説明

有機化合物の組合せ剤

本発明は;i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩を含む、組合せ製剤または医薬組成物、各々のような組合せ剤に関する。本発明は、さらにインスリン抵抗症、グルコース代謝の障害(IGT)、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、特に1型または2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経前症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能障害および血管コンプライアンス障害、および血管事象から選択される疾患または状態または、糖尿病(例えばI型またはII型)またはIGTと関連する心臓血管罹患または死亡の予防、進行の遅延または処置のためのこのような組合せ剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩を含む、組合せ製剤または医薬組成物、各々のような組合せ剤に関する。
【発明の開示】
【0002】
今回、少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、下記に定義のとおりのもの、および共薬剤としてのDPP−IV阻害剤、例えば、下記に定義のとおりのものを含む組合せ剤は、有利な効果を有し、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害により阻害され得る疾患または状態およびDPP−IV阻害により処置され得る状態/障害の処置に有用であることを見いだした。
【0003】
したがって第1の局面において、本発明は、活性成分として;
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む、組合せ製剤または医薬組成物、各々のような組合せ剤に関する。
【0004】
好ましくは、組合せ剤は医薬組成物または組合せ医薬製剤である。
【0005】
この医薬組成物において、組合せパートナー(i)および(ii)は、1つの組合せ単位用量形または2つの別々の単位用量形で一緒に、交互にまたは別々に投与できる。単位用量形はまた固定された組合せ剤であり得る。
【0006】
“少なくとも1種の治療剤”なる用語は、DPP−IV阻害剤に加えて、本発明にしたがい特定される1種またはそれ以上、例えば2種、さらに3種の活性成分を組み合わせることができることを意味する。
【0007】
本明細書で使用される“DPP−IV”なる用語は、CD26としても既知である、ジペプチジルペプチダーゼIVを意味することを意図する。プロリン/アラニン後を切断するアミノ−ジペプチダーゼのグループに所属するセリンプロテアーゼであるDPP−IVは、具体的に2個の位置においてプロリンまたはアラニンを有するタンパク質から2個のN−末端アミノ酸を取り除く。その基質がインスリン分泌促進ホルモングルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)および胃抑制ペプチド(GIP)を含むため、DPP−IVはグルコース代謝の制御に使用できる。GLP−1およびGIPは、完全な形態のみ活性であり;2個のN−末端アミノ酸の除去がそれらを不活性にする。
【0008】
DPP−IV合成阻害剤のインビボ投与は、GLP−1およびGIPのN−末端分解を妨げ、これらのホルモンの血漿中濃度の上昇、インスリン分泌の増加および、したがって、耐糖能改善をもたらす。
【0009】
“DPP−IV阻害剤”なる用語は、DPP−IVおよび機能的に関連する酵素の酵素活性を1−100%阻害するように阻害し、そして、特に、限定されないが、GIP、ペプチドヒスチジンメチオニン、サブスタンスP、神経ペプチドY、および一般的にアミノ末端位の2番目にアラニンまたはプロリン残基を含む他の分子を含む基質分子の作用を保存する分子を示すことを意図する。DPP−IV阻害剤での処置はペプチド基質の作用持続期間を延長し、そして本発明に関連する範囲の生物学的活性をもたらす非分解形である無傷のものの濃度を増加する。
【0010】
そのために、化合物が精製CD26/DPP−IVの酵素活性を阻害する能力を試験する。簡潔に言うと、CD26/DPP−IVの活性は合成基質Gly−Pro−p−ニトロアニリド(Gly−Pro−pNA)を開裂させる能力によりインビトロで測定する。DPP−IVによるGly−Pro−pNAの開裂はp−ニトロアニリド(pNA)生成物を遊離させ、その出現割合は直接酵素活性に比例する。特異的酵素阻害剤による酵素活性の阻害はpNAの生成を減速させる。阻害剤と酵素間の相互作用が強いほど、pNAの生成は減速される。したがって、pNAの蓄積速度の阻害程度は酵素阻害強度の直接的尺度である。pNAの蓄積は分光光度法で測定する。各化合物に対する阻害定数、Kiは、阻害剤および基質の数種の異なる濃度と、固定された量の酵素をインキュベートすることにより測定する。
【0011】
本明細書において、“DPP−IV阻害剤”なる用語はまた、DPP−IV阻害剤の活性代謝物およびプロドラッグのような活性代謝物およびそのプロドラッグを含むことを意味する。活性“代謝物”なる用語は、DPP−IV阻害剤が代謝されるとき、生成されるDPP−IV阻害剤の活性誘導体である。“プロドラッグ”なる用語は、DPP−IV阻害剤に代謝されるか、またはDPP−IV阻害剤と同じ代謝物に代謝されるいずれかの化合物である。
【0012】
DPP−IV阻害剤は当分野で既知である。例えば、DPP−IV阻害剤は、例えばWO 98/19998、DE 19616 486 A1、WO 00/34241、WO 95/15309、WO 01/72290、WO01/52825、WO 9310127、WO 9925719、WO 9938501、WO 9946272、WO 9967278およびWO 9967279において、それぞれの場合に一般的におよび具体的に記載されている。
【0013】
好ましいDPP−IV阻害剤は、下記の特許出願に記載されている;WO 02053548とりわけ化合物1001から1293および実施例1から124、WO 02067918とりわけ化合物1000から1278および2001から2159、WO 02066627とりわけ実施例に記載、WO 02/068420とりわけ実施例IからLXIIIに具体的に記載のすべての化合物および対応する類似体、さらに好ましい化合物は、IC50を示す表に記載の2(28)、2(88)、2(119)、2(136)であり、WO 02083128とりわけ実施例1から13、US 2003096846とりわけ具体的に記載の化合物、WO 2004/037181とりわけ実施例1から33、WO 0168603とりわけ実施例1から109の化合物、EP1258480とりわけ実施例1から60の化合物、WO 0181337とりわけ実施例1から118、WO 02083109とりわけ実施例1Aから1D、WO 030003250とりわけ実施例1から166、もっとも好ましくは1から8の化合物、WO 03035067とりわけ実施例に記載の化合物、WO 03/035057とりわけ実施例に記載の化合物、US 2003216450とりわけ実施例1から450、WO 99/46272とりわけ請求項12、14、15および17の化合物、WO 0197808とりわけ請求項2の化合物、WO 03002553とりわけ実施例1から33の化合物、WO 01/34594とりわけ実施例1から4に記載の化合物、WO 02051836とりわけ実施例1から712、EP 1245568とりわけ実施例1から7、EP 1258476とりわけ実施例1から32、US 2003087950とりわけ実施例に記載のもの、WO 02/076450とりわけ実施例1から128、WO 03000180とりわけ実施例1から162、WO 03000181とりわけ実施例1から66、WO 03004498とりわけ実施例1から33、WO 0302942とりわけ実施例1から68、US 6482844とりわけ実施例に記載のもの、
【0014】
WO 0155105とりわけ実施例1および2に記載の化合物、WO 0202560とりわけ実施例1から166、WO 03004496とりわけ実施例1から103、WO 03/024965とりわけ実施例1から54、WO 0303727とりわけ実施例1から209、WO 0368757とりわけ実施例1から88、WO 03074500とりわけ実施例1から72、実施例4.1から4.23、実施例5.1から5.10、実施例6.1から6.30、実施例7.1から7.23、実施例8.1から8.10、実施例9.1から9.30、WO 02038541とりわけ実施例1から53、WO 02062764とりわけ実施例1から293、好ましくは実施例95(2−{{3−(アミノメチル)−4−ブトキシ−2−ネオペンチル−1−オキソ−1,2ジヒドロ−6−イソキノリニル}オキシ}アセトアミド塩酸塩)の化合物、WO 02308090とりわけ実施例1−1から1−109、実施例2−1から2−9、実施例3、実施例4−1から4−19、実施例5−1から5−39、実施例6−1から6−4、実施例7−1から7−10、実施例8−1から8−8、90ページの実施例7−1から7−7、91から95ページの実施例8−1から8−59、実施例9−1から9−33、実施例10−1から10−20、US 2003225102とりわけ化合物1から115、実施例1から121の化合物、好ましくは化合物a)からz)、aa)からaz)、ba)からbz)、ca)からcz)およびda)からdk)、WO 0214271とりわけ実施例1から320ならびにUS 2003096857およびWO 2004/052850とりわけ具体的に実施例1から42のように記載の化合物および請求項1の化合物、DE 102 56 264 A1とりわけ実施例1から181のように記載の化合物および請求項5の化合物、WO 04/076433とりわけ表Aに記載、好ましくは表Bに記載の化合物、好ましくは化合物IからXXXXVII、または請求項6から49の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 04/071454とりわけ具体的に記載の化合物、例えば化合物1から53または表IaからIfの化合物または請求項2から55の化合物、
【0015】
WO 02/068420とりわけ具体的に記載の化合物、化合物IからLXIIIまたは実施例1および類似体1から140または実施例2および類似体1から174または実施例3および類似体1、または実施例4から5、または実施例6および類似体1から5、または実施例7および類似体1−3、または実施例8および類似体1、または実施例9、または実施例10および類似体1から531のように具体的に記載の化合物、より好ましくは請求項13の化合物、WO 03/000250とりわけ化合物1から166のように具体的に記載の化合物、好ましくは実施例1から9の化合物、WO 03/024942とりわけ化合物1から59、表1(1から68)の化合物、請求項6、7、8、9の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03024965024942とりわけ化合物1から54のように具体的に記載の化合物、WO 03002593とりわけ表1または請求項2から15の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03037327とりわけ実施例1から209の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03/000250とりわけ化合物1から166のように具体的に記載の化合物、好ましくは実施例1から9の化合物、WO 03/024942とりわけ化合物1から59、表1(1から68)の化合物、請求項6、7、8、9の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03024965024942とりわけ化合物1から54のように具体的に記載の化合物、WO 03002593とりわけ表1または請求項2から15の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03037327とりわけ実施例1から209の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 0238541、WO0230890、WO 03/000250とりわけ化合物1から166のように具体的に記載の化合物、好ましくは実施例1から9の化合物、WO 03/024942とりわけ化合物1から59、表1(1から68)の化合物、請求項6、7、8、9の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03024965とりわけ化合物1から54のように具体的に記載の化合物、W0 03002593とりわけ表1または請求項2から15の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03037327とりわけ実施例1から209の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 0238541とりわけ実施例1から53の化合物のように具体的に記載の化合物、WO 03/002531とりわけ好ましくは9から13ページに記載の化合物、もっとも好ましくは実施例1から46の化合物、およびさらに好ましくは実施例9の化合物の具体的に記載の化合物、米国特許番号第6,395,767好ましくは実施例1から109の化合物、もっとも好ましくは実施例60の化合物、2001年2月16日出願の米国特許出願第09/788,173(代理人ファイルLA50)とりわけ実施例に記載のもの、WO 99/38501とりわけ実施例に記載のもの、W0 99/46272とりわけ実施例に記載のもの、ならびにDE 19616 486 A1とりわけval−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリジド、およびイソロイシル−チアゾリジドおよびイソロイシル−ピロリジドのフマル酸塩(fumar salts)。
【0016】
さらに好ましいDPP−IV阻害剤は、米国特許番号第6124305およびUS 6107317、国際特許出願、公開番号WO 95153 09およびWO 9818763に記載の具体例を含む。
【0017】
それぞれの場合、特に特許請求の範囲の化合物および実施例の最終産物において、最終産物、医薬製剤および特許請求の範囲の対象はこれらの刊行物を引用することにより本明細書に包含させる。
【0018】
公開された特許出願WO 9819998は、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、特に1−[2−[5−シアノピリジン−2−イル]アミノ]−エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン(NVP−DPP728)を開示している。
【0019】
公開された特許出願WO 0034241および公開された特許US 6110949は、各々N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジンおよびW(置換グリシル)−4−シアノピロリジンを開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項1から4で引用されているものである。特にこれらの出願は、化合物1−[[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジン(LAF237またはビルダグリプチンとしても既知)を開示している。
【0020】
公開された特許出願WO 9515309は、DPP−IVの阻害剤としてアミノ酸2−シアノピロリジンアミドを開示している。公開された特許出願WO 9529691は、α−アミノアルキルホスホン酸のジエステルのペプチジル誘導体、特にプロリンを有するものまたは関連構造物を開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は特に表1から8で引用されているものである。
【0021】
WO 01/72290において、興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に実施例1および請求項1、4および6で引用されているものである。
【0022】
WO 01/52825は、特に(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンまたは(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンを開示している。
【0023】
公開された特許出願WO 9310127は、DPP−IV阻害剤として有用なプロリンボロン酸エステルを開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に実施例1から19に引用されるものである。
【0024】
公開された特許出願WO 9925719は、ストレプトミセス微生物の培養により製造されるDPP−IV阻害剤であるサルホスチン(sulphostin)を開示している。
【0025】
公開された特許出願WO 9938501は、N−置換4−8員ヘテロ環式環を開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項15から20に引用されるものである。
【0026】
公開された特許出願WO 9946272は、DPP−IVの阻害剤としてリン化合物を開示している。興味のあるDPP−IV阻害剤は、特に請求項1から23に引用されるものである。
【0027】
公開された特許出願WO 9967278およびWO 9967279は、DPP−IVプロドラッグおよびCが安定なまたは不安定なDPP−IVの阻害剤であるA−B−C形の阻害剤を開示している。
【0028】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO 03/057200の14から27ページに開示されている式I、IIまたはIIIの化合物である。もっとも好ましいDPP−IV阻害剤は、具体的に28および29ページに記載の化合物である。
【0029】
参照することにより本明細書に含まれる上記特許文献に記載のすべての物質は、本発明を行うために使用されるDPP−IV阻害剤として有用な可能性があると考慮される。
【0030】
さらに好ましい態様において、DPP−IV阻害剤は、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンまたは薬学的に許容されるその塩である。アロイルは、例えばナフチルカルボニル;または非置換または例えば、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンまたは好ましくはニトロによりモノ−もしくはジ置換されたベンゾイルである。該ペプチジル基は、ヒドロキシルアミン窒素原子に直接結合している1個が好ましくはプロリンである、好ましくは2個のα−アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、リシンまたはプロリンを含む。
【0031】
好ましくは、該N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VII
【化1】

[式中、
jは0、1または2であり;
Rεは天然アミノ酸の側鎖を表し;そして
Rεは低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンまたはニトロを表す。]
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0032】
本発明のとても好ましい態様において、該N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VIIa
【化2】

の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0033】
例えば式VIIまたはVIIaのN−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンおよびそれらの製造法は、H.U. Demuth et al. in J. Enzyme Inhibition 1988, Vol. 2, 129−142ページ、とりわけ130−132ページに記載されている。
【0034】
好ましいDPP−IV阻害剤は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジンおよびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジンおよびその医薬的な塩である。
【0035】
好ましいDPP−IV阻害剤は、Mona Patel and col. (Expert Opinion Investig Drugs. 2003 Apr;12(4):623-33)の第5段落に記載のもの、とりわけP32/98、K−364、FE−999011、BDPX、NVP−DDP−728などであり、この文献、とりわけ記載のDPP−IV阻害剤を本明細書に包含させる。
【0036】
他の好ましい阻害剤は、WO 2001068603または米国特許番号第6,395,767(実施例60の化合物)に記載の化合物BMS−477118であり、特許出願WO 2004/052850の2ページに式Mとして記載の(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、安息香酸エステル(1:1)、および対応する遊離塩基、特許出願WO 2004/052850の3ページに式Mとして記載の(lS,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ−[3.1.00]ヘキサン−3−カルボニトリル(M’)およびその一水和物(M”)としても既知である。該化合物BMS−477118はまたサクサグリプチンとしても既知である。
【0037】
他の好ましい阻害剤は、WO 03/002531(実施例9)に記載の化合物GSK23Aであり、(2S,4S)−1−((2R)−2−アミノ−3−[(4−メトキシベンジル)スルホニル]−3−メチルブタノイル)−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル塩酸塩としても既知である。
【0038】
FE−999011は特許出願WO 95/15309の14ページに化合物番号18として記載されている。
【0039】
3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンとしても既知のP32/98またはP3298(CAS番号:251572−86−8)は、下記のような3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンおよび(2E)−2−ブテンジオエート(2:1)混合物
【化3】

として使用することができ、ProbiodrugのWO 99/61431およびDiabetes 1998, 47, 1253-1258に記載されており、ならびに同社により記載された化合物P93/01である。
【0040】
他のとても好ましい本発明のDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO 02/076450(とりわけ実施例1から128)およびWallace T. Ashton(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14 (2004) 859-863)に記載されており、とりわけ化合物1ならびに表1および2に記載の化合物である。好ましい化合物は、式
【化4】

の化合物21e(表1)である。
【0041】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO 2004/037169に記載、とりわけ実施例1から48に記載のもの、およびWO 02/062764に記載、とりわけ実施例1から293に記載のものであり、より好ましいものは7ページに記載の化合物3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドであり、特許出願WO 2004/024184、とりわけ参照例1から4にも記載されている。
【0042】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO 03/004498、とりわけ実施例1から33に記載されており、もっとも好ましくは実施例7に記載されており、MK−0431またはSitagliptinとしても既知である式
【化5】

の化合物である。
【0043】
好ましいDPP−IV阻害剤はまた、特許出願WO 2004/037181、とりわけ実施例1から33に記載されて、もっとも好ましくは請求項3から5に記載の化合物である。
【0044】
好ましいDPP−IV阻害剤は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジン、およびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン、MK−431および薬学的なその塩である。
【0045】
もっとも好ましいDPP−IV阻害剤は、[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(上記のとおりのProbiodrugの化合物コード:P32/98)、MK−0431、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望により薬学的なそれらの塩から選択される。
【0046】
とりわけ好ましいものは、式
【化6】

のとりわけその二塩酸塩および一塩酸塩、1−{2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ}アセチル−2(S)−シアノ−ピロリジン二塩酸塩(DPP728)(別名[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩)、
および式
【化7】

の1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)(別名(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン、LAF237またはビルダグリプチン)、
およびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(上記のとおりのProbiodrugの化合物コード:P32/98)、MK−0431、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドならびに所望により薬学的なそれらの塩である。
【0047】
DPP728およびビルダグリプチンは、WO 98/19998の実施例3およびWO 00/34241の実施例1、各々に具体的に記載されている。DPP−IV阻害剤P32/98(上記参照)は、Diabetes 1998, 47, 1253-1258に具体的に記載されている。DPP728およびLAF237は、WO 98/19998の20ページまたはWO 00/34241または国際特許出願番号第 EP2005/000400(出願番号)に記載のとおりに製造できる。
【0048】
とりわけ好ましいものは、経口活性DPP−IV阻害剤である。
【0049】
参照により本明細書に包含されている、上記特許文献または科学文献に記載のすべての物質は、本発明を行うために使用されるDPP−IV阻害剤として有用である可能性があると考えられる。
【0050】
それぞれの場合、特に特許請求の範囲の化合物および実施例の最終産物において、最終産物、医薬製剤および特許請求の範囲の対象は、これらの刊行物を引用することにより本明細書に包含させる。
【0051】
本発明の単独で使用されるDPP−IV阻害剤は、担体と共同して使用できる。
【0052】
とりわけ好ましいものは、経口活性DPP−IV阻害剤である。
【0053】
それぞれの場合、特に特許請求の範囲の化合物および実施例の最終産物において、最終産物、医薬製剤および特許請求の範囲の対象は、これらの刊行物を引用することにより本明細書に包含させる。
【0054】
“少なくとも1種”なる用語は、レニン阻害剤に加えて、本発明にしたがい特定される1種またはそれ以上、例えば2種、さらに3種の活性成分を組み合わせることができることを意味する。
【0055】
本発明に使用されるチロシンキナーゼ阻害剤であるPDGF−R−は、好ましくは下記の化合物からなる群から選択される:4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、PDGF−受容体イソ型の阻害剤、本明細書に包含させるMahboobi S et al., J. Med. Chem. 2002, 45:1002-1018に記載の化合物;CAS番号71897−07−9のPDGF受容体キナーゼ阻害薬;AG1295;本明細書に包含させるKovalenko M et al., Cancer Res. 1994 54:6106-6114およびLudewig D et al., Cell Tissue Res. 2000, 299:97-103に記載のとおりのAG1295/96;CT52923(4−(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)−N−(3,4−メチレンジオキシベンジル)−1−ピペラジンチオカルボキサミド);RP−1776;GFB−111;ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオン、SU102(SUGENにより開発);CAS番号146535−11−7のAG1296;RPR101511A(Aventis Pharmaにより開発);CDP 860およびZvegf3(ZymoGeneticsにより開発);CP 673451およびPD 170262(Pfizerから);CAS番号190726−45−5のKI 6783、PDGF−Rの阻害剤(キリンビール、日本により開発);KN 1022(協和発酵、日本およびMillenium Pharmaceuticals、米国により開発);AG 13736(Pfizerにより開発);CHIR 258(Chiron Corporationにより開発);(Millenium Pharmaceuticalsの)MLN 518および(SUGEN−Pfizerの)SU 11248、レフルノミド;または薬学的に許容されるそれらの塩。
【0056】
CT52923は、Matsuno K, et al., “Synthesis and structure activity relationships of PDGF receptor phosphorylation inhibitor-1.” in 18th Symposium on Medicinal Chemistry; 1998 Nov 25-27; Kyoto, Japan, the Pharmaceutical Society of Japan, Division of Medicinal Chemistry, Tokyo, Japan :Abstract 2-P-05に記載されている。
【0057】
環状ペプチドであるRP−1776は、ストレプトミセス属KY11784の培養液から単離した。それは例えばToki S, Agatsuma T, et al., J. Antibiot. (Tokyo) 2001 May;54(5):405-14に記載されている。
【0058】
GFB−111は例えばBlaskovich MA et al., Nat. Biotechnol. 2000 Oct;18(10):1065-70およびDelarue F. et al, 91st Annual meeting of the American Association for Cancer research, 41:458, 2000に記載されている。
【0059】
ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオンは例えばTeller S, Eur. J. Med. Chem. 2000 Apr;35(4):413-27に記載されている。
【0060】
CDP 860は、ヒト抗血小板誘導成長因子β受容体抗体からのPEG化抗体フラグメントである。
【0061】
PD 170262または2−[4−(2−ジエチルアミノエトキシ)フェニルアミノ]−8−メチル−6−(3−チエニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オンは、血小板誘導成長因子チロシンキナーゼの選択性を有するチロシンキナーゼの強力な阻害剤である。2−アミノ−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン系の合成およびチロシンキナーゼ阻害活性は例えばKlutchko S. et al., 213th American Chemical Society National meeting: abst. MEDI 201(poster), 1997, USAに記載されている。
【0062】
KI 6783または4−(3,4−ジメトキシフェノキシ)−6,7−ジメトキシキノリンは、例えばKubo K. et al, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 7:2935-2940, 1997およびYagi M. et al., Exp. Cell Research 234:285-92, 1997に記載されている。
【0063】
PDGFRリン酸化を阻害する、KN1022または6,7−ジメトキシ−4−[4−(4−ニトロフェニル)アミノカルボニルピペラジン−1イル]−キナゾリンは、例えば217th American Chemical Society National meeting abstr. MEDI 061, Part1, 1999, Japanに記載されている。
【0064】
AG 013736またはN−メチル−2−[3−[2−(2−ピリジル)ビニル]−1H−インダゾール−6−イルスルファニル]−ベンズアミドは、例えばHeller et al., Pharmacological activities of AG 013736, a small molecule inhibitor of VEGF/PDGFR tyrosine kinases, 93rd Annual meeting f the American association for Cancer research 43:1082, 2002, USAに記載されている。
【0065】
CHIR 258は、経口活性アミノ−ベンゾイミダゾールキノリン成長因子キナーゼ阻害剤であり、これは受容体チロシンキナーゼ、例えばPDGFRファミリーに対する阻害剤活性の範囲を証明した。CHIR 258は、例えばSteigerwalt R et al. and Lee SH et al. in 94th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research 753(plus poster) abstr. 3783 and 934 (plus poster) abstr. R4702, 各々、2003, USAに記載されている。
【0066】
SU11248または5−[3−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロインドル−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ジエチルアミノエチル)アミンは、例えばPDGFRの選択性を有する多標的キナーゼ阻害剤である。SU11248は、例えばXin L. et al., 93rd Annual Meeting of the American Association for Cancer Research 43:1081 (plus poster), 2002, USAに記載されている。
【0067】
MLN 518は、式4−[4−(N−パラ−イソ−プロポキシフェニルカルバモイル)−1−ピペラジニル]−6−メトキシ−7−(ピペリジノプロピルオキシ)−キナゾリンのキナゾリンのピペラジニル誘導体であり、これは例えば結合アッセイにおけるPDGF Rリン酸化を阻害する。それは例えばStone RM et al., Blood 102:65-66, 2003, Kelly LM et al., Cancer Cell 1: 421-23, 2002に記載されている。
【0068】
レフルノミド(SU101)または4−イソキサゾールカルボキサミド、5−メチル−N−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]はチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0069】
このようなPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、特許出願EP 0 564 409 A1およびWO 99/03854に記載のとおりの式II
【化8】

のN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体であり、出典明示により本明細書に包含する。
【0070】
好ましくは上記のとりわけ式(II)の化合物であり、それはCGP 57148B{N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミン}である。CGP 57148B(以下:“イマチニブ”[国際非専売名]と称する)およびとりわけ抗腫瘍剤としてのその使用は、1993年10月6日出願の欧州特許出願EP−A−0 564 409の実施例21、および多くの他の国の対応出願および特許、例えば米国特許5,521,184および日本特許2706682に記載されている。他に好ましいのは、2000年5月10日公開の欧州特許出願番号998 473に記載のとおりの4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミドのβ結晶形である。
【0071】
“4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド”なる用語は、すべての結晶形を含み、とりわけ欧州特許出願番号998 473に記載のとおりのβ−結晶形である。
【0072】
より好ましい式(II)のN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体は、そのモノメシレート塩形で使用する。
【0073】
式IIの化合物は、一般的におよび具体的に特許出願EP 0 564 409 A1およびWO 99/03854に記載されており、特に特許請求の範囲の化合物および作業例の最終産物において、最終産物、医薬製剤および特許請求の範囲の対象は、これらの刊行物を引用することにより本明細書に包含させる。同様にそれらに記載の対応する立体異性体ならびに対応する多形体、例えば結晶変形を、本明細書に包含させる。
【0074】
EP 0 564 409 A1において、化合物IIは、癌、血栓症、乾癬、線維症、皮膚硬化症およびアテローム性動脈硬化症の治療に有用であると記載されている。
【0075】
単離または精製の目的のために、ならびにさらに中間体として使用される化合物の場合において、薬学的に許容されない塩を使用することができる。薬学的に許容される、無毒の塩のみが、治療目的のために使用され、したがって、これらの塩が好ましい。
【0076】
さらに適当なPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、WO 98/35958、とりわけ実施例62の化合物、およびUS 5,093,330に記載されており、それぞれの場合、特に特許請求の範囲の化合物および実施例の最終産物において、この対象は、これらの刊行物を引用することにより本明細書に包含させる。
【0077】
他の好ましい化合物は、特許出願WO 04/005281、とりわけ実施例に記載されおり、もっとも好ましくは式
【化9】

の実施例92の化合物であり、これは4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミドとしても既知である。
【0078】
好ましいPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、CT52923(4−(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)−N−(3,4−メチレンジオキシベンジル)−1−ピペラジンチオカルボキサミド)、RP−1776、GFB−111、ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオン、SU 102(SUGENによる開発)、AG1296(CAS番号146535−11−7)、AG1296(CAS番号71897−07−9)およびRPR101511Aまたは、それぞれの場合に、薬学的に許容されるそれらの塩から選択される。
【0079】
それぞれの適当な場合において、例え化合物がヒドロクロロチアジドの場合のように薬学的に許容される塩それ自体として示していなくても、これらの化合物はまたそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0080】
対応する活性成分または薬学的に許容されるその塩はまた水和物または結晶化のために使用される他の溶媒を含むような溶媒和物形を使用し得る。
【0081】
もっとも好ましいPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジン−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミン(イマチニブ)および4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミドまたはそれぞれの場合に一塩酸塩のような薬学的に許容されるそれらの塩である。
【0082】
好ましいのは、DPP−IV阻害剤、好ましくはLAF237または薬学的に許容されるそれらの塩および4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、CT52923(4−(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)−N−(3,4−メチレンジオキシベンジル)−1−ピペラジンチオカルボキサミド)、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、RP−1776、GFB−111、ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオン、SU 102(SUGENによる開発)、AG1296(CAS番号146535−11−7)、AG1296(CAS番号71897−07−9)およびRPR101511A、またはそれぞれの場合に、薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される活性剤を第二の活性成分として含む、組合せ製剤または医薬組成物、各々のような組合せ剤である。
【0083】
対応する活性成分または薬学的に許容されるそれらの塩はまた水和物または結晶化のために使用される他の溶媒を含むような溶媒和物形を使用し得る。
【0084】
組み合わせるべき化合物は、薬学的に許容される塩として存在できる。これらの化合物が、例えば少なくとも1種の塩基中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成できる。対応する酸付加塩はまた、所望によりさらなる塩基中心を有するように形成できる。酸基(例えばCOOH)を有する化合物はまた、塩基と塩を形成できる。
【0085】
これらのすべての市販品は、本発明の組合せ治療のためにそれ自体で利用できる。
【0086】
一般名または商標名で同定された活性剤の構造は、現版標準概論“The Merck Index”またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から得られ得る。対応するそれらの内容は、出典明示により本明細書の一部とする。当業者は、容易にこれらの参考文献に基づいて活性成分を同定でき、そして同様に製造し、インビトロおよびインビボ両方の標準試験モデルにおいて、医薬適応および特徴を試験できる。
【0087】
より驚くべきことは、DPP−IV阻害剤またはその塩および少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の組合せ投与は、有利な、とりわけ相乗的な治療効果だけでなく、本明細書に記載の組合せ剤に使用した薬学的に活性な化合物の1種のみを使用する単剤治療と比較して、組合せ処置によりもたらされる付加的な利点、およびさらに驚くべき有益な効果をもたらすという実験的発見である。
【0088】
従来の試験モデルおよびとりわけ本明細書に記載の試験モデルにより、少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤とDPP−IV阻害剤の組合せ剤は、下記に特定の疾患のより効果的な予防または好ましくは処置をもたらすことを示すことができる。特に、従来の試験モデルおよびとりわけ本明細書に記載の試験モデルにより、本発明の組合せ剤は、好ましくは下記に特定の疾患のより効果的な予防または処置をもたらすことを見いだすことができる。
【0089】
同時に摂取するとき、本明細書に記載の多くの組合せ剤に関して、これは、さらによりいっそう有利な、とりわけ相乗的な治療効果だけでなく、効果の驚くべき延長、治療的処置の広い多様性のような同時の処置により得られる付加的な利点、ならびに膵臓のβ細胞、I型またはII型糖尿病のような糖尿病、IGT、肥満および血管事象、糖尿病またはIGTと関連する心臓血管の罹患または死亡に対して驚くべき有益な効果もまたもたらす。
【0090】
“増強”なる用語は、対応する薬理学的活性または治療的効果、各々の増加を意味する。本発明の他の成分の共投与による本発明の組合せ剤の一成分の増強は、1種の成分のみで達成されるよりも大きい効果が達成されることを意味する。
【0091】
“相乗”なる用語は、一緒に摂取したとき、単独で摂取するときの各薬剤の効果の合計よりも大きい合計の併用効果が産生されることを意味する。
【0092】
さらに、ヒト患者、とりわけ高齢者にとって、2種の錠剤をずれた時間に、すなわち複雑な処置計画にしたがって摂取するよりも、同時に、例えば食前に摂取する方がより便利であり、覚えやすい。より好ましくは、両方の活性成分を本明細書に記載の全ての場合において、固定された組合せ剤として、すなわち1つの錠剤として投与する。1つの錠剤の投与は同時に2つの錠剤を投与するよりも取り扱いが容易である。さらに、パッケージングがより少ない労力で達成できる。
【0093】
上記および下記の治療適応および有益な効果を証明するために、当業者は容易に適切なおよび標準な動物モデルを選択できる。
【0094】
本発明に使用される活性剤の組合せ剤の投与により生じる医薬活性は、例えば関連技術において既知である対応する薬理学的モデルを使用することにより証明できる。
【0095】
本発明の組合せ剤のインスリン分泌を増強する特性は、例えばT.Ikenoue et al. Biol.Pharm.Bull. 29(4), 354-359 (1997)の文献に記載のとおりの方法にしたがって測定し得る。
【0096】
これらの参照例の対応する対象は、出典明示により本明細書に包含させる。
【0097】
したがって、本発明の組合せ剤は、例えば、DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のために使用し得る。
【0098】
したがってさらなる局面において、本発明は、薬剤DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のための薬剤の製造のための
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む組合せ剤の使用に関する。
【0099】
本発明はさらに併用で有効量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩とPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤と相互作用する薬剤、または薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の治療剤および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を、処置を必要とするヒトを含む温血動物に投与することを含む、DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害の予防法、進行の遅延法または処置法に関する。
【0100】
本発明はさらに、少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩とDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるそれらの塩の組合せ;および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を含む、DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害から選択される疾患または状態の予防、進行の遅延または処置のための医薬組成物に関する。
【0101】
該疾患または状態がインスリン抵抗症、グルコース代謝の障害(IGT)、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、特に1型または2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経前症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能障害および血管コンプライアンス障害、および血管事象から選択される、または糖尿病(例えばI型またはII型)もしくはIGTと関連する心臓血管罹患もしくは死亡である、上記のとおりの方法または使用。
【0102】
もっとも好ましくは、該疾患または状態は、肥満、糖尿病(1型または2型糖尿病)、IGTおよび血管事象から選択されるか、または糖尿病(例えばI型またはII型)もしくはIGTと関連する心臓血管罹患もしくは死亡である。
【0103】
記載の使用または方法のための好ましい組合せ剤は、本明細書に記載されている。
【0104】
本明細書における“DPP−IV阻害剤により阻害され得る疾患および障害”なる用語は、限定されないがインスリン抵抗症、グルコース代謝の障害、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、特に1型または2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経前症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能障害、血管コンプライアンス障害を含む。この定義はまた、糖尿病またはIGTと関連する疾患および状態の有益な効果(例えば体重のより少ない増加またはより少ない血管事象および心臓血管罹患もしくは死亡)を含む。
【0105】
本明細書で定義のとおりの糖尿病と関連する“血管事象”は、限定されないがアテローム性動脈硬化症;血栓症;卒中、虚血、卒中による死亡および卒中による認知症のような脳血管疾患;肢虚血、跛行または間欠性跛行、切断経験のような末梢動脈疾患;ニューロパシー、ネフロパシーおよび網膜症のような微小血管疾患および続発症、心筋梗塞のような大血管疾患、他の冠動脈疾患;心臓肥大を含む。
【0106】
好ましくは、“DPP−IV阻害剤により阻害され得る疾患または状態”は、グルコース代謝の障害、耐糖能異常状態(IGT)、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、特に1型または2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性神経障害、足部潰瘍および血管事象から選択されるか、または糖尿病もしくはIGTと関連する心臓血管罹患または死亡である。
【0107】
“PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤により阻害され得る疾患または状態”は、好ましくは悪性または非悪性増殖性障害、例えば慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性白血病および急性骨髄性白血病血管形成阻害;腫瘍[例えば白血病、神経膠腫、肉腫;前立腺、大腸、乳房、肺、または卵巣の腫瘍]、アテローム性動脈硬化症、血栓症[一般に:血管の平滑筋細胞の障害];強皮症;乾癬、再狭窄、線維症;肝線維症または肺炎;喘息、移植誘発障害、例えば閉塞性細気管支炎の予防;ポルフィノーマスギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)のようなある細菌による細胞進入の予防;多剤耐性または好酸球増加症候群;消化管間質腫瘍(GIST);自己免疫疾患、より具体的に、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ性関節炎および多発性関節炎、強皮症、エリテマトーデス、皮膚筋炎、天疱瘡、多発性筋炎、脈管炎、ならびに移植片対宿主疾患からなる群から選択される自己免疫疾患;炎症疾患、より特にマスト細胞関連炎症疾患、例えば関節リウマチ、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節症、痛風性関節炎および他の関節炎状態;糖尿病性ネフロパシー、さらにまた糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎またはIgAネフロパシー;好ましくは心臓肥大、心筋梗塞後の心臓リモデリング、肺うっ血および拡張型または肥大型心筋症における心臓線維症、心筋症、例えば拡張型心筋症もしくは肥大型心筋症または糖尿病性心筋症、左または右心室肥大、糖尿病性ミオパチー、うっ血性心不全における卒中予防、動脈および/または大血管の肥大内側肥厚、腸間膜血管肥大、または関節硬化症から選択される心疾患または損傷;例えば腎臓門脈除去後のような腎臓超濾過、慢性腎臓疾患におけるタンパク尿症、高血圧の結果としての腎臓動脈症、腎硬化症、高血圧性腎硬化症またはメサンギウム肥大から選択される腎臓疾患または損傷から選択される。これらの使用のすべては、すでにPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤“イマチニブ”に関連するいくつかの特許出願に記載されている。
【0108】
“PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害により阻害され得る疾患または状態”は好ましくは糖尿病性ミオパチー、糖尿病性心筋症、糖尿病性ネフロパシー、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓血管の疾患または損傷から選択される。
【0109】
本明細書における“治療”なる用語は、進行中の疾患、障害または状態の処置に有効であることを意味する。
【0110】
“予防”なる用語は、処置すべき疾患、障害または状態の発症または再発の予防を意味する。
【0111】
本明細書における“進行の遅延”なる用語は、処置すべき疾患の段階前または早期である患者への組合せ剤の投与を意味し、ここで、該患者は、例えば対応する疾患の段階前であると診断されるか、またはその患者は、例えば医学的処置または事故による状態にあって対応する疾患を発症しそうである状態である。
【0112】
本明細書における“組合せ医薬製剤”なる用語は、活性成分、例えばイマチニブおよびDPP−IV阻害剤、好ましくはLAF237の両方を、同時に、共に、または具体的時間制限なしに順に別個の物として患者に投与することを意味し、このような投与は好ましくは同時に体内で2種の化合物の治療有効量を提供する。例として、目的が患者が体内で両方の活性成分一緒に処置を達成するとき、固定されていない組合せ剤は各々1種の活性成分を含む2個のカプセルであろう。
【0113】
本明細書において、“処置”なる用語は、疾患を有する危険性のある患者または疾患または障害を有している疑いのある患者ならびに病気の患者の処置を含む、防止的または予防的処置ならびに治療的または疾患抑制的処置の両方を含む。この用語はさらに疾患の進行の遅延のための処置を含む。
【0114】
好ましくは、本発明の組合せ剤の活性剤の併用で治療有効量を、同時にまたは任意の順に連続的に、例えば別々に(組合せ医薬製剤)または固定された組合せ剤で投与できる。
【0115】
ある特定の状況では、様々な作用機構を有する薬剤を組合せ得る。しかし、異なる作用形態を有するが同じ領域で作用する薬剤の何らかの組合せを考えるだけでは、必ずしも有利な効果を有する組合せ剤をもたらすとは限らない。
【0116】
さらに驚くべきことは、本発明のDPP−IV阻害剤およびPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、または各々の場合の、薬学的に許容されるそれらの塩の組合せ投与が、有利な、とりわけ増強されたまたは相乗的な治療効果をもたらすのみでないとの実験的発見である。それらと独立して、効果の驚くべき延長、治療的処置の広い多様性のような組合せ治療がもたらす付加的利点、および、例えば糖尿病と関連する疾患および状態に対する驚くべき有益な効果(例えばより少ない体重の増加またはより少ない血管事象および心臓血管罹患または死亡)を達成できる。
【0117】
さらに糖尿病の処置のとき、本発明の組合せ剤は特に糖尿病(例えばI型またはII型)を有する対象における、β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するために有用であり、そしてまたβ細胞塊の増加およびβ細胞の若返り(β細胞増殖、分化、および細胞生存の刺激)ができる。この効果(とりわけ組合せ剤の増強されたまたは相乗的な治療効果)は、出版物Pospisilik JA et al. (Diabets. 2003 Mar;52(3):741-50)または特許出願US20030220251およびWO0135988に記載の実験的プロトコールにより証明できる。
【0118】
したがって、本発明のさらなる局面において、とりわけ糖尿病(例えばI型またはII型)を有する対象における、β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するための、β細胞塊を増加するための、およびβ細胞を若返らせるための薬剤の製造のための、
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む組合せ剤の使用に関する。
【0119】
本発明はさらに、併用で有効量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩と、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤と相互作用する薬剤、または薬学的に許容されるその塩から選択される少なくとも1種の治療剤および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を、処置を必要とするヒトを含む温血動物、好ましくは糖尿病(例えばI型またはII型)を有する対象に投与することを含む、β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するための、β細胞塊を増加するための、およびβ細胞を若返らせるための方法に関する。
【0120】
本発明はさらに、DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩と、少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、または薬学的に許容されるその塩および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を含む、β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するための、β細胞塊を増加するための、およびβ細胞を若返らせるための医薬組成物に関する。
【0121】
糖尿病、特に2型糖尿病に関連する疾患、障害または状態は、限定されないが糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症および糖尿病性神経障害、黄斑変性症、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞、糖尿病性心筋症、心筋細胞死、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、卒中、肢虚血、血管再狭窄、足部潰瘍、内皮機能障害および/またはアテローム性動脈硬化症を含む。
【0122】
さらなる利点は、本発明の組み合わされる個々の薬剤の少ない用量を、用量を減少するために(例えば、しばしば少ない量だけでなく少ない頻度で適用される)使用でき、または副作用の発生の減少のために使用できることである。これは、処置すべき患者の要望および要求に一致する。
【0123】
本発明にしたがって使用される、DPP−IV阻害剤またはPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の減少した用量を考慮すると、それを一次治療のために適当とする組合せの相当な安全性プロファイルが存在する。
【0124】
上記または下記に記載のとおりの本発明の医薬組成物は、同時の使用または任意の順の連続使用、別々の使用または固定された組合せ剤として使用され得る。
【0125】
DPP−IV阻害剤およびPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を、固定された組合せ剤もしくは組合せ製剤またはキット(kit of part)のような本発明の組合せ剤の形態で投与する上記記載の方法または使用。
【0126】
DPP−IV阻害剤が(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンであり、そしてPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が好ましくは4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、CT52923(4−(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)−N−(3,4−メチレンジオキシベンジル)−1−ピペラジンチオカルボキサミド)、RP−1776、GFB−111、ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオン、SU 102(SUGENにより開発)、AG1296(CAS番号146535−11−7)、AG1296(CAS番号71897−07−9)およびRPR101511A、または各々の場合の、薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、本明細書に記載の組合せ剤、方法または使用。
【0127】
DPP−IV阻害剤が(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンであり、そしてPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、または各々の場合の、薬学的に許容されるそれらの塩である、とりわけ4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミドである、上記記載の組合せ剤、方法または使用。
【0128】
本発明にしたがって、DPP−IV阻害剤およびPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を一緒に投与するとき、このような投与は時間が連続してまたは同時に投与でき、一般的に同時投与方法が好ましい。連続投与のために、DPP−IV阻害剤およびPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は任意の順に投与できる。経口投与することが一般的に好ましい。とりわけ投与が経口かつ同時であることが好ましい。しかし、処置すべき対象が嚥下不可能である、または経口吸収がその他の点で損なわれるかまたは望ましくないとき、非経腸または経皮投与が適当である。DPP−IV阻害剤およびPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を順に投与するとき、それぞれの投与は同じ方法または別の方法でできる。
【0129】
本発明のさらなる局面は、
(a)1つめの単位用量形の一定量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩;
(b)2つめなどの単位用量形の一定量の少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、または適当なとき各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩;および
(c)該1つめ、2つめなどの単位用量を含む容器を含む
本発明の疾患または状態の予防、進行の遅延または処置のためのキットである。
【0130】
その変形において、本発明は同様に、例えば、本発明の組み合わせるべき成分を、独立して、または区別された量の成分で異なって固定された組合せ剤の使用により、すなわち同時にまたは異なる時点で投与できる点で、“複数パーツのキット”に関する。次いで複数パーツのキットのパーツは、例えば同時にまたは時間をずらして、すなわち何らかの複数パーツのキットのパーツに関して異なる時点でおよび同じまたは異なる時間間隔で投与できる。好ましくは、時間間隔は処置される疾患または状態に対するパーツの組合せ使用の効果が、成分の任意の1種のみの使用により得られるであろう効果よりも大きいように選択される。
【0131】
したがって、本発明はまた
(a)1つめの単位用量形の量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩;
(b)2種または3種またはそれ以上の成分(a)から(b)の独立単位形の量の少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、または適当なとき各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩を含む、とりわけ本発明にしたがう疾患または状態の予防、進行の遅延または処置のための、複数パーツのキットに関する。
【0132】
本発明はさらに、本発明の組合せ剤と、同時に、個別にまたは連続して使用するための指示書を一緒に含む市販パッケージに関する。
【0133】
好ましい態様において、(市販用)生産物は、上記の疾患の予防、進行の遅延または処置における、活性成分として(成分(a)または(b)の2個または3個またはそれ以上の別々の単位形の)本発明の組合せ剤と、同時に、個別にまたは連続してもしくはこれらの任意の組合せで使用するための指示書を含む、市販パッケージである。
【0134】
すべての本発明に記載の好ましいものは、本発明の組合せ剤、組成物、使用、処置法、“複数パーツのキット”および市販パッケージに適用する。
【0135】
これらの医薬製剤は、薬理学的活性化合物を単独でまたは慣用の医薬的補助物質と一緒に含む製剤で、恒温動物への経口および経直腸のような経腸、または非経腸投与用である。例えば医薬製剤は、約0.1%から90%、好ましくは約1%から約80%の活性化合物からなる。経腸または非経腸、および眼投与用医薬製剤は、例えば、被覆錠剤、錠剤、カプセルまたは座薬およびアンプル剤のような単位用量形である。これらはそれ自体既知である方法、例えば慣用の混合、造粒、被覆、溶解または凍結乾燥法を使用し製造する。したがって、経口使用用医薬製剤は、活性化合物と固体賦形剤を組合せ、所望により得られた混合物を造粒し、必須または必要なとき、適当な補助物質の添加後、該混合物または顆粒を錠剤または被覆錠剤核に加工することにより得ることができる。
【0136】
活性化合物の用量は投与経路、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような様々な因子に依存し得る。
【0137】
本発明の医薬組合せ剤の活性成分の好ましい用量は、治療有効用量、とりわけ市販で使用される用量である。
【0138】
通常は経口投与の場合、例えば体重約75kgの患者に対して、約1mgから約360mgの1日用量と概算される。
【0139】
活性化合物の用量は投与経路、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような様々な因子に依存し得る。
【0140】
医薬製剤は適当な用量単位形、例えば、カプセルまたは錠剤の形で、そしてさらなる成分と一緒になって併用で有効量の、一定量、例えば50mgまたは100mgまたは150mgのLAF237を含んで、供給し得る。
【0141】
上記の本発明の医薬組成物は、同時使用または任意の順の連続使用、別々の使用のためにまたは固定された組合せ剤として使用され得る。
【0142】
したがってさらなる態様によると、DPP−IV阻害剤は、好ましくは薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む固定された医薬組成物の形態でPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤と相互作用する薬剤と一緒に投与する。したがって、本発明のDPP−IV阻害剤は、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤と一緒に固定された組合せ剤として、任意の慣用の経口、非経口または経皮投与形で投与できる。
【0143】
例えば約70kg体重の温血動物、例えばヒトに投与される式(I)のDPP−IV阻害剤の用量、とりわけDPP−IV酵素の阻害に有効な投与量は、好ましくは例えば同じ量であり得る1から4回の単回投与に分割して、約3mgから約3g、好ましくは約10mgから約1g、例えば約20mgから200mg/ヒト/日である。通常、子供は成体の量の約半分である。各個体に必要な量は、例えば活性成分の血清濃度を測定することにより、モニタリングでき、そして最適水準に調節する。単位用量は、成体患者あたり、例えば10、40または100mgを含む。
【0144】
(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミドの用量は、好ましくは1日10から150mg、もっとも好ましくは1日25から100mgまたは25から50mgまたは1日50から150mgである。1日経口用量の好ましい例は25、30、35、45、50、55、60、80、100または150mgである。好ましい単位用量形は、25、50、100または150mgのビルダグリプチンを含む。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1回または2回行い得る。
【0145】
本明細書に記載の好ましいPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書におよび先行文献に既に記載のとおり、適当な用量単位形の形態、例えば、カプセルまたは錠剤で、そして治療有効量、例えば約2から約600mgを含んで、供給し得る。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1回または2回行い得る。好ましい同じ用量を、固定された組合せ剤のために選択する。
【0146】
N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジン−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンモノメシレートを、好ましくは約2.5から850mg/日、より好ましくは5から600mg/日およびもっとも好ましくは20から300mg/日の範囲の用量でヒトに投与する。明細書に他に記載のない限り、化合物を、好ましくは1日に1から4回投与する。イマチニブ(N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジン−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミン)またはそのモノメシレート塩を送達するために使用される好ましいガレヌス製剤(galenic formulation)は、当分野で、例えば特許出願WO 03/090720において既知である。好ましくはイマチニブを50、10、200、300または400mgの単位用量形態で投与する。
【0147】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、またはそれぞれの場合に、薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、50、100、200、300または400mgのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を50、100または150mgの(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩と組み合わせて、患者に毎日投与する、本発明の組合せ剤、使用または方法。
【0148】
対応する用量は、例えば、朝、昼または夜に摂取し得る。
【0149】
好ましくは、自由な組合せの場合において、好ましいのは認可をうけ、そして販売されている商品の用量のものである。
【0150】
とりわけ好ましくは、低用量の組合せ剤である。
【0151】
本発明のさらなる説明のために、制限する意図でなく、下記の実施例を提供する。
【実施例】
【0152】
実験の部:
上記引用の特徴は、有益な哺乳動物、例えばマウス、ラット、イヌ、サルまたはそれらの単離した臓器、組織および調製品を使用し、インビトロおよびインビボ試験で実証できる。該化合物は、インビトロで溶液の形態で、例えば、好ましくは水溶液で、およびインビボで経腸的に、非経腸的に、有利には静脈内に、例えば懸濁液または水溶液のいずれかとして適用できる。インビトロの用量は、約10−5モルから10−10モル濃度の範囲であり得る。インビボでの治療有効量は、投与経路に依存して約1から500mg/kg、好ましくは約5から100mg/kgの範囲である。
【0153】
マウスにおける血中グルコース制御に関するインビトロ試験
上記の有利な点は、下記の実験により示され得る。ICR−CDIマウス(オス、5週齢、体重:約20g)を18時間絶食させ、そして試験対象として使用する。本発明の組合せ剤(例えばLAF237+イマチニブ(Glivec(登録商標))および活性成分単独を0.5% CMC−0.14M 塩化ナトリウム緩衝溶液(pH7.4)に懸濁する。このようにして得られた溶液を固定された容量で試験対象に経口投与する。所定時間後、対照群に対する血中グルコースの減少割合を測定する。
【0154】
インビボにおけるグルコースおよびインスリンの低下活性は下記のとおりに評価できる
11週齢の成体オスC57BL ob/obマウス(Jackson Lab, Bar Harbor, ME)を逆照明サイクル部屋(6:00p.m.から6:00a.m.照明)に1ケージあたり6匹収容し、自由にPurina rodent chowおよび水を利用できる。1日目、尾の血液サンプルを8:00amに採取し、血漿グルコース濃度を測定する。動物をランダムに対照および化合物/組合せ剤群に割り当てる。群の血漿グルコース値の平均を一致させた。動物に次いで賦形剤(0.2% Tween−80を含む0.5% カルボキシメチル−セルロース)または賦形剤中の化合物/組合せ剤(30mg/kg)を経口投与する。マウスに全3日間毎日投与する。4日目、基礎血液サンプルを採取する。血漿サンプルをYSI2700 Dual Channel Biochemistry Analyzer(Yellow Springs Instrument Co., Yellow Springs, OH)を使用しグルコース濃度を、およびELISAアッセイを使用しインスリン濃度を分析する。
【0155】
β細胞の影響
オスZucker Diabetic Fatty fa/fa(ZDF)ラットは2型糖尿病のモデルである。該ラットはインスリン抵抗症であるが、誕生時は正常血糖であり、約7週から10週齢で糖尿病を発症する。該動物は糖尿病を発症する前および糖尿病の初期段階中に高インスリン血症であるが、後にグルコース刺激インスリン分泌を喪失し、そして最後にはほとんど完全にインスリン欠乏性になる。
【0156】
上記の利点は、下記の実験(制限はされない)によって示すことができる。LAF237およびイマチニブを含む組合せ剤(以下:組合せ剤“A”と称する)での治療効果は、該動物が順当に耐糖能異常から明白な2型糖尿病に進行であろう期間中に試験する。オスZDFラット(Genetic Models Inc, Indianapolis, Ind., USA)の3個の群(群あたりn=6)を賦形剤とLAF237のみ(A群)、イマチニブのみ(B群)、組合せ剤“A”(C群)のいずれかを1日2回皮下に投与し、試験する。投与を開始するとき、動物は7から8週齢である。しかし、それらはZDF動物より有意に低いグルコース濃度である非糖尿病Sprague−Dawleyラットの群と比較して高い(6.4±0.6対5.8±0.8、平均±SD、p<0.02)。試験開始時、これは、ZDF動物が相対的に耐糖能異常状態であることを証明する。
【0157】
ブロモデオキシウリジン(BrDU)を新たに合成DNAに組み込み、そしてしたがって複製細胞を標識する。殺す6時間前に、ラットに100mg BrDU/kgを腹腔内注射する。殺した後、β細胞増殖速度の測定のために、膵島を4% PFAで固定し、脱水し、パラフィンに包埋し、そして3−4mm切片をBrDUおよびインスリンに対して二重染色する。
【0158】
インスリンをマウス抗インスリン、ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgで染色し、そしてAECで赤色に染色されるまで展開する。BrDUをモノクローナルマウス抗BrDU、ビオチン化ヤギ抗マウスIg、アビジンペルオキシダーゼで染色し、そしてDABおよびCuSO4で暗褐色に染色されるまで展開する。インスリン染色された細胞質を有するBrDU染色核の細胞を1500細胞/切片以上において試験する。切片の試験は、切片の由来を観測者に知らせずに行う。
【0159】
組合せ剤“A”で処置したラットは、刺激された細胞増殖の結果としてBrDUを組み込んだβ細胞フラクションにおいて用量依存的増加を示し得る。
【0160】
膵島の相対的なβ細胞塊および非β細胞塊を測定するために、近接の切片を、インスリンおよびグルカゴン−ソマトスタチン−膵臓ポリペプチドの組合せに対して染色しなければならない。β細胞を上記のとおりにインスリンで染色する。非β細胞は、モノクローナルマウス抗グルカゴン+ウサギ抗ソマトスタチン+ウサギ抗膵臓ポリペプチドの混合物で染色し、ビオチン化ブタ抗複合Igで検出し、アビジンペルオキシダーゼ、そしてDABおよびCuSO4で暗褐色に染色されるまで展開する。β細胞および非β細胞の体積率は、点計算立体的技術により概算される。
【0161】
全膵臓のβ細胞画分が、6週間、組合せ剤“A”を与えたラットはA群またはB群で処置されたマウスと比較して有意に高いことを示すために、異なる群を一緒に比較しなければならない。組合せ剤“A”で処置後のβ細胞の量は増殖が見られなかった用量(30ng/g)で増加することを示し得る。この実験が、アポトーシスの阻害を組合せ剤“A”の投与により促進されることを支持するであろう。
【0162】
さらに、組合せ剤“A”によるβ細胞アポトーシスの特異的阻害は、β細胞の遊離脂肪酸(FFA)、グルコース、スルホニルウレア、またはサイトカイン誘導アポトーシスの阻害を測定することによりインビトロにおいて示すことができる。
【0163】
FFAにより誘導されるβ細胞アポトーシスの防止における組合せ剤“A”の効果を特徴づけるためのインビトロアッセイ:簡潔には、例えばラット、マウスおよびヒトの膵島を、0.1−10mMの長鎖FFA(2:1 オレイン酸エステル/パルミチン酸エステル;Sigma)をと共にまたはなしでかつ組合せ剤“A”と共に、例えばDiabetologia 19, 439, 1980; Transplantation, 68, 597, 1999; J. Mol. Med., 77, 93, 1999, Diabetes 48, 1230, 1999, J. Bio. Chem. 274, 18686, 1999; Proc. Natl. Acad. Sci. 95, 2498, 1999;. J. Bio. Chem, 273, 33501, 1998; Diabetologia 42, 55, 1999に記載のとおりに単離し、培養する。β細胞アポトーシスの特徴を下記のとおりに分析できる。
【0164】
グルコースまたはスルホニルウレアにより誘導されるβ細胞アポトーシスの防止における組合せ剤“A”の効果を特徴づけるためのインビトロアッセイ:簡潔には、膵島を、J. Bio. Chem, 273, 33501, 1998に記載のとおりの単離および培養でき、アポトーシスを誘導するために、J. Bio. Chem, 273, 33501, 1998に記載のとおりに0−30mMのグルコースでインキュベートする。グルコース誘導アポトーシスを防止するために、膵島を組合せ剤“A”と一緒に共インキュベートし得る。
【0165】
サイトカインにより誘導されるβ細胞アポトーシスの防止における組合せ剤“A”の効果を特徴づけるためのインビトロアッセイ:簡潔には、ヒトおよびラット膵島を例えばDiabetologia 42, 55, 1999に記載のとおりに単離および培養できる。ラットおよびヒトβ細胞のサイトカイン誘導アポトーシスをDiabetologia 42, 55, 1999に記載のとおりに行うことができる。サイトカイン誘導アポトーシスを防止するために、膵島を組合せ剤“A”と一緒に共インキュベートし得る。β細胞アポトーシスの特徴を下記およびDiabetologia 42, 55, 1999に記載のとおりに分析できる。
【0166】
アポトーシスおよびその阻害を下記の方法で検出できる:アポトーシスに関連するDNA分解由来の遊離3’OH鎖断片を末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ介在dUTP−X3’ニック末端標識(TUNEL)技術(J Cell Biol 199: 493, 1992)または下記のキット例えばIn Situ Cell Death Detection kit;Boehringer Mannheim, MannheimまたはApoTag, Oncor, Gaithersburg, Md.を使用し、検出できる。TUNEL技術を使用したアポトーシス染色のための膵臓切片または膵島培養の調製は、(Diabetologia 42: 566, 1999 and Diabetes 48: 738, 1999)に記載されている。
【0167】
別の実験プロトコールはまた、DPP4阻害剤を焦点とするUS特許番号6890905またはWO 2004037277およびWO0101130 A1に記載されている。
【0168】
本発明は、特定の好ましいバージョンを引用してかなり詳細に記載しているが、他のバージョンもそこに含まれる好ましいバージョンの精神と範囲から逸脱することなく可能である。本明細書に記載のすべての引用文献および特許(U.S.およびその他)は、それらを完全にここに明示するのと同程度に本明細書に包含させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む組合せ剤。
【請求項2】
少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を含む請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
組合せ製剤または固定された組合せ剤の形態である請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のための薬剤の製造のための、
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む組合せ剤の使用。
【請求項5】
併用で有効量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩と少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を、処置を必要とするヒトを含む温血動物に投与することを含む、DPP−IV阻害によりおよび/またはPDGFチロシンキナーゼ受容体を阻害することにより阻害され得る疾患および障害の予防法、進行の遅延法または処置法。
【請求項6】
該疾患または状態がインスリン抵抗症、グルコース代謝の障害(IGT)、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、特に1型または2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、白内障、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経前症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合組織障害、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能障害および血管コンプライアンス障害、および血管事象から選択される、または糖尿病もしくはIGTと関連する心臓血管罹患もしくは死亡である、請求項5または6に記載の方法または使用。
【請求項7】
β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するための、β細胞塊を増加するための、およびβ細胞を若返らせるための薬剤の製造のための、
i)DPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩、および
ii)少なくとも1種のPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤または薬学的に許容されるその塩
を含む組合せ剤の使用。
【請求項8】
併用で有効量のDPP−IV阻害剤または薬学的に許容されるその塩と、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤と相互作用する薬剤、または薬学的に許容されるその塩から選択される少なくとも1種の治療剤および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を、処置を必要とするヒトを含む温血動物、好ましくは糖尿病を有する対象に投与することを含む、β細胞変性、β細胞機能喪失、β細胞機能障害、および/またはβ細胞の壊死またはアポトーシスのようなβ細胞の死を調節、阻害または減少または予防するための、β細胞塊を増加するための、およびβ細胞を若返らせるための方法。
【請求項9】
処置される患者が糖尿病を有する対象である、請求項7に記載の使用または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
処置される患者が1型糖尿病または2型糖尿病を有する対象である、請求項7に記載の使用または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
該DPP−IV阻害剤が(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジン、ビルダグリプチン、MK−0431(Sitagliptin)、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項12】
該DPP−IV阻害剤が、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンまたは(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは、各々の場合の薬学的に許容されるその塩である、請求項1から11のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項13】
該PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、好ましくは4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、CT52923、(4−(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)−N−(3,4−メチレンジオキシベンジル)−1−ピペラジンチオカルボキサミド)、RP−1776、GFB−111、ピロロ[3,4−c]−ベータ−カルボリン−ジオン、SU102、AG1296、AG1296およびRPR101511A、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から12のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項14】
該PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、好ましくは4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から13のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項15】
DPP−IV阻害剤が、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩であり、そして該PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド(イマチニブ)、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から14のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項16】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される50から600mgのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、および25から150mgの(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩を毎日患者に投与する、請求項1から15のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項17】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される50から600mgのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、および25から150mgの(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩を毎日患者に投与する、請求項1から16のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項18】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される50、100、200、300または400mgのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤および50、100または150mgの(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩を毎日患者に投与する、請求項1から17のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項19】
4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミド、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−メタンスルホン酸ベンズアミド、4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド、または各々の場合の薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される50、100、200、300または400mgのPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を50、100または150mgの(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたは薬学的に許容されるその塩と組み合わせて患者に投与する、請求項1から18のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項20】
組合せ製剤または固定された組合せ剤の形態の請求項15、17、18または19のいずれかに記載の組合せ剤。

【公表番号】特表2008−515905(P2008−515905A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535797(P2007−535797)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035917
【国際公開番号】WO2006/041976
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】