説明

旅行時間データベース作成装置

【課題】所定時間毎に送信された車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路を推定し、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出することによって旅行時間データベースを作成するようにする。
【解決手段】車両の現在位置に関するデータを処理して各リンクのリンク旅行時間を算出し、旅行時間データベースを作成する旅行時間データベース作成装置であって、所定時間毎に検出された車両の現在位置間の走行経路を推定する走行経路処理部、及び、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出する旅行時間算出処理部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行時間データベース作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるナビゲーション装置においては、道路地図データに基づいて、設定された出発地から目的地までの最適な経路を探索して、表示手段に表示するようになっている。この場合、前記出発地から目的地までの距離が最短となるように経路を設定したり、所要時間が最短となるように経路を設定するようになっている。
【0003】
また、実際の交通量や渋滞状況を考慮して適切な経路を設定することができるように、実際に道路を走行する車両が、所定の道路区間を通過する毎に、計測した当該道路区間を通過する所要時間等のデータを交通情報センタに送信するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、交通情報センタでは多数の車両から受信した所要時間を統計処理し、目的地までの所要時間が最短となる経路を探索するために利用することができるデータベースを作成するようになっている。
【特許文献1】特開2004−20288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシステムにおいては、各車両が所定の道路区間を通過する毎にデータを交通情報センタに送信する必要があるので、通信回数が多くなり、また、各種の情報に関するデータを送信するので、1回の通信におけるデータ量も多くなり、通信コストが高くなってしまう。もっとも、データをまとめて送信するようにして通信回数を削減することも考えられるが、この場合、1回に多量のデータを送信するので、1回の通信時間が長くなり通信コストをそれほど低減することができず、また、多量のデータの処理に長時間が必要となる。
【0005】
本発明は、前記従来のシステムの問題点を解決して、所定時間毎に送信された車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路を推定し、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出することによって旅行時間データベースを作成する旅行時間データベース作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の旅行時間データベース作成装置においては、車両の現在位置に関するデータを処理して各リンクのリンク旅行時間を算出し、旅行時間データベースを作成する旅行時間データベース作成装置であって、所定時間毎に検出された車両の現在位置間の走行経路を推定する走行経路処理部、及び、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出する旅行時間算出処理部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信回数及び通信するデータ量を抑制して少ない通信コストで取得されたデータに基づき、高い精度の旅行時間データベースを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の現在位置の変遷を示す第1の図、図2は本発明の第1の実施の形態における車両の走行経路に含まれるリンクを示す第1の図である。
【0010】
本実施の形態において、旅行時間データベース作成装置は、所定期間に亘(わた)って複数の車両の車載装置から取得した現在位置に関するデータを格納して蓄積する現在位置データベース、該現在位置データベースに蓄積された現在位置に関するデータを処理して各リンクのリンクデータとしてのリンク旅行時間を算出し、算出されたリンク旅行時間を統計処理し、統計処理されたリンク旅行時間を格納する旅行時間データベースを作成する旅行時間データベース作成装置としてのデータ処理サーバを有する。
【0011】
ここで、前記現在位置データベースは、乗用車、トラック、バス、オートバイ等の車両に搭載された車載装置が、所定時間毎に情報収集センタ等のセンタに対して送信した車両の現在位置に関するデータ、すなわち、現在位置データを所定期間に亘って蓄積したものである。なお、前記所定時間はあらかじめ設定されている。また、前記所定期間は任意に設定することができる。
【0012】
この場合、前記車両は、あらかじめ前記センタに登録され、登録IDを所有するものであることが望ましい。また、前記車載装置も登録されていることが望ましい。また、前記センタは、前記車載装置から現在位置データを受信する通信装置、及び、前記車載装置から受信した現在位置データを格納する半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記憶装置を有する。また、前記車載装置は、例えば、無線通信機能を備える車両用ナビゲーション装置であるが、GPS(Global Positioning System)、地磁気センサ、距離センサ、ステアリングセンサ、ビーコンセンサ、ジャイロセンサ等によって現在位置を検出する現在位置装置、及び、該現在位置装置が検出した現在位置を示す座標値や車両識別情報を含む現在位置データを所定時間毎に前記センタに対して送信する通信装置を有するものであれば、いかなる種類の装置であってもよい。
【0013】
例えば、前記車両は、タクシー会社に所属するタクシーであり、前記センタはタクシー会社の運行管理センタである。この場合、前記タクシー会社に所属する複数台のタクシーの車載装置は、各々、所定時間毎に現在位置データを前記運行管理センタに送信する。すると、該運行管理センタに配設された運行管理サーバは、受信した各タクシーの現在位置データを記憶装置に格納する。これにより、前記運行管理センタでは各タクシーの運行状況を管理することができる。また、前記記憶装置に格納された各タクシーの現在位置データを蓄積することによって、前記現在位置データベースとして使用することができる。
【0014】
また、例えば、前記車両は、運送会社に所属するトラックであり、前記センタは運送会社の運行管理センタである。この場合、前記運送会社に所属する複数台のトラックの車載装置は、各々、所定時間毎に現在位置データを前記運行管理センタに送信する。すると、該運行管理センタに配設された運行管理サーバは、受信した各トラックの現在位置データを記憶装置に格納する。これにより、前記運行管理センタでは各トラックの運行状況、各トラックによって搬送される荷物の搬送状況等を管理することができる。また、前記記憶装置に格納された各トラックの現在位置データを蓄積することによって、前記現在位置データベースとして使用することができる。
【0015】
さらに、例えば、前記車両は、バス会社に所属する路線バスであり、前記センタはバス会社の運行管理センタである。この場合、前記バス会社に所属する複数台の路線バスの車載装置は、各々、所定時間毎に現在位置データを前記運行管理センタに送信する。すると、該運行管理センタに配設された運行管理サーバは、受信した各路線バスの現在位置データを記憶装置に格納する。これにより、前記運行管理センタでは各路線バスの運行状況を管理することができる。また、バスロケーションシステムのデータとして利用し、バスの停留所に配設された表示装置に到着予定の路線バスの位置、すなわち、ロケーションを表示させるようにすることもできる。さらに、前記記憶装置に格納された各路線バスの現在位置データを蓄積することによって、前記現在位置データベースとして使用することができる。
【0016】
そして、前記データ処理サーバは、道路データ、探索データ等を含む地図データ等を記憶する記憶手段としてのデータ記録部、車両の現在位置の変遷に基づいて、車両が通過した地点間の走行経路を推定する走行経路処理部、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出する旅行時間算出処理部、及び、算出された各リンクのリンク旅行時間を統計処理する統計処理部を有する。なお、前記道路データには、道路の分岐点(交差点、T字路等を含む)、少なくとも道路の屈曲点の位置を示すノード、及び、各ノード間を連結するリンクに関するデータが含まれている。さらに、リンクに関するデータには、リンクに付与された識別番号であるリンクID、リンクにおける始点及び終点の座標、始点から終点までの距離等の情報が含まれている。
【0017】
また、前記データ処理サーバは、必要に応じ、各リンクのリンク旅行時間に基づいて各リンクのリンクデータとしての渋滞度、車速等を算出することができる。すなわち、旅行時間データベースに格納される各リンクのリンクデータは、リンク旅行時間だけでなく、渋滞度、車速等を含むものであってもよい。さらに、前記旅行時間データベースには、前記リンクデータとともに、該リンクデータが変化する要因、すなわち、リンクデータ変化要因が格納される。
【0018】
前記要因には、時間的要因、カレンダー要因、気象要因、偶発的要因等がある。前記時間的要因は、例えば、15分間程度の狭い時間帯、1時間程度の広い時間帯、朝、昼、夕、夜、深夜等のより広い大別された時間帯等であり、同じリンクであっても、時間帯が異なれば、旅行時間、渋滞度、車速等が変化する。また、前記カレンダー要因には、曜日、日付、季節等があり、同じリンクであっても、週末と週日とで、所要時間、渋滞度、車速等が変化し、五十日(ごとうび)、連休期間、連休明け、盆休み、年末年始、夏休み等も普段とは所要時間、渋滞度、車速等が変化する。さらに、前記偶発的要因には、事故、通行規制、お祭りやスポーツ大会のようなイベント等があり、同じリンクであっても、事故、通行規制、イベント等がある場合には、旅行時間、渋滞度、車速等が変化する。
【0019】
次に、前記構成の旅行時間データベース作成装置の動作について説明する。まず、データ処理サーバが、現在位置データベースから取得した現在位置データに基づいてリンク旅行時間を算出する基本的な動作について説明する。
【0020】
ここでは、ある車両αが図1に示されるような地図に含まれる道路上を走行した場合について説明する。この場合、前記車両αの車載装置は、所定時間としての5分毎に現在位置データを送信し、A地点、B地点及びC地点を順次通過したものとする。これらA地点、B地点及びC地点は、現在位置が測定された地点であり、図1において、各地点に示される日時は各地点において現在位置が測定された日時である。
【0021】
まず、前記データ処理サーバの走行経路処理部は、同一の車両に関して連続して検出された2つの現在位置間の走行経路、すなわち、A地点からB地点までの車両αの走行経路を推定する。この場合、走行経路処理部が、データ記録部に記憶されている地図データにアクセスして、経路探索を行い、前記走行経路を推定し、前記車両αが走行したリンクを特定する。これにより、ノード及びリンクが、図2に示されるように特定されたものとする。図2において、小さな○はノードを示し、大きな○はA地点及びB地点を示している。また、各ノードを結ぶ直線はリンクを示し、各リンクの下の3桁(けた)の数字はリンクIDを示し、該リンクIDの下の括弧内の数字はリンクの始点から終点までの距離、すなわち、リンク長(単位:〔m〕)を示している。さらに、A地点及びB地点が含まれるリンクの上の数字は、ノードからA地点及びB地点までの距離(単位:〔m〕)を示している。
【0022】
そして、旅行時間算出処理部は、A地点からB地点までの旅行時間を分配する。この場合、各リンクのリンク長に比例させて旅行時間を分配する。図2に示される例において、A地点からB地点までの距離は、次の式(1)のようにして求められる。
130+300+180+200=810〔m〕 ・・・式(1)
また、A地点からB地点までの旅行時間が前記所定時間に等しいので5分であるから、A地点からB地点までの平均車速は、次の式(2)のようにして求められる。
810〔m〕÷5分×60÷1000=9.72〔km/h〕 ・・・式(2)
これに基づいて、A地点からB地点までの旅行時間を各リンクのリンク長に比例させて分配すると、
ID101のリンクの旅行時間:111.1秒
ID300のリンクの旅行時間:66.7秒
となる。このようにして、A地点での時刻(10:00)におけるID101及びID300のリンクの旅行時間が求められる。
【0023】
なお、ID100及びID301のリンクについては、リンクの全長がA地点からB地点までの範囲に含まれておらず、A地点からB地点までの範囲外の平均車速等を推定することができないので、旅行時間を算出しないものとする。
【0024】
続いて、前記データ処理サーバは、B地点からC地点までの走行経路を推定し、前述と同様にして、リンクの全長がB地点からC地点までの範囲に含まれるリンクの旅行時間を算出する。そして、以降同様の動作を繰り返して行う。
【0025】
次に、データ処理サーバが、算出されたリンク旅行時間を統計処理する基本的な動作について説明する。この場合、データ処理サーバの統計処理部は、同一のリンクの同一の時間帯におけるリンク旅行時間を統計処理する。
【0026】
図3は本発明の第1の実施の形態における車両の現在位置の変遷を示す第2の図、図4は本発明の第1の実施の形態における車両の走行経路に含まれるリンクを示す第2の図である。
【0027】
ここでは、図1に示される例と同一の時間帯に含まれる現在位置データであって、前記車両αとは異なる車両βの車載装置が送信した現在位置データに基づいて、同様にリンク旅行時間を算出するものとする。なお、前記時間帯は、例えば、5分単位、30分単位、1時間単位等に適宜設定することができる。そして、データ処理サーバは、同一の時間帯に属する現在位置データを処理して算出された旅行時間を統計処理して、旅行時間データベースを作成するようになっている。ここでは、前記時間帯が15分単位で設定されているものとする。そのため、例えば、午前10時台であれば、前記時間帯は、10:00〜10:15、10:15〜10:30、10:30〜10:45及び10:45〜11:00の4つに区切られるので、10:00〜10:15の時刻における現在位置データは同一の時間帯に含まれるものである。
【0028】
この場合、車両βは図3に示されるような地図に含まれる道路上を走行したものとして説明する。そして、前記車両βの車載装置は、所定時間としての5分毎に現在位置データを送信し、A’地点、B’地点及びC’地点を順次通過したものとする。これらA’地点、B’地点及びC’地点は、現在位置が測定された地点であり、図3において、各地点に示される日時は各地点において現在位置が測定された日時である。該日時から、図3に示される例の現在位置データが図1に示される例と同一の時間帯に含まれる現在位置データであることが分かる。
【0029】
そして、前記データ処理サーバは、図1に示される例と同様に、A’地点からB’地点までの走行経路を推定する。これにより、ノード及びリンクが、図4に示されるように特定されたものとする。なお、図4は前記図2と同様のものである。続いて、旅行時間算出処理部は、図2に示される例と同様にして、各リンクのリンク長に比例させて旅行時間を分配する。この場合、A’地点からB’地点までの距離を求め、該距離をA’地点からB’地点までの旅行時間である5分で除して、A’地点からB’地点までの平均車速を算出する。そして、これに基づいて、A’地点からB’地点までの旅行時間を各リンクのリンク長に比例させて分配すると、
ID101のリンクの旅行時間:91.8秒
ID300のリンクの旅行時間:55.1秒
ID301のリンクの旅行時間:101.0秒
となる。このようにして、A’地点での時刻(10:01)におけるID101、ID300及びID301のリンクの旅行時間が求められる。
【0030】
この場合、図1に示される例におけるリンクの旅行時間及び図3に示される例におけるリンクの旅行時間は、要因としての時間帯が同一であるので、統計処理することができる。ここでは、統計処理として平均値を算出するものとする。その結果、
ID101のリンクの旅行時間:平均101.5秒
ID300のリンクの旅行時間:平均60.9秒
ID301のリンクの旅行時間:平均101.0秒
となる。なお、ID301のリンクの旅行時間については、統計処理の対象となるサンプルが図3に示される例のみであるので、図3に示される例における旅行時間がそのまま使用されている。
【0031】
このような統計処理の結果から、ID101のリンク及びID300のリンクは、図1に示される例と比較して、旅行時間がより短く、より空いていることが分かる。このことから、統計処理の対象となるサンプルの数を増やすことによって、走行する車両の所定時間毎の現在位置データに基づいて、各リンクの旅行時間等の詳細なリンクデータを高い精度で得られることが分かる。
【0032】
次に、前記旅行時間データベース作成装置の動作全体について説明する。
【0033】
図5は本発明の第1の実施の形態における旅行時間データベース作成システムの動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、データ処理サーバは、現在位置データベースにアクセスし、動作を開始する。そして、前記データ処理サーバは、第1のループをスタートして、全走行データ分繰り返すようになっている。すなわち、すべての走行データ分の現在位置データについて、後述する動作を繰り返し行う。ここで、前記現在位置データベースには統計処理を行うに十分なサンプル数の現在位置データが蓄積されているものとする。なお、全走行データ分の現在位置データとは、該現在位置データが蓄積されているすべての車両の各々に関するすべての走行について取得された現在位置データのことである。
【0035】
続いて、前記データ処理サーバは、現在位置データベースから1走行データを取得する。ここで、1走行データとは、1台の車両に搭載された車載装置が、当該車両のエンジンを起動してから停止させるまで、すなわち、発車から停車までの間に、所定時間毎に送信した現在位置データである。そのため、前記車両が1日の間に発車及び停車を何回か繰り返せば、1日分のデータとして複数の走行データが蓄積される。なお、現在位置データベースに蓄積されている現在位置データは、1日分のデータであってもよいが、何日間かの所定期間に亘って蓄積されたものであることが望ましい。また、現在位置データを送信する車載装置を搭載した車両が複数台であるので、全走行データは、複数台の車両の各々に関する複数の走行データである。例えば、現在位置データベースに車両α、車両β、車両γ・・・車両ωの各々に関して、複数の走行データが蓄積されている場合、車両αの第1番目の走行データを取得する。
【0036】
そして、前記データ処理サーバは、第2のループをスタートして、取得位置データ、すなわち、現在位置データベースから取得した1走行データに含まれる現在位置データの組み合わせ分繰り返すようになっている。例えば、取得した1走行データとしての前記車両αの第1番目の走行データに含まれる現在位置データがA地点、B地点、C地点、D地点・・・N−1地点及びN地点の現在位置データである場合、A地点の現在位置データとB地点の現在位置データとの組み合わせからスタートして、B地点の現在位置データとC地点の現在位置データとの組み合わせ、C地点の現在位置データとD地点の現在位置データとの組み合わせ・・・、及び、N−1地点の現在位置データとN地点の現在位置データとの組み合わせ分だけ後述する動作を繰り返し行う。
【0037】
ここで、前記データ処理サーバは走行経路を推定する。この場合、図1に示される例において説明したように、走行経路処理部が、データ記録部に記憶されている地図データにアクセスして経路探索を行い、A地点からB地点までの走行経路を推定し、前記車両αが走行したリンクを特定する。
【0038】
続いて、前記データ処理サーバは、走行経路に含まれる各リンクのリンク長に合わせ、位置データ取得間隔の時間、すなわち、現在位置データを取得した地点間の旅行時間を分配する。この場合、図1に示される例において説明したように、旅行時間算出処理部が、推定された走行経路に含まれる各リンクのリンク長に比例させてA地点からB地点までの旅行時間を分配する。これにより、A地点での時刻における各リンクの旅行時間が求められる。
【0039】
そして、前記データ処理サーバは、前述の動作を取得位置データ、すなわち、現在位置データベースから取得した1走行データに含まれる現在位置データの組み合わせ分繰り返し、すべての組み合わせ分だけ前述の動作を行うと、第2のループをエンドとし、次の走行について1走行データを取得し、再び、第2のループをスタートする。ここで、1台の車両に関して複数の走行データが現在位置データベースに蓄積されている場合には、当該車両に関する各走行データについて順次走行データを取得して第2のループの動作を行い、当該車両に関するすべての走行データについて第2のループの動作を終了した後に、次の車両に関する走行データについて1走行データを取得して第2のループをスタートする。
【0040】
そして、前記データ処理サーバは、1走行データを取得して第2のループをスタートする動作を全走行データ分繰り返し行い、すべての走行データ分の現在位置データがなくなると、第1のループをエンドとする。すなわち、すべての車両に関するすべての走行データについて、走行経路に含まれる各リンクの旅行時間を求めると、第1のループの動作を終了する。
【0041】
続いて、前記データ処理サーバは、各々のリンクについて、得られた複数のリンク旅行時間の統計値を求め、処理を終了する。この場合、統計処理部は、各リンクについて求められた複数の旅行時間を統計処理し、各リンクについて、統計値としてのリンク旅行時間を求める。なお、前記旅行時間の統計処理はいかなる種類の処理であってもよいが、ここでは、異常値を除去して複数の旅行時間の算術平均を求める処理であるものとする。そして、統計値としてのリンク旅行時間を格納する旅行時間データベースが作成される。
【0042】
なお、該旅行時間データベースは、統計的な交通情報として、車両用のナビゲーション装置において、目的地までの経路探索処理等のナビゲーション処理を実行する際に利用することができる。この場合、各リンクのリンク旅行時間に基づいて算出された各リンクの渋滞度、車速等を旅行時間データベースに格納することもできる。そして、例えば、前記旅行時間データベースを交通情報センタに配設し、車両用のナビゲーション装置に対して、各リンクのリンク旅行時間、渋滞度、車速等を配信するようにしてもよいし、また、交通情報センタ等に配設されたナビゲーション処理を実行するサーバに各リンクのリンク旅行時間、渋滞度、車速等を提供するようにしてもよい。さらに、文字や数字、画像などを地図と結び付けて、コンピュータ上に再現し、位置や場所からさまざまな情報を統合したり、分析したり、分かりやすく地図表現したりするシステムとしての地理情報システム(GIS:Geographic Information System)や電子地図に利用することもできる。
【0043】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 第1のループをスタートして、全走行データ分繰り返す。
ステップS2 1走行データを取得する。
ステップS3 第2のループをスタートして、取得位置データの組み合わせ分繰り返す。
ステップS4 走行経路を推定する。
ステップS5 走行経路に含まれる各リンクのリンク長に合わせ、位置データ取得間隔の時間を分配する。
ステップS6 取得位置データの組み合わせ分繰り返し、第2のループをエンドとする。
ステップS7 全走行データ分繰り返し、第1のループをエンドとする。
ステップS8 各々のリンクについて、得られた複数のリンク旅行時間の統計値を求め、処理を終了する。
【0044】
このように、本実施の形態においては、所定時間毎に送信された車両の現在位置に基づき、前記車両の走行経路を推定し、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出することによって旅行時間データベースを作成するようになっている。そのため、車両に搭載された車載装置は、車両が走行したリンクのリンク旅行時間をセンタに送信する必要がなく、所定時間毎に現在位置データだけをセンタに送信すればよいので、通信回数及び通信するデータ量を抑制することができる。これにより、少ない通信コストで取得されたデータに基づき、高い精度の旅行時間データベースを作成することができる。
【0045】
なお、本実施の形態においては、データ処理サーバが現在位置データを処理して各リンクについてのリンク旅行時間を求める場合についてのみ説明したが、車両用のナビゲーション装置、交通情報センタに配設されたサーバ、地理情報システム、電子地図提供システムのサーバ、又は、クライアントが、オンライン又はオフラインで、現在位置データを処理して各リンクについてのリンク旅行時間を求めることもできる。
【0046】
また、本実施の形態においては、車両に搭載された車載装置が現在位置を示す座標値をセンタに送信する場合についてのみ説明したが、座標値に代えて、リンクIDやリンクの端点からの距離をセンタに送信することもできる。
【0047】
また、本実施の形態においては、車両に搭載された車載装置が所定時間毎にデータをセンタに送信する場合についてのみ説明したが、所定時間毎でなく、所定の時刻にデータをセンタに送信することもできる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0049】
本実施の形態においては、2つの現在位置間の旅行時間を走行経路に含まれる各リンクに分配する場合に、道路種別に応じてデータ記録部に記録されている実際のリンク長を変更して仮想リンク長を作成し、各リンクの仮想リンク長に応じて旅行時間を分配するようになっている。ここで、道路種別とは、高速道路や一般道路などの道路の種別や、信号機や踏切の有無を意味する。
【0050】
例えば、リンクの道路種別が高速道路である場合、実際のリンク長に道路種別に応じた係数として0.5を乗じた値を当該リンクの仮想リンク長とする。この場合、実際のリンク長が800〔m〕であれば、仮想リンク長は400〔m〕となる。また、リンクの道路種別が片側1車線の一般道路である場合、実際のリンク長に道路種別に応じた係数として1.0を乗じた値を当該リンクの仮想リンク長とする。さらに、リンクの道路種別が片側2車線以上の一般道路である場合、実際のリンク長に道路種別に応じた係数として0.9を乗じた値を当該リンクの仮想リンク長とする。さらに、リンクの道路種別がセンターラインのない一般道路である場合、実際のリンク長に道路種別に応じた係数として1.5を乗じた値を当該リンクの仮想リンク長とする。また、例えば、リンクの端に信号機や踏切が存在する場合、実際のリンク長に120〔m〕を加算した値を当該リンクの仮想リンク長とする。
【0051】
このように、本実施の形態においては、道路種別に応じて実際のリンク長を変更して仮想リンク長を作成し、各リンクの仮想リンク長に応じて旅行時間を分配するので、より正確に旅行時間を算出することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両の現在位置の変遷を示す第1の図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における車両の走行経路に含まれるリンクを示す第1の図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における車両の現在位置の変遷を示す第2の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における車両の走行経路に含まれるリンクを示す第2の図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における旅行時間データベース作成システムの動作を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車両の現在位置に関するデータを処理して各リンクのリンク旅行時間を算出し、旅行時間データベースを作成する旅行時間データベース作成装置であって、
(b)所定時間毎に検出された車両の現在位置間の走行経路を推定する走行経路処理部、及び、推定された走行経路に含まれるリンクのリンク旅行時間を算出する旅行時間算出処理部を備えることを特徴とする旅行時間データベース作成装置。
【請求項2】
算出された各リンクのリンク旅行時間を統計処理する統計処理部を備える請求項1に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項3】
前記車両の現在位置に関するデータは、所定期間に亘って取得された複数の車両の現在位置に関するデータを蓄積する現在位置データベースに格納されている請求項1又は2に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項4】
前記走行経路処理部は、地図データにアクセスして経路探索を行うことによって、同一の車両に関して連続して検出された2つの現在位置間の走行経路を推定し、前記車両が走行したリンクを特定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項5】
前記旅行時間算出処理部は、現在位置間の旅行時間を前記走行経路に含まれる各リンクのリンク長に応じて分配することによって、各リンクのリンク旅行時間を算出する請求項1〜4のいずれか1項に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項6】
前記統計処理部は、同一のリンクの同一の時間帯におけるリンク旅行時間を統計処理する請求項5に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項7】
前記各リンクのリンク長は実際のリンク長である請求項5に記載の旅行時間データベース作成装置。
【請求項8】
前記各リンクのリンク長は実際のリンク長に道路種別に応じた係数を乗じた値である請求項5に記載の旅行時間データベース作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−4290(P2007−4290A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180975(P2005−180975)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】