説明

樹脂封止用金型

【課題】 過剰な樹脂の量がキャビティ部から流出するのを防止することができる樹脂封止用金型を提供することを課題とする。
【解決手段】 上金型と、下金型と、前記下金型に設けられるキャビティ部と、前記キャビティ部の周囲に設けられる余剰樹脂の収容凹部と、キャビティ部と収容凹部とを連通して樹脂を前記収容凹部に流入させる連通溝と、を備え、前記連通溝を上流側から下流側に向けて上方に傾斜させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上金型と下金型と前記下金型に設けられるキャビティ部とを備え、半導体素子等を封止するのに用いられる樹脂封止用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂封止用金型としてキャビティ部の周縁には余剰樹脂を受け入れるダミーキャビティを備えたもの(特許文献1等)が提案されている。
【0003】
かかる装置によれば、キャビティ部に供給された樹脂量が余剰であっても、余剰樹脂をダミーキャビティに受け入れることができる。
【特許文献1】特開2004−235530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、下金型のキャビティ部に樹脂を充填した後に型閉めを行う場合には、型締め速度によっては型閉めの際に過剰な量の樹脂がダミーキャビティに流入し、その結果、樹脂の未充填部分が発生し、また、樹脂に空気が巻き込まれて気泡(ボイド)が発生し易くなってパッケージ成形品の品質を低下させるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、過剰な樹脂の量がキャビティ部から流出するのを防止することができる樹脂封止用金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.上金型と、下金型と、前記下金型に設けられるキャビティ部と、前記キャビティ部の周囲に設けられる余剰樹脂の収容凹部と、キャビティ部と収容凹部とを連通して樹脂を前記収容凹部に流入させる連通溝と、を備え、前記連通溝を上流側から下流側に向けて上方に傾斜させたことを特徴とする樹脂封止用金型を提供する。
2.連通溝の溝幅を上流側に行くほど幅狭にしたことを特徴とする前記1に記載の樹脂封止用金型を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャビティ部と収容凹部とを連通して余剰樹脂を前記収容凹部に流入させる連通溝を上流側から下流側に向けて上方に傾斜させたので、型閉めの際に、前記収容凹部への樹脂の流入方向に逆流して樹脂をキャビティ部に戻す流れを発生させて過剰に流出した樹脂をキャビティ部に戻すことができ、また、連通溝によって樹脂の堰き止めを発揮できるので、過剰な量の樹脂がキャビティ部から流出するのを防止でき、その結果、樹脂の未充填部分の発生や気泡の巻き込みを防止することができてパッケージ成形品の品質を向上させることができる。
【0008】
また、連通溝の溝幅を上流側に行くほど幅狭にすれば、連通溝によるバリ部と成形品との繋がり部は幅狭になって、該繋がり部でのバリ部の切除が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る樹脂封止用金型の実施形態について図面を参照しつつ説明する。樹脂封止用金型はオプトデバイスなどのパッケージ成形で採用される樹脂封止装置に用いられる。
【0010】
図5乃至図12は樹脂封止装置及びそれを用いた樹脂封止方法を示す概略図である。図13は封止用樹脂Rの充填動作を示し、図14は型閉め動作を示す。
【0011】
樹脂封止装置は金型1の他に、樹脂充填装置2と、型開閉手段3と、搬入用真空チャンバーC1と、充填用真空チャンバーC2と、型閉め用真空チャンバーC3と、金型1を搬送する搬送手段6と、図外の真空発生手段と、これらを総括的に制御する図外の制御手段と、を備えている。
【0012】
図1乃至図4のように金型1は、上金型11と、キャビティ部13を有する下金型12とを備えている。キャビティ部13は環状の堤部14で囲繞され、堤部14の周囲は余剰の樹脂を収容するための環状の収容凹部15が設けられている。
【0013】
キャビティ部13と収容凹部15との間にはこれらを連通して余剰の樹脂を収容凹部に流入させる連通溝16が設けられている。
【0014】
連通溝16は堤部14の手前に形成される第1溝16aと堤部14に形成される第2溝16bとで構成されている。第2溝16bの溝底面16cは上流側から下流側に向けて上方に傾斜し、また、第2溝16bの溝底面16cの幅は上流側に行くほど幅狭となっている。
【0015】
そして、図14のように下金型12のキャビティ部13に封止用樹脂Rを余分に充填し、上金型11に図外の電子部品をセットし、金型1の型閉めによりパッケージ成形を行うものである。このとき、余剰樹脂は第1溝16a及び第2溝16b内を流れた後に収容凹部15に到達する。なお、電子部品は、半導体が搭載された基体(リードフレーム、実装基板、ケース付きリードフレーム等)である。
【0016】
搬入用真空チャンバーC1、充填用真空チャンバーC2及び型閉め用真空チャンバーC3は、下金型12の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設され、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3と充填用真空チャンバーC2との間にはゲートバルブV2,V3が設けられ、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3には外部と通ずるためのゲートバルブV1,V4が設けられ、真空チャンバーC1,C3及び充填用真空チャンバーC2はそれぞれ図外の開閉バルブ付きの導管を介して前記真空発生装置に接続されている。
【0017】
充填用真空チャンバーC2内には充填装置2が収容され、型閉め用真空チャンバー内には型開閉手段3が収容されている。
【0018】
型開閉手段3は、型開閉シリンダー31によって上金型11を昇降させるものであって、上金型11を着脱自在に保持するチャッキング機構部32を備えている。
【0019】
充填装置2は、図13のように下金型12のキャビティ部13に封止用樹脂Rを充填するものであって、定位置に保持される孔部21を有する孔版22と、孔版22上には図外の駆動手段にて往復動するスキージ23と、スキージ23の上方に配設される図外の樹脂供給管と、下金型12の昇降テーブル24を備えている。なお、孔版22の厚みは0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.2〜1.0mmである。一方、下金型12の厚みは0.5〜250mmである。
【0020】
搬送手段6はベルトコンベアにより構成されている。
【0021】
前記制御手段は、型開閉手段3に対しては上金型11が低速で降下して型閉めが行われるように型開閉シリンダー31を制御する。型閉め速度は、例えば約0.01〜約5.00mm/secに設定されて封止用樹脂Rへの気泡の巻き込みが回避されるようになっている。なお、下金型12を低速上昇させて型閉めを行うようにしても良い。
【0022】
次に、以上のように構成される樹脂封止装置を用いた樹脂封止方法について説明する。
(1)まず、図5のように搬入用真空チャンバーC1のゲートバルブV1を開いて搬送手段6によって下金型12を搬入用真空チャンバーC1内へ導入する。
(2)次に、図6のようにゲートバルブV1,V2,V3を閉じ、上記真空発生装置を作動させて搬入用真空チャンバーC1及び充填用真空チャンバーC2内を同等の真空圧にする。その後、図7のようにゲートバルブV2を開けて下金型12を充填用真空チャンバーC2内へ搬送し、図8のように下金型12のキャビティ部13が孔版22の孔部21の真下に位置するように昇降テーブル24上にセットした後、昇降テーブル24を上昇させて下金型12を孔版22に接触させると共に、下金型12のキャビティ部13と孔版22の孔部21とを合致させる。
(3)次に、図13のように充填装置のスキージ23の作動により孔版22の孔部21を通じて下金型12のキャビティ部13内に封止用樹脂Rを充填する。
【0023】
一方、樹脂充填中に、図9のようにゲートバルブV1を開いて後行する下金型12A(12)を搬入用真空チャンバーC1内に搬入し、搬入完了後に図10のようにゲートバルブV1を閉じて搬入用真空チャンバーC1内を真空化させ、樹脂充填が完了した先行する下金型12が昇降テーブル24によって降下させるまでの間、下金型12を搬入用真空チャンバーC1内に待機させる。
(4)そして、すべての真空チャンバーC1,C2,C3は同じ真空レベルになったときに、図11のようにゲートバルブV2,V3を開いて先行の下金型12を型閉め用真空チャンバーC3内に、後行の下金型12A(12)を充填用真空チャンバーC2内にそれぞれ搬送する。
(5)次に、型閉め用真空チャンバーC3内において、上金型11を上述のように低速で降下させて型閉めによるパッケージ成形を行う。なお、上金型11には予め電子部品がねじ等の固着具で固定されている。
【0024】
電子部品Aが固定された上金型11は、手作業によって型閉め用真空チャンバーC3内のチャッキング機構部32の上昇位置(チャック位置)にセットされて該チャッキング機構部32で保持されるが、ベルトコンベア等の搬送手段でチャック位置まで搬送するようにしても良い。なお、上金型11をセットするときには、ゲートバルブV3が閉じられて充填用真空チャンバーC2の真空状態が保持される一方、開かれたゲートバルブV4から型閉め用真空チャンバーC3内に上金型11が搬入される。
(6)型閉め完了は、図12のようにゲートバルブV1,V4を開いて搬入及び型閉め用真空チャンバーC1,C3内を大気圧に戻し、型閉めされた状態の金型1は搬送手段6によって型閉め用真空チャンバーC3から図外の乾燥機に向けて搬送される。その一方、充填用真空チャンバーC2内の後行する下金型12A(12)を昇降テーブル24にセットして上述のように下金型12のキャビティ部13内に封止用樹脂Rを充填し、搬入用真空チャンバーC1内には更に後行する下金型12B(12)が搬入される。
【0025】
前記乾燥機では、金型1内の封止用樹脂Rを熱硬化させ、その後、金型1を開いて該金型1からパッケージ成形品を取り出す。
【0026】
なお、真空チャンバーC1,C2,C3内の真空の度合い(絶対圧力)を0,01〜60.0KPaの範囲に設定し、かつ、その範囲内で樹脂の粘度状態に応じて変更するのが好ましい。
このように下金型12のキャビティ部13への封止用樹脂Rの充填から金型1の型閉めまでを真空下で行い、且つ、低速で型閉めを行うので、封止用樹脂Rへの空気の巻き込みを防止することができる。しかも、搬入用真空チャンバーC1を用いて下金型12を次々と真空チャンバーC2,C3に投入することができるので、タクトタイムが短くなって生産性を向上させることができる。
本発明に係る金型1の型閉めは大気圧下で行っても良く、また、金型1の型閉め速度も特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る樹脂封止用金型の実施形態の断面図である。
【図2】同実施形態の斜視図である。
【図3】同実施形態の平面図である。
【図4】同実施形態の連通溝の形状を示す平面図である。
【図5】本発明の樹脂封止装置の実施形態を用いた樹脂封止工程を示す概略図である。
【図6】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図7】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図8】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図9】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図10】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図11】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図12】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図13】封止用樹脂の充填動作を示す説明図である。
【図14】型閉め動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
A 電子部品
R 封止用樹脂
1 金型
11 上金型
12 下金型
13 キャビティ部
14 堤部
15 収容凹部
16 連通溝
16a 第1溝
16b 第2溝
16c 溝底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と、下金型と、前記下金型に設けられるキャビティ部と、前記キャビティ部の周囲に設けられる余剰樹脂の収容凹部と、キャビティ部と収容凹部とを連通して樹脂を前記収容凹部に流入させる連通溝と、を備え、
前記連通溝を上流側から下流側に向けて上方に傾斜させたことを特徴とする樹脂封止用金型。
【請求項2】
連通溝の溝幅を上流側に行くほど幅狭にしたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止用金型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−30272(P2007−30272A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214893(P2005−214893)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】