説明

曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法および曲率半径測定機

【課題】曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法において、曲率半径測定機に発生する被測定体保持位置のずれを精度よく迅速に補正することができるようにする。
【解決手段】曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法であって、保持工程と、校正用光学部材の校正面の面頂を測定光束の集光位置に位置合わせし、位置合わせ後の干渉縞画像に基づく干渉縞画像情報を記憶する基準調整工程(ステップS3)と、この位置を基準位置として、基準位置から位置ずれ測定位置に被測定体を相対移動して干渉縞画像を記憶する位置移動工程と、各位置での干渉縞画像に基づいて干渉計の光軸に対する位置ずれ量を測定する位置ずれ算出工程(ステップS6、S13)と、この位置ずれ量に基づいて、位置補正量を算出する位置補正工程(ステップS15)と、を備え、被測定面の曲率半径の測定を行う際に、位置補正量に基づいて保持台の位置補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法および曲率半径測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、レンズ、ミラー、平行平板、プリズム等の光学素子の曲率半径を測定する場合に、干渉計を用いて測定を行う曲率半径測定機が知られている。
この曲率半径測定機は、干渉計の光軸上において、干渉計と被測定体とを光軸に沿う方向に相対移動可能に保持し、干渉計から出射される測定光が被測定体の面頂と、曲率中心とにそれぞれ集光される2位置を測定し、この2位置間の移動距離から曲率半径を求める。このとき、被測定体を保持する保持台の被測定体保持位置が、干渉計の光軸に対して正確に調整されていないと、測定誤差の原因になったり、測定効率が低下したりするため、曲率半径測定機では、被測定体を保持する保持台が相対移動する際に、被測定体の光軸が干渉計の光軸と整列して移動できるように保持台や相対移動機構が調整されている。
しかし、経時的には、例えば、保持台や相対移動機構が種々の外力を受けたり、摩耗したりして、相対移動時の被測定体保持位置の位置ずれが生じるおそれがある。
干渉縞画像に基づいて、光軸ずれを高精度に測定しうる技術として、特許文献1には、干渉計で測定した面形状の横座標を高精度に校正可能であって、多種多様な被検物にも容易に適用可能な干渉測定装置が記載されている。特許文献1の干渉測定装置では、校正用光学部材と被検面の面形状データを取得し、既知の校正用光学部材の面形状データをフィッティングすることにより、被検面の面形状データを校正基準座標系で表すための校正情報を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−133059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記のような従来の技術には以下のような問題があった。
従来の曲率半径測定では、被測定体保持位置の位置ずれを検知したり再調整したりする手段を有しないため、測定精度を維持するには、被測定体保持位置の調整状態を定期的に検査し、必要に応じて部品交換や再調整等のメンテナンスを行う必要がある。測定精度を安定して維持するためには、頻繁に検査を行う必要がある。また、メンテナンスを行う間は、曲率半径測定が行えなくなるため、装置の稼働率が低下するという問題がある。
例えば、特許文献1に記載の技術を用いて、被測定体ごとに干渉縞画像から面形状の横座標を測定して光軸ずれを算出し、調整ステージなどにより被測定体保持位置を調整してから、曲率半径測定を行うことも考えられるが、干渉縞画像から得られる面形状データを演算処理して面形状の横座標を計算するため、データ量の大きな演算が必要となり、この演算時間が加算されるため、1つの被測定体当たりの測定時間が増大してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、曲率半径測定機に発生する被測定体保持位置のずれを精度よく迅速に補正することができる曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法および曲率半径測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、被測定体の被測定面に向けて出射された測定光束と、該測定光束による前記被測定面での反射光束と、を干渉計で干渉させることで形成される干渉縞画像に基づいて前記被測定面の曲率半径を測定する曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法であって、前記被測定体を被測定体保持位置に保持する保持台に、校正面を有する校正用光学部材を保持させる保持工程と、前記干渉計と前記保持台との相対位置を調整することで、前記測定光束の集光位置を前記校正面の面頂に位置合わせして、この相対位置を前記保持台の基準位置とし、該基準位置での干渉縞画像を記憶する基準調整工程と、前記保持台を、前記基準位置から予め設定された位置ずれ測定位置に相対移動し、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像を記憶する位置移動工程と、前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に基づいて前記干渉計の光軸に対する前記被測定体保持位置のシフト量またはチルト量からなる位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出工程と、前記位置ずれ量に基づいて、前記被測定体保持位置を前記干渉計に対して相対移動させる際に前記位置ずれ量を補正するための位置補正量を算出する位置補正工程と、を備える方法とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法において、前記校正用光学部材として前記校正面が球面である球面光学素子を用いる場合に、前記位置ずれ測定位置は、前記測定光束の集光位置が前記校正面の曲率中心に一致する位置を含む方法とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法において、前記基準調整工程、前記位置移動工程、および前記位置ずれ量算出工程は、前記校正用光学部材として前記校正面が球面である球面光学素子を用いる、第1の基準調整工程、第1の位置移動工程、および第1の位置ずれ量算出工程、と、前記校正用光学部材として前記校正面が平面である平面光学素子を用いる、第2の基準調整工程、第2の位置移動工程、および第2の位置ずれ量算出工程、と、を備え、前記第1の位置ずれ量算出工程では、前記シフト量を算出し、前記第2の位置ずれ量算出工程では、前記チルト量を算出し、前記位置補正工程では、前記シフト量および前記チルト量を補正するための位置補正量を算出する方法とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、曲率半径測定機において、被測定体を被測定体保持位置に保持する保持台と、前記被測定体の被測定面に向けて出射する測定光束と、該測定光束による前記被測定面での反射光束と、を干渉させて干渉縞画像を形成する干渉計と、該干渉計と前記保持台とを相対移動させて、前記干渉計に対する前記保持台の距離を変化させる相対移動機構と、前記保持台における前記被測定体保持位置の前記干渉計の光軸に対するシフト量およびチルト量の少なくともいずれかを調整する調整ステージと、前記被測定体保持位置に校正面を有する校正用光学部材を保持し、前記校正面の干渉縞画像に基づいて、前記測定光束の集光位置に前記校正面の面頂が位置合わせされた際の前記保持台の前記干渉計に対する相対位置である基準位置から予め設定された位置ずれ測定位置に前記校正面を移動させる校正位置移動制御部と、前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に基づいて、前記干渉計の光軸に対する前記被測定体保持位置のシフト量またはチルト量からなる位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部と、前記位置ずれ量に基づいて、前記保持台を前記干渉計に対して相対移動させる際に前記位置ずれ量を補正するための位置補正量を算出する位置補正部と、前記保持台を前記干渉計に対して相対移動させて前記被測定面の曲率半径の測定を行う際に、前記位置補正量に基づいて、前記調整ステージを駆動して、前記保持台の位置補正を行う位置補正制御部と、を備える構成とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の曲率半径測定機において、前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に画像処理を施して、それぞれ干渉縞画像情報を生成する画像処理部を備え、前記位置ずれ量算出部は、前記画像処理部によって生成された前記それぞれの干渉縞画像情報から、前記位置ずれ量を算出する構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法および曲率半径測定機によれば、保持台の被測定体保持位置に保持した校正用光学部材の校正面の面頂を干渉計の測定光束の集光位置に位置合わせした状態を基準位置として、この基準位置から予め設定された距離だけ離間した位置ずれ測定位置で干渉縞画像を取得し、基準位置の干渉縞画像と位置ずれ測定位置での干渉縞画像とに基づいて位置ずれ量を測定し、この位置ずれ量を補正する位置補正を行うことができるため、曲率半径測定機に発生する被測定体保持位置のずれを精度よく迅速に補正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の測定原理を説明する模式的な光路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法におけるシフト量補正の補正原理を示す模式的な光路図、および干渉縞画像の模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の位置ずれ測定工程のフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法におけるチルト量補正の補正原理を示す模式的な光路図、および干渉縞画像の模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法における干渉縞画像の一例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の概略構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の測定原理を説明する模式的な光路図である。図3は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。
【0014】
まず、本発明の実施形態の曲率半径測定機について説明する。
図1に示すように、本実施形態の曲率半径測定機50は、干渉計3から被測定体Wの被測定面Wに向けて出射された測定光束Lと、測定光束Lによる被測定面Wでの反射光束Lとを干渉計3で干渉させ、その干渉縞画像を観察しながら被測定体Wを干渉計3の光軸O上で移動して、測定光束Lの集光位置が被測定面Wの面頂と曲率中心とにそれぞれ一致する面頂集光位置と曲率中心集光位置との2位置を求め、これら2位置間の移動距離によって被測定面Wの曲率半径を測定する装置である。
なお、本実施形態では、一例として、干渉計3の位置を固定し、干渉計3に対して被測定体Wを鉛直軸に沿って移動させる場合の例で説明する。ただし、相対移動方向は、鉛直軸方向には限定されない。また、被測定体Wの位置を固定し、被測定体Wに対して干渉計3を移動させる構成としてもよく、被測定体Wおよび干渉計3の両方を移動させる構成としてもよい。
【0015】
被測定体Wは、干渉計3による干渉縞観察が可能な被測定面Wを有する適宜の部材を採用することができる。被測定面Wの曲率半径の設計値はRであるとして説明する。
被測定体Wの例としては、例えば、レンズ、反射ミラー等の光学素子を挙げることができる。
以下の説明では、被測定体Wの具体例として、図2に示すように、被測定面Wとして凹球面を有する平凹レンズの例で説明するが、被測定面Wは凸球面であってもよい。
【0016】
曲率半径測定機50の概略構成は、図1に示すように、ベース1、架台2、1軸移動機構5(相対移動機構)、ガイド支柱6、測定ステージ7、保持台8、調整ステージ9、干渉計3、カメラ4(観察部)、モニタ11(観察部)および制御ユニット10を備える。
【0017】
ベース1は装置の基台であり、ベース1上には干渉計3を固定する部材である架台2が図示略の支持部材によって支持されている
ベース1と架台2との間には、被測定体Wを干渉計3に対して相対移動するため、鉛直軸に沿う方向に1軸移動機構5とガイド支柱6とが設けられている。
【0018】
1軸移動機構5は、制御ユニット10に電気的に接続され、制御ユニット10からの制御信号に基づいて、測定ステージ7を鉛直軸に沿う方向に平行移動する移動機構である。1軸移動機構5としては、例えば、送りねじと駆動モータとからなる構成や、リニアモータなどを採用することができる。
1軸移動機構5には、例えばエンコーダ等の位置検出器が内蔵されており、制御ユニット10からの要求に応じて、1軸移動機構5の位置基準からの移動位置の情報を制御ユニット10に送出できるようになっている。
ガイド支柱6は、測定ステージ7の移動を案内する軸状部材であり、測定ステージ7と摺動可能に嵌合されている。
【0019】
測定ステージ7は、1軸移動機構5によって鉛直軸に沿って平行移動されることにより被測定体Wを移動する部材であり、上面側に被測定体Wを保持する保持台8を備えている。
保持台8は、被測定体Wの被測定面Wを鉛直上方に向けて保持面8a上に載置し、例えばチャック機構等による被測定体Wの水平方向の位置を固定する固定機構(図示略)を備えている。これにより保持台8は、被測定体Wを保持面8a上の一定位置である被測定体保持位置に保持できるようになっている。
【0020】
測定ステージ7と保持台8との間には、測定ステージ7に対して保持台8の位置、姿勢を調整する調整ステージ9が設けられている。
調整ステージ9の構成は、少なくとも水平方向の位置と、鉛直軸に対する傾斜を調整できればよいが、本実施形態では、水平方向の互いに直交する2軸であるX軸、Y軸方向および鉛直軸方向であるZ軸方向の位置を調整するXYZ軸移動ステージと、X軸回りおよびY軸回りの傾きを調整する傾斜ステージとからなる5軸の調整が可能な構成を備える。
また、調整ステージ9は、制御ユニット10に電気的に接続され、制御ユニット10からの制御信号によって各軸の駆動量が制御されるようになっている。調整ステージ9の駆動量は、ミクロンオーダーの微動が可能である。
また、調整ステージ9の駆動機構には、例えばエンコーダ等の位置検出器が内蔵されており、制御ユニット10からの要求に応じて、調整ステージ9の位置基準からの移動位置の情報を制御ユニット10に送出できるようになっている。ここで、移動位置の情報とは、XYZ軸移動ステージの場合には、各軸における移動位置を意味し、傾斜ステージの場合には、傾斜方向を含む各軸回りの傾斜角を意味する。
【0021】
干渉計3は、可干渉光を用いて、被測定面Wの干渉縞画像を取得するもので、図2に示すように、架台2から下端側に突出した先端部に、干渉計3の光軸Oと同軸に設けられた参照レンズ13を収容する参照レンズユニット3aを備えている。
また、干渉計3は、測定ステージ7上の保持台8と対向する鉛直上方位置において架台2に対して、光軸Oが鉛直軸に沿う姿勢に配置されて固定されている。
参照レンズ13は、干渉計3の最外の光学面として高精度な球面からなる参照面13aを備えており、可干渉光を発生する光源および干渉光学系(いずれも図示略)によって形成された測定光束Lを、参照面13aの曲率中心に一致する干渉計3の外部の集光点Q13に集光するものである。
なお、本実施形態における参照レンズユニット3aとしては、被測定面が平面からなる場合に干渉縞画像を取得するため、参照レンズ13に代えて、平面の参照面を有する参照レンズ23(図7(a)参照)を設けたものも用意され、参照レンズ13を設けた参照レンズユニット3aと交換できるようになっている。ただし、参照レンズユニット3aは、参照レンズ13、23をともに備え、レボルバ機構等の移動機構によって光軸O上に位置する参照レンズ13、23を選択的に切り換えることができる構成としてもよい。
干渉計3のその他の詳細構成は、適宜の周知構成を採用することができる。例えば、フィゾー型干渉計を好適に採用することができる。
【0022】
干渉計3内で形成された測定光束Lは、干渉計3の参照面13aにおいて、干渉計3の外部に透過する成分と、光源側に反射する成分とに分割され、参照面13aの外部には、集光点Q13に集光する測定光束Lが光軸Oに沿って出射される。外部に出射されたこの測定光束Lが被測定面Wで反射すると、反射光束Lとして、参照レンズ13に再入射し、参照レンズ13によって集光される。この結果、参照面13aにおいて光源側に反射される測定光束Lの成分と光源側に向かって参照面13aを透過する反射光束Lの成分とにより、互いの光路差に応じた干渉が起こる。
この干渉縞画像は、被測定面Wの面頂Pと、集光点Q13とが一致する相対位置(図2の実線参照。以下、面頂集光位置と称する)と、被測定面Wの曲率中心Qと集光点Q13とが一致する相対位置(図2の破線参照。以下、曲率中心集光位置と称する)とのそれぞれにおいて、参照面13a上の各位置での光路差が極小となるため、干渉縞の縞本数が極小値をとる。
【0023】
また、干渉計3は、本実施形態では、制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10によって、図示略の光源の点灯および消灯の制御と、図示略のシャッタを開閉することにより測定光束Lの出射および出射停止とを制御できるようになっている。
【0024】
このような構成により、1軸移動機構5は、干渉計3と保持台8とを相対移動させて、干渉計3に対する保持台8の距離を変化させる相対移動機構を構成している。
また、調整ステージ9は、保持台8における被測定体保持位置の干渉計3の光軸Oに対するシフト量およびチルト量の少なくともいずれかを調整することができるようになっている。ここでシフト量とは、光軸Oに直交する方向における光軸Oに対する被測定体保持位置の中心の変位量であり、チルト量とは、光軸Oに直交する平面に対する被測定体保持位置の保持面の角度変位量である。以下ではシフト量を発生させる位置ずれをシフトずれ、チルト量を発生させる位置ずれをチルトずれと称する。
【0025】
カメラ4は、干渉計3によって形成された干渉縞画像を撮像素子によって光電変換して映像信号を生成し、この映像信号を制御ユニット10に送出するものであり、制御ユニット10と電気的に接続されている。
カメラ4の構成としては、干渉縞画像を撮像することができれば、特に限定されない。制御ユニット10との映像信号の接続方法はコンポジットでもよいし、USBでもよい。また、カメラ4は常時撮像する構成としてもよいが、制御ユニット10から干渉縞画像の取得要求が発生した場合のみ、撮像を行うようにしてもよい。
カメラ4の映像信号は、本実施形態では、制御ユニット10により必要に応じて画像処理や信号変換を施された映像信号として、制御ユニット10に電気的に接続されたモニタ11に転送される。これにより、カメラ4で撮影した映像は、必要に応じてモニタ11の表示画面11aに表示可能になっている。表示画面11aには、例えば、干渉計3の光軸Oに相当する位置に、十字状の基準線等のマークが表示され、画像と光軸Oとの相対位置が目視でも把握できるようになっている。
なお、モニタ11は、カメラ4の映像信号に基づく映像の他にも、制御ユニット10の演算処理等によって算出された画像データや数値データ等を表示することができるようになっている。
【0026】
このような構成により、カメラ4およびモニタ11は、干渉計3で形成された干渉縞画像を観察する観察部を構成している。
【0027】
制御ユニット10は、曲率半径測定機50の動作全体を制御するもので、制御対象の各部材、例えば、カメラ4、1軸移動機構5、調整ステージ9、干渉計3、モニタ11と電気的に接続されている。
また、制御ユニット10には、制御ユニット10の制御動作に必要な操作入力や数値入力を行うため、例えばキーボード、マウス、操作レバー、操作ボタン等の入力手段からなる操作部12が接続されている。
制御ユニット10の機能構成は、図3に示すように、装置制御部100(校正位置移動制御部、位置補正制御部)、画像処理部101(位置ずれ量測定部)、表示制御部102、記憶部103、駆動制御部104、位置ずれ量算出部105(位置ずれ量測定部)、位置補正データ算出部106(位置補正部)、および曲率半径算出部107を備える。
【0028】
装置制御部100は、干渉計3、操作部12、画像処理部101、表示制御部102、駆動制御部104、位置ずれ量算出部105、位置補正データ算出部106、および曲率半径算出部107と電気的に接続され、これらと通信を行うことにより、操作部12からの操作入力に基づいてこれらの動作を制御するものである。
また、装置制御部100は、記憶部103と電気的に接続され、記憶部103に記憶されたデータを適宜読み出すとともに、記憶部103に適宜のデータを記憶させることができるようになっている。
【0029】
また、装置制御部100は、動作モードとして、マニュアル操作モードと、曲率半径測定モードと、補正モードとを備える。これらの動作モードは、操作部12からの操作入力によって選択可能になっている。
【0030】
マニュアル操作モードは、操作部12からの操作入力に基づいて、その都度、曲率半径測定機50の各装置部分の動作を制御する動作モードである。本モードでは、例えば、操作部12から駆動量を入力して1軸移動機構5による測定ステージ7の移動量を操作したり、同じく操作部12からの操作入力により調整ステージ9による保持台8の位置または姿勢を調整したりすることができる。また、カメラ4で撮像された映像を必要に応じてモニタ11に表示させたりする動作を行うことができる。また、干渉計3の光源の点灯および消灯の制御や、干渉計3からの測定光束Lの出射開始および出射停止の制御を行うことができる。
【0031】
曲率半径測定モードは、曲率半径測定の際に必要な装置動作を自動的に行うための制御を行う動作モードである。本モードでは、装置制御部100は、例えば、以下のような動作を実現する制御を行う。
すなわち、装置制御部100は、1軸移動機構5を駆動して、保持台8に保持された被測定体Wの被測定面Wを、面頂集光位置の近傍および曲率中心位置の近傍に移動させる。そして、モニタ11に表示される干渉縞画像に基づいて操作者により行われる、面頂集光位置および曲率中心集光位置への位置合わせが終了すると、それぞれにおける1軸移動機構5および調整ステージ9の各位置情報を駆動制御部104に取得させ、それぞれ面頂集光位置情報および曲率中心集光位置情報として記憶部103に記憶させる。そして、これら面頂集光位置情報および曲率中心集光位置情報を記憶部103から読み出して、後述する曲率半径算出部107に送出し、曲率半径算出部107に曲率半径を算出する演算処理を実行させる制御を行う。
【0032】
補正モードは、後述する基準調整工程、位置ずれ測定工程(位置移動工程、位置ずれ算出工程)、および位置補正工程に必要な装置動作を行うための制御を行う動作モードである。
【0033】
画像処理部101は、装置制御部100の制御信号に基づいて、カメラ4から映像信号を取得して、干渉縞画像の画像データを生成するとともに、この画像データに演算処理を施して、干渉縞画像情報を生成するものである。
画像処理部101によって生成された画像データおよび干渉縞画像情報は、記憶部103に記憶されるとともに、装置制御部100の制御信号に応じて、表示制御部102に送出される。
【0034】
ここで、干渉縞画像情報は、干渉縞画像に基づいて生成され、被測定体保持位置を補正するために干渉縞画像間の干渉縞の変化を把握できる情報であれば、特に限定されない。例えば、干渉縞の変化を目視で把握する場合には、干渉縞画像の画像データにノイズ処理等の画像処理を加えただけの画像データや、干渉縞画像の画像データを二値化した画像データなどを採用することができる。
ただし、本実施形態では、干渉縞の変化を定量的かつ自動的に評価するため、干渉縞画像の画像データを画像処理することにより干渉縞画像情報を生成する。具体例としては、例えば、干渉縞画像が円環状である場合には、干渉縞画像を円近似したときの近似円の直径および中心の位置座標を挙げることができる。また、例えば、干渉縞画像が直線状パターンである場合には、干渉縞画像を直線近似したときの直線の方向を挙げることができる。
【0035】
表示制御部102は、画像処理部101および装置制御部100から送出された画像データ、文字データ、および数値データ等を、モニタ11に表示可能な映像信号、例えばNTSC信号等に変換してモニタ11に送出し、モニタ11の表示画面11aに表示するものである。
【0036】
記憶部103は、画像処理部101から送出される画像データおよび干渉縞画像情報と、装置制御部100から送出されるデータと、後述する位置ずれ量算出部105から送出される位置ずれ量とを記憶するものである。
ただし、これらの記憶すべきデータが、後述する基準位置、位置ずれ測定位置等の干渉縞画像の取得位置や、干渉縞画像を取得した校正用光学部材の種類に関連付けられたデータである場合には、取得位置や校正用光学部材の種類に関連付けて記憶する。
【0037】
駆動制御部104は、1軸移動機構5および調整ステージ9と電気的に接続され、装置制御部100からの制御信号に基づいてそれぞれの駆動制御を行うものである。
また、駆動制御部104は、1軸移動機構5および調整ステージ9からそれぞれの駆動部の移動位置の情報を取得し、装置制御部100に送出できるようになっている。
【0038】
位置ずれ量算出部105は、補正モードにおける装置制御部100からの制御信号に基づいて、画像処理部101によって生成された干渉縞画像情報から、位置ずれ量を算出するものである。
ここで、位置ずれ量とは、被測定体保持位置の、干渉計3の光軸Oに対するシフト量およびチルト量の少なくともいずれかを意味する。本実施形態では、位置ずれ算出部105は、シフト量およびチルト量の算出が可能である。ただし、後述するように校正用光学部材として球面光学素子と平面光学素子とを用いるため、球面光学素子を用いた場合の干渉縞画像からはシフト量を算出し、平面光学素子を用いた場合の干渉縞画像からはチルト量を算出することになる。
位置ずれ量算出部105によって算出された位置ずれ量は、記憶部103に送出され、記憶部103に記憶される。
【0039】
位置補正データ算出部106は、1軸移動機構5を用いて保持台8を干渉計3に対して相対移動させる際に、位置ずれ算出部105によって算出され補正モードにおける装置制御部100から送出される位置ずれ量に基づいて、被測定体保持位置を補正する位置補正量を算出するものである。このため、位置補正データ算出部106は、位置補正量を、位置ずれ算出部105で算出(測定)された位置ずれ量に基づいて算出する位置補正部を構成している。
【0040】
曲率半径算出部107は、曲率半径測定モードにおいて、装置制御部100から送出される制御信号と、面頂集光位置情報および曲率中心集光位置情報とに基づいて曲率半径を算出するものである。
本実施形態では、面頂集光位置情報および曲率中心集光位置情報として、図1に示すように、被測定面Wが面頂集光位置および曲率中心集光位置に位置する際の1軸移動機構5の移動位置H、Hが送出される。このとき、被測定面Wの曲率半径Rは、R=H−Hとして算出される。ただし、Rの正負は、それぞれ被測定面Wの凸凹に対応し、本実施形態では負の値である。
【0041】
制御ユニット10の装置構成は、本実施形態では、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータを採用している。そして、上記に説明した各制御機能および各演算機能を、このコンピュータ上で動作する制御プログラムおよび演算プログラムを実行することにより実現している。
【0042】
次に、曲率半径測定機50の動作について、被測定体保持位置補正方法における動作を中心に説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法のフローチャートである。図5(a)は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法におけるシフト量補正の補正原理を示す模式的な光路図である。図5(b)、(c)は、シフト量補正における干渉縞画像の模式図である。図6は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法の位置ずれ測定工程のフローチャートである。図7(a)は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法におけるチルト量補正の補正原理を示す模式的な光路図である。図7(b)、(c)は、チルト量補正における干渉縞画像の模式図である。図8(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、本発明の実施形態に係る曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法における干渉縞画像の一例を示す模式的な斜視図である。
【0043】
本実施形態の被測定体保持位置補正方法は、例えば、工場出荷後に曲率半径測定機50が受けた外力や1軸移動機構5の可動部の摩耗などにより1軸移動機構5によって移動される被測定体保持位置に位置ずれが発生した場合でも、曲率半径測定機50の調整ステージ9を用いて、被測定体保持位置の補正を自動的に行えるようにした方法である。
本方法は、必要に応じて、適宜のタイミングで行うことができる。例えば、曲率半径測定の開始前に毎回行ってもよい。また、曲率半径測定機50に生じる位置ずれの程度に応じて、適宜の間隔をあけて行うことができる。例えば、装置起動時に行うようにしてもよい。また、一定の期間をおいて定期的に行ってもよいし、使用回数が所定回数に達したときに行ってもよい。
【0044】
本実施形態の被測定体保持位置補正方法は、図4に示すフローにしたがって、ステップS1〜S15を行う。
本方法のフローは、操作部12からの操作入力により、装置制御部100が補正モードに設定されることによって開始される。干渉計3は予め電源が投入されており、装置制御部100の制御により、測定光束Lの出射開始および出射停止が制御できるようになっている。
【0045】
まず、ステップS1では、装置制御部100は、表示制御部102に画像データを送出して、モニタ11の表示画面11aにシフト量補正を行うかどうかの操作入力を促す操作画面を表示させる。操作画面が表示されたら、装置制御部100は操作入力待ちとなる。
操作部12を通して、シフト量補正を行うとの操作入力がなされると、装置制御部100の制御はステップS2に移行する。シフト量補正を行わないとの操作入力がなされると、装置制御部100の制御はステップS8に移行する。
本実施形態では、シフト量補正、チルト量補正の両方を行う場合の例を説明するが、本ステップおよび後述するステップS8を設けて、シフト量補正、チルト量補正の選択を可能にしておくことにより、いずれか一方のみの位置ずれ補正量の更新が必要となった場合に、一方のみの更新が可能となる。
【0046】
ステップS2は、被測定体保持位置に球面光学素子Cを保持するステップ(保持工程)である。
球面光学素子Cは、位置ずれ量としてシフト量を求めるための校正用光学部材であり、曲率半径が既知の球面からなる校正面を有する。
本実施形態で採用している球面光学素子Cは、図5(a)に示すように、精度よく形成された曲率半径Rの凹球面からなる校正面CSaを有する平凹レンズである。
校正面CSaの曲率半径は、被測定体Wの被測定面Wの曲率半径の設計値Rと異なっていてもよいが、設計値Rと一致していればより好ましい。本実施形態では、一例としてR=Rの場合の例で説明する。
【0047】
本ステップでは、操作者が保持台8の被測定体保持位置に球面光学素子Cを手動で配置し、保持台8の固定機構(図示略)を操作して球面光学素子Cの保持を完了させる。操作者は操作部12から操作の完了を通知する操作入力を行う。これにより装置制御部100が本ステップの終了を検知する。
ただし、保持台8の固定機構の固定状態と固定解除状態とが、装置制御部100によって制御される構成としてもよく、この場合には、装置制御部100によって、固定機構を固定解除状態としてから、操作者が球面光学素子Cを配置し、装置制御部100によって固定機構を固定状態とし、固定状態に切り換えられたことを装置制御部100が検知して、本ステップを終了することも可能である。
【0048】
次に行うステップS3では、基準調整工程を行う。
基準調整工程は、干渉計3と保持台8との相対位置を調整することで、測定光束Lの集光点Q13(集光位置)を校正面の面頂に位置合わせして、この相対位置を保持台8の基準位置とし、この基準位置での干渉縞画像を記憶する工程である。
ステップS3における基準調整工程では、校正用光学部材として球面光学素子Cを用いた位置合わせを行う。
【0049】
まず、装置制御部100は、干渉計3に制御信号を送出して測定光束Lを出射させるとともに、画像処理部101に制御信号を送出して、カメラ4の映像信号を取得させ、映像信号による画像をモニタ11に表示させる。
また、装置制御部100は、記憶部103に予め記憶された球面光学素子Cの形状情報に基づいて、集光点Q13に球面光学素子Cの校正面CSaの面頂Pを一致させるための保持台8の移動位置を算出し、保持台8がこの移動位置に1軸移動機構5を駆動する制御信号を駆動制御部104に送出する。
この移動終了後、装置制御部100は、調整ステージ9をマニュアル操作する制御モードに移行し、操作入力待ちとなる。
【0050】
干渉計3から出射された測定光束Lは、球面光学素子Cの校正面CSa上に照射され、校正面CSaからの反射光束Lが参照レンズ13に入射する。これにより、参照面13aにおける測定光束Lの光源側への反射光束と、参照面13aを透過して光源側に向かう反射光束Lとが干渉し、光路差に応じた干渉縞がカメラ4に投影される。カメラ4の映像信号は、画像処理部101によって、画像データに変換され、表示制御部102に送出されてカメラ4に表示可能な映像信号に変換された後、モニタ11の表示画面11aに表示される。
【0051】
1軸移動機構5の移動精度や1軸移動機構5の干渉計3に対する位置関係が工場出荷時から変化していない場合(以下、「初期状態と同等」の場合と称する)には、校正面CSaの面頂Pが集光点Q13に一致するため、モニタ11には干渉縞本数が極小の干渉縞画像が表示される。校正面CSaは高精度に形成された球面であるため、干渉縞は円環状になる。
ただし、1軸移動機構5の移動精度や1軸移動機構5の干渉計3に対する位置関係が工場出荷時から変化している場合(以下、「位置ずれ発生状態」の場合と称する)には、面頂Pが集光点Q13に対して位置ずれを起こすため、干渉縞本数が多い画像が表示されるか、明確な干渉縞画像が見えない状態になる。
【0052】
そこで、操作者は、表示画面11aの画像を見ながら、操作部12から適宜操作入力して、調整ステージ9を移動させて、干渉縞画像がはっきり見えるように位置調整する。操作者は、さらに調整ステージ9を微動させ保持台8の位置および姿勢を調整し、干渉縞の縞本数を減らすとともに、干渉縞の中心が光軸Oに対応する目標位置に一致するように位置合わせを行う。このようにして、例えば、図5(b)、図8(a)に示すような干渉縞画像IK1が取得され、記憶部103に記憶される。
位置合わせが終了すると、操作者は、操作部12から操作入力して、装置制御部100に操作入力終了を通知する。
以下では、このステップS3における位置合わせ終了時の位置を基準位置Kと称する。
この基準位置Kは、球面光学素子Cと被測定体Wとの形状が同一の場合には、曲率半径測定における面頂集光位置になっている。
【0053】
装置制御部100は、操作入力終了の通知を受信すると、駆動制御部104から、1軸移動機構5および調整ステージ9の各移動位置を取得する。
基準位置Kは、例えば、1軸移動機構5の移動位置であるhS1、調整ステージ9のXYZ軸移動ステージの各軸の移動位置であるXS1、YS1、ZS1、調整ステージ9の傾斜ステージの移動位置であるθXS1、θYS1の合計6つのパラメータで表される。
本実施形態では、校正面CSaの曲率半径Rが被測定体Wの被測定面Wの曲率半径Rと一致しているため、1軸移動機構5の移動位置hS1は、位置Hと略同一(同一の場合も含む)になっている。
装置制御部100は、取得された基準位置Kの各移動位置を記憶部103に記憶させる。
【0054】
また、装置制御部100は、画像処理部101に制御信号を送出して、取得された干渉縞画像IK1に基づく干渉縞画像情報GS1を生成させ、記憶部103に記憶させる。
ステップS3における干渉縞画像情報GS1は、干渉縞画像IK1の干渉縞中心Sの座標(x,y)を採用している。
xy座標系は、カメラ4の撮像素子の撮像面に設定された2次元座標系であり、カメラ4の撮像倍率に応じて実寸法に換算された値とする。また本実施形態では、xy座標系のx軸、y軸は、それぞれ調整ステージ9のXYZ軸移動ステージのX軸、Y軸に対応している。
干渉縞画像IK1の縞中心は、干渉縞画像IK1の画像データから干渉縞の近似円を求める。干渉縞画像IK1の縞が複数存在する場合には、最も中心側の干渉縞を用いて近似円を求める。
近似円の求め方は、特に限定されない。例えば、干渉縞画像IK1の縞の幅中心の座標を求めて、これらの各点を円にフィッティングするといった手法を採用することができる。
座標(x,y)は、理想的には(0,0)であるが、位置ずれ発生状態の場合には、(0,0)とはならない。
以上で、ステップS3が終了する。
【0055】
次にステップS4では、装置制御部100は、カウンタnをn=0に設定して、カウンタnを初期化する。
次にステップS5では、装置制御部100は、カウンタnをn=n+1として更新する。
【0056】
次にステップS6では、第nの位置ずれ測定工程を行う。本工程は、保持台8を、基準位置から予め設定された距離だけ離間した位置ずれ測定位置に相対移動し、位置ずれ測定位置での干渉縞画像を記憶する位置移動工程と、基準位置での干渉縞画像と、位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に基づいて干渉計3の光軸Oに対する被測定体保持位置のシフト量またはチルト量からなる位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出工程と、を備える。
【0057】
ステップS6における第nの位置ずれ測定工程では、校正用光学部材が球面光学素子Cである。また、位置ずれ測定位置は、nに対応して位置ずれ測定位置Kn+1が設定されている。本実施形態では、n=1、2に対して、それぞれ位置ずれ測定位置K、Kが設定されている。
位置ずれ測定位置Kは、図5(a)に破線で示すように、球面光学素子Cを被測定体保持位置に保持した場合の曲率中心集光位置に対応する位置であり、基準位置Kから、光軸Oに沿う方向に距離|R|だけ離間した位置である。すなわち、本実施形態では、1軸移動機構5の移動位置hS2とすると、hS2=hS1+Rである。ただし、Rの正負は、それぞれ校正面CSaの凸凹に対応し、本実施形態では負の値である。
また、位置ずれ測定位置Kは、基準位置Kと位置ずれ測定位置Kとの中間の一定位置である。このため、位置ずれ測定位置Kは、1軸移動機構5の移動位置hS3(ただし、hS2<hS3<hS1)で表される。
位置ずれ測定位置Kは、シフト量補正の補正精度を向上するために設けられている。位置ずれ測定位置Kのみの測定で、必要な補正精度が得られる場合には、設定しなくてもよい。
このように、位置ずれ測定位置K、Kは、ステップS3で設定される基準位置Kの位置からの所定の移動量によって規定されており、記憶部103にはこれらの所定の移動量が記憶されている。
【0058】
本工程の詳細のフローは、図6のステップS20〜S23を順次行う。
まずステップS20では、装置制御部100は、保持台8を第n番目の位置ずれ測定位置Kn+1に相対移動する。
本ステップでは、装置制御部100は、nの値に応じて、位置ずれ測定位置Kn+1に対応する1軸移動機構5の移動位置hS(n+1)を算出して、駆動制御部104に送出し駆動制御部104によって1軸移動機構5を駆動させる。
【0059】
次にステップS21は、干渉縞画像を取得するステップである。
本ステップでは、まず、装置制御部100は、干渉計3に制御信号を送出して測定光束Lを出射させるとともに、画像処理部101に制御信号を送出して、カメラ4の映像信号を取得させ、画像データとして記憶部103に記憶させるとともに、映像信号による画像をモニタ11に表示させる。
【0060】
位置ずれ発生状態になり、校正面CSaの光軸が干渉計3の光軸Oに対してシフトずれを起こすと、干渉縞画像の変化となって現れる。例えば、n=1の場合、図5(a)に二点鎖線で示すように校正面CSaがシフトずれを起こしていると、図5(c)、図8(b)に示すように、シフト量に応じて、干渉縞中心Sが光軸Oに対してずれた干渉縞画像IK2が取得される。また、n=2の場合には、図8(b)に示すように、シフトずれに加えて、面頂集光位置および曲率中心集光位置からも離れているため、シフト量に応じて干渉縞中心S3が光軸Oに対してずれるとともに干渉縞本数の多い干渉縞画像IK3が取得される。
ただし、初期状態と同等の場合には、n=1では、校正面CSaが曲率中心集光位置になるため、図5(b)に示すようなIK1と同様に干渉縞の縞本数が極小で、縞中心が光軸Oの位置に一致する円環状の干渉縞画像IK2’が取得される。
以上で、ステップS21が終了する。
【0061】
次にステップS22は、第nの干渉縞画像情報を取得するステップである。
本ステップでは、装置制御部100は、画像処理部101に制御信号を送出して、取得された干渉縞画像IK(n+1)に基づく干渉縞画像情報GS(n+1)を生成させる。
画像処理部101は、干渉縞画像情報GS(n+1)をステップS3における干渉縞画像情報GS1と同様にして生成し、記憶部103に記憶させる。
例えば、干渉縞画像情報GS(n+1)は、縞中心の座標(xn+1,yn+1)である。
画像処理部101は、第nの干渉縞画像情報GS(n+1)の算出と、記憶部103への書き込みの終了後、これらが終了したことを装置制御部100に通知する。
これによりステップS22が終了する。
【0062】
次にステップS23は、基準位置での干渉縞画像情報と第nの位置ずれ測定位置での干渉縞画像情報とに基づいて干渉計3の光軸Oに対するシフト量からなる位置ずれ量を測定するステップである。
本ステップでは、装置制御部100は、位置ずれ量算出部105に制御信号を送出して、位置ずれ量を算出させる。
位置ずれ量算出部105は、記憶部103に記憶された基準位置Kでの干渉縞画像情報GS1と、第nの位置ずれ測定位置Kn+1での干渉縞画像情報GS(n+1)とを読み出し、第nの位置ずれ測定位置Kn+1でのシフト量ΔSXn、ΔSYnを、(ΔSXn,ΔSYn)=(xn+1−x,yn+1−y)として算出し、記憶部103に記憶する。
以上で、ステップS23が終了するとともに、ステップS6(図4参照)が終了する。
【0063】
ステップS20〜S22は、位置移動工程を構成し、ステップS23は、位置ずれ量算出工程を構成している。
【0064】
次に図4に示すステップS7では、装置制御部100が、カウンタnと位置ずれ測定位置Kn+1の個数Nとを比較し、nがNより小さい場合には、ステップS5に移行する。
また、nがN以上の場合には、ステップS8に移行する。
これにより、ステップS5〜S7が、N回繰り返される。
【0065】
ステップS8では、装置制御部100は、表示制御部102に画像データを送出して、モニタ11の表示画面11aにチルト量補正を行うかどうかの操作入力を促す操作画面を表示させる。装置制御部100は操作入力待ちとなる。
操作部12を通して、チルト量補正を行うとの操作入力がなされると、装置制御部100の制御はステップS9に移行する。チルト量補正を行わないとの操作入力がなされると、装置制御部100は、ステップS15に移行する。
【0066】
ステップS9は、被測定体保持位置に平面光学素子Cを保持するステップ(保持工程)であり、上記ステップS2における球面光学素子Cに代えて平面光学素子Cを用いる他は、上記ステップS2と同様のステップである。
平面光学素子Cは、位置ずれ量としてチルト量を求めるため、精度よく形成された平面を校正面として有する校正用光学部材である。
本実施形態で採用している平面光学素子Cは、図7(a)に示すように、精度よく形成された平面からなる校正面CSaを有するガラス平板である。また、平面光学素子Cの外径および厚さは、球面光学素子Cの外径およびレンズ厚と同一である。
【0067】
次のステップS10、S11、S12、S13、S14は、それぞれ上記ステップS3、S4、S5、S6、S7と同様または略同様のステップである。以下、相違点を中心に説明する。
【0068】
ステップS10における基準調整工程では、校正用光学部材として平面光学素子Cを用いて基準位置での干渉縞画像を取得して記憶する。本工程では平面からなる校正面CTaに測定光束を照射して干渉縞画像を取得する点がステップS3とは異なる。 このため、校正面CTaには、測定光束Lを平行光束として照射する。また、校正面CTaには、特定の面頂はなく、校正面CTa上は至るところ面頂である。したがって、参照面23aと校正面CTaとの間の離間距離がどのように設定されていても干渉縞画像が観察され、参照面23aと校正面CTaとの平行度に応じて、干渉縞の本数が変化する。すなわち、参照面23aと校正面CTaとの間の離間距離によらず任意の位置が、面頂集光位置または曲率中心集光位置と同等である。
そこで、本ステップでは、基準位置、位置ずれ測定位置は、チルト量測定に好都合となる位置に適宜に設定することができる。なお、本実施形態では、球面光学素子Cのレンズ厚と、平面光学素子Cの厚さとは同じであるため、基準位置、位置ずれ測定位置は、ステップS3における基準位置K、位置ずれ測定位置K、Kを採用している。
【0069】
まず、図7(a)に示すように、参照レンズ13を参照レンズ23に切り換える。本実施形態では、参照レンズ23を有する参照レンズユニット3aに交換する。
参照レンズ23は、干渉計3の最外の光学面として高精度な平面からなる参照面23aを備えており、可干渉光を発生する光源および干渉光学系(いずれも図示略)によって形成された測定光束Lを、参照面23aから平行光束として出射するものである。
【0070】
次に、上記ステップS3と同様に、測定光束Lを出射して、モニタ11に干渉縞画像を表示させる。そして、装置制御部100によって、保持台8を基準位置Kに移動させる。これにより、測定光束Lが、校正面CTaと光軸Oとの交点である点Pを中心として照射される。
ただし、校正面CTaが完全に光軸Oと直交していると、干渉縞が少なくなりすぎ、後述する位置ずれ測定工程の測定基準となる直線状の干渉縞が得られにくい。このため、調整ステージ9によって、点Pを中心に保持台8を、予め設定した初期チルト量だけ傾斜させる。これにより、校正面CTaによる干渉縞画像は、例えば、図7(b)、図8(d)に示すように、初期チルト量に対応して、平行線からなる干渉縞画像JK1が形成される。
初期チルト量は、明確な干渉縞が得られる適宜値を予め設定しておく。
このような干渉縞画像JK1が得られたら、駆動制御部104から改めて1軸移動機構5、調整ステージ9の各移動位置を取得し、チルト量補正を行うための移動位置の初期値として、記憶部103に記憶させる。
【0071】
また、装置制御部100は、画像処理部101に制御信号を送出して、取得された干渉縞画像JK1に基づく干渉縞画像情報GT1を生成させ、記憶部103に記憶させる。
ステップS10における干渉縞画像情報GT1は、干渉縞画像JK1の縞の方向の情報である。具体的には、例えば、ステップS3と同様のxy座標系において、干渉縞を直線近似し、その直線の式から方向ベクトルk=(xk1,yk1)を求める。方向ベクトルkは、任意の1本の干渉縞から求めてもよいし、すべての干渉縞の方向ベクトルの平均値としてもよい。
以上で、ステップS10が終了する。
【0072】
次に行うステップS11、S12は、上記ステップS4、S5と同様の工程である。
【0073】
次にステップS13では、上記ステップS6と略同様にして第nの位置ずれ測定工程を行う。
本ステップでは、図6に示すステップS30〜S33の各ステップを順次行うが、校正用光学部材は、平面光学素子Cである。また、位置ずれ測定位置Kn+1は、ステップS6と同様であり、n=1、2に対して、それぞれ位置ずれ測定位置K、Kが設定されている。
【0074】
ステップS30、S31は、ステップS20、S21と同様のステップである。
ただし、ステップS31で取得される干渉縞画像は異なる。
位置ずれ発生状態となって、校正面CTaが干渉計3の光軸Oに対してチルトずれを起こすと、干渉縞画像の変化となって現れる。例えば、n=1の場合に、図7(a)に二点鎖線で示すように校正面CTaがチルトずれを起こしていると、図7(c)、図8(e)に示すように、チルト量に応じて、干渉縞の縞方向が変化した干渉縞画像JK2が取得される。また、n=2の場合には、図8(f)に示すように、チルト量に応じて、干渉縞の縞方向が変化した干渉縞画像JK3が取得される。
ただし、初期状態と同等の場合には、図7(b)に示すようなJK1と同様に縞方向の干渉縞画像JK2’が取得される。
以上で、ステップS31が終了する。
【0075】
次にステップS32は、上記ステップS22と同様、第nの干渉縞画像情報を取得するステップであるが、平面光学素子Cを用いるため、干渉縞画像情報は異なる。
本ステップでは、装置制御部100は、画像処理部101に制御信号を送出して、取得された干渉縞画像JK(n+1)に基づく干渉縞画像情報GT(n+1)を生成させる。
画像処理部101は、干渉縞画像情報GT(n+1)をステップS10における干渉縞画像情報GT1と同様にして生成し、記憶部103に記憶させる。
例えば、干渉縞画像情報GT(n+1)は、直線近似された縞の方向ベクトルkn+1=(xk(n+1),yk(n+1))である。
画像処理部101は、第nの干渉縞画像情報GT(n+1)の算出と、記憶部103への書き込みの終了後、これらが終了したことを装置制御部100に通知する。
これによりステップS32が終了する。
【0076】
次にステップS33では、基準位置での干渉縞画像情報と第nの位置ずれ測定位置での干渉縞画像情報とに基づいて干渉計3の光軸Oに対するチルト量からなる位置ずれ量を測定する。
本ステップでは、装置制御部100は、位置ずれ量算出部105に制御信号を送出して、位置ずれ量を算出させる。
位置ずれ量算出部105は、記憶部103に記憶された基準位置Kでの干渉縞画像情報GT1と、第nの位置ずれ測定位置Kn+1での干渉縞画像情報GT(n+1)とを読み出して、方向ベクトルkに対する方向ベクトルkn+1の回転角θn+1を算出する。そして、回転角θn+1を発生させるチルト量を解析して、調整ステージ9の傾斜ステージのX軸回り、Y軸回りの傾斜に対応するチルト量ΔθXn、ΔθYnを算出し、記憶部103に記憶する。
以上で、ステップS33が終了するとともに、ステップS13(図4参照)が終了する。
【0077】
次に図4に示すステップS14は、上記ステップS7と同様のステップである。
次にステップS15では、位置補正工程を行う。
本工程は、ステップS6、S13の各位置ずれ測定工程で測定された位置ずれ量に基づいて、保持台8を干渉計3に対して相対移動させる際に、位置ずれ量を補正するための位置補正量を算出する工程である。
【0078】
本ステップでは、装置制御部100は、記憶部103から、必要なパラメータや算出値を読み出して、位置補正データ算出部106に送出する。
そして、位置補正データ算出部106では、1軸移動機構5の移動位置hを変数とする調整ステージ9の制御パラメータの制御式を設定し、記憶部103に記憶させる。
調整ステージ9の制御パラメータは、XYZ軸移動ステージの各軸の移動位置X、Y、Z、調整ステージ9の傾斜ステージの移動位置θ、θである。これらの制御式を、f(h)、f(h)、f(h)、g(h)、g(h)とすると、次式(1)〜(5)で表すことができる。
【0079】
X=f(h) ・・・(1)
Y=f(h) ・・・(2)
Z=f(h) ・・・(3)
θ=g(h) ・・・(4)
θ=g(h) ・・・(5)
【0080】
これらの制御式は、基準位置Kの制御パラメータ、第1の位置ずれ測定位置K、第2の位置ずれ測定位置Kの位置ずれ量を用いて、最小2乗法による曲線や直線に当て嵌めを行ったり、補間演算を行ったりして決定する。ただし、f(h)は、次式(6)とする。
【0081】
(h)=ZS1 ・・・(6)
【0082】
制御式の記憶方式は特に限定されない。例えば、関数として求められる場合に、関数に現れる係数を記憶するようにしてもよいし、制御式に基づく制御パラメータの変化表を数値テーブルとして記憶するようにしてもよい。
他の制御式は、例えば、補間演算の一例としては、次式(7a)、(7b)、(7c)、(8a)、(8b)、(8c)、(9a)、(9b)、(9c)、(10a)、(10b)、(10c)の条件に基づいて、hS1〜hS3、hS3〜hS2の区間を線形補間する折れ線関数の例を挙げることができる。
【0083】
S1=f(hS1) ・・・(7a)
S1−ΔSX2=f(hS2) ・・・(7b)
S1−ΔSX3=f(hS3) ・・・(7c)
S1=f(hS1) ・・・(8a)
S1−ΔSY2=f(hS2) ・・・(8b)
S1−ΔSY3=f(hS3) ・・・(8b)
θXS1=g(hS1) ・・・(9a)
θXS1−ΔθX2=g(hS2) ・・・(9b)
θXS1−ΔθX3=g(hS3) ・・・(9c)
θYS1=g(hS1) ・・・(10a)
θYS1−ΔθY2=g(hS2) ・・・(10b)
θYS1−ΔθY3=g(hS3) ・・・(10b)
【0084】
以上で、ステップS15が終了する。
このようにして、本実施形態の被測定体保持位置補正方法が行われると、以後の曲率半径測定モードでは、装置制御部100は、1軸移動機構5を駆動して保持台8を移動させる場合、移動位置hに応じて、上記式(1)〜(5)で決まる制御パラメータによって調整ステージ9を駆動する。
したがって、1軸移動機構5と干渉計3との相対位置が位置ずれ発生状態になっていても、曲率半径測定モードでは、調整ステージ9によって、最近の補正モードにおいて測定されたシフト量およびチルト量が自動的に補正されることになる。このため、被検体保持位置が、曲率半径測定機50の初期状態と同等の移動精度で移動させることができる。
【0085】
このように、装置制御部100は、保持台8の被測定体保持位置に校正面CSaを有する球面光学素子Cまたは校正面CTaを有する平面光学素子Cを保持し、校正面CSaの干渉縞画像IK1に基づいて、校正面CSaの面頂を測定光束Lの集光点Q13に位置合わせされた状態を基準位置Kとして、基準位置Kから予め設定された距離だけ離間した位置ずれ測定位置K、Kに校正面CSa、CTaが移動するように、1軸移動機構5を駆動する校正位置移動制御部を構成している。
【0086】
次に、曲率半径測定機50による曲率半径測定方法について簡単に説明する。
まず、操作者は、操作部12から曲率半径測定モードを選択し、例えば、被測定体Wの曲率半径等の測定に必要な情報を入力する。
これにより、装置制御部100の動作モードが曲率半径測定モードに設定される。
操作者は、上記ステップS2で球面光学素子Cを保持させたのと同様にして、被測定体Wを保持台8の被測定体保持位置に保持させる。そして、操作部12から曲率半径測定の開始を操作入力する。
装置制御部100は、記憶部103から、被測定体Wの形状等の情報を参照して、被測定体Wを面頂集光位置に移動するための1軸移動機構5の移動位置Hを求める。
本実施形態では、H=hs1であるため、装置制御部100は、駆動制御部104に1軸移動機構5を位置hs1に移動する制御信号を送出する。このとき、駆動制御部104には、記憶部103に記憶された上記式(1)〜(5)に基づいて移動位置の情報が送出される。
このため、1軸移動機構5とともに調整ステージ9が駆動され、保持台8は、被測定体Wの光軸が光軸Oに略整列した状態で移動される。
【0087】
図1、2に示すように、被測定体Wが位置Hに移動されると、装置制御部100は、被測定面Wの干渉縞画像を取得し、モニタ11に表示させる。このとき、被測定面Wは略面頂集光位置に移動しているため、モニタ11には、干渉縞本数の少ない干渉縞画像が表示される。
装置制御部100は、調整ステージ9を操作者がマニュアル操作できる状態として、操作入力待ちなる。これにより、操作者が、干渉縞画像を見ながら保持台8の位置を微調整できるようにする。
微調整が終了したら、操作者は操作部12から調整終了したことを操作入力する。
装置制御部100は、調整終了時の被測定面Wの位置を、微調整に要した調整ステージ9のZ軸ステージの移動量も考慮して算出し、記憶部103に位置H’として記憶する。
【0088】
次に、装置制御部100は、駆動制御部104に制御信号を送出し、1軸移動機構5の移動位置hが、h=hs1+Rとなるように、1軸移動機構5を駆動させる。この移動の際も、調整ステージ9は上記式(1)〜(5)に基づいて制御される。このため、被測定体Wは、干渉計3の光軸O上を平行移動することになる。
移動後、装置制御部100は、上記と同様に調整ステージ9を操作者がマニュアル操作できる状態として、操作入力待ちなる。これにより、操作者が干渉縞画像を見ながら、調整ステージ9を操作して、被測定面Wを曲率中心集光位置に移動できるようにする。
微調整が終了したら、操作者は操作部12から調整終了したことを操作入力する。
装置制御部100は、調整終了時の被測定面Wの位置を、微調整に要した調整ステージ9のZ軸ステージの移動量も考慮して、算出し、記憶部103に位置H’として記憶する。
次に、装置制御部100は、記憶部103から位置H’、H’を読み出し、曲率半径算出部107に送出する。
曲率半径算出部107は、曲率半径Rを、R=H’―H’として、算出し、装置制御部100に送出する。
装置制御部100は、送出された曲率半径Rを記憶部103に記憶するとともに、表示制御部102に測定結果の数値データとして送出し、表示制御部102によってモニタ11に表示させる。
以上で、被測定体Wの曲率半径測定が終了する。
【0089】
このように、装置制御部100は、保持台8を干渉計3に対して相対移動させて被測定面Wの曲率半径の測定を行う際に、位置補正量に基づいて、調整ステージ9を駆動して、保持台8の位置補正を行う位置補正制御部を構成している。
【0090】
以上に説明したように、曲率半径測定機50を用いた曲率半径測定では、位置ずれ補正された状態で、保持台8が駆動されるため、経時変化によって曲率半径測定機50が位置ずれ発生状態になっても、被測定面Wが面頂集光位置、曲率中心集光位置のごく近くに移動させることができる。
このため、被測定面Wを被測定体Wごとの面頂集光位置、曲率中心集光位置に微調整する際の移動量が少なくて済むため、迅速に測定を行うことができる。
特に、本実施形態では、補正モードによって、被測定体Wの面頂集光位置および曲率中心集光位置と同一の位置で位置ずれ量を測定するため、より正確な移動が可能となる。
【0091】
また、本実施形態によれば、被測定体Wの面頂集光位置および曲率中心集光位置と異なる第2の位置ずれ測定位置Kにおいても位置ずれ量を求めている。このため、曲率半径測定機50で曲率半径が異なる被測定面W’を有する被測定体W’を混合して測定する場合に、第2の位置ずれ測定位置Kを、被測定面W’の曲率中心集光位置に設定しておけば、被測定体W’の測定時にも被測定体Wと同程度に正確な補正を行うことができるため好ましい。
【0092】
なお、上記の説明では、曲率半径測定機50が、シフト量補正とチルト量補正との両方の補正を行う場合の例で説明したが、いずれか一方の補正ができるようにした装置構成としてもよい。
【0093】
また、上記の説明では、位置ずれ測定工程は、位置ずれ量を位置ずれ量算出部105によって自動的に算出する場合の例で説明したが、モニタ11に測定用カーソルを表示しておき、操作者が測定用カーソルをモニタ11に表示された干渉縞画像の縞中心や縞の傾きに合わせて位置取得を指示することにより、縞中心の位置や縞の傾きを測定できるようにしてもよい。
この場合、例えば、干渉縞画像にノイズがのっていて、画像処理の誤差が出やすい場合に、操作者の目視判断を優先して、測定を行うことが可能になる。
【0094】
また、上記の説明では、第2の位置ずれ測定位置が、基準位置と第1の位置ずれ測定位置の中間である場合の例で説明したが、第2の位置ずれ測定位置は、これらの位置の中間には限定されない。
【0095】
また、上記の実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0096】
3 干渉計
4 カメラ(観察部)
5 1軸移動機構(相対移動機構)
8 保持台
8a 保持面
9 調整ステージ
10 制御ユニット
11 モニタ(観察部)
13 参照レンズ
13a 参照面
50 曲率半径測定機
100 装置制御部(校正位置移動制御部、位置補正制御部)
101 画像処理部(位置ずれ量測定部)
102 表示制御部
103 記憶部
104 駆動制御部
105 位置ずれ量算出部(位置ずれ量測定部)
106 位置補正データ算出部(位置補正部)
107 曲率半径算出部
球面光学素子(校正用光学部材)
平面光学素子(校正用光学部材)
Sa、CTa 校正面
、H、h、hS1、hS2 移動位置
K1、IK2、IK3、JK1、JK2、JK3 干渉縞画像
基準位置
、K 位置ずれ測定位置
測定光束
反射光束
O 光軸
、P 面頂
13 集光点(集光位置)
曲率中心
、R 曲率半径
、S、S 干渉縞中心
W 被測定体
被測定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の被測定面に向けて出射された測定光束と、該測定光束による前記被測定面での反射光束と、を干渉計で干渉させることで形成される干渉縞画像に基づいて前記被測定面の曲率半径を測定する曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法であって、
前記被測定体を被測定体保持位置に保持する保持台に、校正面を有する校正用光学部材を保持させる保持工程と、
前記干渉計と前記保持台との相対位置を調整することで、前記測定光束の集光位置を前記校正面の面頂に位置合わせして、この相対位置を前記保持台の基準位置とし、該基準位置での干渉縞画像を記憶する基準調整工程と、
前記保持台を、前記基準位置から予め設定された位置ずれ測定位置に相対移動し、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像を記憶する位置移動工程と、
前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に基づいて前記干渉計の光軸に対する前記被測定体保持位置のシフト量またはチルト量からなる位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出工程と、
前記位置ずれ量に基づいて、前記被測定体保持位置を前記干渉計に対して相対移動させる際に前記位置ずれ量を補正するための位置補正量を算出する位置補正工程と、
を備える曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法。
【請求項2】
前記校正用光学部材として前記校正面が球面である球面光学素子を用いる場合に、
前記位置ずれ測定位置は、
前記測定光束の集光位置が前記校正面の曲率中心に一致する位置を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法。
【請求項3】
前記基準調整工程、前記位置移動工程、および前記位置ずれ量算出工程は、
前記校正用光学部材として前記校正面が球面である球面光学素子を用いる、第1の基準調整工程、第1の位置移動工程、および第1の位置ずれ量算出工程、と、
前記校正用光学部材として前記校正面が平面である平面光学素子を用いる、第2の基準調整工程、第2の位置移動工程、および第2の位置ずれ量算出工程、と、を備え、
前記第1の位置ずれ量算出工程では、前記シフト量を算出し、
前記第2の位置ずれ量算出工程では、前記チルト量を算出し、
前記位置補正工程では、前記シフト量および前記チルト量を補正するための位置補正量を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の曲率半径測定機の被測定体保持位置補正方法。
【請求項4】
被測定体を被測定体保持位置に保持する保持台と、
前記被測定体の被測定面に向けて出射する測定光束と、該測定光束による前記被測定面での反射光束と、を干渉させて干渉縞画像を形成する干渉計と、
該干渉計と前記保持台とを相対移動させて、前記干渉計に対する前記保持台の距離を変化させる相対移動機構と、
前記保持台における前記被測定体保持位置の前記干渉計の光軸に対するシフト量およびチルト量の少なくともいずれかを調整する調整ステージと、
前記被測定体保持位置に校正面を有する校正用光学部材を保持し、前記校正面の干渉縞画像に基づいて、前記測定光束の集光位置に前記校正面の面頂が位置合わせされた際の前記保持台の前記干渉計に対する相対位置である基準位置から予め設定された位置ずれ測定位置に前記校正面を移動させる校正位置移動制御部と、
前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に基づいて、前記干渉計の光軸に対する前記被測定体保持位置のシフト量またはチルト量からなる位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部と、
前記位置ずれ量に基づいて、前記保持台を前記干渉計に対して相対移動させる際に前記位置ずれ量を補正するための位置補正量を算出する位置補正部と、
前記保持台を前記干渉計に対して相対移動させて前記被測定面の曲率半径の測定を行う際に、前記位置補正量に基づいて、前記調整ステージを駆動して、前記保持台の位置補正を行う位置補正制御部と、
を備える曲率半径測定機。
【請求項5】
前記基準位置での干渉縞画像と、前記位置ずれ測定位置での干渉縞画像と、に画像処理を施して、それぞれ干渉縞画像情報を生成する画像処理部を備え、
前記位置ずれ量算出部は、前記画像処理部によって生成された前記それぞれの干渉縞画像情報から、前記位置ずれ量を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の曲率半径測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242085(P2012−242085A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108741(P2011−108741)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】