説明

検査装置および配線回路基板の検査方法

【課題】カバー絶縁層中の異物の有無を精度よく検査することのできる検査装置および配線回路基板の検査方法を提供すること。
【解決手段】ベース絶縁層22、その上に形成される導体パターン23およびベース絶縁層22の上に、導体パターン23を被覆するように形成されるカバー絶縁層24を備える回路付サスペンション基板20における、カバー絶縁層24中の異物10の有無を検査するための検査装置(AVI)1であって、カバー絶縁層24に入射する入射光7を発光する発光部2と、回路付サスペンション基板20の上に配置され、入射光7がカバー絶縁層24の表面において反射された反射光8を受光する受光部4とを備え、発光部2は、その光源3の発光光軸13とベース絶縁層22の上面との成す角度αが30度以下となるように、入射光7を発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および配線回路基板の検査方法、詳しくは、配線回路基板におけるカバー絶縁層中の異物の有無の検査に用いられる検査装置、および、それが用いられる配線回路基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、金属支持層と、その上に順次積層される、ベース絶縁層、導体パターンおよびカバー絶縁層とを備えている。このような配線回路基板では、カバー絶縁層中に導電性の異物が存在し、それが導体パターン間に跨ると、導体パターンが短絡するので、接続信頼性が低下する。そのため、上記した異物の有無を検査している。
【0003】
そのような検査には、検査光を配線回路基板に入射させ、それから反射する検査光を検知することにより、異物の有無の良否を判定する装置が用いられている。
【0004】
例えば、カバー絶縁層の形成前には、導体パターンを検査する自動光学検査装置(AOI:Automatic Optical Inspection)が用いられ、また、カバー絶縁層の形成後には、配線回路基板の全体外観を検査する自動外観検査装置(AVI:Automatic Visual Inspection)が用いられている。
【0005】
そして、上記したAVIに用いることのできる検査装置として、例えば、絶縁フィルム、その上に形成される配線パターンおよびそれを被覆するカバーレイ層を備える長尺状のフィルムキャリアテープの上に対向配置される、上部照射手段、水平照射手段および顕微鏡を備える検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
この検査装置において、上部照射手段は、LEDを光源とするリングライトとして形成されており、フィルムキャリアテープに対して、鉛直方向に対する入射角が3〜45度となるように、照射光を照射している。
【0007】
また、水平照射手段は、長尺方向に沿って直線状に延び、長尺方向に対する直交方向に間隔を隔てて対向配置される1対の蛍光灯から形成されており、フィルムキャリアテープに対して、拡散するように拡散光を照射している。
【0008】
この検査装置では、上記した照射光および拡散光を、フィルムキャリアテープに照射し、それらにおいて反射する反射光を、顕微鏡によって読み取ることによって、フィルムキャリアテープを検査している。
【0009】
すなわち、特許文献1に記載の検査装置では、リングライトが、照射光を、鉛直方向に対して比較的小さい入射角でフィルムキャリアテープに入射させるとともに、蛍光灯が、拡散光を、拡散状にフィルムキャリアテープに入射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−42956公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかるに、特許文献1に記載のリングライトが、照射光を鉛直方向に対して比較的小さい入射角でカバーレイ層に入射させると、カバーレイ層の表面において反射する反射光のうち、異物に対応して形成される隆起部分の上面と、その周端部と、隆起部分以外のカバー絶縁層の表面とにおける反射光が、受光部においてすべて受光される。
【0012】
そのため、受光された反射光は、異物に対応するコントラストを形成することできず、その結果、異物の有無を精度よく検査することができないという不具合がある。
【0013】
本発明の目的は、カバー絶縁層中の異物の有無を精度よく検査することのできる検査装置および配線回路基板の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の検査装置は、ベース絶縁層、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターン、および、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層を備える配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査するための検査装置であって、前記カバー絶縁層に入射する入射光を発光する発光部と、前記配線回路基板の上方に配置され、前記入射光が前記カバー絶縁層の表面において反射された反射光を受光する受光部とを備え、前記発光部は、その光軸と前記ベース絶縁層の上面との成す角度が30度以下となるように、前記入射光を発光することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の検査装置では、前記発光部の前記光源が、環状に複数配置されていることが好適である。
【0016】
また、本発明の検査装置では、前記入射光は、指向性を有していることが好適である。
【0017】
また、本発明の検査装置は、厚みが50μm以下の前記カバー絶縁層を備える前記配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無の検査に用いられることが好適である。
【0018】
また、本発明の検査装置は、前記導体パターンの良否を検査することが好適である。
【0019】
また、本発明の検査装置は、厚みが3μm以上の前記導体パターンを備える前記配線回路基板における、前記導体パターンの良否の検査に用いられることが好適である。
【0020】
また、本発明の検査装置では、前記入射光の波長が、450〜750nmであることが好適である。
【0021】
また、本発明の配線回路基板の検査方法は、上記した検査装置を用いて、前記配線回路基板における前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の検査装置では、発光部によって、光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が特定範囲の低角度となるように、入射光をカバー絶縁層の表面に入射させるので、異物に対応して形成されるカバー絶縁層の隆起部分の上面の周端部において反射する反射光は、受光部において受光される。一方、隆起部分の上面と、隆起部分以外のカバー絶縁層の表面とにおいて反射する反射光は、受光部において受光されにくくなる。
【0023】
そのため、受光部において受光された反射光は、異物に対応するコントラストを形成することができ、その結果、異物の有無を精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の検査装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示す検査装置の発光部の斜視図である。
【図3】図3は、図1の検査装置により検査される回路付サスペンション基板の断面図である。
【図4】図4は、カバー絶縁層中に異物が存在し、かつ、導体パターンが短絡および断線する回路付サスペンション基板の断面図である。
【図5】図5は、実施例1(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が25度である態様)の画像処理図である。
【図6】図6は、比較例1(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が60度である態様)の画像処理図である。
【図7】図7は、比較例2(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が50度である態様)の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の検査装置の一実施形態の概略構成図、図2は、図1に示す検査装置の発光部の斜視図、図3は、図1の検査装置により検査される回路付サスペンション基板の断面図、図4は、カバー絶縁層中に異物が存在し、かつ、導体パターンが短絡および断線する回路付サスペンション基板の断面図を示す。
【0026】
なお、図1において、紙面手前側を「右側」、紙面奥側を「左側」、紙面左側を「前側」、紙面右側を「後側」、紙面上側を「上側」、紙面下側を「下側」とする。また、図2〜図4における各方向は、図1の上記した方向に準拠するものとする。
【0027】
図1において、この検査装置1は、回路付サスペンション基板20における、カバー絶縁層24中の異物10(図4参照)の有無および導体パターン23(図3および図4参照)の良否を検査するためのAVI(自動外観検査装置:Automatic Visual Inspection)である。検査装置1は、検査において回路付サスペンション基板20が後側から前側に向かって搬送(後述)されるように設けられている。
【0028】
検査装置1は、リング照明による検知方式が採用され、回路付サスペンション基板20の上側に配置されており、発光部2と、受光部4と、支持台5とを備えている。
【0029】
発光部2は、支持台5の上側に配置され、具体的には、回路付サスペンション基板20の上側に間隔を隔てて配置されており、支持筒19およびそれに支持される光源3を備えている。
【0030】
支持筒19は、図1および図2に示すように、環状をなし、具体的には、上下両側が開放され、上下方向に延びる軸線を有する略円筒形状に形成されている。また、支持筒19は、上下方向に沿う断面視において、傾斜状に形成されており、詳しくは、下方に向かうに従って拡径するテーパー状に形成されている。
【0031】
光源3は、入射光7を回路付サスペンション基板20のカバー絶縁層24に入射させるために設けられており、環状に複数配置されている。具体的には、光源3は、支持筒19の内側面に設けられ、支持筒19の周方向および上下方向において整列配置されている。また、光源3は、その発光面(発光口)が内方(支持筒19の軸線)に向かうように、支持筒19に支持されている。さらに、各光源3は、支持筒19の軸線を中心とする点対称に配置されている。
【0032】
光源3としては、例えば、指向性を有する光(入射光)を発光できるランプが用いられ、好ましくは、発光ダイオード(LED)が用いられる。
【0033】
また、光源3から発光される入射光7の波長は、例えば、450〜750nm、好ましくは、550〜750nmである。
【0034】
受光部4は、回路付サスペンション基板20の上側に間隔を隔てて配置され、具体的には、上下方向に投影したときに、受光部4の中央、つまり、支持筒19の軸線上に配置されている。また、受光部4は、発光部2より上側に配置されており、下面が、反射光8(後述)を受光する受光面となるように配置されている。
【0035】
受光部4としては、例えば、近赤外線カメラ、CCDカメラなどが用いられ、好ましくは、汎用性の観点から、CCDカメラが用いられる。
【0036】
支持台5は、その上面が、回路付サスペンション基板20の下面と摺動可能、かつ、支持可能な平滑面として形成されている。
【0037】
また、検査装置1には、CPU(図示せず)が設けられている。図示しないCPUは、受光部4に接続されている。
【0038】
次に、上記した検査装置1を用いて、回路付サスペンション基板20における、カバー絶縁層24中の異物10および導体パターン23の良否を検査する、回路付サスペンション基板20の検査方法について説明する。
【0039】
検査に供される回路付サスペンション基板20は、図2および図3に示すように、長手方向に延びるシート形状の金属支持層21に、ベース絶縁層22と、ベース絶縁層22の上に形成される導体パターン23と、ベース絶縁層22の上に、導体パターン23を被覆するように形成されるカバー絶縁層24とが複数形成される回路付サスペンション基板集合体シートとして得られている。
【0040】
つまり、回路付サスペンション基板20は、長尺状の金属支持層21に、その長手方向に沿って複数形成されている。
【0041】
金属支持層21を形成する金属材料としては、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などの金属材料が用いられる。好ましくは、ステンレスが用いられる。金属支持層21の厚みは、例えば、15〜50μm、好ましくは、20〜35μmである。
【0042】
ベース絶縁層22を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が用いられる。好ましくは、ポリイミドが用いられる。ベース絶縁層22の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜40μmである。
【0043】
導体パターン23を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が用いられる。好ましくは、銅が用いられる。
【0044】
導体パターン23は、長手方向(図2における前後方向)に沿って延び、幅方向(長手方向に直交する方向、図2における左右方向)において互いに間隔を隔てて並列配置される配線25と、各配線25の長手方向両端部に配置される端子部27とを一体的に備えている。
【0045】
各配線25は、カバー絶縁層24に被覆される一方で、各端子部27は、カバー絶縁層24から露出している。また、導体パターン23は、断面(幅方向断面)視略矩形状に形成されている。
【0046】
導体パターン23の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、通常、例えば、30μm以下、好ましくは、20μm以下である。導体パターン23の厚みが上記した範囲に満たない場合には、入射光7が反射する隆起部分9(後述)の形成が不十分となる場合がある。
【0047】
また、各配線25および各端子部27の幅は、例えば、5〜500μm、好ましくは、15〜200μmであり、各配線25間の間隔および各端子部27間の間隔は、例えば、5〜200μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0048】
カバー絶縁層24は、ベース絶縁層22の上面に、配線25を被覆し、かつ、端子部27を露出するパターンで形成されている。
【0049】
また、カバー絶縁層24は、配線25に対応する部分においては、配線25の上面および幅方向両側面を被覆するように、それらに沿って形成されている。これによって、カバー絶縁層24には、配線25の断面形状に対応して上側に隆起する隆起部分9が形成されている。
【0050】
また、カバー絶縁層24を形成する絶縁材料としては、上記したベース絶縁層22を形成する絶縁材料と同様の絶縁材料が用いられ、好ましくは、光に対する反射特性などの観点から、ポリイミドが用いられる。
【0051】
また、カバー絶縁層24は、例えば、未硬化樹脂の硬化により形成されている。
【0052】
すなわち、まず、例えば、ポリアミック酸樹脂などの感光性樹脂を含有する樹脂溶液を、ベース絶縁層22の上に、導体パターン23を被覆するように塗布して、次いで、乾燥させることにより、感光層を形成する。続いて、感光層を、フォトマスクを介して露光および現像し、その後、乾燥させることにより、ポリアミック酸樹脂などの未硬化樹脂からなる未硬化樹脂層(図示せず)を、上記したパターンで形成する。
【0053】
その後、未硬化樹脂層を硬化させる。未硬化樹脂層の硬化には、例えば、電子線、紫外線などによる光硬化、例えば、加熱硬化などが用いられ、好ましくは、加熱硬化が用いられる。加熱硬化における加熱温度は、例えば、300〜500℃、好ましくは、360〜440℃である。
【0054】
また、カバー絶縁層24の波長450〜750nmの光に対する透過率T(厚み17μmのカバー絶縁層24に対する透過率)は、例えば、30%以下、好ましくは、15%以下であり、通常、0%以上である。なお、カバー絶縁層24の透過率Tは、分光光度計により測定される。
【0055】
また、カバー絶縁層24の波長450〜750nmの光に対する反射率(入射角0度)Rは、例えば、10〜30%、好ましくは、10〜15%である。
【0056】
カバー絶縁層24の厚み、つまり、配線25を被覆する部分では、配線25の表面(上面および側面)からカバー絶縁層24の表面(上面および側面)までの長さであって、配線25から露出するベース絶縁層22を被覆する部分では、ベース絶縁層22の表面(上面)からカバー絶縁層24の表面(上面)までの長さは、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下であり、通常、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。カバー絶縁層24の厚みが上記した範囲を超える場合には、隆起部分9の形成が不十分となる場合がある。
【0057】
また、図1に示すように、検査装置1を用いる検査は、長尺状の回路付サスペンション基板20を搬送装置15を用いて搬送して、実施する。搬送装置15は、例えば、前後方向に互いに間隔を隔てて配置される巻出ロール16および巻取ロール17を備えている。検査装置1は、前後方向において、巻出ロール16および巻取ロール17の間に配置されている。搬送装置15では、巻出ロール16に長尺状の金属支持層21がロール状に巻回されており、その金属支持層21を、巻取ロール17が巻き取るようにロール搬送する。そして、このロール搬送の途中において、検査を実施する。
【0058】
具体的には、ロール搬送の途中における回路付サスペンション基板20を、支持台5に対向配置させ、検査装置1を用いる検査を実施し、その後、ロール搬送によって、検査後の回路付サスペンション基板20を支持台5から巻取ロール17に向けて送り出すとともに、検査前の回路付サスペンション基板20を巻出ロール16から支持台5に送り出して、対向配置させる。その後、上記した操作を繰り返す。
【0059】
そして、この検査では、図1および図3に示すように、検査装置1において、発光部2により発光された入射光7を、回路付サスペンション基板20におけるカバー絶縁層24の表面に入射させる。
【0060】
つまり、図2に示すように、入射光7を回路付サスペンション基板20の側方斜め上側から回路付サスペンション基板20の上面に向けて発光する。
【0061】
具体的には、図1および図3に示すように、発光部2は、光源3から入射光7を、それの光軸(入射光軸)13と、水平面(つまり、支持台5の上面、すなわち、実質的には、ベース絶縁層22の上面)との成す角度αが、30度以下、好ましくは、20度以下、さらに好ましくは、10度以下、通常、0度を超過する角度となるように、発光する。
【0062】
また、発光部2は、入射光7が指向性を有している場合には、各光源3から発光される入射光7が、上下方向に沿う断面視で平行状に進みながら、支持筒19の上下方向の幅(長さ)に対応する幅をもって、回路付サスペンション基板20に入射するように、発光する。
【0063】
次いで、入射光7が、カバー絶縁層24の表面において反射して反射光8となり、反射光8が、受光部4によって検知される。
【0064】
具体的には、配線25に対応して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の表面は、配線25の上面(後述する上部周端を含まない)を被覆する上部(上部中央部)32の上面と、配線25の上部周端を被覆する肩部(周端部)31の端面とを備えており、主に、肩部31の端面における反射光8が受光部4によって受光される。
【0065】
詳しくは、肩部31の端面は、湾曲状(または屈曲状)に形成され、これによって、肩部31の端面と入射光7の光軸13との成す角度βは、肩部31の端面と鉛直方向との成す角度βと実質的に同一となるので、反射光8は、主に、鉛直方向上方に向かい、受光部4によって受光される。
【0066】
一方、上部中央部32の上面は、前後左右方向に沿って平坦状に形成されているので、その上部中央部32の上面においては、反射光8が、側方斜め上側、詳しくは、入射光7の光軸13と上部中央部32の上面との成す角度α1と同一の入射角α1で反射する。そのため、反射光8が、実質的に、受光部4によって検知されない。
【0067】
また、カバー絶縁層24における隆起部分9以外の部分は、前後左右方向に沿って平坦状の平坦部分30として形成されており、その平坦部分30の表面においては、反射光8が、側方斜め上側、詳しくは、入射光7の光軸13と平坦部分30の表面との成す角度α2と同一の入射角α2で反射する。そのため、反射光8が、実質的に、受光部4によって検知されない。
【0068】
その後、受光部4によって受光した反射光8を、CPU(図示せず)によってデータ処理して、配線25の外形の画像処理図(図5参照)を形成し、これによって、配線25の平面視における外形を現す。
【0069】
すなわち、図4の実線で示すように、配線25に短絡部分11が形成されている場合には、短絡部分11に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の上部中央部32の上面において反射される反射光8が、主に、側方斜め上側に向かって反射するので、受光部4によって受光されにくい。そのため、CPUにより形成される外形データは、本来間隔を隔てて配置される2本の配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面おいて反射する反射光8を受光していない外形データとなる。その結果、短絡部分11が存在して、配線25の外形が異常であり、回路付サスペンション基板20が不良品であると判定する。
【0070】
一方、図3に示すように、配線25に短絡部分11が形成されていない場合には、間隔を隔てて配置される2本の配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射される反射光8が、主に、鉛直方向上方に向かって反射するので、受光部4によって受光され易い。そのため、CPUにより形成される外形データは、本来間隔を隔てて配置される2本の配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面おいて反射する反射光8を受光した外形データとなる。その結果、短絡部分11が存在せず、配線25の外形が正常であり、回路付サスペンション基板20が良品であると判定する。
【0071】
また、図4の破線で示すように、配線25に欠陥部分12が形成されている場合には、欠陥部分12に起因して形成されるカバー絶縁層24の平坦部分30の表面において反射される反射光8が、主に、側方斜め上側に向かって反射するので、受光部4によって受光されにくい。そのため、CPUにより形成される外形データは、本来配置される配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射する反射光8を受光していない外形データとなる。その結果、欠陥部分12が存在して、配線25の外形が異常であり、回路付サスペンション基板20が不良品であると判定する。
【0072】
一方、図3に示すように、配線25に欠陥部分12が形成されていない場合には、配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射される反射光8が、主に、鉛直方向上方に向かって反射するので、受光部4によって受光され易い。そのため、CPUにより形成される外形データは、本来配置される配線25に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射する反射光8を受光した外形データとなる。その結果、欠陥部分12が存在せず、配線25の外形が正常であり、回路付サスペンション基板20が良品であると判定する。
【0073】
さらに、図4に示すように、カバー絶縁層24中に異物10が存在している場合には、異物10に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射される反射光8が、主に、鉛直方向上方に向かって反射するので、受光部4によって受光され易い。そのため、CPUにより形成される外形データは、本来存在しない異物10に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射される反射光8を受光した外形データとなる。その結果、異物10が存在し、回路付サスペンション基板20が不良品であると判定する。
【0074】
一方、図3に示すように、カバー絶縁層24中に異物10が存在していない場合には、カバー絶縁層24の平坦部30の表面において反射される反射光8が、主に、側方斜め上側に向かって反射するので、受光部4によって受光されにくい。そのため、この場合には、CPUにより形成される外形データは、本来存在しない異物10に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射される反射光8を受光していない外形データとなる。その結果、異物10が存在せず、回路付サスペンション基板20が良品であると判定する。
【0075】
なお、異物10は、図4に示すように、カバー絶縁層24に埋設、つまり、上面および下面がカバー絶縁層24に被覆される異物、さらには、図示しないが、ベース絶縁層22の上面に載置され、つまり、下面が、ベース絶縁層22に接触し、上面がカバー絶縁層24に被覆される異物を含んでいる。
【0076】
異物10の材料としては、例えば、導体パターン23の機能(配線25において電気信号を伝達する機能)および/またはカバー絶縁層24の機能(配線25に対する封止機能)を損なわせる材料であって、具体的には、導体材料、絶縁材料などであり、導体材料としては、例えば、銅、錫、ステンレスなどの金属材料が挙げられ、絶縁材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、空気(ボイド)などが挙げられる。
【0077】
異物10の最大長さは、例えば、5〜100μmである。
【0078】
そして、この検査装置1では、発光部2によって、光源3の光軸13とベース絶縁層22の上面との成す角度αが特定範囲の低角度となるように、入射光7をカバー絶縁層24の表面に入射させるので、異物10の存在および配線25の良否に起因して形成されるカバー絶縁層24の隆起部分9の肩部31の端面において反射する反射光8は、受光部4において受光される。一方、隆起部分9の上部32の上面と、平坦部分30の表面とにおいて反射する反射光8は、受光部4において受光されにくくなる。
【0079】
そのため、受光部4において受光された反射光8は、異物10に対応するコントラストを形成することができ、異物10の有無と配線25の良否とを同時に精度よく検査することができる。
【0080】
なお、上記した説明では、検査装置1を、カバー絶縁層24中の異物10の有無および導体パターン23の良否の両方を検査するためのAVI装置として説明しているが、例えば、カバー絶縁層24中の異物10の有無のみを検査するAVI装置として用いることもできる。
【0081】
また、特許文献1に記載の蛍光灯は、拡散光を、カバーレイ層に拡散状に入射させるので、カバーレイ層における入射光の光量が小さく、しかも、特定方向のみから拡散光を入射させるので、入射光の光量が格段に小さくなる。そのため、受光部が受光する各反射光の光量も格段に小さくなるため、上記した検査を精度よく実施できない。
【0082】
しかしながら、上記した検査装置1では、入射光7を、環状に複数配置される光源3から集光状に入射させることができるので、入射光7をカバー絶縁層24の表面において十分な光量で反射させ、続いて、受光部4により反射光8を十分な光量で受光することができる。
【0083】
そのため、上記した検査をより一層精度よく実施することができる。
【0084】
また、入射光7が指向性を有する場合には、受光部4において受光された反射光8は、異物に対応するコントラストを確実に形成することができ、その結果、異物10の有無を精度よく検査することができる。
【0085】
また、上記した説明では、本発明の検査装置を、回路付サスペンション基板20の検査に用いているが、例えば、図示しないが、金属支持層21を補強層として必要により備えるフレキシブル配線回路基板などの各種配線回路基板の検査に広く適用することができる。
【0086】
また、上記した図1の説明では、長尺状の回路付サスペンション基板20を、巻出ロール16および巻取ロール17を備える搬送装置15によって巻回しながら検査しているが、例えば、巻出ロール16および巻取ロール17を用いることなく、1枚(枚葉状)の回路付サスペンション基板集合体シートを検査することもできる。
【0087】
また、上記した導体パターン23の説明では、配線25を、幅方向において互いに間隔を隔てて並列配置させているが、配線25の並列方向は特に限定されず、例えば、長手方向に間隔を隔てて並列配置することもできる。
【0088】
また、上記した図4の説明では、異物10は、配線25間に混入されるものとして現されているが、例えば、図示しないが、並列する配線25間の外側に混入されていても、その存在の有無を検査することができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
【0090】
実施例1
(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が25度である態様)
上記した各部材(下方に向かって拡径するテーパー状の円筒からなる支持筒および複数のLEDを備える発光部と、CCDカメラからなる受光部と、支持台と)を備えるリング照明が採用される検査装置(AVI)を用意した。
【0091】
この検査装置では、発光部を、波長620nmの入射光が、光源の光軸と支持台の上面(後述するベース絶縁層の上面と平行)との成す角度(α)が25度で発光されるように配置した。
【0092】
検査に供される回路付サスペンション基板としては、厚み20μmのステンレス箔からなる長尺の金属支持層の上に、厚み10μmのポリイミドからなるベース絶縁層、厚み12μmの銅からなる導体パターン、および、未硬化のポリアミック酸樹脂からなる未硬化樹脂層の加熱硬化により得られる、厚み17μmのポリイミドからなるカバー絶縁層が形成されたものを用意した。
【0093】
また、カバー絶縁層中には、厚み約15μm、幅約15μm、長さ15μmの異物を混入させた。
【0094】
なお、カバー絶縁層(厚み17μm)の波長620nmの光に対する透過率(T)は12%であり、波長620nmの光に対する反射率(入射角0度)(R)は10%であった。なお、透過率(T)は、分光光度計(V−670、紫外可視近赤外分光光度計、日本分光社製)によって測定した。
【0095】
そして、検査装置の受光部によって入射光をカバー絶縁層に入射させ、それにおいて反射する反射光を受光部によって受光し、CPUによって、カバー絶縁層の隆起部分が現された画像処理図を得た。得られた画像処理図を図5に示す。
【0096】
比較例1
(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が60度である態様)
検査装置の発光部を、光源の光軸と支持台の上面との成す角度(α)が60度で発光されるように配置した以外は、実施例1と同様にして、カバー絶縁層の隆起部分が現された画像処理図を得た。得られた画像処理図を図6に示す。
【0097】
比較例2
(光源の光軸とベース絶縁層の上面との成す角度が50度である態様)
検査装置の発光部を、光源の光軸と支持台の上面との成す角度(α)が50度で発光されるように配置した以外は、実施例1と同様にして、カバー絶縁層の隆起部分が現された画像処理図を得た。得られた画像処理図を図7に示す。
【0098】
(評価)
実施例1、比較例1および2により得られた図5〜図7の画像処理図において、カバー絶縁層中の異物および配線の外形形状を観察し、下記の基準によって、評価した。それらの結果を、表1に示す。
【0099】
○:異物が観察され、配線の外形形状の画像が鮮明であった。
【0100】
×:異物が観察されず、配線の外形形状の画像がぼやけ、不鮮明またはやや不鮮明であった。
【0101】
【表1】

【符号の説明】
【0102】
1 検査装置
2 発光部
3 光源
4 受光部
7 入射光
8 反射光
10 異物
13 光軸(入射光軸)
20 回路付サスペンション基板
22 ベース絶縁層
23 導体パターン
24 カバー絶縁層
α 入射光の光源およびベース絶縁層の上面の成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層、前記ベース絶縁層の上に形成される導体パターン、および、前記ベース絶縁層の上に、前記導体パターンを被覆するように形成されるカバー絶縁層を備える配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査するための検査装置であって、
前記カバー絶縁層に入射する入射光を発光する発光部と、
前記配線回路基板の上方に配置され、前記入射光が前記カバー絶縁層の表面において反射された反射光を受光する受光部と
を備え、
前記発光部は、その光軸と前記ベース絶縁層の上面との成す角度が30度以下となるように、前記入射光を発光することを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
前記発光部の前記光源が、環状に複数配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記入射光は、指向性を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
厚みが50μm以下の前記カバー絶縁層を備える前記配線回路基板における、前記カバー絶縁層中の異物の有無の検査に用いられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
前記導体パターンの良否を検査することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
厚みが3μm以上の前記導体パターンを備える前記配線回路基板における、前記導体パターンの良否の検査に用いられることを特徴とする、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記入射光の波長が、450〜750nmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の検査装置を用いて、前記配線回路基板における前記カバー絶縁層中の異物の有無を検査することを特徴とする、配線回路基板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169822(P2011−169822A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35254(P2010−35254)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】