説明

新規なスクアリリウム金属錯体化合物、色素及びこれを含有する組成物、カラートナー、インク、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルター

【課題】可視域に色再現性上好ましい色相を有し、耐候性、保存性等堅牢性が良好な新規スクアリリウム金属錯体色素及び該色素を含有するインク、カラートナー、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターの提供。
【解決手段】式(1)の部分構造を有するスクアリリウム金属錯体化合物。(Mは金属原子を、環Bはスクアリン酸骨格との結合位の炭素原子及びその隣接位の窒素原子を含有する複素6員環を、Rは置換基を、mは1〜4の整数を、Aは任意の有機基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスクアリリウム金属錯体化合物、色素及びこれを含有する組成物、カラートナー、インク、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
染料や顔料として知られている色素は、繊維の染色材、樹脂や塗料の着色材、写真、印刷、複写機、プリンターにおける画像形成材、カラーフィルターの光吸収材等のさまざまな用途で広範に利用されている。近年ではインクジェット、電子写真、銀塩写真、感熱転写等を用いたカラーハードコピー用画像形成色素が種々提案され、またエレクトロニクスイメージングの進展に伴い、固体撮像管やカラー液晶テレビ用フィルター用色素や半導体レーザーを利用した光記録媒体用色素等の需要が増大しており、色素の利用分野が拡大している。こうした色素の利用分野拡大に伴い、色素材料に求められる性能、特に耐光性、耐薬品性等の堅牢性に関して、要求は年々厳しくなっている。
【0003】
本発明者らは、スクアリリウム骨格を有する色素材料の開発を行ってきた。スクアリリウム色素は分子設計の多様さによる色相調整が容易で、かつ分子吸光特性に優れるという利点を有する。また耐光性、耐熱性、耐湿性等の点においても良好な性能を示す有用な色素材料である。
【0004】
金属に配位し、キレート構造を形成したスクアリリウム化合物として感熱転写記録材料、電子写真用トナーや近赤外線吸収剤(例えば、特許文献1〜3参照)等が知られているが、明確に錯体構造が明記されているのは下記2件のみである(特許文献4及び5参照)。
【0005】
特許文献4では下記構造Aで表されるようなスクアリリウム金属錯体構造が開示されている。
【0006】
【化1−1】

【0007】
しかしながら、ここで用いられているスクアリリウム化合物は5−ヒドロキシピラゾールとメチルインドリンの組み合わせのみであり、また金属についてもAlのみである。
【0008】
特許文献5では下記構造B及び構造Cで表されるようなスクアリリウム金属錯体が開示されている。
【0009】
【化1−2】

【0010】
これら構造A、構造B及び構造Cは、スクアリン酸骨格の酸素原子とスクアリン酸骨格に直接結合した複素5員環の活性水素を有する配位原子と金属との間でキレート構造を取ることが特徴である。
【0011】
スクアリン酸骨格の酸素原子とこれに直接結合した6員環の置換基あるいは構成要素の一部である配位原子と金属とのキレート化物については、下記構造Dのような化合物と金属との錯体を用いた近赤外吸収剤について開示されている(特許文献3参照)。
【0012】
【化1−3】

【0013】
該公報においては、具体的化合物として下記構造Eのみしか例示されておらず、構造Eと金属との混合物については、元素分析値が記載されているものの、キレート構造を有するかどうかは不明である。
【0014】
【化1−4】

【0015】
また、下記構造Fと金属イオン含有化合物との混合物を用いたインク、電子写真用トナー等についても開示されている(特許文献2参照)。
【0016】
【化1−5】

【0017】
該スクアリリウム化合物は、スクアリン酸骨格の酸素原子及びベンゼン環の置換基であるヒドロキシル基由来の酸素原子によってキレート配位し、金属錯体を形成することが推測される。
【0018】
上記のスクアリリウム金属キレート錯体に共通しているのは、スクアリン酸骨格の酸素原子と活性水素を有する配位団によるキレート錯体であることである。しかしながら、スクアリン酸骨格の酸素原子とスクアリン酸骨格に結合した6員環の構成要素の一部である窒素原子とでキレート構造を形成したスクアリリウム錯体化合物は未だ知られていない。
【特許文献1】特開2000−265077号公報
【特許文献2】特開2001−342364号公報
【特許文献3】特開2000−159776号公報
【特許文献4】国際公開第02/50190号パンフレット
【特許文献5】国際公開第04/7447号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、新規なスクアリリウム金属錯体化合物の提供であり、さらに可視域に色再現性上好ましい色相を有し、耐候性、保存性等堅牢性が良好な色素及び該色素を含有する組成物、インク、カラートナー、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0021】
1.下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とするスクアリリウム金属錯体化合物。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Mは金属原子を表す。環Bはスクアリン酸骨格との結合位の炭素原子及びその隣接位の窒素原子を含有する複素6員環である。Rは置換基であって、mは1〜4の整数を表す。Aは任意の有機基を表す。)
2.前記一般式(1)で表される部分構造を有するスクアリリウム金属錯体化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記1に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、Mは金属原子を表す。B1〜B4はそれぞれ炭素原子、窒素原子または酸素原子であって、R1〜R4は不対電子対、水素原子または置換基を表す。Aは任意の有機基を表す。Xは単座または2座の副配位子であり、nは1〜3の整数であり、pは0以上の整数である。Wは対イオンであり、qは0以上の整数である。)
3.前記一般式(1)または(2)において、Aが下記一般式(1−A)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、A1は5員環または6員環を表し、R′1は水素原子または置換基を表す。)
4.前記一般式(1)または(2)において、金属原子Mが銅、ニッケル、コバルト、アルミニウムまたは亜鉛のいずれかであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【0028】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のスクアリリウム金属錯体化合物であって、吸収極大波長が可視光線域にあることを特徴とする色素。
【0029】
6.前記5に記載の色素を少なくとも1種及びバインダーを含有することを特徴とする組成物。
【0030】
7.前記5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするカラートナー。
【0031】
8.前記5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするインク。
【0032】
9.前記5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とする光記録媒体。
【0033】
10.前記5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするカラーフィルター。
【0034】
11.前記5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするディスプレイ用前面フィルター。
【発明の効果】
【0035】
本発明によって、新規なスクアリリウム金属錯体化合物を提供することができた。この化合物は優れた分光吸収特性、耐候性、保存性を有する色素であり、また、分散剤との組成物とした際にも高い耐候性、保存性を示す、カラートナー、インク、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の色素とは、吸収極大波長を可視光線域に有することを特徴とする前記一般式(1)で表される部分構造を有するスクアリリウム金属錯体化合物である。
【0037】
また、前記一般式(1)で表されるスクアリリウム金属錯体は部分構造であって、前記一般式(2)をもって本発明のスクアリリウム金属錯体の全体構造が表される。
【0038】
発明者らの検討により、特定構造を有するスクアリリウム化合物と金属イオンを混合、反応させることによって、スクアリン酸骨格の一方の酸素原子、及び6員環の構成要素の一つである窒素原子を介してキレート環を形成し、新規なスクアリリウム金属錯体化合物を得ることができた。
【0039】
本発明において、本発明のスクアリリウム金属錯体化合物がスクアリリウム化合物よりも耐光性、保存性に優れるという効果は、金属キレート形成による安定性向上(キレート効果)が一つの要因であると推測している。キレート錯体は一つの配位子が複数の配位座によって金属イオンに配位していることが特徴であり、このキレート環形成によって熱力学的、速度論的な安定化効果が得られる。これを一般にキレート効果という。スクアリリウム化合物で、このようなキレート構造を有するために特定の構造を有することが必要である。特定構造とは前記一般式(1)〜(2)で表されるようにスクアリン酸骨格とベンゼン環の結合した炭素の隣接位に窒素原子を有することであり、この窒素原子とスクアリン酸骨格の酸素原子によるキレート配位が可能であるために、本発明のスクアリリウム金属錯体化合物は形成され、上述のキレート効果による安定化が得られる。
【0040】
以下、本発明のスクアリリウム金属錯体化合物、並びに色素及びこれを用いた組成物、カラートナー、インク、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターについて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
《一般式(1)〜(2)で表される金属錯体化合物》
本発明におけるスクアリリウム金属錯体化合物は前記一般式(1)で発明の本質である部分構造が示され、全体構造は前記一般式(2)で表される。
【0042】
一般式(1)〜(2)において、Mは金属原子を表し、スクアリン酸骨格の一方の酸素原子、及び6員環の構成要素の一つである窒素原子と結合してキレート環を形成することが特徴である。
【0043】
金属原子Mはスクアリリウム化合物に対してキレート構造を形成するものであれば特に限定されない。ここでいうキレート構造とは、特定構造の配位子(ここではスクアリリウム化合物)に対して複数の配位座で金属Mに結合し、金属と配位子とで環構造を形成することを指す。金属Mに関しては、例えば銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ベリリウム、鉄、銀、クロム、マンガン、イリジウム、バナジウム、チタン、ルテニウム、モリブデン、スズ、ビスマス、オスミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ガリウム、ゲルマニウム、白金、金、水銀等を挙げることができる。周期表3〜12族であることが好ましく、より好ましくは周期表7〜12族に含まれる金属イオンである。価数としては2価あるいは3価の金属であることが好ましい。この中でも具体的にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウムあるいは白金であることが好ましく、特に取り扱い上の点から鉄、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウムあるいは亜鉛から選ばれることがより好ましい。
【0044】
一般式(1)において、Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。Rで表される置換基として特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は、同様の置換基によって更に置換されていてもよい。またこれら置換基はさらに同様の置換基よって置換されてもよく、また置換基同士がさらに互いに結合して環を形成してもよい。Rの好ましい置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン原子、複素環基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスホノ基、アシル基、スルホンアミド基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、イミド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等が好ましく、少なくとも一つはアルキル基、ヒドロキシル基あるいはアミノ基であることがより好ましい。
【0045】
一般式(2)において、R1〜R4は不対電子対、水素原子または置換基を表し、具体的にはRと同様のものが挙げられる。R2の好ましい置換基としてはヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル基等が挙げられる。また、R1、R2及びR3の好ましい置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、アセチル基、シアノ基、ニトロ基等が好ましい。また、化合物の溶解性向上のために少なくとも一つは長鎖のアルキルを有する置換基であることが好ましい。
【0046】
1〜B4は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子であって、複素芳香6員環の構成要素である。このときB1〜B4のうちいずれかが酸素原子あるいは硫黄原子である場合は、環全体としてピリリウム構造を有する。B1〜B4は好ましくは炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子であって、より好ましくは炭素原子、窒素原子であって、少なくとも一つは炭素原子であることが好ましい。
【0047】
Aは任意の有機基を表し、有機基としては例えば前述したRで表される置換基と同義の基を挙げることができ、好ましくはアリール基、複素環基が挙げられる。また堅牢性の面から、さらに好ましくはアリール基または複素環基または前記一般式(1−A)で表される置換基が挙げられる。
【0048】
1は5員環または6員環を表し、A1で表される5員環としては、ピラゾリジンジオン環、イソオキサゾロン環、ピラゾロン環、ピロリドン環(例えば、1H−ピロール−2(5H)−オン環)、チオキサチアゾリジノン環(例えば、ローダニン環、4−チオキサイミダゾリジン−2−オン環、5−チオキサイミダゾリジン−2−オン環)、ピロロトリアゾール環(例えば、7,7a−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−b][1,2,4]トリアゾール環、7,7a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,2,4]トリアゾール環)、ピラゾロトリアゾール環(例えば、7,7a−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾール環、7,7a−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾール環)、ピラゾロピリミジン環、イミダゾール環(例えば4H−イミダゾール環)、イミダゾロピラゾール環、ピロール環、イソオキサゾリジンジオン環、チオキサイミダゾリジノン環(例えば、4−チオキサイミダゾリジン−2−オン環)、イミダゾリジンジオン環(例えばヒダントイン環)、イミダゾリジンジチオン環(例えばイミダゾリジン−2,4−ジチオン環)、チアゾリジンジオン環、ピラゾールジオン環、インドール環等が挙げられ、これらは任意の位置に前述したRで表される置換基と同義の基を有していてもよい。
【0049】
1で表される6員環としては、例えば、シクロヘキサジエン環(1、3−シクロヘキサジエン環、1、4−シクロヘキサジエン環)、ジヒドロピリジン環(1、4−ジヒドロピリジン環、3、4−ジヒドロピロジン環)、4H−ピラン環、4H−チオピラン環、ピリドン環(例えば、ピリジン−2(3H)−オン環)、ピリジンチオン環(例えば、ピリジン−2(3H)−チオン環)、ピリジンジオン環(例えばピリジン−2,4(3H,5H)−ジオン環)、バルビツール酸環、チオバルビツール酸環、オキサジン環、チアジン環、ジヒドロピリミジンジオン環(例えば、ジヒドロピリミジン−4,6(1H,5H)−ジオン環)、ジヒドロピリミジンジチオン環(例えば、ジヒドロピリミジン−4,6(1H,5H)−ジチオン環)、オキサジンジオン環(例えば、4H−1,3−オキサジン−4,6(5H)−ジオン環)、オキサジアジン環(例えば、4H−1,2,3−オキサジアジン環)等が挙げられ、これらは任意の位置に前述したRaで表される置換基と同義の基を有していてもよい。
【0050】
R′1は水素原子または置換基を表し、該置換基は前述したRで表される置換基と同義の基である。R′1は好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはアリール基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子またはメチル基またはエチル基であり、最も好ましいのは水素原子である。
【0051】
また前記一般式(1)は、本発明における金属錯体において、部分構造である。前記一般式(2)が本発明における化合物の全体構造を表しており、本発明に記載の効果を得るために、スクアリリウム化合物が主配位子であることが好ましい。主配位子、副配位子とは本発明に係る金属錯体を用いて説明すると、例えば、上記一般式(2)においてn≧pである場合、nを有する括弧内に示す部分構造、もしくはその互変異性体で表される部分構造を主配位子と称し、pを有する括弧内、Xで表される配位子を副配位子と称する。
【0052】
また、本発明のスクアリリウム金属錯体化合物に用いられるスクアリリウム化合物は対称型スクアリリウム化合物であっても非対称型スクアリリウム化合物であってもよいが、合成上の簡便さからは対称型であることが好ましい。
【0053】
一般式(2)において、Xは副配位子であって、副配位子Xは、特に限定されないが、例えば、特開2000−251957号、同2000−311723号、同2000−323191号、同2001−6760号、同2001−59062号、同2001−60467号の各公報等に記載されているようなものが挙げられる。また、さらに従来公知の金属錯体形成に用いられる、所謂配位子として当該業者が周知の配位子を必要に応じて配位子として有していてもよい。
【0054】
具体的にはハロゲンイオン、水酸イオン、アンモニア、ピリジン、アミン(例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン等)、シアン化物イオン、シアン酸イオン、チオラートイオン、チオシアン酸イオン、及びビピリジン類、アミノポリカルボン酸類、8−ヒドロキシキノリン等の各種のキレート配位子が挙げられる。
【0055】
1座配位子としてはアシル基、カルボニル基、チオシアネート基、イソシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基で配位する配位子、あるいはジアルキルケトンまたはカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0056】
2座配位子としてはアシルオキシ基、オキザリレン基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アルキルチオ基またはアリールチオ基で配位する配位子、あるいはジアルキルケトンまたはカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0057】
また、下記一般式(3)で表される化合物も配位子としてさらに好ましい。
【0058】
【化4】

【0059】
一般式(3)において、E1は置換基を表し、E2はハメット置換基定数(σp)が0.1〜0.9の電子吸引性基を表し、R′はアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基を表し、置換基を有していてもよい。
【0060】
1及びE2で表されるσp値が0.1〜0.9の置換基について説明する。ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0061】
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えば、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換芳香族基(例えば、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、複素環残基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)等が挙げられる。
【0062】
また、σpの値が0.35以上の置換基としてはシアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フッ素置換アルキル基(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、弗素またはスルホニル基置換芳香族基(例えば、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル)、複素環残基(例えば、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホリル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基等が挙げられる。
【0063】
σpの値が0.60以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、脂肪族、芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、ジフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)等が挙げられる。
【0064】
1で表される置換基としては前記一般式(1)におけるRと同義であるが、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、カルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられるが、好ましくは電子吸引性基である。
【0065】
1及びE2として好ましくはハロゲン化アルキル基(特にフッ素置換アルキル基)、カルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0066】
R′の好ましい置換基としては炭素数2〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が挙げられ、さらに好ましくは炭素数4〜18のアルキル基または炭素数4〜18のアルコキシ基、アリールオキシ基である。最も好ましくは炭素数6〜16のアルコキシ基である。
【0067】
以下に一般式(3)で表される配位子の具体例を示すが本発明はこれらに限定されることはない。
【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

【0070】
【化7】

【0071】
【化8】

【0072】
本発明に記載の効果を好ましく得る観点からは、錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、さらに好ましくは1種類である。
【0073】
前記一般式(2)において、Wは任意のカウンターイオンであって、Wで表される典型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(例えば、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)、アルカリ金属イオン及びプロトンであり、一方、陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、エノレート(アセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート)、水酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン、テトラアルキルボレート、サリシネート、ベンゾエート、ヘキサフルオロアンチモン等が挙げられる。
【0074】
また、前記一般式(2)において、nは1〜3の整数であり、pは0〜2の整数であって、qは0〜3の整数である。本発明のスクアリリウム金属錯体化合物は全体として中性であることが好ましく、より好ましくは対イオンがない状態で中性、つまりqが0であることである。
【0075】
以下に、本発明における一般式(1)または(2)で表されるスクアリリウム金属錯体化合物の代表的な具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
【化9】

【0077】
【化10】

【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
本発明に係る前記一般式(1)または(2)で表されるスクアリリウム金属錯体化合物におけるスクアリリウム化合物は、例えば、特開平5−155144号、同5−239366号、同5−339233号、特開2000−345059号、同2002−363434号、同2004−86133号、同2004−238606号等の公報、Law,K.Y.et al.,J.Org.Chem.1992,57,3278等に記載された従来公知の方法を参考にして合成することができる。
【0085】
また、本発明のスクアリリウム金属錯体は、スクアリリウム化合物と配位能を有する金属イオンを与える原料を、溶媒中、室温〜120℃の間の温度で3〜24時間反応させることにより得られる。金属イオンを与える原料は、スクアリリウム化合物のモル数と金属イオンを与える原料のモル数の比が1.0〜3.0:1.0となるようにすることが好ましい。このとき、反応系中に酸あるいは塩基を加えてもよい。
【0086】
金属イオンを与える原料としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)銅、酢酸銅、臭化銅、硝酸銅、シュウ酸銅、硫酸銅、塩化銅、過塩素酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、シアン化銅、沃化銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、チオシアン酸銅、酢酸ニッケル、硫酸ニッケル、ニッケル(カルボネート)、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、テトラフルオロホウ酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、過塩素酸ニッケル、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛、硝酸コバルト、亜硝酸コバルト、酢酸コバルト、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、臭化コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト、チオシアン酸コバルト及び一般式(3)で表される配位子を有する金属イオン化合物等が用いられる。このとき、溶解性向上及びバインダーとの相溶性向上の観点から金属イオンを与える原料は有機物を対塩として有することが好ましく、このような例としてはジケトナート金属化合物や一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、りん酸等の無機酸等が挙げられ、その使用量は、スクアリリウム化合物に対して0.1〜2.0当量(モル比)であるのが好ましい。
【0088】
溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、水等が挙げられ、その使用量はスクアリリウム化合物に対して1〜500倍量(質量比)であるのが好ましい。
【0089】
以下に本発明のスクアリリウム金属錯体色素について説明する。
【0090】
本発明における色素は、上記一般式(1)または(2)で表されるスクアリリウム金属錯体において、吸収極大波長が可視域(380〜780nm)に存在するものを指す。本発明のスクアリリウム金属錯体は、良好な分光特性を有することから吸収極大波長から約100nmずれた波長域での吸光係数は吸収極大の吸光係数の100分の1〜1000分の1以下であり、実質上、吸収極大から60nm長波あるいは短波の波長域では吸収を有しないことが特徴である。このように本発明における色素は可視域に好ましい分光特性を有することを特徴とする。
【0091】
本発明の色素は、製膜安定性等のために分散剤(バインダー)との組成物、もしくはこれにさらに溶媒を加えた組成物として用いられることが好ましい。
【0092】
バインダーとしては、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アラミド樹脂等が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が好ましく用いられ、最も好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂である。また、これらの共重合体も同様に好ましい。
【0093】
(メタ)アクリレート系樹脂とは、種々のメタクリレート系モノマー、もしくはアクリレート系モノマーを単独重合、もしくは共重合することにより合成され、モノマー種及びモノマー組成比を種々変えることによって、望みの(メタ)アクリレート系樹脂を得ることができる。また、本発明においては、(メタ)アクリレート系モノマーと一緒に(メタ)アクリレート系モノマー以外の不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーと共に共重合しても使用可能であり、さらに本発明においては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂と一緒に他の複数の樹脂を混合しても使用可能である。
【0094】
本発明に用いられる(メタ)アクリレート系樹脂を形成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、塩化エチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−アセトアミドメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−トリメトキシシランプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0095】
ポリスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーの単独重合物、あるいはスチレンモノマーと共重合可能な他の不飽和二重結合を有するモノマーを共重合したランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。さらに、かかるポリマーに他のポリマーを配合したブレンド物やポリマーアロイも含まれる。前記スチレンモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルスチレン−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、等の核アルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン、トリクロルスチレン、トリブロモスチレン等の核ハロゲン化スチレン等が挙げられるが、この中でスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0096】
これらを単独重合もしくは共重合することによって本発明で用いられる樹脂は合成され、例えば、ベンジルメタクリレート/エチルアクリレート、あるいはブチルアクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレートの共重合体樹脂、またスチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体樹脂、また、スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体、さらには、2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の共重合体樹脂等が例として挙げられる。
【0097】
次に、本発明のインク、カラートナー、光記録媒体、カラーフィルター及びディスプレイ用前面フィルターについて詳細に説明する。
【0098】
《インク》
本発明の色素の少なくとも一種を含有するインクは、インクジェット記録液として画像記録に用いられ、本発明の色素を1種類のみ使用したものであっても、2種類以上の色素を併用したものであってもよく、また本発明外の色素と併用したものであってもよい。
【0099】
本発明の色素を含有するインクジェット記録液は水系溶媒、油系溶媒、固体(相変化)溶媒等の種々の溶媒系を用いることができ、特に水系溶媒を用いたとき本発明の効果を発揮する。水系溶媒は、水(例えば、イオン交換水が好ましい)と水溶性有機溶媒を一般に使用する。
【0100】
水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0101】
上記のような水系溶媒は、本発明の色素がその溶媒系に可溶であればそのまま溶解して用いることができる。
【0102】
一方、本発明の色素がその溶媒系にそのままでは不溶である場合、色素を種々の分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、ジェットミル、オングミル等)を用いて微粒子化するか、あるいは可溶である有機溶媒に色素を溶解した後に、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。さらにそのままでは不溶の液体または半溶融状物である場合、そのままか、あるいは可溶である有機溶媒に溶解して、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。
【0103】
本発明の色素がその溶媒系に不溶である場合には、微粒子化させてその溶媒系に分散させることが好ましく、平均粒子経が150nm以下の微粒子に分散されていることがさらに好ましい。
【0104】
前記平均粒子経とは体積平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求めることができる。あるいは、体積平均粒子径とその標準偏差は動的光散乱法を利用して求めることもできる。
【0105】
また、本発明の色素が可溶である有機溶媒に色素を溶解した後に、油溶性ポリマーと共に微粒子分散物として水系溶媒に分散させることが好ましい。
【0106】
このようなインクジェット記録液用に使用される水系溶媒の具体的調製法については、例えば、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号の各公報等に記載の方法を参照することができる。
【0107】
次に油溶性ポリマーについて説明する。前記油溶性ポリマーとしては特に制限はなく、目的に応じて上記の分散剤群から適宜選択することができるが、ビニルポリマーが好適に挙げられる。前記ビニルポリマーとしては、従来公知のものが挙げられ、水不溶性型、水分散(自己乳化)型、水溶性型のいずれもものであってもよいが、着色微粒子の製造容易性、分散安定性等の点で水分散型のものが好ましい。
【0108】
前記水分散型のビニルポリマーとしては、イオン解離型のもの、非イオン性分散性基含有型のもの、あるいはこれらの混合型のもののいずれであってもよい。
【0109】
前記イオン解離型のビニルポリマーとしては、三級アミノ基等のカチオン性の解離性基を含有するビニルポリマーや、カルボン酸、スルホン酸等のアニオン性の解離性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。前記非イオン性分散性基含有型のビニルポリマーとしては、ポリエチレンオキシ鎖等の非イオン性分散性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。これらの中でも、着色微粒子の分散安定性の点で、アニオン性の解離性基を含有するイオン解離型のビニルポリマー、非イオン性分散性基含有型のビニルポリマー、混合型のビニルポリマーが好ましい。
【0110】
前記ビニルポリマーを形成するモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、ビニルエーテル類等が挙げられる。その他のモノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニリデンクロライド、メチレンマロンニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0111】
また、解離性基を有するモノマーとしては、アニオン性の解離性基を有するモノマー、カチオン性の解離性基を有するモノマーが挙げられる。
【0112】
前記アニオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸がより好ましい。
【0113】
前記カチオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアタクリレート等の3級アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
【0114】
また、非イオン性分散性基を含有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとカルボン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとスルホン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとリン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとイソシアネート基含有モノマーから形成されるビニル基含有ウレタン、ポリビニルアルコール構造を含有するマクロモノマー等が挙げられる。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ部の繰り返し数としては、8〜50が好ましく、10〜30がより好ましい。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素原子数としては1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
【0115】
これらのモノマーは1種単独で使用されてビニルポリマーが形成されていてもよいし、2種以上が併用されてビニルポリマーが形成されていてもよく、前記ビニルポリマーの目的(Tg調節、溶解性改良、分散物安定性等)に応じて適宜選択することができる。
【0116】
本発明に使用される油系溶媒は有機溶媒を使用する。油系溶媒の例としては、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素類、アミド類等が挙げられる。
【0117】
上記のような油系溶媒は本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできるが、粘土調整等の観点から分散剤と併用して用いられることがより好ましい。
【0118】
このようなインクジェット記録液に使用される油系溶媒の具体的調製法については、特開平3−231975号、同5−508883号の各公報に記載の方法を参照することができる。
【0119】
本発明に使用される固体(相変化)溶媒は溶媒として室温で固体であり、かつインクジェット記録液の加熱噴射時には溶融した液体状である相変化溶媒を使用する。
【0120】
このような相変化溶媒としては、天然ワックス(例えば、密ロウ、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラワックス、ラノリン、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等)、ポリエチレンワックス誘導体、塩素化炭化水素、有機酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チグリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等)、有機酸エステル(例えば、上記した有機酸のグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のアルコールとのエステル等)、アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ドデセノール、ミリシルアルコール、テトラセノール、ヘキサデセノール、エイコセノール、ドコセノール、ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エイコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピレングリコール、ビスフェノールA、パラアルファクミルフェノール等)、ケトン(例えば、ベンゾイルアセトン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘントリアコンタノン、ヘプタトリアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール等)、アミド(例えば、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、テトラヒドロフラン酸アミド、エルカ酸アミド、ミリスチン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N′−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−システアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、フェナセチン、トルアミド、アセトアミド、オレイン酸2量体/エチレンジアミン/ステアリン酸(1:2:2のモル比)のような2量体酸とジアミンと脂肪酸の反応生成物テトラアミド等)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホンアミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等)、シリコーン類(例えば、シリコーンSH6018(東レシリコーン)、シリコーンKR215、216、220(信越シリコーン)等)、クマロン類(例えば、エスクロンG−90(新日鐵化学)等)、コレステロール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、メリシン酸コレステロール等)、糖類脂肪酸エステル(ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、ベヘン酸サッカロース、ラウリン酸サッカロース、メリシン酸サッカロース、ステアリン酸ラクトース、パルミチン酸ラクトース、ミリスチン酸ラクトース、ベヘン酸ラクトース、ラウリン酸ラクトース、メリシン酸ラクトース等)が挙げられる。
【0121】
固体(相変化)溶媒の固体−液体相変化における相変化温度は、60〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。
【0122】
上記のような固体(相変化)溶媒は、加熱した溶融状態の溶媒に本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできる。
【0123】
このような相変化溶媒の具体的調製法については、特開平5−186723号、同7−70490号の各公報に記載の方法を参照することができる。
【0124】
上記したような水系、油系、固体(相変化)溶媒を使用し、本発明の色素を溶解あるいは分散した本発明のインクジェット記録液は、その飛翔時の粘度として4×10-2Pa・s以下が好ましく、3×10-2Pa・s以下であることがより好ましい。
【0125】
また、本発明のインクジェット記録液はその飛翔時の表面張力として2×10-4〜10-3N/cmが好ましく、3×10-4〜8×10-4N/cmであることがより好ましい。
【0126】
本発明の色素は、インクジェット記録液の0.1〜25質量%の範囲で使用されることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0127】
本発明に使用される樹脂型分散剤としては、分子量1,000〜1,000,000の高分子化合物が好ましく、これらは使用される場合にはインクジェット記録液中に0.1〜50質量%含有されることが好ましい。
【0128】
本発明のインクには吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
【0129】
本発明のインクはその使用する記録方式に関して特に制約はないが、特にオンデマンド方式のインクジェットプリンタ用のインクジェット記録液として好ましく使用することができる。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)等を具体的な例として挙げることができる。
【0130】
《トナー》
本発明のトナー(カラートナー)は、本発明の色素を含有することを特徴としている。本発明の色素の含有量は、トナーが十分な分光吸収特性を発揮するものであれば特に制限されないが、トナー粒子中の2〜30質量%であることが好ましい。トナーは本発明の色素の他に、主にバインダー樹脂、離型剤、荷電制御剤、外添剤から構成される。
【0131】
母体を形成するバインダー樹脂としては、トナー用に一般に使用される全てのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、トナーの流動性向上や帯電制御等を付与する目的で、トナーに無機微粉末、有機微粒子等の外部添加剤を添加してもよい。前記外部添加剤としては、表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらの数平均一次粒子径は10〜500nmのものが好ましく、これらの添加量はトナーに対し0.1〜20質量%が好ましい。
【0132】
また、熱定着性を向上させる目的でトナー粒子中に添加する離型剤としては、トナー用に従来使用されている離型剤を使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0133】
また、帯電特性を向上する荷電制御剤としては、必要に応じて添加してもよいが、発色性の点から無色のものが好ましく、例えば、4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレーン構造を有するもの等が挙げられる。
【0134】
本発明のトナーを2成分現像剤用として用いる場合は、キャリアと混合して用いる。キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0135】
本発明のトナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写し、カラー画像を形成する方法等が挙げられる。
【0136】
《光記録媒体》
次に、本発明の光記録媒体(光情報記録媒体)及び光情報記録方法について詳細に説明する。
【0137】
本発明の光情報記録媒体に用いられる本発明の色素は、本発明の色素を1種類のみ使用したものであっても、2種類以上の本発明の色素を併用したものであってもよく、また本発明外の色素と併用したものであってもよい。また、記録層中の本発明の色素の含有量は、記録層全体の乾燥質量に対し30〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が最も好ましい。さらに本発明における記録層には、本発明の効果に影響を与えない範囲で従来の光情報記録媒体に用いることのできる色素を本発明における色素と併用してもよい。
【0138】
本発明の光情報記録媒体には種々の構成のものが含まれる。本発明の光情報記録媒体は、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された円盤状基板上に記録層、光反射層及び保護層をこの順に有する構成、あるいは該基板上に光反射層、記録層及び保護層をこの順に有する構成であることが好ましい。また、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に記録層及び光反射層が設けられてなる二枚の積層体が、それぞれの記録層が内側となるように接合された構成も好ましい。
【0139】
本発明の光情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いることが可能である。本発明の光情報記録媒体の場合、該トラックピッチは0.2〜0.8μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.2〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、特に0.2〜0.4μmの範囲にあることが好ましい。プレグルーブの深さは0.01〜0.18μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.01〜0.15μmの範囲にあることが好ましく、特に0.02〜0.15μmの範囲にあることが好ましい。隣接するプレグルーブの幅は0.05〜0.4μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.08〜0.3μmの範囲にあることが好ましく、特に0.1〜0.25μmの範囲にあることが好ましい。
【0140】
本発明の光情報記録媒体として、円盤状の基板上に記録層、光反射層及び保護層をこの順に有する構成のものを例にとって、以下にその製造方法を説明する。
【0141】
本発明の光情報記録媒体の基板は、記録・再生に用いるレーザー光の波長領域(350〜900nm)において実質的に透明(透過率が80%以上)であることが必要とされ、従来の光情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステル等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状としてまたは剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格等の点からポリカーボネートが好ましい。
【0142】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上及び記録層の変質防止の目的で下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン−ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、及びシランカップリング剤等の表面改質剤を挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することによって形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0143】
記録層の形成は蒸着、スパッタリング、CVDまたは溶剤塗布等の方法によって行うことができ、その中でも溶剤塗布が好ましい。この場合、前記色素、さらに所望によってクエンチャー、結合剤等を溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することによって行うことができる。
【0144】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0145】
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0146】
結合剤を使用する場合に、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子を挙げることができる。
【0147】
記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に金属錯体に対して0.01〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
【0148】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
【0149】
記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に0.01〜0.5μmの範囲にあり、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲にあり、より好ましくは0.02〜0.1μmの範囲にある。
【0150】
なお、光記録媒体を構成する記録層には、他の種類の色素、各種樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤等が含まれていてもよい。記録層は、基板の一面上に形成されていてもよく、基板の両面上に形成されていてもよい。
【0151】
記録層には記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。上記褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350,399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記一般式(B)で表される化合物を挙げることができる。
【0152】
【化17】

【0153】
式中、Raは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Q-はアニオンを表す。Raは置換されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基が一般的であり、無置換の炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、F、Cl)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシ)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アルケニル基(例えば、ビニル)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Q-のアニオンの好ましい例としては、ClO4-、AsF6-、BF4-、及びSbF6-を挙げることができる。
【0154】
一般式(B)で表される化合物例を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、本発明の金属錯体の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜45質量%の範囲、さらに好ましくは0.5〜40質量%の範囲、特に好ましくは1〜25質量%の範囲である。
【0157】
記録層に隣接して、情報の再生時における反射率の向上の目的で光反射層を設けることが好ましい。光反射層の材料である光反射性物質はレーザー光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
【0158】
これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組み合わせで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくはAu金属、Ag金属、Al金属あるいはこれらの合金であり、最も好ましくはAg金属、Al金属あるいはそれらの合金である。
【0159】
光反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板もしくは記録層の上に形成することができる。光反射層の層厚は一般的には0.01〜0.3μmの範囲にあり、0.05〜0.2μmの範囲にあることが好ましい。
【0160】
光反射層もしくは記録層の上には、記録層等を物理的及び化学的に保護する目的で保護層を設けることが好ましい。なお、DVD−R型の光情報記録媒体を製造する場合と同様の形態、即ち二枚の基板を用いて記録層を内側に貼り合わせる構成をとる場合は、必ずしも保護層の付設は必要ではない。
【0161】
保護層に用いられる材料の例としては、Zn−SiO2、ZnS、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si34等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。保護層は、例えばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを、接着剤を介して反射層上にラミネートすることによって形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けてもよい。
【0162】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は一般には0.1μm〜1mmの範囲にある。
【0163】
以上の工程によって、基板上に記録層、光反射層そして保護層、あるいは基板上に光反射層、記録層そして保護層が設けられた積層体を製造することができる。
【0164】
本発明の光情報記録方法は、上記光情報記録媒体を用いて、例えば、次のように行われる。まず光情報記録媒体を定線速度(DVD−Rフォーマットの場合は3.84m/秒)または定角速度にて回転させながら、基板側あるいは保護層側から半導体レーザー光等の記録用の光を照射する。この光の照射により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
【0165】
本発明においては、記録光として300〜900nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が用いられる。本発明の光情報記録媒体の記録、再生を行う光源としては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。本発明の金属錯体は特に高い記録感度を有していることから、635nmや650nmの半導体レーザーや532nmのYAG高調波レーザー等を用いた記録、再生に適している。一方、400〜410nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmまたは820nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長がそれぞれ425nmまたは410nmの青紫色SHGレーザー光も好ましい光源として挙げることができる。特に記録密度の点で青紫色半導体レーザー光を用いることが好ましい。上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら半導体レーザー光を基板側あるいは保護層側から照射して、その反射光を検出することによって行うことができる。
【0166】
《カラーフィルター》
本発明の色素をカラーフィルター用途に用いるにあたり、本発明の色素を樹脂ワニスへ分散させる場合には、二本ロールミル、三本ロールミル、サンドミル、ニーダー等の各種分散手段を使用できる。
【0167】
本発明において、樹脂ワニスとしては従来公知のカラーフィルター用着色組成物に使用されるワニスが用いられる。また、分散媒体としては樹脂ワニスに適切な溶剤あるいは水系媒体が使用される。また、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、分散助剤、平滑化剤及び密着化剤等が添加使用される。
【0168】
樹脂ワニスとしては、感光性の樹脂ワニスと非感光性樹脂ワニスが使用される。感光性樹脂ワニスとしては、例えば、紫外線硬化性インキ、電子線硬化性インキ等に用いられる感光性樹脂ワニスであり、非感光性樹脂ワニスとしては、例えば、凸版インキ、平版インキ、凹版グラビヤインキ、孔版スクリーンインキ等の印刷インキに使用するワニス、電着塗装に使用するワニス、電子印刷や静電印刷の現像剤に使用するワニス、熱転写リボンに使用するワニス等のいずれもが使用できる。
【0169】
感光性樹脂ワニスの例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリメタクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂等、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等のワニスであり、さらに反応性希釈剤としてモノマーが加えられたワニスが挙げられる。本発明の金属キレート色素と上記のワニスにベンゾインエーテル、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を加え、従来公知の方法により煉肉することにより、感光性着色組成物とすることができる。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を使用して熱重合性着色組成物とすることができる。
【0170】
上記の感光性着色組成物を用いてカラーフィルターのパターンを形成する場合には、透明基板上に該感光性着色組成物をスピンコート、低速回転コーターやロールコーターやナイフコーター等を用いて全面コーティングを行うか、あるいは各種の印刷方法による全面印刷またはパターンよりやや大きな部分印刷を行い、予備乾燥後フォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を使用して露光を行ってパターンを焼き付けする。次いで、現像及び洗浄を行い、必要に応じポストベークを行うことによりカラーフィルターのパターンを形成することができる。
【0171】
非感光性の樹脂のワニスの例としては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂等が挙げられ、単独あるいは組み合わせて使用される。
【0172】
上記の非感光性着色組成物を用いてカラーフィルターのパターンを形成する場合には、透明基板上に該非感光性着色組成物、例えば、カラーフィルター用印刷インキを用いて上記した各種の印刷方法にて直接基板に着色パターンを印刷する方法、カラーフィルター用水性電着塗装組成物を用いて電着塗装により基板に着色パターンを形成させる方法、電子印刷方法や静電印刷方法を用いたり、あるいは転写性基材に上記の方式等で一旦着色パターンを形成させてからカラーフィルター用基板に転写する方法等が挙げられる。次いで、常法に従い必要に応じてベーキングを行ったり、表面の平滑化のための研磨を行ったり、表面の保護のためのトップコーティングを行う。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGBカラーフィルターを得る。
【0173】
《ディスプレイ用前面フィルター》
本発明のディスプレイ用前面フィルターは、基材中に本発明の色素を有する、もしくはその組成物を少なくとも1種含有してなるもので、本発明でいう基材に含有するとは、基材の内部に含有されることはもちろん、基材の表面に塗布した状態、基材と基材の間に挟まれた状態等を意味する。
【0174】
また、本発明におけるディスプレイ用前面フィルターは、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイのような自発光型表示装置の前面に配置され、色調補整や不要な波長域の発光を遮るために用いられる。このために本発明のディスプレイ用前面フィルターは可視領域に吸収極大を有することが特徴である。これを実現するために本発明の色素は溶液状態において可視領域に吸収極大を有することが特徴であり、より好ましくは色調調整のために400〜620nmに吸収極大を有することが好ましく、蛍光体の発光である青、緑、赤のスペクトルの谷に相当する波長域に吸収極大を有することが好ましい。このような波長域として例えば、350〜400nm、480〜520nm等が挙げられる。また、特にネオン発光をカットするためには560〜620nmに吸収極大を有することが好ましく、590〜605nmに吸収極大を有することがより好ましい。
【0175】
基材としては、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス等が挙げられ、波長400〜700nmの光線透過率が40%以上の透明性があれば特に制限はない。例えば、ポリイミド、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びトリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。
【0176】
基材の厚さは、ある程度の機械的強度があれば特に制限はないが、通常は、20μm〜10mmであり、20μm〜1mmが好ましく、20μm〜200μmが特に好ましい。
【0177】
上記色素もしくはその組成物を用いて本発明のディスプレイ用前面フィルターを作製する方法としては、特に限定されるものではないが、
(1)透明粘着剤に含有させる方法
(2)高分子成形体へ含有させる方法
(3)高分子成形体またはガラス表面にコーティングする
方法等が挙げられる。
【0178】
(1)に挙げた透明粘着剤の具体的な例としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール粘着剤(PVB)、エチレンー酢酸ビニル系粘着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等のシート状または液状の粘着剤等を挙げることができ、この中でもアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤が好ましい。本発明の色素の添加量は、通常10ppm〜30質量%であり、10ppm〜20質量%が好ましく、10ppm〜10質量%が特に好ましい。
【0179】
(2)に挙げた高分子樹脂成形体へ含有させる方法としては、(A)樹脂に色素混合物を混錬し、加熱成形する方法と(B)有機溶剤に、樹脂または樹脂モノマーと色素混合物を分散、溶解させ、キャスティング法により高分子成形体を作製する方法が挙げられる。
【0180】
(A)で使用される樹脂としては、板またはフィルム作製した際に、できるだけ透明性の高いものが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6等のポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。
【0181】
加工条件としては、色素混合物をベース高分子の粉体あるいはペレットに添加、混合し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して板を作製する方法、押し出し機でフィルム化する方法、押し出し機で原反を作製し、30〜120℃で2〜5倍に1〜2軸に延伸して、10〜200μm厚のフィルムにする方法等が挙げられる。なお、混錬する際に可塑性等の通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えてもよい。
【0182】
(B)のキャスティング法では、樹脂または樹脂モノマーの有機溶剤溶液もしくは有機溶剤に、色素混合物を添加・溶解させ、必要であれば可塑剤、重合開始剤、酸化防止剤を加え、必要とする面状態を有する金型やドラム上へ流し込み、溶剤揮発、乾燥または重合、溶剤揮発、乾燥させることにより、板またはフィルムを製造することができる。
【0183】
使用される樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVA、EVA等)あるいはそれらの共重合樹脂の樹脂モノマーが挙げられる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等が挙げられる。
【0184】
(3)に挙げた高分子成形体またはガラス表面にコーティングする方法としては、本発明の色素をバインダー樹脂及び有機系溶媒に溶解させて組成物とした後に塗料化する方法、未着色のアクリルエマルジョン塗料に本発明の色素を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させてアクリルエマルジョン系水性塗料にする方法等が挙げられる。塗料中には、酸化防止剤等の通常塗料に用いるような添加物を加えてもよい。
【0185】
バインダーとしては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVB、EVA等)あるいはそれらの共重合樹脂等が挙げられる。
【0186】
溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等が挙げられる。
【0187】
組成物の濃度は、グラム吸光係数、コーティングの厚み、目的の吸収強度、目的の可視光透過率等によって異なるが、バインダー樹脂の質量に対して、通常、0.1ppm〜30質量%である。また、樹脂濃度は、塗料全体に対して、通常、1〜50質量%である。
【0188】
上記の方法で作製した塗料は、基材上にバーコーダー、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、あるいはスプレー等のコーティング法等の公知の方法で薄膜を形成することにより、塗工することができる。
【0189】
本発明のディスプレイ用前面フィルターには、電磁波シールド機能や近赤外線遮断機能を持たせることが好ましい。電磁波シールドとしては、銀薄膜を用いた積層体や銅を主として用いる金属のメッシュを用いることができる。銀薄膜を用いた積層体としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の誘電体と銀を交互に、積層したようなものが好ましい。金属のメッシュとしては、繊維に金属を蒸着した繊維メッシュ、フォトリソグラフィーの技術を用いパターンを形成してエッチングによりメッシュを得るエッチングメッシュ等を使用することができる。また、金属を含有するインクによるパターニングを行う方法、ハロゲン化銀を塗布、現像定着させる方法等も好適に用いられる
近赤外線遮断機能については、銀薄膜を用いる電磁波シールドを用いる場合は、銀の自由電子による散乱のため、同時に、近赤外線の遮断を行うことができる。その他、メッシュ、インクパターニングあるいは現像法等を用いた場合は、別途、近赤外線を吸収、もしくは反射するフィルムを用いる。
【0190】
さらに本発明のディスプレイ用前面フィルターには公知の反射防止層、防眩層、ハードコート層、静電防止層、防汚層等の機能性透明層を付加することができる。
【0191】
また、紫外線カットについては、紫外線カットアクリル板を基板に使ってもよいし、基板の一方の面あるいは両面に紫外線吸収層を形成させてもよいが、本発明のディスプレイ用前面フィルム用組成物に、紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤として、例えば、サリチル酸誘導体(UV−1)、ベンゾフェノン誘導体(UV−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(UV−3)、アクリロニトリル誘導体(UV−4)、安息香酸誘導体(UV−5)または有機金属錯塩(UV−6)等があり、それぞれ(UV−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−チルフェニルサリチル酸等を、(UV−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(UV−3)としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(UV−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(UV−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(UV−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0192】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子、プラズマディスプレイ等の光学装置の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0193】
さらに本発明のディスプレイ用前面フィルターには公知の反射防止層、防眩層、ハードコート層、静電防止層、防汚層等の機能性透明層を付加することができる。
【0194】
本発明のディスプレイ用前面フィルターを用いて、電子ディスプレイ、またはプラズマディスプレイパネル表示装置を得るには、表示装置として、公知の表示装置あるいは市販品であれば特に限定なく用いることができる。
【0195】
プラズマディスプレイパネル表示装置とは、次のような原理によってカラー画像の表示を行う装置である。前面ガラス板と背面ガラス板との間に表示電極対と、2枚のガラス板の間に設けた各画素(R(赤)、G(緑)、B(青))に対応するセルを設け、セルの中にキセノンガスやネオンガスを封入し、一方セル内の背面ガラス板側に各画素に対応する蛍光体を塗布しておく。表示電極間の放電によって、セル中のキセノンガス及びネオンガスの励起発光し、紫外線が発生する。そしてこの紫外線を蛍光体に照射することによって、各画素に対応する可視光が発生する。そして、背面ガラス板にアドレス用電極を設け、このアドレス用電極に信号を印加することにより、どの放電セルを表示するかを制御し、カラー画像の表示を行うものである。
【0196】
本発明のディスプレイ用前面フィルターはセル内のネオンガスの発光を選択的に遮断するネオンカットフィルターとして好適に利用することができる。上述したようにプラズマディスプレイでは蛍光体の発光によりカラー表示を行っているが、ネオン原子が励起された後基底状態に戻る際に600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光を発光することが知られている(映像情報メディア学会誌,Vol.51,No.4,P.459−463(1997))。このため、プラズマディスプレイでは、赤色にオレンジ色が混ざり鮮やかな赤色が得られない欠点があった。この欠点を解消するため、ネオン発光をカットすることが望まれている。このため、本発明の化合物をネオン発光吸収フィルターの組成物として利用する場合には、本発明の化合物が溶液状態で560〜620nmに吸収極大を有していることが好ましく、580〜605nmに吸収極大を有することがさらに好ましい。このとき560〜620nmの波長領域の吸収極大でのフィルターの透過率は、0.01〜80%の範囲であることが好ましく、1〜70%の範囲であることがさらに好ましい。またディスプレイの色再現性を高めるために、560〜620nmの波長領域の吸収波形は、シャープであることが好ましい。具体的には560〜620nmにおける吸収波形は、半幅値(吸収極大の吸光度の半分の吸光度を示す波長領域の幅)が、15〜100nmであることが好ましく、20〜70nmであることがより好ましく、25〜50nmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0197】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0198】
実施例1
(例示化合物1−1の合成)
下記スキームにより合成した。
【0199】
【化18】

【0200】
配位子として上記スクアリリウム化合物(1−1L)、2.00gをエタノール50mlに加熱溶解した。この溶液に、塩化銅(II)、0.40gのエタノール溶液を30分かけて滴下し、5時間加熱撹拌した。反応終了後、析出物をろ取、洗浄し、減圧乾燥して目的の例示化合物(1−1)、0.98gを得た。
【0201】
元素分析結果は目的錯体に3分子の水分子を加えることでよい一致を示した。
【0202】
元素分析(C2820Cl2CuN411
理論値(%) C、46.52;H、2.79;Cu、8.79;N、7.75
実測値(%) C、46.66;H、2.83;Cu、8.84;N、7.58
(例示化合物2−11の合成)
【0203】
【化19】

【0204】
配位子として上記非対称スクアリリウム化合物(2−11L)、1.04g、金属源に過塩素酸銅(II)六水和物、0.37gを用いた以外は上記例示化合物1−1の合成と同様にして、目的の例示化合物2−11、0.82gを得た。元素分析値は、目的錯体に2つの水分子を加えることでよい一致を示した。
【0205】
元素分析(C6078Cl2CuN620
理論値(%) C、53.87;H、5.88;Cu、4.75;N、6.28
実測値(%) C、53.76;H、6.01;Cu、4.80;N、6.17
(例示化合物1−24の合成)
下記スキームにより合成した。
【0206】
【化20】

【0207】
配位子として上記対称スクアリリウム化合物(1−24L)、1.50gをメタノール50mlに加熱溶解した。この溶液に、酢酸ニッケル(II)4水和物、0.43gのメタノール溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、さらに30分加熱攪拌し、析出した固体をろ取して目的の例示化合物(1−24)、1.31gを得た。
【0208】
元素分析結果は目的錯体にメタノール2分子を加えることでよい一致を示した。
【0209】
元素分析(C58828NiO10
理論値(%) C、62.76;H、7.45;N、10.09;Ni、5.29
実測値(%) C、62.69;H、7.42;N、9.98;Ni、5.46
(例示化合物2−23の合成)
【0210】
【化21】

【0211】
配位子として上記非対称スクアリリウム化合物(2−23L)、1.26g、金属源に銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート水和物、0.80gを用いた以外は上記例示化合物1−24の合成例と同様にして、目的の例示化合物2−23、0.73gを得た。元素分析値は、目的錯体にメタノール1分子を加えることでよい一致を示した。
【0212】
元素分析(C6342CuF12611
理論値(%) C、56.03;H、3.13;Cu、4.71;N、6.22
実測値(%) C、56.11;H、3.17;Cu、4.66;N、6.24
(例示化合物1−19の合成)
下記スキームにより合成した。
【0213】
【化22】

【0214】
配位子として上記対称スクアリリウム化合物(1−19L)、1.00gをメタノール100mlに加熱溶解した。この溶液に、金属源として(1−19M)、0.54gを粉末のまま加え、さらに1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷し、析出した固体をろ取、洗浄して目的の例示化合物(1−19)、0.86gを得た。元素分析結果は目的錯体に2分子のメタノールを加えることでよい一致を示した。
【0215】
元素分析(C801188NiO22
理論値(%) C、59.96;H、7.42;N、6.99;Ni、3.66
実測値(%) C、59.79;H、7.55;N、6.96;Ni、3.75
(例示化合物2−1の合成)
下記スキームにより合成した。
【0216】
【化23】

【0217】
配位子として上記非対称スクアリリウム化合物(2−1L)、1.15gをメタノール50mlに加熱溶解した。この溶液に、金属源として(2−1M)、0.93gのメタノール溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間加熱攪拌した。反応終了後、溶液を濃縮し、これにアセトニトリル50mlを加え、このメタノール/アセトニトリル混合溶液を氷冷し、析出した固体をろ取、洗浄して目的の例示化合物(2−1)、1.13gを得た。
【0218】
元素分析(C90118CuF6612
理論値(%) C、65.38;H、7.19;Cu、3.84;N、5.08
実測値(%) C、65.54;H、7.22;Cu、3.95;N、4.98
(例示化合物2−17の合成)
【0219】
【化24】

【0220】
配位子として上記非対称スクアリリウム化合物(2−17L)、1.15g、金属源に別途合成した上記(2−17M)、1.12gを用いた以外は上記例示化合物2−1の合成例と同様にして、目的の例示化合物2−17、1.20gを得た。元素分析値は、目的錯体にメタノール3分子を加えることでよい一致を示した。
【0221】
元素分析(C38445NiO14
理論値(%) C、53.48;H、5.20;N、8.21;Ni、6.88
実測値(%) C、53.66;H、5.24;N、8.31;Ni、6.94
実施例2 (可視光線吸収フィルタ−)
(可視光線吸収フィルター1A)
本発明の例示化合物(1−1)の0.5%ジメトキシエタン溶液を調製し、ガラス基板上にバーコーターで塗工、乾燥してコーティングガラスを作製した。このフィルムは、赤紫色を呈しており、本発明の可視光吸収剤(色素)は可視光を吸収することが分かった。
【0222】
(可視光線吸収フィルター1B)
本発明の例示化合物(1−1)の1.0%テトラヒドロフラン溶液とポリエステル樹脂の20%ジメトキシエタン溶液を2:8の割合で混合し、ガラス基板上にバーコーターで塗工、乾燥してコーティングフィルムを作製した。このフィルムは、赤紫色を呈しており、バインダーを含んだ組成物であっても可視光線を有効に吸収することが分かった。
【0223】
(本発明の可視光線吸収フィルター2A〜7B及び比較の可視光線吸収フィルター8A〜10B)
使用する色素を例示化合物(1−1)から表2に示す色素に変えた以外は同様にして本発明の可視光線吸収フィルター2A〜7B、9A、9B及び比較の可視光線吸収フィルター8A、8B及び10A〜11Bを作製した。ただし、9A、9B、11A及び11Bについては化合物1及び2、2モル当量と過塩素酸銅(II)、1モル当量をそれぞれ溶液中、混合した混合溶液を色素として用いた。
【0224】
【化25】

【0225】
作製した可視光線吸収フィルターについて下記評価を行った。
【0226】
(耐光性)
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターを用いてキセノン光(70000ルックス)を24時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率%(色素残存率%)を算出し、以下の基準で評価した。
【0227】
(色素残存率%)=(曝射試料極大吸収波長濃度/未曝射試料極大吸収波長濃度)×100
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が80%〜90%未満
△:色素残存率が80%未満
実用上は色素残存率90%以上が好ましい。
【0228】
(耐湿熱性)
耐湿熱性については、可視光線吸収フィルターを60℃、90%RHの条件化で14日間保存した後、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、保存前後での色度変化、すなわちΔEab値を測定し、以下の基準で評価した。
【0229】
A:ΔEabが3.2未満で色度変化がほとんど感じられない
B:ΔEabが3.2〜6.5未満で感覚的には同じ色に見える
C:ΔEabが6.5以上で色度変化が明らかに認識される
評価の結果を表2に示す。
【0230】
【表2】

【0231】
表から、本発明の色素は可視光線を有効に吸収し、耐光性、耐湿熱性に優れた可視光線吸収フィルターであることが分かる。また、さらには、本発明の色素はバインダーとの混合物として用いることでより優れた耐光性、耐湿熱性を示し、堅牢性に優れた可視光線吸収フィルターを提供することができる。
【0232】
一方、スクアリリウム化合物のみからなる色素を用いた場合には耐光性、耐湿熱性ともに本発明の色素に及ばないことが分かる。
【0233】
また、可視光線吸収フィルターフィルター9A及び9Bから明らかなように、本発明の化合物は、特定の構造を有するスクアリリウム化合物と金属イオン含有化合物を混合することでも容易に得られることが分かる。
【0234】
実施例3 (インク)
(着色微粒子分散物の合成)
油溶性ポリマーとしてポリビニルブチラール(積水化学(株)製BL−S、平均重合度350)15g、色素として本発明の例示化合物(1−6)8g及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内をN2置換後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全溶解させた。引き続き、さらにラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下して撹拌した後、超音波分散機(UH−150型、株式会社エスエムテー製)を用いて300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、着色微粒子分散物を調製した。以下、このようにして調製した分散物を着色微粒子分散物と略記する。
【0235】
(水系インクの作製)
調製した着色微粒子分散物をそれぞれ、色素の含有量が仕上がりインクとして、2質量%になる量を秤量し、エチレングリコール15%、グリセリン15%、サーフィノール465(日信化学工業社製)0.3%、残りが純水になるように調製し、さらに2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してインク組成物IJ−1を得た。例示化合物(1−6)を表3に示す色素に置き換えた以外は全く同様にしてIJ−2〜9を得た。ただし、IJ−8及びIJ−10については化合物1、5.34gもしくは化合物2、5.57gとビス(アセチルアセトナート)ニッケル2.45gを酢酸エチル中で溶解、混合した後、ポリビニルブチラールを添加し、以下同様に処理することでIJ−8及びIJ−10を得た。
【0236】
(サンプルの作製及び評価)
さらに、各インクを市販のエプソン社製インクジェットプリンタ(PM−800)を用いてコニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカミノルタ株式会社製)にプリントし、得られた画像の評価を下記の項目について行った。
【0237】
(色調)
各塗布試料について、10人のモニターによる目視評価で4段階評価を行った。○以上であることが望ましい。
【0238】
◎:鮮やかで澄んだ色
○:鮮やかな色
△:くすんだ色
×:汚い色
(耐光性)
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターを用いてキセノン光(70000ルックス)を72時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率%を算出し、以下の基準で評価した。
【0239】
低下率%(色素残存率%)=(曝射試料極大吸収波長濃度/未曝射試料極大吸収波長濃度)×100
A:色素残存率が90%以上
B:色素残存率が85%〜90%
C:色素残存率が80〜85%
D:色素残存率が80%未満
(耐水性)
マイクロピペットにて、得られた各プリント上に水を滴下し、1分後、指で擦ってプリントに乱れが生じたか否かを目視にて判定した
◎:実質的に全く変化が見られない
○:乱れていても画像が識別できる(許容レベル)
×:識別できないほどに画像が乱れたもの
(耐熱湿性)
各サンプルを50℃、80%RHの条件化で30日間保存した後、耐光性同様に色素残存率を算出し、評価した。
【0240】
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が85〜90%未満
△:色素残存率が80〜85%未満
×:色素残存率が80%未満で目視により色が濁って見える
色素残存率は85%以上(◎、○)であることが実用上好ましい。
【0241】
評価の結果を表3に示す。
【0242】
【表3】

【0243】
表から明らかなように、本発明のインクは鮮やかな色調を示し、比較例に対して耐光性、耐水性、耐熱湿性の面で優れていることが分かる。
【0244】
一方、比較の色素を用いたIJ−7、IJ−9及びIJ−10では耐光性、耐水性及び耐熱湿性に劣ることがわかり、本発明の色素をインクに用いることで堅牢性に優れ、画像保存性のよいインクを提供することができた。
【0245】
実施例4 (カラートナー)
《カラートナーの作製》
(カラートナーの作製:粉砕法)
ポリエステル樹脂100質量部、表4記載の本発明の色素及び比較化合物1、2及び比較化合物2と下記MS−1(金属イオン)をモル比で2:1の比で混合させた混合物をそれぞれ8質量部、ポリプロピレン3質量部とを混合、練肉、粉砕、分級し、体積平均粒径8.5μmの粉末を得た。さらにこの粉末100質量部とシリカ微粒子(数平均一次粒子径12nm)1.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工株式会社製)で混合し、粉砕法によるカラートナー1〜10を得た。
【0246】
【化26】

【0247】
(カラートナーの作製:重合法)
純水200ml中にドデシル硫酸ナトリウム5gを溶解した水溶液中に、表4記載の本発明の色素、比較化合物1、2及びMS−1の混合物15gを添加し、攪拌及び超音波を付与することにより水分散液を作製し、この本発明の可視光吸収剤を含有する水分散液と低分子量ポリプロピレン(数平均分子量3200)に熱を加えながら、界面活性剤により固形分濃度が30質量%となるように水中に乳化させた乳化分散液を予め調製した。
【0248】
上記分散液に低分子量ポリプロピレン乳化分散液60gを混合し、さらにスチレンモノマー220g、n−ブチルアクリレートモノマー40g、メタクリル酸モノマー12g、及び連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン5.4g、脱気済み純水2000mlを追加した後に、窒素気流下にて攪拌を行いながら70℃にて3時間保持し、乳化重合を行った。
【0249】
得られた色素含有樹脂微粒子の分散液1000mlに対して、水酸化ナトリウムを加えてpH≒7.0に調整した後、2.7mol%塩化カリウム水溶液を270ml添加し、さらにイソプロピルアルコール160ml、及びエチレンオキサイド平均重合度が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル9.0gを純水67mlに溶解させて添加し、75℃で6時間攪拌して反応を行った。
【0250】
得られた反応液を濾過、水洗し、さらに乾燥、解砕して着色粒子を得た。この着色粒子とシリカ微粒子(数平均一次粒子径12nm)1.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工株式会社製)で混合し、重合法によるカラートナー11〜20を得た。
【0251】
(現像剤の作製)
これらのカラートナー、10質量部に対しキャリア鉄粉「EFV250/400」(日本鉄粉製)900質量部を均一に混合し現像剤を得た。
【0252】
《カラートナーの評価》
(評価装置)
電子写真方式を採用した市販のカラー画像形成装置「コニカ9331」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製)の現像機に上記カラートナーと現像剤をセットしプリントを行い、下記評価項目について評価を行った。なお、カラートナー性能の差を明瞭にするため、4色の現像ユニット全てに上記カラートナーが使用できるよう改造して評価した。評価サンプルは、紙及びOHP上にそれぞれ反射画像(紙上の画像)及び透過画像(OHP画像)を作製した。なお、カラートナーの付着量は0.65〜0.75mg/cm2の範囲になるよう調整した。得られた各画像サンプルについて、耐光性、耐湿熱性、OHP画像の透明性を評価した。
【0253】
(耐光性)
耐光性については、記録した直後の画像濃度を測定した後、ウェザーメーター(アトラスC.165)を用いて、画像にキセノン光(70000ルックス)を7日間照射した後、再び画像濃度を測定し、キセノン光照射前後の画像濃度の差から色素残存率(%)を算出し、下記基準で評価した。画像濃度は反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定した。
【0254】
◎◎:色素残存率が95%以上
◎ :色素残存率が90〜95%未満
○ :色素残存率が85〜90%未満
△ :色素残存率が75〜85%未満
× :色素残存率が75%未満
(耐熱湿性)
耐熱湿性については、記録した直後の画像濃度を測定し、50℃、80%RHの条件化で14日間保存した後、再び画像濃度を測定し、前後の画像濃度の差から色素残存率(%)を算出し、評価した。画像濃度は反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、下記基準で評価した。また目視により色の変化を観察した。
【0255】
◎◎:色素残存率が95%以上
◎ :色素残存率が90〜95%未満
○ :色素残存率が80〜90%未満
△ :色素残存率が80%未満で目視により若干色が濁って見える
× :色素残存率が80%未満で目視により色が濁って見える
(OHP画像の透明性)
OHP画像の透明性の評価は下記のそれぞれの波長の分光透過率で行った。分光透過率は、330型自記分光光度計(日立製作所社製)を用い、カラートナーが担持されていないOHP用シートをリファレンスとし、カラートナー画像の可視分光透過率を測定し、イエロー570nm、マゼンタ650nm、シアン500nmでの分光透過率を求め、下記基準で評価した。
【0256】
○:分光透過率が80%以上で透明性が非常によく良好
△:分光透過率が70〜80%で透明性がよく実用上問題なし
×:分光透過率が70%以下で透明性が悪く実用上問題。
【0257】
評価の結果を表4に示す。
【0258】
【表4】

【0259】
表から明らかなように、本発明のカラートナーを用いて作製した画像は良好な耐湿熱性と高いOHP品質を示し、本発明のカラートナーはフルカラー用トナーとして使用するのに適している。さらに本発明のカラートナーを用いて作製した画像は、耐光性が良好なので長期の保存が可能である。
【0260】
実施例5 (光記録媒体)
(光記録媒体1の作製)
直径5インチのグルーブ付きポリカーボネート基板上に、本発明の色素(1−2)を用いて記録層(厚さ90nm)を塗布し、反射層(Ag、厚さ100nm)、保護膜(紫外線硬化アクリル樹脂、厚さ5μm)を定法に従って順次形成し、本発明の光記録媒体1を作製した。
【0261】
(光記録媒体2〜5の作製)
光記録媒体1の作製で用いた色素(1−2)に変えて下記表5に示す色素を用いた以外は同様にして、比較の光記録媒体2〜5を製造した。ただし光記録媒体3及び5では色素と1.0質量%の退色防止剤(B−6)との混合物を記録層として塗布した。
【0262】
【化27】

【0263】
(光記録媒体の評価)
このようにして作製した光情報記録媒体1〜5の反射率を測定したところ、それぞれ70%以上の良好な値を示した。
【0264】
これらの試料に658nmの半導体レーザーによりパワーを変化させて情報記録し、0.8mWで再生を行った。
【0265】
また、スガ試験機株式会社製キセノンフェードメーターを使用し、15時間の光曝射を行った後に同様の記録再生実験を行い、光曝射前と光曝射後の色素濃度から算出した色素残存率(%)、最低記録パワー及び再生回数を求めた。
【0266】
評価の結果を表5に示す。
【0267】
【表5】

【0268】
表から明らかなように、本発明の光記録媒体1〜3はDVD規格を満足する良好な記録、再生を行うことができた。また、比較の光記録媒体4及び5に比べ、特に耐光性に優れ、保存性に優れていることが分かった
実施例6 (カラーフィルター)
《カラーフィルターの作製》
(カラーフィルターCF−1の作製)
RGBカラーフィルターを得るために、下記の方法によりガラス板上に赤色(R)モザイク状パターン、緑色(G)モザイク状パターン及び青色(B)モザイク状パターンを形成した。下記に示す成分を用いて、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のカラーフィルター用感光性コーティング剤を調製した。使用した感光性ポリイミド樹脂ワニスは、光増感剤を含む感光性ポリイミド樹脂ワニスである。
【0269】
(カラーフィルター用感光性コーティング剤の成分)
R:
本発明の色素:(1−6) 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
G:
本発明の色素:(2−13) 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
B:
色材B−1 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
シランカップリング剤処理を行ったガラス板をスピンコーターにセットし、上記のRの赤色のカラーフィルター用感光性コーティング剤を最初300rpmで5秒間、次いで2000rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで80℃で15分間プリベークを行い、モザイク状のパターンを有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い900mJ/cm2の光量で露光を行った。
【0270】
次いで専用現像液及び専用リンスで現像及び洗浄を行い、ガラス板上に赤色のモザイク状パターンを形成させた。引き続いて緑色モザイク状パターン及び青色のモザイク状パターンを上記のGの緑色カラーフィルター用感光性コーティング剤及びBの青色のカラーフィルター用感光性コーティング剤を用いて上記の方法に準じて塗布及び焼き付けを行い、次いで常法に従いブラックマトリックスを形成させ、カラーフィルターCF−1を得た。
【0271】
(カラーフィルターCF−2〜4及び比較のカラーフィルターCF−5〜7CF−1の作製)
カラーフィルターCF−1の作製と同様に、Rの色素(1−6)、Gの色素(2−13)を表6に示す色素に変えた以外は同様にして本発明のカラーフィルターCF−2〜4及び比較のカラーフィルターCF−5〜7を作製した。
【0272】
【化28】

【0273】
《カラーフィルターの評価》
得られたフィルターについて色調、耐熱性及び耐光性について以下の方法で評価した。
【0274】
(色調)
各フィルターについて、10人のモニターによる目視評価で3段階評価を行った。○以上であることが望ましい。
【0275】
◎:鮮やかで澄んだ色
○:鮮やかな色
△:くすんだ色
(耐熱性)
パターン像が形成された下塗り層付ガラス基板を、該基板面において接するようにホットプレートにより150℃で3時間加熱した後、加熱前後での色度変化、すなわちΔEabを測定した。色度の測定には色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。ΔEab値の小さいほうが耐熱性に優れることを示す。
【0276】
(耐光性)
パターン像が形成された下塗り層付ガラス基板に対し、キセノンランプを70000ルックスで7日間照射した後、色度変化、すなわちΔEab値を測定した。色度の測定には色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。ΔEab値の小さい方が耐光性に優れることを示す。
【0277】
評価の結果を表6に示す。
【0278】
【表6】

【0279】
表より本発明のカラーフィルターCF−1〜CF−4は、比較のカラーフィルターCF−5〜CF−7に較べ、耐熱性、耐光性等の堅牢性が著しく向上しており、色調にも優れた性質を有していることが分かり、液晶カラーディスプレイ用等に適用可能なカラーフィルターとして優れた性質を有していた。
【0280】
実施例7 (ディスプレイ用前面フィルター)
(コーティングフィルム1の作製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(厚み100μm)に、本発明の色素(1−14)の0.4%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液(メチルエチルケトン/トルエン=1:1)0.5g、ポリエステル樹脂の20%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液6.5gを混合した後、バーコーターで塗工、乾燥して、膜厚5μmのコーティング膜を得た。このコーティングフィルムの透過率曲線は、585〜600nmに極小値を有しており、これ以外に明瞭な極小値はなく、可視光透過率の最小値の波長がネオン発光の波長領域である580〜600nmにあることから、透過率が高く、ネオン発光を有効に吸収することのできるネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0281】
(コーティングフィルム2の作製)
PET製フィルム(厚み100μm)に、本発明の色素(2−18)の0.5%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液(メチルエチルケトン/トルエン=1:1)0.6g、アクリル樹脂の35%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液4.0gを混合した後、バーコーターで塗工、乾燥して、膜厚5μmのコーティング膜を得た。このコーティングフィルムの透過率曲線は、580〜595nmに極小値を有しており、これ以外に明瞭な極小値はなく、可視光透過率の最小値の波長がネオン発光の波長領域である580〜600nmにあることから、透過率が高く、ネオン発光を有効に吸収することのできるネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0282】
(コーティングフィルム3の作製)
上記コーティングフィルム1の金属錯体含有層面と反対側のPET樹脂上に、イソシアネート樹脂をバインダーとし、酸化亜鉛を紫外線吸収剤として含有する紫外線吸収コート液(住友大阪セメント(株)製)をバーコーターでコーティングし、乾燥して、膜厚3μmの紫外線吸収層を形成した。該フィルターにおいて可視光透過率の極小波長は変化しなかった。
【0283】
スガ試験機株式会社製キセノンフェードメーター(FAL−25X−HC.B.EC)を用いてキセノン光を紫外線吸収層面より48時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存度%を算出したところ、87.3%であった。また、60℃、90%RH中に240時間保存した後のサンプルの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ95.7%であり、耐光性、耐湿熱性が良好であり、紫外線吸収層を有するネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0284】
(コーティングフィルム4の作製)
上記コーティングフィルム1の金属錯体含有層面と反対側のPET樹脂面上に、近赤外線吸収色素(N,N,N′,N′−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジインモニウムの六フッ化アンチモン酸塩)の0.5%シクロヘキサノン溶液0.3g、ポリエステル樹脂20%シクロヘキサノン溶液3gを混合し、バーコーターで塗工し、乾燥して、膜厚6μmのでコーティング膜を得た。このコーティングフィルムを日立分光光度計(U−3500)で測定した。透過率の最小値における波長は592nm及び1100nmであった。
【0285】
スガ試験機株式会社製キセノンフェードメーターを用いてキセノン光を近赤外線吸収層面より48時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存度%を算出したところ、92.6%であった。また、60℃、90%RH中に240時間保存した後のサンプルの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ95.9%であり、近赤外線吸収層を有するネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0286】
(コーティングフィルム5の作製)
上記近赤外線吸収色素(N,N,N′,N′−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジインモニウムの六フッ化アンチモン酸塩)の0.5%シクロヘキサノン溶液0.5g及び本発明の色素(1−14)の0.4%シクロヘキサノン溶液0.5gをポリエステル樹脂の20%シクロヘキサン溶液6.5gに混合し、PETフィルム(厚み100μm)に、バーコーターで塗工、乾燥して、膜厚6μmのコーティング膜を得た。さらにこのコーティングフィルムの近赤外線吸収色素及び本発明の金属錯体含有表面と反対側のPET樹脂面上に2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾールを紫外線吸収剤として含有する紫外線吸収コート液をバーコーターでコーティングし、乾燥して、膜厚3μmの紫外線吸収層を形成した。
【0287】
スガ試験機株式会社製キセノンフェードメーターを用いてキセノン光を紫外線吸収層面より48時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存度%を算出したところ、88.5%であった。また、60℃、90%RH中に480時間保存した後のサンプルの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ93.4%であった。
【0288】
(コーティングフィルム6の作製)
(電磁波カット層、ノングレア層の形成例)
酸化インジウム一酸化スズ競結体を用い、アルゴンガス、酸素ガスを用いて、ITO薄膜を形成したPETフィルム(厚み100μm)上に、上記コーティングフィルム4で作製した塗工液を用いて近赤外線吸収、ネオン発光吸収層を厚さ6μmで積層させた。さらに反対面上にアンチグレア層を有する厚み3mm、ARコーティング済みのPMMA板のノングレア層の形成されていない面と上記フィルターのITO面を貼り合わせて、プラズマディスプレイパネル用フィルターを作製したところ、平滑性の高い良好なフィルターを作製することができた。
【0289】
(比較例)
本発明の化合物(1−14)のかわりに、下記化合物4とMS−1の混合物を色素としてを使用した以外は上記コーティングフィルム2と同様にして紫外線吸収層を有するディスプレイ用前面フィルターを得た。
【0290】
【化29】

【0291】
キセノンフェザーメーターを用いてキセノン光を紫外線吸収層面より48時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存度%を算出したところ、68.2%であった。また、60℃、90%RH中に480時間保存した後のサンプルの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ80.8%であり、本発明の可視光吸収剤を用いた場合に較べ、耐光性、耐湿熱性に劣ることが分かった。
【0292】
また、さらに本発明の化合物(1−14)のかわりに、化合物4とMS−1の混合物を使用した以外は上記コーティングフィルム3と同様にして近赤外線吸収層を有するディスプレイ用前面フィルターを得た。同様の耐光性試験を行い、色素残存率(%)を測定した所、68.6%であった。また同様の耐湿熱性試験の結果は70.3%であった。
【0293】
以上より、本発明の金属錯体を用いることで耐光性及び耐湿熱性に優れ、透過率が高く、ネオン発光を有効に吸収できるネオン発光吸収フィルター及び紫外線吸収層、赤外線吸収層等を有するディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とするスクアリリウム金属錯体化合物。
【化1】

(式中、Mは金属原子を表す。環Bはスクアリン酸骨格との結合位の炭素原子及びその隣接位の窒素原子を含有する複素6員環である。Rは置換基であって、mは1〜4の整数を表す。Aは任意の有機基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される部分構造を有するスクアリリウム金属錯体化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【化2】

(式中、Mは金属原子を表す。B1〜B4はそれぞれ炭素原子、窒素原子または酸素原子であって、R1〜R4は不対電子対、水素原子または置換基を表す。Aは任意の有機基を表す。Xは単座または2座の副配位子であり、nは1〜3の整数であり、pは0以上の整数である。Wは対イオンであり、qは0以上の整数である。)
【請求項3】
前記一般式(1)または(2)において、Aが下記一般式(1−A)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【化3】

(式中、A1は5員環または6員環を表し、R′1は水素原子または置換基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)または(2)において、金属原子Mが銅、ニッケル、コバルト、アルミニウムまたは亜鉛のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクアリリウム金属錯体化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクアリリウム金属錯体化合物であって、吸収極大波長が可視光線域にあることを特徴とする色素。
【請求項6】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種及びバインダーを含有することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするカラートナー。
【請求項8】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするインク。
【請求項9】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項10】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするカラーフィルター。
【請求項11】
請求項5に記載の色素を少なくとも1種含有することを特徴とするディスプレイ用前面フィルター。

【公開番号】特開2008−74922(P2008−74922A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254133(P2006−254133)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】