説明

有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイス

【課題】 液相からの半導体層の形成が可能であるように溶媒への溶解性を有し、かつ、高いキャリア移動度とオンオフ比とを示すポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイスを提供する。
る。
【解決手段】 本発明の有機半導体材料は、一般式(1)
【化1】


で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーからなるものであり、溶媒への溶解性を有し、かつ、比較的高いキャリア移動度とオンオフ比とを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FET特性を有する有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイスに関するものであり、特に主鎖にチオフェンとケイ素原子とを含む繰り返し単位からなるポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電界効果トランジスタ(FET:field-effect transistor)は、半導体層としてシリコン(Si)などの無機半導体材料を用いたものが広く用いられているが、近年有機半導体材料を用いる電界効果トランジスタが盛んに研究されている。
【0003】
電界効果トランジスタの半導体層として有機半導体材料を用いることの利点は、無機半導体材料を用いる場合と比較して、低温でのプロセスが可能であることから、基板としてプラスチック基板を用いることができ、軽量で柔軟性を有するデバイスの提供が可能になることである。また、液相での半導体膜の形成が可能な有機半導体材料を用いれば、半導体層の形成のために、蒸着やCVD等、真空下での複雑なプロセスを必要としないので、電界効果トランジスタの製造コストを抑えることができる。さらに、塗布や印刷法を用いる工程は大面積デバイスの製造に適している。
【0004】
かかる有機半導体材料としては、例えばポリ(3−アルキルチオフェン)が、比較的高いキャリア移動度(μ)を有し、かつ溶媒に対し溶解性を有するものとして報告されている(例えば、非特許文献1参照。)
一方、本発明者らは、チオフェンと、ケイ素原子とを主鎖に含むケイ素系高分子の合成法を開発して、光導電性、EL素子中でのホール輸送性について報告している。(例えば、非特許文献2、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2000−143812公報(平成12年(2000)5月26日公開)
【特許文献2】特開2000−351836公報(平成12年(2000)12月19日公開)
【非特許文献1】Bao,Z., Dodabalapur,A., Lovinger,A.J., Appl.Phys.Lett.69(26),1996:4108-4110
【非特許文献2】Ohshita,J., Yoshimoto,K., Hashimoto,M., Hamamoto,D., Kunai,A., Harima,Y., Kunugi,Y., Yamashita,K., Kakimoto,M., Ishikawa,M., J.Organomet.Chem.665(2003)29-32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チオフェンとケイ素原子とを主鎖に含むケイ素系高分子についてのこれまでの検討は、光伝導性に限られ、電界効果トランジスタへの応用の検討はなされていない。主鎖にチオフェンとケイ素原子とを含むケイ素系高分子は、主鎖にケイ素原子を含むことにより、合成が容易になり、また溶媒に対する溶解性が向上する。さらにケイ素原子がπ電子系と相互作用することにより、ホール輸送性を向上させることが予想される。したがってケイ素系高分子を、電界効果トランジスタのような電子デバイスに応用することができれば、非常に有用な有機半導体材料となる。
【0006】
また、有機半導体材料は無機半導体材料にはない上述したような利点を有している。しかし、上述したような有機半導体材料の利点が十分に生かされるためには、液相からの半導体層(半導体膜)の形成が可能であるように溶媒への溶解性を有し、かつ、高いキャリア移動度とオンオフ比とを示す有機半導体材料が望まれる。しかし、比較的高いキャリア移動度とオンオフ比を示す有機半導体材料は、真空蒸着を必要とするものが多く、比較的よいFET特性を示し、且つ、液相からの半導体層の形成が可能な有機半導体材料は限られている。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、主鎖にチオフェンとケイ素原子とを含むポリマーまたはオリゴマーであって、液相での半導体層の形成が可能であるように溶媒への溶解性を有し、かつ、比較的高いキャリア移動度とオンオフ比とを示すポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上のような課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、主鎖にチオフェンとケイ素原子とを有する特定のポリマーまたはオリゴマーがFET特性を示すとともに、ケイ素原子やチオフェンの置換基を工夫することによって、溶媒に対する溶解性もよく、有機半導体材料として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る有機半導体材料は、上記課題を解決するために、一般式(1)または(2)
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
((1)および(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示し、nは2以上の整数を示し、Xは5以上の整数を示す。)で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーからなることを特徴としている。また、本発明にかかる有機半導体材料は、上記ポリマーまたはオリゴマーのキャリア移動度(μ)が、1×10-6cm/Vs以上であり、且つ、オンオフ比が10以上であることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、上記有機半導体材料は電界効果トランジスタに応用することが可能であり、有機半導体材料の利点を生かした電界効果トランジスタを提供することができる。
【0014】
本発明に係る電界効果トランジスタ用の有機半導体材料では、上記Xが10〜14であることが好ましい。
【0015】
上記Xが10〜14であることにより、上記有機半導体材料はさらに高いFET特性を示すという効果を奏する。また、チオフェンユニットをX=14よりさらに長くすることによるFET特性向上の効果は小さくなるため、チオフェンユニットをさらに長くする必要がなくなり、モノマーの合成を簡単且つ迅速に行なうことができる。
【0016】
本発明に係る電界効果トランジスタ用の有機半導体材料では、上記一般式(1)および(2)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数1〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルキニル基、または炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、上記有機半導体は有機溶媒に対する溶解性を有するため、電界効果トランジスタへの応用にあたり、例えばスピンコート、溶液キャスティング等の液相での工程が可能となる。
【0018】
本発明に係る電界効果トランジスタ用の有機半導体材料では、上記有機半導体は、上記一般式(1)および(2)中、nが2〜1000であることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記有機半導体はFET特性を示すという効果を奏する。
【0020】
本発明にかかる電子デバイスは、半導体層と2以上の電極とを有する電子デバイスにおいて、該半導体層が、上記の有機半導体材料を含むことを特徴としている。また、上記電子デバイスは、スイッチング素子であることが好ましく、電界効果トランジスタであることがより好ましい。
【0021】
また、本発明にかかる電界効果トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、該ソース電極とドレイン電極との間に配置されるチャネルと、該チャネルに直接または間接に接するゲート電極とから構成され、該ゲート電極に印加する電圧を変化させることによってソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御する電界効果トランジスタにおいて、該チャネルを構成する半導体層が上記の有機半導体材料を含むことを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、本発明にかかる電子デバイス、好ましくはスイッチング素子、さらに好ましくは電界効果トランジスタは、柔軟性、プラスチックとの適合性、製造コストの抑制等有機半導体材料を用いることによる利点を有することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる有機半導体材料は、以上のように、一般式(1)または(2)で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーである構成を備えているので、FET特性を有し、電解効果トランジスタのような電子デバイスに用いることができる。
【0024】
また、本発明にかかる電子デバイスは、半導体層と2以上の電極とを有する電子デバイスにおいて、該半導体層が、上記の有機半導体材料を含む構成を備えているので、軽量で柔軟性を有し、衝撃にも強い電子デバイスの提供、液相での半導体層の形成による製造コストの抑制・大面積デバイスへの適用等有機半導体材料の利点を生かしたデバイスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図1ないし図2に基づいて説明すると以下の通りである。
【0026】
(I)本発明にかかる有機半導体材料
本発明にかかる有機半導体材料は、一般式(1)または(2)
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーであれば特に限定されるものではない。
【0030】
一般式(1)および(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示す。すなわち、チエニレン基の3位と4位とは無置換であってもよいし、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基で置換されていてもよい。また、チエニレン基がX個結合したチエニレン鎖において、個々のチエニレン基のRおよびRは、チエニレン基毎に異なっていてもよい。また、置換されている水素原子の割合は特に限定されるものではない。例えば、チエニレン基の3位と4位の水素原子は、チエニレン基0.5個〜10個につき1個の水素原子の割合で置換されていることが好ましく、チエニレン基2〜6個につき1個の割合で置換されていることがより好ましい。また、オリゴチエニレン鎖の中で、水素原子が置換されている位置についても特に限定されるものではないが、均等な間隔で置換されていることが好ましい。
【0031】
ここで、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、炭素数が1〜8の直鎖状または枝分かれ状であることが好ましい。また、上記アルコキシル基は、炭素数が1〜8の直鎖状または枝分かれ状であることが好ましく、上記アリール基は炭素数が6〜10であることが好ましい。これにより、溶媒に対する溶解性を向上することができるとともに、ホール輸送性を向上することができる。
【0032】
なお、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができるが、炭素数1〜8のアルキル基はもちろんこれらに限定されるものではない。また、炭素数1〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等を挙げることができるが、炭素数1〜8のアルケニル基はもちろんこれらに限定されるものではない。また、炭素数1〜8のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基等を挙げることができるが、炭素数1〜8のアルキニル基はもちろんこれらに限定されるものではない。また、炭素数1〜8のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等を挙げることができるが、炭素数1〜8のアルコキシ基はもちろんこれらに限定されるものではない。また、炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができるが炭素数6〜10のアリール基はもちろんこれに限定されるものではない。
【0033】
また、一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示す。R及びRがともに水素原子であっても、上記ポリマーまたはオリゴマーはFET特性を示すが、R及びRの少なくとも1つの水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基であることが好ましい。これにより、一般式(1)で表されるポリマーまたはオリゴマーの溶媒に対する溶解性を向上させることができる。ここで、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基は直鎖状であっても、枝分かれ状であってもよく、炭素数が1〜8であることが好ましく、2−8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。炭素数が8以下であることにより、置換基が大きいために一般式(1)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、炭素数は少なすぎると一般式(1)で表されるポリマーまたはオリゴマーの溶媒への溶解性が悪くなるので、2以上であることが好ましいが、周りの置換基の影響を受け、例えばR及びRがともに置換されている場合の他方の炭素数が4以上である場合や、置換されているR、Rの炭素数が大きい場合には、炭素数は1であっても溶媒への溶解性を示す。上記アリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましい。炭素数が10以下であることにより、置換基が大きいために一般式(1)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、R及びRは、直鎖状アルキル基または直鎖状アルコキシル基であることがより好ましく、その炭素数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。
【0034】
また、一般式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示す。R、R、R及びRがすべて水素原子であっても、上記ポリマーまたはオリゴマーはFET特性を示すが、各ケイ素原子につき少なくとも1つのケイ素原子結合基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基であることが好ましい。これにより、一般式(2)で表されるポリマーまたはオリゴマーの溶媒に対する溶解性を向上させることができる。ここで、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基は直鎖状であっても、枝分かれ状であってもよく、炭素数が1〜8であることが好ましく、2−8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。炭素数が8以下であることにより、置換基が大きいために一般式(2)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、炭素数は少なすぎると一般式(2)で表されるポリマーまたはオリゴマーの溶媒への溶解性が悪くなるので、2以上であることが好ましいが、周りの置換基の影響を受け、例えばR、R、R及びRのうちの複数が置換されている場合の他の炭素数が4以上である場合や、置換されているR、Rの炭素数が大きい場合には、炭素数は1であっても溶媒への溶解性を示す。上記アリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましい。炭素数が10以下であることにより、置換基が大きいために一般式(2)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、R、R、R及びRは、直鎖状アルキル基または直鎖状アルコキシル基であることがより好ましく、その炭素数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)および(2)中、Xの値は5〜20であることが好ましい。上記ポリマーまたはオリゴマーはこの範囲で良好なFET特性を示す。中でもXは10〜14であることがより好ましく、12〜14であることがさらに好ましい。上記Xが10〜14であることにより、上記有機半導体材料はより高いFET特性を示し、上記Xが12〜14であることにより、上記有機半導体材料はさらに高いFET特性を示すという効果を奏する。また、チオフェン鎖をX=14よりさらに長くすることによるFET特性向上の効果は小さくなるため、チオフェン鎖をさらに長くする必要がなくなり、モノマーの合成を簡単且つ迅速に行なうことができる。
【0036】
以上のように一般式(1)または(2)で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーは、FET特性を有するものである。ここで「FET特性を有する」とは、有意のオンオフ比が測定できることをいう。FET特性は、主に、半導体層のキャリア移動度(μ)と、オンオフ比により決まり、キャリア移動度やオンオフ比が大きいほど、FET特性はよいといえる。上記ポリマーまたはオリゴマーは、キャリア移動度が1×10−6cm/Vs以上であることが好ましく、1×10−5cm/Vs以上であることがより好ましい。また、オンオフ比が10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。かかるポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料を用いることにより、有機半導体材料の持つ種々の利点を備えた電子デバイスを提供することが可能となる。
【0037】
また、一般式(1)または(2)で表される構造を有する物質は、比較的分子量の小さいオリゴマーであっても、分子量の大きいポリマーであってもよく、好ましい分子量の範囲は1000〜100000である。従って一般式(1)および(2)中、nの値は、上記分子量に対応する値であればよい。このようにnの値は比較的広い範囲のものであってもよく2〜1000であることが好ましいが、2〜100であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。
【0038】
(II)有機半導体材料の製造方法
上記ポリマーまたはオリゴマーからなる本発明にかかる有機半導体の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により合成することができる。例えば一般式(1)で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーの製造方法としては、具体的な一例として、下記の反応式(3)に示すように、ビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物と、両端トリアルキルスタニルチオフェンまたは両端トリアルキルスタニルオリゴチオフェンとを、触媒の存在下で反応させることにより合成する方法を挙げることができる。
【0039】
【化5】

【0040】
上記反応式(3)中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示す。すなわち、チエニレン基の3位と4位とは無置換であってもよいし、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基で置換されていてもよい。また、置換されている水素原子の割合は特に限定されるものではない。例えば、チエニレン基の3位と4位の水素原子は、チエニレン基0.5個〜10個につき1個の水素原子の割合で置換されていることが好ましく、チエニレン基2〜6個につき1個の割合で置換されていることがより好ましい。また、オリゴチエニレン鎖の中で、水素原子が置換されている位置についても特に限定されるものではないが、均等な間隔で置換されていることが好ましい。
【0041】
ここで、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、炭素数が1〜8の直鎖状または枝分かれ状であることが好ましい。また、上記アルコキシル基は、炭素数が1〜8の直鎖状または枝分かれ状であることが好ましく、上記アリール基は炭素数が6〜10の直鎖状または枝分かれ状であることが好ましい。
【0042】
また、反応式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示す。R及びRがともに水素原子であっても、上記ポリマーまたはオリゴマーはFET特性を示すが、R及びRの少なくとも1つが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基で置換されていることが好ましい。これにより、溶媒に対する溶解性を向上させることができる。ここで、上記アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルキニル基は直鎖状であっても、枝分かれ状であってもよく、炭素数が1〜8であることが好ましく、2−8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。炭素数が8以下であることにより、置換基が大きいために一般式(3)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、炭素数は少なすぎると一般式(3)で表されるポリマーまたはオリゴマーの溶媒への溶解性が悪くなるので、2以上であることが好ましいが、周りの置換基の影響を受け、例えばR及びRがともに置換されている場合の他方の炭素数が4以上である場合や、置換されているR、R2、、R、R及び/又はRの炭素数が大きい場合には、炭素数は1であっても溶媒への溶解性を示す。上記アリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましい。炭素数が10以下であることにより、置換基が大きいために一般式(3)で表されるポリマーまたはオリゴマーのFET特性が低下することを防ぐことができる。また、R及びRは、直鎖状アルキル基または直鎖状アルコキシル基であることがより好ましく、その炭素数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。反応式(3)中、aは3〜18であることが好ましく、8〜12であることがより好ましい。
【0043】
また反応式(3)中、Xはハロゲン原子を示し、例えば塩素、フッ素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。この中でもXは臭素またはヨウ素であることがより好ましい。また反応式(3)中、Bは比較的活性なトリアルキルスタニル基を示す。この中でも、該トリアルキルスタニル基はアルキル基の炭素数が1〜18であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、試薬の入手のしやすさから、トリ(n−ブチル)スタニル基、またはトリメチルスタニル基であることが特に好ましい。
【0044】
上記両端トリアルキルスタニルチオフェンまたは両端トリアルキルスタニルオリゴチオフェンは、例えば、それぞれ両端ハロゲン化チオフェンまたは両端ハロゲン化オリゴチオフェンを2当量のアルキルリチウム試薬と反応させて両端リチオ化物とした後、2当量のトリアルキルクロロスタナンと反応させることによって得ることができる。
【0045】
上記ポリマーまたはオリゴマーは、ビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物と、両端トリアルキルスタニルチオフェンまたは両端トリアルキルスタニルオリゴチオフェンとを、触媒の存在下で反応させることにより合成することができる。ここで、両端トリアルキルスタニル(オリゴチオフェン)は、反応性が比較的高いため、ビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物との反応直前に系中で発生させることが望ましいが、別に調製して、精製後に系に加えてもよい。
【0046】
例えば、両端トリアルキルスタニル(オリゴチオフェン)を、ビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物との反応直前に系中で発生させる場合には、両端トリアルキルスタニル(オリゴチオフェン)を、脱気乾燥した反応容器中、不活性ガス雰囲気下、上記方法によって得る。得られた両端トリアルキルスタニル(オリゴチオフェン)は、精製せずに、1当量のビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物と、触媒の存在下で、加熱攪拌することによって反応させる。反応温度は、20℃〜150℃であることが好ましく、一般的には使用する溶媒の還流温度を使用することができる。また、反応時間は、例えば0.1〜200時間程度である。
【0047】
反応終了後、反応混合液に蒸留水を加えて加水分解した後に溶媒に不溶の成分を除き、水層と油層とを分液ロートで分離し、水層は例えばクロロホルムなどの溶液で抽出し、油層に加える。得られたクロロホルム溶液を乾燥、濃縮した後、生成ポリマーを分別沈殿することによって、上記ポリマーまたはオリゴマーを得ることができる。
【0048】
上記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等を用いることができる。これらの中でも、ジエチルエーテル、THFをより好適に用いることができる。また、溶媒は、上記溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、溶媒の量は両端トリアルキルスタニル(オリゴ)チオフェンとビス(ハロゲン化チエニル)シラン化合物との合計100重量部当り、100〜100000重量部であればよい。
【0049】
また、上記触媒としては、例えばパラジウム触媒を好適に用いることができる。なかでも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを特に好適に用いることができる。なお、触媒としてはもちろんパラジウム触媒に限られるものではなく、他の触媒であっても好適に用いることができる。
【0050】
(III)電子デバイス
本発明にかかる電子デバイスは、半導体層と2以上の電極とを有する電子デバイスにおいて、該半導体層が、本発明の有機半導体材料を含むものである。かかる電子デバイスとしては、例えば、抵抗器、ダイオード、トランジスタ等の増幅素子、トランジスタやインバータ、CMOS等のスイッチング素子、センサ等、またはこれらの素子を組み合わせたデバイスや集積したデバイスを挙げることができる。本発明にかかる、有機半導体材料はキャリア移動度、オンオフ比がともに高いため、これらの中でも、スイッチング素子に好適に用いることができ、電界効果トランジスタにより好適に用いることができる。
【0051】
以下、本発明にかかる電界効果トランジスタについて説明する。電界効果トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、該ソース電極とドレイン電極との間に配置されるチャネルと、該チャネルに直接または間接に接するゲート電極とから構成され、該ゲート電極に印加する電圧を変化させることによってソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御するものである。本発明にかかる電界効果トランジスタは、上記チャネルを構成する半導体層が本発明にかかる有機半導体材料を含むものである。
【0052】
上記の構成によれば、本発明にかかる電界効果トランジスタは、柔軟性、プラスチックとの適合性、製造コストの抑制、大画面デバイスとの適合性等有機半導体材料を用いることによる利点を有することが可能となる。
【0053】
本発明にかかる電界効果トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、該ソース電極とドレイン電極との間に配置されるチャネルと、該チャネルに直接または間接に接するゲート電極とから構成されるものであればよい。その具体的な構造としては、例えば図1(a)または(b)に示すような構造を挙げることができるが、本発明にかかる電界効果トランジスタはかかる構造を有するものに限られるものではなく、図1に示す構造以外の構造を有するものであってもよい。図中1が半導体層、2が絶縁体層、3および4がそれぞれソース電極およびドレイン電極、5がゲート電極、6が基板を示す。なお、各層や電極の配置は、電子デバイスの用途により適宜選択することができる。
【0054】
上記ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料としては、導電性を有するものであればよく、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム等の金属;これらの金属を含む合金;SnO、InO、酸化インジウム・スズ(ITO)等の導電性の酸化物;シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素等の半導体;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物;カーボンブラック、フラーレン、グラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。また、導電性高分子化合物や半導体にはドーピングが行なわれていてもよい。ドーパントとしては、例えば、PF、AsF、FeCl等のルイス酸;塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸;ヨウ素、臭素等のハロゲン原子;ナトリウム、カリウム等の金属原子等を挙げることができる。
【0055】
上記電極は、蒸着、スパッタ法、ゾルゲル法、塗布法、印刷法等により作製することができる。また、パターニングの方法としては、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、凸版印刷等の印刷法、これらを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0056】
また、上記電極の厚みは、作製する電解効果トランジスタの種類、構造等に応じて適宜選択すればよく特に限定されるものではない。例えば、図1のような構造の電解効果トランジスタを作製する場合、一般に、電極の厚みは、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.02μm以上、0.1μm以下であることがより好ましい。0.01μm以上であることにより、電極として機能することができ、また0.1μm以下であることにより、平滑性が維持できる。ただし、好ましい電極の厚みは種々の要素に影響されるため、これに限定されるものではない。
【0057】
また、上記絶縁体層の材料としては、絶縁性を有する種々の材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー;これらを組合わせた共重合体;二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化タンタル等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の強誘電性酸化物;またはこれらの誘電の粒子を分散させたポリマー等を挙げることができる。
【0058】
上記絶縁体層の形成方法は、用いる材料に応じて適宜選択すればよく、例えば、蒸着、スパッタ法、CVD、塗布法、印刷法等を挙げることができる。
【0059】
上記絶縁体層の膜厚は、ピンホールのないものであれば特に限定されるものではなく、作成プロセス、材料の種類、デバイスの構造等に応じて適宜選択すればよい。通常は10nmくらいから可能であり、0.1〜1μmのものを利用することが多いが、上記絶縁体
の膜厚はもちろんこれに限定されるものではない。
【0060】
半導体層の膜厚は、デバイスの構造、大きさに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。通常は10nmくらいからピンホールのないものが作れる。薄いと半導体の消費量を少なくすることができる。通常は、200〜1000nmにすることが多いが、半導体層の厚さはもちろんこれに限定されるものではない。
【0061】
また、ソース電極とドレイン電極との距離であるチャネル長は、作成するデバイスの大きさや目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0062】
また、上記半導体層は、例えば、蒸着、スパッタ法、CVD、塗布法、印刷法等により形成することができる。この中でも、半導体層は、本発明にかかる有機半導体材料を溶媒に溶解し、溶液を塗布または印刷することにより形成することが好ましい。これにより、蒸着やCVD等、真空下での複雑なプロセスを必要としないので、電界効果トランジスタの製造コストを抑えることができる。さらに、塗布や印刷法を用いる工程は大面積デバイスの製造に適している。また、上記塗布法としては、例えばスピンコート、溶液キャスティング、ディップコート等を用いることができる。また、上記印刷法としては、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷等を用いることができる。ここで有機半導体材料を溶解する溶媒としては、例えば、クロロホルム、THF、トルエン、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジオキサン等を好適に用いることができる。
【0063】
さらに、半導体層は、必要に応じて、例えば、PF、AsF、FeCl等のルイス酸;塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸;ヨウ素、臭素等のハロゲン原子;ナトリウム、カリウム等の金属原子等をドープすることにより、導電性を調整してもよい。ドープの方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。ドープは半導体層を形成した後に行ってもよいし、半導体層を形成と同時に行ってもよい。ドープの方法としては、例えば、気相ドーピング、液相ドーピング、固相ドーピング等を挙げることができるがこれらに限られるものではない。また、半導体層の形成と同時にドーピングを行う場合には、例えば、半導体材料とドーパントとを共蒸着する方法、半導体材料とドーパントとが溶解した溶液を塗布または印刷する方法等を用いることができる。
【0064】
上記基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、紙、プラスチック板、プラスチックフィルム、金属や合金等の導電性基板に絶縁層を形成したもの等、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。本発明にかかる電界効果トランジスタにおいては、有機半導体材料を用いるため、基板として高温に耐える材料を用いる必要はなく、プラスチック板、プラスチックフィルム等のプラスチック材料を好適に用いることができる。したがって、軽量で柔軟性を有する電子デバイスの提供が可能となる。かかるプラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド等を挙げることができる。
【0065】
また、本発明にかかる電界効果トランジスタは、上述した層以外の他の層を有していてもよい。かかる他の層としては、例えば、外気の影響を防ぐための保護層を挙げることができる。
【0066】
本発明にかかる電界効果トランジスタの製造方法は、特に限定されるものではなく、その構造に応じて上述したような材料を用いて上述した方法で各層を形成すればよい。また、本発明にかかる電界効果トランジスタの製造方法は、必要に応じて半導体層をドープする工程や、その他の層を形成する工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
〔実施例1:有機半導体材料T10の合成〕
<モノマー(4)の合成>
モノマー(4)
【0069】
【化6】

【0070】
を以下の方法で合成した。
【0071】
窒素置換した100mLの2口フラスコに1.58g(2.5mmol)のジブチルビス(5’-ブロモ-2,2’-ビチオフェン-5-イル)シランと50mLのジエチルエーテルを入れ、−78℃に冷却した。ここに、3.71mL(5mmol)のブチルリチウム/ヘキサン溶液を1時間かけて滴下した。撹拌しながらゆっくりと室温に戻したのち、再び−78℃に冷却し、2mL(5.125mmol)の塩化トリブチルスズの10mLのジエチルエーテル溶液を30分かけて滴下した。得られた混合物を12時間撹拌したのち、加水分解し、有機層を分離、水洗した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残査をシリガゲルカラムで精製すると2.5g(収量95%)のモノマー(4)が褐色液体として得られた。
【0072】
得られたモノマー(4)の質量スペクトル、NMRのデータを以下に示す。
TOF-MS m/z 1048.31 (M)。
H NMR (δ in CDCl) 0.88-0.94 (m, 24H, CH), 1.09-1.13 (m, 16H, CH), 1.27-1.39 (m, 16H, CH), 1.53-1.66 (m, 16H, CH), 7.05 (d, 2H, J = 2.7 Hz, thiophene ring protons), 7.20 (d, 2H, J = 3.4 Hz, thiophene ring protons), 7.25 (d, 2H, J = 3.4 Hz, thiophene ring protons), 7.31 (d, 2H, J = 2.7 Hz, thiophene ring protons)。
29Si NMR (δ in CDCl) -13.2。
【0073】
<モノマー(5)の合成>
モノマー(5)
【0074】
【化7】

【0075】
を、文献と類似の反応によって合成した(Naoto Sumi, Hidetaka Nakanishi, Shinpei Ueno, Kazuo Takimiya, Yoshio Aso, and Tetsuo Otsubo, Bull. Chem. Soc. Jpn., 74, 979-988 (2001))。
【0076】
2-ブロモ-3-ブチルチオフェンと等モル量のマグネシウムからTHF中で調製したグリニヤール試剤を半等量の5,5’-ジブロモ-2,2’-ビチオフェンと2モル%のジクロロ(ジフェニルフォスフィノプロパン)ニッケルの存在下で環流加熱下反応させた。得られた反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するジブチルクオータチオフェンが得られた。ジブチルクオータチオフェンに2等量のN-ブロモスクシンイミドとクロロホルム中で反応させた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するジブロモジブチルクオータチオフェンが得られた。得られたジブロモジブチルクオータチオフェンと2等量の2-チエニルマグネシウムブロミドと2モル%のジクロロ(ジフェニルフォスフィノプロパン)ニッケルの存在下で環流加熱下反応させた。得られた反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するジブチルセクシチオフェンが得られた。得られたジブチルセクシチオフェンを2等量のN-ブロモスクシンイミドとクロロホルム中で反応させた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、目的のモノマー(5)が得られた。
【0077】
得られたモノマー(5)は橙色固体で、融点は142−144℃であった。質量スペクトル、NMR、元素分析のデータを以下に示す。
TOF-MS m/z 764.92 (M)。
H NMR (δ in CDCl); 0.95 (t, 6H, J = 7.6 Hz, CH), 1.42 (sext, 4H, J = 7.6 Hz, CH), 1.65 (qnt, 4H, J = 7.6 Hz, CH), 2.76 (m, 4H, CH), 6.89 (d, 2H, J = 4.5 Hz, thiophene ring protons), 6.94 (s, 2H, thiophene ring protons), 6.96 (d, 2H, J = 4.5 Hz, thiophene ring protons), 7.03 (d, 2H, J = 4.5 Hz, thiophene ring protons), 7.19 (d, 2H, J = 2.7 Hz, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl); 13.95, 22.64, 22.18, 32.61, (butyl carbons), 111.00, 123.68, 124.02, 126.56, 126.88, 129.76, 130.69, 133.00 134.80, 136.86, 138.62, 140.57 (thiophene ring carbons)。
元素分析:計算値(C32H28BrS): C, 50.26; H, 3.69。測定値: C, 50.45; H, 3.72。
【0078】
<T10の合成>
T10(6)
【0079】
【化8】

【0080】
を以下の方法で合成した。
【0081】
窒素置換した25mLの2口フラスコに0.49g(0.64mmol) のモノマー(4)、6.00mg(0.032mmol) の CuI、37mg(0.032mmol) のPd(PPh、THF5mLを入れ、0℃に冷却して、0.673g(0.64mmol) のモノマー(5)を滴下した。この混合物を3日間 80℃で撹拌したのち、溶媒を留去、得られた残査をクロロフォルム-エタノールから再沈澱すると、0.22g(32% yield)のT10が深赤色固体として得られた。融点は60−64℃であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の結果求められた平均分子量は、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw=3800、分散Mw/Mn=1.18であった。これより求められた重合度は3.5であった。
【0082】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.89-0.98 (m, 12H, CH), 1.40-1.45 (m, 8H, CH), 1.61-1.69 (m, 8H, CH), 2.74-2.77 (m, 8H, CH), 6.89 (d, 2H, thiophene ring protons, J = 3.6 Hz), 6.93 (s, 2H, thiophene ring protons), 6.96 (d, 2H, J = 3.6 Hz, thiophene ring protons), 7.00-7.23 (m, 12H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.69, 13.93, 14.35, 22.67, 25.83, 26.49, 29.17, 32.61(butyl carbons), 123.66, 123.97, 124.01, 124.31, 124.59, 124.73, 125.00, 126.41, 126.56, 126.69, 126.88, 127.82, 130.69, 134.78, 135.97, 136.12, 136.82, 136.89, 140.52, (thiophene ring carbons)。1つの炭素のシグナルは重なっていると思われる。
【0083】
〔実施例2:有機半導体材料T12の合成〕
<モノマー(7)の合成>
モノマー(7)
【0084】
【化9】

【0085】
を、文献と類似の反応によって合成した(Naoto Sumi, Hidetaka Nakanishi, Shinpei Ueno, Kazuo Takimiya, Yoshio Aso, and Tetsuo Otsubo, Bull. Chem. Soc. Jpn., 74, 979-988 (2001))。
【0086】
2-ブロモ-3-ブチルチオフェンと等モル量のマグネシウムからTHF中で調製したグリニヤール試剤を半等量の5,5”-ジブロモ-2,2”-ビチオフェンと2モル%のジクロロ(ジフェニルフォスフィノプロパン)ニッケルの存在下で環流加熱下反応させた。得られた反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するジブチルクオータチオフェンが得られた。ジブチルクオータチオフェンに1等量のブチルリチウムをTHF中で反応させモノリチオ化した。ここに、少過剰の塩化銅を-10℃で加えた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するテトラブチルオクタチオフェンが得られた。得られたテトラブチルオクタチオフェンを2等量のN-ブロモスクシンイミドとクロロホルム中で反応させた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、目的のモノマー(7)が得られた。
【0087】
得られたモノマー(7)は深赤色固体であった。質量スペクトル、NMR、元素分析のデータを以下に示す。
TOF-MS m/z 1041.77 (M)。
H NMR (δ in CDCl) 0.89-1.00 (m, 12H, CH), 1.34-1.46 (m, 8H, CH), 1.58-1.66 (m, 8H, CH), 2.61-2.78 (m, 8H, CH), 6.89 (s, 2H, thiophene ring protons), 6.96 (d, 2H, J = 3.7 Hz, thiophene ring protons), 7.00-7.07 (m, 6H, thiophene ring protons ), 7.12 (d, 2H, J = 3.7 Hz, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.91, 22.50, 22.65, 28.92, 29.22, 32.66 (butyl carbons), 110.72, 116.29, 123.92, 124.13, 126.35, 126.64, 126.98, 131.74, 132.69, 134.94, 137.32, 140.45 (thiophene ring carbons)。2のブチル基炭素原子及び4のリング炭素原子のシグナルは重なっていると思われる。
元素分析:計算値(C48H48BrS): C, 55.37; H, 4.65。測定値: C, 55.51; H, 4.61。
【0088】
<T12の合成>
T12(8)
【0089】
【化10】

【0090】
を、モノマー(5)の代わりにモノマー(7)を用いる以外は実施例1の<T10の合成>と同様にして合成した。T12が深赤色固体として得られた(収量40%)。融点は78−82℃であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の結果求められた平均分子量は、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw=8600、分散Mw/Mn=1.29であった。これより求められた重合度は5.5であった。
【0091】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.91-0.98 (m, 18H, CH), 1.41-1.46 (m, 12H, CH), 1.61-1.68 (m, 12H, CH), 2.75-2.77 (m, 12H, CH); 7.00-7.22 (m, 24H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.70, 13.90, 14.05, 22.67, 25.87, 26.54, 29.23, 32.62(butyl carbons), 123.75, 123.98, 124.30, 124.35, 124.38, 124.50, 124.72, 124.96, 125.00, 126.36, 126.66, 128.60, 128.76, 126.47, 132.21, 132.35, 132.44, 134.87, 135.05, 136.93, 140.54 (thiophene ring carbons)。3の炭素原子のシグナルは重なっていると思われる。
【0092】
〔実施例3:有機半導体材料T14の合成〕
<モノマー(9)の合成>
モノマー(9)
【0093】
【化11】

【0094】
を、文献と類似の反応によって合成した(Naoto Sumi, Hidetaka Nakanishi, Shinpei Ueno, Kazuo Takimiya, Yoshio Aso, and Tetsuo Otsubo, Bull. Chem. Soc. Jpn., 74, 979-988 (2001))。
【0095】
2-ブロモ-3-ブチルチオフェンと等モル量のマグネシウムからTHF中で調製したグリニヤール試剤を半等量のジブロモターチオフェンと2モル%のジクロロ(ジフェニルフォスフィノプロパン)ニッケルの存在下で環流加熱下反応させた。得られた反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するジブチルキンキチオフェンが得られた。ジブチルキンキチオフェンに1等量のブチルリチウムをTHF中で反応させモノリチオ化した。ここに、少過剰の塩化銅を-10℃で加えた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、相当するテトラブチルデカチオフェンが得られた。得られたテトラブチルデカチオフェンを2等量のN-ブロモスクシンイミドとクロロホルム中で反応させた。反応混合物を加水分解し、有機層を乾燥濃縮した後、シリカゲルカラム処理して精製したところ、目的のモノマー(9)が得られた。
【0096】
得られたモノマー(9)は深赤色固体で、融点は145−147℃であった。質量スペクトル、NMR、元素分析のデータを以下に示す。
TOF-MS m/z 1206.72 (M)。
H NMR (δ in CDCl) 0.90-0.97 (m, 12H, CH), 1.35-1.44 (m, 8H, CH), 1.54-1.66 (m, 8H, CH), 2.68-2.75 (m, 8H, CH), 6.88 (s, 2H, thiophene ring protons), 6.94 (d, 2H, J = 3.6 Hz, thiophene ring protons), 6.98-7.11 (m, 12H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.86, 13.99, 22.57, 22.67, 28.93, 29.25, 32.65 (butyl carbons), 110.62, 123.91, 124.07, 124.29, 124.46, 126.37, 126.66, 126.93, 131.75, 132.77, 133.93, 134.86, 135.18, 135.78, 136.11, 136.55, 137.19, 140.42, 140.55 (thiophene ring carbons)。1のブチル基炭素原子及び1のリング炭素原子のシグナルは重なっていると思われる。
元素分析:計算値(C56H52BrS10):C, 55.80; H, 4.35。測定値: C, 55.79; H, 4.35。
【0097】
<T14の合成>
T14(10)
【0098】
【化12】

【0099】
を、モノマー(5)の代わりにモノマー(9)を用いる以外は実施例1の<T10の合成>と同様にして合成した。T14が深赤色固体として得られた(収量76%)。融点は78−81℃であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の結果求められた平均分子量は、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw=9200、分散Mw/Mn=1.38であった。これより求められた重合度は7.0であった。
【0100】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.89-0.99 (m, 18H, CH), 1.27-1.47 (m, 12H, CH), 1.58-1.71 (m, 12H, CH), 2.69-2.79 (m, 12H, CH), 6.93-7.23 (m, 24H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.69, 13.98, 14.36, 22.67, 25.84, 26.50, 29.25, 32.59(butyl carbons), 123.90, 124.05, 124.47, 124.59, 124.71, 125.02, 126.34, 126,41, 126.65, 126,97, 127.82, 128.44, 128.57, 129.49, 132.72, 134.86, 135.01, 135.97, 136.06, 136.12, 136.63, 136.71, 136.82, 136.89, 140.56, 143.09, 143.50 (thiophene ring carbons)。3の炭素原子のシグナルは重なっていると思われる。
【0101】
〔実施例4:有機半導体材料T5の合成〕
<モノマー(11)の合成>
モノマー(11)(ビス(5−ブロモチエン−2−イル)エトキシ−n−プロピルシラン)
【0102】
【化13】

【0103】
を以下の方法で合成した。
【0104】
200mL3ツ口フラスコにマグネシウム2.0g(82.6mmol)を加え、THF50mLを加えた。極少量(約0.03g)のジブロモエチレンを加えてマグネシウムを活性化させた後、滴下ロートより2,5−ジブロモチオフェン20.0g(82.6mmol)をゆっくり滴下した。全量を滴下後、一晩還流させてモノグリニヤール体を得た。
【0105】
この中に、n−プロピルトリエトキシシラン8.5g(41.3mmol)を加え、室温で1時間攪拌後、終夜還流した。反応溶液に蒸留水を加え残ったグリニヤール試薬を加水分解した後、エーテル抽出した。エーテル溶液を、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、エバポレータで濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留することにより、目的のモノマー(11)を無色透明の液体として、収量31%で単離した。沸点は、110℃〜115℃/133.3224Paであった。
【0106】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.98(t, H), 1.04-1.10(m, H), 1.19(t, H), 1.21-1.56(m, H), 3.77(q, 2H,-OCH-), 7.13(4H, thienylene)。
13C NMR (δ in CDCl) 16.4, 17.9, 18.1, 18.2, 59.8, 119.0, 131.4, 136.7, 137.2。
29Si NMR ((δ in CDCl) -14.72。
【0107】
<T5の合成>
T5(12)
【0108】
【化14】

【0109】
は、J. Ohshita, A. Takata, A. Kunai, M. Kakimoto, Y. Harima, Y. Kunugi, K. Yamashita, J. Organomet. Chem., 611, 537-542 (2000)に従って合成した。
【0110】
まず、5,5”−ジブロモ−2,2’:5’2”−ターチオフェン812g(2.00mmol)をアルゴンガス雰囲気下50mLのシュレンク管に入れ、THF20mLを加えた。−80℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(4.3mmol)を滴下した後、室温に戻し30分間攪拌した。
【0111】
次に、反応液を−10℃に冷却し、塩化トリブチルスズ(n−BuSnCl)1.40g(4.30mmol)を滴下し、その後ゆっくり室温に戻した後、終夜攪拌した。この溶液に、モノマー(11)0.880g(2.00mmol)とテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(Pd(PPh)0.100g(モノマーに対して約4.3mol%)を加えてよく攪拌し、40時間還流させた。
【0112】
室温に戻した後、蒸留水を加えて加水分解し、水層と油層とを分液ロートで分離し、水層はクロロホルムで抽出して油層に加えた。得られたクロロホルム溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで濃縮した後、得られた粗生成物をエタノール/クロロホルムで再沈し、さらにn−ヘキサン/クロロホルムで再沈精製した。
【0113】
その結果、オレンジ色粉末状のT5が0.631g(収量60%)得られた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の結果求められた平均分子量は、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw=10000、分散Mw/Mn=1.7であった。
【0114】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.87-1.26(m, 12H), 3.85(q,-OCH-), 7.07-7.33(m, 10H, thienylene)。
13C NMR (δ in CDCl) 16.6, 18.0, 18.3, 18.5, 59.8, 124.4, 125.0, 133.6, 136.0, 136.3, 137.6, 143.7。
29Si NMR ((δ in CDCl) -13.46。
【0115】
〔実施例5:有機半導体材料T7の合成〕
<モノマー(13)の合成>
モノマー(13)
【0116】
【化15】

【0117】
を、J. Ohshita, A. Takata, A. Kunai, M. Kakimoto, Y. Harima, Y. Kunugi, K. Yamashita, J. Organomet. Chem., 611, (2000), 537-542 に従って合成した。
【0118】
100mLの二口フラスコに 0.50g(1.23mmol)のジブロモターチオフェンと50mLのジエチルエーテルを入れて撹拌し-78℃に冷却した。この溶液に、2.46mmolのブチルリチウムのヘキサン溶液を1時間かけて加えた。ゆっくり室温に戻した後、再び-78℃に冷却して、0.70mL(2.46mmol)の塩化トリブチルスズの10mLジエチルエーテル溶液を30分かけて加えた。4時間室温で撹拌した後、加水分解して、有機層を取り出した。有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトで精製したところ、0.96g(94%収率)のモノマー(13)が得られた。
【0119】
得られたモノマー(13)の質量スペクトル、NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.88-0.92 (m, 18H, CH), 1.09-1.13 (m, 12H, CH), 1.30-1.39 (m, 12H, CH), 1.53-1.64 (m, 12H, CH), 7.05-7.06 (br, 4H, thiophene ring protons), 7.27 (d, 2H, J = 3.4 Hz, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 10.88, 13.64, 27.24, 28.93, (butyl carbons), 124.00, 124.68, 127.82, 136.12, 136.72, 142.63 (thiophene ring carbons)。
【0120】
<モノマー(14)の合成>
モノマー(14)
【0121】
【化16】

【0122】
を、X. Jiang, Y. Harima, K. Yamashita, A. Naka, K.-K. Lee, M. Ishikawa, J. Mater. Chem., 13, (2003), 785-794 に従って合成した。
【0123】
100mLの二口フラスコに5.0g(15mmol)のジブロモビチオフェンと50mLのジエチルエーテルを入れて撹拌し-78℃に冷却した。この溶液に、9.64mmolのブチルリチウムのヘキサン溶液を4時間かけて加えた。ゆっくり室温に戻した後、再び-78℃に冷却して、1.64g(7.71mmol)のジブチルジクロロシランの10mLジエチルエーテル溶液を加えた。12時間室温で撹拌した後、加水分解して、有機層を取り出した。有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトで精製したところ、4.35g(45%収率)のモノマー(14)が得られた。
【0124】
得られたモノマー(14)の質量スペクトル、NMRのデータを以下に示す。
TOF-MS m/z 629.14 (M)。
H NMR (δ in CDCl) 0.87-0.91 (m, 6H, CH), 1.06-1.10 (m, 4H, CH), 1.33-1.44 (m, 8H, CH), 6.80-6.96 (m, 4H, thiophene ring protons), 7.17-7.25 (m, 4H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.68, 14.25, 25.79, 26.47, (butyl carbons), 111.23, 124.09, 125.23, 130.64, 135.08, 136.81, 138.64, 142.41 (thiophene ring carbons)。
【0125】
<T7の合成>
T7(15)
【0126】
【化17】

【0127】
を以下の方法で合成した。
【0128】
25mLの二口フラスコに0.300g(0.362mmol)のモノマー(13)、3.40mg(0.0181mmol)のCuI、20.1mg(0.0181mmol)のPd(PPhと5mLのトルエンを入れ、これを氷浴で冷却した。ここに0.229g(0.362mmol)のモノマー(14)を加え、100℃で一日撹拌した。溶媒を留去、残査をクロロホルム-エタノールから再沈澱して0.10g(収量40%)のポリマーT7をオレンジ色の固体として得た。
【0129】
融点は82−86℃であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の結果求められた平均分子量は、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw=5900、分散Mw/Mn=1.22であった。
【0130】
NMRのデータを以下に示す。
H NMR (δ in CDCl) 0.89-0.92 (m, 6H, CH), 1.09-1.12 (m, 4H, CH), 1.38-1.46 (m, 8H, CH); 6.94-7.25 (m, 14H, thiophene ring protons)。
13C NMR (δ in CDCl) 13.69, 14.35, 25.84, 26.49, (butyl carbons), 124.08, 124.32, 124.41, 124.74, 125.00, 125.24, 127.82, 130.64, 134.91, 136.10, 136.20, 136.81, 136.92, 143.07 (thiophene ring carbons)。
【0131】
〔実施例6:電界効果トランジスタの作製とFET特性の測定〕
図2に示す構造の電界効果トランジスタを以下の方法により作製した。図2に示す構造は図1(a)に示す構造と同様、ボトムコンタクト型構造に分類されるものである。図2に示すように、本実施例で作製した電界効果トランジスタは、基板とゲート電極とを兼ねるドープシリコン基板8を用いるものであり、図2中、7は接点(ゲートコンタクト)である。
【0132】
ドープしたシリコンウェハ(基板(ゲート電極)8)(自作)の上に、熱酸化により230nmのSiO膜(絶縁体層2)をコートした。この裏(基板8の絶縁体層2側と反対側の面)をフッ化水素酸水溶液によりエッチングし、裏にもコートされたSiO膜を除去し、電子ビーム法により、むき出しになった基板8に金を蒸着し、ゲートコンタクト7を作製した。また、この基板8に形成された絶縁体層2上に、電子ビーム法により金を蒸着し、ソース電極3及びドレイン電極4を形成した。チャネル長は10μm、チャネル幅は2cmであった。さらにこの上に、得られたポリマーT10、T12、T14およびT5をそれぞれクロロフォルム溶液からスピンコートして半導体層1を形成し、本発明の電界効果トランジスタを作製した。
【0133】
このようにして得られた電界効果トランジスタの特性を、室温真空下で、R6246(アドバンテスト社製)を用いて測定した。素子のFET特性は、室温真空下で測定した。測定は、作製した電界効果トランジスタのソース・ドレイン間に0から−100Vの電圧を印加し、ソース・ゲート間に印加された電圧を0Vから-100Vの範囲で変化させて、ソース・ドレイン間に印加された電圧(Vd)に対して流れる電流を測定することにより行った。得られた測定データから、以下の式
id={Wμ(Vg−Vt)Ci}/2L
を用いてキャリア移動度(μ)を求めた(Y. Kunugi, K. Takimiya, K. Yamashita, Y. Aso, T. Otsubo, Chem. Lett.,958 (2002))。ここで、idはソース・ドレイン間に印加された電圧Vdに対して流れる電流を、Vgはソース・ゲート間に印加される電圧を、Vtは閾値電圧を、Ciは絶縁体層の単位面積当たりの静電容量を、Wはチャネル幅を、Lはチャネル長を表す。また、オンオフ比は、ソース・ドレイン間に−100Vの電圧を印加し、ソース・ゲート間に印加される電圧を0Vから−100Vの範囲で変化させたときの、最大と最小のソース・ドレイン間に流れる電流の比として求めた。
【0134】
以下の表に、T10、T12、T14、T7およびT5をそれぞれ有機半導体材料として用いて作製した電界効果トランジスタのキャリア移動度(μ)およびオンオフ比を示す。
【0135】
【表1】

【0136】
表1に示すように、T10、T12、T14、T7、T5のいずれもがFET特性を示すことがわかった。また、各繰り返し単位中のチオフェン鎖が12、14のチオフェンからなる場合は、5、7、10のチオフェンからなる場合よりも、キャリア移動度が1オーダー大きいことがわかった。さらに、繰り返し単位中のチオフェン鎖のチオフェンが、7、10、12と増加するにつれて、オンオフ比が10倍大きくなった。なお、T5のみがケイ素原子に結合する置換基にアルコキシル基(エトキシ基)を含むことから、ケイ素原子に結合する置換基がアルキル基(ブチル基)である場合よりアルコキシル基(エトキシ基)である方がFET特性がより良くなり、T5はT7よりもオンオフ比が大きくなったと考えられる。一方、繰り返し単位中のチオフェン鎖のチオフェンが、12から14に増加しても、オンオフ比もキャリア移動度もともに向上が見られなくなった。これらの結果より、主鎖にチオフェン鎖とケイ素原子とを含む有機半導体においては、チオフェン鎖の長さがある程度の長さになるまでは、FET特性が向上するが、チオフェン鎖が一定の長さより長くなると、FET特性の向上の程度は減少することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上のように、本発明にかかる有機半導体材料は、電界効果トランジスタ等の電子デバイスに用いることができる。従って、軽量で柔軟性を有する電子デバイスの提供、真空プロセスを必要としないことによる電子デバイス製造コストの抑制、大画面デバイス製造の容易化等、有機半導体材料の利点を有効に利用することができる。それゆえ、本発明は、有機半導体材料の製造を行う化学工業やこれを利用する種々の電子デバイスを製造する半導体工業において利用可能であるのみならず、さらには電子デバイスを組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業等においても利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、(a)および(b)はそれぞれ本発明にかかる電界効果トランジスタの構成例を示す模式図である。
【図2】実施例において作製した電界効果トランジスタの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1 半導体層
2 絶縁体層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 基板
7 ゲートコンタクト
8 基板(ゲート電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)または(2)
【化1】

【化2】

((1)および(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、またはアリール基を示し、nは2以上の整数を示し、Xは5以上の整数を示す。)
で表される構造を有するポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料。
【請求項2】
上記ポリマーまたはオリゴマーは、キャリア移動度(μ)が、1×10−6cm/Vs以上であり、且つ、オンオフ比が10以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
上記Xが10〜14であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
上記一般式(1)および(2)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数1〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルキニル基、または炭素数6〜10のアリール基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
上記一般式(1)および(2)中、nが2〜1000である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
半導体層と2以上の電極とを有する電子デバイスにおいて、該半導体層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
上記電子デバイスは、スイッチング素子である請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
上記電子デバイスは、電界効果トランジスタである請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
ソース電極と、ドレイン電極と、該ソース電極とドレイン電極との間に配置されるチャネルと、該チャネルに直接または間接に接するゲート電極とから構成され、該ゲート電極に印加する電圧を変化させることによってソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御する電界効果トランジスタにおいて、
該チャネルを構成する半導体層が請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−114701(P2006−114701A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300598(P2004−300598)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年6月17日 第28回エレクトロオーガニックケミストリー討論会発行の「第28回エレクトロオーガニックケミストリー討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】