極微小ダイオード
【課題】
本発明は、サブミクロンサイズのメサ構造による極微小ダイオードを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズの半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする。
本発明は、サブミクロンサイズのメサ構造による極微小ダイオードを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズの半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板上に二重障壁構造をもつサブミクロンサイズ以下の半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献2には、簡便なプロセスで高性能の共鳴トンネルダイオードを作製する手法に関する技術が示されている。作製には、上側電極をエッチング用マスクとして用い、エッチング側壁にゲート電極を有する共鳴トンネルダイオードで、簡便な手法で作製できると述べている。素子作製について述べているが、実装のための上側電極層への配線についての記述が無く、従来の通り横方向への配線と考えられる。
このような微小な構造を基板上に形成する技術としては、特許文献1に 半導体超薄膜層に微細な加工を施して量子ドットを作製する方法に技術が示されている。
微細加工のためのエッチング用マスクに液滴エピタキシーでできる金属または半導体の微結晶を使う。本特許は量子ドットの作製手法について述べているが、電極層および配線については述べていない。
基板上への微細構造(メサ構造)の作成については上記のように幾つかの手段が公知である。
しかし、このような微小なダイオードに電気的なコンタクトをとるには、絶縁部分を通して上部電極と接続する技術が必要になるが、電子線リソグラフィーによるプロセスではメサと配線の正確な位置合わせが必要となる。そのため、高度な微細加工プロセスを使わずにメサ型の極微小ダイオードを提供することは不可能であった。
【特許文献1】特許第2958442号公報
【特許文献2】特開平8−264807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような実情に鑑み、サブミクロンサイズ以下の極微小ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明1は、導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズの半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
極微細の複雑なパターニングや正確な位置合わせを行うことなく、サブミクロンサイズ以下の極微小ダイオードを非常に簡便に、しかも任意の位置に一つまたは複数作製する技術である。
本手法は、Inなどの金属液滴をマスクにしたメサ構造形成技術と電子線誘起蒸着法によるナノメートル幅の配線作製技術を融合したもので、ナノ配線を成長表面に直接コンタクトをとり、上方に伸ばすことで、下側電極層との絶縁を可能にしたところに斬新さがある。そのため、任意の位置のメサに配線を施すことができ、メサと配線との位置合わせをすることなく上側の電極層にコンタクトをとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
文献1や実施例から、ナノメートルサイズのメサ構造の作製は実証済みである。
実施例4から、導電性のあるナノメートル幅の配線が作製されている。配線の品質は物理的なサイズや作製プロセスの改善(有機ガスの純度や種類)で向上可能である。
ナノメートル幅の配線を絶縁膜で埋め込むプロセスも可能であると考えている。 本技術は、共鳴トンネルダイオードの他に、ショットキーダイオード、発光ダイオードなどへの応用が期待できる。
【実施例】
【0007】
図1から7.本技術のプロセスの説明図
ST1:半導体結晶成長装置を用いて、(1)SiドープGaAs基板、(2)下側電極層(SiドープGaAs基板)、(4)障壁層(AlAs)、(3)量子井戸(GaAs)、(4)障壁層(AlAs)、(2‘)上側電極層(SiドープGaAs)を順次重ねた二重障壁共鳴トンネル構造を作製後、その表面に金属(In)液滴(5)を形成する。(図1)
ST2:金属(In)液滴(5)をマスクとしてエッチングし、サブミクロンサイズのメサを作製する。(図2)
ST3:表面の金属(In)液滴(5)を塩酸で取り除く。(図3)
ST4:電子線誘起蒸着でメサ基板上に数十ナノメートル幅の配線(タングステン配線)(6)を作製する。(図4)
ST5:上側電極と下側伝導層を電気的に分離するために、絶縁膜(ポリイミド)(7)を形成する。(図5)
ST6:素子配置に併せ、絶縁膜(7)を配線上部だけエッチングして、配線(6)の上部を露出させる窪み(8)を形成する。(図6)
ST7:上側電極(金)(9)を通常の真空蒸着とリフトオフで作製する。(図7)
【0008】
前記ST1をより具体的に説明する。
分子線エピタキシー装置を用い、Siド−プGaAs基板上に基板温度約570℃で、GaAs/AlAs二重障壁共鳴トンネル構造を作製する。その後、基板温度を200℃まで下げるとともに、砒素用バルブを閉じ、成長室の真空度(PB)が下がるのを待つ。PB =8´10−9Torr程度となったところで、Inセルシャッターのみ開け、In液滴を作製する。Inの照射総量は6´1020 m−2(InAsで100分子層相当)である。
今回の成長条件では、In液滴の大きさは幅約1.3ミクロン、高さ0.3ミクロンで、密度は1−2´1011 m−2であった。
そのIn液滴を形成した試料表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を図8に示す。
【0009】
前記ST2とST3をより具体的に説明する。
図9.リン酸:過酸化水素:水=3:1:75の割合で混ぜたエッチング液を用い、室温で5分30秒エッチングし、その後塩酸に20秒浸しIn液滴(5)を取り除いた。図9は液滴(5)を取り除いたメサ構造の走査電子顕微鏡写真である。
【0010】
前記ST4をより具体的に説明する。
走査電子顕微鏡装置に前記ST3の状態の試料を入れ、有機ガスを局所的に供給し、電子線でガスを分解に、電子線が照射されたところに選択的に金属を堆積させる。この例では、収束した電子線をメサ構造上で止めておくことで、ナノスケール幅の極微細線が上方に成長していく。
図10は、電子線誘起蒸着で形成したナノ配線の例(走査電子顕微鏡写真)である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本技術は、極微小ダイオードの作製に応用できる。具体的には、共鳴トンネルダイオード、ショットキーダイオード、発光ダイオードなどである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例のプロセスのST1を示す模式図
【図2】実施例のプロセスのST2を示す模式図
【図3】実施例のプロセスのST3を示す模式図
【図4】実施例のプロセスのST4を示す模式図
【図5】実施例のプロセスのST5を示す模式図
【図6】実施例のプロセスのST6を示す模式図
【図7】実施例のプロセスのST7を示す模式図
【図8】実施例でIn液滴を形成した試料表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真
【図9】実施例でInをマスクとしてエッチング後、Inを取り除いたメサ構造の走査電子顕微鏡写真
【図10】実施例で、電子線誘起蒸着法で形成したナノ配線の例(走査電子顕微鏡写真)
【符号の説明】
【0013】
(1) SiドープGaAs基板(n+-GaAs)
(2)(2‘) SiドープGaAs層(n+-GaAs)
(3) 量子井戸
(4)(4‘) 障壁層
(5) 液滴
(6) ナノ配線
(7) 絶縁膜
(8) 窪み
(9) 上側電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板上に二重障壁構造をもつサブミクロンサイズ以下の半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献2には、簡便なプロセスで高性能の共鳴トンネルダイオードを作製する手法に関する技術が示されている。作製には、上側電極をエッチング用マスクとして用い、エッチング側壁にゲート電極を有する共鳴トンネルダイオードで、簡便な手法で作製できると述べている。素子作製について述べているが、実装のための上側電極層への配線についての記述が無く、従来の通り横方向への配線と考えられる。
このような微小な構造を基板上に形成する技術としては、特許文献1に 半導体超薄膜層に微細な加工を施して量子ドットを作製する方法に技術が示されている。
微細加工のためのエッチング用マスクに液滴エピタキシーでできる金属または半導体の微結晶を使う。本特許は量子ドットの作製手法について述べているが、電極層および配線については述べていない。
基板上への微細構造(メサ構造)の作成については上記のように幾つかの手段が公知である。
しかし、このような微小なダイオードに電気的なコンタクトをとるには、絶縁部分を通して上部電極と接続する技術が必要になるが、電子線リソグラフィーによるプロセスではメサと配線の正確な位置合わせが必要となる。そのため、高度な微細加工プロセスを使わずにメサ型の極微小ダイオードを提供することは不可能であった。
【特許文献1】特許第2958442号公報
【特許文献2】特開平8−264807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような実情に鑑み、サブミクロンサイズ以下の極微小ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明1は、導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズの半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
極微細の複雑なパターニングや正確な位置合わせを行うことなく、サブミクロンサイズ以下の極微小ダイオードを非常に簡便に、しかも任意の位置に一つまたは複数作製する技術である。
本手法は、Inなどの金属液滴をマスクにしたメサ構造形成技術と電子線誘起蒸着法によるナノメートル幅の配線作製技術を融合したもので、ナノ配線を成長表面に直接コンタクトをとり、上方に伸ばすことで、下側電極層との絶縁を可能にしたところに斬新さがある。そのため、任意の位置のメサに配線を施すことができ、メサと配線との位置合わせをすることなく上側の電極層にコンタクトをとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
文献1や実施例から、ナノメートルサイズのメサ構造の作製は実証済みである。
実施例4から、導電性のあるナノメートル幅の配線が作製されている。配線の品質は物理的なサイズや作製プロセスの改善(有機ガスの純度や種類)で向上可能である。
ナノメートル幅の配線を絶縁膜で埋め込むプロセスも可能であると考えている。 本技術は、共鳴トンネルダイオードの他に、ショットキーダイオード、発光ダイオードなどへの応用が期待できる。
【実施例】
【0007】
図1から7.本技術のプロセスの説明図
ST1:半導体結晶成長装置を用いて、(1)SiドープGaAs基板、(2)下側電極層(SiドープGaAs基板)、(4)障壁層(AlAs)、(3)量子井戸(GaAs)、(4)障壁層(AlAs)、(2‘)上側電極層(SiドープGaAs)を順次重ねた二重障壁共鳴トンネル構造を作製後、その表面に金属(In)液滴(5)を形成する。(図1)
ST2:金属(In)液滴(5)をマスクとしてエッチングし、サブミクロンサイズのメサを作製する。(図2)
ST3:表面の金属(In)液滴(5)を塩酸で取り除く。(図3)
ST4:電子線誘起蒸着でメサ基板上に数十ナノメートル幅の配線(タングステン配線)(6)を作製する。(図4)
ST5:上側電極と下側伝導層を電気的に分離するために、絶縁膜(ポリイミド)(7)を形成する。(図5)
ST6:素子配置に併せ、絶縁膜(7)を配線上部だけエッチングして、配線(6)の上部を露出させる窪み(8)を形成する。(図6)
ST7:上側電極(金)(9)を通常の真空蒸着とリフトオフで作製する。(図7)
【0008】
前記ST1をより具体的に説明する。
分子線エピタキシー装置を用い、Siド−プGaAs基板上に基板温度約570℃で、GaAs/AlAs二重障壁共鳴トンネル構造を作製する。その後、基板温度を200℃まで下げるとともに、砒素用バルブを閉じ、成長室の真空度(PB)が下がるのを待つ。PB =8´10−9Torr程度となったところで、Inセルシャッターのみ開け、In液滴を作製する。Inの照射総量は6´1020 m−2(InAsで100分子層相当)である。
今回の成長条件では、In液滴の大きさは幅約1.3ミクロン、高さ0.3ミクロンで、密度は1−2´1011 m−2であった。
そのIn液滴を形成した試料表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を図8に示す。
【0009】
前記ST2とST3をより具体的に説明する。
図9.リン酸:過酸化水素:水=3:1:75の割合で混ぜたエッチング液を用い、室温で5分30秒エッチングし、その後塩酸に20秒浸しIn液滴(5)を取り除いた。図9は液滴(5)を取り除いたメサ構造の走査電子顕微鏡写真である。
【0010】
前記ST4をより具体的に説明する。
走査電子顕微鏡装置に前記ST3の状態の試料を入れ、有機ガスを局所的に供給し、電子線でガスを分解に、電子線が照射されたところに選択的に金属を堆積させる。この例では、収束した電子線をメサ構造上で止めておくことで、ナノスケール幅の極微細線が上方に成長していく。
図10は、電子線誘起蒸着で形成したナノ配線の例(走査電子顕微鏡写真)である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本技術は、極微小ダイオードの作製に応用できる。具体的には、共鳴トンネルダイオード、ショットキーダイオード、発光ダイオードなどである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例のプロセスのST1を示す模式図
【図2】実施例のプロセスのST2を示す模式図
【図3】実施例のプロセスのST3を示す模式図
【図4】実施例のプロセスのST4を示す模式図
【図5】実施例のプロセスのST5を示す模式図
【図6】実施例のプロセスのST6を示す模式図
【図7】実施例のプロセスのST7を示す模式図
【図8】実施例でIn液滴を形成した試料表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真
【図9】実施例でInをマスクとしてエッチング後、Inを取り除いたメサ構造の走査電子顕微鏡写真
【図10】実施例で、電子線誘起蒸着法で形成したナノ配線の例(走査電子顕微鏡写真)
【符号の説明】
【0013】
(1) SiドープGaAs基板(n+-GaAs)
(2)(2‘) SiドープGaAs層(n+-GaAs)
(3) 量子井戸
(4)(4‘) 障壁層
(5) 液滴
(6) ナノ配線
(7) 絶縁膜
(8) 窪み
(9) 上側電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズ以下の半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする極微小ダイオード
【請求項1】
導電性半導体基板上に二重壁層構造をもつサブミクロンサイズ以下の半導体素子が島状に配してなる極微小ダイオードであって、前記島状の素子の頂部に、これより上方に突出した配線を有し、当該配線を介して前記素子が上部電極に接続された構造を特徴とする極微小ダイオード
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−226918(P2008−226918A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59015(P2007−59015)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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