説明

樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法

【課題】プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイド残りが少なく、プリプレグの吸湿を抑制することができ、しかも効率的に樹脂フィルム積層プリプレグを得ることが可能な樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸する工程(A)と、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することにより、熱硬化性樹脂が半硬化状態とされたプリプレグを形成する工程(B)と、加熱乾燥による余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着する工程(C)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IVH構造をもつ多層プリント配線板の製造に用いられる樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やPDA等の携帯通信情報端末機器、デジタルスチルカメラ等の小型AV機器などの電子機器の小型化、高機能化に伴い、プリント配線板には薄型化、高密度化が要求されている。
【0003】
プリント配線板の高密度化を達成するものとして、基板を多層化することにより占有面積を小さくする、いわゆるビルドアップ工法による多層プリント配線板が用いられている。特に、任意の層間をインナービアホール(IVH:Interstitial Via Hole)によって接続することができるビルドアップ多層プリント配線板は、高密度化が可能で、設計の自由度を高めることができる。
【0004】
多層プリント配線板の導体層間の電気的接続は、スルーホールやビアホールにより行うが、近年では、プリプレグに対してレーザー光を照射することにより孔あけ加工を施し、その孔にスクリーン印刷法などを利用して導電性ペーストを充填することによりフィルドビアを形成することが行われるようになっている(特許文献1参照)。たとえば、全層IVH構造多層プリント配線板の製造方法として、銅粉、エポキシ樹脂、および硬化剤で構成された導電性ペーストを使用してフィルドビアを形成することで層間の接続を取る工法が用いられている。
【0005】
このように導電性ペーストを用いてIVH構造を形成する場合、表裏面が離型性の樹脂フィルムで覆われたプリプレグの厚さ方向に、レーザー光照射により貫通孔を形成し、この樹脂フィルムをマスキング材としてスクリーン印刷法などにより貫通孔に導電性ペーストを充填し、次いで樹脂フィルムを剥離除去する。そして、たとえば複数の両面プリント配線板の間にこのプリプレグを挟み、全体を加熱加圧して圧縮硬化させる。
【0006】
あるいは、樹脂フィルムを除去した後、その片面に金属箔を貼り合わせたプリプレグを2枚用意し、プリプレグの金属箔の面が外側になるようにして、これらの間に少なくとも2層以上の配線パターンを有する回路基板を挟み、全体を加熱加圧して圧縮硬化させ、層間を接続する。その後、表面の金属箔を所定の形状にパターニングする。このようにして作製した両面回路基板をコアとして、上記と同様にして作製した、導電性ペーストが充填されたプリプレグと金属箔とを積層し、多層化していくことで多層プリント配線板が製造される。
【0007】
このように、導電性ペーストで層間接続を取る工法では、導電性ペーストをビアホールに充填する際に、マスキング材としてプリプレグに樹脂フィルムを貼る工程が必要となるが、従来では、一般に用いられている製造装置を用いてプリプレグの供給者がプリプレグを製造した後、プリント配線板の製造者がこれを購入して、プリプレグの製造とは別途の工程として、プリプレグにマスキング材としての樹脂フィルムを圧着し、その後レーザー加工、導電性ペーストの充填等を行っていた。
【特許文献1】特開2004−059896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一度冷却したプリプレグを再度加熱してポリエステルなどの樹脂フィルムを圧着すると、フィルムの密着性が必ずしも良好ではなく、プリプレグと樹脂フィルムとの間にボイドが残るという問題があった。
【0009】
さらに、プリプレグの製造時点から樹脂フィルムを圧着するまでに時間をおくと、プリプレグが吸湿し、このようなプリプレグを用いて製造したプリント配線板の耐熱性に影響するという問題があった。
【0010】
本発明は以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイド残りが少なく、プリプレグの吸湿を抑制することができ、しかも効率的に樹脂フィルム積層プリプレグを得ることが可能な樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0012】
第1に、本発明の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸する工程(A)と、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することにより、熱硬化性樹脂が半硬化状態とされたプリプレグを形成する工程(B)と、加熱乾燥による余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着する工程(C)とを含むことを特徴とする。
【0013】
第2に、上記第1の製造方法において、工程(A)ないし工程(C)を、長尺の繊維基材を下流へ連続的に搬送することにより一連の工程として行うことを特徴とする。
【0014】
第3に、上記第2の製造方法において、工程(C)において、加熱乾燥による余熱で加温された連続的に搬送されるプリプレグの表裏面に、長尺の樹脂フィルムを送り出し、これらを圧着ロールの間を通過させることによりプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着することを特徴とする。
【0015】
第4に、上記第1ないし第3のいずれかの製造方法において、工程(B)においてプリプレグを形成した後、工程(C)においてプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させるまでの間、プリプレグの温度を40℃以上に維持し、40℃以上に加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを熱圧着することを特徴とする。
【0016】
第5に、上記第1ないし第4のいずれかの製造方法において、樹脂フィルムは、プリプレグに形成した貫通孔にスクリーン印刷法により導電性ペーストを充填する際のマスキング材として用いられることを特徴とする。
【0017】
第6に、上記第1ないし第5のいずれかの製造方法において、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、樹脂フィルムがポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、またはポリエステルフィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記第1の発明によれば、熱硬化性樹脂組成物の加熱乾燥によりプリプレグを形成した後、加熱乾燥による余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを熱圧着するようにしたので、プリプレグの表面状態が硬化収縮により固定化されていない状態で樹脂フィルムが圧着される。そのため、プリプレグへの樹脂フィルムの密着性が良好であり、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイド残りを少なくすることができる。
【0019】
そして、熱硬化性樹脂組成物の加熱乾燥によりプリプレグを形成した後、加熱乾燥による余熱で加温されている状態で直ちに連続的に樹脂フィルムを圧着することで、プリプレグの吸湿を抑制することができる。
【0020】
さらに、樹脂フィルムの圧着に熱硬化性樹脂組成物の加熱乾燥工程の余熱を利用しているので、樹脂フィルムの熱圧着のために別途の加熱装置を要することがなく、効率的に樹脂フィルム積層プリプレグを得ることができる。
【0021】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、プリプレグの表裏面に樹脂フィルムを熱圧着する工程を、プリプレグ製造工程の下流において一連の工程として行うようにしたので、一般に使用されているプリプレグ製造装置に樹脂フィルムの搬送および圧着のための装置を組み込むだけで、容易かつ確実に、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイドを低減し、さらにプリプレグの吸湿を抑制することができる。
【0022】
上記第3の発明によれば、上記第2の発明の効果に加え、圧着ロールによって、プリプレグと樹脂フィルムとを確実に密着させることができ、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイド残りを確実に少なくすることができる。
【0023】
上記第4の発明によれば、上記第1ないし第3の発明の効果に加え、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイドをより確実に低減することができ、さらにプリプレグの吸湿をより確実に抑制することができる。
【0024】
上記第5の発明によれば、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、得られた樹脂フィルム積層プリプレグをマスキング材として用いて、プリプレグに形成した貫通孔にスクリーン印刷法により導電性ペーストを充填することで、歩留まり良く、耐熱性に優れたプリント配線板を製造することができる。
【0025】
上記第6の発明によれば、上記第1ないし第5の発明の効果に加え、プリント配線板の絶縁材料として代表的なエポキシ樹脂を用いた場合においても、プリプレグと樹脂フィルムとの間のボイドを確実に低減することができ、さらにプリプレグの吸湿を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0027】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁材料として用いられるものであれば適宜のものを選択することができるが、その具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネート樹脂、あるいはこれらの樹脂を変性したものなどが挙げられる。これらの中でも、成型性、ビアに充填される導電性ペーストとの相性、保存安定性などを考慮すると、エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく使用できる。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂(1分子中に3つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂)などが挙げられる。また、難燃性を付与する目的で、臭素等のハロゲン化合物を含有するエポキシ樹脂、リンを含有するエポキシ樹脂などを用いることもできる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤を配合することができる。硬化剤としては、一般に使用されているもの等を特に制限なく使用できるが、その具体例としては、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等のアミン系硬化剤;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素等の尿素系硬化剤;無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタール酸等の酸無水物系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン酸等の芳香族アミン系硬化剤;ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ピロガロール等のフェノール性化合物系硬化剤などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物の安定性および作業性の観点からは、ジシアンジアミドなどの固形状の潜在性硬化剤粉末を用いることが望ましい。
【0030】
さらに、エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物には、上記の硬化剤と共に、硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン等の三級アミン類;トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
さらに、エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物には、難燃助剤、増粘剤、熱膨張係数の制御、積層板の強靱化などの役割を果たす各種のフィラーや、あるいはエラストマー微粒子などの添加剤を配合することができる。フィラーの具体例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス粉末、アルミナ、酸化マグネシウム、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等の無機フィラー;フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂等の有機フィラーなどが挙げられる。エラストマー微粒子の具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリルゴムなどが挙げられる。
【0032】
さらに、エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、熱重合禁止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、難燃化剤等の添加剤や着色用顔料等を配合することができる。
【0033】
エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂および、必要に応じて配合される上記の各成分をミキサーやブレンダーなどを用いて均一に混合することにより調製することができる。このとき、必要に応じて溶剤で希釈し、ワニスとして調製するようにしてもよい。希釈溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールなどが用いられる。
【0034】
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物においても、上記に準じて熱硬化性樹脂組成物を調製することができる。
【0035】
熱硬化性樹脂組成物に含浸する繊維基材としては織布または不織布が用いられる。織布の具体例としては、直径5〜15μmのフィラメントを、数百本あわせた撚糸(ヤーン)を縦糸、横糸として織り込んだガラスクロスなどが挙げられる。一方、不織布の具体例としては、ガラス繊維を数mm〜数10mm程度に裁断したものを抄紙し、水分散型のエポキシ樹脂等で接着させたガラス不織布(ガラスペーパー)、リンター紙やクラフト紙等の紙基材、有機繊維不織布などが挙げられる。有機繊維不織布を形成する有機繊維の具体例としては、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリル繊維などが挙げられる。中でもアラミド繊維は、耐熱性に富み、熱膨張係数が小さいことからプリプレグに好適な繊維材料であり、炭酸ガスレーザー加工機によるビアホール加工も良好に行うことができる。
【0036】
繊維基材の厚さは、プリプレグの屈曲性や必要な剛性の確保等を考慮して適宜のものとされるが、たとえば10μm〜300μmである。
【0037】
本発明において、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸する工程(A)、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することにより、熱硬化性樹脂が半硬化状態とされたプリプレグを形成する工程(B)、および、加熱乾燥による余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着する工程(C)は、一般に用いられているプリプレグ製造装置に樹脂フィルム供給用の装置を付設して連続的に行うことができる。
【0038】
図1は、本発明に係るプリプレグの製造方法に用いられるプリプレグ製造装置の一実施形態を概略的に示した図である。同図において、符号1は、全体としてのプリプレグ製造装置を示している。このプリプレグ製造装置1は、巻き出しロール11から送り出された帯状の繊維基材2に上述した熱硬化性樹脂組成物21を含浸する樹脂含浸槽20と、熱硬化性樹脂組成物21が含浸された繊維基材2を加熱乾燥して熱硬化性樹脂組成物21を半硬化状態とする乾燥機30と、こうして得られたプリプレグ3の両面に樹脂フィルム4a,4bを供給して熱圧着する樹脂フィルム供給装置40と、樹脂フィルム4a,4bを熱圧着した帯状のプリプレグ3を一定の寸法に枚葉状に切断する切断機50とを備えている。
【0039】
また、プリプレグ製造装置1は、帯状に連続する繊維基材2およびプリプレグ3を搬送するための搬送ロール設備を備えており、この搬送ロール設備は、ロール状に巻かれた繊維基材2を下流へ送り出す巻き出しロール11、樹脂含浸槽20内に配置されたディップロール12、一対のスクイズロール13a,13bなどを含む複数の搬送用ロールを備えており、これらの搬送用ロールによってテンションを制御しながら繊維基材2およびプリプレグ3を下流へ連続的に搬送するようになっている。
【0040】
巻き出しロール11より送り出された繊維基材2は、液状の熱硬化性樹脂組成物21が貯留された樹脂含浸槽20内に、ディップロール12によって掛け支えられる形態で導入され、熱硬化性樹脂組成物21に含浸される。なお、図示はしないが、この樹脂含浸槽20は、熱硬化性樹脂組成物21を貯留する別途のタンクとの間で熱硬化性樹脂組成物21を循環できるようになっており、樹脂含浸槽20内の熱硬化性樹脂組成物21の温度や粘度を自動的に制御するようになっている。
【0041】
熱硬化性樹脂組成物21を含浸した繊維基材2は、樹脂含浸槽20の下流側上方にある一対のスクイズロール13a,13bまで引き上げられ、このスクイズロール13a,13bの間を通過することにより余分な熱硬化性樹脂組成物21が絞られて含浸量が調整されるようになっている。たとえば、エポキシ樹脂ワニスを織布もしくは不織布に含浸させる場合、樹脂含有率はプリプレグ全量に対して30質量%〜80質量%に設定することができる。
【0042】
その後、熱硬化性樹脂組成物21を含浸した繊維基材2は、乾燥機30に導入され、加熱乾燥により、熱硬化性樹脂が半硬化されてプリプレグが形成される。
【0043】
乾燥機30としては、たとえば一般に使用されている縦型乾燥炉、横型乾燥炉などを用いることができる。乾燥方法としては、熱硬化性樹脂組成物21を含浸した繊維基材2の両面に熱風による接触熱を与える方法、輻射パネルを用いて遠赤外線による輻射熱を与える方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などが適用される。
【0044】
乾燥機30における乾燥温度は、用いる熱硬化性樹脂の種類等により異なるが、概ね80℃〜200℃の間であり、乾燥時間は概ね2分〜10分の間である。
【0045】
乾燥機30より引き出されたプリプレグ3は、下流側に配置された樹脂フィルム供給装置40に送られる。樹脂フィルム供給装置40は、一対の樹脂フィルム巻き出しロール14a,14bと、一対の圧着ロール15a,15bとを備えており、樹脂フィルム巻き出しロール14aは、乾燥機30より引き出されたプリプレグ3の一方の面に樹脂フィルム4aを供給し、樹脂フィルム巻き出しロール14bは、プリプレグ3の他方の面に樹脂フィルム4bを供給する。そして、樹脂フィルム4a,4bでプリプレグ3を挟んで圧着ロール15a,15bの間を通過させ、これらを密着させることにより、樹脂フィルム4a,4bをプリプレグ3のそれぞれの面に圧着させる。
【0046】
このとき、圧着ロール15a,15bの位置に搬送されたプリプレグ3は、乾燥機30における加熱乾燥後の余熱によって所定温度に加温された状態になっており、樹脂フィルム4a,4bでプリプレグ3を挟んで圧着ロール15a,15bの間を通過させることにより、樹脂フィルム4a,4bはプリプレグ3のそれぞれの面に熱圧着される。
【0047】
圧着ロール15a,15bによる熱圧着時のプリプレグ3の温度は、熱硬化性樹脂の種類等に応じて、熱圧着が適切に行われる温度とされるが、エポキシ樹脂を用いた場合、プリプレグの温度を40℃以上とすることが好ましい。
【0048】
圧着ロール15a,15bによる熱圧着時のプリプレグ3の温度は、プリプレグ3が乾燥機30を通過した後の圧着ロール15a,15bまでの搬送時間等により適宜に調節することができる。
【0049】
樹脂フィルム4a,4bは、プリプレグ3に形成したビアホールに導電性ペーストを充填する工程においてマスキング材として機能するものであり、さらに搬送時の汚染防止フィルムとしても機能する。そしてその後のプリント配線板製造工程においては樹脂フィルム4a,4bは剥離される。
【0050】
このような点から、樹脂フィルム4a,4bとしては、プリプレグ3に対して十分な接着強度を有すると共に、離型性を有することが必要である。また、プリプレグ3との熱圧着時に熱収縮等の変形が起こらないフィルムであることが望ましい。
【0051】
本発明では、上記した観点から、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどを用いることが好ましい。また、たとえば片面にシリコーン系の離型剤を塗布した厚さ約10μmの上記樹脂からなるフィルムを用いることができる。
【0052】
プリプレグ3の両面に樹脂フィルム4a,4bを圧着した後、下流に搬送された樹脂フィルム積層プリプレグ3は、切断機50において一定の寸法に枚葉状に切断される。この切断機50としては、シャーリングカッター、ロータリーカッター、レーザーカッターなどを用いることができる。
【0053】
以上のようにして、樹脂フィルム積層プリプレグが連続的に製造される。この樹脂フィルム積層プリプレグを用いた多層プリント配線板は、たとえば次のようにして製造される。樹脂フィルム積層プリプレグの厚さ方向に、レーザー光照射により貫通孔を形成し、この樹脂フィルムをマスキング材としてスクリーン印刷法などにより貫通孔に導電性ペーストを充填し、次いで樹脂フィルムを剥離除去する。そして、複数の両面プリント配線板の間にこのプリプレグを挟み、全体を加熱加圧して圧縮硬化させる。
【0054】
あるいは、樹脂フィルムを除去した後、その片面に金属箔を貼り合わせたプリプレグを2枚用意し、プリプレグの金属箔の面が外側になるようにして、これらの間に少なくとも2層以上の配線パターンを有する回路基板を挟み、全体を加熱加圧して圧縮硬化させ、層間を接着する。その後、表面の金属箔を所定の形状にパターニングする。このようにして作製した両面回路基板をコアとして、上記と同様にして作製した、導電性ペーストが充填されたプリプレグと金属箔とを積層し、多層化していくことで多層プリント配線板が製造される。
【0055】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例示によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
(1)エポキシ樹脂ワニスの調製
熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「エピクロンN690−75M」 大日本インキ化学工業株式会社製 エポキシ当量215)を58質量部、硬化剤としてフェノールノボラック(商品名「フェノライト TD−2090−60M」 大日本インキ化学工業株式会社製)を35.5質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル(商品名「2E4MZ」 四国化成株式会社製)を0.06質量部、希釈溶剤としてMEKを6.44質量部配合し、これらをディスパー等で攪拌、均一化した。このときエポキシ樹脂や硬化剤等の固形分(非溶媒成分)が65.0質量%となるように溶媒の量を調整し、樹脂ワニスを得た。
(2)プリプレグの製造
上記のエポキシ樹脂ワニスを用いて、図1に示すプリプレグ製造装置によりプリプレグを製造した。繊維基材としてガラスクロス(商品名「3313/AS891AW」 旭シュエーベル株式会社製)を用い、ガラスクロスを巻き出しロールから送り出して樹脂含浸槽に搬送し、ガラスクロスに上記のエポキシ樹脂ワニスを含浸した。その後、非接触タイプの加熱ユニットにより、約130〜170℃で加熱することによって、ワニス中の溶媒を乾燥除去し、樹脂組成物を半硬化させることでプリプレグを作製した。プリプレグにおける樹脂量は、ガラスクロス66質量部に対し、樹脂54質量部となるように調整した。
【0057】
その後、プリプレグを乾燥機より連続的に引き出し、このプリプレグの表裏面に一対の樹脂フィルムロールから送り出されたポリエチレンフィルム(ジェイフィルム株式会社製 商品名「イージーオーブンフィルム」 厚さ20μm)を対向させ、乾燥機での加熱乾燥後の余熱でプリプレグが加温された状態を維持しながら圧着ロールの間を通過させることで、5kg/cmの条件で密着させ、これらを熱圧着した。このとき、乾燥機から圧着ロールに到達した際のプリプレグ温度を40℃としてポリエチレンフィルムとの熱圧着を行った。
【0058】
このようにしてフィルム付きプリプレグを得た後、その下流にある切断機により一定寸法に切断して試験用プリプレグを得た。
(3)試験用プリプレグの評価
(3-1)ボイド個数
300mm×500mmに切断した試験用プリプレグの表面とそこに圧着されたフィルムとの間に発生したボイドの個数を観察し、試験用プリプレグ10枚の平均値をボイド個数とした。
(3-2)プリプレグの水分量
試験用プリプレグの中央部から5mm×50mmの被検サンプルを切り出し、次いでこのサンプルを窒素気流中で150℃に加熱した。その後、発生した揮発ガスをカールフィッシャー液に導入することによって電量滴定法を行い、プリプレグ中に含まれる水分の質量%を測定した。
(3-3)銅張積層板の耐熱性
試験用プリプレグを用いて、次のようにして銅張積層板を製造した。7枚重ねたプリプレグの両面に銅箔を重ね、これを200℃、30MPaの条件下で60分間加熱加圧して積層成形することにより、銅張積層板を製造した。なお、銅箔は古河サーキットフォイル株式会社製「GT−18」、厚さ18μmのものを使用した。
【0059】
このようにして厚さ0.78mmの銅張積層板を50mm×50mmに切断したものを用意し、JIS C6481に準じて耐熱性の測定を行った。
【0060】
試験用プリプレグの評価結果を表1に示す。
<実施例2>
プリプレグの両面に熱圧着させるフィルム材をポリエステルフィルム(商品名「テトロン」 帝人デュポンフィルム株式会社製 厚さ25μm)に変更した以外は実施例1と同様の条件にて試験用プリプレグを得た。この試験用プリプレグについて、実施例1と同様にボイド個数、プリプレグの水分量、銅張積層板の耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3>
(1)エポキシ樹脂ワニスの調製
熱硬化性樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「エピクロンN690−75M」 大日本インキ化学工業株式会社製 エポキシ当量215)を58質量部、硬化剤としてフェノールノボラック(商品名「フェノライト TD−2090−60M」 大日本インキ化学工業株式会社製)を35.5質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル(商品名「2E4MZ」 四国化成株式会社製)を0.06質量部、希釈溶剤としてMEKを6.44質量部配合し、これらをディスパー等で攪拌、均一化した。このときエポキシ樹脂や硬化剤等の固形分(非溶媒成分)が65.0質量%となるように溶媒の量を調整し、樹脂ワニスを得た。
(2)プリプレグの製造
上記のエポキシ樹脂ワニスを用いて、図1に示すプリプレグ製造装置によりプリプレグを製造した。繊維基材としてアラミド繊維不織布(商品名「サーマウントN718」 デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社製)を用い、アラミド繊維不織布を巻き出しロールから送り出して樹脂含浸槽に搬送し、アラミド繊維不織布に上記のエポキシ樹脂ワニスを含浸した。その後、非接触タイプの加熱ユニットにより、約130〜170℃で加熱することによって、ワニス中の溶媒を乾燥除去し、樹脂組成物を半硬化させることでプリプレグを作製した。プリプレグにおける樹脂量は、アラミド不織布47質量部に対し、樹脂53質量部となるように調整した。
【0061】
その後、プリプレグを乾燥機より連続的に引き出し、このプリプレグの表裏面に一対の樹脂フィルムロールから送り出されたポリエチレンフィルム(ジェイフィルム株式会社製 商品名「イージーオーブンフィルム」 厚さ20μm)を対向させ、乾燥機での加熱乾燥後の余熱でプリプレグが加温された状態を維持しながら圧着ロールの間を通過させることで、5kg/cmの条件で密着させ、これらを熱圧着した。このとき、乾燥機から圧着ロールに到達した際のプリプレグ温度を40℃としてポリエチレンフィルムとの熱圧着を行った。
【0062】
このようにしてフィルム付きプリプレグを得た後、その下流にある切断機により一定寸法に切断して試験用プリプレグを得た。この試験用プリプレグについて、実施例1と同様にボイド個数、プリプレグの水分量、銅張積層板の耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例4>
プリプレグの両面に熱圧着させるフィルム材をポリエステルフィルム(商品名「テトロン」 帝人デュポンフィルム株式会社製 厚さ25μm)に変更した以外は実施例3と同様の条件にて試験用プリプレグを得た。この試験用プリプレグについて、実施例1と同様にボイド個数、プリプレグの水分量、銅張積層板の耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例1>
ポリエステルフィルムを用いなかった以外は実施例2と同様の条件にて、樹脂フィルムなしのプリプレグを製造した。そして、室温まで冷却したプリプレグを用いて、40℃、5kg/cmの条件で、実施例2で用いたポリエステルフィルムを両面に熱圧着した。この試験用プリプレグについて、実施例1と同様にボイド個数、プリプレグの水分量、銅張積層板の耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例2>
ポリエステルフィルムを用いなかった以外は実施例4と同様の条件にて、樹脂フィルムなしのプリプレグを製造した。そして、室温まで冷却したプリプレグを用いて、40℃、5kg/cmの条件で、実施例4で用いたポリエステルフィルムを両面に熱圧着した。この試験用プリプレグについて、実施例1と同様にボイド個数、プリプレグの水分量、銅張積層板の耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示されるように、乾燥機での加熱乾燥後の余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを圧着した実施例1ないし4では、プリプレグと樹脂フィルムの間にボイド残りがほとんどなかった。さらに、乾燥機での加熱乾燥後にすぐに樹脂フィルムでプリプレグの表裏面が覆われたので、プリプレグの吸湿が少なく、プリプレグの水分量が低減した。そのため、このプリプレグから作製した銅張り積層板の耐熱性は良好であった。
【0065】
これに対して、一旦室温まで冷却したプリプレグをあらためて加温して樹脂フィルムを圧着した比較例3,4では、プリプレグと樹脂フィルムの間にボイド残りが観察された。さらに、プリプレグを樹脂フィルムで覆う前に、プリプレグが吸湿したため、その水分量は高くなった。そのため、このプリプレグから作製した銅張り積層板の耐熱性は低下した。
【符号の説明】
【0066】
1 プリプレグ製造装置
2 繊維基材
3 プリプレグ
4a,4b 樹脂フィルム
15a,15b 圧縮ロール
21 熱硬化性樹脂組成物
30 乾燥機
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明に係るプリプレグの製造方法に用いられるプリプレグ製造装置の一実施形態を概略的に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸する工程(A)と、繊維基材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することにより、熱硬化性樹脂が半硬化状態とされたプリプレグを形成する工程(B)と、加熱乾燥による余熱で加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着する工程(C)とを含むことを特徴とする樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。
【請求項2】
工程(A)ないし工程(C)を、長尺の繊維基材を下流へ連続的に搬送することにより一連の工程として行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。
【請求項3】
工程(C)において、加熱乾燥による余熱で加温された連続的に搬送されるプリプレグの表裏面に、長尺の樹脂フィルムを送り出し、これらを圧着ロールの間を通過させることによりプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させて、これらを熱圧着することを特徴とする請求項2に記載の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。
【請求項4】
工程(B)においてプリプレグを形成した後、工程(C)においてプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを密着させるまでの間、プリプレグの温度を40℃以上に維持し、40℃以上に加温されているプリプレグの表裏面に樹脂フィルムを熱圧着することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。
【請求項5】
樹脂フィルムは、プリプレグに形成した貫通孔にスクリーン印刷法により導電性ペーストを充填する際のマスキング材として用いられることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、樹脂フィルムがポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、またはポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の樹脂フィルム積層プリプレグの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−239826(P2008−239826A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83108(P2007−83108)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】