説明

検査装置およびその方法

【課題】より高精度の赤外線画像検査方法および装置を提供する。
【解決手段】検査装置20がワークピース22の第1の面24に光70,72を案内するように位置決めされた光源50,52を含む。赤外線検出器60が第1の面24からの放射光78を受け取るように位置決めされる。光源50,52と赤外線検出器60とにデータ収集処理コンピュータ56が接続される。コンピュータ56は光源50,52をトリガして複数のインスタンスで光70,72を照射させる。コンピュータ56は各インスタンスの後で温度データを複数回収集する。コンピュータ56は理論解を用いながら温度データを処理して、複数のインスタンスにおける複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データの平均に基づいて温度データを解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線画像に関し、より具体的には、フラッシュ赤外線画像に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ赤外線画像検査方法および装置は特許文献1および特許文献2(これらの各文献の開示はそこで詳細に説明されているかの如く本願明細書に参照として加えられる。)に示されている。基本的な赤外線画像システムは光源(例えば、1つもしくは複数のランプ)と検出器(例えば、赤外線画像カメラ)を含む。光源と検出器とはワークピースの検査を制御するように制御システムに接続される。光源からのフラッシュがワークピースのある面に照射された後、時系列となった測定値つまり上記面から放射された光の画像を得るのに用いられる。
上記放射光の減衰特性は上記ワークピースを評価するのに使用される。このような技術は、材料厚さや材料内の欠陥の存在などを評価するために使用されてもよい。
【特許文献1】米国特許第6,542,849号明細書
【特許文献2】米国特許第6,712,502号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの形態は、ワークピースの第1の面に光を案内するように位置決められた光源を含む。この第1の面から放射光を受け取るように赤外線検出器が設けられる。光源と赤外線検出器にデータ収集処理コンピュータが接続される。このコンピュータは、光を多数のインスタンスで照射するように光源をトリガする。コンピュータは、それぞれのインスタンスの後に赤外線検出器から温度データを複数回収集する。コンピュータは、理論解を用いてデータを処理して、複数のインスタンスにおける複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データを平均する。
【0004】
本発明の1つもしくは複数の態様の詳細が添付の図面と下記の詳細な説明とによって説明される。本発明のその他の特徴、目的、及び長所は、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0005】
各図面の同様の参照番号や符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は赤外線画像システム20を示す。図示のシステム20は以下に説明する事項を除けば特許文献1のシステムに類似する。なお、他のシステムを使用してもよい。システム20はワークピース22を検査するために使用される。このワークピース22は少なくとも1つの露出した(外側の)面24を有する。この実施例の面24は表面層26の外部面である。この表面層26は基板32の外部面30の上に内部面28を有する。この実施例のような層と基板との組合せには、金属合金製の層32及び保護被覆層26が含まれる。
【0007】
システム20は上記層26内の欠陥34の存在を検出するために使用される。この実施例の欠陥34は上記面24より深さDの位置にありかつ横方向の代表寸法Lを有する空所
である。さらにシステム20は欠陥34の上記位置(つまりD)、寸法(つまりLや欠陥厚さ)、もしくはその他の特性を判断するためにも使用される。あるいは、上記層26の厚さTLを決定するためにシステム20を使用してもよい。
【0008】
システム20は第1・第2のフラッシュランプ50、52を備える。この実施例のシステムでは、上記ランプ50,52は、同時操作をさせるための共通電源54によって電力が供給される。あるいは、ある制御システム(例えばコンピュータ)によって同期をとった別々の電源によって上記ランプを電力供給してもよい。次に、この電源54は、例えばデータ収集処理ユニット56と関数発生器58との組合せを含んだ制御システムに接続される。また、上記のユニット56と関数発生器58とは赤外線映像カメラ60に接続される。
【0009】
上記ランプ50、52は照明70、72のフラッシュを面24に向けて案内するように位置決めされる。上記照明はワークピース22を局所的に加熱する。欠陥34と面24との間の領域74は欠陥を越えた(欠陥の向こう側の)領域とは異なるように加熱・冷却される。欠陥は領域74からワークピース22内のさらに奥深くに進む熱流速76を妨害する。従って、領域74は欠陥部分を越えた類似の表面領域よりも高温になる。他の特性もまた影響を受けるであろう。層26の材料の特性や欠陥の種類によって、欠陥は上記影響が反転するような伝導性の高いものでもよい。
【0010】
照明70、72がフラッシュした後、ワークピースは面24からエネルギを放出する。カメラ60のレンズは面24から戻された放射光78(例えば、赤外光)を受け取るように位置決めされる。カメラ60の出力は温度を表すものでもよい。図2は、欠陥のある位置の層26を検査するカメラ60によって出力されたデジタルカウント数を示す。この出力は温度に比例する。横軸はランプがフラッシュした後の時間(秒)を示す。縦軸は温度センサ出力(生データであり、いずれの特定の温度スケールに変換されていない)を示す。図2はさらにこの生データに対する理論上の近似を示す。この近似は以下の理論的な温度―時間の関数に基づいて計算されている。
【0011】
【数1】

【0012】
ここで、Tは温度、tは時間、αは層26の熱拡散係数、dは層内の材料の局所有効面厚さ(欠陥から離れた場所では厚さTLとなり、欠陥に沿った場所では深さDとなる。)である。TLはDより大きいため、熱が内部面28に到達し、反射して露出面24に戻るまでの時間は長くなる。理論上の近似において、欠陥に沿った場所の近似よりも欠陥から離れた場所の近似を得るには、使用する時間を長くするのが好適である。種々の状況において種々の理論上の近似が適当である(例えば、わずかな組合せである場合の特定の層厚さや特定の欠陥を決定するための種々の層厚さやその組合せ等)。
【0013】
図3は2つのフラッシュを平均したデータであり、生データを近似させたものではない。図4は同様に4つのフラッシュの平均を示す。これらの2つの状況のそれぞれにおいては、理論上の近似がより厳密に当てはまる。複数のフラッシュの使用は薄い層や壁内の欠陥厚さを評価するのに特に有効である。例えば、薄い壁を評価する際つまり浅い欠陥を見つける際に、極短い時間のパルスが適当である。ノイズのベースライン値(例えば、不規則性要因や環境要因によって)は検出される放射に対して十分に大きいため、一回のフラッシュデータを不正確なものにさせる。従って、特定の状況においては、短いフラッシュ時間とより多くのフラッシュ回数とを組み合わせて精度を高めるように制御システムをプログラムもしくは修正してもよい。
【0014】
この平均データの使用は既存の熱画像システムを作り直すあるいは設計し直すことで達成される。例えば、ある程度においては、ソフトウェアを変更することで達成される。
【0015】
本発明の1つもしくは複数の態様が説明された。それにも拘わらず、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく種々の変更がなされよう。例えば、再設計化・再製品化した構成で実施する際に、既存のシステムの詳細が発明の実施の詳細に影響するであろうし、詳細を決定づけるであろう。さらに、これらの原理が他の技術と組み合わされてもよく、この他の技術は公知でも未開発のものでもよい。従って、他の態様も添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】赤外線画像システムの概略図である。
【図2】従来技術のシステム及び方法における検出器生データと理論上の近似とを示すグラフである。
【図3】本発明に係るシステム及び方法における平均データと理論上の近似とを示すグラフである。
【図4】本発明に係るシステム及び方法における平均データと理論上の近似とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0017】
20…赤外線画像システム
22…ワークピース
24…露出面
26…表面層
28…内部面
30…外部面
32…基板
34…欠陥
50、52…フラッシュランプ
54…共通電源
56…データ収集処理ユニット
58…関数発生器
60…赤外線画像カメラ
70、72…照明
74…領域
78…放射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの第1の面に光を案内するように位置決めされた光源と、
上記第1の面からの放射を受け取るように位置決めされた赤外線検出器と、
データ収集処理コンピュータと、
を備えた検査装置であって、上記データ収集処理コンピュータは、
上記光源をトリガして複数のインスタンスで上記光を照射させるように上記光源に接続され、
各インスタンスの後で温度データを複数回収集するように上記赤外線検出器に接続され、かつ、
理論解を用いながら上記温度データを処理して、上記複数のインスタンスにおける上記複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データの平均に基づいて上記温度データを解析するように設定されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
上記平均は平均値を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
上記平均は、2〜20個の上記インスタンスに亘って得られることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
上記平均は、3〜10個の上記インスタンスに亘って得られることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
上記光源は上記ワークピースの第1の面に位置決めされた一対のフラッシュランプからなり、
上記赤外線検出器は上記第1の面付近に配置された赤外線カメラを含むことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
上記データは画像データを含むことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
上記ワークピースがガスタービンエンジン中空鋳造部品であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項8】
上記ワークピースが被覆ガスタービンエンジン部品であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
光パルスを複数のインスタンスで照射し、ワークピースの第1の面に衝突するように光源を動作させ、
各インスタンスの後で上記ワークピースの第1の面における温度データを複数回収集し、
理論解を用いながら上記温度データを処理して、上記複数のインスタンスにおける上記複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データの平均に基づいて上記温度データを解析することを含んだ方法。
【請求項10】
上記平均は3〜10個の上記インスタンスに亘って得られることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記平均は2〜5個の上記インスタンスに亘って得られることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ガスタービンエンジン中空鋳造部品の壁厚さを測定するために用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ガスタービンエンジン部品の被覆厚さを測定するために用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ガスタービンエンジン部品の被覆内の欠陥を検出するために用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ワークピースの第1の面に光を案内するための第1の手段と、
上記第1の面からの放射を受け取るための第2の手段と、
第3の手段と、
を備えた装置であって、該第3の手段は、
上記第1の手段をトリガして上記光を複数のインスタンスで照射し、
各インスタンスの後で温度データを複数回収集し、
理論解を用いながら上記温度データを処理して、上記複数のインスタンスにおける上記複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データの平均に基づいて上記温度データを解析するための手段であることを特徴とする装置。
【請求項16】
上記第3の手段は3〜10個の上記インスタンスに亘って上記平均を得るように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
平均値として上記平均を得るように構成された請求項15に記載の装置。
【請求項18】
ワークピースの第1の面へ光を案内するように位置決めされた光源と、
上記第1の面からの放射を受け取るように位置決めされた赤外線検出器と、
上記光源をトリガして上記光のフラッシュを照射させるように上記光源に接続され、かつ、各フラッシュの後で温度の生データを複数回収集するように上記赤外線検出器に接続され、かつ、理論解を用いながら上記温度データを処理して、上記フラッシュの上記温度データを解析するように設定されているデータ収集処理コンピュータと、を基本構成にした赤外線画像システムをその基本構成から作り直す方法であって、
上記データ収集処理コンピュータを改良もしくは別のデータ収集処理コンピュータに置換し、
上記光が複数フラッシュして照射されるように上記光源をトリガし、
各フラッシュの後で温度データを複数回収集し、
理論解を用いながら上記温度データを処理して、上記複数のフラッシュにおける上記複数回収集された温度データの中でそれぞれ対応する収集回の温度データの平均に基づいて上記温度データを解析することを含んだ方法。
【請求項19】
上記コンピュータは3〜10個の上記フラッシュにおける平均値として上記平均を得るように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329982(P2006−329982A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−142200(P2006−142200)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】