説明

架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体

【課題】
難燃性、耐熱性に優れ、複雑な形状へ二次加工が可能な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】
示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃以上のポリプロピレン系樹脂(A)20〜50重量%と、示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)30〜40重量%と、ポリエチレン系樹脂20〜40重量%とからなるポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、臭素含有化合物(C)4〜12重量部および三酸化アンチモン1〜3重量部を含有せしめたポリオレフィン系樹脂組成物を発泡・架橋させて架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、複雑な形状へ二次加工が可能な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、一般的に柔軟性、軽量性、断熱性に優れており、従来より、天井、ドア、インスツルメントパネル等の自動車等の車両用内装材として用いられている。これらの内装材は、通常、シート状のポリオレフィン系樹脂発泡体を真空成型や圧縮成型等の二次加工方法により所定の形状に成型し、必要に応じてポリ塩化ビニル樹脂のシート、熱可塑性エラストマーのシート、天然または人造の布状物、レザー等の表皮材を貼り合わせて製造される。
【0003】
ところで、近年、自動車内装材用途においては、コスト削減のための生産性向上や他社との差別化のためのデザインの複雑化が急激に進行している。このため発泡体の真空成型や圧縮成型においても、生産性向上のための加工時間短縮や加工温度アップが図られると共に、デザイン形状の複雑化にともない深絞り成型の加工性が必要となっている。これらの状況下、ポリオレフィン系樹脂発泡体には高温下でのより一層の成型加工性向上が求められている。
【0004】
発泡体の高温下での成型性を改良する方法としては、樹脂の融点を上げて成型耐熱性を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では伸度が不十分となり成型品の角部等、成型時に高剪断応力がかかる部分で破れてしまう場合がある。
【0005】
また、自動車内装材として使用される際は難燃性が要求される場合が多く、難燃剤を添加してポリオレフィン系樹脂発泡体を難燃化する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂発泡体に難燃剤を添加すると、成型加工性が低下する傾向にあり、成型性と難燃性の高度な両立は未だ達成されていない。
【特許文献1】特許3308724号
【特許文献2】特許3516731号
【特許文献3】特許3542907号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、成型時の耐熱性に優れ、複雑な形状への二次加工が可能であり、かつ難燃性を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定の樹脂組成へ特定の難燃剤を配合するという以下の(1)〜(7)のいずれかの構成を採用することで前記課題を解決できることを見出したものである。
(1)示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃以上のポリプロピレン系樹脂(A)を20〜50重量%と、示差走査熱量計による吸熱ピークが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)を30〜40重量%と、ポリエチレン系樹脂を20〜40重量%含み、これら樹脂100重量%に対し、臭素含有化合物(C)を4〜12重量%および三酸化アンチモンを1〜3重量%含有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(2)前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレン、およびエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記(1)記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(A)としてメルトフローレートが0.4〜1.8g/10minのものを用い、且つ前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記ポリプロピレン系樹脂(B)との重量比を1:0.5〜1:1.5として得た、上記(1)または(2)記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(4)前記臭素含有化合物(C)が、エチレンビスペンタブロモジフェニルおよびエチレンビステトラブロモフタルイミドの少なくとも一方を含む、上記(1)〜(3)いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(5)上記(1)〜(4)いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と他素材との積層体。
(6)上記(1)〜(4)いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体もしくは上記(5)記載の積層体を含む成型体。
(7)上記(1)〜(4)いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、または上記(5)記載の積層体もしくは上記(6)記載の成型体を含む自動車内装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不具合の発生を防いで複雑な形状へ成型することが可能な、耐熱性能に優れ、かつ難燃性を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体とすることができ、特に自動車内装材のスタンピング成型用として好適な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前記課題について鋭意検討し、特定な融点ピークをもつポリプロピレン系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)およびポリエチレン系樹脂、ならびに特定の難燃剤で構成された組成物を用いて架橋・発泡してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。すなわち、示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃以上のポリプロピレン系樹脂(A)を20〜50重量%と、示差走査熱量計による吸熱ピークが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)を30〜40重量%と、ポリエチレン系樹脂を20〜40重量%含み、これら樹脂100重量%に対し、臭素含有化合物(C)を4〜12重量%および三酸化アンチモンを1〜3重量%含有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体とすることで、かかる課題を解決することができるのである。
【0010】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(A)としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、ホモポリプロピレンなどに代表される公知のものを例示できる。ポリプロピレン系樹脂(A)としては、これらの樹脂を1種類もしくは2種類以上を混合して使用すればよい。
【0011】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂(A)は、上記樹脂の中でも示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃以上にあるものであり、このポリプロピレン系樹脂(A)の量は全樹脂中20〜50重量%である。より好ましくは25〜45重量%であり、更に好ましくは28〜42重量%である。もし20重量%よりも少なければ、成型耐熱性が不十分となり、圧縮成型のときなど樹脂流れにより面が荒れる場合がある。一方、50重量%よりも多いと、シート形成時に熱分解型発泡剤が分解し外観上問題が生じる場合がある。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、特に限定するものではないが、JIS K7210:1999に基づき、温度230℃、荷重2.16 kgf(21.18N) の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.4〜3.0g/10minの範囲にあるものを使用することが好ましい。MFRが0.4g/10min以上の樹脂を用いることで、シート化する際の剪断によって熱分解型発泡剤が分解することを防ぎ、また、外観上問題が生じることを防ぐことができる。一方、MFRが3.0g/10min以下の樹脂を用いることで、発泡体の成型耐熱性をさらに高めることができる。
また、本発明の発泡体においては、示差走査熱量計による吸熱ピークが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)を含む。このような樹脂としては、例えばエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、ホモポリプロピレン、変性ポリプロピレン樹脂などのプロピレン系樹脂、イソプレン、ブタジエン、スチレンなどのブロック部をもつブロック共重合体などを例示できる。ポリプロピレン系樹脂(B)としては、これらの樹脂を1種類もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
【0013】
本発明において、示差走査熱量計による吸熱ピークが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)の量としては、全樹脂中30〜40重量%の範囲である。ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が40重量%より多いと得られる発泡体の耐熱性が不十分となり、また30重量%未満では成型性が不十分となってしまう。
【0014】
さらに、本発明の発泡体は、ポリプロピレン系樹脂も含有する。本発明では、ポリエチレン系樹脂をいれることによる耐熱性低下と成型性向上とのバランスを考慮に入れて、目的とする物性に合わせてポリエチレン系樹脂の添加量を決定すると良い。具体的なポリエチレン系樹脂の量としては20〜40重量%で、好ましくは20〜35重量%である。
【0015】
本発明で用いるポリエチレン系樹脂は、特に特定はしないが、例えばエチレンの単独重合体(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレンを主成分とする共重合体、これらの混合物などを例示できる。前記共重合体としては、例えばエチレンと炭素数4つ以上のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる)を重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。中でも、耐熱性と成型性とをバランスよく満足するために、線状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定するものではないが、JIS K7210:1999に基づき、温度190℃、荷重2.16 kgf(21.18N) の条件で測定したメルトフローレート(MFR) が0.5〜15g/10minの範囲にあるものを用いることが好ましい。MFRが0.5g/10min以上の樹脂を用いることで、シート化する際に該シートの表面が粗面化するのを防ぐことができ、外観上問題が生じることを防ぐことができる。一方、MFRが15g/10min以下の樹脂を用いることで、発泡体の成型耐熱性をさらに向上することができる。その範囲はより好ましくは1.0〜10g/10minである。
【0017】
また、本発明においては、本発明の特性を著しく損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂を加えても良い。ここで、熱可塑性樹脂としては、ハロゲンを含まないものにあっては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、低分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリテートといった芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ビニル重合性モノマー及び含窒素ビニルモノマーを有する共重合体などが挙げられる。さらにイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ジメチルシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのエラストマーなどであってもよい。また、ハロゲンを含むものにあっては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂が一種類もしくは複数種含まれていても良い。所望の物性に合わせて種類、量は選択される。
【0018】
本発明の発泡体は、例えば、低圧射出成型工法に供される場合、ゲル分率が45〜65%であることが好ましい。より好ましくは50〜60%である。また真空成型工法に供される場合は25〜50%が好ましく、より好ましくは30〜45%である。プレ真空成型した後に低圧射出成型を行う成型工法に供される場合などは40〜60%が好ましく、より好ましくは45〜55%である。
【0019】
なお、本発明でいうゲル分率とは次のように測定する。まず、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を50mg精密に秤量し、120℃のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の質量を精密に秤量する。そして、溶解前の発泡体の質量に対する不溶解分の質量の百分率を算出し、これをゲル分率とする。
【0020】
成型性を表す一つの指標として、次式のような関係式がある。
【0021】
【数1】

【0022】
すなわち、JIS K6767:1999に基づいて測定される常温における引張伸度a(%)が、見かけ密度b(kg/m)、ゲル分率c(%)との上記関係式を満たすことが成型性の指標となり、この関係式を満たさない場合、特に低圧射出成型などを行った際に、角Rが高剪断を受け、破れが生じやすくなるので好ましくない。
【0023】
また、本発明では、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)と、該ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との比率に関してより好ましい関係を見出した。すなわち、本発明の発泡体を形成するために用いるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートは、前述したような範囲の中でも特に0.4〜1.8g/10minの範囲であることが好ましい。0.4g/10min以上とすることで、シート化する際の剪断による熱分解型発泡剤の分解、さらには外観上の問題を防ぎ、1.8g/10min以下とすることで、耐熱性を高く、且つ引張伸度も高くすることができる。そして、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートが上記範囲内の場合、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の重量比は1:0.5〜1:1.5であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(A)に対するポリプロピレン系樹脂(B)の比率を0.5以上とすることで、混練時に高剪断がかかって熱分解型発泡剤の分解が起こること、そして、それに伴って表面状態が悪くなることを防ぐことができる。一方、ポリプロピレン系樹脂(A)に対するポリプロピレン系樹脂(B)の比率を1.5以下とすることで、発泡体の成型耐熱性をさらに高めることができる。
【0024】
本発明においては、さらに、難燃剤として作用する臭素含有化合物(C)を含有する。本発明で用いる臭素含有化合物(C)とは、例えば、ヘキサブロモシクロドデカンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素の臭素化物、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの芳香族化合物の臭素化物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、テトラブロモフタレートジオール、テトラブロモフタレートエステル、テトラブロモフタレートジソジウム、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、ペンタブロモフェノール、ブロモフェノキシエタノール、臭素化フェノール(ノボラック型)、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、ビニルブロマイド、トリブロモフェノール、ジブロモフェノール、ジブロモメタクレゾール、ジブロモネオペンチルグリコール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化アクリル系樹脂などが挙げられる。これら臭素含有化合物のうち、エチレンビスペンタブロモジフェニルもしくはエチレンビステトラブロモフタルイミドが難燃性と成型性の両立において好ましい。これらの臭素含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
これら臭素含有化合物は三酸化アンチモンとの組み合わせにより、少量の添加量で高い難燃性能を示す。上述したように発泡体が難燃剤を含有する場合、成型性が悪化しやすく、難燃性と成型性の両立が難しい。そのため、難燃剤添加量の極小化が必要である。そこで、本発明においては、難燃剤である臭素含有化合物を三酸化アンチモンとともに含有させることで、難燃性と成型性とをバランスよく両立する。
【0026】
これら臭素含有化合物と三酸化アンチモンの添加量は、少なすぎると難燃性を発現できず、多すぎると成型性が低下する。難燃性、成型性の両立のためには、樹脂組成物100重量%に対して、臭素含有化合物(C)4〜12重量%および三酸化アンチモン1〜3重量%が必要である。
【0027】
また、燃焼時のドリップ性を改善するため、ポリテトラフルオロエチレンを臭素含有化合物などと共に併用しても良い。ポリテトラフルオロエチレンとしては特に制限はなく、公知のものを使用できる。
【0028】
上記のような本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、上述した各成分に熱分解型発泡剤や架橋助剤を配合して得られたポリオレフィン系樹脂発泡組成物を所定形状に賦型し、その後架橋・発泡して得ることができる。
【0029】
熱分解型発泡剤としては、上記樹脂組成物の溶融温度よりも高い分解温度を有するものであればよく、好ましくは、アゾジカルボンアミドがあり、更に、アゾジカルボンアミドと同等もしくはそれより高い分解温度を有するヒドラゾシカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム塩、ジニトロソペンタエチレンテトラミン、ニトロソグアニジン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジンシンメトリックトリアジン、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、バリウムアゾジカルバキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド等が用いられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分の合計量100重量%に対して、一般に2〜40重量%程度であり、所望の発泡倍率に応じて設定される。
【0030】
架橋助剤として多官能モノマーを使用する。多官能モノマーとしては、例えばジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジンおよびこれらの核置換化合物や近縁同族体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸系化合物、ジビニルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ビスアクリロイルオキシエチルテレフタレート等の脂肪族および芳香族2価カルボン酸のビニルエステル、アリルエステル、アクリロイルオキシアルキルエステル、メタクリロイルオキシアルキルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジビニルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル等の脂肪族および芳香族2価アルコールのビニルエーテルやアリルエーテル、N−フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物、フタル酸ジプロパギル、マレイン酸ジプロパギル等の2個の三重結合を有する化合物などのモノマーを使用することができる。さらに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートと1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとトリアリルシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等も使用することができる。上記架橋助剤は単独で使用しても良いし、2種類以上混合しても良い。架橋助剤の配合量は、樹脂成分の合計量100 重量%に対して、0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜15重量%であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0031】
又、架橋助剤と有機過酸化物を組み合わせて架橋することもできる。有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が用いられる。有機過酸化物の配合量は、樹脂成分の合計量100重量%に対して、0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0032】
なお、上記ポリオレフィン系樹脂発泡組成物を架橋させる際には、上記の所謂化学架橋方法と電離性放射線による架橋方法を併用してもよい。
【0033】
また、ポリオレフィン系樹脂発泡組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、発泡剤の分解促進剤、気泡核調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤、無機充填剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0034】
上記のようなポリオレフィン系樹脂組成物は、所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。
【0035】
次いで、得られたシートに電離性放射線を所定線量照射して、オレフィン系樹脂を架橋させ、この架橋シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる。電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。
【0036】
そして、この発泡性シートに電離性放射線の照射を行い、この発泡性シートを構成する樹脂を架橋させる。電離性放射線としては、電子線、X線、β線、γ線等が使用される。
【0037】
照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。
【0038】
樹脂が架橋された発泡性シートは、例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバス、ソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上で且つ樹脂の融点以上の温度、例えば190〜290℃に加熱し、発泡剤の分解ガスによって樹脂を発泡させ、こうして、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る。
【0039】
こうして得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、示差走査熱量計による吸熱ピークが155℃以上であることが好ましい。特に発泡体が低圧射出成型に供せられる場合、溶融樹脂を射出するゲート部分において発泡体が溶融したり(ゲートマーク)、縦壁部などで高剪断がかかることによって発泡体が溶融したりして(アバタ)、外観欠点を生じることがあるが、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の吸熱ピークが155℃以上である場合、この発生量を著しく抑えることができる。
【0040】
また、耐熱性の評価においては、高温時の引張伸度の特性を一つの指標とすることができる。本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体においては、150℃下での引張伸度と170℃下での引張伸度とが以下の関係式を満足するものであることが好ましい。
【0041】
【数2】

【0042】
この関係式を満足するということは、加熱に対する劣化が進行しにくく、高温成型時にも不具合を生じにくいことを意味する。なお、引張伸度はJIS K6767:1999に基づいて測定される。
【0043】
成型性の評価としては、成型絞り比を指標とすることができる。この成型絞り比は発泡体が供される成型工法により、任意の値となるように選択すればよい。例えば、低圧射出成型工法に供される場合の値は0.4以上が好ましく、より好ましくは0.5以上である。また真空成型工法に供される場合は0.6以上が好ましく、より好ましくは0.7以上である。プレ真空成型した後に低圧射出成型を行う成型工法に供される場合などは0.5以上が好ましく、より好ましくは0.6以上である。なお、成型絞り比は、直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において、発泡体を加熱し、真空成型機を用いてストレート成型したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界でのH/Dの値のことである。
【0044】
上記のような本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、より成型時の加熱に対して優れた耐熱性を示すようにするため、他の素材と共に積層体とすることも好ましい。
【0045】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と共に積層させるものとしては、天然、人造の繊維を用いた布帛状物、ポリ塩化ビニル樹脂からなるシート、サーモプラスチックオレフィン(TPO)からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、レザー等の表皮材、熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布、ポリオレフィン系樹脂無架橋発泡シート、例えばポリウレタンなどを用いた連続気泡発泡体、ポリエステルフィルムやポリアクリルフィルム等に代表されるフィルム類、ダンボールプラスチック、発泡紙、銅・銀・ニッケルなどに代表される金属層などの公知のものから少なくとも一種類を選択すればよい。それらは複数枚積層してもよいし、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表裏少なくとも一方に積層するだけでもよい。もちろん、上記他の素材二種類以上を複合して用い、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と積層してもよい。
【0046】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と上述の他素材とは、例えば、熱可塑性樹脂を溶融させる押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、表皮材等と必要ならば架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体も加熱して張り合わせる熱ラミネート法(融着ともいう)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法等によって張り合わせることが好ましい。
【0047】
そして、上述した本発明にかかる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体やその積層体を、公知の方法で所望する形状に成型することも好ましい。成型方法としては、例えば、高圧射出成型、低圧射出成型、雄引き真空成型、雌引き真空成型、圧縮成型等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、自動車内装材として用いられる場合などには、上記積層材に加えて骨材となる熱可塑性樹脂をも積層することが好ましい。骨材用の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、プロピレンとα−オレフィンとがランダム、ランダム/ブロック、ブロック状に共重合されたポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレンとα−オレフィンとの共重合樹脂、エチレンと酢酸ビニルやアクリル酸エステルとの共重合樹脂や、これらが任意に混合されたポリオレフィン系樹脂、さらにはABS樹脂、ポリスチレン樹脂などが適用できる。ただし、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのように融点が相当高い樹脂を骨材として用いる場合は、骨材層の溶融温度が高くなり、加圧成型時に架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡が破壊されるという不都合を生じることもあるため、成型方法などを加味し、適宜選択する必要がある。
【0049】
上記のような本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体やその積層体、成型体は、成型時の加工、例えば低圧射出成型の加熱に対して優れた耐熱性を示すことで不良率を低下させるなどの効果が期待されるうえに、高い難燃性を示すものであるので、特に自動車内装材用途として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下の方法によって、物性を評価した。
【0051】
(メルトフローレートの測定方法)
JISK7210「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト (MFR) 及びメルトボリュームフローレイト (MVR) の試験方法」:1999に準じた。上記規格の附属書B(参考)「熱可塑性プラスチック材料の規格と指定とその試験条件」に基づきポリプロピレン系樹脂は230℃、荷重2.16kgf(21.2N)、ポリエチレン系樹脂は温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N)の条件で行った。株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01を使用し、手動切り取り法を採用し、ダイから10分間にでてきた樹脂の質量を、本発明におけるメルトフローレートとした。
【0052】
(示差走査熱量分析方法)
本発明における示差走査熱量分析は、以下の方法で行った。10mgのポリオレフィン系樹脂もしくは架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡をロールなどで潰したものを、白金パンにいれ、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製RDC220−ロボットDSC)にて測定した。測定条件は、サンプルを一度溶融させた後、10℃/分の速度で−50℃まで冷却させ、それから5℃/分の速度で昇温して測定した。
【0053】
(ゲル分率の測定方法)
ゲル分率とは算出した値のことである。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を50mg精密に秤量し、120℃のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥した。次いで、この不溶解分の質量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出した。
【0054】
【数3】

【0055】
(見かけ密度の測定方法)
JIS K6767「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」:1999に基づいて測定した。具体的には、発泡体を15cm以上になるようなサンプルサイズに打ち抜き、厚み、重量を測定し、以下の式により見かけ密度を算出した。
【0056】
【数4】

【0057】
(常温における引張伸度の測定方法)
JIS K6767「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」:1999に基づいて測定した。具体的には、発泡体をダンベル状1号形に打ち抜き、株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機UCT-500によって荷重を負荷しながら、破断が起こったときの標線間の長さと元の標線間の長さとの差を元の標線間の長さで割り返し、百分率で表したものを算出し、これを常温における引張伸度とした。
【0058】
(常温における引張伸度の評価方法)
引張伸度の測定値が以下の関係式を満足するか否かを評価基準とした。
【0059】
【数5】

【0060】
ここで、aは常温における引張伸度(%)、bは見かけ密度(kg/m)、cはゲル分率(%)である。
【0061】
(高温時における引張伸度の測定方法)
上記「常温における引張伸度の測定方法」の測定方法に準じる。なお、株式会社オリエンテック製高低温度恒温槽TLF2-U2-J-Fを所定の温度に合わせて、テンシロン万能試験機の平行締付型ジョウ部分(測定部分)を囲み加熱しておいた。また、サンプルをセットし、6分間予熱した後測定した。
【0062】
(耐熱性の評価方法)
上記「高温時における引張伸度の測定方法」で測定した値が以下の関係式を満足するか否かにより評価した。
【0063】
【数6】

【0064】
耐熱性○:上記関係式を満たす場合
耐熱性×:上記関係式を満たさない場合
耐熱性−:評価していない
(表面性の評価方法)
表面性の評価は、株式会社小坂研究所製表面粗さ測定器SURFCORDER SE−2300を用いて表面粗さを測定し、JIS B0601:2001で規定されている中心線平均粗さRa75の測定値について以下の判定基準により評価した。
表面性○:Ra75値が25μm未満
表面性△:Ra75値が25μm以上30未満
表面性×:Ra75値が30μm以上
(成型性の評価方法)
真空成型を行い、それぞれ外観及び成型絞り比を評価した。外観は目視で膨れや皺が生じないこと、成型絞り比は直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において、発泡体を加熱し、真空成型機を用いてストレート成型したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界でのH/Dの値のことである。なお、ここにおいて直径Dは50mmであった。発泡体の表面温度が160、180、200℃の3点について成型絞り比を測定し、その値について以下の基準で判断した。
成型性○:2点以上の温度で成型絞り比が0.50以上かつ外観良好
成型性△:いずれか1点の温度で成型絞り比が0.50以上かつ外観良好
成型性×:成型絞り比0.50以上となる温度がないあるいは外観不良
成型性−:評価していない
(難燃性の評価方法)
燃焼性は、翼状型バーナを用いたASTM D1692−76の燃焼試験方法により評価した。
【0065】
すなわち、発泡体を縦6インチ(15.24cm)×横2インチ(5.08cm)のサイズに裁断し、縦方向の端部から1.0インチ(2.54cm)の箇所に標線を引いた試験片を10個準備した。発泡体に異方性が有る場合、発泡体の縦方向、横方向それぞれが試験片の長手方向になる試験片をそれぞれ10個づつ準備した。
【0066】
しかる後、一方の端部を長さ1/2インチ直角に折り曲げた17/2インチ(43.18/5.08cm)の金網に試験片を載せ、翼状型バーナにてプロパンガスを燃焼せしめ、炎の長さを38mmに調整した炎に試験片の端部を接触せしめた。試験片が燃焼(炎が伝播)し、標線に至るまでの時間(t分)を測定し、次式に従い水平方向燃焼速度を計算した。
【0067】
【数7】

【0068】
ここで、標線まで炎が伝播しない場合、自己消火性を有するとした。
【0069】
これを10個の試験片について実施し、10個の平均をとって、水平方向燃焼速度とした。
難燃性○:自己消化性を有する、もしくは水平方向燃焼速度が100mm/min未満
難燃性×:自己消化性を有さず、かつ水平方向燃焼速度が100mm/min以上
難燃性−:評価していない
(総合評価)
上記、「耐熱性の評価方法」、「表面性の評価方法」、「成型性の評価方法」、「難燃性の評価方法」における評価結果から以下の基準で総合評価を行った。
総合評価○:すべての評価が○の場合。
総合評価△:○評価が3つ以下で×評価がない場合。
総合評価×:×評価が1つ以上の場合。
【0070】
<実施例1>
ポリプロピレン系樹脂(A)(エチレン−プロピレンブロック共重合体:MFR=1.3g/10min、DSC吸熱ピーク温度164℃)40重量%と、ポリプロピレン系樹脂(B)(エチレン−プロピレンランダム共重合体:MFR=0.8g/10min、DSC吸熱ピーク温度148℃)40重量%と、ポリエチレン系樹脂(線状低密度ポリエチレン:MFR=12g/10min)20重量%と、これら樹脂の総重量に対して、臭素含有化合物(C)(エチレンビスペンタブロモジフェニル)4重量%、三酸化アンチモン1重量%、発泡剤としてのアゾジカルボンアミド8重量%、架橋助剤としてのジビニルベンゼン5重量%とをヘンシェルミキサーで混合し得られた混合物(ポリオレフィン系樹脂発泡組成物)を、ベント付き60mmφ一軸押出機で1mmの厚さにシート成形した。
【0071】
こうして得られたシートを電子線照射器を用いて100kGyの電子線を照射し架橋させた。これを240℃に加熱したソルトバスに浸積させ、見かけ密度68kg/m、ゲル分率56%の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。
【0072】
常温における引張伸度を測定したところ195%であった。また、得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をミキシングロールで気泡を潰し、示差走査熱量計により吸熱ピーク温度を確認したところ157℃であった。この発泡体の評価結果は表1に示すとおりであり、成型性、表面性、耐熱性、難燃性ともに良好であった。
【0073】
<実施例2〜12>
実施例1と同様の方法で表1に示す組成にて発泡体を得た。発泡体の物性、成型性等評価結果は表1に示すとおりであり、いずれも良好な結果であった。
【0074】
<比較例1>
樹脂の総重量に対して、臭素含有化合物(C)(エチレンビスペンタブロモジフェニル)2重量%、三酸化アンチモン0.5重量%とする以外は実施例1と同様の方法で架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。見かけ密度は68kg/m、ゲル分率53%、常温における引張伸度は200%であった。また、得られた難燃性架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をミキシングロールで気泡を潰し、示差走査熱量計により吸熱ピーク温度を確認したところ157℃であった。この発泡体の評価結果は表2に示すとおりであり、成型性、表面性、耐熱性は良好であったが、難燃性が不十分であった。
【0075】
<比較例2〜12>
比較例1と同様の方法で表2に示す組成にて発泡体を得た。発泡体の物性、成型性等評価結果は表2に示すとおりであり、すべての評価項目で良好となる発泡体は得られなかった。なお、比較例8,13については発泡体の表面性が悪いため、成型性、耐熱性、難燃性を評価しなかった。
【0076】
<比較例13>
比較例1と同様の方法で表2に示す組成にてベント付き60mmφ一軸押出機でシート成型を行おうと試みたが、発泡剤の分解が起こり、面状態が良くないため照射・発泡を中止した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計による吸熱ピークの少なくとも1つが160℃以上のポリプロピレン系樹脂(A)を20〜50重量%と、示差走査熱量計による吸熱ピークが160℃未満のポリプロピレン系樹脂(B)を30〜40重量%と、ポリエチレン系樹脂を20〜40重量%含み、これら樹脂100重量%に対し、臭素含有化合物(C)を4〜12重量%および三酸化アンチモンを1〜3重量%含有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレン、およびエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)としてメルトフローレートが0.4〜1.8g/10minのものを用い、且つ前記ポリプロピレン系樹脂(A)と前記ポリプロピレン系樹脂(B)との重量比を1:0.5〜1:1.5として得た、請求項1または2記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記臭素含有化合物(C)が、エチレンビスペンタブロモジフェニルおよびエチレンビステトラブロモフタルイミドの少なくとも一方を含む、請求項1〜3いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と他素材との積層体。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体もしくは請求項5記載の積層体を含む成型体。
【請求項7】
請求項1〜4いずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、または請求項5記載の積層体もしくは請求項6記載の成型体を含む自動車内装材。

【公開番号】特開2007−284486(P2007−284486A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110508(P2006−110508)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】