説明

有機性廃液の処理方法及び再生燃料炭

【課題】有機性廃水処理には、廃水中のBODを汚泥に転換する活性汚泥法が汎用されている。しかし、生物処理工程から発生する余剰汚泥の処理が困難で大きな負担になるので、余剰汚泥の発生量が少ない条件で生物処理しているのが現状である。そのため、廃水処理装置が大型化することが避けられず、装置の小型化が求められている。本発明は、小型の生物処理装置で、有機性廃水を大量に処理することができる有機性廃水処理システム及び再生燃料炭を提供する。
【解決手段】有機性廃水を処理する活性汚泥法において、生物処理工程から排出する余剰汚泥を乾燥し、酸化鉄粉を添加混合して成形造粒した後、加熱炭素化する余剰汚泥の再生燃料炭回収工程を生物処理工程に連結したことにより、生物処理工程における汚泥の増殖を促進し、BOD除去率を向上して生物処理装置を小型化した有機性廃水の処理方法、及び該処理方法によって得られた再生燃料炭である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水を浄化処理する活性汚泥法において、生物処理工程から排出する増殖余剰汚泥を、燃料炭に再生して回収することにより、大きな負担であった余剰汚泥処理問題を解決しつつ、生物処理工程における汚泥の増殖を促進して生物処理装置を小型化したことを特徴とする有機性廃水処理システムおよび再生燃料炭に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水の処理には、微生物を利用して廃水を浄化する生物処理法が広く実用化されている。好気性微生物を用いる好気性処理方法、および嫌気性微生物を用いる嫌気性処理方法があるが、何れの方法も余剰汚泥を発生する。本発明は、前者に属する。
【0003】
好気性微生物を用いる活性汚泥法とは次のようである。即ち、「フロック状の生物性増殖体が絶えず循環し、これらが酸素の存在のもとに有機性廃水と接触するような処理法であると定義することができる」(非特許文献1)と記載されているように、好気性活性微生物を用いる活性汚泥法とは、廃水に空気を吹き込んで(曝気という)、廃水中の可溶性有機物(BODと言う)を栄養源として食する好気性微生物を活性化させ、微生物はBODを食しながら増殖して生物性汚泥になり、この生物性汚泥を循環させることにより廃水中のBODを汚泥に転換して廃水を浄化し、余剰の活性汚泥は余剰汚泥として除去する有機性廃水の処理法である。
【0004】
廃水処理効率を高めるためには、図1(非特許文献2)によれば、汚泥量が幾何級数的に増殖する対数増殖相(図1のa〜b)を利用して生物性汚泥の増殖を促進する条件を維持することが必要である。しかし、増殖した汚泥をそのまま放置すれば、利用し得る生物性汚泥の供給が尽き始める減衰増殖相(図1のb〜c)に移行して、汚泥の増殖が低下することが記述されている。そこで、対数増殖相を維持し、生物性汚泥の増殖を促進するためには増殖余剰汚泥を速やかに系外に取り出して処理することが必要である。
【0005】
しかしながら、「これら余剰汚泥は多大な手間とエネルギーを消費して、濃縮、脱水、焼却を経て最終処分されているが、最終処分場の不足も深刻な問題となっている」(非特許文献3)といわれているように、余剰汚泥を廃棄する用地の不足、焼却施設とその燃料費など環境上および経済上に問題があったので、現状では止む無く、生物性汚泥の増殖を抑制する減衰増殖相で有機性廃水の処理が行われている。その結果、処理設備が大型化している。
【0006】
一方、これら発生した余剰汚泥の処理法には、動物の飼料や農業用肥料などに再生利用する方法、溶液状またはスラリ−状汚泥廃液を直接燃焼して処理する方法(非特許文献4)などの処理法がある。また、排出する余剰汚泥の活用法として、乾燥して燃料に、蒸し焼きして炭に、または、乾留してガス化する方法(特許文献1)などがある。しかしながら、大型化する廃水処理装置を小型化することや、大量に発生する増殖余剰汚泥を効率良く処理して有効に活用すること、などについては未だ解決されていない。小規模な廃水処理装置の開発と増殖余剰汚泥の有効な活用法の開発が強く求められている。
【0007】
【非特許文献1】W.W.ECKENFELDER,Jr D.J.O’CONNR著、岩井 重久 訳、廃水の生物学的処理、コロナ社、(昭和45年)198頁
【非特許文献2】同上、15頁
【非特許文献3】半田 宏、阿部正紀、野田 紘喜、磁気ビーズのバイオ・環境技術への応用展開、シーエムシー出版、(2006)201頁
【非特許文献4】公害防止の技術と法規編集委員会編、五訂・公害防止の技術と法規[水質編]、(社)産業環境管理協会発行 (1995)186〜188頁
【特許文献1】特開2004−115576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機性廃水を処理する活性汚泥工程において、微生物を活性化して活性汚泥を増殖することは、生物処理の効率向上のために必須であることが知られている。しかしながら、活性汚泥が増殖して余剰汚泥が増加すると、微生物の活性が低下するため、BOD処理能力も低下するという矛盾があった。これを解決するためには、余剰汚泥を系外に取り出して処分することが必要であり、焼却や埋立てなどの方法で処理している。しかしながら、これらの処理方法は、廃棄する用地の不足や、悪臭による環境汚染など二次公害を発生するので経済上、環境保全上に困難な問題があった。そこで止む無く、余剰汚泥の発生を抑制する減衰増殖相において、生物処理効率の低い条件下で、有機性廃水を処理せざるを得ないために、処理装置の大型化が避けられないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明は、有機性廃水の生物処理工程から排出する増殖余剰汚泥の処理問題を解決しつつ、生物処理工程における汚泥の増殖を促進して生物処理装置を小型化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0011】
上記課題を解決する本発明は、有機性廃水の生物処理工程において、増殖した余剰汚泥を燃料炭に再生する再生燃料炭回収工程を、生物処理工程に連結したことにより、生物処理工程における汚泥の増殖を促進し、BOD除去率を向上して生物処理装置を小型化したことを特徴とする有機性廃水の処理方法である。
【0012】
また、前記再生燃料炭回収工程において、生物処理工程から排出する余剰汚泥を80〜200℃の温度で加熱することにより乾燥し、汚泥中の悪臭成分を分解除去する工程と、該工程で得られた乾燥汚泥に0.5〜5重量%の酸化鉄粉を添加混合する工程と、該工程で得られた混合物を造粒および/または成形加工する工程と、該工程で得られた成形加工物を非酸化性雰囲気中300〜400℃の温度で加熱して炭素化することにより、燃焼性が良好な燃料炭を収率良く回収する工程とから成る再生燃料炭回収工程を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記生物処理工程が、生物性汚泥濃度を、MLSS(廃水中の微生物量を表す指標)濃度で5000〜10000mg/Lの対数増殖相とすることにより、BOD除去率を80%以上の排水とする工程と、該排水を、排水中の生物性汚泥濃度を、MLSS濃度で1000〜3000mg/Lの減衰増殖相とすることにより、原水に対してBOD除去率を98%以上の放流水とする工程の2段の工程から成る生物処理工程としたことにより、生物処理設備を小型化した生物処理工程とから成る有機性廃水の処理方法である。
【0014】
また、本発明は、前記再生燃料炭回収工程において、乾燥汚泥に添加する酸化鉄粉がヘマタイトα−Fe、マグネタイトFe、マグヘマイトγ−Fe、ゲータイトα−FeOOH、アカゲナイトβ−FeOOH、レビットクロサイトγ−FeOOHから選ばれる1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
また、本発明は、前記有機性排水の処理方法によって得られた再生燃料炭であり、前記再生燃料炭には、酸化鉄を含有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の活性汚泥処理システムは、発生した増殖余剰汚泥を再生燃料炭として回収するので、生物処理を対数増殖相で曝気して汚泥の増殖を促進し、BOD除去率を高める工程と、この工程で処理した排水を減衰増殖相で曝気して、BODを20mg/L以下の放流水に浄化する工程の2段工程としたことにより、余剰汚泥処理問題を解決しつつ、有機性廃水処理装置を小型化することができる。
【0017】
一方、汚泥に添加する酸化鉄粉は、酸化鉄の酸化還元触媒作用により、汚泥を加熱炭化して燃料炭に再生する際には炭素化効率を高め、また、生成した酸化鉄粉含有再生燃料炭の燃焼効率を高めて燃焼時には完全燃焼するので、一酸化炭素の発生を抑制する安全衛生上の効果を発揮する、等の効果がある。
【0018】
即ち、従来の加熱炭素化方法では、余剰汚泥を蒸し焼きして炭素化する過程で炭酸ガスが発生するので生成率が低く、また、生成した炭を燃焼した際には、酸素不足が生じると、不完全燃焼により一酸化炭素ガスが発生し易いなどの問題があった。そこで、酸化鉄粉が有する酸化還元触媒作用、即ち、酸化鉄を300℃以上の温度で加熱したとき、雰囲気が不完全燃焼ガスにより還元性雰囲気になると、酸化鉄中のFe(III)はFe(II)に還元され、酸化鉄は酸素を放出して雰囲気を酸化性雰囲気に変える。そして、酸化性雰囲気中ではFe(II)は酸素により酸化されて再びFe(III)になるという酸化還元触媒作用に注目して種々検討した。その結果、酸化鉄粉を混合した汚泥を300℃以上の温度で加熱炭素化すると、炭酸ガスの生成が抑制され、炭の生成率が向上し、さらに、生成した酸化鉄粉含有炭は、燃焼性が良好で不完全燃焼が起こり難いという効果が確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0020】
本発明の実施形態を図2により説明する。
【0021】
図2は本発明の有機性廃液処理システムを示すものであり、(I)は生物処理工程であり、一次処理(A)、二次処理(B)及び三次処理(C)の各工程から成る。また、(II)は(I)の工程から排出する増殖余剰汚泥を燃料炭に再生して回収する再生燃料炭回収工程であり、乾燥、脱臭のための加熱分解[HT1]工程と排ガスの脱臭装置[GT]から成る工程と、乾燥汚泥に酸化鉄粉を添加混合する工程[MIX]と、混合物を造粒・成形加工する工程[MOD]と、成形物を加熱炭化する工程[HT2]とから成る。
【0022】
まず、生物処理工程(I)について述べる。
【0023】
先ず、生物処理工程(I)において、一次処理工程(A)では、有機性廃水W0に混在している固体ゴミを沈殿槽D1で、一次処理水W1と沈降分離し、固体ゴミはゴミ貯槽ST1へ、一次処理水W1は液送ポンプで二次処理工程(B)へ移送する。
【0024】
次に、二次処理工程(B)では、一次処理水W1中に含有している有機物(以下、「BOD」という)を、曝気槽B1で曝気して活性化した生物性汚泥に食させ、BODの生物汚泥転換を促進し、生物性汚泥濃度を、MLSS濃度5000〜10000mg/Lの対数増殖相で曝気する。増殖した生物性汚泥スラリーS1は連通管を通って沈殿槽D2に流入する。沈殿槽D2では、二次処理水W2と生物性汚泥スラリーS2に沈降分離し、二次処理水W2は連通管を通って三次処理工程(C)へ流入する。
【0025】
生物性汚泥濃度をMLSS濃度で5000〜10000mg/Lの高濃度にするのは、生物性汚泥の増殖を促進してBOD除去率を高めることにより、廃液処理装置を小型化するためである。MLSS濃度が10000mg/Lを超える場合には、増殖汚泥の沈降槽での沈降分離が困難となる。5000mg/L未満では、BOD除去率が低いので好ましくない。好ましい範囲は5000〜8000mg/Lである。
【0026】
一方、沈降分離した余剰汚泥スラリーS2は、その一部を安定化槽RC1へ移送し、飽食して増殖した生物性汚泥を貧食状態にして再活生化する。再活性化した生物性汚泥S3は、一次処理水W1と混合して曝気槽B1へ返送することにより、曝気槽B1における生物性汚泥濃度をMLSS濃度5000〜10000mg/Lに維持する。また、残りの余剰汚泥スラリーS2は固液分離工程PFで分離して、排液は一次処理水W1に返送し、ペースト状の余剰汚泥は貯蔵槽ST2に貯蔵する。
【0027】
さらに、三次処理工程(C)では、二次処理水W2中に残留しているBODを曝気槽B2で、生物性汚泥濃度を、MLSS濃度1000〜3000mg/Lの減衰増殖相で曝気し、僅かに増殖した生物性汚泥スラリーS4は沈殿槽D3へ移送する。沈殿槽D3では、浄化排水W3と生物性汚泥スラリーS5に沈降分離して、浄化排水W3は滅菌処理して系外へ放流し、スラリーS5は、その一部を二次処理水W2と混合して曝気槽B2へ返送することにより、曝気槽B2における生物性汚泥濃度をMLSS濃度2000〜3000mg/Lに維持する。また、残りの余剰汚泥スラリーS5は、二次処理工程(B)の固液分離工程PFに移送して固液分離し、排液は一次処理水W1に返送し、ペースト状の余剰汚泥は貯蔵槽ST2に貯蔵する。
【0028】
減衰増殖相で曝気する工程において、生物性汚泥濃度をMLSS濃度で1000〜3000mg/Lの低濃度にするのは、排水中のBOD濃度の低い放流水とするためである。3000mg/Lを超える場合には、放流水中のBOD濃度を低くすることが困難であり、1000mg/L未満ではBOD除去率が低く過ぎるため廃水の浄化が進まない。好ましい範囲は1000〜2000mg/Lである。
【0029】
次に、増殖余剰汚泥を再生燃料炭として回収する工程(II)について述べる。
【0030】
増殖余剰汚泥を再生燃料炭として回収する工程(II)において、生物処理工程(I)の余剰汚泥貯槽[ST2]からペースト状の余剰汚泥を取出し、加熱分解工程HT1の排気パイプを備えた密閉ドラム容器中に投入し、この容器を電気炉中で回転しながら80〜200℃の温度で加熱して乾燥し、悪臭成分を分解して脱臭して乾燥汚泥を生成する。また、分解ガスは排気パイプをとおして脱臭装置GTで脱臭処理した後、大気中に放出する。
【0031】
本発明の再生燃料炭回収工程において、生物処理工程から排出する余剰汚泥を80〜200℃の温度で加熱するのは、含水ペースト状の余剰汚泥を乾燥し、汚泥に含有している硫化水素、硫化メチル、メチルメルカプタンやアンモニア等の悪臭成分を分解して脱臭処理するためである。加熱温度が80℃未満では、乾燥速度が遅く、また、悪臭成分の分解も不十分となる。200℃を超える場合は、乾燥速度が大きく、悪臭成分の分解の効果も大きいが、汚泥のガス化が生起するので好ましくない。好ましい加熱温度は100〜180℃である。分解ガスは脱臭装置を用いて処理することが好ましい。
【0032】
前記加熱脱臭工程で得られた脱臭乾燥汚泥は、次の混合工程MIXで酸化鉄粉を0.5〜5重量%添加してミックスマーラー、V型ミキサー等で混合する。
【0033】
本発明において、乾燥汚泥に酸化鉄粉を添加するのは、有機性汚泥から炭素成分を効率良く回収するためであり、そして、再生燃料炭の燃焼性を高めるためである。乾燥汚泥に添加する酸化鉄粉が0.5重量%未満では、酸化還元触媒の効果が小さくなる。5.0重量%を超える場合には、酸化還元触媒効果は十分であるが再生炭の純度が低下し、発熱量が減少するので好ましくない。好ましい添加量は1.0〜3.0重量%である。酸化鉄粉としては、ヘマタイトα−Fe、マグネタイトFe、マグヘマイトγ−Fe、ゲータイトα−FeOOH、アカゲナイトβ−FeOOH、レビットクロサイトγ−FeOOH等の1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
前記混合工程で得られた混合物は、次の成形加工工程MODで、使途に適した形状に、押出し成形機、圧縮成形機等を用いて、造粒および/または成形加工する。
【0035】
本発明において、乾燥汚泥と酸化鉄粉の混合物を成形するのは、加熱炭素化する際に、炭素化を均一に行い均質な再生燃料炭を得るためであり、そして、使い易い燃料炭を得るためである。乾燥汚泥と酸化鉄粉の混合物を成形するには、鋳込み成形機や押出し成形機などの成形加工装置を用いて、ペレット状、棒状、板状、豆炭や練炭状など使途に合せて種々の形状に成形することができる。また、成形助剤は適宜使用することができる。
【0036】
前記成形加工工程で得られた成形物を炭素化する加熱炭素化工程HT2では、前記工程で得られた成形物を、電気炉等の加熱炉を用いて、非酸化性雰囲気下300〜400℃の温度で加熱することにより、酸化鉄含有燃料炭を生成し、室温まで冷却した後、生成物は再生燃料炭貯槽ST3に貯蔵する。
【0037】
本発明において、造粒物または成形物を、非酸化性雰囲気中で、300〜400℃の温度で加熱して炭素化する際に、非酸化性雰囲気とするのは、余剰汚泥が燃焼するのを防止して効率良く炭素化するためである。加熱炭素化温度が300℃未満では、酸化鉄の酸化還元触媒作用が生起し難い。また、400℃を超える場合には、炭素化と同時にガス化が促進するので好ましくない。また、加熱炭素化装置には炉内ガス雰囲気が制御できる加熱炉を用い、非酸化性雰囲気とするには、窒素等の不活性ガスを用いる方法や空気の混入を遮断して行う方法等で実施することができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例により詳細に説明する。
【0039】
(I)生物処理工程
廃水および処理水の水質検査は (社)日本下水協会発行(1984年版)「下水試験方法、第4章活性汚泥試験」に記載の方法で行った。
【0040】
先ず、豆類加工食品工場の廃水処理工程における従来法を示す。
【0041】
<比較例1>
豆類加工食品工場から排出する有機性廃水は、BODの平均濃度が1000mg/Lで、排水量は日量100mであり、BODの排出総量は日量100Kgである。
【0042】
前記の豆類加工食品工場における廃水処理工程は、容積が250mの曝気槽と18mの沈殿槽とから成る。先ず、BOD濃度が1000mg/Lの廃水を曝気槽に導入し、MLSS濃度で2000mg/Lの減衰増殖相で曝気した。このときのBOD容積負荷は0.4Kg/m・日で、BOD−MLSS負荷は0.2Kg/Kg・日であった。僅かに増殖した生物性汚泥スラリーは連通管を通して沈殿槽に移送し、沈殿槽では、浄化排水と生物性汚泥スラリーに沈降分離した。分離した浄化排水は滅菌処理して河川に放流し、余剰汚泥は系外に取り出して埋立て廃棄した。余剰汚泥の生成量は乾燥重量で5kg/日で、BODの汚泥転換率は5%であった。
【0043】
また、浄化排水の水質は、原水からの総BOD除去率が98%で、BOD濃度が20mg/Lであり、放流水基準を満足していた。しかしながら、曝気槽は日量100mの廃水に対して、容積が2.5倍の250mという大型の曝気槽を使用しなければならない。その理由は、余剰汚泥を埋立て処理していたので、土地の不足や環境保全に問題があったので、増殖余剰汚泥の発生を抑制する必要があり、BODの汚泥転換率が5%の減衰増殖相で曝気したからであった。生成した余剰汚泥量は、乾燥物で5kg/日と少量であった。
【0044】
実施例1
(I)生物処理工程
比較例1の豆類加工食品工場廃液を、本発明の図2における(I)の生物処理工程で浄化処理した。
平均BOD濃度が1000mg/Lの廃水W0は、一次処理工程(A)の容積が18mの沈殿槽D1に受け入れ、廃水W0中の固体ゴミを沈降分離して貯槽ST1に取り出し、一次処理水W1は液送ポンプで、二次処理工程(B)の容積が60mの曝気槽B1へ移送した。
【0045】
二次処理工程(B)では、BOD濃度が1000mg/Lの一次処理水W1を、曝気槽B1へ受け入れて、MLSS濃度が8000mg/Lの対数増殖相で曝気して、汚泥を活性化することによりBODの汚泥転換率を高めて、生物性汚泥を増殖した。このときのBOD容積負荷は1.67Kg/m・日であり、BOD−MLSS負荷は0.21Kg/Kg・日であった。増殖した生物性汚泥スラリーS1は、連通管を通して容積18mの沈殿槽D2に移送した。沈殿槽D2では、二次処理水W2と生物性汚泥スラリーS2に沈降分離し、二次処理水W2は、連通管を通して三次処理工程(C)の容積60mの曝気槽B2へ移送した。二次処理水W2の水質は、BODが200mg/L(BOD除去率は80%)であった。
【0046】
一方、沈降分離した生物性汚泥スラリーS2は、その一部を、容積が10mの安定化槽RC1へ移送し、飽食した生物性汚泥を、貧食状態にすることにより食欲を再活性させた。このようにして再活性化した生物性汚泥S3は、一次処理水W1と混合して曝気槽B1へ返送することにより、微生物量をMLSS濃度が8000mg/Lの高活性度に維持した。また、汚泥スラリーS2の残分、即ち、発生した余剰汚泥はプレスフィルターによる固液分離工程PFに移送し、固液分離した。排水は一次処理水W1に返送し、ペースト状余剰汚泥は容積が20mの余剰汚泥貯槽ST2に回収した。余剰汚泥の発生量は乾燥重量で27kg/日で、BODの汚泥転換率は27%であった。
【0047】
また、三次処理工程(C)へ移送した二次処理水W2には、200mg/LのBODが残留していた。二次処理水W2は曝気槽B2で、MLSS濃度が2000mg/Lの減衰増殖相で曝気した。このときのBOD容積負荷は0.33Kg/m・日で、BOD−MLSS負荷は0.17Kg/Kg・日であった。生物性汚泥スラリーS4は連通管を通して容積が18mの沈殿槽D3に移送した。沈殿槽D3では、浄化排水W3と生物性汚泥スラリーS5に沈降分離して、浄化排水W3は滅菌処理した後、系外へ放流した。この浄化排水W3の水質は、BOD濃度が20mg/Lで放流水基準を満足していた。三次処理工程(C)でのBOD除去率は90%であり、原水からの総BOD除去率は98%であった。
【0048】
一方、沈降分離した生物性汚泥スラリーS5は、その一部を二次処理水W2と混合して曝気槽B2へ返送することにより、微生物量をMLSS濃度で2000mg/Lに維持した。また、汚泥スラリーS5の残分、即ち、発生した余剰汚泥は、二次処理工程(B)の固液分離工程PFに移送し、固液分離して、排水は二次処理工程(B)の一次処理水W1に返送し、ペースト状余剰汚泥は貯蔵槽ST2に回収した。余剰汚泥の発生量は乾燥重量で1kg/日で、BODの汚泥転換率は5%であった。ST2に回収した余剰汚泥の総量は140kgで含水率は80%であった。これは乾燥物重量で日量28kgであった。
【0049】
本発明方法では、乾燥物重量で28kg/日と多量の余剰汚泥を生成した。その理由は、余剰汚泥を燃料炭に再生する再生燃料炭回収工程を、生物処理工程に連結したことにより、BODの汚泥転換率が大きい対数増殖相で曝気して汚泥の増殖を促進したからである。
即ち、第1の曝気槽B1では対数増殖相で曝気して、BODを80%以上除去し、第2の曝気槽B1では減衰増殖相で曝気して、残余20%のBODを、BODの含有量が20mg/L以下の排水に浄化した。その結果、曝気槽を従来の250mの装置より、約4分の1の60mに小型化することができた。
【0050】
(II)余剰汚泥を燃料炭に再生する工程
汚泥再生炭の生成率は、加熱炭素化処理前後の重量変化を測定して求めた。汚泥中の炭素量の基準は、標準とされる汚泥組成式CNOから算出した53重量%とした。また、灰分は温度800℃で3時間燃焼して残量を測定した。汚泥の灰分は21.5重量%であった。
【0051】
<予備実験1>汚泥の乾燥・脱臭処理について
図2における有機性廃水処理工程(I)の余剰汚泥貯蔵槽[ST2]からペースト状の率余剰汚泥1kgをシャーレーに取出した。次に、汚泥100gを加熱用試料皿に取り、管状炉に挿入して加熱した。温度の上昇に伴う排気ガスの臭気発生状況を観測した。その結果、加熱温度が80℃近辺から臭気性ガスが出始め、130〜170℃の間で激しく発生し、200℃を越えると臭気ガスの発生は無くなった。
【0052】
<予備実験2>加熱炭素化条件(酸化鉄粉なし)について
<2−1>
150℃で脱臭乾燥した汚泥を仁丹粒状に造粒した粉体10gを、ルツボに入れ蓋をして、マッフル電気炉を用いて、空気の通気を遮断して200℃で加熱した。3時間加熱してデシケーターに取り出して冷却した。室温に冷却後の重量を測定した結果、生成した炭の重量は9.1gであった。乾燥汚泥10g中の炭素量が基準量53%であるから炭素は5.3gであり、灰分が21.5%であるから2.15gである。従って、加熱後の重量がこの合計7.45gであるとき、炭素化率は100%となる。生成した炭が9.1gの場合では、1.65gが未炭化であり、炭素化率は69%であった。
【0053】
<2−2>
上記2−1と同様にして、汚泥を200℃の温度で24時間加熱した。残存量は
8.55gであった。これは、未生成の炭であり、加熱温度が200℃では炭素化が不十分であった。
<2−3>
加熱温度を250℃とし、加熱時間を変化させた以外は、前記2−1と同様にして汚泥を加熱炭素化した。残存量は、加熱時間が3時間のときは7.88g(炭素化率92%)、6時間のときは7.65g(炭素化率96%)で、8時間では炭素化率が98%であった。
<2−4>
加熱温度を300℃とし、加熱時間を変化させた以外は上記2−1と同様にして汚泥を加熱炭素化した。残存量は、加熱時間が1時間のときは7.26gであり、一部ガス化しており、汚泥の炭素化は1時間以内に完了していることを示唆していた。また、これより高い温度で加熱すると汚泥のガス化がさらに促進した。
【0054】
<予備実験3>添加物と加熱炭素化条件について
<3−1>
150℃で加熱脱臭した乾燥汚泥に、比表面積が80m/gの酸化鉄(ゲータイト)粉を3重量%添加混合して仁丹粒状に造粒した。この造粒粉10gを、ルツボに入れ蓋をして、マッフル電気炉を用いて、空気の通気を遮断して300℃で加熱した。3時間加熱後、デシケーターに取り出して冷却した。室温に冷却後の重量を測定した結果7.85gであった。乾燥汚泥10g中には酸化鉄を3%含有しているので正味の汚泥量は9.7gである。この含有炭素量は基準量53%であるから炭素は5.14gであり、灰分は21.5%であるから2.13gである。従って、加熱後の重量がこの合計7.27gであるとき、炭素化率は100%である。よって、生成した炭が7.85gの場合は、0.58gが未生成の炭であり、炭素化率は89%であった。加熱時間が4時間のとき、汚泥の炭化率は98%であった。
<3−2>
加熱温度を350℃とし、加熱時間を変化させた以外は上記3−1と同様にして汚泥を加熱炭素化した。残存量は、加熱時間が1時間のときは7.66g(炭素化率92%)、加熱時間が3時間のとき7.32g(炭素化率99%)であった。加熱時間が4時間のときの残存量は7.08gであり、一部ガス化していることが確認された。
<3−3>
比表面積が28m/gの酸化鉄(マグネタイト)粉を用い、添加量を1重量%とした以外は上記3−1と同様にして汚泥を加熱炭素化した。加熱時間が3時間の時、汚泥の炭素化率は98%であった。
【0055】
予備実験2と予備実験3の結果から、乾燥汚泥に酸化鉄粉を添加すると、汚泥中の炭素成分をガス化させることなく加熱炭素化を促進させることができることが判明した。
【0056】
実施例2
図2において、有機性廃水処理工程(I)の余剰汚泥貯蔵槽[ST2]からペースト状の余剰汚泥140kgを取出し、加熱分解工程HT1の排気パイプを備えた容積500Lの回転ドラム容器中に投入し、この容器を電気炉中で回転しながら150℃の温度に加熱して乾燥・脱臭処理した。脱臭乾燥物28kgを得た。発生した臭気性ガスは脱臭装置GTにより処理して大気へ放出した。脱臭装置には富士化水工業(株)製脱臭装置「バイオフォレスト」を用いた。
【0057】
次に、上記工程で得た脱臭汚泥の乾燥物28kgに、混合工程MIXにおいて、比表面積が80m/gの酸化鉄(ゲータイト)粉560g(2重量%)を添加してミックスマーラーで混合し、均一に混合した後、少量の水を加えながら撹拌混合して0.5mmΦに造粒した。この造粒物を成形工程MODにおいて、押出し成形機で10mm×10mm×100mmの棒状に成形した。
【0058】
上記工程で得られた成形物を乾燥後、加熱炭素化工程HT2において、アルミナ製の蓋付き角コウ鉢(120W×120D×50Hmm)を用いて、1コウ鉢に成形物を40個入れて、内容積が36リットルで内寸法(300W×600D×200Hmm)の静置型電気炉を用いて、コウ鉢を3段に重ねて、4列、2行で、合計24鉢を挿入し、炉内部を外気の流通を遮断した非酸化性雰囲気とし、350℃の温度で3時間加熱し、室温まで冷却して炉から取出した。この操作を6回行って全成形物を加熱炭素化した。黒色生成物は、酸化鉄含有再生燃料炭で、生成物の全重量は14.5kg、汚泥の炭素化率は98%であった。また、酸化鉄含有再生燃料炭は着火性が良好で、無煙無臭で燃焼し、燃焼性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、有機性廃水の生物処理法において、発生する余剰汚泥の処理が大きな負担であったが、余剰汚泥に酸化鉄粉を添加して加熱炭素化することにより、余剰汚泥を燃焼性に優れた酸化鉄含有燃料炭に再生回収することができた。また、余剰汚泥処理の負荷を低減するために生物処理条件を減衰増殖相で実施するので生物処理装置が大型化していたが、再生燃料炭回収工程を生物処理工程に連結したことにより、生物処理条件を対数増殖相とし、BOD除去率を増大して生物処理装置を小型化することができたので、経済性にも優れた環境対応型システムとして容易に実施することができる。さらに、汚泥に添加する酸化鉄粉には酸化還元触媒作用があるので、汚泥を加熱炭素化して燃料炭に再生する際には、炭素化効率が良く高収率であり、また、生成した酸化鉄粉含有再生燃料炭を燃焼する際には、燃焼効率が良く完全燃焼するので一酸化炭素の発生を抑制して安全衛生上の効果を発揮する等の燃焼性に優れている。そのため、エネルギー資源の枯渇問題が叫ばれている今日的背景からも、本発明は、時代の要請に則して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】BODの除去と汚泥の増殖との関係図
【図2】本発明方法の工程フロー図
【符号の説明】
【0061】
図1
a〜b 対数増殖相領域
b〜c 減衰増殖相領域
図2
(I) 有機性廃水処理工程
(A) 一次処理工程
W0 有機性廃水
D1 一次沈殿槽
ST1 W0中の固形ゴミ貯槽
(B) 二次処理工程
W1 一次処理水
B1 曝気処理槽
S1 増殖生物性汚泥スラリー
D2 二次沈殿槽
S2 余剰汚泥スラリー
RC1 安定化槽
S3 再活性化汚泥
PF 固液分離装置
ST2 余剰汚泥貯槽
(C) 三次処理工程
W2 二次処理水
B2 曝気処理槽
S4 増殖生物性汚泥スラリー
D3 三次沈殿槽
W3 浄化排水
S5 余剰汚泥スラリー
(II) 再生燃料炭回収工程
HT1 加熱分解行程
GT 脱臭装置
MIX 混合工程
MOD 成形工程
HT2 加熱炭素化工程
ST3 再生燃料炭貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水の生物処理工程において、増殖した余剰汚泥を燃料炭に再生する再生燃料炭回収工程を、生物処理工程に連結したことを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【請求項2】
前記再生燃料炭回収工程が、余剰汚泥を80〜200℃の温度範囲で加熱乾燥して汚泥中の悪臭成分を分解除去する工程と、該工程で得られた乾燥汚泥に0.5〜5重量%の酸化鉄粉を添加混合する工程と、該工程で得られた混合物を造粒及び/又は成形加工する工程と、該工程で得られた成形加工物を非酸化性雰囲気中300〜400℃の温度範囲で加熱して炭素化する工程とから成ることを特徴とする請求項1記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】
前記生物処理工程が、生物性汚泥濃度を、MLSS濃度で5000〜10000mg/Lの対数増殖相とすることにより、BOD除去率を80%以上の排水とする工程と、該排水を、排水中の生物性汚泥濃度を、MLSS濃度で1000〜3000mg/Lの減衰増殖相とすることにより、原水に対してBOD除去率を98%以上の放流水とする工程の2段の工程からなることを特徴とする請求項1又は2記載の有機性廃水の処理方法
【請求項4】
前記再生燃料炭回収工程において、乾燥汚泥に添加する酸化鉄粉が、ヘマタイトα‐Fe、マグヘマイトγ‐Fe、マグネタイトFe、ゲータイトα‐FeOOH、アカゲナイトβ‐FeOOH、レピッドクロサイトγ‐FeOOHの何れか一種または二種以上であることを特徴とする請求項2記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの有機性廃水の処理方法によって得られた再生燃料炭。
【請求項6】
再生燃料炭が、酸化鉄を含有していることを特徴とする請求項6記載の再生燃料炭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−148710(P2009−148710A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329325(P2007−329325)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【出願人】(391051393)富士化水工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】