説明

放射線検出器および放射線診断装置

【課題】暗電流及びオフセットノイズに起因するノイズだけでなく、ゲート線印加電圧の時間変動に起因する横引きノイズを、効率的にリダクションすること。
【解決手段】放射線検出部は、マトリクス状にアレイされた複数の画素を有し、入射した放射線を検出する。読み出し部は、選択的に仕様可能な複数の読み出し方式を有しており、放射線検出部から検出信号を読み出す。記憶部は、読み出し方式各々に対応する補正値を、読み出し方式毎に記憶する。補正部は、記憶部から読み出し方式に応じて選択的に読み出された補正値に基づいて、出力された検出信号を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線を、その強度に応じて電気信号に変換する放射線検出器及びこれを用いた放射線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型(planar type)の放射線検出器は、マトリックス状にアレイされた複数の画素を有する。各画素は、光電変換素子と、画素電極とを有する。放射線が光電変換素子に入射すると、光電変換素子でその入射強度に応じた量の電荷が発生する。この電荷は、画素電極を経由して、キャパシタに蓄積される。蓄積された電荷は、電気信号として、読み出し部を経由してキャパシタから読み出される。
【0003】
図1は、従来の放射線検出器の典型的な構成例を示す図である。この図において、2次元マトリックス状に配置された複数の画素電極71は、被写体を通過して入射した放射線の強度に応じて光電変換膜に生じた電荷を収集するものである。各画素電極71には、この収集された電荷(画素電荷)を蓄積するために、電荷蓄積素子として用いられるキャパシタがそれぞれ接続されている。また、各キャパシタに蓄積された画素電荷は、薄膜トランジスタ(TFT)72を経由して読み出される。
【0004】
ゲート線ドライバ74は、TFT72のゲートをオンするためのゲート電圧をゲート線73に選択的に印加する。選択されたゲート線73に接続されている複数のTFT72は一斉にオンされる。これにより、同一行のキャパシタ電荷は電気信号(以下、検出信号という)として信号線75を介して増幅器76に読み出される。その後、増幅された検出信号は、マルチプレクサ77を経由して順番にA/Dコンバータ78に送られる。
【0005】
ちなみに、上記したゲート線73の各々が平行に敷設される層と信号線75の各々が平行敷設される層とは、絶縁膜の層を挟んで、図1の紙面の垂直方向に互いが重なるように形成されている。つまり、ゲート線73と信号線75とは別々の層(レイヤ)として形成されていて、かつ相互に短絡することがないようにされているのである。
【0006】
このような放射線検出器は、一般的に、放射線画像をデジタル化することにより、放射線画像の伝送、蓄積、検索等の面で従来の放射線撮影フィルムと比較して非常に有利であり、今後ますます普及していくものと考えられる。また、放射線を直接デジタル化する上述した放射線検出器は、従来のフィルムデジタイザ方式などと比較して簡便にデジタル画像を得ることができるというメリットも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−072256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した従来の平面型放射線検出器においては、その検出信号に、「外乱要因」となるノイズ成分が重畳される。これにより、被写体の正確な情報を得ることが一般に容易ではないという問題点があった。ここに、一応「外乱要因」と名付けたものとしては、具体的に、以下に示すような二つの要因を考えることができる。
【0009】
また第1の要因は、「暗時画像(dark image)」に関わっている。上記した画素電極71に付設される光電変換膜では、自由電子のランダムな熱運動等が原因となって、放射線の入射がない場合でも、一般に「暗電流」と呼ばれる電流が発生していることが知られている。また、上記増幅器76においては、通常いつでも、オフセットノイズ電圧が観測される。これら暗電流やオフセットノイズ電圧は、信号線75及び増幅器76を介して、最終的に画像として構成されてしまい、いわゆる「暗時画像」を形成することとなる。
【0010】
このため、何らの補正をかけない検出信号を基にして構成される画像は、上記暗時画像が、本来知りたい正規の画像上に重畳された状態で得られることになる。したがって、正確な画像を得るためには、全体の情報から暗時画像に係る情報を差し引かなければならない。
【0011】
このような不具合は、従来においても認識されており、例えば暗時画像に係る補正情報を予め入手しておき、これを検出時の情報から差し引くという手法が提案されていた。しかしながら、上記暗電流及びオフセットノイズ電圧は、一般に温度によって変動し、これに応じて暗時画像も変化することになるから、上記手法はあまり有効なものとはいえなかった。つまり、この手法においては、補正情報が固定されているため、放射線検出器の運転時間等に応じて、時々刻々変化する現実の状況(温度)に対応できないという問題点があったのである。
【0012】
また、暗時画像は、上記ゲート線73及びTFT72の駆動方法によっても変化する。というのは、TFT72は、理想的なスイッチング素子ではなく、オン/オフいずれの状態のときも有限な抵抗値を持つものだからである。この特性は次のような問題を生じさせる。すなわち、アレイの駆動シーケンスに従って、本来得るべき電流ないし電荷情報に関して、その散逸が生じたり、また余分な成分の加算が生じたりするのである。具体的には、例えば、駆動シーケンスとして、図1における第i行目のゲート線73を駆動(その線上にあるTFT72をオンに)して対応する画素電極71の電荷情報を取り出し、次に、当該第i行ゲート線73の駆動を停止(TFT72をオン)すると同時に第i+1行目のゲート線73を駆動する、という一般的なシーケンスを考えると、次の二点について電流の散逸及び加算が生じることが考えられる。
【0013】
まず第1点として、第i行ラインのTFT72におけるオン/オフ動作に伴う電流の散逸である。これは、TFT72オン時には信号線75と画素電極71の電位は等しいが、当該TFT72がオフになると画素電極71の電位低下が生じることによるものである。これを詳しく説明すると、まずTFT72オン時、TFT72のソース側に想定されるキャパシタ(容量Cgsとする)に関しては、図2Aに示すように、
Q=Cgs・Von
なる電荷が蓄えられる。このとき、図1及び図2Aからもわかる通り、画素電極71に付設されるキャパシタ(容量Cpxとする)と前記キャパシタCgsとの接続部分は接地した状況(GNDレベル)にある。次に、TFT72がオフになると、前記接続部分がGNDレベルから切り離されることと、キャパシタCgsに蓄えられた電荷QがキャパシタCpx及びCgsに分配されることとを併せ考えると、図2Bを参照しつつ、
−Q=−Q’+Q’’
Voff−Q’/Cgs−Q’’/Cpx=0
なる関係が成立することがわかる。ここに、Q’はキャパシタCgsの電荷、Q’’はキャパシタCpxの電荷である。以上の三式からキャパシタCpxに関するQ’’に注目して、これを求めると、
Q’’=−C’・(Von−Voff)
となる。ただし、C’=Cpx・Cgs/(Cpx+Cgs)である。
【0014】
この状態において、キャパシタCpxにおける電位、すなわち当該画素電極71の電位Vは、
V=Q’’/Cpx=−(C’/Cpx)・(Von−Voff)
となり、かつVon>Voffが一般に成り立つから、V<0であることになる。すなわち、TFT72がオフになると、電位は低下するのである。
【0015】
このように、第i行ラインにおけるTFT72のオン/オフ動作に伴い、画素電極71の電位が低下すると、結果、TFT72のソース・ドレイン間に電圧がかかることになり、当該部位に電流が生じることになる。そして、このことにより画素電極71には余分な電荷が蓄積されるから、その後再び第i行ゲート線73が駆動されるときには、この余分な電荷情報が加算されて読み出されてしまい正確な情報が得られなくなるのである。なお、このような電荷の加算を、以下の説明では便宜上「第1種のオフセットノイズ」と呼ぶことにする。
【0016】
また第2点として、第i+1行目のゲート線73が駆動している状況を仮定すると、そのときには第i行ゲート線73のみならず残るすべてのゲート線73が駆動されていない状態となっている。このとき、本来ならば信号線75を介して、第i+1行ゲート線73に連なる画素電極71の有する電荷情報が残らずマルチプレクサ77に到達すべきことが期待されるが、当該信号線75は第i+1行目以外のすべてのゲート線73に接続されているから、それらへの電流流出が生じてしまうのである。そして、このようにして第i+1行目以外に流れた電流は画素電極71に余分な電荷として蓄えられることになるから、後に電荷情報を読み出そうとする際、上述と同様に、その余分な情報が加算されてしまい正確な情報が得られなくなる。なお、このような電荷の加算を、以下の説明では便宜上「第2種のオフセットノイズ」と呼ぶことにする。また、第i+1番目のゲート線に注目した上記説明が、他のすべてのゲート線が駆動する場合においても全く同様にあてはまることは明らかである。つまり、ゲート線が駆動される度に、この第2種のオフセットノイズの原因となる電荷は一般に増加していくのである。
【0017】
以上説明したことにより、結局、マルチプレクサ77を介して得られる画像に係る情報(検出信号)は、これら第1種及び第2種のオフセットノイズが各々加算された状態として得られることになる。また、これらの「量」は、上の説明から明らかなように、ゲート線の駆動方法等に依存するため、常に一定ではない(この点、発明の実施形態の項にて詳述)。そして、これら第1種及び第2種のオフセットノイズの加算分は、当該加算分単独としては暗時画像を構成することになるから、これが、先に説明した暗電流及びオフセットノイズに起因して構成される暗時画像に影響を及ぼし、結局、暗時画像を時々刻々変動させる要因となるのである。したがって、正確な画像を得ようとする場合において、暗時画像を補正しようとするときには、このような変動分も考慮にいれ、かつ対処する必要もあるのである。
【0018】
次に、「外乱要因」としての第2の要因は、ノイズ成分の発生に関するものである。上記においては、平面型放射線検出器におけるゲート線73と信号線75とが、絶縁膜の層を介して別々の層に形成されることについて説明した。ところで、このような構成から、ゲート線73及び信号線75の両者は、各々が交差する部分を必然的に有することになるが、この交差部はあかたも容量(キャパシタ)としての作用を有する部位となる。実際、信号線75の電圧を一定とした場合には、ゲート線73の電圧によってこの交差部容量に電荷が蓄積されることになる。
【0019】
このような場合において、ゲート線73の電圧が一定である、というような理想的な状態を想定すると、前記交差部に蓄積される電荷量も一定であり、特に大きな問題は生じない。ところが、現実にはゲート線73電圧にはゆらぎが生じており、前記交差部容量に蓄積される電荷が時間変動することになる。そして、この電荷の変化は、信号線75に伝わり、検出信号における「ノイズ成分」となってしまうのである。このノイズ成分は、同一のゲート線73に連なる画素電極71においては、同じ電圧の変動が加わることになるので、結果、同一のノイズ成分がマトリックス各行について固有に加わることになる。
【0020】
このノイズは、ゲート線に対応して画像上で横線状のアーチファクトとなって現われることから、一般に「横引ノイズ」と呼称される場合がある。本明細書においては、上記態様のノイズを指示するに際し、この「横引ノイズ」なる呼称を用いることとし、また、その量をn(i)と表すことにする。ここに添字iは、マトリックス第i行であることを表している。
【0021】
ところで、横引ノイズn(i)を補正する手段としては、すでに特開平9−197053号公報において提案されている。それによれば、放射線を入射させないようにしたシールド画素からの出力を、放射線が通常通り入射する非シールド画素の出力から差し引くことによって、当該横引ノイズn(i)の補正を行なうとするものである(ただし、当該公報においては「横引ノイズ」ではなく、「共通モードノイズ」と呼称している)。
【0022】
しかしながら、この手段においては、シールド画素の出力に加わるノイズ、例えば読み出した後の後段回路において加わるノイズを補正することなく、当該ノイズが見込まれたままの出力信号を非シールド画素の出力信号から差し引く方法となっているので、かえってノイズの増加をもたらし正しい情報を得難くする、という可能性があるという問題があった。
【0023】
以上説明したような外乱要因はすべて、正確な画像を得ようとする際の障害となるから、得られた検出信号をそのまま利用するのではなく、当該外乱要因の性質に応じて、正しい補正を実施しなければならない。
【0024】
ところでこの際、上記外乱要因が、放射線検出器におけるいずれの箇所で発生したものであるかの知見に基づきかつこれに応じて、当該箇所「のみ」に関するゲインノイズ(意図しない不要な増幅率)やオフセットノイズ(意図しない不要なオフセット量)等を利用し補正を行うようにすれば、正確な画像を得る目的においてより有意義である。例えば、上記した暗時画像にしても、光電変換膜内の暗電流に起因する暗時画像と増幅器76に起因するそれとは、前者が放射線検出部、後者が読み出し部、とそれぞれの発生箇所が異なり、また、これら放射線検出部及び読み出し部は各々固有のゲインノイズないしオフセットノイズ量を有しているから、これらの値を上記各部個別に得ることができれば、適切な補正に寄与し得る。しかしながら、従来においては、放射線検出部出力による信号線75のアンプ入力容量が大きいため、S/N比が劣化することによって、放射線検出部又は読み出し部のみに関するゲインノイズないしオフセットノイズを取得することは一般に困難とされていた。
【0025】
本発明の目的は、暗電流及びオフセットノイズに起因するノイズだけでなく、ゲート線印加電圧の時間変動に起因する横引きノイズを、効率的にリダクションできる放射線検出器および放射線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る放射線検出器は、マトリクス状にアレイされた複数の画素を有し、入射した放射線を検出する放射線検出部と、前記放射線検出部から検出信号を読み出す読み出し部と、前記読み出された検出信号を補正する補正部を有し、前記複数の画素は、前記放射線に対して実質的にシールドされている画素とシールドされていない画素からなり、前記補正部は、前記シールドされている画素からの信号に基づいて、前記シールドされていない画素からの信号を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
上述の構成によれば、暗電流及びオフセットノイズに起因するノイズだけでなく、ゲート線切加電圧の時間変動に起因する横引きノイズを効率的にリダクションできる放射線検出器及び、これを用いた放射線診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の放射線検出器の構成図である。
【図2】従来において、電荷読み出し時における、第1種のオフセットノイズが発生する原因となる画素電極の電位低下の発生機構を経時的に説明する図及び、従来において、電荷読み出し終了後における、第1種のオフセットノイズが発生する原因となる画素電極の電位低下の発生機構を経時的に説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態において、放射線検出器の構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態において、直接変換方式の画素電極の周辺構成を示す横断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態において、間接変換方式の画素電極の周辺構成を示す横断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態において、画素電極の周辺を拡大した平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態において、ゲート線及び信号線に関する層構造を示す横断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態において、ノイズ発生メカニズムを示す図である。
【図9】(A)から(G)は、本発明の第1実施形態において、様々な演算器ユニットの構成を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態において、ゲート線及びゲート線ドライバにより、RC回路系が構成されることを説明する図である。
【図11】本発明の第2実施形態において、横引ノイズn(i,j)を求めるために導入される関数k(j)の概要を示すグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態において、シールド画素電極が複数列設けられている場合において、横引ノイズn(i,j)を求めるために導入される関数k1(j)及びk2(j)の概要を示すグラフである。
【図13】本発明の第2実施形態において、シールド画素電極が複数列設けられている場合において、横引ノイズn(i,j)を求めるために導入される関数k3(j)及びk4(j)の概要を示すグラフである。
【図14】本発明の第3実施形態において、放射線検出器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本実施形態における放射線検出器Qは、X線の投影画像を発生するX線診断装置、X線の投影データから断面画像データ(X線吸収分布)を再構成するX線コンピュータトモグラフィ装置等のモダリティに装備される主要な構成要素である。
【0031】
この放射線検出器Qは、図3に示すように、放射線検出部Q1、信号読み出し部(読み出し部)Q2、及び画像収集部Q3により構成されている。放射線検出部Q1は、マトリックス状にアレイされた複数の画素を有する。各画素は、光電変換素子と、画素電極1とを有する。放射線が光電変換素子に入射すると、光電変換素子でその入射強度に応じた量の電荷が発生する。この電荷は、画素電極を経由して、キャパシタに蓄積される。信号読み出し部Q2は、ゲート線ドライバ2及びマルチプレクサ3を有する。画像収集部Q3は、補正データメモリユニット4を有する。
【0032】
放射線検出部Q1内の画素電極1は、光電変換膜に貼り付けられている。光電変換膜は、放射線が入射すると、その強度に応じた量の電荷を発生する。電荷は、画素電極1を介して、積層キャパシタ(蓄積素子)に蓄積される。
【0033】
上記した放射線強度(放射線情報)を電荷情報への変換方式としては、前記光電変換膜として高電界下のフォトコンダクタとして機能するアモルファスセレニウム(Se)層を用いる直接変換方式と、入射した放射線を一旦光に変換するヨウ化セシウム(CsI)結晶により構成されたシンチレーション層を用いる間接変換方式とが存在する。
【0034】
前者の直接変換方式は、例えば図4に示す構成を有する。電源100により電圧印加電極101に高電圧が印加された状態で、アモルファスセレニウム層102に放射線が入射すると、入射した放射線が電荷の生成に寄与し、電荷蓄積用電極103を通して各画素に設けられているキャパシタ104に電荷が積層される。したがって、図4に示す構成においては、放射線−電荷という直接的な変換機能を有することになる。
【0035】
一方、後者の間接変換方式は、例えば図5に示すような構成を有する。シンチレーション層105に入射した放射線が一旦光に変換される。そして変換された光は、フォトダイオード106によって、その強度に応じた量の電荷に変換される。さらに、この変換された電荷は、電荷蓄積用電極107を通して各画素のキャパシタ108に蓄積される。したがって、図5に示す構成においては、放射線−光−電荷という間接的な変換機能を有することになる。ここで、上記電荷蓄積用電極103、107とはつまり前記画素電極1に、上記キャパシタ104、108とはつまり前記蓄積キャパシタに、そして、図4におけるアモルファスセレニウム層102と図5におけるシンチレーション層105及びフォトダイオード106とはつまり変換素子に、各々対応する関係にある。
【0036】
なお、本発明に関していえば、直接方式と間接方式とのいずれを採用してもよい。また具体的な物質(セレニウム、ヨウ化セシウム)はあくまでも例示であるにすぎず、本発明はこれによって特に限定されるものではない。
【0037】
このような画素電極1は、図3に示すように複数用意され、かつそれらがマトリックス状(in matrix)に配列されている。また、これら複数の画素電極1においては、図3におけるマトリックス内の最も左の列に配置された画素電極1は放射線に対して実質的にシールドされている。この画素電極1をシールド画素電極1Aと称する。他の列の画素電極1は、シールドされていない。
【0038】
ここに「実質的にシールドされている」とは、その画素電極1Aについては「放射線が入射しない」又は「放射線が入射してもそれによって発生した電荷が画素電極に到達しないようになっている」状態が実現される構造を意味している。本発明は、その状態を実現する具体的手段に関して特にこだわりを有するものではない。すなわち、どのような手段をとるにしても、要は「実質的にシールドされている」状態が実現されればそれでよい。例えば、最も簡単な手段としては、放射線に対して遮断機能を有する鉛等で構成された「覆い」を画素電極上に設けるような場合が想定されよう。またその他、例えば図4に示した構成でいえば、マトリックス第1列の部分については電圧印加電極101を設けない形態とする等して、実質的に放射線−電荷変換機能を奪い、そのことによって、「放射線がシールドされている」状態を実現するようにしてもよい。本発明における「シールド」なる用語は、このような概念も含むものとする。
【0039】
また、本発明は、シールド画素電極1Aのポジションは、マトリックス中最も左の列であることに限定されるものでは当然にない。すなわち、シールド画素電極1Aを第何列に配置するかは基本的に自由である。具体的には例えば、マトリックス中最も右の列に位置するように配置してもよいし、さらに、シールド画素電極1Aの配置列数も一列に限られなければならない理由はないから、マトリックス中左右両方の複数列に配置するような形態としてもよい。
【0040】
ここで補正の説明に入る準備として、画素電極1のマトリックスにおける行数を表す記号として「i」を、同じく列数を表す記号として「j」を、それぞれ導入する。そして、これら複数の画素電極1及び1Aのすべては、当該マトリックスの行方向についてはゲート線G(i)(G(1),G(2),・・・,G(n))により、同じく列方向については信号線S(j)(S(1),S(2),・・・,S(n))により、電気的に接続、又は後述の薄膜トランジスタ(TFT)により接続可能な状態となっている。
【0041】
なお、以下の記述では、特に断りがない限り、すべてのゲート線G(1),G(2),・・・,G(n)を指示する場合には単に符号「G」を、同じく全ての信号線S(1),S(2),・・・,S(n)については単に符号「S」を、それぞれ使用して説明することとする。
【0042】
信号読み出し部Q2におけるゲート線ドライバ2は、ゲート線Gの駆動順序を制御し、電荷情報の秩序的な読み出しを可能とするものである。この制御は、ゲート線Gと各画素電極1及び1Aにつき付設されている蓄積キャパシタの各々との間に介装されている薄膜トランジスタ(TFT)5に対して制御信号を送り、当該TFT5のオン/オフ動作を司ることによって行われる。すなわち、TFT5は、蓄積キャパシタに備えられている電荷情報を読み出すスイッチング素子としての作用を有するものである(図6参照)。なお、ここにいう電荷情報とは、各蓄積キャパシタにおいて固有な情報であって、それぞれの画素電極1が独立に得た放射線情報(放射線強度)が各々の光電変換膜により独立に変換されたものであることは言うまでもない。ただし、シールド画素電極1Aに関する電荷情報については、それが放射線情報を変換したものでないことは言うまでもない。
【0043】
マルチプレクサ3は、前記信号線Sの各々と増幅器6を介して接続されており、当該信号線Sにより列毎に送られてくる信号を受領してその選択を行い、当該選択された信号を以下に続く回路等に対し検出信号として出力するものである。ここで増幅器6とは、図3に示すように、積分アンプ6a及びこれに並列接続されたキャパシタ6bにより構成され、各信号線Sにつき前記二次元マトリックス外に位置するよう備えられている。この増幅器6により、マトリックス内の各行に位置する画素電極1及び1Aから出力されかつ列毎に収集された出力信号が増幅されることになる。
【0044】
ちなみに、上記したゲート線G及び信号線Sは、図7に示すように、そのそれぞれが敷設される各層が、前記マトリックスを断面視した状態で、相対的に上下関係にあるように配置され構成されている。図7の場合、ゲート線G(i)の層が下に、信号線S(j)の層が上に、それぞれ位置するようになっている。ただし、両層間には、ゲート線G(i)及び信号線S(j)の短絡を防ぐため、絶縁膜の層8が備えられている。また、この積層物は、ガラスで構成された基板Bの上に設置・固着される。
【0045】
画像収集部Q3における補正データメモリユニット4は、図3に示すように、複数の補正データメモリを有する。また、補正データメモリユニット4の入力には、マルチプレクサ3の出力が接続されているものである。これは、前記画素電極1に放射線が入射していない状態において確認することのできる、前記光電変換膜において発生する暗電流や前記増幅器6のオフセットノイズ電圧等によって構成される暗時画像に係る補正データ(b、c、d)、他の補正データ(a,n)を求め、さらにそれらを単独で又は補正手順に応じた任意の組み合わせの演算結果を蓄えておくためのメモリである。
【0046】
また、補正データメモリユニット4は補正データメモリユニット4から供給される補正データに基づいて、マルチプレクサ3からの検出信号Zを補正する手段であり、その出力は、演算器ユニット11の入力にマルチプレクサ10を介して接続されている。演算器ユニット11は、後述する検出信号Zの補正手順を実現するために、複数の演算器(差分器D、乗算器M)を有する。複数の演算器の接続関係は、当該補正手順に応じてデザインされている。これらの詳細は後述する。
【0047】
そして、この補正を受けた画像データXは、表示部Q4に送られるようになっている。ここで表示部Q4とは、CRT装置等を備え、送られてくる情報を基に画像を再構成する部位である。これは一般によく知られている装置及び構成を用いるようにすればよく、当然ながら前記したCRT装置等に限定されるものではない。
【0048】
さらに、補正データメモリユニット4には、上記暗時画像に係る情報の入手のタイミングをはかるため、放射線検出部Q1ないし画素電極1における放射線入射状況を監視ないし観測するタイミングコントローラ(監視装置)12が付設されるとともに、このタイミングコントローラ12の指示に基づき補正データメモリユニット4に関する記憶動作を実質的に決定するメモリ制御器13が備えられている。なお、上記タイミングコントローラ12は、診断装置Qが運転状況にあるときには、放射線検出部Q1に対する放射線入射の存否について常にモニターを行うことを基本とする。
【0049】
ここまでに説明した放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2、そして画像収集部Q3は、本実施形態における「平面型放射線検出器」を構成するものとなるが、この放射線検出器においては、前記放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2とが、従来例とは異なり、電気的に切り離し可能な構造を有したものとなっている。ここに切り離し可能な構造とは、例えば図3に示すように、電気的スイッチ(電気的に切り離し可能とする手段)7を設けたり、また図示はしないがジャンパーピンなどを利用すればよい。
【0050】
このように、放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2とが電気的に切り離し可能となっていることにより、信号読み出し部Q2「のみ」に関する読み出し部ゲインノイズ(意図しない不要な増幅率)と読み出し部オフセットノイズ(意図しない不要なオフセット量)を得ることが可能となる。すなわち、実際に両者を切り離した状態で、図3に示したキャリブレーション信号発生器70と前記電気的スイッチ7とによって、信号読み出し部Q2にキャリブレーション(所定の入力信号)入力を入れ、その出力信号を読むようにすれば上記ゲインノイズ及びオフセットノイズを得ることが可能となる。これらの値は、正確な画像を得る際の補正量として利用されるが、この点については、後述する作用説明時に述べることとする(読み出し部ゲインノイズc(j)、読み出し部オフセットノイズd(j)として再出)。
【0051】
以上説明した構成の他、本実施形態における診断装置Qには、常態において被写体に照射する放射線を発生させる放射線発生部Q5、該放射線発生部Q5並びに上記放射線検出部Q1、信号読み出し部Q2、画像収集部Q3、及び表示部Q4を統括的に制御し、各部が連携した自動運転等の適当な処理が実施されるよう適宜指示を発する制御部Q6が別途備えられている。上記各部Q1〜Q5は通常、この制御部Q6により自動的な運転が実施されるようなされているが、以下で説明するモードの選択等、操作者OPが直接的に制御部Q6にアクセスすることが可能なようにもなっている。このため、制御部Q6にはキーボード等の端末(不図示)が備えられている。
【0052】
以下では、放射線検出器Qの補正手順について、演算器ユニット11の詳細な構成とともに説明する。
【0053】
まず、具体的な補正手順及び構成を述べる前に、本実施形態において規定される、ゲート線Gの駆動方法に関した所定数のモード(電荷情報読み出し態様)について説明する。これは、通常、あらゆる操作以前に予め定められているものであり、本実施形態においては、例えば以下に示す5つのモードが予定されている。
【0054】
モード1:ゲート線G全ラインをゲート線単位で順次かつ逐次に読み出すモード(第1の電荷情報読み出し態様)。
【0055】
モード2:ゲート線G(i)及びG(i+1)、G(i+2)及びG(i+3)というように、2ラインずつ同時に駆動(当該2ライン上のTFT5をオンに)して、ライン加算しつつ読み出すモード(第2の電荷情報読み出し態様)。これは例えば、透視検査のように、画像の解像度が多少劣化しても、フレームレートが高いことが必要な検査で見られるモードである。
【0056】
モード3:ゲート線G全nラインのうち、一部のラインのみを読み出すモード(第3の電荷情報読み出し態様)。これは、検出器全体の大きさが、検査に必要な視野の大きさより、大きい場合に用いられるモードである。また、このモードでは、モード1に対して垂直期間が短くなる。
【0057】
モード4:1ラインあたりの読み出し時間を短くしてフレームレートをあげるモード(第四の電荷情報読み出し態様)。これは、モード2と同様に、透視などで用いられるものである。また、このモードではモード1に対して水平期間が短くなる。
【0058】
モード5:放射線曝射期間(垂直ブランキング期間)を長くするモード。これは、十分な放射線量を照射することが必要な検査で用いられるモードである。また、このモードでは、モード1に対して垂直期間が長くなる。
【0059】
ここで、上の説明における「水平期間」とは、「一のゲート線G(i)が駆動されている時間」のことである。すなわち、当該一のゲート線G(i)に連なる各TFT5がオンとされ、さらにそれらに接続されているキャパシタより電荷情報が読み始められてから読み終わるまでの期間のこととなる。また、「垂直期間」とは、読み出し対象となる全てのゲート線Gに連なるキャパシタから電荷情報を読み出す時間のことである。換言すれば、マトリックス全体における(読み出し対象の)画素電極1について、その電荷情報を読み始めてから読み終わるまでの期間に垂直ブランキング時間を加算した期間のこととなる。
【0060】
この定義から、上記したモード1とモード3・4・5との関係として、垂直期間ないし水平期間について言及されている意味は明らかとなろう。例えばモード3における垂直期間がモード1におけるそれよりも短くなるというのは、モード3では一部のゲート線に関する電気情報を読むだけでよいのであるから、マトリックス全体を読み出すモード1よりも当然に垂直期間は短くなるのである。ただし、上記各モード中、モード5については、その他のモード1〜4とは少々性格が異なるものとして認識することができる。すなわち、モード5について、その垂直期間が長くなるという事情は、ゲート線Gの駆動態様の影響を受けているというよりは、端的に前記放射線発生部G5の読み出し方式の影響を受けているものと考えることができる。
【0061】
なお、上記各モードにおける水平期間及び垂直期間の相違は、発明が解決しようとする課題の項において説明した第1種のオフセットノイズ及び第2種のオフセットノイズの「量」に影響を与えるが、より詳しい説明については後述する。
【0062】
また、これらモードに関する情報は、制御部Q6における図示しないメモリに蓄えられている。操作者OPは、上記各モードから任意のものを選択しこれを前記端末から制御部Q6へ入力する。後は制御部Q6が、その選択に応じて、当該モード用に予め定められているプログラム、シーケンス、あるいはプロシージャに従い、上記各部Q1〜Q5の自動運転を実施することとなる。
【0063】
なお、上記の5つのモードのうちの一のモードが診断装置Q上で実際に運転されている態様を指し示す場合には、以下ではこれを「放射線画像収集状態」と呼ぶことにする。
【0064】
以上の前提につき、以下の説明ではモード1を選択する場合を中心とした説明を行う。なお、放射線発生部Q5より放射線が発生する機構・作用、放射線検出部Q1における画素電極1の光電変換膜において放射線強度が電荷情報に変換される作用等については、本発明の趣旨とするところではないため、その説明は省略することとする。
【0065】
いま、各画素においては、放射線の入射期間が終了し、それぞれの電荷が蓄えられているものとする。これらの電荷情報をモード1による手順で読み出すには、まず、ゲート線ドライバ2がマトリックス第1行目のゲート線G(1)を駆動する。すなわち、走査線G(1)上のTFT5がオンとされ、これに接続される画素電極1の電荷情報が読みだされる。これが終了すると(水平期間が終了すると)、次に、走査線G(1)の駆動を停止するとともに走査線G(2)の駆動を開始する。以下同様にして、走査線G(n)までの読み出しが完了(垂直期間が終了)するまでこれを繰り返す。要すれば、モード1に係る駆動方法は、一般的に、ゲート線G(i)(i=1,・・・,n)をi=1より順次一ずつ駆動し、その他のゲート線G(1),G(2),・・・,G(i−1),G(i+1),・・・,G(n)は駆動させない方法であるといえる。
【0066】
なお、このようにして読み出された電荷情報においては、発明が解決しようとする課題の項において詳述した、暗時画像に関する情報及び横引ノイズ等、共に時々刻々と変化する不要な情報が重畳されたままの状態にある。また、この電荷情報の読み出し時においては、シールド画素電極1Aからの出力も同時に得られており、これは後述する横引ノイズn(i)の算出に使用されることになる。
【0067】
さて、上記のようにしてすべての画素電極1についての電荷情報の読み出しが完了し、かつ画素電極1に放射線の入射が行われない状態(放射線画像収集状態が終了した状態)が現出することとなると、この状態は、画像収集部Q3におけるタイミングコントローラ12により即座に感知される。そして、この旨(=放射線入射なし)をメモリ制御器13が受けると、当該制御器13は前記各モードごとについての暗時画像データ収集処理を開始する。この処理は、放射線入射がない状況でモード1から5までの運転を順次実施しながら、各画素電極1に関するいわば「空読み」を行い、その結果得られた暗時画像データを、いずれのモードによって得られたものかの対応を保ちつつ、これら各モード毎に、補正データメモリユニット4内の対応するメモリに記憶させていくものである。この「空読み」の結果、光電変換膜の暗電流や増幅器6のオフセットノイズ電圧等に起因する暗時画像が得られることになる。そしてこの作業は、放射線入射がなされないうちは、モード1から5まで循環しながら繰り返し行われることになる。すなわち、モード5に関する作業が終了すれば、モード1に関する作業を開始するのである。なお、以下ではこのような運転の態様を「暗時画像収集状態」と呼ぶことにする。
【0068】
ここで、モード毎の暗時画像を、各々別々に、一の補正データメモリユニットに収集する理由について説明しておく。これは、端的にいえば、モード毎に暗時画像が異なる、又はその変動の様子が異なるからである。より詳しくは、発明が解決しようとする課題の項で述べた第1種のオフセットノイズ及び第2種のオフセットノイズが、モード毎に異なる内容ないし成分となることによる。第1種のオフセットノイズとは、上でも説明したように、要すれば、画素電極1において、TFT5のオン/オフ動作により生起される余分な電荷蓄積分であった。また、第2種のオフセットノイズとは、電荷情報読み出し時、信号線Sを通じて各ゲート線G(i)に分配される電流により、画素電極1に蓄えられる余分な電荷蓄積分であった。これらの成分は、いまの説明からも明らかなように、ゲート線Gの駆動態様(すなわち、モード)に大きく影響を受けることがわかる。具体的には、第1種のオフセットノイズの「量」は上記した「水平期間」の長さに関し、第2種のオフセットのそれは「垂直期間」の長さに関して変動する。例えば、モード1と4とを比べてみると、後者では前者に対してゲート線G(i)一本あたりの電荷情報読み出し時間(水平期間)を「短くする」のであるから、両モード間におけるTFT5のオン/オフ時間の長短の相違を当然に生じさせ、結局、両者においては、各々異なる第1種のオフセットノイズ量を有することとなる。また、モード1と5とを比べてみると、上述したように、後者では垂直期間が長くなるから、両者における「一垂直期間」内に、マトリックス全体に蓄えられる第2種のオフセットノイズ量が異なることとなるのは容易に推測がつく。なお、上において、モード5の垂直期間が長くなる事情は、他のモード1〜4のそれとは若干異なり、放射線発生部Q5の読み出し方式の影響を受けている、ということについての説明を行ったが、だからといって、そのことが、本発明における「読み出し方式」なる用語の概念外にある、ということを意味しないのは当然のことである。
【0069】
このように、モード毎に固有の暗時画像が構成されることになるから、自由なモード切り替え運転の実施を保証しつつ暗時画像成分の有効なリダクションをなすためには、各モードに固有な暗時画像を正確に知っていなければならない。これが、モード毎の暗時画像を、各々別々に一の補正データメモリユニットに収集する理由である。
【0070】
さて、この「暗時画像収集状態」での運転中、操作者OPが制御部Q6端末により放射線照射の再開を指示する等、何らかの事由により、再び画素電極1に放射線が入射されるような状態となったことをタイミングコントローラ12が感知すれば、暗時画像の収集作業は直ちに停止される。また、このように暗時画像収集作業が途中で停止されるときには、直前まで収集が行われていたモードを示すメモリ制御器13内に設置された図示しないフラグ(読み出し方式記憶手段)が立てられる。例えば、モード3に関する暗時画像収集時にその記憶動作が停止されれば、当該モード3を示すフラグが立てられるのである。
【0071】
このフラグの意義は次のようなものである。すなわち、放射線が入射されていない期間の長さあるいは放射線入射が再開される時間は、被写体のセッティング時間等が不定なため、一般に決まっていない。このため、ある一のモードに関する暗時画像データを収集している最中に、不意に、その収集作業を停止しなければならないという事態は極めて一般的に想定される。このような事情の下、暗時画像収集最中に放射線照射が再開されたときに現に暗時画像収集を行っているモードのフラグを立てる(あるいは収集中、既に立てておく)という処置をとれば、次に放射線照射が止んだときには、その先に立てたフラグに対応する当該モードから暗時画像収集を再開することが可能となる。結局、このことにより、無駄な収集作業を排除することができ、また、診断装置Qの使用状況に時々刻々対応した、モード1から5に関する暗時画像データが、補正データメモリユニット4において常に用意される状況を現出することができるのである。
【0072】
ちなみに、診断装置Qの立ち上げ直後のような全くの初期状態時においては、まず「暗時画像収集状態」での運転が行われ、「放射線画像収集状態」に入るまではそれが継続されるようになっていればよい。
【0073】
なお、各モードについて行われた暗時画像収集は、当該各モードにつき複数回分収集された暗時画像の加算平均値をとり、これを補正データメモリユニット4に蓄えておくようにしておけば、より質の高い暗時画像データを手にいれることができる。つまり、一のモードにつき複数回繰り返し収集された暗時画像の平均値をとれば、そのノイズを低減することができるということである。
【0074】
また、暗時画像収集は、上記のように、放射線未照射時に自動的に行われるようになっているのが便宜ではあるが、場合によっては、制御部Q6における端末を操作して、任意の時間に暗時画像収集を行うような、手動作業が行えるようになっていてもよい。
【0075】
以上までにおいて説明したように、「放射線画像収集状態」時に画素電極1(含むシールド画素電極1A)からは電荷情報が読み出され、また、「暗時画像収集状態」時に補正データメモリユニット4には各モードに対応した暗時画像が蓄えられている状態になると、次に、正確な画像情報を得るための実際の補正作業を行うことになる。またこのとき、上記電荷情報及び暗時画像に加えて、信号読み出し部Q2「のみ」に関する読み出し部ゲインノイズ及び読み出し部オフセットノイズを、上述したように、放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2とを電気的に分離することによって予め求めておき、これらの値も当該補正に使用する。
【0076】
さらに、i行j列における画素電極1の本来の(正確な)出力をX(i,j)、同画素電極1のゲインノイズ(検出部ゲインノイズ)成分をa(i,j)、同画素電極1における前記光電変換膜に発生している暗電流を含めた検出部オフセットノイズをb(i,j)、信号読み出し部Q2における読み出し部ゲインノイズをc(j)、及び読み出し部オフセットノイズをd(j)、とそれぞれ定義する。また、発明が解決しようとする課題の項において説明した「横引ノイズn(i)」をここで改めて導入する。
【0077】
なお、これらのうち読み出し部ゲインノイズc(j)及び読み出し部オフセットノイズd(j)は、上で説明したように、ここにおいて既知であるので、以下ではそのように扱う。また、上記横引ノイズn(i)が発生する理由及びその性質等については、上において既に述べたが、ここで改めて簡単に説明すると、図7に示すようなゲート線G(i)と信号線S(j)との交差部において仮想的に構成される容量に蓄えられた電荷が横引ノイズn(i)の成分となるのであった。また、それは一のゲート線G(i)の電圧変動によって時々刻々変化するとともに、まさしくそのためにマトリックスの「各行について固有な」ノイズ成分となるのであった。
【0078】
以上の準備において導入された記号等を使用すると、放射線検出器Qが直接的に入手する検出信号Z(i,j)については、図8に示すように、次の(A)式で表現することができる。
(i,j)=c(j)・(a(i,j)・X(i,j)+b(i,j)+n(i))+d(j)…(A)
a:検出部Q1のゲインノイズ、画素(i,j)ごとに固有値
b:検出部Q1のオフセット、画素(i,j)ごとに固有値
c:読み出し部Q2のゲインノイズ、信号線(j)ごとに固有値
d:読み出し部Q2のオフセットノイズ、信号線(j)ごとに固有値
n:横引きノイズ、ゲート線(i)ごとに時間変動値
X:入射放射線強度に応じた真値
【0079】
すなわち、本来得たい真の検出信号X(i,j)は、画素電極1のゲインノイズa(i,j)と光電変換膜における暗電流を含めたオフセットノイズb(i,j)の影響を受け、かつ横引ノイズn(i)が加算されて、信号線S(j)を介し、マトリックス外に読み出される。この後、増幅器6を通過する際に、その読み出し部ゲインノイズc(j)が全体にかかり、また読み出し部オフセットノイズd(j)が加算される。このように構成されたZ(i,j)が、何らの補正をかけない、読み出されたままのみかけの画像情報ということになる。以上のことから、本補正の目的は、c(j)、a(i,j)、b(i,j)、n(i)、d(j)等のばらつき成分をリダクションし、α・X(i,j)+β(ただし、α、βはゲート線、温度、収集モードに依存しない)を求めることにある。
【0080】
まず、上記した暗時画像データの収集結果について(A)式上の評価を行う。なお、暗時画像データとしては、複数枚収集しそれらの加算平均をとったものを考えるものとする。また、本実施形態においてはモード1が前提されていたから、いま念頭におかれるのは、当該モード1に関する暗時画像データであり、またその加算平均が記録されているのは当該モード1に関する一の補正データメモリユニット4となることを、念のため補足しておく。
【0081】
さて、(A)式において、暗時画像データを想定するときには、放射線の入射がないことからX(i,j)=0となり、また、データは加算平均されているから横引ノイズは相殺されてn(i)=0となると考えてよい。すなわち、
(i,j)=c(j)・b(i,j)+d(j)
が得られる。言い換えれば、これがモード1に関する一の補正データメモリユニット4が蓄えているデータということになる。
【0082】
次に、被写体を介入させず、放射線を直接的に検出器に照射して得られる画像データ(以下、「直接放射線画像データ(直接放射線情報)」という)についての評価を行う。なお、この直接放射線画像データは、「放射線画像収集状態」以前に、予め収集しておくものとし、また、これに関しても、暗時画像収集と同様、その画像は複数枚収集しかつそれらを加算平均したものを補正用に使用する。
【0083】
このとき得られる信号Z(i,j)は、加算平均処理によりn(i)=0であることに注意して、(A)式を用いると、
(i,j)=c(j)・a(i,j)・X(i,j)+c(j)・b(i,j)+d(j)
となる。ここで、X(i,j)は画素電極1への放射線直接入射であることから理論的に求まり、またc(j)・b(i,j)+d(j)は上述した補正データメモリユニット4を参照すればわかるから、結局、c(j)・a(i,j)が求まる。すなわち、i行j例における画素電極1の検出部ゲインノイズa(i,j)と、j列に存在する増幅器6の読み出し部ゲインノイズc(j)との積である、いわば「トータルゲインノイズ」が求まることになる。
【0084】
そして次に、横引ノイズn(i)の値を、放射線検出部Q1に設けられたシールド画素電極1Aからの出力を利用して求める。ここで当該出力は、上述したように、放射線画像収集状態後の電荷情報の読み出し時において、既に取得されているものである。まず、シールド画素電極1Aには放射線が照射されないからX(i,j)=0、すなわち本実施形態ではX(i,1)=0(図3参照)である。これを(A)式に代入すると、
(i,1)=c(1)・n(i)+c(1)・b(i,1)+d(1)…(B)
となる。ここで、c(1)・b(i,1)+d(1)はマトリックス第i行に存在するシールド画素電極1Aから出力された電荷情報を表しており、その値はわかっているから、上式によって、ある特定の画像における第i行の横引ノイズn(i)は求まることになる。
【0085】
すなわち、横引ノイズn(i)を得るには、(C)式から
(Z(i,1)−c(1)・b(i,1)+d(1))/c(1)
なる演算を行えばよい。ここで、c(1)については、後述するように、これをc(j)(なお、j≠1)とは異なるように設定することで、n(i)をさらに精度よく求めることができる。
【0086】
なお、このとき、上式中のZ(i,1)及びc(1)・b(i,1)+d(1)は、共に「放射線の入射がない」という意味において同じ立場にあるものであるから、一見、同値が得られる(Z(i,1)=c(1)・b(i,1)+d(1))こととなり、n(i)が有効に求まらないという予見を与えそうであるが、それは正しくない。
【0087】
というのは、c(1)・b(i,1)+d(1)は、あくまでも当該シールド画素電極1Aにおける「暗時画像データ」であり、その収集は、上記したように、「暗時画像収集状態」、すなわち装置立上後、放射線入射以前、あるいは放射線検出部Q1に放射線入射がなされていない「合間」に実施されるものであって、その成分は、上記した通り、光電変換膜の暗電流を含めたオフセットからなるものである一方、Z(i,1)の収集は、「放射線画像収集状態」が終了し、モード1により各画素電極1から電荷情報が読み出されているときに実施されるものであるから、その成分は、ゲート線Gの駆動の影響、具体的にはその電圧のゆらぎにより発生する横引ノイズni成分を含んだものとしてのシールド画素電極1Aからの出力となるからである。したがって、両者は基本的に性質が異なるものであって、一般にZ(i,1)−c(1)・b(i,1)+d(1)≠0が成立するから、n(i)は有効に求まるのである。
【0088】
ここまでにおいて、j列に存在する積分器6の読み出し部ゲインノイズc(j)、そのオフセットノイズd(j)、トータルゲインノイズc(j)・a(i,j)、暗時画像データc(j)、b(i,j)+d(j)、及び横引ノイズn(i)が判明する。さらに、ゲインノイズa(i,j)単独の値は、読み出し部ゲインノイズc(j)等を得るのと同様にして、放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2とを電気的に切り離した後、アレイテスタによって各画素電極1に所定の電荷(所定の入力信号)を注入し、その電荷を読み出すことによって予め取得しておくことができる。また、トータルゲインノイズc(j)・a(i,j)は既に求まっているのであるから、このc(j)・a(i,j)を、やはり既に求まっている読み出し部ゲインノイズc(j)で除算することにより、画素電極ゲインノイズa(i,j)を求めるようにしてよいことは勿論である。
【0089】
以上のようにして、検出部ゲインノイズa(i,j)、検出部オフセットノイズb(i,j)、読み出し部ゲインノイズc(j)、読み出し部オフセットノイズd(j)、及び横引ノイズn(i)が求められる。これら補正データは、それぞれ単独で又は補正手順に応じた演算が施された状態でメモリユニット4に記憶される。
【0090】
次に、補正手順及び演算器ユニット11の構成について説明する。
【0091】
まず、(A)式を、観測された検出信号Z(i,j)に対する、真に求めたい検出信号X(i,j)の関係式に変形すると、次の通りである。
(i,j)={(Z(i,j)−d(j))/c(j)−b(i,j)−n(i)}/a(i,j)…(1)
(i,j)={(Z(i,j)−(b(i,j)・c(j)+d(j)))/c(j)−n(i)}/a(i,j)…(2)
(i,j)={Z(i,j)−(b(i,j)・c(j)+d(j))−n(i)・c(j)}/(a(i,j)・c(j))…(3)
(i,j)=(Z(i,j)−d(j))/(a(i,j)・c(j))−b(i,j)/a(i,j)−n(i)/a(i,j)…(4)
(i,j)=(Z(i,j)−d(j)−b(i,j)・c(j))/(a(i,j)・c(j))−n(i)/a(i,j)…(5)
(i,j)=Z(i,j)/(a(i,j)・c(j))−d(j)/(a(i,j)・c(j))−b(i,j)/a(i,j)−n(i)/a(i,j)…(6)
(i,j)={(Z(i,j)/c(j))−(d(j)/c(j)+b(i,j))−n(i)}/a(i,j)…(7)
【0092】
補正手順及び演算器ユニット11の構成デザインは、(1)−(7)の補正式のいずれかの式に従って決定される。
【0093】
ここで、補正式((1)−(7))各々の補正手順及び補正式((1)−(7))各々に対応する演算器ユニット11の構成について説明する。
【0094】
補正式(1)によると、検出信号Zは、まず、差分器D1で補正値dを差分される。そして、その差分器D1の出力は、乗算器M1で1/cを乗算され、差分器D2でbを差分され、そして差分器D3でnを差分され、最後に乗算器M2で1/aを乗算される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された1/c、1/aが記憶されている。なお、差分器D2によるbの差分処理は、差分器D3によるnの差分処理よりも後に実行してもよい。
【0095】
補正式(2)によると、検出信号Zは、まず、差分器D4で補正値(b・c+d)を差分される。そして、その差分器D4の出力は、乗算器M3で1/cを乗算され、そして差分器D5でnを差分され、最後に乗算器M4で1/aを乗算される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された(b・c+d)、1/c、及び1/aが記憶されている。
【0096】
補正式(3)によると、検出信号Zは、まず、差分器D6で補正値(b・c+d)を差分される。そして、その差分器D6の出力は、乗算器M5で乗算されたnとcとの乗算結果を差分器D7で差分され、最後に乗算器M6で1/(a・c)を乗算される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された(b・c+d)、1/(a・c)が記憶されている。なお、差分器D6による補正値(b・c+d)の差分処理は、差分器D7による(n・c)の差分処理の後に実行してもよい。
【0097】
補正式(4)によると、検出信号Zは、まず、差分器D8で補正値dを差分される。そして、その差分器D8の出力は、乗算器M7で1/(a・c)を乗算され、差分器D9でb/aを差分され、そして乗算器M8で乗算されたnと1/aとの乗算結果を差分器D10で差分される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された1/(a・c)、b/a、1/aが記憶されている。なお、差分器D9によるb/aの差分処理は、差分器D10による(n/a)の差分処理よりも後に実行してもよい。
【0098】
補正式(5)によると、検出信号Zは、まず、差分器D11で補正値(b・c+d)を差分される。そして、その差分器D11の出力は、乗算器M9で1/(a・c)を乗算され、最後に、乗算器M10で乗算されたnと1/aとの乗算結果を差分器D12で差分される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された(b・c+d)、1/(a・c)、1/aが記憶されている。
【0099】
補正式(6)によると、検出信号Zは、まず、乗算器M11で1/(a・c)を乗算され、そして差分器D13で補正値(d/(a・c)+b/a)を差分され、最後に、乗算器M12で乗算されたnと1/aとの乗算結果を差分器D14で差分される。この場合、メモリユニット4には、予め計算された(d/(a・c)+b/a)、1/(a・c)、1/aが記憶されている。なお、差分器D13による補正値(d/(a・c)+b/a)の差分処理は、差分器D14による(n/a)の差分処理よりも後に実行してもよい。
【0100】
補正式(7)によると、検出信号Zは、先ず、乗算器M12で1/cを乗算され、そして差分器D15で補正値(d/c+b)を差分され、次に差分器D16でnを差分され、最後に乗算器M13で1/aが乗算される。
【0101】
いずれの補正式を採用しても、真の値Xを導くことはできる。しかし、発明者らは、必要なメモリの数、必要な演算器ユニットの数、演算ステップの数及び演算回数という観点から実装するのに最適な補正式を選択した。
【0102】
その結果、最も適当なのは、補正式(2)及び(7)であり、次に適当なのは、(1)式、及び(3)式であり、更に次に適当なのは、(5)式である。
【0103】
ここで、式(2)、(1)式、及び(3)式を選択した最大の理由は、読み出し部ゲインノイズcを使った演算が、検出部ゲインノイズaを使った演算よりも先に又は同時に実行するとともに、読み出し部ゲインノイズcを使った演算が、検出部オフセットノイズbを使った演算よりも先に又は同時に実行することにある。つまり、読み出し部ゲインノイズcを使った演算が、検出部のゲインノイズa及びオフセットノイズbを使った演算よりも先に又は同時に実行することである。これにより、演算回数を大幅に減らすことを実現する。その理由は、検出部のゲインノイズa及びオフセットノイズbは、画素(i,j)ごとに固有値を示すので、その演算回数は、i×jになるが、読み出し部ゲインノイズcは信号線Sごとに固有値を示すので、その演算回数はjになることである。
【0104】
また、読み出し部ゲインノイズcを使った演算が、横引ノイズnを使った演算よりも先に又は同時に実行することも重要な条件である。この条件も同様に演算回数の減少に寄与する。
【0105】
また、演算式(2)及び(7)には、nを求める演算(n=(Z(i,1)−c(1)・b(i,1)+d(1))/c(1))が非シールド画素と同時にできるというメリットもある。
【0106】
また、即時的に出力される横引ノイズnは、できるだけそのままで扱う、つまり他のデータと演算しないで、そのオリジナル値のままで差分演算に供することが、演算速度向上のためには好ましい。
【0107】
なお、上記した真の値X(i,j)を求める作業ないし補正方法においては、常に、その直前において収集された最新の暗時画像情報c(j)・b(i,j)+d(j)を利用するのが好ましい。上で述べた実施形態では、補正データメモリユニット4において、当該最新のc(j)・b(i,j)+d(j)は常に蓄えられているのであるから、今述べた「好ましい」処理を実施するのは容易である。
【0108】
以上説明したように、本実施形態に係る放射線検出器ないし補正方法によれば、従来において、放射線検出器Qの運転持続時間等によりその装置温度が変化する等、時々刻々変化する現実の状況に対応したリアルタイムな補正が不能であったところ、常に適切な暗時画像の差し引きないし補正を実施することが可能となり、もって正確な画像の構成に寄与することとなる。
【0109】
また、補正に際し必要な読み出し部ゲインノイズc(j)等の取得は、従来においては、検出部出力による信号線アンプ入力容量が大きいためS/Nが劣化することにより、困難とされていたところ、本実施形態においては、放射線検出部Q1及び信号読み出し部Q2が電気的に切り離し可能に構成されていたことにより、その取得が容易に可能となっており、もって正確な補正の実施の大きな寄与をなしていると言うことができる。
【0110】
(第2実施形態)
以下では、本発明に係る第2実施形態について説明する。
【0111】
本第2実施形態は、ゲート線Gに加わる電圧変動の発生態様について適切な配慮をなし、より正確な横引ノイズn(i)を求めようとするものである。
【0112】
横引ノイズn(i)は、上で何度か指摘したように、ゲート線Gに加わる電圧変動及びゲート線Gと信号線Sの交差部容量の存在により生じるが、この電圧変動は、当該ゲート線Gを駆動するゲート線ドライバ2によって発生するものである。ゲート線ドライバ2は、図3を用いて説明したように、各々のゲート線G(i)の左端に接続されているが、この回路系は、ゲート線Gそれ自体で抵抗を持っていること、また前記交差部容量が存在することに注目すると、図10に示すように、それらゲート線G(i)自身の抵抗及び交差部容量CXからなるRC回路を形成しているものと見なすことができる。
【0113】
ところで、この図10に示すような回路系は、いわゆるローパスフィルタの作用を有するものであることがわかる。すなわち、上記したゲート線ドライバ2において発生した電圧変動がゲート線Gの反対側に伝達する過程においては、その高周波成分が減衰されることになる。したがって、横引ノイズn(i)は、厳密にいえば、ゲート線ドライバ2からの距離に応じて大きさが変わる、すなわちマトリックスの行に対して固有であるだけでなく、列数jの関数でもあることになる。よって、本第2実施形態においては、特別に、横引ノイズを表す記号として「n(i,j)」を用いることとする。
【0114】
本第2実施形態では、この横引ノイズn(i,j)の上記性質に応じて、(4)式の演算を実施する際に適当な補償を加えるものである。すなわち、シールド画素電極1Aからの出力に基づき(3)式を利用して求められた横引ノイズn(i)に、ゲート線ドライバ2からの距離によって変化する関数k(j)を乗じた量n(i)・k(j)を、横引ノイズn(i,j)とし(n(i,j)=n(i)・k(i))、これを(4)式のn(i)の代わりに使用するのである。ここで、関数k(j)は、図11に示すように、ゲート線ドライバ2から遠く(配列jが大きく)なると、単調に減少するような関係である。そして、この関数k(j)は、放射線検出部Q1の製造時以前に測定する等して予め知っておき、図3に示したメモリ16に保持しておくようにすればよい。
【0115】
このことにより、横引ノイズn(i,j)成分の評価はより正確となり、正確な画像情報、つまりX(i,j)を得る上で、非常に効果的となる。
【0116】
ところで、放射線検出部Q1の装置構成に関する説明時において既に述べたように、シールド画素電極1Aを放射線検出部の両端に各々複数列設けるような場合も本発明の範囲内にあるところであるが、このような場合についての横引ノイズの求め方を、上で横引ノイズn(i,j)を導入したことに関連して説明しておく。
【0117】
いま、画素電極1のマトリックス列数が全部でn列あるものとし、j=1及びj=mにおいてシールド画素電極1Aが設けられているものとする。したがって、これら各列から得られた第i行目の横引ノイズは、それぞれ(3)式を利用することにより、n(I,1)、n(i,m)が求められる(前者がZ(i,1)=E(i,1)+c(1)・n(i,1)、後者がZ(i,m)=E(i,m)+c(m)・n(i,m)から求められる)。
【0118】
これらを用いて、一般にi行j列目の横引ノイズn(i,j)は、例えば次の式により求められる。
(i,j)=n(I,1)・k1(j)+n(i,m)・k2(j)
【0119】
ここに、k1(i)、k2(j)は、例えば図12に示すように、k1(1)=1、k1(m)=0、k2(1)=0、k2(m)=1なる条件を満たす単調減少関数及び単調増加関数であり、上記したk(j)と同様、放射線検出部Q1製造時に予め知っておくことができる。
【0120】
また、ゲート走査線駆動部2が、マトリックスの左側だけでなく、右側にも配置され、一つのゲート走査線Gを、左右両側から駆動するようなX線検出部Q1において、やはりj=1及びj=mにシールド画素電極1Aが設けられている場合では、例えば、
nij=ni,1・k3(j)+ni,m・k4(j)
として横引ノイズnijを求めることができる。ただし、ここにk3(j)、k4(j)は、例えば図13に示すように、k3(j)についてはjが増加すると減少する非線形に増加する単調関数、k4(j)についてはk4(j)=k3(m−j)なる関係を満たす関数である。これらもやはりX線検出部Q1製造時に予め知っておくことができる。
【0121】
(第3実施形態)
以下では本発明の第3の実施形態について説明する。
【0122】
本第3実施形態では、図14に示すように、図3に示す装置構成との対比から、増幅器6の構成に関する点と倍率補正差分器(倍率補正手段)15が設けられている点と、が各々異なるものとなっている。以下では、これらの関する詳細な説明、並びにその作用及び効果について説明する。
【0123】
本第3実施形態における増幅器6は、図14に示すように、上記シールド画素電極1Aが配置される信号線S(1)上に設置の増幅器6Aとその他の信号線S(2),・・・,S(n)に設置の増幅器6とで、その構成が若干異なっている。すなわち、前者の増幅器6Aにおいては、そのキャパシタ6Abの容量が、後者の増幅器6のそれよりも小さく、すなわち図14によれば、CA<CPj(j=2,・・・,n)とされているのである。ここに、CP(j)とは、2、3、・・・、n列目に存在する各増幅器6のキャパシタ6b容量であり、厳密にいえば、これらは各列毎に異なる数値を持つことから、各々に対応して変数を割り当てたものである。
【0124】
一般に、図14に示すような増幅器6の構成において、キャパシタ容量を小さくするということは、その増幅率を大きくすることが知られているから、この場合においては、前者の増幅器6Aの方が後者の増幅器6よりも増幅率が大きくなることになる。
【0125】
一方、倍率補正差分器14は、図15に示すように、シールド画素電極1Aの出力信号に、増幅器6のキャパシタ容量CPに対する増幅器6Aのキャパシタ容量CAの比(CA/CP)を、積算器15aにおいて積算し(増倍率補正)、その積算値を、差分器15bにおいて非シールド画素電極1の出力信号から差し引く。ここに、図14に示す積算器15aにおいて、キャパシタ容量の比として表されている「CA/C」の分母Cは、各々のCP(j)の各々を記号「C」で一括して表しているものとみてもよいし、また場合によっては、CP(j)の算術平均値、つまり、C=(CP(2)+・・・+CP(n))/(n−1)を表しているものとみてもよい。いずれを選択するかは基本的に自由である。そして、この倍率補正差分器15からの出力は、図14に示すように、差分器9を介して表示部Q4へと伝わるようになっている。
【0126】
このような処置がとられることは以下の背景による。まず一般に、積分アンプ6a及びキャパシタ6bからなるような増幅器6の構成において、キャパシタ6b容量を小さくすることは、上記したように、その増幅率を増大させることになるから、微少な電荷入力であっても出力電圧が大きくなり、増幅器6の出力が飽和しやすくなる。これは回路設計上の制約条件となる。したがって、非シールド画素電極1では、放射線により発生する最大電荷量と上記制約条件により、自ずと最適なキャパシタ容量(すなわち、CP(j))が決められることになる。一方、シールド画素電極1Aには放射線による電荷が発生しないので、そこに蓄えられる電荷量は、高々各種のリーク電流が積分された程度の微少な量でしかない。したがって、増幅器6出力が簡単に飽和しないことを考慮して、増幅器6Aのキャパシタ6Abの容量を、非シールド画素電極1のそれに比べて小さく(すなわち、CA<CP(j))することができる。
【0127】
このことにより、本第3実施形態においては次に示す利点が得られることになる。すなわち、増幅器6A以降得られるシールド画素電極1Aに関する検出信号は、その後段に存する回路によって、ほとんどノイズの影響を受けないこととなるのである。換言すれば、増幅率が大きい分、微小なノイズが荷担しても、それは無視し得るものとなるということである。結局、こうして得られた検出信号は、ほとんどノイズを含まないものとみなせることになる。
【0128】
そして、実際に得ようとする出力については、上記キャパシタ容量の相違に基づき、CA/Cなる係数を乗算して増倍率補正を行ったシールド画素電極1Aからの出力と、非シールド画素電極1からの出力との差分をとったものをあてればよい。なお、図14においては、差分器15bを通過した検出信号は、さらに差分器9を通過し、ここにおいて暗時画像データとの差分をもとられるようになっている。そして、当該差分器9を通過した信号が、最終的に表示部Q4へと入力される。
【0129】
以上のようにして、本第3実施形態によれば、シールド画素電極1Aと非シールド画素電極1の各々から読み出される電荷情報に対して異なる増幅を行う、という手段により、横引ノイズn(i)に係る補正を実施する際に、従来においてはかえってノイズの増幅を生じさせるおそれのあったところ、そのような不具合を招くことなく、当該補正を常に適切に実施し得ることになる。このことは、当然ながら、本第3実施形態における放射線検出器Qにおける正確な画像構成に寄与することとなる。
【0130】
また、本第3実施形態に関しては次のようなこともいえる。すなわち、上記した最初の実施形態において、横引ノイズn(i)の補正を行う際に、(3)式を当該n(i)について解く際に、(Z(i,1)−E(i,1))なる差分演算を実施していたところ、本第3実施形態における構成を図3において適用し、Z(I,1)−(CA/CP(j))・E(i,1)とするのである。このような形態によれば、横引ノイズn(i)の値は、上記にもましてより正確に求まることになる。なお、上で述べた「c1については、c(j)(j≠1)とは異なるように設定することにより、n(i)をさらに精度よく求めることができる」ということは、まさしく今述べたことに対応する事情を考慮してのことである(キャパシタ容量を変更し増幅率を変更するということは、ゲインノイズを変更するということに他ならない)。
【0131】
以下では本発明に関する事項であって、上記実施形態においては述べることのできなかった事項について説明する。
【0132】
まず上記した実施形態においては、モード1に関する説明を中心として行ったが、その他のモード1〜5に則って診断装置Qを運転する場合でも、上記記載と同様な処理がなされることになる。その際には、使用する補正データメモリユニット4として当該各モードに対応するものを使用するようにすればよい。この場合においても、上記各モード2〜5について対応する暗時画像が、各々別々に、複数の補正データメモリユニット4の各々に記憶されるようになっていたから、上記した効果を同様に亨受することができることは言うまでもない。
【0133】
また、上記実施形態における各「モード」は、専ら「ゲート線の駆動態様」ないし「電荷情報の読み出し態様」がそれに該当するものとしての説明を行ったが、場合によっては、放射線検出器Qの運転状況に応じて変化する「装置温度」について、これを適当な段階に区分けし、当該段階ごとに対応する暗時画像データを複数の補正データメモリユニット4の各々に記憶させておくような形態も考えることができる。この場合においては、例えば診断装置Qに関して何らかの温度検知器を備えておき、その出力に対応するような暗時画像を前記複数の補正データメモリユニット4から読み出して、これを補正に使用するということになろう。
【0134】
さらに、モードの数が上記実施形態では5つに限定されていたが、このことが本発明を特に限定する事由とならないことは言うまでもない。幾つのモードを予定するか、又はどの様なモードを選択するかは、基本的に自由である。これに関連して、例えば操作者OPが制御部Q6を介し、上記モード1〜5のいずれにも該当しない好みのモードを、任意にかつ新たに設定するような場合も当然に考えられるが、このような場合にあっても、当該設定されたモードに関して、それに対応する暗時画像を収集しこれを補正に利用する、という本発明の基本に関しては、上で説明した実施形態と何ら変わるところはない。
【0135】
また、読み出し部ゲインノイズcj等の取得について若干補足しておくと、上記においては、信号読み出し部Q2と放射線検出部Q1とを電気的に分離することにより、読み出し部ゲインノイズcj及び読み出し部オフセットノイズdjを得るようにしていたが、場合によっては、通常見られるように、TAB等で固定接続する信号読み出し部Q2を備える放射線検出器を利用し、読み出し部ゲインノイズcj及び読み出し部オフセットノイズdjの取得を、信号読み出し部Q2の固定接続前におけるその製造段階(初期製造時)において、当該信号読み出し部Q2のみの単体キャリブレーションを実施することにより、予め得ておくような形態をとってもよい。
【0136】
さらに、このような手法による信号読み出し部Q2のみの読み出し部ゲインノイズcj及び読み出し部オフセットd(j)を得るキャリブレーションは、製造時に実施するだけでなく、使用開始時の定期検査等においても実施し、それらの値c(j)等の更新を図るようにするのも適当である。なお、このような場合において、当該c(j)等の更新(つまり、取得)は、放射線検出部Q1と信号読み出し部Q2とを切り離さないで実施することになるため、信号読み出し部Q2のアンプの入力容量が増大し、結果、測定精度の低下という欠点を伴うこととなるが、当該欠点は、複数回の測定結果を平均することにより、その精度を保持することが容易にできる。また、このとき、キャリブレーション入力による放射線検出部Q1への影響を極力抑えるため、ゲート線Q全ラインの駆動は停止して、信号読み出し部Q2のみに入力がなされるようにするとよい。
【0137】
加えて言えば、TAB等で固定接続するような形態とするのではなく、信号読み出し部Q2と放射線検出部Q1との間において、コネクタ等、物理的に切り離し可能な構造を備えるようにしておき、読み出し部ゲインノイズc(j)及び読み出し部オフセットノイズd(j)の取得は、その「物理的な切り離し」をした後、上記キャリブレーションを実施することによってなされるようにしてもよい。
【0138】
また、暗時画像データについて補足すると、その変動要因として上で指摘した第1種及び第2種のオフセットノイズは、一般に、放射線照射量に依存する部分と依存しない部分との両成分からなるものである。放射線依存成分とは照射された放射線量に応じて画素電極1に蓄積された電荷と信号線Sとの電位差に応じて定まり、放射線非依存成分とは画素電極1の電荷情報が読み出された後に当該画素電極1と信号線Sとの電位差に応じて定まるものである。この区分を前提として、特に、本実施形態における放射線検出器Qを透視検査やDA撮影と呼ばれる血管造影撮影に用いる場合を想定すると、これらにおいては放射線信号量がそもそも小さいため、該放射線信号量による画素電極1の電位変化はほぼ無視することができるから、結果、上記放射線依存成分は小さなものとなる、上記した暗時画像補正にて、特に有利な条件の下かつ実用上問題なく、当該補正の効果を得ることができる。
【0139】
また、本発明は、本明細書における特許請求の範囲から明らかなように、便宜上、大きく三種の発明が存在するものとして認識することができる。すなわち、第1の発明は放射線検出部Q1及び読み出し部Q2に関する各々のゲインノイズ及びオフセット取得を可能とする構成及び方法に関するもの、第2の発明は横引ノイズの補正ないし増幅器の構成に関するもの、第3の発明は複数の補正データメモリユニットを有すること及びその補正方法に関するもの、である。上の説明は、これら三種の発明を適宜組み合わせることにより、特に好ましいものとなる三形態の提示ということができるが、これらの発明は、本質的に、各々独立に実施する又は三種のうち任意の二つを組み合わせて実施する等が実現できるものである。そして、そのような場合における実施形態は、上記した説明からも実現することは容易で、かつ実現するに十分な開示がなされているものと考える。したがって、本実施形態においてこれ以上詳しい説明を行うことはしないが、要すれば、これら三種の発明が別々に実施されるような形態等であっても、それらは当然に本発明の概念範囲内にあるということを、念のため付言しておく。
【0140】
なお、本実施形態においては、画素電極1の数について特に指定する旨の記述をなさなかったが、本発明の趣旨を鑑みれば明らかなとおり、当該画素電極1の数は自由である。また、上ではゲート線G(n)及び信号線S(n)という記述をなしたところがあるが、これはマトリックスが正方形状でなけれなばならない、というような事を意味するものではない。一般的には、むしろ長方形状マトリックスとなる場合も多く見られることは周知の事実であり、したがって、上記「n」なる記号は、単に「複数ある」という程度の意味のみを有するものと認識されたい。
【符号の説明】
【0141】
1 画素電極(非シールド画素電極をも意味する)
100 電源
101 電圧印加電極
102 セレニウム層(変換素子)
103 電荷蓄積用電極(画素電極)
104 コンデンサ(蓄積素子)
105 シンチレーション層(変換素子)
106 フォトダイオード
107 電荷蓄積用電源(画素電極)
108 コンデンサ(蓄積素子)
1A シールド画素電極
2 ゲート走査線駆動部(ゲート走査線駆動手段)
3 マルチプレクサ
4 暗時画像メモリ
5 薄膜トランジスタ(スイッチング素子)
6、6A 増幅器
6a、6Aa 積分アンプ
6b、6Ab コンデンサ
C、CA コンデンサ容量
7 電気的スイッチ(電気的に切り離し可能とする手段)
70 キャリブレーション信号発生器
8 絶縁膜の層
9 差分器(差分手段)
10 マルチプレクサ
11 演算器(補正手段)
12 タイミングコントローラ(監視装置)
13 メモリ制御器
14 演算器
15 倍率補正差分器(倍率補正手段)
15a 積算器
15b 差分器
16 メモリ
Q1 X線検出部(放射線検出部)
Q2 信号読み出し部(読み出し部)
Q3 画像収集部
Q4 表示部
Q5 X線発生部
Q6 制御部
G(1),…,G(n) ゲート走査線
S(1),…,S(n) 信号線
B ガラス基板
D1〜D16 差分器
M1〜M13 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状にアレイされた複数の画素を有し、入射した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部から検出信号を読み出す読み出し部と、
前記読み出された検出信号を補正する補正部を有し、
前記複数の画素は、前記放射線に対して実質的にシールドされている画素とシールドされていない画素からなり、
前記補正部は、前記シールドされている画素からの信号に基づいて、前記シールドされていない画素からの信号を補正することを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記読み出し部は、前記画素からの信号を増幅する複数の増幅器を有し、前記シールドされている画素に対応する増幅器の増幅率は、前記シールドされていない画素に対応する増幅器の増幅率よりも高いことを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記増幅器はキャパシタを含み、前記シールドされている画素に対応する増幅器のキャパシタの容量は、前記シールドされていない画素に対応する増幅器のキャパシタの容量よりも低いことを特徴とする請求項2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記シールドされた画素の出力信号に、前記シールドされた画素に対応する増幅器のキャパシタ容量に対する前記シールドされていない画素に対応する増幅器のキャパシタ容量の比を乗算する乗算器と、
前記乗算結果を、前記シールドされていない画素の出力信号から差分する差分器とを有することを特徴とする請求項2記載の放射線検出器。
【請求項5】
マトリクス状にアレイされた複数の画素を有し、入射した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部から検出信号を読み出す読み出し部と、
前記読み出された検出信号を補正する補正部を備え、
前記複数の画素の中の一端に位置された複数の第1の画素と、他端に位置された複数の第2の画素とは、前記放射線に対して実質的にシールドされ、
前記補正部は、前記第1及び第2の画素からの信号に基づいて前記シールドされていない画素からの信号を補正することを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
前記補正部は、前記シールドされていない画素の信号を、前記第1の画素の信号と前記第2の画素の信号との距離補間値に基づいて補正することを特徴とする請求項5記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項記載の放射線検出器を備えた放射線診断装置。
【請求項8】
入射した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部はマトリクス状にアレイされた複数の画素を有し、
前記放射線検出部から検出信号を読み出す読み出し部と、
前記読み出し部を、前記放射線検出部から分離する複数のスイッチング素子とを有する
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項9】
前記スイッチング素子により前記放射線検出部から分離された前記読み出し部にキャリブレーション信号を供給するキャリブレーション信号発生器と、
前記キャリブレーション信号に応答して得られる前記キャリブレーション信号発生器の出力信号に基づいて、補正値を求める計算部と、
前記補正値に基づいて、前記放射線検出部から前記読み出し部を経由して読み出された信号を補正する補正部と、
を有することを特徴とする請求項8記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記補正値は、前記読み出し部のゲインまたはオフセットの少なくとも一方に対応していることを特徴とする請求項9記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記読み出し部のゲインの情報は、前記読み出し部の初期製造時に取得され、前記補正部内に記憶されることを特徴とする請求項10記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記読み出し部のゲインの情報は、前記読み出し部の定期検査時に取得され、前記補正部内に記憶されることを特徴とする請求項10記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記読み出し部のゲインの情報は、前記画素の列ごとに個別に固有値として求められることを特徴とする請求項10記載の放射線検出器。
【請求項14】
前記請求項8〜13のいずれか1項に記載の放射線検出器を備えた放射線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−93365(P2012−93365A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267590(P2011−267590)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2010−208115(P2010−208115)の分割
【原出願日】平成12年7月27日(2000.7.27)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】