説明

植物材料由来のACE阻害ペプチド

種子の粗びき粉または細粉等の植物材料由来の加水分解物を含むACE阻害ペプチドを調製するための改善プロセスを提供する。ある態様において、種子の粗びき粉または細粉は、消化の前に、有機溶媒により抽出される。ACE阻害ペプチドであるVal-Ser-ValおよびPhe-Leuもまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特異的活性の高いACE阻害ペプチド組成物を植物供給源から得るための、改善されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
高血圧症すなわち血圧が高いことは、一般的な健康問題であり、北米では成人4人に1人が高血圧症である。高血圧症は無症状であるため、たとえ高血圧症が認識される前であっても、不可逆的な心血管合併症が生じている可能性がある。
【0003】
血圧の調節において重要な生理学的役割を有する酵素の一つは、アンジオテンシン変換酵素(ACE: ペプチジルジペプチドヒドロラーゼ;EC 3,4,15,1)である。ACEは、不活性なデカペプチドアンジオテンシンIを血管収縮性の塩保持性(salt-retaining)ペプチドアンジオテンシンIIへと変換する能力(Skeggsら、1956)により、レニン-アンジオテンシン系を、および、血管拡張性のナトリウム排泄増加ノナペプチドであるブラジキニンを不活性化する能力(Yangら、1970)により、カリクレイン-キニン系を両方介した、血圧上昇の両方に関連する。
【0004】
従って、ACE活性の阻害により、血圧を低下させる手段が提供される。
【0005】
第一の強力かつ特異的なACE活性阻害因子(inhibitor)は、Ferreira(1965)により発見され、ブラジルアローヘッドクサリヘビ(Brazilian arrowhead viper)のボスロプス・ジャララカ(Bothrops jararaca)毒の抽出物が、平滑筋収縮を強化したこと、高血圧症を引き起こしたこと、および、ブラジキニンにより誘導される毛細血管透過性を増大させたことが示された。いわゆる「ブラジキニン増強因子(bradykinin potentiating factor;BPF)」が、その後、いくつかのヘビ毒から単離され、強力なACE阻害因子である短いペプチドであることが見出された。
【0006】
また、ある種の合成ACE阻害因子も製造され市販されており、その第一番目はカプトプリル(D-2-メチル-3-メルカプトプロパノイル-L-プロリン)である。この群の多くの薬物が、高い血圧を低下させるために極めて貴重であることが見出されているが、その持続的使用には、望ましくない副作用を伴う可能性がある。従って、高血圧症を制御するための新たな治療剤の必要性が依然として存在する。
【0007】
魚(例えば欧州特許第1094071号)、動物乳タンパク質(例えば国際公開公報第99/65326号)、及び植物(例えばKawakamiら、(1995);Yanoら、(1996);Pedrocheら、(2002);Wuら、(2002))を含む様々な供給源由来のタンパク質のタンパク質分解性消化(proteolytic digestion)によりACE阻害ペプチドが得られることが、以前から知られている。植物タンパク質からACE阻害ペプチドを得るために記載された方法のほとんどが、加水分解前にタンパク質予備精製を必要とするが、これにより本プロセスの費用及び複雑性が増加し、従って製品の値段が上昇する。
【0008】
植物材料からACE阻害組成物を調製するための改善されたプロセスの必要性、及び、特異的活性の高いACE阻害ペプチドのさらなる供給源の必要性が、依然として存在する。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の一つの態様によると、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチド含有加水分解物を調製するためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセスが提供される:
実質的に油非含有の種子の粗びき粉(seed meal)または細粉(flour)と有機溶媒を接触させる工程;
粗びき粉または細粉を溶媒から分離する工程;および
粗びき粉または細粉を少なくとも一つのタンパク質分解酵素で処理し、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を産生する工程。
【0010】
さらなる態様によると、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を亜麻またはアブラナ(canola)から調製するためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセスが提供される:
実質的に油非含有の亜麻種子の粗びき粉または実質的に油非含有のアブラナ種子の粗びき粉を少なくとも一つのタンパク質分解酵素で処理し、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を産生する工程。
【0011】
さらなる態様によると、上述のプロセスにより調製されたACE阻害ペプチド含有加水分解物が提供される。
【0012】
さらなる態様によると、亜麻粗びき粉またはアブラナ粗びき粉の部分的タンパク質分解性消化により産生されたACE阻害ペプチド含有加水分解物が提供される。
【0013】
さらなる態様によると、本発明による加水分解物の乾燥により産生された粉末が提供される。
【0014】
さらなる態様によると、本発明による加水分解物を含む、食用食物製品(edible food product)が提供される。
【0015】
さらなる態様によると、Val-Ser-ValおよびPhe-Leuのうち少なくとも一つのペプチド、ならびに薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物が提供される。
【0016】
さらなる態様によると、式Val-Ser-Valのペプチドが提供される。
【0017】
さらなる態様によると、式Phe-Leuのペプチドが提供される。
【0018】
さらなる態様によると、本発明による加水分解物または粉末または食用製品または組成物の有効量を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるACE活性を阻害する方法が提供される。
【0019】
ACE活性のこのような阻害を用いて、哺乳動物において上昇した(elevated)血圧の低下をもたらすことができる。従って本発明は、ヒト被験者を含む哺乳動物において上昇した血圧を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0020】
本発明は、ヒト被験者を含む哺乳動物において上昇した血圧を治療するための薬物を調製するための本発明による加水分解物または粉末または食用製品または組成物の使用をさらに提供する。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、高度に濃縮されたまたは精製されたタンパク質画分を植物材料から始めに単離する必要なく、粗びき粉または細粉などの植物材料からACE阻害組成物を調製するための、改善されたプロセス及び新規供給源を提供する。
【0022】
本明細書において使用される「粗びき粉」とは、粉砕された状態の、油抽出後の脂肪種子の非油(non-oil)部分を意味し、「細粉」とは、穀類またはマメ科植物などの非油産生植物の粉砕された種子を意味する。本発明のプロセスには、例えば、脂肪種子の剥離または排出(expelling)などの従来法および除脂(defatting)及び得られた粗びき粉の溶媒抽出により産生される脂肪種子の粗びき粉を適用してもよく、かつ、穀類、偽穀類(pseudocereal)、およびマメ科植物などの非油種子から得られた細粉を適用してもよい。
【0023】
本明細書において使用される「加水分解物」とは、種子の粗びき粉または細粉のタンパク質分解性消化または部分的タンパク質分解性消化の後に得られる消化混合物を意味する。
【0024】
本発明のある態様によると、本発明者らは、ACE阻害ペプチドを産生するためのタンパク質分解性消化の前に、種子の粗びき粉または細粉を有機溶媒で抽出することにより、ACE阻害活性が増大した加水分解物が提供されることを見出した。本発明者らは、植物材料を直接タンパク質分解性消化に供する場合に直面する、低い収率及び低いACE阻害活性という問題を、有機溶媒抽出段階を使用することにより克服することができる。表1により、被験植物材料のほとんどについて、タンパク質分解性消化の前の粗びき粉または細粉の有機溶媒抽出により、加水分解物のIC50及びタンパク質含量が増大したことが示された。
【0025】
処理対象となる植物材料は、亜麻、アブラナ/ナタネ、ダイズ、綿実、ヒマワリ、落花生、もしくはカラシなどの脂肪種子から、ダイズ、エンドウ、レンズマメ、マメ(bean)、もしくはヒヨコマメなどのマメ科植物種子から、小麦、カラス麦、大麦、もしくはライ麦などの穀類種子から、または、ソバなどの偽穀類種子から得られうる。
【0026】
アブラナ、亜麻、及びダイズなどの脂肪種子については、該種子を、工業用植物油業界において実践されるような、従来の除脂または、排出、溶媒抽出及び剥離を伴う排出、ならびに溶媒抽出などの油抽出法に供することにより、実質的に油非含有の種子の粗びき粉を得る。得られる材料は通常、1%未満の脂肪を含む。穀類及び偽穀類の穀物(grain)(例えば、小麦、カラス麦、ライ麦、ソバ)などの種子は、天然では実質的に油非含有であり、除脂を必要としない。
【0027】
粉砕された植物材料は、種子全体または除脂された粗びき粉を粗く粉砕し、その後スクリーニングして、大きさにより、粗い(10メッシュ〜20メッシュ)、中程度の(20メッシュ〜40メッシュ)、または細かい(40メッシュ〜80メッシュ)砂として分類された粒子を提供することにより得られる、砂(grit)の形状であってもよい。または、粉砕された植物材料は、産物の97%が100メッシュスクリーンを透過するような、非常に細かい粒子への粉砕により産生される細粉の形状であってもよい。タンパク質が一般的に少ない、皮、殻、およびふすまは、細粉の産生前に除去してもよい。
【0028】
粗びき粉または細粉の抽出に適した有機溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールなどの低級アルコール、またはアセトンもしくは酢酸エチルが含まれる。エタノールが好ましい。アルコールは単独で使用してもよく、または、少なくとも50%アルコールを含む水性混合液として使用してもよい。65%〜75%のエタノールが好ましい。
【0029】
約8:1〜約25:1の範囲内、好ましくは約10:1〜約20:1の範囲内の、液体:固体比で、有機溶媒を、種子の粗びき粉または細粉と混合してもよい。
【0030】
種子の粗びき粉または細粉は、有機溶媒と接触した状態で、約20℃〜その有機溶媒の沸点までの温度で約1時間〜最大約24時間、維持される。ある態様において、溶媒処理は、室温(25℃)で24時間、またはより高温でより短時間(例えば50℃で3時間)である。接触期間中、粗びき粉/溶媒のスラリーは、撹拌してもよく、またはさもなくばかき混ぜ(agitate)てもよい。
【0031】
処理された粗びき粉または細粉を次に、遠心分離、スクリーニング、濾過、またはデカンテーションなどの任意の適切な従来法により、液体溶媒層から分離し、かつ、残存有機溶媒の量を減少させるために水で洗浄してもよい。その結果、材料は、ACE阻害ペプチドを生じるためのタンパク質分解性消化をいつでも行える状態である。または、熱風乾燥により残存有機溶媒を除去し、将来的な再湿潤(rewetting)及びタンパク質分解性消化のために保存可能な粗びき粉または細粉を産生することができる。
【0032】
ACE阻害ペプチドを生じるための種子の粗びき粉または細粉のタンパク質分解性消化は一般に、当業者に公知でありかつ本明細書にさらに記載された方法により行われうる。適切なタンパク質分解酵素には、酸性の、中性の、及びアルカリ性のプロテアーゼ、ならびに、セリンエンドペプチダーゼおよびメタロエンドペプチダーゼを含むペプチダーゼ、またはそれらの混合物が含まれる。表2に列挙されたものなど、多くの市販のタンパク質分解酵素を使用することができる。当業者は、使用する特定のタンパク質分解酵素に対する適切な消化条件を、容易に決定することができる。
【0033】
実施例及び図1に記載されたような特定の植物材料に対する加水分解物におけるACE阻害性のIC50を最も低くするのは、どのタンパク質分解酵素であるかを決定することもまた、当業者の技術範囲である。例えば、亜麻種子の粗びき粉及びダイズの粗びき粉の消化に使用する場合には、サーモリシン(thermolysin)が、被験酵素の阻害活性を最も高くすることが見出されている。加水分解物におけるACE阻害性のIC50が最も低くなる期間で、タンパク質分解を行うことができる。一般に、約3時間の消化期間により、阻害活性は最大になる。
【0034】
食品または栄養補助食品(food supplement)などの食用製品として加水分解物を使用する予定である場合、植物タンパク質の食品価値をある程度保持するために、ACE阻害活性が最大になる前にタンパク質分解性消化を停止することが望ましい可能性がある。一部の植物材料を用いたタンパク質分解性消化は、苦味のある消化産物の産生を伴う可能性がある。そのような場合、ACE阻害活性が最大になる前にタンパク質分解性消化を停止して苦味を制御することもまた、望ましい。
【0035】
ある態様において、本発明の加水分解物は、IC50が200μg粉末/ml未満のACE阻害性を有する。さらなる態様において、加水分解物は、100未満の、または60未満の、または50未満のIC50を有する。
【0036】
典型的には、タンパク質分解酵素は、約0.25%から約8.0% w/w(酵素:タンパク質含量)の濃度で使用される。
【0037】
さらなる態様において、タンパク質分解酵素は、約0.5%から約4.0%の濃度で使用される。
【0038】
例えば、酵素の熱不活性化または、酵素活性のpH範囲から離れるような消化混合物のpH調整などの、任意の適切な方法により、タンパク質分解性消化は終結される。このような方法は当業者に公知である。残存する粗びき粉または細粉を除去するために、得られる加水分解物を濾過する、または例えばデカンター遠心機中で、遠心分離する。
【0039】
本発明のさらなる態様によると、さらに精製することなく特異的活性の高いACE阻害ペプチド含有加水分解物を作製するために、亜麻またはアブラナの粗びき粉をタンパク質分解酵素で消化することにより、亜麻またはアブラナの粗びき粉からACE阻害ペプチド含有加水分解物を調製するプロセスが提供される。亜麻及びアブラナは、今まで、ACE阻害ペプチドの供給源として示されたことはない。上述のように、タンパク質分解酵素が選択され、消化が行われる。タンパク質分解性消化の前に、亜麻またはアブラナの粗びき粉を任意で、上述のように、有機溶媒を用いた抽出に供してもよい。
【0040】
ACE阻害ペプチドを得るための種子の粗びき粉または細粉の消化の後、および残存する粗びき粉または細粉からの加水分解物の分離の後、加水分解物を食用製品として使用することができ、または、噴霧乾燥して、食用製品としてもしくは薬物としての使用に適した水溶性粉末を生じてもよい。例えば、Clemente, A (2000) "Enzymatic Hydrolysates in Human Nutrition", in Trends in Food Science & Technology v. 11, pp.254-262に記載されているように、食用製品としてのタンパク質及び加水分解タンパク質調製物の使用ならびに食品製品へのそれらの組み込み、または、栄養補助食品としての使用は、食品加工業界の当業者には公知である。
【0041】
ある態様において、加水分解物は、瞬間殺菌または精密濾過などの細菌混入を制御するための標準的手法以外のさらなる加工をすることなく、食用産物として使用される。
【0042】
液状または粉末状の本発明の加水分解物を用いて、清涼飲料、炭酸飲料、レディーミックス(ready to mix)飲料、乳及び乳飲料ならびにそれらの派生物などの飲料を補完することができ、かつ、ソース、薬味、サラダドレッシング、果物ジュース、シロップ、デザート(例えば、プリン、ゼラチン、アイシングやフィリング、焼き菓子、及び、アイスクリームやシャーベットなどの冷凍デザート)、軟性冷凍製品(例えば、冷凍ソフトクリーム、冷凍ソフトアイスクリーム及びヨーグルト、乳製または非乳製ホイップトッピングなどの軟性冷凍トッピング)、油及び乳化製品(例えば、ショートニング、マーガリン、マヨネーズ、バター、及びサラダドレッシング)、キャンディー及び棒菓子、穀物食、ならびにチューインガムタブレットなどの食品を補完することができる。
【0043】
極度に高い血圧とは生命を危うくする状態であるということは、長い間認識されている。さらに最近になって、正常より高い血圧においては、わずかな増加でさえ有害な効果を持つことが示唆されている。
【0044】
治療的介入を必要とする高血圧症の現在の臨床的定義は、140mmHg以上の収縮期血圧(30歳を上回る成人集団の約20%において起こる)である。しかし、数人の疫学者により現在、第二のまたは「予防モデルの」高血圧症が定義されており、これは、120mmHgを上回る収縮期血圧を、血圧低下および随伴する心血管疾患リスクの減少に人々が取りかかるべき時点として定義したものである。血圧が120mmHg〜140mmHgの範囲内の人々は一般に、自分が病気であるとは考えず、従って薬物療法を受ける可能性はほとんど無い。しかしこのカテゴリーにおいて、この緩やかに上昇する血圧を低下させる為に非薬物的選択肢を求める人々の割合は、増加している(Potential benefits of functional foods and nutraceuticals to reduce the Risk and Costs of Diseases in Canada. B.J.Holub. Report to AAFC 2002)。
【0045】
本発明の加水分解物および粉末により抗高血圧薬が提供され、これは、少しずつ血圧が上昇するこのような症例に理想的である可能性があり、かつ、食品と共にまたはその一部として摂取することが可能である。
【0046】
乳または乳清に由来するACE阻害産物について、今までヒトにおいて観察された血圧低下効果と比べて、IC50値が約40μg/ml〜60μg/mlである本発明の加水分解物は、一日あたり約2g〜約5gの初回用量でヒト被験者に与えることができる。いったん血圧低下効果が観察されたならば、必要に応じてこの用量を調整してもよい。当業者には理解されるように、より高いまたはより低いIC50値を有する加水分解物について、用量が調整されうる。
【0047】
加水分解物は、錠剤、カプセル剤、顆粒、粉末、シロップ剤、懸濁剤、または注射用溶液へと製剤化されてもよい。
【0048】
本明細書に記載された方法により作製される加水分解物は、市販の乳清加水分解物と同様のまたはそれを上回るACE阻害活性を有する。本明細書に記載のACE阻害性アッセイ法により分析したところ、市販の乳清製品であるBioZate(Davisco Foods International)は、IC50が137μg粉末/mlのACE阻害性を有していた。本明細書に示されるように、ACE阻害性のIC50値が乳清製品のIC50値よりも大幅に低く、従って阻害活性が高いタンパク質加水分解物が、数種類の植物材料から得られるが、これはその後の精製ストラテジーを全く必要としない。
【0049】
アブラナ粗びき粉のタンパク質分解性消化により得られた加水分解物を、実施例12に記載されたようにさらに精製し、精製された単一のACE阻害ペプチドをそれぞれ含む2種類の画分を得た。これらのペプチドは、今までACE阻害剤として記載されておらず、アミノ酸配列Val-Ser-ValおよびPhe-Leuを有する。
【0050】
食用製品としてまたは薬物として使用するために、本発明のACE阻害ペプチド含有加水分解物をさらに処理して、特異的活性がさらに増強された画分を、または、上述の精製された単一のペプチドを得ることができる。
【0051】
望ましいならば、本明細書中の実施例に記載の限外濾過により、本発明の加水分解物のACE阻害活性をさらに増強することができる。
【0052】
亜麻および大麦などの多糖含量の高い種子から、高粘度の加水分解物が得られることが分かっている。加水分解物の粘度が約10×10-3PaSを上回り(25℃における5%水溶液の粘度に基づく)かつずれ率が200(I/s)である場合、最大100,000MWCOの孔サイズを有する限外濾過膜を使用することができるが、最大で10000の孔サイズを有する膜が好ましい。
【0053】
アブラナから得られるものなどの、粘度の小さな加水分解物については、孔サイズが最大で10000MWCOの膜を用いることができ、孔サイズが最大で3000MWCOの膜が好ましい。
【0054】
実施例
本実施例は例示の目的で記載されるものであって、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0055】
本開示および実施例において言及されたが明確に説明されていない化学的方法、分子生物学的方法、タンパク質およびペプチドの生化学的方法、ならびに免疫学的方法は、科学文献において報告されたものであり、当業者には公知である。
【0056】
試薬
化学薬品および酵素は、以下のように入手した:アンジオテンシン変換酵素(ウサギ肺由来)およびHHL(Sigma Chemical Co.、St. Louis、MO、USA);HAおよびトリフルオロ酢酸(TFA)(Acros Organics、New Jersey、USA);HPLC級のアセトニトリル(Fisher Scientific、Nepean、ON、Canada)。その他全ての化学薬品は試薬級であり、これも同様にFisher Scientificから入手した。HPLC級の水は、Milli-Qシステム(Millipore、Bedford、MA、USA)により作製した。
【0057】
方法
ACE阻害活性の決定
CushmanおよびCheungの方法(1971)から改変された、新規の改善HPLC法(Wu, J.P. et al., (2002))により、インビトロ抗高血圧活性(ACE阻害活性)を測定した。この方法は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、馬尿酸(HA)のACE触媒性産生を分離しかつ定量化する。トリフルオロ酢酸(TFA)/アセトニトリルおよびTFA/水(溶媒として)の混合液を用いた勾配溶出により、Symmetry C18カラムによりヒプリル(hippuryl)-ヒスチジル-ロイシン(HHL)およびHAを分離した。標準的な分光光度法と比べて、新規HPLC法は、HAの酢酸エチル抽出の必要性を排除し、かつ、HPLCカラムへのACE反応混合物の直接注入を可能にする。
【0058】
HPLC分析のための試料調製
直接HPLC分析用に、2.17mM HHL(50μl)、2mUのACE(10μl)、および、様々な濃度のタンパク質加水分解物(10μl)(全て、300mM NaClを含む100mMホウ酸緩衝液(pH8.3)で調製した)から構成される反応総量を、70μlとした。対照試験用に、緩衝液10μlを使用した。HHLと、タンパク質加水分解物または対照緩衝液を混合し、37℃で10分間、1.5mlポリエチレン微量遠心管中で維持した。ACEも同様に37℃で10分間維持し、その後、2種類の溶液を混合して、Eppendorf Thermomixer R(Brinkmann Instruments, Inc.、New York、USA)中で450rpmで連続撹拌しながら、37℃でインキュベーションした。30分後、85μlの1N HClの添加により反応を終結させ、溶液を、逆相RP-HPLC(RP-HPLC)分析用に、0.45μmナイロンシリンジフィルターで濾過した。
【0059】
高速液体クロマトグラフィー
996 Photodiode Array Detectorを備えた2690 Separation Module(Waters Inc, MA. USA)上で、HPLCを行った。計器対照(instrument control)、データ収集、および分析は、Millennium Chromatography Manager Software version 2.15(Waters Inc, MA. USA)を用いて行った。試料(10μl)は、Symmetry C18カラム(3.0×150mm、5μm、Waters Inc.、MA、USA)上で解析し、HAおよびHHLは228nmにて検出した。カラムは、以下の2種類の溶媒系により溶出した(0.5ml.min-1):(A)0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)の水溶液および(B)0.05%TFAのアセトニトリル溶液;初めの10分間は5〜60%のアセトニトリル勾配で、60%アセトニトリルで2分間維持し、その後1分間、5%アセトニトリルに戻した。続いて、一定の流速0.5ml.min-1で、定組成溶出(isocratic elution)を4分間行った。外部標準であるHA試料を新たに調製し、タンパク質加水分解物の存在下(HA加水分解物)またはタンパク質加水分解物の非存在下(HA対照)におけるACEの作用により形成されたHAの濃度計算のために使用した。ブランクの試料は以下のように調製した:HClの添加によりまずACEを不活性化した後、インキュベーションした。
【0060】
ACE阻害活性の計算
阻害活性は、以下の等式に従って計算した:阻害活性(%)= [(HA加水分解物-HA対照) / (HA対照-HAブランク)] ×100。IC50値とは、上述のように測定されるACE活性の50%阻害をもたらす、反応混合物中の阻害物質の量と定義された。少なくとも5種類の異なる濃度の同一の加水分解物試料を用いて、阻害活性(%)に対するタンパク質加水分解物濃度(μg粉末/ml)のプロットを作成した。Microsoft Excel 97 SR-1ソフトウェア(Microsoft Corporation)を用いて回帰を行った。
【0061】
タンパク質の加水分解度(DH)の決定
アルカリ性または中性の条件下でpHをモニタリングし、塩基の添加により一定に維持した。添加した塩基の量を、設定した時間間隔で記録し、加水分解度(DH)の計算に使用した。DHは、一定のpHを維持するための塩基の体積およびモル濃度から計算され、Adler-Nissen(1986)の式に従って、単位重量あたりの結合の総数に対する壊れたペプチド結合の数(h)の割合(%)として表される。
【0062】
酸分解(acid hydrolysis)条件下では、Adler-Nissen J.(1979)の方法によって加水分解度(DH)を決定する。
【0063】
加水分解試料調製
加水分解反応混合物の試料を様々な時間間隔で取り出し、迅速に試験管に移した。各試料から、2.0mlのアリコートを10mlの1%NaDodSO4を含む試験管それぞれ2本に迅速にピペットで移し、試験管を少なくとも15分間振とうしながら水浴中に浸けることによって75℃で維持して、タンパク質加水分解物を分散させた。
【0064】
各試験管の内容物を、50ml容量フラスコに定量的に移し、1%NaDodSO4で希釈して容積とした。ロイシンアミノ同等物として表される遊離アミノ基含量を、TNBS反応によりアッセイした。
【0065】
TNBS反応
0.25mlの調製試料、またはブランク(1.0%SDS)、または標準液を、2.0mlのリン酸緩衝液(pH8.2)と混合した。2mlの0.1%TNBS溶液を加えて、試験管を振とうし、50℃の湯浴に60分おき、アルミホイルで覆った。4.00mlの0.1N HClを加えて反応を終結させ、30分後に340nmにおいて水に対する吸光度を読み取った。
【0066】
DHは、以下の、Beakら(1995)の改変法を用いて計算された:
DH = (Lt-L0)/(Lmax-L0)×100
式中、Ltは、時間tにおいて放出されたαアミノ酸の量であり;L0は、元のアブラナ溶液中のαアミノ酸の量であり;かつ、Lmaxは、(100℃において24時間、6N HCl下で行われる)酸分解後の、アブラナ粗びき粉中のαアミノ酸の最大量である。
【0067】
実施例1. 脱脂アブラナ粗びき粉からのACE阻害ペプチド(ACEIP)の産生に関する酵素的スクリーニング
反応は、スターラー、温度計、およびpH電極を備えた反応容器中で、バッチで行った。40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、溶媒抽出エキスペラーケーキの商業用アブラナ粗びき粉(solvent extracted cake commercial canola meal)(Canbra Foods, Lethbridge, Alberta, Canada)(31.16g)(タンパク質含量:40.1%)を、磁気スターラーを用いて蒸留水と十分に混合し、250mlの5%タンパク質スラリーを形成した。評価されたタンパク質分解酵素を、そのpHおよび温度の最適条件と共に、表2に列挙した。スラリーのpHを、被験酵素に適したpHおよび温度に調整した。酵素(4%、スラリーのタンパク質含量に基づいたw/w)を添加し、反応を開始させた。反応物のpHは、0.5N NaOHまたは1N HClのいずれかの添加により、一定値に維持された。加水分解度(DH)の計算のために、アルカリの体積を特定の間隔で記録した。
【0068】
試料を30分、60分、120分、180分、300分の間隔で採取し、沸騰水中で15分間加熱して酵素を不活性化させた。次に、スラリーのpHをpH4.0に調製して、非加水分解性タンパク質、大きなペプチド、および全固体を沈殿させた。10,000×gで25分間遠心分離することにより、沈殿物を除去した。次に、得られた透明な上清を凍結乾燥させ、さらなる分析まで-5℃で保存した。対照(タンパク質分解酵素非含有)試料も、同様の手順で作製した。その後、ACE阻害活性について、凍結乾燥上清を評価した。
【0069】
様々な酵素により消化されたアブラナタンパク質加水分解物のACE阻害活性(%)を、図1に示す。結果により、ACE阻害活性(%)は、0%から50.5%まで大きく変化し、平均値は28.4±13.47%であることが示された。アルカラーゼ(Alcalase)2.4により、アブラナ粗びき粉から、最も強力なACE阻害性加水分解物が産生された。有意なACE阻害活性を生じたその他の酵素には、プロテアーゼS、プロテアーゼM、アルカリプロテアーゼ、および中性プロテアーゼが含まれた。本試験には含まれなかったが、その後、サーモリシンが、アルカラーゼ2.4加水分解物に関して観察されたのと同様のACE阻害活性を有するペプチド画分を産生することが決定された。一般に、>35%のACE阻害を与える加水分解物を3時間の分解で生じるような任意のタンパク質分解酵素が好ましい。非加水分解性対照アブラナ粗びき粉試料についてはACE阻害活性が全く検出されず、これは、ACE阻害ペプチドの形成をもたらすタンパク質分解酵素の作用によるアブラナタンパク質の分解であることが示された。アルカラーゼ2.4およびプロテアーゼMのインキュベーション時間を24時間まで延長したところ、インキュベーション5時間を上回るACE阻害活性の有意な増加は見られなかった。
【0070】
加水分解度(DH)とインキュベーション時間の関係を、図2に示す。DHは、インキュベーション時間の増加に伴って増加した。アルカリプロテアーゼおよびアルカラーゼ2.4により、最も高いDH値が得られた。プロテアーゼMおよびプロテアーゼSの酵素処理により中程度のDH値が得られたが、これらの対応する加水分解物は、比較的高いACE阻害活性を示した。ペプシン、キモトリプシン、およびトリプシンのDH値は最も低く、これらの酵素はアブラナタンパク質を加水分解する能力をごく僅かしか有さないことが示された。DH値とACE阻害活性の間で正比例関係は見られなかった。
【0071】
異なる加水分解酵素を用いたアブラナ粗びき粉の連続処理について調べた。アルカラーゼ2.4による加水分解の3時間後、溶液のpHおよび温度を、ACE阻害活性の高い加水分解物を産生したその他4種の酵素のそれぞれに最適な状態に調整した。その後、二番目の酵素を加えて、溶液をさらに3時間インキュベーションした。2種類の異なる酵素による連続加水分解に起因するタンパク質加水分解物のうち、アルカラーゼ2.4およびアルカリプロテアーゼによる連続加水分解に由来する産物のみが、単一酵素産物の活性(アルカラーゼ2.4=68.6μg粉末/ml)またはその他全てのプロテアーゼ自体(55.7〜78.6μg粉末/ml)に対して、有意に改善されたIC50値を有していた(40.0μg粉末/ml)。
【0072】
実施例2. 亜麻仁粗びき粉の酵素的加水分解物の調製
実施例1同様、反応は、反応容器中で、バッチで行った。40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、溶媒抽出エキスペラーケーキの商業用亜麻仁粗びき粉(CanAmera Foods, Atton, Manitoba, Alberta)(50g)(タンパク質含量:33.9%)を、磁気スターラーを用いて蒸留水と十分に混合し、スラリー750mlを得た。アルカラーゼ2.4酵素加水分解用に、スラリーのpHを8.0に調整し、温度を60℃に調整した。酵素を、4%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)の割合で添加した。反応中、スラリーのpHを、0.5N NaOHの添加により一定値に維持した。6N HClを用いてpH4.0前後に調整することにより、酵素を不活性化させた。非加水分解性タンパク質、大きなペプチド、および不溶性物質を、6,000×gで25分間遠心分離することにより除去した。残渣を水250ml中に再懸濁し、同じ条件で遠心分離した。その後、得られた透明な上清を一つにして、凍結乾燥させ、さらなる分析まで-5℃で保存した。同時に、対照抽出物(酵素非含有)を同一条件下で調製した。加水分解物の収量は53.54%(重量)で、タンパク質含量は39.9%であり、ACE阻害性のIC50が64.3μg粉末/mlであった。
【0073】
その後、タンパク質分解酵素の範囲を、実施例1と同様に評価したが、亜麻を用いた結果も、アブラナ粗びき粉を用いた場合と同様であった。
【0074】
実施例3. 大豆細粉からのACE阻害ペプチドの産生
Nutrisoy 7B大豆細粉(87g、Archer Daniels Midland CO., Decatur, Illinois)を、磁気スターラーを用いて蒸留水と十分に混合し、スラリー600mlを得た。実施例2と同様、アルカラーゼ2.4による酵素的加水分解のために、スラリーをpH8.0および60℃に調整した。酵素を、4%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)の割合で添加した。反応中、0.5N NaOHの添加により、スラリーのpHを一定に維持した。6N HClを用いてpH4.0前後に調整することにより、酵素を不活性化させた。非加水分解性タンパク質および大きなペプチド、ならびにその他のポリマーを、6,000×gで25分間遠心分離することにより除去した。残渣を水300ml中に再懸濁し、同じ条件で遠心分離した。その後、得られた透明な上清を一つにして、凍結乾燥させ、さらなる分析まで-5℃で保存した。アルカラーゼ2.4により産生された加水分解物のACE阻害性のIC50は126.3μg粉末/mlであり、産物の収量は82.8% W/Wであった。
【0075】
実施例4. エンドウマメ細粉(pea flour)およびカラス麦細粉(oat flour)からのACE阻害ペプチドの産生
エンドウマメ細粉およびカラス麦細粉(Parrheim Foods, Saskatoon, Canada)を、実施例2と同一の条件下で、アルカラーゼ2.4と共にインキュベーションした。カラス麦細粉加水分解物のACE阻害活性(1200μg粉末/ml)は、全被験植物材料の中で最も小さかった。エンドウマメ細粉は、IC50が87.1μg粉末/mlのACE阻害活性を有していた。
【0076】
実施例5. 全粒ソバ粗びき粉(whole buckweat meal)からのACE阻害ペプチドの産生
地元の食品雑貨店からソバの実(buckweat)を購入し、粉砕して、40メッシュスクリーンを通過させた。粗びき粉試料を、実施例2と同様に、アルカラーゼ2.4Lまたはサーモリシンで加水分解した。サーモリシンにより産生されたタンパク質加水分解物は、ACE阻害性のIC50が78.6μg粉末/mlで産物収量は18%であったのに対し、アルカラーゼ2.4L処理された加水分解物は、ACE阻害性のIC50が174.3μg粉末/mlで産物収量は37.1%であった。
【0077】
実施例6. エタノール処理されたアブラナ粗びき粉のACE阻害加水分解物の産生
40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、実施例1記載の脱脂された市販のアブラナ粗びき粉(31.2g)を、室温で12時間または50℃で3時間撹拌しながら、1:10(重量/体積)の70%(v/v)エタノール:水溶液で抽出した。粗びき粉を回収し、蒸留水で洗浄して、アルカラーゼ2.4、プロテアーゼM、プロテアーゼS、または、アルカラーゼ2.4とアルカリプロテアーゼの連続処理による、1酵素あたり3時間以内の加水分解(合計6時間のインキュベーションと組み合わせた)に供した。エタノール処理されたアブラナ粗びき粉の酵素的消化物を、次に、遠心分離により分画して、加水分解ペプチドを含む上清、ならびに、非加水分解タンパク質および残存粗びき粉を含む沈殿物を産生した。これらの加水分解物は、40.0μg粉末/ml〜64.3μg粉末/mlのACE阻害活性(IC50)を示した(表3)。エタノール処理された粗びき粉から産生された加水分解物のタンパク質含量は、プロテアーゼSを用いたインキュベーションにより得られた加水分解物(タンパク質収量が僅か28.7%)を除き、41.7%から54.6%〜60.4%まで有意に増大した。
【0078】
実施例7. エタノール処理された、脱脂された亜麻仁粗びき粉の酵素的加水分解物の調製
40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、実施例2記載の脱脂された亜麻仁粗びき粉(50g)(タンパク質含量:33.9%)を50℃で3時間、70%(v/v)エタノール:水溶液(1/15. w/v)で抽出した。抽出された亜麻仁粗びき粉を、濾過によって回収し、磁気スターラーを用いて水中に分散させて750mlの水スラリー(water slurry)を形成させた。アルカラーゼ2.4を用いた酵素的加水分解物の産生を、実施例2に記載したのと同様に行った。エタノール処理された、脱脂された亜麻仁加水分解物の収量は、産物の重量ベースで52.0%であり、タンパク質含量は45.5%で、ACE阻害性のIC50は51.4μg粉末/mlであった。
【0079】
Westcott&Muir(米国特許第5,705,618号)に報告されたように、リグナン(SDG)の抽出後に回収された脱脂亜麻仁粗びき粉もまた、ACE阻害加水分解物の産生に使用した。この材料のアルカラーゼ2.4処理により作製されたタンパク質加水分解物は、同様のACE阻害活性(IC50=55.7μg粉末/ml)を有しており、これにより、価値のある光化学SDGを粗びき粉から回収することは、残存粗びき粉から生物学的活性を有するペプチドを産生する能力の妨げとならないことが示された。
【0080】
実施例8. アルカラーゼ2.4および/またはサーモリシン酵素を用いた、エタノール処理された大豆細粉からのACE阻害ペプチドの産生
Nutrisoy 7B大豆細粉(87g、Archer Daniels Midland CO., Decatur, Illinois)を、50℃で3時間、70%エタノールで処理した。濾過された残渣を、磁気スターラーを用いて蒸留水と十分に混合し、スラリー600mlを得た。表2に記載したように、アルカラーゼ2.4Lまたはサーモリシンによる消化のために、スラリーを適切なpHおよび温度に調整した。アルカラーゼ2.4については4%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)またはサーモリシンについては1%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)の割合で、酵素を添加した。反応中、必要に応じて、0.5N NaOHを用いてスラリーのpHを一定に維持した。6N HClを用いてpH4.0前後に調整することにより、酵素を不活性化させた。非加水分解性タンパク質および大きなペプチド、ならびにその他のポリマーを、6,000×gで25分間遠心分離することにより除去した。残渣を水300ml中に再懸濁し、同じ条件を用いて遠心分離した。その後、得られた透明な上清を一つにして、凍結乾燥させ、さらなる分析まで-5℃で保存した。サーモリシンにより産生された加水分解物は、ACE阻害性のIC50が42.9μg粉末/mlで産物の収量が64.7%であったが、一方で、アルカラーゼ2.4処理により、ACE阻害性のIC50が118.1μg粉末/mlの加水分解物が産生され、産物の収量は55.7%であった。
【0081】
実施例9. サーモリシンを用いた、亜麻仁からのACE阻害ペプチドの産生
40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、実施例2に記載された脱脂亜麻仁粗びき粉(50g)(タンパク質含量: 33.9%)を、磁気スターラーを用いて蒸留水と十分に混合し、スラリー750mlを得た。サーモリシン(39ユニット/mg固体)酵素用に、または、アルカラーゼ2.4を用いた3時間のインキュベーションおよびその後のサーモリシンを用いたさらに3時間のインキュベーション用に、スラリーのpHを、適切なpHおよび温度に調整した。アルカラーゼ2.4については4%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)またはサーモリシンについては1%(w/w、スラリーのタンパク含量に基づく)の割合で、酵素を添加した。反応開始後、必要に応じて0.5N NaOHを添加することにより、スラリーのpHを一定値に維持した。6N HClを用いてpH4.0前後に調整することにより、酵素を不活性化させた。非加水分解性タンパク質および大きなペプチド、ならびにその他のポリマーを、6,000×gで25分間遠心分離することにより除去した。残渣を水250ml中に再度懸濁し、同じ条件を用いて遠心分離した。得られた透明な上清を一つにして、凍結乾燥させ、さらなる分析まで-5℃で保存した。サーモリシンにより産生された加水分解物のACE阻害性のIC50は37.1μg粉末/mlであった。サーモリシンおよびアルカラーゼ2.4の連続加水分解により生じた加水分解物のACE阻害性のIC50は34.2μg粉末/mlであった。亜麻仁由来のACE阻害ペプチドの産生に関しては、IC50が64.3mg粉末/mlである加水分解物を産生したアルカラーゼ2.4単独と比べると、サーモリシンの方がより効果的な酵素である。
【0082】
実施例10. アブラナACE阻害ペプチドの限外濾過処理
40メッシュスクリーンを通過するように粉砕された、脱脂されたアブラナ粗びき粉(62.3g)を、1:10(W/V)の比率で、70%エタノール(v/v)で処理した。アルコール水溶液を除去するための濾過後、残渣をさらにアルカラーゼ2.4で消化して、エタノール処理されたアブラナタンパク質加水分解物を産生した。得られたタンパク質加水分解物を、10000分子量カットオフ(MWCO)、3000MWCO、1000MWCOの膜による限外濾過によって、さらに精製した。Amicon Ultrafiltration Cell Model 8200(Amicon Division, W.R. Grace & Co., Beverly, USA)を用いて、膜の保持(retentate)側で、35PSIの圧力で溶液にアルゴンを適用することにより、限外濾過を行った。最初に、10000MWCO膜を用いて、ペプチド加水分解物を保持物(retentate)画分と透過物(permeate)画分へと分離する。10000膜由来の透過物を次に3000MWCO膜による限外濾過に供して、3000MWCO保持物と3000MWCO透過物を作製した。10000MWCO膜による限外濾過によって、3000MWCO透過物をさらに分画し、1000MWCO透過物と1000MWCO保持物を作製した。第二の一連の実験を行ったが、ここでは、全タンパク質加水分解物を、10000MWCO膜で初めに処理することなく、3000MWCOおよび1000MWCO膜による限外濾過に供した。ACE阻害性のIC50を決定するために、透過物および保持物を回収して凍結乾燥させた。透過物は全て、対応する保持物画分よりもACE阻害活性の高いペプチドを含んでいた。1000MWCO膜によるタンパク質加水分解物の直接限外濾過によって得られた透過物において、ACE阻害活性が最も高い(IC50=25.7μg粉末/ml)ことが見出された(表4)。ACE阻害活性の高いペプチド画分(IC50=30.0〜31.4μg粉末/ml)もまた、3000MWCO膜による直接限外濾過、または10000MWCO膜による限外濾過後の3000MWCO膜による限外濾過のいずれかによって得られた。3000MWCO透過産物の収量は、1000MWCO膜を用いて得られるものよりも高かったので、1000MWCO段階へと進行するメリットはほとんど無い。膜のフラックス(flux)は孔サイズの減少と共に減少するため、最適収量は、3000MWCO膜を用いて得られる。
【0083】
実施例11. 亜麻仁ACE阻害ペプチドの限外濾過処理
実施例7および9で調製された液体加水分解物を、実施例10記載のように、10000分子量カットオフ(MWCO)および100000MWCOの膜による限外濾過によって、さらに精製した。限外濾過は個別に行い、透過物および保持物の両方を回収して、ACE阻害性のIC50決定のために凍結乾燥した。先の実施例同様、透過物は全て、保持物において見出されたものよりもACE阻害活性の高いペプチドを含んでいる(表5)。亜麻仁加水分解物の粘度は、アブラナタンパク質加水分解物について観察されたものよりもずっと大きく、したがって、3000MWCOおよび1000MWCOの膜による限外濾過は実行不可能であった。10K MWCOおよび100K MWCOの膜を用いた操作の場合には、膜表面におけるフィルム形成のために、限外濾過の実行の際に困難に直面した。A)溶液の撹拌および40℃を上回る温度までの加熱、B)pH3〜4までpHを調整、または、C)AとBの併用により、このフィルムの形成は回避可能である。100K MWCO膜の孔サイズが大きいので大きなペプチドも膜を通過して透過物に含まれるため、元の亜麻仁加水分解物のACE阻害性のIC50値(64.2μg粉末/ml)と比べて、これらの限外濾過段階において有意な改善は達成されなかった。エタノール処理された加水分解物の場合、透過物のIC50値は、元の値である51.4μg粉末/mlと比べて、30.0μg粉末/mlおよび35.7μg粉末/mlと改善されており、これによって、アルコール洗浄された脱脂亜麻粗びき粉から産生されたACE阻害ペプチド画分の活性が、10K MWCOまたは100K MWCOの膜いずれかによる濾過により改善できることが示された。
【0084】
実施例12. 逆相クロマトグラフィーによる、アブラナタンパク質加水分解物由来の高い生物活性を有するACE阻害ペプチドの精製および同定
実施例6のように調製された脱脂アブラナ粗びき粉のアルカラーゼ2.4加水分解物を、調製用クロマトグラフィーのために、100mg/mlの濃度で1%酢酸水溶液(v/v)に溶解した。3つのPrepPak 40mmカートリッジ(Bondapack C-18 15〜20μm、40×100mm、Waters)で構成された分節(segmented)カラムおよび保護(guard)カラム(40×100mm)を、PrepLC 4000システム(Waters)と接続した。計器対照、データ収集、および分析は、Millennium Chromatography Manager software v 2.15(Waters Inc., MA. USA)を用いて行った。試料(20ml)は、溶媒送達系を介して自動で注入した。吸光度プロフィールは、2487 Absorbance Detectorを用いて280nmでモニタリングした。Waters Fraction Collectorを用いて、画分を自動で収集した。2種の溶媒系(A:1%酢酸水溶液、およびB:メタノール(100%))を用いて、カラムを溶出した(50ml.min-1)(表6)。
【0085】
収集された全画分を、ACE阻害活性について評価した。アブラナ粗びき粉のアルカラーゼ加水分解物の全量32.6gを、調製用クロマトグラフィーにより分画した。最も活性の高いペプチド画分の収量は2.8g(8.5%)であり、そのACE阻害性のIC50は2.0μg粉末/mlであった。
【0086】
調製用C-18由来の活性画分を、Unicorn system(Pharmacia Biotech、Sweden)制御のAKTAエキスプロラ(explorer)10XTシステムに接続したSephasil(商標)Peptide C18 ST 10/250カラム(粒径:12μm、Pharmacia Biotech、Sweden)を用いてさらに精製した。2種の溶媒系(A:20mmリン酸二水素ナトリウム緩衝液(0.05%TFA)、およびB:20mmリン酸二水素ナトリウム(0.05%TFAを含む80%アセトニトリル))を流速5ml/分で用いて、5%Bにおける5カラム容量(CV)定組成溶出の後、15CVにおいて5%B〜20%Bの勾配溶出を行い、カラムを溶出した。最も活性の高い調製用クロマトグラフィー画分の200mg/ml溶液500mlを、注入容量とした。214nmにおいて吸光度をモニタリングし、画分を収集した。全21種の画分を収集したが、最も強力な画分はF13およびF18であった。注入を繰り返した後、ACE阻害性を持つ(IC50値がそれぞれ38.6μg粉末/mlおよび312.9μg粉末/ml)1.30gのF13および0.85gのF18を得た。クロマトグラフィーによる分離において使用された不揮発性バターの存在により、これらのIC50は開始材料よりも高かった。
【0087】
F13およびF18をそれぞれ、2種の溶媒系(A:水(0.1%TFAを含む)、および、B:アセトニトリル(0.1%TFAを含む))を流速5ml/分で用いて、7CVにおいて10%B〜30%Bの勾配で、Sephasil(商標)Peptide C18 ST 10/250カラム(粒径:12μm、Pharmacia Biotech、Sweden)により再度クロマトグラフィーにかけて脱塩し、これらの活性な画分をさらに精製した。F13のクロマトグラフィーに由来する主要な強い分画ピークをF13-11とし、F18のクロマトグラフィーに由来するものをF18-5として同定した。F13-11の収量は18.32mgでそのACE阻害性のIC50は0.44μg/mlであり、F18-5の収量は4.89mgでIC50値は0.37μg/mlであった。
【0088】
F13-11およびF18-5の画分を、2種の溶媒系(A:水(0.1%TFAを含む)、および、B:アセトニトリル(0.1%TFAを含む))を流速1.5ml/分で用いて、10CVにおいて5%B〜40%Bの勾配で、Sephasil Peptide C18 12 ST 4.6/250カラム(Pharmacia Biotech、Sweden)によりさらに精製した(図3)。注入容量は、25mg/ml溶液で30mlであった。吸光度を214nmでモニタリングし、画分を収集した。
【0089】
ST 4.6/250カラムから精製された単一ピーク画分であるF13-11aおよびF18-5a中のペプチドの同一性は、APCiプローブ、Z-Sprayインターフェース、分離モジュール、および光ダイオードアレイ検出器(Waters Inc. MA、USA)を備えたQuattro LC液体クロマトグラフィー/質量分析計(Micromass、UK)を用いた、大気圧化学イオン化(APCi)質量分析法によって決定した。計器対照およびデータ分析は、MassLynxソフトウェア(Micromass、UK)を用いて行った。ペプチド試料(10ml)を、Symmetry C18カラム(2.0×150mm;5mm)によるクロマトグラフィーに供した。試料を、2種の溶媒系((A)0.1%ギ酸(FA)水溶液、および、(B)0.1%FAのアセトニトリル溶液)で、初めの10分間、5〜60%のアセトニトリル勾配で溶出し(0.3ml.min-1)、60%アセトニトリルで2分間維持し、その後1分間、5%アセトニトリルに戻した。その後、一定の流速0.3ml.min-1で4分間定組成溶出を行った。正または負のイオン強度を、走査時間1.5秒で、50m/zから500m/zまで記録した。分析器の陰圧を2.2e-5 torrとした。生物活性の最も高いペプチド2つを、バリン-セリン-バリンおよびフェニルアラニン-ロイシンとして同定した(表7)。これら2つのアミノ酸配列のどちらも、今までACE阻害活性を有すると報告されたことはなかった。
【0090】
参照

【0091】
(表1)アルカラーゼ2.4で消化した植物加水分解物に関するACE阻害性のIC50

【0092】
(表2)様々なタンパク質分解酵素によるアブラナ粗びき粉の加水分解

【0093】
(表3)エタノール処理されたアブラナ粗びき粉加水分解物のACE阻害性のIC50およびタンパク質含量

【0094】
(表4)アブラナ加水分解物の限外濾過処理により得られた透過物および保持物のACE阻害性のIC50、タンパク質含量、および収量

【0095】
(表5)限外濾過に供された、脱脂亜麻粗びき粉のアルカラーゼ2.4L加水分解物の収量、タンパク質含量、およびACE阻害性のIC50

【0096】
(表6)PrepLC 4000勾配プロフィール

【0097】
(表7)脱脂アブラナのアルカラーゼ2.4加水分解物に由来する最も強力なACE阻害ペプチド2種の同定

【図面の簡単な説明】
【0098】
添付の図面を参照して、本発明の特定の態様を説明する。
【図1】アブラナ粗びき粉に作用する様々なタンパク質分解酵素に関する、インキュベーション時間(X軸)の関数としてのACE阻害活性(Y軸)を示す。
【図2】アブラナ粗びき粉に作用する様々なタンパク質分解酵素に関する、インキュベーション時間(X軸)の関数としての加水分解度(DH-Y軸)を示す。
【図3】Sephasil Peptide C18 12μ ST4.6/250カラムから得られた画分における、214nm(mAU)での吸光度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチド含有加水分解物を調製するためのプロセスであって、以下の段階を含むプロセス:
実質的に油を含まない種子の粗びき粉(meal)または細粉(flour)と、有機溶媒とを接触させる段階;
粗びき粉または細粉を溶媒から分離する段階;および
少なくとも一つのタンパク質分解酵素で粗びき粉または細粉を処理して、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を作製する段階。
【請求項2】
処理された種子の粗びき粉または細粉を加水分解物から分離する工程をさらに含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、および酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも一種類の溶媒である、請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
溶媒がエタノールである、請求項1または2記載のプロセス。
【請求項5】
溶媒が水性有機溶媒である、請求項1から4のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項6】
溶媒が70:30 v/v エタノール:水である、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
種子の粗びき粉または細粉を、約20℃から溶媒の沸点の温度の溶媒に、約1時間から約24時間接触させる、請求項1から6のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項8】
ACE阻害ペプチド含有加水分解物を限外濾過する、請求項1から7のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項9】
孔サイズが約1000MWCOから約100,000MWCOの限外濾過膜を用いて加水分解物を限外濾過する、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
加水分解物を乾燥させて粉末を形成する、請求項1から9のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項11】
種子の粗びき粉または細粉が、亜麻、アブラナ(canola)、大豆、綿実、ヒマワリ、落花生、カラシ、エンドウ、レンズマメ、マメ(bean)、ヒヨコマメ、小麦、カラス麦、大麦、ライ麦、およびソバからなる群より選択される植物に由来する、請求項1から10のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項12】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、約0.25%から約8.0% w/wの濃度で存在する、請求項1から11のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項13】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、約0.5%から約4.0% w/wの濃度で存在する、請求項1から11のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項14】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、およびメタロエンドペプチダーゼからなる群より選択される、請求項1から13のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、アルカラーゼ2.4L、アルカリプロテアーゼL-FG、中性プロテアーゼNBP-L、ウマミザイム、プロテアーゼPアマノ6、ペプチダーゼR、プロテアーゼM「アマノ」、プロレザー(Proleather)FG-F、およびサーモリシンからなる群より選択される、請求項1から13のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項16】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素がアルカリプロテアーゼであり、かつ、NaOH、KOH、およびNH4OHからなる群より選択される塩基の添加によって反応混合液がアルカリ性pHに調整される、請求項1から13のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項17】
添加される塩基がKOHである、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が酸性プロテアーゼであり、かつ、反応混合液が酸性pHに調整される、請求項1から13のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項19】
タンパク質分解の程度が、インキュベーション時間の変化によって制御される、請求項1から18のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項20】
種子の粗びき粉がアブラナ粗びき粉であり、かつ、加水分解物がペプチドVal-Ser-ValおよびPhe-Leuの少なくとも一方を含む、請求項1から19のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項21】
種子の粗びき粉が亜麻粗びき粉または大豆粗びき粉であり、かつ、タンパク質分解酵素がメタロエンドペプチダーゼである、請求項1から19のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項22】
亜麻またはアブラナからACE阻害ペプチド含有加水分解物を調製するためのプロセスであって、以下の段階を含むプロセス:
実質的に油非含有の亜麻種子粗びき粉または実質的に油非含有のアブラナ種子粗びき粉を少なくとも一つのタンパク質分解酵素で処理して、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を作製する段階。
【請求項23】
処理された種子粗びき粉を、加水分解物から分離する段階をさらに含む、請求項22記載のプロセス。
【請求項24】
孔サイズが約1000MWCOから約100,000MWCOの限外濾過膜を用いて、ACE阻害ペプチド含有加水分解物を限外濾過する、請求項22または23記載のプロセス。
【請求項25】
加水分解物を乾燥させて粉末を形成する、請求項24記載のプロセス。
【請求項26】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、約0.25%から約8.0% w/wの濃度で存在する、請求項22から25のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項27】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、およびメタロエンドペプチダーゼからなる群より選択される、請求項22から26のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項28】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素が、アルカラーゼ2.4L、アルカリプロテアーゼL-FG、中性プロテアーゼNBP-L、ウマミザイム、プロテアーゼPアマノ6、ペプチダーゼR、プロテアーゼM「アマノ」、プロレザーFG-F、およびサーモリシンからなる群より選択される、請求項22から26のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項29】
少なくとも一つのタンパク質分解酵素がアルカリプロテアーゼであり、かつ、NaOH、KOH、およびNH4OHからなる群より選択される塩基の添加によって反応混合液がアルカリ性pHに調整される、請求項22から26のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項30】
添加される塩基がKOHである、請求項29記載のプロセス。
【請求項31】
請求項1から21のいずれか一項記載のプロセスによって調製される、ACE阻害ペプチド含有加水分解物。
【請求項32】
亜麻粗びき粉またはアブラナ粗びき粉の部分的タンパク質分解性消化によって作製される、ACE阻害ペプチド含有加水分解物。
【請求項33】
請求項22から29のいずれか一項記載のプロセスによって調製される、請求項32記載の加水分解物。
【請求項34】
IC50が200μg粉末/ml未満のACE阻害性を有する、請求項31から33のいずれか一項記載の加水分解物。
【請求項35】
請求項31から34のいずれか一項記載の加水分解物を乾燥させることによって作製される、粉末。
【請求項36】
請求項31から34のいずれか一項記載の加水分解物または請求項35記載の粉末を含む、食用製品。
【請求項37】
食品または飲料である、請求項36記載の製品。
【請求項38】
栄養補助食品(food supplement)である、請求項36記載の製品。
【請求項39】
ペプチドVal-Ser-ValおよびPhe-Leuの少なくとも一方を含む、請求項31から34のいずれか一項記載の加水分解物、または請求項35記載の粉末、または請求項36から38のいずれか一項記載の製品。
【請求項40】
ペプチドVal-Ser-ValおよびPhe-Leuの少なくとも一方、ならびに担体を含む、組成物。
【請求項41】
式Val-Ser-Valのペプチド。
【請求項42】
式Phe-Leuのペプチド。
【請求項43】
哺乳動物においてACE活性を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項31から34のいずれか一項記載の加水分解物、または請求項35記載の粉末、または請求項36から39のいずれか一項記載の製品、または請求項40記載の薬学的組成物の有効量を、哺乳動物に投与する段階。
【請求項44】
ACE活性の阻害により、哺乳動物において上昇した血圧の低下がもたらされる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
哺乳動物において上昇した血圧を治療するための、請求項31から34のいずれか一項記載の加水分解物、または請求項35記載の粉末、または請求項36から39のいずれか一項記載の製品の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−512371(P2006−512371A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562417(P2004−562417)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/CA2003/002020
【国際公開番号】WO2004/057976
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505239817)
【Fターム(参考)】