、穴部の開口端も、これに対応する湾曲面の凹状の受け面とすることが好ましい。
【0046】
更に、上沓の支承面の反対面となる下面は、平面の他、下面側から凹設される凹部及び/又は対向する下沓に向かって凸設される凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。また、上沓の下面、即ち支持部の下沓の上面と対向する面は、上沓の下面の略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなるように設定される傾斜面としたり、或いは、略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなるように設定される傾斜面とすることが出来る。例えば、上沓の下面を、その略中心から外方に向かって上沓の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓の上面を、その略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなる傾斜面とした下沓と組み合わせて支承装置を構成した場合、上沓と下沓との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出される。従って、この空間を満たすように第二弾性体を配設した場合には、中心から外方に向かって弾性層が厚くなる支承装置を得ることが出来る。逆に、上沓の下面を、その略中心から外方に向かって上沓の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓の上面を、その略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなる傾斜面とした下沓と組み合わせて支承装置を構成した場合、上沓と下沓との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出される。従って、この空間を満たすように第二弾性体を配設した場合には、中心から外方に向かって弾性層が薄くなる支承装置を得ることが出来る。
【0047】
尚、上沓は、例えば、第一弾性体を収容する沓部材と、支持部を形成された中間部材とを積層するように突き合わせ結合することによって、第一弾性体が収容される空間部を構成することが出来る。
【0048】
下部構造体に対する下沓の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓を下部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは下沓よりも広面積の板状をなす下部プレートの如くの下部固定手段を介して下沓を下部構造体に対して間接的に固定することも出来る。また、下沓の下部に摺滑部材を配設して、下部構造体と支承装置とを相対変位可能に固定しても好い。この摺滑部材としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓の下面に固定したり、或いは下部構造体や下部構造体に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。尚、上沓や下沓の直接的乃至間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0049】
下沓は、上沓同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。勿論、下沓の平面形状等は、必ずしも上沓と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓の設定と上沓の設定を互いに整合させる必要がある。尚、下沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0050】
下沓の第二配設部となる上面は、勿論平面とすることも出来る他、上面側から凹設される凹部及び/又は対向する基盤に向かって凸設される凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。特に、下沓の上面の略中心から外方に向かって下沓の厚みが薄くなるように設定される傾斜面としたり、或いは、略中心から外方に向かって下沓の厚みが厚くなるように設定される傾斜面とすることが出来る。
【0051】
芯材は、下端側が下沓に固定されると共に先端部が穴部と連続する上沓内の空間部に配置される棒状の部材である。この芯材は、上沓と下沓の間に配設される弾性体の剪断変形を抑制する機能と、上部構造物からの鉛直荷重を第一弾性体や第二弾性体を介することによって弾性的に支承する機能と、上揚力に抗して上沓と下沓とが乖離することを防止する機能と、第一弾性体を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割のいずれか一つ以上を果たす。芯材は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。
【0052】
適宜の素材から構成される芯材の横断面形状は、特に限定されるものではないが、略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来る。また、設定される全ての芯材の最小径部の総断面積が、支承装置の片面側の支承面積の50%以上に設定することも可能である。また芯材の縦断面形状に関しても特に限定されるものではないが、略矩形、略台形、或いは上部と下部の少なくとも一方が大きく中間が細い形状等に設定することが可能である。尚、芯材は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0053】
芯材は、先端部を基端部より大径に設定される大径部とし、ここを第一配設部とすることが出来る。尚、芯材として、ボルト部材を用いることにより、当該ボルトの頭部を前記大径部として用いることが出来る。ただし、これに限られるものではなく、例えば、芯材を、先端部に雄ねじ部を有する軸体と、当該軸体に螺合するための雌ねじ部を有すると共に前記大径部となるナット体とから構成することも出来る。また、芯材は、簡易な作業で高い接合強度が得られることから、下端が下沓に対して螺合することにより固定されることが好ましいが、これに限られるものではなく、圧入や溶接等を用いて下沓に対して固定するようにしてもよい。或いは、下沓と一体に形成してもよい。
【0054】
第一弾性体は、上沓の空間部内において、下沓の芯材の先端部又は芯材先端部の大径部を第一配設部にし、上沓の空間部の天井面を第一設定部として所定量配設される。また、第二弾性体は、下沓の上沓の支持部と対向する芯材の周囲の上面を第二配設部とし、上沓の穴部の周囲の下面を第二設定部にして所定量配設される。第一弾性体及び第二弾性体は、配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。勿論、第一弾性体や第二弾性体として採用する材料によっても荷重支持性能や回転追従性などの設定を行うことが出来る。特に、第一弾性体を、空間部において、略密閉状態としたときには、略密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、第一弾性体と第二弾性体とは、同じ材料であってもよく、また、異なる材料であってもよい。第一弾性体と第二弾性体の材料選択によっても、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。また、第一弾性体と第二弾性体とは、厚さも同じでもよく異なっていてもよい。更に、第一弾性体、第二弾性体のそれぞれの厚さも、必ずしも均一でなくてもよい。
【0055】
また、第一弾性体と第二弾性体とは、別体であってもよいが、一体化させてもよい。これによって、上沓と下沓との間に介挿される第一弾性体と第二弾性体とを同時に形成することが可能となる。
【0056】
第一弾性体や第二弾性体の主たる構成素材となるエラストマとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを1種単独、或いは2種以上を併用することが出来る。
【0057】
空間部内において、上沓の空間部の内面と第一弾性体との間は、空間部の内面に第一弾性体の少なくとも一部を密着させることも出来る。また、上沓の空間部の内面と第一弾性体との間には、第一弾性体が設けられていない空隙部を設けることも出来る。空隙部は、第一弾性体を上沓内の空間部より一回り小さく設けて形成することも出来、又、第一弾性体及び/又は空間部の内面に切り欠きを設けて形成することが出来る。上沓と下沓との間に第一弾性体が設けられていない空隙部を有する場合には、第一弾性体が荷重を受けて変形する場合に空隙部に入り込むことが可能となり、第一弾性体の許容変形量を大きくすることが出来る。つまり、空隙部を設けることによって、バネ定数の調整を行うことも可能となる。
【0058】
更に、空隙部には、充填材を充填することが出来る。この充填材の構成材料や充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0059】
充填材は、上述の空隙部に適宜量充填されるものであり、その充填量は、空隙部の容積よりも少量であっても、等量であっても、或いは多量であってもよい。少量の場合には、残存空隙分だけ圧縮或いは変形し得る余地が出来、支承装置の厚みを薄く設定出来、等量とした場合には、残存容積が無く元々の設計通りの支承装置の厚みを実現出来、また多量とした場合には、充填空間の容積が元々の設計値よりも増量して支承装置の厚みを厚く設定することが出来る。支承装置では、充填材の充填量によって支承装置の厚み若しくは高さを調整することが出来る。
【0060】
充填材は、少なくとも充填時には流体であることが好ましい。勿論、充填後も流体であってもよい。充填時に流体である充填材のうち、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものを採用することも可能である。また、一つの空間部内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、充填材は、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するものとして一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合して置いてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体を混入させて支承装置に対する外部入力の減衰性能を改善したり、気体を混入させてバネ定数や弾性を改質或いは調整するようにしてもよい。
【0061】
充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することが可能である。充填材の主成分として気体を採用する場合、気体は、圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きとなるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、充填材は、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くすることも可能である。また、例えば、充填材の主成分として液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の流体を採用した場合には、空隙部の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することが可能である。
【0062】
充填材には、非圧縮性の流体を採用することが可能であり、充填材として非圧縮性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0063】
また、充填材には、高粘性の流体を採用することも可能であり、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の充填材を充填した場合、第一弾性体が変形した際には、空隙部内の高粘性の充填材が粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。勿論、非圧縮性を有する高粘性の流体を採用した場合には、非圧縮性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、高粘性流体を充填材として採用した場合に得られる効果との両者の効果を得ることが可能となる。
【0064】
或いは、充填材には、上沓と下沓との間に介在させる第一弾性体や第二弾性体と異種又は同種の弾性体を採用することが可能である。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものである必要がある。例えば、弾性体が熱可塑性を示すとき、これを充填材として使用するには、弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また、例えば弾性体が熱硬化性を示すときには、硬化前の流動可能な状態の時点で充填し、適宜の条件で硬化させる。
【0065】
充填材の充填は、予めの充填であってもよく、或いは製造後に充填してもよい。予め充填材を充填する場合には、充填材の充填は予めの設計通り、また、手順通りに製造段階や出荷前に充填することになり、これによれば、製造上高効率化することが出来る。また、後から充填材を充填する場合、充填材の充填は、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することも可能となる。これによれば、従来施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0066】
以上のような本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁や下部構造体としての橋脚或いは橋台に設けた受容構造に対して着脱可能とし、交換を容易なものとすることが出来る。この場合、例えば、上沓と下沓と二つの弾性体(第一弾性体及び第二弾性体)を一つのカートリッジとして取り扱うことになる。受容構造は、例えば、カートリッジ式支承装置を受容する一方が挿脱用に開口されたコ字状に形成され、例えば、断面L字状に形成することで、鉛直方向及び水平方向に位置決め保持出来る。
【実施例】
【0067】
本発明の支承装置の実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の第一の実施例を図1を参照しながら説明する。
【0068】
図1に示す支承装置1は、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図1(a)は支承装置1の平面図である。また、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【0069】
支承装置1は、第二剛性体としての上沓2と第一剛性体としての下沓3とを、弾性体、具体的にはゴム等から構成される第二弾性体としてのゴム層4を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。上沓2は、上部構造物として例えば橋桁16を、二点鎖線で示す上部プレート6を介して上面に固定している。下沓3は、下部構造物として例えば橋脚17を、二点鎖線で示す下部プレート7を介して下面に固定している。勿論、ここでいう上部プレート6や下部プレート7は、必須ではなく、上沓2と上部プレート6を一体的に構成したり、下沓3と下部プレート7を一体的に構成したりして、上沓2や下沓3にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0070】
上沓2は、平面視において略長方形の板状部材からなり、上面に上部プレート6が固定されている。この上沓2には、特に図1(b)に示すように、表裏面に貫通する穴部となる貫通孔2aが穿設されている。この貫通孔2aには、上沓2の下面側から芯材8が挿入され、芯材8の先端部が上沓2の上面から突出することなく収容されている。つまり、貫通孔2aが有する両開口端のうち、上沓2の下面に位置する開口端2bには、芯材8が通過しており、上沓2の上面に位置する開口端2cには芯材8が通過していない。この開口端2b−2cに亘る領域は、後述する第一弾性体である充填弾性体9が収納される。尚、芯材8については、後に詳説する。
【0071】
貫通孔2aの形状は、円柱形状とすることも出来るが、支承装置1において芯材8の先端部が芯材8の他の部位よりも大径の大径部8aとされている。大径部8aは、貫通孔2aから抜け出ることを抑止するべく、芯材8が通過する開口端2b(つまり上沓2の下面に位置する開口端2b)を窄ませた形状を採用している。このように上沓2の下面に位置する開口端2bを窄ませる形状を採用することにより、貫通孔2aは、見かけ上、小径の貫通孔を有する有底の溝形状となる。そして、当該溝の底部2dの上面は、平面とされている。小径の開口端2bの周囲は、開口端2cが芯材8の大径部8aより小径となることで、芯材の抜け止めとなる支持部として機能する。尚、図2に示すように、当該溝の底部2dの上面を貫通孔2aの側面と滑らかに接続する湾曲面とすることも出来る。
【0072】
また、下沓3も略長方形の板部材であり、下面には、下部プレート7が固定されている。この下沓3には、図1に示すように、平面視における中央部に芯材8が固定されている。尚、芯材8は、下端が下沓3に対して螺合されており、これによって、簡易な作業にて下沓3に対して強固に固定することが可能となる。
【0073】
上沓2の下面と下沓3の上面との間は、第二弾性体としてのゴム層4が配設される。具体的に、下沓3の上面は、第二配設部となり、上沓2の下面は第二設定部となる。第二弾性体としてのゴム層4は、上沓2と下沓3との間に介挿されており、第二配設部となる下沓3の下面の芯材8の周囲に支持される。上沓2の貫通孔2aと同径であると共に芯材8が通過する貫通孔4aを有しており、当該貫通孔が上沓2の貫通孔2aと同軸になるように配設されている。具体的に、ゴム層4の貫通孔4aは、上沓2の貫通孔2aにおける小径の開口端2bと略同径で、芯材8の大径部8aより小径としている。
【0074】
尚、上沓2及び下沓3の材質は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属板、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等で形成することが出来る。同様に、ゴム層4も天然ゴム等の公知の素材を採用することが出来る。
【0075】
芯材8は、大径部8aとなる頭部を有する金属性のボルト部材からなり、先端部である大径部8aが上沓2の貫通孔2aの内部に収容可能な大きさに設定されている。この芯材8が、上沓2の開口端2bを通過して空間部である貫通孔2a内に至る構成とすることにより、上沓2と下沓3とが水平方向に相対移動しようとした際に、下沓3に固定された芯材8によって上沓2の移動が規制される。これにより、過剰に上沓2と下沓3とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。
【0076】
また、貫通孔2aが有する開口端であって上沓2の下面に位置する開口端2b(芯材8が通過する開口端2b)は、窄んだ形状を有している。この開口端2bの周辺部は、芯材8の大径部8aの抜けを防止すると共に第二弾性体としてのゴム層4に支持される支持部として機能する。このような構成を採用することにより、上沓2と下沓3とが離反しようとする際(即ち上沓2が下沓3に対して相対的に上揚しようとする際)に芯材8の大径部8aが、段付き形状となった貫通孔2aの底部2d(支持部)に係止され、上沓2と下沓3とが乖離することを抑制する。つまり、本実施例においては、芯材8及び貫通孔2aが上揚抑制機構10として機能する。
【0077】
尚、支承装置1は、図1(b)に示すように、芯材8の長さL1と支承方向から見て当該芯材8が設置される領域における下沓3の厚みL2とを合計した距離が、支承方向から見て芯材8が設置される領域以外の領域における上沓2の厚みL3と下沓の厚みL4とを合計した距離と一致されている。これによって、支承装置1は、相対的に剛性が高い部位の厚み(即ち剛性体の厚み)が均一化され、優れた鉛直荷重支持特性を発揮することが出来る。
【0078】
また、芯材8をボルト部材によって構成するのではなく、図3に示すように、芯材8を、先端部に雄ねじ部を有する軸体8bと、当該軸体8bに螺合するための雌ねじ部を有すると共に大径部となるナット体8cとによって構成することも可能である。
【0079】
そして、支承装置1は、芯材8の大径部8aが収容されている貫通孔2a内に充填配置される第一弾性体としての充填弾性体9を備えている。充填弾性体9は、第一配設部となる芯材8の先端部に設けられ、貫通孔2a内部に隙間無く配置されている。これによって、充填弾性体9は、芯材8の先端部全体を被覆し、貫通孔2aの開口端であって芯材8が通過しない側の大径の開口端2cを閉塞している。充填弾性体9は、貫通孔2aの内部において、芯材8の先端部の全体を被覆することによって、芯材8の先端部全体が充填弾性体9によって囲撓され、芯材8の先端部全体の発錆を抑制する。更に、充填弾性体9が貫通孔2aの開口端2cを閉塞している場合には、当該開口端2cから貫通孔2aの内部に水分等の芯材の劣化の原因となる物質が侵入することをより確実に防止することができ、芯材8の発錆をより効率的に抑制することが可能となる。また、充填弾性体9は、貫通孔2a内部に隙間無く充填されているため、万が一貫通孔2a内部に前記物質が進入した場合であっても、その進行速度を低減し、芯材8に到達することを遅らせることが可能となる。
【0080】
充填弾性体9の貫通孔2aから露出する領域は、上沓2の表面とほぼ面一となる平坦領域とされている。これによって、充填弾性体9が上沓2の表面と共に上部プレート6と接触することになり、荷重の受圧面積を増大させることが出来、更に、貫通孔2a内に充満された充填弾性体9はほぼ密閉状態となるため、密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0081】
以上のような支承装置1では、第一弾性体としての充填弾性体9と第二弾性体としてのゴム層4とが並列ばねとして機能し、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓2と下沓3とに相対的な回転変位の力が作用しても優れた回転追従性能を発揮出来る。また、第二弾性体であるゴム層4の内側面は、第一弾性体である充填弾性体9の外側面より内側に位置し、ここでは更に芯材8の大径部8aの外側面より内側に位置している。このように、ゴム層4は、充填弾性体9と一部が重複するように配設されることで、ゴム層4が配設される上沓2や下沓3の対向面の大きさの範囲内で最大限に大面積化することが出来、高荷重を支承することが可能となる。
【0082】
更に、芯材8は、上沓2の開口端2bより開口端2c側の空間部に挿入され、先端部に第一弾性体となる充填弾性体9が固定されるので、水平方向の剪断力が作用しても上沓2と下沓3の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、芯材8に固定された充填弾性体9は、上沓2の開口端2bの周囲の支持部によって抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、上沓2を上揚するような力が作用した際にも上沓2と下沓3とが離反することを防止することが可能となる。
【0083】
また、支承装置1では、図1(b)に示すように、芯材8の先端から芯材が通過しない側の開口端2cまでの離間距離L5がゴム層4の厚みL6と一致されている。これによって、充填弾性体9を含めると、支承方向における弾性体の厚みが均一化され、優れた鉛直荷重支持特性を発揮出来る。
【0084】
また、支承装置1では、充填弾性体9が、芯材8と貫通孔2aの内壁面との間の隙間を介してゴム層4と一体化され、当該ゴム層4と同一の材料によって形成されている。これによって、支承装置1は、充填弾性体9とゴム層4とを同時に形成することが可能となり、且つ、一種の材料にて充填弾性体9とゴム層4とを形成することが可能となり、量産性に優れたものとなる。
【0085】
尚、本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下の変形例について図面を参照して説明する。
【0086】
上記実施例においては、貫通孔2aに隙間無く充填弾性体9を配設する構成であったが、例えば、貫通孔2aの一部にのみ充填弾性体9を配設し、残りを空隙部9aとすることも出来る。例えば、図4に示すように、芯材8の上部にのみ充填弾性体9を配設することも出来る。この場合には、充填弾性体9の使用量を削減しつつ、受圧面積を向上させることが可能となる。また、図5に示すように、芯材8の周囲にのみ充填弾性体9を配設することも出来る。この場合には、充填弾性体9の使用量を削減しつつ、芯材8の発錆を抑制することが出来る。また、図5の空隙部9aは、充填弾性体9が荷重を受けて変形する場合に入り込むことで、充填弾性体9の許容変形量を大きくすることが出来、バネ定数の調整を行うことも可能となる。
【0087】
また、図6に示すように、上沓2の下面を、その略中心から外方に向かって上沓2の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓3の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。上沓2と下沓3との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層4を厚くすることが出来、ゴム層4は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0088】
また、図7に示すように、支承装置では、上沓2の下面を、その略中心から外方に向かって上沓2の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓3の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓2と下沓3との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層4を薄くすることが出来、ゴム層4の密閉性を高めることが出来る。
【0089】
また、図8に示すように、積極的に貫通孔2aの内部に充填弾性体9を配置しない空隙部となる空間11を形成する構成を採用することも出来る。そして、この空間11を充填空間として、充填材を充填する構成を採用することも出来る。例えば、充填材として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填量によって充填弾性体9やゴム層4のバネ定数を調整出来る。
【0090】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。
【0091】
また、空間11内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、空間11の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。
【0092】
また、充填材は、支承装置1の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。
【0093】
更に、図9に示すように、第一の実施例の支承装置1において、上沓2の上面にすべり板12を摺滑部材として固設することが可能であり、この場合、元々固定支承であった支承装置1を可動支承として利用することが可能となる。すべり板12は、例えばPTFE製とされる。
【0094】
また、図10に示すように、第一の実施例の支承装置1において、下沓3の下面にすべり板12を設けることも出来る。勿論、すべり板12の設定は、第一の実施例の支承装置1に限らず、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0095】
また、ゴム層4の厚さは、必ずしも一定である必要はなく、例えば、上沓の下面、或いは下沓の上面に環状の凹部を形成して、弾性体を当該環状の凹部に充満させた設定とすることも出来る。
【0096】
本発明の支承装置の更なる実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の実施例を図11を参照しながら説明する。
【0097】
図11に示す支承装置21は、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図11(a)は支承装置21の平面断面図であり、図11(b)のB−B’断面図である。また、図11(b)は、鉛直面断面図であり、図11(a)のA−A’断面図である。
【0098】
支承装置21は、第一剛性体としての下沓22と第二剛性体としての上沓23を、弾性体、具体的にはゴム等から構成され第一の弾性体及び第二の弾性体からなるゴム層24を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。下沓22は、二点鎖線で示す下部プレート25を介してその下面が下部構造物として例えば橋脚17に固定されている。上沓23は、二点鎖線で示す上部プレート26を介してその上面が上部構造物として例えば橋桁16に固定している。勿論、ここでいう上部プレート25や下部プレート26は、必須ではなく、上沓23と上部プレート26を一体的に構成したり、下沓22と下部プレート25を一体的に構成したりして、上沓23や下沓22にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0099】
下沓22は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等から構成される、平面視において略円形の板状部材からなり、下面に下部プレート25が固定されている。この下沓22の上面には、特に図11(b)に示すように、中央部に、芯材となる単一の凸部28が設けられている。
【0100】
凸部28は、その断面形状が上端に向かって徐々に幅が広くなる台形形状を有しており、全体としては、頂部が切断された略逆円錐形状を有している。凸部28は、このような形状を有する結果、下沓22側に向けられた円錐側面状の外側部面28aが設けられる。
【0101】
上沓23は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属、セラミックス、強化プラスチックを含むプラスチック等から構成され、全体としての平面視において、略円形の板状部材からなり、上面に上部プレート26が固定されている。この上沓23の下面には、特に図11(b)に示すように、凸部28を囲繞するように環状に配設された壁部29が設けられており、当該壁部29によって上沓23の中央部に凸部28と嵌合する穴部となる凹部30が形成されている。この凹部30は、天井面が閉塞されおり、内部に配設されるゴム層24の一部の第一弾性体24aが密閉ゴム支承状態となり、小さな支承面積で高荷重を支承出来るようにしている。
【0102】
このような凹部30を形成する壁部29は、図11(b)に示すように、上沓23側を向く内側部面29aを有している。この内側部面29aは、凸部28の外側部面28aに対向配置されており、外側部面28aと平行に且つ支承方向に対して傾斜している。穴部を構成する凹部30の開口端30aは、凸部28の頂面或いは頂面に配設されゴム層24の一部である第一弾性体24aより小さく形成されており、下沓22に対して上沓23が上揚することを防止している。また、凹部30は、開口端30aと連続する空間部30bを、開口端30aの開口より大きくし、内部に凸部28の頂部及び第一弾性体24aを配設出来るようにしている。尚、上沓23は、後述のように、複数の分割体を組み合わせることによって下沓22に配設することが出来る。
【0103】
そして、本実施例の支承装置21においては、支承方向(図11(b)における上下方向)から見て、外側部面28aと内側部面29aとが重なるように、凸部28と壁部29とが近接して配置されている。
【0104】
更に、本実施例の上沓23は、図11(b)に示すように、支承方向と異なる方向に分割可能とされている。つまり、上沓23は、平面視における中心を通る直径線に沿って支承方向(鉛直方向)に切断したように支承方向と異なる方向に分割された互いに対向配置される二つの略半円状の分割体23a,23bから構成されている。そして、二つの分割体23a,23bは、これら分割体23a,23bの接合部にそれぞれ半径方向外向きに突設されたフランジ部23c同士を当接させつつ、互いにボルト/ナット31によって締結されることによって円板状の上沓23が形成される。尚、本実施例においてボルト/ナット31は、支承装置21に対して大きな荷重が作用した場合に、最も先に損壊する部位であって脆弱部とされ、外側から視認可能な箇所に配設されている。
【0105】
ゴム層24は、天然ゴム等の公知の素材を採用することが出来、下沓22と上沓23との間に介挿され、凸部28と壁部29との間にも充填されている。ここで、ゴム層24のうち、下沓22の凸部28の頂面の部分が第一弾性体24aとして機能し、凸部28の周囲の平坦な面が第二弾性体24bとして機能し、第一弾性体24aと第二弾性体24bとの間の傾斜部分が両者を一体化する一体化部24cとして機能する。
【0106】
このような本実施例の支承装置21では、下沓22に設けられた凸部28が当該下沓22側に向く外側部面28aを有し、上沓23に設けられた凹部30を構成する壁部29が上沓23側に向くと共に凸部28の外側部面28aに対向配置される内側部面29aを有している。下沓22と上沓23との間には、第一弾性体及び第二弾性体として機能するゴム層24が介挿される。即ち、ゴム層24は、凸部28の壁面及び凹部30を構成する壁部29の壁面に配設された状態となる。この結果、支承方向視において、下沓22に向く凸部28の外側部面28a及び上沓23に向く凹部30を構成する壁部29の内側部面29aが存在する領域では、外側部面28a及び内側部面29aに沿ってゴム層24の一体化部24cが存在し、下沓22と上沓23との間では、第一弾性体24aと第二弾性体24bとが介挿される。
【0107】
つまり、凹部30の底部(天井)は、第一設定部となり、凸部28の頂面は、第一の配設部となり、第一弾性体24aは、第一配設部と第一設定部との間の空間部に配設される。また、凸部28の周囲の下沓22の上面は、第二配設部となり、上沓23の下面は、第二設定部となり、第二弾性体24bは、第二配設部と第二設定部との間の空間部に配設される。かくして、第一弾性体24aは、凸部28の頂面の第一配設部で荷重が支持され、また、厚さ等が規定される。また、第二弾性体24bは、下沓22の平坦な面である第二配設部で荷重を支持され、また、厚さ等が規定される。更に、一体化部24cは、内側部面29aを設定部とした外側部面28aと内側部面29aとの間の配設部に配設される。
【0108】
従って、支承装置21では、見かけ上、ゴム層24が複数層配設されることとなる。このようにゴム層24が支承方向において複数配置されていることにより、鉛直荷重が分散して作用することになり、鉛直荷重支持特性が向上する。従って、本実施例の支承装置21によれば、特に鉛直荷重方向支持特性に優れ、鉛直下方及び鉛直上方の揺動に追従して振動を十分に吸収、分散出来、鉛直面内における回転追随性能や回転力分散性能を向上させることが可能となる。
【0109】
また、支承装置21では、ゴム層24の第一弾性体24aと第二弾性体24bとが並列ばねとして機能し、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体の揺動によって、上沓23と下沓33とに相対的な回転変位の力が作用しても優れた回転追従性能を発揮出来る。
【0110】
更に、凸部28は、上沓23に対する芯材となり、水平方向の剪断力が作用しても上沓23と下沓22の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。また、ゴム層24の第二弾性体24bは、ゴム層24の中で最も内側の部分であるため、略密閉状態となり、密閉ゴム支承のように、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0111】
また、本実施例の支承装置21においては、支承方向視において、凸部28の外側部面28aと、凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとが重なり合う部分を有するため、下沓22と上沓23が離間する方向に移動した場合に、凸部28が凹部30を構成する壁部29に引っ掛かり、下沓22と上沓23とが乖離することを防止することが出来る。つまり、支承装置21に対して上揚力が作用しても下沓22と上沓23とが乖離することによる落橋等を防止することが出来る。
【0112】
また、本実施例の支承装置21においては、凸部28の外側部面28a及び凹部30を構成する壁部29の内側部面29aが支承方向に対して傾斜しているため、外側部面28a及び内側部面29aにおいて水平方向の荷重を支持しつつ、水平方向における下沓22と上沓23との相対的な変位を制限することが出来、水平荷重支持特性をも向上させることが出来る。
【0113】
また、本実施例の支承装置21は、凸部28の外側部面28aと凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとが平行とされているため、外側部面28aと内側部面29aとの間に配設されるゴム層24の部位が均一な厚みを有することになり、支承方向視において均等に鉛直荷重を支持することが出来る。
【0114】
また、本実施例の支承装置1においては、上沓23が分割可能に構成されているため、凸部28と凹部30とを容易に嵌合させることが可能となる。
【0115】
また、本実施例の支承装置21においては、上沓23が下沓22から離間する方向に所定以上の力を受けた場合に、凸部28又は凹部30を構成する壁部29より先に損壊すると共に、損壊による変化が外側に現れる脆弱部として、上沓23の分割部位同士を締結するボルト/ナット31を備えている。このボルト/ナット31は、凸部28よりも剪断面積が少なく設定されており、凸部28等よりも先に損壊する。このため、地震等により大きな荷重が作用した際に、目視出来ない凸部及び凹部を構成する壁部が損壊することを防止することが出来、目視可能なボルト/ナット31が損壊する。従って、支承装置の損壊状態を容易に把握することが可能となる。
【0116】
尚、本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下に幾つかの変形例について図面を参照して説明する。
【0117】
例えば、図12の断面図に示すように、芯材となる凸部28がその表面の一部に上沓23側に向く傾斜面28bを有し、凹部30を構成する壁部29がその表面の一部に下沓22側に向く傾斜面29bを有するように構成することも出来る。このような構成を採用することによって、傾斜面28b,29bにおいて鉛直荷重を支持することが出来、鉛直荷重支持特性を向上させることが出来る。さらに、図13に示すように、芯材となる凸部28の上面に下方に向かうに連れて窄まる凹部28cを設け、凹部30の天井から垂下されると共に下方に向かうに連れて窄まる凸部30cを設け、これによって、実質的に傾斜面28b,29bの面積を増加させ、鉛直荷重支持特性をさらに向上させることも出来る。尚、凸部28の上面に形成される凹部28cと、凹部30の天井から垂下される凸部30cとは、図13に示すように複数であってもよいが、図14に示すように単数であってもよい。
【0118】
また、図15の断面図に示すように、上沓23の下面を、その略中心から外方に向かって上沓23の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓22の上面を、その略中心から外方に向かって下沓22の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。上沓23と下沓22との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層24を厚くすることが出来、ゴム層24は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0119】
また、図16の断面図に示すように、上沓23の下面を、その略中心から外方に向かって上沓23の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓22の上面を、その略中心から外方に向かって下沓22の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓23と下沓22との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かってゴム層24を薄くすることが出来、ゴム層24の密閉性を高めることが可能となる。従って、この場合には、より大きな鉛直下向き荷重を支承することが可能となる。
【0120】
また、図17の断面図に示すように、支持装置は、凸部28の断面形状を、頂部が拡径された略T形状とし、壁部29の断面形状を、底部が拡径された略L形状或いは反転L形状とすることも出来る。この場合には、外側部面28a及び内側部面29aが支承方向に対して直交した形状となる。
【0121】
また、図18の断面図に示すように、下沓22、上沓23及び凸部28は平面視形状が円形である必要はなく、矩形状であってもよい。
【0122】
また、図19に示すように、凸部28及び凹部30が環状に設けられる構成を採用することも出来、この場合には、環状を成す凸部28或いは凹部30の半径方向における内側部分にゴム層24を略密閉状態で抱持することが出来、より一層の高荷重を支承することが可能となる。尚、凸部28の外側部面28a及び凹部30を構成する壁部29の内側部面29aとは、必ずしも全周に亘って設ける必要はないが、全周に設けることによって荷重を均等に且つ細かく分散することが出来、より鉛直荷重支持特性及び回転追随性能を向上させることが出来る。
【0123】
また、図20に示すように、下沓22と上沓23との間にゴム層24を配置しない空隙部となる空間32を形成することも出来る。ここでは、ゴム層24の第一の弾性体24aの部分を切り欠いて空間32を形成しているが、凹部30の天井面を切り欠いて空間32を形成することも出来る。また、ゴム層24、凹部30の天井面の両方に空間32を設けるようにしてもよい。そして、この空間32には、充填材を充填するようにしてもよい。例えば、充填材として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填圧等によってゴム層24のバネ定数を調整出来る。
【0124】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層24と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。また、空間32内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合には、図示を省略するが空間32の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。
【0125】
また、上記実施例においては、ボルト/ナット31が脆弱部として機能する構成について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図21に示すように、下沓22に肉薄部33を設け、当該肉薄部33が最も先に損壊する脆弱部として機能するようにしてもよい。尚、図22に示すように肉薄部33を上沓23に設けてもよい。尚、このように下沓22及び上沓23に対して肉薄部33を設ける場合には、これらの肉薄部33が外部から目視可能なように、肉薄部33を下沓22及び上沓23の側面まで到達するように設けることが好ましい。
【0126】
更に、図23に示すように、支承装置21は、下沓22の下面に、すべり板34を摺滑部材として固設することが出来る。この場合、支承装置21は、元々固定支承であったものを可動支承として利用することが出来る。すべり板34は、例えばPTFE製とされる。また、図24に示すように、本発明の実施例の支承装置21において、上沓23の上面にすべり板34を設けることも出来る。勿論、すべり板24の設定は支承装置21に限らず、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0127】
更に、本発明の支承装置の更なる実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の実施例を図25を参照しながら説明する。
【0128】
図25に示す支承装置41も、例えば橋梁において、橋桁16と橋脚或いは橋台17との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。
【0129】
支承装置41は、上沓42と下沓43を、高さが異なるように並列配置されたゴム等の弾性体を介して鉛直方向の相対変位を可能とするように嵌合させて構成されている。上沓42は、上部構造物として例えば橋桁16を、二点鎖線で示す上部プレート46を介して上面に固定している。下沓43は、下部構造物として例えば橋脚17を、二点鎖線で示す下部プレート47を介して下面に固定している。勿論、ここで言う上部プレート46や下部プレート47は、必須ではなく、上沓42と上部プレート46を一体的に構成したり、下沓43と下部プレート47を一体的に構成したりして、上沓42や下沓43にそれぞれに対応する構成や機能を持たせてもよい。
【0130】
この支承装置41は、少なくとも、橋桁16に上部プレート46を介して固定される第二剛性体である上沓42と、橋脚17に下部プレート47を介して固定される第一剛性体である下沓43と、下沓43に固定される芯材44と、上沓42と下沓43との間に配設されて並列ばねとして機能する二つの弾性体(第一弾性体48,第二弾性体49)とを備えている。更に、上沓42には、内部に空間部51が設けられ、上部構造体である橋桁16に固定される支承面と反対の面に、空間部51と連通する穴部52が形成されている。
【0131】
第二剛性体となる上沓42は、第一弾性体48が配設される第一設定部48aと、第二弾性体49が配設される第二設定部49aとを有している。第一弾性体48が配設される第一設定部48aは、例えば、上沓42の空間部51内において、上沓42の穴部52より空間部51内に挿入された下沓43に設けられた芯材44の先端部と対向する空間部51の天井面である。また、第二弾性体49が配設される第二設定部49aは、上沓42の支持部53の下沓43と対向する下面である。また、第一弾性体48は、穴部52の径より少なくとも一部が大きく形成され、上沓42の穴部52の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部53に係合することによって抜け止めがされている。
【0132】
第一剛性体となる下沓43は、芯材44が一体的に設けられており、芯材44の先端部が第一弾性体48が配設される第一配設部48bとなり、上沓42の支持部53と対向する面が第二弾性体49が配設される第二配設部49bとなる。第一配設部48bは、第一弾性体48が設けられ、第一弾性体48を介した荷重を支持する。また、第二配設部49bは、第二弾性体49が設けられ、第二弾性体49を介した荷重を支持する。
【0133】
下沓43の芯材44は、上沓42の穴部52より空間部51内に挿入される。空間部51内には、芯材44の先端部に固定された第一弾性体48が上沓42の天井面と対向するように配置される。芯材44は、穴部52の大きさより少なくとも一部が大きく形成され、上沓42の穴部52の周囲に形成された上揚阻止手段として機能する支持部53によって抜け止めがされている。
【0134】
上沓42の穴部52の周囲の支持部53(第二設定部49b)と下沓43の芯材44の周囲(第二配設部49a)との間には、第二弾性体49が配設される。即ち、第一弾性体48と第二弾性体49とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設された多段の並列ばねとして機能する。更に、第一弾性体48と第二の弾性体49とは、第一弾性体48の外側面より内側に第二弾性体49の内側面が位置するように配設されている。即ち、第一弾性体48と第二弾性体49とは、平面視で、高さを異ならせ段違いにすることで、少なくとも一部が重なるように配設される。そして、例えば、上沓42の第一弾性体48が配設される第一設定部48aと第二弾性体49が配設される第二設定部49aは、同じ向きに設けられ、これらに対向した向きとして下沓43の第一配設部48bと第二配設部49bとが互いに同じ向きに設けられる。これにより、例えば、第一弾性体48と第二弾性体49とは、略平行に配設することが出来る。
【0135】
上沓42は、図25のように一部材で構成しても良いが、図26に示すように、複数の部材で構成するようにしても良い。図26では、二部材を用いており、上沓42は、第一弾性体48を収容する沓部材42aと、支持部53が形成された中間部材42bとを積層するように突き合わせ結合することによって、第一弾性体48が収容される空間部51を構成する。尚、沓部材42aと中間部材42bとの結合は、ボルト・ナット等を用いても好いことは勿論、沓部材42aと中間部材42bの何れか一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設け、これらを互いに螺合して結合するねじ締結によったり、溶接したり、従来公知の結合方法等によってもよい。沓部材42aは、上部プレート46に固定される支承面を有していると共に、周囲に立ち上がり壁を設けて、空間部51の上側を構成する。また、中間部材42bは、底面に穴部52を有し、穴部52の周囲に支持部53を設けるようにし、更に、支持部53の外周より立ち上がり壁を設けて、空間部51の下側を構成する。沓部材42aと中間部材42bとは、芯材44の太径部の大径部44aを空間部51内に配置した後に、互いの立ち上がり壁を突き合わせ結合することによって組み立てられる。かくして、上沓42には、内部に、芯材44の先端部を収容する空間部51が形成されると共に、この空間部51と連通し、周囲を支持部53とした穴部52が形成される。ここでは、穴部52は、芯材44の直径よりやや大きい直径となるように形成されている。
【0136】
下沓43には、芯材44が固定される。芯材44は、下端側が下沓43に固定されると共に先端部が穴部52と連続する上沓42内の空間部51に配置される棒状或いは柱状、若しくは剪断キー状に設定される部材である。この芯材44は、上沓42と下沓43の間に配設される第一弾性体48や第二弾性体49の剪断変形を抑制する機能と、橋桁16等の上部構造物からの鉛直荷重を第一弾性体48や第二弾性体49を介することによって弾性的に支承する機能と、上揚力に抗して上沓42と下沓43とが乖離することを防止する機能と、第一弾性体48を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を果たす。芯材44は、第一弾性体48が配設されることや上揚力に抗する目的から、先端部を根本より太い大径部とすることが好ましく、ここでは、先端部に、大径の大径部44aが設けられている。この大径部44aの第一弾性体48が配設される配設面は、第一配設部48bであり、空間部51の水平方向断面とほぼ同じ広さとなっており、第一弾性体48が配設される。勿論、第一弾性体や大径部44aの配設面を、空間部51よりやや小さくして、ここを空隙部54とし、充填材等を充填可能としてもよい。
【0137】
第一弾性体48は、上沓42の空間部51内において、芯材44の先端部の大径部44aの第一配設部48bと空間部51の天井面の第一の設定部48bとの間に所定量配設される。また、第二弾性体49は、下沓43の上面(第二配設部49b)と上沓42の下面(支持部53の下沓43の上面と対向する面、第二設定部49a)との間に所定量配設される。第一弾性体48及び第二弾性体49は、この配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。尚、第一弾性体48は、空間部51において、大径部44aに取り付けられることで、密閉ゴム支承状態となる。
【0138】
以上のような、支承装置41では、上沓42が空間部51内において第一弾性体48によって支持されると共に、第二弾性体49によって、支持部53の部分で支持される。支承装置41は、並列ばねとして機能する第一弾性体48及び第二弾性体49を配設し、第一弾性体48と第二弾性体49とが平面視で少なくとも一部が重なるように配設するようにしたので、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。特に、第一弾性体48は、空間部51において、大径部44aに配設されることで、略密閉状態とすることも可能であり、この場合、略密閉ゴム支承状態となって、より小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。また、例えば上部構造体である橋桁16の揺動によって、上沓42と下沓43とに相対的な回転変位の力が作用しても、回転力を減衰させるなど、優れた回転追従性能を発揮出来る。
【0139】
更に、芯材44は、上沓42の穴部52より空間部51に挿入されているので、芯材44の軸方向に垂直な水平方向の剪断力が作用しても上沓42と下沓43の相対変位を所定範囲内に制限することが可能である。更に、芯材44には、大径部44aによって、上沓42の穴部52の周囲の支持部53で抜け止めがされているので、大きな荷重を支承し、良好な回転追従性を得つつも、上沓42を上揚するような力が作用した際にも上沓42と下沓43とが乖離することを防止することが可能となる。
【0140】
尚、本発明による支承装置41は、更に、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0141】
例えば、図27に示すように、上沓42の空間部51の天井面を断面略逆三角形状にして、その頂点51aで、大径部44a上の第一弾性体48を上から支持し、第一弾性体48上であって頂点51aの周囲に空隙部54を設けることも出来る。空隙部54は、第一弾性体48が荷重を受けて変形する場合に入り込むことで、第一弾性体48の許容変形量を大きくすることが出来、バネ状態の調整を行うことが出来る。
【0142】
更に、この空隙部54には、充填材55を充填するようにしてもよい。充填材55として、加圧空気を充填する場合には、加圧空気の充填量によって第一弾性体48のバネ定数を調整出来る。尚、上述のように充填材55としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることが出来る他、エチレングリコール等の不凍性を有する流体を用いることも可能である。また、空隙部54内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、空隙部54の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。また、充填材55は、支承装置41の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。
【0143】
また、図28に示すように、支承装置を上下反転し、上沓42を下沓として、下沓43を上沓として用いることも可能である。この場合、下沓43は、橋桁16等の上部構造体に配設され、上沓42は、橋脚或いは橋台17に配設されることになる。また、支承装置の上下反転の考え方は、上述した図1乃至図24の支承装置に適用することもできる。
【0144】
更に、下沓43の上面と上沓42の下面(支持部53の下沓43の上面と対向する面)との間は、上記図6に示したように、上沓42の下面を、その略中心から外方に向かって上沓42の厚みが薄くなる傾斜面としつつ、下沓3の上面を、その略中心から外方に向かって下沓43の厚みが薄くなる傾斜面とすることも出来る。これにより、上沓42と下沓43との間には、中心から半径方向外方に向かって離反する拡開した空間が作出されるため、中心から外方に向かって第二弾性体49を厚くすることが出来、第二弾性体49は、外側程その撓み量が大きくなり、鉛直面内における回転性能を向上させることが可能となる。
【0145】
また、下沓42の芯材44の先端部や太径部44aの第一弾性体48の第一配設部48bや下沓42の上面の芯材44の周囲の第二配設部49bは、平面で形成する他、凹部及び/又は凸部を設けたり、粗面としたり、曲面としたり、テーパー面としたり、或いはこれらの複合した面とすることが可能である。
【0146】
また、上記図7に示すように、上沓42の下面を、その略中心から外方に向かって上沓42の厚みが厚くなる傾斜面としつつ、下沓43の上面を、その略中心から外方に向かって下沓43の厚みが厚くなる傾斜面とすることも出来る。上沓42と下沓43との間には、中心から半径方向外方に向かって接近する縮閉した空間が作出されるため、中心から外方に向かって第二弾性体49を薄くすることが出来、第二弾性体49の密閉性を高めることが可能となる。
【0147】
更に、上沓42内の空間部51は、密閉空間を構成するものでなく、上記図1に示すように、天井面を開口するようにして、開口された空間部51に第一弾性体48を配設することも出来る。そして、芯材44には、先端部に雄ねじ部を設け、大径部44aを芯材44の先端部の雄ねじ部に螺合するための雌ねじ部を有するナット体として構成することも可能である。
【0148】
更に、上記図9に示したように、支承装置41において、上沓42の上面にすべり板12を摺滑部材として固設してもよいし、上記図10に示したように、支承装置41において、下沓43の下面にすべり板12を備える構成を採用することも出来る。
【0149】
尚、上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【0150】
また、支承装置を上下反転し、下沓を上沓として、上沓を下沓として用いることも可能であり、或いは支承方向を水平方向としたり、鉛直方向からずれた方向に設定することも可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 支承装置、2 上沓、2a 貫通孔、2b,2c 開口端、2d 底部、3 下沓、4 ゴム層、8 芯材、8a 大径部、8b 軸体、8c ナット体、9 充填弾性体、10 上揚抑制機構、11 空間、12 すべり板、21 支承装置、 22 下沓、23 上沓、23a 分割体、23b 分割体、23c フランジ部、24 ゴム層、25 下部プレート、26 上部プレート、28 凸部、28a 外側部面、28b 傾斜面、29 壁部、29a 内側部面、29b 傾斜面、30 凹部、31 ボルト/ナット、32 空間、33 肉薄部、34 すべり板、41 支承装置、42 上沓、42a 沓部材、42b 中間部材、43 下沓、44a 大径部、46 上部プレート、47 下部プレート、48 第一弾性体、48a 第一配設部、48b 第一設定部、49 第二弾性体、49a 第二配設部、49b 第二設定部、51 空間部、52 穴部、53 支持部、54 空隙部、55 充填材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有し、
前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記第一弾性体が配設される第一配設部と、前記第二弾性体が配設される第二配設部とを有した第一剛性体を有することを特徴とする請求項1記載の支承装置。
【請求項3】
前記第二配設部は、前記厚さ方向視において、前記第一配設部と同じ向きに設けられることを特徴とする請求項2記載の支承装置。
【請求項4】
前記第一弾性体の前記第一配設部が配設された面と反対側の面が設定される第一設定部と、前記第二弾性体の前記第二配設部が配設された面と反対側の面が設定される第二設定部とを有した第二剛性体を有することを特徴とする請求項2又は3記載の支承装置。
【請求項5】
前記第二設定部は、前記厚さ方向視において、前記第一設定部と同じ向きに設けられることを特徴とする請求項4に記載の支承装置。
【請求項6】
前記第二剛性体は、内部に空間部が設けられると共に、該空間部を介した支承面と反対側の面に該空間部と連通する穴部が形成され、
前記第一剛性体は、先端部が前記穴部より前記空間部内に挿入される芯材が一体に形成されると共に、前記第二剛性体の前記穴部が形成された面に対向して配置され、
前記第一弾性体は、前記空間部内の前記芯材の先端部と前記空間部の天井面との間において第一配設部に配設されると共に、前記第二剛性体の穴部の周囲に形成された支持部によって前記空間部から抜け止めされ、
前記第二弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間において前記第二配設部に配設され、
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている請求項4又は5記載の支承装置。
【請求項7】
前記第一剛性体を構成する芯材の先端面が第一配設部であり、前記第一剛性体の前記第二剛性体と対向して前記芯材の先端面に対して段違いに設定された面が、第二配設部であることを特徴とする請求項6記載の支承装置。
【請求項8】
前記第二剛性体の第一設定部は、前記第一弾性体と当接し、又は当接し得る面を含んで成る略密閉された空間であることを特徴とする請求項6又は7記載の支承装置。
【請求項9】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、略平行に配設されることを特徴とする請求項6乃至8のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項10】
前記第一弾性体は、前記第二剛性体の空間部の天井面と全体的に又は部分的に密着していることを特徴とする請求項6乃至9のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項11】
前記第二剛性体は、前記第一弾性体を収容する沓部材と、該沓部材に突き合わされて前記空間部を構成すると共に前記支持部を形成された中間部材とを有することを特徴とする請求項6乃至10のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項12】
前記芯材は、前記第一弾性体が配設される大径部が設けられていることを特徴とする請求項6乃至11のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項13】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体であることを特徴とする請求項6乃至12のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項14】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、別体であることを特徴とする請求項6乃至12のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項15】
前記空間部内において、前記第二剛性体の内面と前記第一弾性体との間には、前記第一弾性体が設けられていない空隙部が設けられていることを特徴とする請求項6乃至14のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項16】
前記空隙部には、充填材が充填されていることを特徴とする請求項15記載支承装置。
【請求項17】
前記充填材は、前記第一弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする請求項16記載支承装置。
【請求項18】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする請求項16記載支承装置。
【請求項19】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の下面或いは上面に摺滑部材が設けられていることを特徴とする請求項6乃至18のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項20】
前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第二剛性体が上部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項6乃至19のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項21】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項6乃至19のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項22】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする請求項20又は21記載の支承装置。
【請求項1】
厚さ方向に対して段違いに配設された第一弾性体と第二弾性体とを有し、
前記第一弾性体と前記第二弾性体とが、互いに並列ばねとして構成され、前記厚さ方向視において重複する部位を有することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記第一弾性体が配設される第一配設部と、前記第二弾性体が配設される第二配設部とを有した第一剛性体を有することを特徴とする請求項1記載の支承装置。
【請求項3】
前記第二配設部は、前記厚さ方向視において、前記第一配設部と同じ向きに設けられることを特徴とする請求項2記載の支承装置。
【請求項4】
前記第一弾性体の前記第一配設部が配設された面と反対側の面が設定される第一設定部と、前記第二弾性体の前記第二配設部が配設された面と反対側の面が設定される第二設定部とを有した第二剛性体を有することを特徴とする請求項2又は3記載の支承装置。
【請求項5】
前記第二設定部は、前記厚さ方向視において、前記第一設定部と同じ向きに設けられることを特徴とする請求項4に記載の支承装置。
【請求項6】
前記第二剛性体は、内部に空間部が設けられると共に、該空間部を介した支承面と反対側の面に該空間部と連通する穴部が形成され、
前記第一剛性体は、先端部が前記穴部より前記空間部内に挿入される芯材が一体に形成されると共に、前記第二剛性体の前記穴部が形成された面に対向して配置され、
前記第一弾性体は、前記空間部内の前記芯材の先端部と前記空間部の天井面との間において第一配設部に配設されると共に、前記第二剛性体の穴部の周囲に形成された支持部によって前記空間部から抜け止めされ、
前記第二弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間において前記第二配設部に配設され、
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、厚さ方向に段違いに一部重複する部位を有するように配設されている請求項4又は5記載の支承装置。
【請求項7】
前記第一剛性体を構成する芯材の先端面が第一配設部であり、前記第一剛性体の前記第二剛性体と対向して前記芯材の先端面に対して段違いに設定された面が、第二配設部であることを特徴とする請求項6記載の支承装置。
【請求項8】
前記第二剛性体の第一設定部は、前記第一弾性体と当接し、又は当接し得る面を含んで成る略密閉された空間であることを特徴とする請求項6又は7記載の支承装置。
【請求項9】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、略平行に配設されることを特徴とする請求項6乃至8のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項10】
前記第一弾性体は、前記第二剛性体の空間部の天井面と全体的に又は部分的に密着していることを特徴とする請求項6乃至9のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項11】
前記第二剛性体は、前記第一弾性体を収容する沓部材と、該沓部材に突き合わされて前記空間部を構成すると共に前記支持部を形成された中間部材とを有することを特徴とする請求項6乃至10のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項12】
前記芯材は、前記第一弾性体が配設される大径部が設けられていることを特徴とする請求項6乃至11のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項13】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、一体であることを特徴とする請求項6乃至12のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項14】
前記第一弾性体と前記第二弾性体とは、別体であることを特徴とする請求項6乃至12のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項15】
前記空間部内において、前記第二剛性体の内面と前記第一弾性体との間には、前記第一弾性体が設けられていない空隙部が設けられていることを特徴とする請求項6乃至14のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項16】
前記空隙部には、充填材が充填されていることを特徴とする請求項15記載支承装置。
【請求項17】
前記充填材は、前記第一弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする請求項16記載支承装置。
【請求項18】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする請求項16記載支承装置。
【請求項19】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の下面或いは上面に摺滑部材が設けられていることを特徴とする請求項6乃至18のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項20】
前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であり、前記第二剛性体が上部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項6乃至19のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項21】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項6乃至19のうち何れか1項記載の支承装置。
【請求項22】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする請求項20又は21記載の支承装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−107743(P2012−107743A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72127(P2011−72127)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
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