説明

有機金属化合物

【課題】有機金属化合物の提供。
【解決手段】ホスホアミジネートリガンドを含有する有機金属化合物が提供される。かかる化合物は蒸着前駆体としての使用に特に好適である。かかる化合物を用いた、ALDおよびCVDなどによる薄膜を堆積させる方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般に、有機金属化合物の分野に関する。特に、本発明は、薄膜の化学気相堆積および原子層堆積に有用な有機金属化合物の分野に関する。
【0002】
原子層堆積(「ALD」)法において、表面を2以上の化学反応物質の交互に流れる蒸気にさらすことにより、共形薄膜(conformal thin film)が堆積される。第一前駆体(または反応物質)からの蒸気は、表面上に所望の薄膜が堆積されるその表面に導入される。未反応蒸気が次に真空下で系から除去される。次に、第二前駆体からの蒸気が前記表面に導入され、第一前駆体と反応させられ、過剰の第二前駆体蒸気が除去される。ALD法における各工程は典型的には所望の膜の単層を堆積させる。所望の膜厚が得られるまで、この一連の工程が繰り返される。一般に、ALD法はかなり低い温度、例えば、200〜400℃で行われる。正確な温度範囲は堆積される特定の膜ならびに用いられる特定の前駆体に依存する。ALD法は純粋な金属ならびに金属酸化物、金属窒化物、金属炭窒化物、および金属ケイ化窒化物を堆積させるために用いられてきた。
【特許文献1】国際公開第04/46417号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ALD前駆体は、反応容器内において十分な濃度の前駆体蒸気が適用な時間内に基体表面上に単層を堆積させることを保証するために十分揮発性でなければならない。前駆体はさらに、時期尚早に分解することなく、かつ望ましくない副反応なく蒸発するために十分安定でもなければならないが、基体上に所望の膜を形成するために十分反応性でなければならない。揮発性と安定性の特性のこのような要求されるバランスが原因で、好適な前駆体が全体的に欠乏している。
【0004】
従来の前駆体はホモレプティックである。すなわち、前駆体は単一のリガンド基を有する。ホモレプティック前駆体は均一な化学特性をもたらし、かくして、リガンドの官能性と堆積法を一致させ、調和させる特有の利点をもたらす。しかしながら、単一のリガンド基のみの使用は、他の最重要な前駆体特性、例えば、表面反応(例えば、化学吸着)および気相反応(例えば、第二の補充前駆体との反応)を支配する金属中心の遮蔽、前駆体の揮発性の調節、並びに前駆体に必要な熱安定性を達成することなどに対する制御性の低下をもたらす。例えば、テトラキス(ジアルキルアミノ)ハフニウムが現在、HfClの塩化物を含まない代替物として使用されている。しかしながら、この種類の化合物は貯蔵中および/または反応容器に到達する前に時期尚早に前駆体の分解が生じる傾向がある。熱安定性を付与する別の有機基で1以上のジアルキルアミノ基を置換することが試みられてきたが、他の基の官能性と合致することができず、および所望の安定性を達成することができないために、ほとんど成功していない。国際公開第04/46417号(Gordonら)は、ALDのための安定な前駆体として、特定のアミジネート化合物を開示している。かかる化合物は、特定のALD条件下で必要な揮発性と熱安定性(または他の性質)のバランスを提供することができない。堆積要件を満たし、本質的に炭素を含まない膜を製造する好適で安定な前駆体が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(RYCRPR+m(m−n)(式中、各R、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択される;Y=NまたはP;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;及びm≧n)を有する、ALD前駆体として用いるのに好適な有機金属化合物を提供する。かかる化合物は、様々な蒸着法、例えば、化学蒸着法(「CVD」)において好適であり、特にALDに適している。前記化合物および有機溶媒を含む組成物も提供される。かかる組成物は、ALDおよび直接液体注入法(direct injection process)における使用に特に好適である。
【0006】
本発明により、ホスホアミジン化合物を調製する方法であって:ニトリル化合物を第一ホスフィンと、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒の存在下で反応させることを含む方法も提供される。場合によっては、第一ホスフィンおよび第一アミンの混合物を使用することができる。ホスホアミジン化合物は対称であっても、非対称であってもよい。
【0007】
本発明はさらに、膜を堆積させる方法であって:基体を反応容器中に提供し;気体状の前記前駆体化合物を反応容器に移送し;金属を含む膜を基体上に堆積させる工程を含む方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、膜を堆積させる方法であって:基体を反応容器中に提供し;第一前駆体として気体状の前記前駆体化合物を反応容器に移送し;第一前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させ;任意の化学吸着されていない第一前駆体化合物を反応容器から除去し;気体状の第二前駆体を反応容器に移送し;第一および第二前駆体を反応させて、基体上に膜を形成し;任意の未反応第二前駆体を除去する工程を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書全体にわたって使用される場合、文脈が明らかに他を示さない限り、次の略号は次の意味を有する:℃=摂氏度;ppm=百万分の1部;ppb=10億分の1部;RT=室温;M=モル;M=メチル;Et=エチル;i−Pr=イソ−プロピル;n−Bu=n−ブチル;t−Bu=tert−ブチル;c−Hx=シクロヘキシル;Cp=シクロペンタジエニル;COD=シクロオクタジエン;CO=一酸化炭素;Bz=ベンゼン;VTMS=ビニルトリメチルシラン;THF=テトラヒドロフラン;およびPAMD=ホスホアミジネート。
【0009】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味し、「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。同様に、「ハロゲン化」とは、フッ素化、塩素化、臭素化およびヨウ素化を意味する。「アルキル」は、直鎖、分岐鎖および環状アルキルを包含する。同様に、「アルケニル」および「アルキニル」はそれぞれ直鎖、分岐鎖および環状アルケニルおよびアルキニルを包含する。
【0010】
特に他に注記しない限り、全ての量は重量パーセントであり、全ての比はモル比である。全ての数値範囲は境界値を包含し、かかる数値範囲が合計して100%までにされることが明らかである場合を除いては任意の順序で組み合わせ可能である。
【0011】
本発明の有機金属化合物は、一般にホスホアミジネートと呼ばれ、一般式(RYCRPR+m(m−n)(式中、各R、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択される;Y=NまたはP;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;ここにおいて、m≧n)を有する。ある実施態様において、R、RおよびRのそれぞれは独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリル、ブテニル、アセチレニルおよびプロピニルから選択される。本明細書において用いられる場合、「アリール」とは、芳香族炭化水素基を意味し、該芳香族炭化水素基は、任意に1以上のその水素が、置換基、例えば、これに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルコキシ、およびハロなどの置換基で置換されていてもよい。
【0012】
下付き文字「n」は、本発明の化合物中のホスホアミジネートリガンドの数を表す。当業者は、ホスホアミジネートリガンドが本発明の化合物における唯一のリガンドであり得ることを理解する。
【0013】
本発明のホスホアミジネートリガンドを形成するために様々な金属を適当に用いることができる。典型的には、Mは第2族〜第16族金属から選択される。本明細書において用いられ場合、「金属」なる用語は、半金属ホウ素、珪素、ヒ素、セレンおよびテルルを包含するが、炭素、窒素、リン、酸素および硫黄を包含しない。ある実施態様において、M=Be、Mg、Sr、Ba、Al、Ga、In、Si、Ge、Sb、Bi、Se、Te、Po、Cu、Zn、Sc、Y、La、ランタニド金属、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Mn、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、IrまたはPtである。別の実施態様において、M=Al、Ga、In、Ge、La、ランタニド金属、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Mn、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、IrまたはPtである。
【0014】
様々なアニオン性リガンド(L)を本発明において用いることができる。このようなリガンドは負電荷を有する。可能なリガンドとしては、これらに制限されないが、リガンド(表面に対して、また気相において反応性):ヒドリド、ハライド、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボニル、アミド、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアミノアルキル、イミノ、ヒドラジド、ホスフィド、ニトロシル、ニトロイル、ナイトライト、ニトレート、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトネート、ケトイミネート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネートおよびアミジネートが挙げられる。かかるリガンドのいずれかが、1以上の水素が別の置換基に、例えばハロ、アミノ、ジシリルアミノおよびシリルに置換されるなど、任意に置換されていてもよい。アニオン性リガンドの例としては、制限なく:(C−C10)アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル;(C−C10)アルケニル、例えば、エテニル、アリル、およびブテニル;(C−C10)アルキニル、例えば、アセチレニルおよびプロピニル;(C−C10)アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシ;(C−C10)アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ、エチルアミノおよびプロピルアミノ;ジ(C−C10)アルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノおよびジプロピルアミノ;シクロペンタジエニル、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニルおよびペンタメチルシクロペンタジエニル;ジ(C−C10)アルキルアミノ(C−C10)アルコキシ、例えば、ジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメチルアミノプロポキシ、エチルメチルアミノプロポキシおよびジエチルアミノプロポキシ;シリル、例えば、(C−C10)アルキルシリルおよび(C−C10)アルキルアミノシリル;およびアルキルアミジネート、例えば、N,N’−ジメチル−メチルアミジナート、N,N’ジエチル−メチルアミジナート、N,N’−ジエチル−エチルアミジナート、N,N’−ジ−イソ−プロピル−メチルアミジナート、N,N’−ジ−イソ−プロピル−イソ−プロピルアミジナート、およびN,N’−ジメチル−フェニルアミジナートが挙げられる。2以上のアニオン性リガンドが存在する場合、かかるリガンドは同一であっても、異なっていてもよい。
【0015】
中性リガンド(L)は本発明の化合物において任意である。かかる中性リガンドは全体的な電荷を有さず、安定剤として機能することができる。中性リガンドとしては、これらに制限されることはないが、CO、NO、アルケン、ジエン、トリエン、アルキン、および芳香族化合物が挙げられる。中性リガンドの例としては、これらに限定されないが:(C−C10)アルケン、例えば、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ノルボルネン、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルトリ(C−C)アルキルシラン、ジビニルジ(C−C)アルキルシラン、ビニルトリ(C−C)アルコキシシランおよびジビニルジ(C−C)アルコキシシラン;(C−C12)ジエン、例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエンおよびα−テルピネン;(C−C16)トリエン;(C−C10)アルキン、例えば、アセチレンおよびプロピン;および芳香族化合物、例えば、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン、o−シメン、m−シメン、p−シメン、ピリジン、フランおよびチオフェンが挙げられる。中性リガンドの数は、Mについて選択された特定の金属に依存する。2以上の中性リガンドが存在する場合、かかるリガンドは同一であっても、異なっていてもよい。
【0016】
本発明のホスホアミジネートは、当該分野において知られている様々な方法により調製することができる。例えば、特定のイットリウムアリールホスホアミジネートを製造するための米国特許出願公開第2004/0033889号(Hessenら)において開示されている一般的手順を用いて本発明の非アリールホスホアミジネートを調製することができる。「非アリールホスホアミジネート」なる用語は、ホスホアミジネートリガンド上に如何なるアリール置換をも有さないホスホアミジネート化合物を意味する。別法として、米国特許第5,502,128号(Rauschら)および国際公開第04/46417号において、特定のアミジネートの製造について開示されている一般的手順は、本発明のホスホアミジネートを調製するために当業者により容易に変更され得る。ある実施態様において、本発明の化合物は、ホスホアミジネートリチウム塩を金属ハロゲン化物と好適な溶媒、例えば、ヘキサン中で反応させることにより調製することができる。かかる反応は、ある範囲の温度にわたって行うことができ、室温が特定の反応に好適である。本発明の化合物の別の合成法において、アルキルリチウムをまず金属ハロゲン化物と好適な溶媒、例えば、THF中で、好適な温度、例えば室温で反応させ、続いてホスホアミジンと、好適なな溶媒中、典型的には、第一反応について用いられたのと同じ溶媒中で反応させる。
【0017】
別法として、ホスホアミジンは、好適なニトリル化合物を第一ホスフィンと、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒の存在下で反応させることにより調製することができる。ニトリル化合物の例は、式R−C≡NまたはRNH−C≡Nを有するものである。第一ホスフィンの例は、式RPHを有する。任意に、第一ホスフィンおよび第一アミンの混合物が使用される。第一アミンの例は、式RNHを有する。R、RおよびRのそれぞれは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択される。好適な金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒は、式M(CFSO(式中、Mは金属、例えば、ランタンまたはランタニド群の任意の金属である)を有する。かかるホスホアミジンは対称であっても、非対称であってもよい。前記方法は、ワンポットまたは段階的共縮合であり得る。前記反応により調製されるホスホアミジン化合物は、典型的には、式H(RYCRPR)(式中、R、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択され;Y=NまたはPである)から選択される。式R−C≡Nのニトリルを使用する前記反応は、次の反応シーケンスにまとめられ、ここにおいて、Y=NまたはPであり;RはRと同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
【化1】

【0019】
式R−NH−C≡Nのニトリルを使用する前記反応は、次の反応シーケンスにまとめられ、ここにおいて、Y=NまたはPであり;RはRと同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
第一ホスフィンの例としては、これらに制限されないが、メチルホスフィン、エチルホスフィン、イソ−プロピルホスフィン、イソ−ブチルホスフィン、tert−ブチルホスフィンおよびフェニルホスフィンが挙げられる。第一ホスフィンは一般に、例えば、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などから商業的に入手可能であるか、または、例えば、米国特許第6,939,983号(Shenai−Khatkhateら)において開示されているようなグリニャール試薬を用いることによるか、または米国特許第6,956,127号(Shenai−Khatkhateら)において開示される有機リチウムおよび/または有機アルミニウム反応に基づくなど、文献において公知の様々な方法により調製することができる。第一アミンの例としては、これらに限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソ−プロピルアミン、およびtert−ブチルアミンが挙げられる。かかる第一アミンは一般に、例えば、Aldrich Chemical Companyから商業的に入手可能である。
【0022】
ホスホアミジン化合物は、好適なニトリル化合物、第一ホスフィン、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒および任意の第一アミンを任意の順序で組み合わせることにより調製できる。任意に、有機溶媒を用いることができる。反応は、様々な温度、例えば、還流温度で行うことができる。典型的には、反応は数時間以内に完了する。
【0023】
ホスホグアニジンの別の合成経路において、第一ホスフィンおよびカルボジイミドを金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒の存在下で反応させる。前記の金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒の任意のものを用いることができる。反応条件は、ホスホアミジン化合物について前述のものと同様である。ホスホグアニジン化合物の調製を以下に示す。ここにおいて、R、RおよびRは前記の意味を有する。
【0024】
【化3】

【0025】
本発明の金属ホスホアミジネート有機金属化合物は、金属塩(一般にハロゲン化物)のアルカリ金属ホスホアミジネートとのメタセシス反応により調製することができる。アルカリ金属ホスホアミジネートは、ホスホアミジン化合物をアルキルアルカリ金属試薬(例えば、n−ブチルリチウム、メチルリチウムおよびターシャリーブチルリチウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム)またはアルカリ金属アミド(例えば、ナトリウムアミド)のいずれかと反応させることにより調製することができる。別法として、金属ホスホアミジネートは、金属ジアルキルアミドおよび遊離ホスホアミジン間の有機溶媒の存在下での交換反応により調製できる。前記反応は、一般に、例えば、窒素、アルゴンまたはその混合物をはじめとする不活性雰囲気下で行われる。典型的には、かかる反応において用いられる有機溶媒は、金属を含み酸素化された不純物を実質的に含まない。
【0026】
本願発明の有機金属化合物は、薄膜の蒸着のための前駆体として用いるのに特に好適である。かかる化合物は、様々なCVD法ならびに様々なALD法において用いることができる。ある実施態様において、2以上のかかる有機金属化合物をCVDまたはALD法において用いることができる。2以上の有機金属化合物が用いられる場合、かかる化合物は、同じ金属であるが、異なるリガンドを有するものを含有するか、あるいは異なる金属を含有し得る。別の実施態様において、1以上の本発明の有機金属化合物を1以上の他の前駆体化合物とともに用いることができる。
【0027】
バブラー(シリンダーとも呼ばれる)は、堆積反応容器に蒸気相の本発明の有機金属化合物を提供するために用いられる典型的なデリバリーデバイスである。かかるバブラーは、典型的には、注入口、気体入口および堆積チャンバーに連結される出口を含有する。キャリアガスは典型的には気体入り口を通ってバブラーに侵入し、前駆体蒸気または前駆体含有気体流れを一緒に引張って行くかまたは受け取る。その後、一緒に引張って行かれたか、または運ばれた蒸気は次に出口を通ってバブラーを出て、堆積チャンバーに運ばれる。様々なキャリアガス、例えば、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびその混合物を用いることができる。
【0028】
使用される具体的な堆積装置に応じて、様々なバブラーを用いることができる。前駆体化合物が固体である場合、米国特許第6,444,038号(Rangarajanら)および第6,607,785号(Timmonsら)に開示されたバブラー、ならびに他の様式を用いることができる。液体前駆体化合物に関して、米国特許第4,506,815号(Melasら)および第5,755,885号(Mikoshibaら)において開示されたバブラー、ならびに他の液体前駆体バブラーを用いることができる。ソース化合物はバブラー中に液体または固体として維持される。固体ソース化合物は典型的には堆積チャンバーに移送される前に蒸発または昇華させられる。ALD法に関して用いられるバブラーは、必要な蒸気パルスを提供するために必要とされる程度に迅速に設備の開放および閉鎖をするために空気弁を入り口または出口に有し得る。
【0029】
通常のCVD法において、液体前駆体を供給するためのバブラー、ならびに固体前駆体を供給するための特定のバブラーは、気体入り口に連結されたディップチューブ(dip tube)を含有する。一般に、キャリアガスは前駆体またはソース化合物とも呼ばれる有機金属化合物の表面下に導入され、ソース化合物を通ってその上のヘッドスペースへ上昇し、キャリアガスにソース化合物の蒸気を取り込みまたは運ぶ。
【0030】
ALD法において用いられる前駆体は液体、低融点固体、または溶媒中に配合された固体であることが多い。これらの種類の前駆体を取り扱うために、ALD法において用いられるバブラーは、出口と連結されたディップチューブを含有する。気体は入り口を通ってこれらのバブラーに入り、バブラーを加圧し、前駆体をディップチューブへ押し上げ、バブラーから押し出す。
【0031】
本発明は、前記の有機金属化合物を含むデリバリーデバイスを提供する。ある実施態様において、デリバリーデバイスは、断面を有する内部表面を有する長い円筒形部分、上端閉鎖部分および下端閉鎖部分を有する容器を含み、上端閉鎖部分は、キャリアガスを導入するための入口開口部および出口開口部を有し、長い円筒形部分は、前記の有機金属化合物を含有するチャンバーを有する。
【0032】
ある実施態様において、本発明は、式(RYCRPR+m(m−n)(式中、各R、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択される;Y=NまたはP;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;及び、m≧n)の有機金属化合物で飽和した流体流れを、化学蒸着系に供給するための装置を提供し、かかる化学蒸着系は、断面を有する内部表面を有する長い円筒形部分、上端閉鎖部分および下端閉鎖部分を有し、上端閉鎖部分が、キャリアガスを導入するための入口開口部および出口開口部を有し、長い円筒形部分が有機金属を含有するチャンバーを有し;入口開口部はチャンバーと流体連通し、チャンバーは出口開口部と流体連通している容器を含む。さらに別の実施態様において、本発明は、前記有機金属化合物で飽和した流体流れを供給するための1以上の装置を含む、金属フィルムの化学蒸着用装置を提供する。
【0033】
堆積チャンバーは典型的には、少なくとも一つあるいは多くの基体がその中に配置される加熱された容器である。堆積チャンバーはアウトレットを有し、これは典型的には副生成物をチャンバーから抜き取り、適当ならば減圧を提供するために真空ポンプに連結している。金属有機CVD(「MOCVD」)は大気圧または減圧で行うことができる。堆積チャンバーは、ソース化合物の分解を誘発するために十分高い温度に維持される。典型的な堆積チャンバー温度は200℃から1200℃であり、さらに典型的には200〜600℃であり、選択される的確な温度は有効な堆積を提供するために最適化される。任意に、堆積チャンバー中の温度は、基体が高温に維持される場合には、あるいは他のエネルギー、例えばプラズマが高周波(「RF」)エネルギー源により生じる場合には、全体として低下させることができる。
【0034】
堆積のための好適な基体は、電子装置製造の場合においては、シリコン、シリコンゲルマニウム、炭化珪素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウムなどであり得る。このような基体は、集積回路の製造において特に有用である。
【0035】
堆積は所望の特性を有する膜を製造するために望ましい限り続けられる。典型的には、膜の厚さは、堆積を停止した際に、数百オングストロームから数千オングストローム以上である。
【0036】
したがって、本発明は:a)基体を蒸着反応容器中に提供する工程;b)前駆体として気体状の前記有機金属化合物を反応容器に移送する工程;およびc)金属を含む膜を基体上に堆積させる工程を含む、金属膜を堆積させるための方法を提供する。典型的なCVD法において、前記方法は、反応容器中で前駆体を分解する工程をさらに含む。
【0037】
金属含有薄膜は、基体を一度に一つ、膜が形成される元素のそれぞれの前駆体化合物の蒸気に交互に付すことにより、ALDによりほぼ完全な化学量論で製造される。ALD法において、基体は第一前駆体の蒸気に付され、前記第一前駆体は基体の表面と、反応が起こるために十分高い温度で反応することができ、これにより第一前駆体(またはその中に含まれる金属)の単原子層が基体の表面上に形成され、かくして形成された表面であって、その上に第一前駆体原子層を有するものを第二前駆体の蒸気に付し、前記第二前駆体は第一前駆体と、反応が起こるために十分高い温度で反応し、これにより、所望の金属膜の単原子層が基体の表面上に形成される。形成される膜が所望の厚さに達するまで、第一および第二前駆体を交互に使用することにより、この手順を続けることができる。かかるALD法において用いられる温度は、典型的には、MOCVD法において用いられるものよりも低く、200℃〜400℃の範囲でよいが、選択された前駆体、堆積される膜、および当業者に知られている他の基準に応じて、他の好適な温度を用いることができる。
【0038】
ALD装置は典型的には、真空雰囲気を提供するための真空チャンバー手段;真空チャンバー手段中に配置された一対の手段であって、少なくとも1個の基体を支持するための支持手段および2つの異なる前駆体のそれぞれ少なくとも2つの蒸気のソースを形成するためのソース手段;並びに、まず前駆体の一つの単原子層、次いで他の前駆体の単原子層を基体上に提供するために、前記一対の手段の他方に対して一方の手段を操作するための、前記一対の手段の前記一方と操作可能に連結された操作手段:を含む。ALD装置の説明に関しては米国特許第4,058,430号(Suntola)参照。
【0039】
さらなる実施態様において、本発明は、膜を堆積させる方法であって:基体を蒸着反応容器中に提供し;第一前駆体として気体状の上記有機金属化合物を反応容器に移送し;第一前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させ;任意の化学吸着されなかった第一前駆体化合物を反応容器から除去し;気体状の第二前駆体を反応容器に移送し;第一および第二前駆体を反応させて、基体上に膜を形成し;任意の未反応第二前駆体を除去する工程を含む、膜を堆積させる方法を提供する。第一および第二前駆体を移送する交互工程ならびに第一および第二前駆体を反応させる工程は所望の厚さの膜が得られるまで繰り返される。前駆体を反応容器から除去する工程は、真空下で反応容器を排気すること、および非反応物質気体および/または溶媒蒸気を用いて反応容器をパージすることの1以上を含み得る。第二前駆体は、第一前駆体と反応して所望の膜を形成する任意の好適な前駆体であり得る。かかる第二前駆体は場合によってはもう一つ別の金属を含有してもよい。第二前駆体の例としては、これに限定されないが、酸素、オゾン、水、過酸化物、アルコール、亜酸化窒素およびアンモニアが挙げられる。
【0040】
本発明の有機金属化合物がALD法または直接液体注入法において用いられる場合、これらは有機溶媒と組み合わせることができる。好適には有機金属化合物に対して不活性である任意の有機溶媒を使用できる。有機溶媒の例としては、これらに制限されることはないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、直鎖アルキルベンゼン、ハロゲン化炭化水素、シリル化炭化水素、アルコール、エーテル、グリム、グリコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、フェノール、エステル、アミン、アルキルニトリル、チオエーテル、チオアミン、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、シリコン油、ニトロアルキル、アルキルニトレート、およびその混合物が挙げられる。好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジグリム、n−ブチルアセテート、オクタン、2−メトキシエチルアセテート、エチルラクテート、1,4−ジオキサン、ビニルトリメチルシラン、ピリジン、メシチレン、トルエン、およびキシレンが挙げられる。有機溶媒の混合物を使用してもよい。直接液体注入法において用いられる場合、有機金属化合物の濃度は、典型的には、0.05〜0.25M、さらに典型的には0.05〜0.15Mの範囲である。有機金属化合物/有機溶媒組成物は、溶液、スラリーまたは分散液の形態であってよい。
【0041】
本発明の有機金属化合物および有機溶媒を含む組成物は、直接液体注入を用いる蒸着法における使用に好適である。好適な直接液体注入法は、米国特許出願公開第2006/0110930号(Senzaki)に記載されているものである。
【0042】
本発明によりさらに提供されるのは、電子装置を製造する方法であって、前記方法のいずれか一つを用いて金属含有膜を堆積させる工程を含む方法である。
【0043】
本発明は、蒸着、特にALDのためのヘテロレプティック前駆体の使用を可能にする溶液であって、ホスホアミジネートリガンドの使用により、官能性、所望の熱安定性、適切な金属中心遮蔽性およびよく支配された表面ならびに気相反応の、好適なバランスを有するものを提供する。
【0044】
次の実施例は本発明の様々な態様を説明することが期待される。
【実施例】
【0045】
実施例1
ジ−イソ−プロピルホスホアミジンは次のようにして合成されると予想される。
【0046】
【化4】

【0047】
イソ−プロピルアミン、イソ−プロピルホスフィン、およびアセトニトリルの等モル混合物の溶液をランタントリフラート(1〜2%)と圧力容器中、大気圧、不活性雰囲気下で混合する。過剰のアセトニトリル(10〜25%)が溶媒として使用され、反応物の均質化を助けると予想される。圧力容器を次いで等温チャンバーまたはオーブン中で、反応物を一定して撹拌しながら50〜60℃に5〜6時間加熱する。別法として、反応を大気圧、還流条件下で行うことができる。反応中放出されるアンモニアを大気中に放出される前に市販のスクラバー(破壊的除去効率>99%)を用いてスクラブする。過剰の溶媒および副生成物は真空蒸留により除去されると考えられる。結果として得られる、予想されるジ−イソ−プロピルホスホアミジンを次いで真空下で蒸留する。生成物は高収率(>75%)で得られると予想され、かつFT−NMRおよびICP−MSにより決定したときに有機および金属不純物を含まないと予想される。
【0048】
実施例2
(ジ−イソ−プロピルホスホアミジナート)リチウムは次のようにして合成されると予想される。
【0049】
【化5】

【0050】
−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(ヘキサン中2.3M)をエーテル系溶媒中に溶解させた等モル量のジ−イソ−プロピルホスホアミジンと反応させることにより、ジ−イソ−プロピルホスホアミジンのリチウム塩を調製する。添加は、滴下により、効率的に撹拌しながら行われる。添加完了後、反応混合物を室温で得る。溶媒および未反応試薬は真空ストリッピングを用いて除去されると予想される。生成物を次いでブチルジグリム(「BDG」)中に溶解させて、ジ−イソ-プロピルホスホアミジナートリチウムの溶液(25〜50%)を得る。
【0051】
実施例3
(ジ−イソ−ブチルホスホアミジナート)リチウムは実施例1および2の手順を用い、イソ−ブチルアミンおよびイソ−ブチルホスフィンを用いて合成されると予想される。
【0052】
実施例4
非対称モノ(N−イソ−プロピル−P−t−ブチルホスホアミジナート)リチウムは実施例1および2の手順を用い、イソ−プロピルアミンおよびターシャリー−ブチルホスフィンを用いて合成されると予想される。
【0053】
実施例5
非対称モノ(N−tert−ブチル−P−イソ−ブチルホスホアミジナート)ナトリウムは実施例1および2の手順を用い、tert−ブチルアミンおよびイソ−ブチルホスフィンを用い、ヘキサン中n−ブチルリチウムの代わりにブチルジグリム中ナトリウムアミドを用いて合成されると予想される。
【0054】
実施例6
テトラキス(ジ−イソ−プロピルホスホアミジナート)ハフニウム、Hf(iPr−PAMD)は、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムをトルエン中で、4.4モル過剰のジ−イソ−プロピルホスホアミジネート(実施例1から得られる)と、高温(100℃を超えない)で6時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温まで冷却させる。さらに0℃以下まで冷却すると、目的生成物テトラキス(ジ−イソ−プロピルホスホアミジナート)ハフニウムが高収率で得られると予想される。
【0055】
実施例7
トリス(ジ−イソ−プロピルホスホアミジナート)アルミニウム、Al(iPr−PAMD)は、トリス(エチルメチルアミノ)アルミニウムをトルエン中で3.3モル過剰のジ−イソ−プロピルホスホアミジネート(実施例1から得られる)と、高温(80℃を超えない)で5時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温まで冷却させる。さらに0℃以下まで冷却すると、目的生成物トリス(ジ−イソ−プロピルホスホアミジナート)アルミニウムが高収率で得られると予想される。
【0056】
実施例8
テトラキス(ジ−イソ−ブチルホスホアミジナート)ゲルマニウム、Ge(iBu−PAMD)は、四塩化ゲルマニウムをBDG中で4.5モル過剰のジ−イソ−ブチルホスホアミジンのリチウム塩(実施例3から得られる)と高温(100℃を超えない)で5時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温に冷却させる。溶液をさらに0℃に冷却すると、目的生成物テトラキス(ジ−イソ−ブチルホスホアミジナート)ゲルマニウムが高収率で得られると予想される。
【0057】
実施例9
非対称トリス(N−イソ−プロピル−P−t−ブチルホスホアミジナート)アンチモンは、モノ(N−イソプロピル−P−t−ブチルホスホアミジナート)リチウム(実施例4から得られる)をn−ブチルエーテル中で、四塩化アンチモン(3.3:1モル比)と高温(80℃を超えない)で8時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温に冷却させる。溶液をさらに0℃に冷却すると、目的生成物非対称トリス(N−イソ−プロピル−P−t−ブチルホスホアミジナート)アンチモンが高収率で得られると予想される。
【0058】
実施例10
非対称ビス(N−tert−ブチル−P−イソ−ホスホアミジナート)テトラキス(エチルメチルアミド)タングステンは、モノ(N−tert−ブチル−P−イソ−ブチルホスホアミジナート)ナトリウム(実施例5から得られる)およびリチウムエチルメチルアミドをBDG中で、六塩化タングステン(2.4:1モル比)と高温(100℃を超えない)で6時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温に冷却させる。溶液をさらに0℃に冷却すると、目的生成物非対称ビス(N−tert−ブチル−P−イソ−ホスホアミジナート)テトラキス(エチルメチルアミド)タングステンが高収率で得られると予想される。
【0059】
実施例11
テトラキス(ジ−エチルホスホアミジナート)テルル、Te(Et−PAMD)は、テトラキス(エチルメチルアミノ)テルルをトルエン中で、4.4モル過剰のジエチルホスホアミジン(実施例1の手順に従う)と高温(100℃を超えない)で6時間反応させることにより合成されると予想される。反応完了後、反応物を室温に冷却させる。溶液をさらに0℃以下に冷却すると、目的生成物テトラキス(ジエチルホスホアミジナート)テルルがが高収率で得られると予想される。副産物として得られると予想される。生成物には、ビス(ジエチルホスホアミジナート)テルルが副産物として含まれる場合がある。
【0060】
実施例12
ビス(イソプロピルホスホアミジナート)ルテノセン、[MeCP(i−Pr)N(i−PR)]Ru(Cp)は、次のようにして合成されると予想される。
【0061】
【化6】

【0062】
イソプロピルホスホアミジネートのリチウム塩をヘキサン中シクロペンタジエニルルテニウムクロリド四量体と室温(約25℃)で、化学量論により必要とされるよりも若干モル過剰(1〜2%)を用いて反応させる。反応は窒素の不活性雰囲気下、磁気または機械的撹拌および反応速度を制御するために有効な加熱/冷却システムを備えた三口丸底フラスコ中で行われる。試薬を連続して滴下し、ゆっくりと混合して、反応の発熱を制御する。反応物を60〜80℃より低く維持する。添加完了後、反応混合物を室温で1時間撹拌する。反応物を加熱して、穏やかに還流させて、反応を確実に完了させる。次に冷却すると粗生成物が反応物から分離されると予想され、次に標準的蒸留および/または再結晶技術を用いて精製されると予想される。目的生成物ビス(イソプロピルホスホアミジネート)ルテノセンは高収率で得られると考えられ、FT−NMRにより決定した場合に有機溶媒を実質的に含まない(<0.5ppm)と予想され、ICPMS/ICP−OESにより決定した場合に金属不純物も実質的に含まない(<10ppb)と予想される。
【0063】
実施例13
トリメチルシリルメチル−ビス(イソプロピルホスホアミジナート)ランタン、[MeCP(i−Pr)N(i−Pr)]La(CHSiMe)は次のようにして合成されると予想される:
【0064】
【化7】

【0065】
リチウム塩(トリメチルシリルメチルリチウム)をTHF中で三塩化ランタンのTHF付加物と室温(約25℃)で反応させる。中間生成物を次いでTHF中遊離イソプロピルホスホアミジンと反応させて、目的生成物トリメチルシリルメチル−ビス(イソプロピルホスホアミジナート)ランタンを得る。反応はバッチ操作、および中間生成物の単離をしないワンポット合成であると予想される。反応は窒素の不活性雰囲気下、化学量論により必要とされるよりも若干モル過剰(1〜2%)のリチウム塩を用いて行われる。反応は磁気または機械的撹拌および反応速度を制御するために有効な加熱/冷却システムを備えた三口丸底フラスコ中で行われると予想される。試薬を連続して滴下し、ゆっくりと混合して、反応の発熱を制御する。反応物は一般に60〜80℃より低く維持される。添加完了後、反応混合物を室温で1時間撹拌する。反応物を次いで加熱して、穏やかに還流させて、反応を確実に完了させる。冷却すると粗生成物が反応物から分離されると予想され、次に標準的蒸留および/または再結晶技術を用いて精製されると予想される。目的生成物トリメチルシリルメチル−ビス(イソプロピルホスホアミジナート)ランタンは高収率で得られると予想され、FT−NMRにより決定した場合に有機溶媒を実質的に含まない(<0.5ppm)と予想され、ICP−MS/ICP−OESにより決定した場合に金属不純物も実質的に含まない(<10ppb)と予想される。
【0066】
実施例14
以下の表に記載される式(RYCRPR+m(m−n)の有機金属化合物は実施例1〜14において記載される手順に従って調製される。
【0067】
【表1】

【0068】
前記表において、コンマにより区切られたリガンドは、各リガンドが当該化合物中に存在することを示し、TMG=テトラメチルグアニジネートおよびTMPG=テトラメチルホスホグアニジネートであることを示す。
【0069】
実施例15
ALDまたは直接液体注入法における使用に好適な組成物は、実施例14の化合物のいくつかを特定の有機溶媒と組み合わせることにより調製される。具体的な組成物を次の表に示す。有機金属化合物は、典型的には直接液体注入のために0.1Mの濃度で存在する。
【0070】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(RYCRPR+m(m−n)(式中、各R、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよびアリールから選択される;Y=NまたはP;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;及び、m≧n)を有する有機金属化合物。
【請求項2】
が、ヒドリド、ハライド、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ジアルキルアミドアルキル、イミド、ヒドラジド、ホスフィド、ニトロシル、ニトロイル、ニトレート、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトネート、ケトイミネート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、およびアミジネートから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
がCO、NO、アルケン、ジエン、トリエン、アルキン、および芳香族化合物から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Mが第2族〜第16族金属から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の化合物および有機溶媒を含む組成物。
【請求項6】
フィルムを堆積させる方法であって:蒸着反応容器中に基体を提供し;前駆体として気体状の請求項1記載の有機金属化合物を反応容器に移送し;金属を含むフィルムを基体上に堆積させる工程を含む方法。
【請求項7】
フィルムを堆積させる方法であって:基体を反応容器中に提供し;直接液体注入を用いて請求項5記載の組成物を反応容器中に移送し;金属を含むフィルムを基体上に堆積させる工程を含む方法。
【請求項8】
フィルムを堆積させる方法であって:基体を蒸着反応容器中に提供し;第一前駆体として気体状の請求項1記載の有機金属化合物を反応容器に移送し;第一前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させ;任意の化学吸着されなかった第一前駆体化合物を反応容器から除去し;気体状の第二前駆体を反応容器に移送し;第一および第二前駆体を反応させて、基体上にフィルムを形成し;任意の未反応第二前駆体を除去する工程を含む方法。
【請求項9】
第二前駆体が、酸素、オゾン、水、過酸化物、アルコール、亜酸化窒素およびアンモニアから選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の化合物を含む蒸着反応に蒸気相の前駆体を送達するためのデリバリーデバイス。
【請求項11】
ニトリル化合物を第一ホスフィンと金属トリフルオロメタンスルホン酸塩触媒の存在下で反応させることを含むホスホアミジン化合物を調製する方法。
【請求項12】
第一アミンをニトリル化合物および第一ホスフィンと反応させることをさらに含む請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2008−115160(P2008−115160A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−197125(P2007−197125)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】