説明

方向切換弁

【課題】二つの流出口を選択的に開閉することができるとともに、二つの流出口を共に全開にさせ得、かつ、流路切り換えの迅速化・省エネ化等を図ることのできる方向切換弁を提供する。
【解決手段】流入口10と二つの流出口11、12との間に、パイロット式の弁形態をとる二つの制御弁21、22が配在され、この二つの制御弁21、22とステッピングモータ15との間に、前記二つの制御弁21、22を相互に逆方向に開閉駆動するための、送り方向が逆の二つのねじ送り機構55、56を持つ逆動装置が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式冷暖房システム等に使用するのに好適な方向切換弁に係り、特に、一つの流入口と二つの流出口とを有し、この二つの流出口を選択的に開閉可能な方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求される場合があり、従来においては、例えば特許文献1(特に図2の電磁弁4及び13参照)に見られるように、電磁弁(ON/OFF弁)を2個用いる等して上記ニーズに応えるようにしている。
【0003】
また、方向切換弁としては、一つの流入口と二つの流出口とを有し、ステッピングモータ等の回転駆動源で弁体を回動させる等して、二つの流出口を選択的に開閉することにより方向(流路)の切り換えを行うようにされた三方切換弁がよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−295506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記電磁弁を2個用いる手法では、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配する際には2個の電磁弁を共に全開状態で維持する必要があり、そのため、2個の電磁弁に長時間継続して通電しなければならず、消費電力が大きくなる等の問題がある。
【0006】
また、ステッピングモータ等の回転駆動源で弁体を回動させる等して二つの流出口を選択的に開閉することにより方向(流路)の切り換えを行うようにされた従来の一般的な三方切換弁は、流路切り換えに比較的長時間を要するという課題の他、通常、二つの流出口を共に全開させることはできないため、上記ニーズ(圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配すること)には応えられず、仮にできたとしても、両流出口を共に全開するまでにステッピングモータ等の回転駆動源を相当長い時間回転させなければならないという問題がある。
【0007】
さらに、圧縮機からの冷媒を、同時にあるいは選択的に三つ以上の熱交換機に分配する際においても同様の問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、二つ又は複数の流出口を選択的に開閉することができるとともに、二つ又は複数の流出口を共に全開にさせ得、かつ、流路切り換えの迅速化・省エネ化等を図ることのできる方向切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る方向切換弁は、基本的には、流入口及び二つの流出口が設けられた弁本体と、前記流入口と二つの流出口との間に各々配設された二つの制御弁と、該二つの制御弁を開閉駆動するための単一の回転駆動源とを備え、前記回転駆動源と前記二つの制御弁との間に、前記二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動するための、送り方向が逆の二つのねじ送り機構を持つ逆動装置が設けられていることを特徴としている。
【0010】
好ましい態様では、前記逆動装置を特定状態で停止させることにより、前記二つの制御弁を共に全開にできるようにされる。
【0011】
前記逆動装置は、好ましくは、左ねじからなる第1おねじ部材及び第1めねじ部材を有する第1ねじ送り機構と、右ねじからなる第2おねじ部材及び第2めねじ部材とを有する第2ねじ送り機構と、前記回転駆動源により回転駆動される直歯平歯車からなる駆動歯車と、前記第1おねじ部材に設けられ前記駆動歯車に噛合する第1従動歯車と、前記第2おねじ部材に設けられ前記駆動歯車に噛合する第2従動歯車とを有し、前記第1及び第2従動歯車は、それぞれ前記第1及び第2ねじ送り機構の推力により前記駆動歯車に噛合しながら軸方向に摺動するようにされる。
【0012】
他の好ましい態様では、前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方は直動式のニードル弁の態様をとるようにされる。
【0013】
さらに他の好ましい態様では、前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方はパイロット式の弁形態をとるようにされる。
【0014】
前記パイロット式の弁形態をとる制御弁は、好ましくは、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体により背圧室と主弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記背圧室の圧力を前記流出口へ逃がすためのパイロット通路と、前記パイロット通路を開閉するためのパイロット弁体と、を備え、前記パイロット弁体が前記ねじ送り機構のおねじ部材を構成するようにされる。
【0015】
他の好ましい態様では、前記回転駆動源と前記逆動装置との間に減速機構が設けられる。
他の好ましい態様では、前記減速機構は不思議遊星歯車式減速機構とされる。
【0016】
他の好ましい態様では、前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられる。
他の好ましい態様では、前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられ、前記不思議遊星歯車式減速機構は、前記ステッピングモータ内に付設される。
【0017】
また、本発明に係る方向切換弁は、複数の制御弁と、該複数の制御弁を駆動するための単一の回転駆動源とを備え、前記回転駆動源と前記複数の制御弁との間に、予め2つのグループに分けられた複数の制御弁を、グループ毎に相互に逆方向に駆動するための、送り方向が逆の2種のねじ送り機構を持つ逆動装置が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る方向切換弁の好ましい態様では、ステッピングモータ等の回転駆動源と二つの制御弁との間に、二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動すべく、送り方向が逆の二つねじ送り機構を持つ逆動装置が設けられているので、回転駆動源の回転を例えば駆動歯車→従動歯車→ねじ送り機構→制御弁の弁体へと伝達することにより、二つの制御弁の弁体が相互に逆方向に移動する。これにより、二つの流出口を選択的に開閉できるとともに、逆動装置を特定状態、例えば二つの制御弁の弁体がねじ送り機構により原点位置から所定ピッチ分送られた状態、で停止させることにより、二つの制御弁(二つの流出口)を共に全開にすることができる。
【0019】
そのため、前述した如くの、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるヒートポンプ式冷暖房システムに本発明の方向切換弁を2個の電磁弁に代えて用いることができる。この場合、本発明の方向切換弁では、二つの流出口を共に全開にした後は、通電せずとも全開状態が維持されるので、2個の電磁弁を用いる場合に比して省エネ化等が図られる。
【0020】
また、制御弁としてパイロット式の弁形態をとるものを採用することにより、小さな駆動力で大口径の流出口を開閉することができる上、二つの制御弁(流出口)を開くには、パイロット弁体を少しだけリフトさせればよいので、回転駆動源として比較的小型(小出力)のステッピングモータ(+遊星歯車式減速機構)を用いても、従来型の三方切換弁等に比して、流路切り換えを迅速に行うことができ、流路切り換え応答性が向上する。
【0021】
さらに、本発明に係る方向切換弁では、二つのグループに分けられた複数の制御弁の弁体が各グループ毎に相互に逆方向に移動するので、複数の制御弁を選択的に開閉できるとともに、各制御弁を全開とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る方向切換弁の一実施形態(第1実施例)の動作状態(第1流出口全開、第2流出口全閉)を示す縦断面図。
【図2】第1実施例の動作状態(第1流出口全閉、第2流出口全開)を示す断面図。
【図3】第1実施例の動作状態(第1流出口及び第2流出口が共に全開)を示す断面図。
【図4】本発明に係る方向切換弁の第2実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、図2、図3は、本発明に係る方向切換弁の一実施形態(第1実施例)の異なる動作状態を示す縦断面図である。
【0024】
図示第1実施例の方向切換弁1は、例えば、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるカーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムにおいて前述した2個の電磁弁に代えて用いられるもので、流入口10と二つの流出口(第1流出口11及び第2流出口12)を有する弁本体2と、回転駆動源としてのステッピングモータ15とを備えている。
【0025】
弁本体2は、有底円筒状のモータ取付部2Aと該穴付き円柱状の基体部2Bとからなり、モータ取付部2Aには、ステッピングモータ15が取り付けられている。このステッピングモータ15は、モータ取付部2Aに螺合固定された断面凸字状外形を有する基台部41と、該基台部41に圧入固定された円筒状の保持案内部材42と、前記基台部41にその下端部が溶接接合された冷媒密封用のキャン18と、このキャン18の内周側に配在されたロータ16と、キャン18の外周に外嵌されたステータコイル17とを有し、ステータコイル17とロータ16との間には、エアギャップαが形成されている。該モータ15内には、不思議遊星歯車式減速機構40が付設され、モータ15の出力軸43(不思議遊星歯車式減速機構40の出力軸)の回転が中央挿通穴41a内で連接された連接回転軸45に伝達されるようになっている。なお、本例では遊星歯車式減速機構40により、ロータ16の回転を1/45程度に減速して出力するようになっている。
【0026】
連接回転軸45は、モータ取付部2Aの下部円筒部41b内を通り、その下端部がモータ取付部2Aの底部2b中央に設けられたピボット穴53に支持されるとともに、その外周には直歯平歯車からなる駆動歯車50が一体に固定されている(連接回転軸45は駆動歯車50の軸部となっている)。駆動歯車50は、モータ取付部2Aの底部2b上に摺動回転自在に乗せられている。
【0027】
弁本体2の基体部2Bには、上下に貫通する段付き縦穴4が左右に並設されている。図3において左側の縦穴4には、第1制御弁21が配在されるとともに、その下部に弁座11a付きの第1流出口11が設けられた弁座部材5が螺合固定され、右側の縦穴4には、第2制御弁22が配在されるとともに、その下部に弁座12a付きの第2流出口12が設けられた弁座部材5が螺合固定されている。また、基体部2Bの正面側(図の手前側)には、横穴状の流入口10が前記左右の縦穴4に共に連なるように設けられている。
【0028】
第1制御弁21と第2制御弁22は、基本構成は同じで、それぞれパイロット式の弁形態をとる。以下、第1制御弁21の方を主体に(代表して)説明する。第1制御弁21(22)は、ピストン型の主弁体23と、該主弁体23が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体23により背圧室26と主弁室25とに仕切られた嵌挿室24と、前記背圧室26の圧力を前記流出口11(12)へ逃がすためのパイロット通路27と、前記パイロット通路27を開閉するためのパイロット弁体31(32)と、を備えている。
【0029】
より詳細には、前記嵌挿室24の上部には、主弁体23(の上部大径部23a)が摺動自在に嵌挿されるスリーブ24sが内嵌固定され、嵌挿室24における主弁体23より上側に背圧室26が形成され、主弁体23より下側に主弁室25が形成されている。主弁体23は、上部大径部23aと、中間小径部23bと、弁体部23cとを有し、弁体部23cの下面側には、弁座11a(12a)に離接して流入口11(12)を開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる円環状のシール材23dが例えばかしめ固定されている。また、主弁体23の大径部23aの上端外周部には、嵌挿室24の天井面に接当して主弁体23の最大リフト位置を定める円環状凸部23sが突設され、さらに、大径部23aの外周にはシール材(ピストンリング)23fが装着されている。また、主弁体23を上方(開弁方向)に付勢すべく、上部大径部23aと弁座11a(12a)外周部との間には、圧縮コイルばねからなる開弁ばね28が縮装されている。
【0030】
一方、主弁体23の中央部には、背圧室26の圧力を流出口11(12)へ逃がすための弁座27a付きパイロット通路27が貫設されており、このパイロット通路27を開閉すべくその弁座27aに離接するようにパイロット弁体31(32)が配在されている。
【0031】
パイロット弁体31(32)は、弁座27aに離接してパイロット通路27を開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる円形状のシール材30dがその下面にかしめ固定された弁体部30aと、弁棒部30bと、上端小径軸部30cとを有する。
【0032】
そして、第1制御弁21のパイロット弁体31における弁棒部30bには、左ねじからなるおねじ部(以下、左おねじ部31eと称する)が設けられており、この左おねじ部31eは、左側の縦穴4の小径段付き上縦穴部4aに圧入等により固着された固定ナット部材33の左ねじからなるめねじ部(以下、左めねじ部33iと称する)に螺合せしめられている。本実施例では、上記左おねじ部31eが設けられたパイロット弁体31と左めねじ部33iが設けられた固定ナット部材33とで、左回り(反時計回り)に回転させると下方に移動し、右回り(時計回り)に回転させると上方に移動する左ねじ送り機構55が構成されている。
【0033】
また、第1制御弁21のパイロット弁体31の上端小径軸部30cには、前記駆動歯車50に噛合する直歯平歯車からなる第1従動歯車51が一体に固定されている。
【0034】
一方、第2制御弁22のパイロット弁体32における弁棒部30bには、右ねじからなるおねじ部(以下、右おねじ部32eと称する)が設けられており、この右おねじ部32eは、右側の縦穴4の小径段付き上縦穴部4aに圧入等により固着された固定ナット部材34の左ねじからなるめねじ部(以下、左めねじ部34iと称する)に螺合せしめられている。本実施例では、上記左おねじ部32eが設けられたパイロット弁体32と左めねじ部34iが設けられた固定ナット部材34とで、右回り(時計回り)に回転させると下方に移動し、左回り(反時計回り)に回転させると上方に移動する、前記左ねじ送り機構55とは送り方向が逆の右ねじ送り機構56が構成されている。
【0035】
また、第2制御弁22のパイロット弁体32の上端小径軸部30cには、前記駆動歯車50に噛合する直歯平歯車からなる第2従動歯車52が一体に固定されている。
【0036】
したがって、本実施例では、前記左ねじ送り機構55と、右ねじ送り機構56と、駆動歯車50と、第1従動歯車51と、第2従動歯車52とで逆動装置が構成され、第1及び第2従動歯車51、52は、それぞれ前記第1及び第2ねじ送り機構55、56のねじ送り推力により駆動歯車50に噛合しながら軸方向に摺動する。
【0037】
また、本実施例の方向切換弁1では、第1制御弁21及び第1制御弁22の主弁室25-25間に流入口10が形成されており、流入口10は第1制御弁21及び第1制御弁22の主弁室25、25にそれぞれ連通するとともに、パイロット通路27、27(二つのうちの一方は必ず開いている)やねじ送り機構55、56のおねじ-めねじ間隙等を介して上縦穴部4aやモータ取付部2Aの下部円筒部41b内にも連通しており、したがって、流入口10、左右の両主弁室25、25、上縦穴部4a、4aや下部円筒部41b内等は、高圧(等圧)の冷媒が充満することになる。
【0038】
また、それぞれパイロット式の弁形態をとる第1制御弁21及び第1制御弁22において、主弁室25の圧力をP1、背圧室26の圧力をP2、流出口11、12の圧力をP3、背圧室26の水平断面積(主弁体23の受圧面積)をAp、流出口11、12の水平断面積をAv、開弁ばね28の付勢力をPfとし、主弁体23を押し上げる力を開弁力、主弁体23を押し下げる力を閉弁力とすれば、第1制御弁21及び第1制御弁22の開弁条件は、
閉弁力 = P2×Ap<開弁力 = P1×(Ap-Av)+P3×Av+Pf
となる。
【0039】
このような構成とされた方向切換弁1においては、モータ15に所定態様で通電して駆動歯車50を例えば反時計回りに回転させると、従動歯車51、52は時計回りに回転しながら軸方向(上下方向)に摺動し、これにより、第1制御弁21のパイロット弁体31は左ねじ送り機構55のねじ送りにより上方に移動し、第2制御弁22のパイロット弁体32は右ねじ送り機構56により下方に移動する。
【0040】
いま、図1に示される如くに、第1制御弁21のパイロット弁体31が最上昇位置まで引き上げられてパイロット通路27を開き、第2制御弁22のパイロット弁体32がパイロット通路27を閉じて、第1制御弁21(第1流出口11)が全開の状態(この状態では、流入口10からの冷媒は第2流出口12へのみ流れる)とすると、この状態から、モータ50に所定態様で通電して駆動歯車50を所定角度時計回りに回転させると、図2に示される如くに、第1制御弁21のパイロット弁体31は左ねじ送り機構55のねじ送りにより最下降位置まで移動してパイロット通路27を閉じ、第2制御弁22のパイロット弁体32は右ねじ送り機構56により最上昇位置へ移動してパイロット通路27を開く。これにより、第2制御弁22においては[閉弁力<開弁力]となり、主弁体23は、その円環状凸部23sが天井ストッパ部35sに接当する最大リフト位置まで上昇し、第2流出口12が全開となる。それに対し、第1制御弁21においては、[閉弁力>開弁力]となり、主弁体23は第1流出口11を閉じる。そのため、この状態では、流入口10からの冷媒は第2流出口12へのみ流れる。なお、主弁体23は、[閉弁力>開弁力]となる以前に、パイロット弁体31の押圧により弁座11aに着座されることもできる。
【0041】
次に、上記パイロット弁体32が最上昇位置にある状態(第2流出口12のみが開いている状態)から、モータ50に所定態様で通電して駆動歯車50を前記所定角度の半分程度反時計回りに回転させると、第1制御弁21のパイロット弁体31は左ねじ送り機構55のねじ送りにより上方に前記した開閉動作時の半分程度移動し、第2制御弁22のパイロット弁体32は右ねじ送り機構56により下方に前記した開閉動作時の半分程度移動し、両パイロット弁体31、32の高さ位置が略同じとなり、両パイロット通路27が開かれた状態となる。そのため、このときは、第1制御弁21、第2制御弁22が共に全開とされ、流入口10からの冷媒は第1流入口11及び第2流出口12の両方へ流れる。
【0042】
なお、前記した開閉動作終了後、モータ15への通電は停止されるが、二つの制御弁21、22は上記状態を維持する。
【0043】
以上のように、本実施例の方向切換弁1においては、ステッピングモータ15と二つの制御弁21、22との間に、二つの制御弁21、22を相互に逆方向に開閉駆動すべく、送り方向が逆の二つねじ送り機構55、56を持つ逆動装置が設けられているので、二つの制御弁21、22のパイロット弁体31、32を相互に逆方向に移動させることができ、これにより、二つの流出口11、12を選択的に開閉できるとともに、二つのねじ送り機構55、56を特定状態で停止させることにより、二つの制御弁21、22(二つの流出口11、12)を共に全開にすることができる。
【0044】
そのため、前述した如くの、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるヒートポンプ式冷暖房システムに本実施形態の方向切換弁1を2個の電磁弁に代えて用いることができる。この場合、本実施形態の方向切換弁1では、二つの流出口11、12を共に全開にした後は、通電せずとも全開状態が維持されるので、2個の電磁弁を用いる場合に比して省エネ化等が図られる。
【0045】
また、制御弁としてパイロット式の弁形態をとるものを採用することにより、小さな駆動力で大口径の流出口を開閉することができる上、二つの制御弁21、22(流出口11、12)を開くには、パイロット弁体31、32を少しだけリフトさせればよいので、回転駆動源として比較的小型(小出力)のステッピングモータ(15+遊星歯車式減速機構40)を用いても、従来型の三方切換弁等に比して、流路切り換えを迅速に行うことができ、流路切り換え応答性が向上する。
【0046】
なお、本発明に係る方向切換弁は、上記した第1実施例の方向切換弁1の構成に限られないことは勿論であり、様々な変更を加えることができる。
【0047】
例えば、上記第1実施例では、二つの制御弁21、22は共にパイロット式の弁形態をとるものであったが、図4に示される第2実施例の方向切換弁1’のように、二つの制御弁21’、22’としてニードル弁体31’、32’を持つ直動型のものを採用し、小口径の流出口11’、12’を開閉するようにしてもよく、この場合も二つの制御弁21’、22’(二つの流出口11’、12’)を共に全開にすることができ、第1実施例と同様な効果を奏する。
【0048】
また、一つの電動弁にパイロット式制御弁(第1実施例)と直動型のニードル弁(第2実施例)を混在させて設けても良い。
【0049】
さらに、左ねじ送り機構及び右ねじ送り機構の昇降又は回転により駆動されるものであれば、各ねじ送り機構により駆動される弁の形態は、上記の第1及び第2実施例以外のいかなる形態の弁であっても良い。すなわち、例えば回転することにより流路を切り換えるボール弁等のロータリー弁を、該ロータリー弁が昇降することなく左ねじ送り機構及び/あるいは右ねじ送り機構と連結するようにしても良い。例えば、左ねじ送り機構及び/あるいは右ねじ送り機構の先端(雄ねじ部の先端)とロータリー弁との一方に、該ロータリー弁の回転中心軸方向に突出する横断面矩形の凸部を設け、その他方に、前記凸部に係合する凹部を設ければ、ねじ送り機構の回転がロータリー弁に伝達される際、前記凸部又は凹部が該ロータリー弁の中心軸方向に摺動して、ねじ送り機構の回転のみがロータリー弁に伝達され、ロータリー弁はその昇降が防止される。
【0050】
さらにまた、前述の説明においては、駆動歯車50には、2つの従動歯車(第1従動歯車51及び第2従動歯車52)が歯合し、2つのねじ送り機構(左及び右送りねじ機構55、56)を介して2つの制御弁が駆動されるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、3つ以上の複数の制御弁を複数の左及び右ねじ送り機構を用いて駆動制御することも可能である。すなわち、複数の制御弁を予め2つのグループに分けておき、一方のグループの各制御弁の駆動には個別に左ねじ送り機構を用い、また他方のグループの各制御弁の駆動には個別に右ねじ送り機構を用い、そして各ねじ送り機構の従動歯車を駆動歯車50に歯合させても良い。この場合、各ねじ送り機構は、駆動歯車50の回転軸を中心とする円の周上に配置される。
【符号の説明】
【0051】
1 方向切換弁
2 弁本体
10 流入口
11 第1流出口
12 第2流出口
15 ステッピングモータ
21 第1制御弁
22 第2制御弁
23 主弁体
24 嵌挿室
25 主弁室
26 背圧室
27 パイロット通路
28 開弁ばね
31 パイロット弁体
31e 左おねじ部
32 パイロット弁体
32e 右おねじ部
33 固定ナット部材
33i 左めねじ部
34 固定ナット部材
34i 右めねじ部
40 遊星歯車式減速機構
43 出力軸
45 連結回転軸
50 駆動歯車
51 第1従動歯車
52 第2従動歯車
55 左ねじ送り機構
56 右ねじ送り機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び二つの流出口が設けられた弁本体と、前記流入口と二つの流出口との間に各々配設された二つの制御弁と、該二つの制御弁を開閉駆動するための単一の回転駆動源とを備え、前記二つの制御弁によって前記二つの流出口を選択的に開閉可能な方向切換弁であって、
前記回転駆動源と前記二つの制御弁との間に、前記二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動するための、送り方向が逆の二つのねじ送り機構を持つ逆動装置が設けられていることを特徴とする方向切換弁。
【請求項2】
前記逆動装置を特定状態で停止させることにより、前記二つの制御弁を共に全開にできるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の方向切換弁。
【請求項3】
前記逆動装置は、左ねじからなる第1おねじ部材及び第1めねじ部材を有する第1ねじ送り機構と、右ねじからなる第2おねじ部材及び第2めねじ部材とを有する第2ねじ送り機構と、前記回転駆動源により回転駆動される直歯平歯車からなる駆動歯車と、前記第1おねじ部材に設けられ前記駆動歯車に噛合する第1従動歯車と、前記第2おねじ部材に設けられ前記駆動歯車に噛合する第2従動歯車とを有し、前記第1及び第2従動歯車は、それぞれ前記第1及び第2ねじ送り機構の推力により前記駆動歯車に噛合しながら軸方向に摺動するようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方向切換弁。
【請求項4】
前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方は、直動式のニードル弁であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方向切換弁。
【請求項5】
前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方はパイロット式の弁形態をとることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方向切換弁。
【請求項6】
前記パイロット式の弁形態をとる制御弁は、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体により背圧室と主弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記背圧室の圧力を前記流出口へ逃がすためのパイロット通路と、前記パイロット通路を開閉するためのパイロット弁体と、を備え、前記パイロット弁体が前記ねじ送り機構のおねじ部材を構成していることを特徴とする請求項5に記載の方向切換弁。
【請求項7】
前記回転駆動源と前記逆動装置との間に減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方向切換弁。
【請求項8】
前記減速機構は、不思議遊星歯車式減速機構であることを特徴とする請求項7に記載の方向切換弁。
【請求項9】
前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方向切換弁。
【請求項10】
前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられており、前記不思議遊星歯車式減速機構は、前記ステッピングモータ内に付設されていることを特徴とする請求項8に記載の方向切換弁。
【請求項11】
複数の制御弁と、該複数の制御弁を駆動するための単一の回転駆動源とを備えた方向切換弁であって、
前記回転駆動源と前記複数の制御弁との間に、予め2つのグループに分けられた複数の制御弁を、グループ毎に相互に逆方向に駆動するための、送り方向が逆の2種のねじ送り機構を持つ逆動装置が設けられていることを特徴とする方向切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225496(P2012−225496A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96406(P2011−96406)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】