説明

放射加熱装置

【課題】炉内の被加熱物を熱放射によって均一に安定して加熱することのできる放射加熱装置を提供する。
【解決手段】炉1の炉壁1aに、管状火炎バーナ2と、管状火炎バーナ2の火炎を取り囲み、炉1内に向かって放射を行うための放射加熱箱3が取り付けられている。そして、管状火炎バーナ2は、管状の燃焼室10を有しており、燃焼室10の先端10aが放射加熱箱3に向けて開放されていると共に、燃焼室10の後端10bの近傍に、燃焼室10へ燃料ガスを吹き込むノズルと酸素含有ガスを吹き込むノズルが取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気熱処理炉等の間接加熱炉に用いられる、金属等の表面から熱エネルギーを放出して加熱を行う放射加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の光輝焼鈍等に代表される、被加熱物の表面を酸化させない加熱として、特許文献1に記載されているラジアントボックスを用いた放射加熱装置による方式が知られている。
【0003】
この方式は、炉内を不活性ガス又は還元ガス雰囲気に保持し、バーナの燃焼による熱エネルギーをラジアントボックスの内面で吸収し、吸収した熱エネルギーをラジアントボックスの外面から炉内に放射することによって被加熱物を加熱するものである。
【特許文献1】特開平7−218142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の放射加熱装置においては、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、使用しているバーナの火炎は、バーナの軸心方向に直進し、半径方向に広がらないため、ラジアントボックスはバーナの軸心方向に延びた形状となり、ラジアントボックスの側面を鋼帯等の被加熱物の表面に対向させて放射加熱を行っている。そのため、ラジアントボックス内に生じるバーナ軸心方向の温度分布の影響で、鋼帯等の被加熱物を均一に加熱できない可能性があるという問題がある。
【0006】
仮に、ラジアントボックスのバーナ軸心方向の長さを短くして、ラジアントボックスの前面で放射加熱させようとしても、ラジアントボックスのバーナ軸心前方の部分が過加熱され、ラジアントボックスが短期間で変形・破損するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、炉内の被加熱物を熱放射によって加熱するための放射加熱装置であって、被加熱物を均一に安定して加熱することのできる放射加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]炉内の被加熱物を放射熱によって加熱するための放射加熱装置であって、先端が開放された管状の燃焼室と、ノズル噴射口が前記燃焼室の内面に開口し、燃料と酸素含有ガスを別々にあるいは予混合して吹き込むノズルを備え、各ノズルの噴射方向が燃焼室内周面の接線方向とほぼ一致している管状火炎バーナと、該管状火炎バーナからの火炎を取り囲み、炉内に向けて熱エネルギーを放射するための放射加熱箱とを備えていることを特徴とする放射加熱装置。
[2]前記放射加熱箱は、管状火炎バーナの燃焼室の軸心と直交する方向の長さが管状火炎バーナの燃焼室の軸心方向の長さに比べて長い形状であることを特徴とする前記[1]に記載の放射加熱装置。
[3]前記放射加熱箱の前面が被加熱物と対向するように設けられていることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の放射加熱装置。
[4]前記管状火炎バーナに吹き込む酸素含有ガスと前記放射加熱箱から排出される燃焼排ガスとの間で熱交換させるための熱交換器を有していることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の放射加熱装置。
[5]前記熱交換器が回転式蓄熱体であることを特徴とする前記[4]に記載の放射加熱装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、管状の火炎を形成する管状火炎バーナを用いた放射加熱箱によって放射加熱を行うので、放射加熱箱内に軸対称の温度分布が得られ、被加熱物を均一に安定して面状に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図1〜図3に示す。図1は、この実施形態に係る放射加熱装置の側面図、図2は、図1におけるA−A矢視の断面図である。図3は、この実施形態に係る放射加熱装置の全体構成図である。
【0011】
図1において、炉1の炉壁1aに管状火炎バーナ2が取り付けられており、管状火炎バーナ2の火炎を取り囲み、炉1内に向かって放射を行うための放射加熱箱3が炉1内側の炉壁1aに取り付けられている。
【0012】
管状火炎バーナ2は、特開平11−281015号公報に記載されたものと基本的に同じ構造であり管状の燃焼室10を有しており、燃焼室10の先端10aが放射加熱箱3に向けて開放されている。そして、燃焼室10の後端10bの近傍に、燃焼室10へ燃料ガスを吹き込むノズルと酸素含有ガスを吹き込むノズルが取り付けられている。
【0013】
図1及び図2に示すように、燃焼室10へのノズル噴射口として管軸方向に沿った細長いスリット12が燃焼室10の同一管周上の4個所に形成されており、それぞれのスリット12に管軸方向に細長い偏平形状のノズル11a、11b、11c、11dが接続されている。それぞれのノズル11a、11b、11c、11dの噴射方向は、燃焼室10の内周面の接線方向でかつ同一回転方向になるように設けられている。それら4個のノズルの内、ノズル11aとノズル11cの2個は燃料ガス吹き込みノズルであり、ノズル11bとノズル11dの2個は酸素含有ガス吹き込みノズルである。
【0014】
燃料ガス吹き込みノズル11a、11cからは燃料ガスが燃焼室10の内周面の接線方向に向かって高速で吹き込まれ、酸素含有ガス吹き込みノズル11b、11dからは酸素含有ガスが燃焼室10の内周面の接線方向に向かって高速で吹き込まれ、燃焼室10の内周面に近い領域で燃料ガスと酸素含有ガスが効率良く混合されながら旋回流が形成されるようになっている。
【0015】
その旋回流となった混合ガスに点火プラグ又はパイロットバーナ等の点火装置(図示せず)によって点火すると、燃焼室10内に管状の火炎が生成される。その管状の火炎となった燃焼ガスは燃焼室10の先端10aから放射加熱箱3内に放出される。
【0016】
放射加熱箱3は、金属製又は耐熱性のあるセラミックス製で、図1に示すように、燃焼室10の軸心と直交する方向の長さLtが、管状火炎バーナ2の燃焼室10の軸心方向の長さLsに比べて長い偏平した形状であり、燃焼室10の軸心と直交する断面は、正方形あるいは円形等の軸対称の形状になっている。
【0017】
そして、放射加熱箱3は、その前面3aが炉1内を搬送されている鋼帯等の被加熱物30に対向するように配置されており、管状火炎バーナ2の燃焼室10の先端10aから放出される火炎を取り囲んでその熱エネルギーを吸収し、前面3aから熱エネルギーを放出して、対向する被加熱物30を放射加熱するようになっている。
【0018】
また、放射加熱箱3から排出口3bを経由して炉外に排出される燃焼排ガスと、管状火炎バーナ2に供給される酸素含有ガスとを熱交換させるための回転式蓄熱体25が炉外に設けられている。
【0019】
そして、図3に全体構成図を示すように、この実施形態においては、燃料ガスを供給する配管中には、燃料ガス吹き込みノズル11a、11cに供給する燃料ガスの供給流量を調整するための燃料ガス流量調整弁17が設けられており、酸素含有ガスを供給する配管中には、酸素含有ガス吹き込みノズル11b、11dに供給する酸素含有ガスの供給流量を調整するための酸素含有ガス流量調整弁18が設けられている。燃料ガス流量調整弁17と酸素含有ガス流量調整弁18は供給流量制御装置(図示せず)によって制御されるようになっている。
【0020】
なお、燃料ガス及び酸素含有ガスの供給流量は、燃料ガスの流量計21と酸素含有ガスの流量計22によって測定されており、その測定値は供給流量制御装置に送られ、燃料ガス流量調整弁17及び酸素含有ガス流量調整弁18の開度調整に利用されるようになっている。
【0021】
さらに、酸素含有ガスを供給する配管の途中に回転式蓄熱体25が設けられており、酸素含有ガスは吹き込みノズルに供給される前に、予め回転式蓄熱体25に通される。一方、放射加熱箱3からの燃焼排ガスを排出する配管も回転式蓄熱体25を経由するようになっており、燃焼排ガスも回転式蓄熱体25を通過するようになっている。これによって、回転式蓄熱体25を介して、酸素含有ガスと燃焼排ガスとの間で連続的に熱交換が行われ、高温の酸素含有ガスが管状火炎バーナの燃焼室10内に供給される。
【0022】
なお、上記の酸素含有ガスは、空気、酸素、酸素富化空気、酸素・排ガス混合ガスなど燃焼用の酸素を供給するガスを指している。
【0023】
上記のように構成された放射加熱装置においては、管状火炎バーナ2によって強い旋回力を得た燃焼ガスが、放射加熱箱3の内部で、管状火炎バーナ2の半径方向に広がりながら燃焼するため、放射加熱箱3内部で軸対称の温度分布が得られる。したがって、放射加熱箱3の前面3aから放出される熱放射線も軸対称となり、それによって加熱される被加熱物30は均一に面状に加熱される。
【0024】
その際に、火炎が半径方向に伸ばされながら燃焼するので、長手方向の長さLsを短くしても、放射加熱箱3の前面3aが部分的に過加熱されて変形することがなく、放射加熱箱3を、幅方向の長さLtが長手方向の長さLsより長い偏平した形状とすることによって、被加熱物30に熱エネルギーを放出する前面3aの面積が大きくなり、火炎からの熱エネルギーを効率的に放射加熱に用いることができる。
【0025】
また、放射加熱箱3からの燃焼排ガスと管状火炎バーナに供給する酸素含有ガスにとの間で熱交換させることにより、燃焼排ガスの排熱を有効に活用できる。また、酸素含有ガスが高温化して燃焼反応性が上がるので、酸素比又は空気比を容易に1.0前後の値にすることができ、NOxなどの有害物質、未燃焼ガス、煤煙といった環境汚染源を低減することができる。
【0026】
また、上記の熱交換に用いる熱交換器として回転式蓄熱体を用いることにより、連続的な熱交換を行い、定常燃焼を継続できるので、一定周期で切り替える際に非定常燃焼となる切替式熱交換器を用いた場合に比べて一層効果的である。さらに、切替式熱交換器を用いた場合のように、切り替えの際の放射加熱箱内の圧力変動によって放射加熱箱が繰り返し応力を受けて寿命が短くなるということもない。
【0027】
このように、この実施形態に係る放射加熱装置においては、鋼帯等の被加熱物を均一に安定して効率的に加熱することができる。
【0028】
なお、この実施形態では、燃料ガス吹き込みノズル及び酸素含有ガス吹き込みノズルを、噴射方向が燃焼室内周面の接線方向に一致するように設けているが、必ずしも燃焼室内周面の接線方向に一致する必要はなく、燃焼室にガスの旋回流を形成できる程度に、噴射方向が燃焼室内周面の接線方向から外れていても良い。
【0029】
また、この実施形態では、燃焼室への噴射口として管軸方向に沿ってスリットを設け、そのスリットに偏平形状の燃料ガス吹き込みノズル及び酸素含有ガス吹き込みノズルを接続しているが、燃焼室への噴射口として複数の小孔を管軸方向に配し、その小孔列に燃料ガスあるいは酸素含有ガスを吹き込むためのノズルを接続するようにしても良い。
【0030】
また、この実施形態では、燃料ガスを吹き込んでいるが、液体燃料を吹き込んでも良い。液体燃料としては、灯油、軽油、アルコール、A重油等の比較的低い温度で気化するものが好適である。
【0031】
また、この実施形態では、燃料ガスと酸素含有ガスを別々に吹き込んでいるが、燃料ガスと酸素含有ガスを予混合して吹き込んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射加熱装置の側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る放射加熱装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 炉
1a 炉壁
2 管状火炎バーナ
3 放射加熱箱
3a 放射加熱箱の前面
3b 放射加熱箱の排ガス排出口
10 燃焼室
10a 燃焼室の先端
10b 燃焼室の後端
11a、11c 燃料ガス吹き込みノズル
11b、11d 酸素含有ガス吹き込みノズル
12 スリット
17 燃料ガスの流量調整弁
18 酸素含有ガスの流量調整弁
21 燃料ガスの流量計
22 酸素含有ガスの流量計
25 回転式蓄熱体
30 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内の被加熱物を放射熱によって加熱するための放射加熱装置であって、先端が開放された管状の燃焼室と、ノズル噴射口が前記燃焼室の内面に開口し、燃料と酸素含有ガスを別々にあるいは予混合して吹き込むノズルを備え、各ノズルの噴射方向が燃焼室内周面の接線方向とほぼ一致している管状火炎バーナと、該管状火炎バーナからの火炎を取り囲み、炉内に向けて熱エネルギーを放射するための放射加熱箱とを備えていることを特徴とする放射加熱装置。
【請求項2】
前記放射加熱箱は、管状火炎バーナの燃焼室の軸心と直交する方向の長さが管状火炎バーナの燃焼室の軸心方向の長さに比べて長い形状であることを特徴とする請求項1に記載の放射加熱装置。
【請求項3】
前記放射加熱箱の前面が被加熱物と対向するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射加熱装置。
【請求項4】
前記管状火炎バーナに吹き込む酸素含有ガスと前記放射加熱箱から排出される燃焼排ガスとの間で熱交換させるための熱交換器を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射加熱装置。
【請求項5】
前記熱交換器が回転式蓄熱体であることを特徴とする請求項4に記載の放射加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−209112(P2008−209112A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96686(P2008−96686)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【分割の表示】特願2002−236957(P2002−236957)の分割
【原出願日】平成14年8月15日(2002.8.15)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】