説明

樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法

【課題】樹脂組成物の連続した安定塗布を実現することができるとともに、樹脂組成物を最後まで無駄なく使い切って効率的に使用することができる樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法を提供する。
【解決手段】シリンジ1は、吐出部5の内面とネジ部7のネジ山の頂との距離が0.1〜0.2mmに設計され、ノズル3と接続部4を介して連結され、加圧によりシリンジ1内を下方向に移動できる蓋部2の中心部に、シャフト部8との距離が0.01〜0.1mmの穴部2aが設けられ、これらが塗布機本体12内に予め固定された設置部位6に固定され、シリンジ1が持ち上げられて、空隙を作らないように、シャフト部8が20〜50rpmで回転されながらシリンジ1内に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば回路基板上に樹脂組成物をドット状に塗布する樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば回路基板表面への樹脂組成物の塗布方法としては、ノズルから樹脂組成物を吐出させ、その樹脂組成物を回路基板上の複数の指定位置にドット状に塗布するディスペンス法(例えば、特許文献1を参照)がある。
【0003】
以上のような従来の樹脂組成物塗布方法について、図面を用いて以下に説明する。
図7は従来の樹脂組成物塗布装置を用いた樹脂組成物塗布方法におけるフロー説明図である。この樹脂組成物塗布方法は、図7に示すように、予め樹脂組成物101をシリンジ102内に充填し、その樹脂組成物101に対して蓋部103を介して定常的に空気圧などにより圧力104を加えることにより、樹脂組成物101をシリンジ102内からチューブ構造の通路105を通じてハウジング106内に供給しておき、そのハウジング106を回路基板112上で指定した塗布位置の上方に移動させ、ハウジング106内に隙間107を設けて配置されたネジ部108を、回転軸110および繋ぎ部111を通じて短時間回転させることにより、ノズル109の先端から樹脂組成物101を吐出させる工程(図7(a))と、ハウジング106を回路基板112に対して降下させることにより、ノズル109から吐出させた樹脂組成物101を回路基板112上の塗布位置にドット状に塗布する工程(図7(b)〜図7(c))と、ハウジング106を回路基板112に対して上昇させることにより、回路基板112上にドット状に塗布された樹脂組成物113を残した状態(図7(d))で、ハウジング106を次に指定した塗布位置の上方まで回路基板112に対して平行移動させる工程(図7(e))とを有し、ハウジング106が次の塗布位置の上方まで到達したら、図7(a)の工程から、塗布位置の状況に応じて同様の動作を繰り返す塗布方法である。
【特許文献1】特開2001−135927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の塗布方法では、シリンジ102からハウジング106までの樹脂組成物101の通路105がチューブ構造であり、その通路105内さらにはハウジング106内において樹脂組成物101の狭部を通過する距離が140〜150mmにもなるため、樹脂組成物101に対して長時間のせん断負荷がかかってしまう。
【0005】
そのため、樹脂組成物101の回路基板112への塗布量は制御することによって一定にできるものの、樹脂組成物101の粘性や硬化性がその作製時とは変化してしまい樹脂組成物101がハウジング106内で硬化することで連続して安定塗布することが困難になるということや、樹脂組成物101がチューブ構造の通路105内に残留することで樹脂組成物101を使い切ることができないということや、さらにシリンジ交換時に空隙ができてしまい空打ちの原因になるということ、などの問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、樹脂組成物の粘性や硬化性の作製時からの変化を低減して連続した安定塗布を実現することができるとともに、従来のようにチューブ構造の通路での樹脂組成物の残留を無くして樹脂組成物を最後まで無駄なく使い切って効率的に使用することができる樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の樹脂組成物塗布装置は、液状の樹脂組成物をノズルから基板に塗布する樹脂組成物塗布装置において、前記樹脂組成物を保持するシリンジと、前記シリンジ内の樹脂組成物に圧力を加える加圧機構と、前記シリンジ内に位置するネジ部を有し前記ネジ部を回転可能なシャフト部とを備え、前記ノズルは、前記シリンジの先端に設けられ、前記加圧機構が前記樹脂組成物を加圧するとともに前記シャフト部が前記ネジ部を回転することにより、前記樹脂組成物を吐出するよう構成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1に記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記シリンジは、その上部の径が下部の径より大きく、前記下部において、前記シャフト部の回転により前記樹脂組成物を前記ノズルから吐出するよう構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記シリンジ内の前記樹脂組成物に定常的に加えられる圧力は0.1〜0.3MPaであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記ネジ部のネジ山の頂と前記シリンジの下部に形成された吐出部の内面との距離は0.1〜0.2mmであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記ネジ部は、長さが10〜20mm、ネジ山の高さが0.1〜0.5mm、ピッチが1〜2mmであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記加圧機構は、加圧により前記シリンジ内を下方向に移動して前記シリンジ内の樹脂組成物に圧力を加える蓋部を有し、前記蓋部は、その中心部に前記シャフト部との距離が0.01〜0.1mmの穴部を設け、前記シャフト部は、前記穴部に前記ネジ部を通した状態で回転するよう構成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記シャフト部の回転速度は50〜200rpmであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8に記載の樹脂組成物塗布装置は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置であって、前記シリンジは、前記吐出部の温度を30〜40℃の範囲で一定に保つよう構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項9に記載の樹脂組成物塗布方法は、液状の樹脂組成物をノズルから基板に塗布する樹脂組成物塗布方法であって、前記樹脂組成物をシリンジで保持し、前記シリンジ内の樹脂組成物に一定の圧力を加えながら、前記シリンジ内に位置するネジ部を有するシャフト部で前記ネジ部を回転させることにより、前記シリンジの先端に設けられた前記ノズルから、前記樹脂組成物を吐出させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項10に記載の樹脂組成物塗布方法は、請求項9に記載の樹脂組成物塗布方法であって、前記シリンジ内の前記樹脂組成物に定常的に加えられる圧力を0.1〜0.3MPaとすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項11に記載の樹脂組成物塗布方法は、請求項9または請求項10に記載の樹脂組成物塗布方法であって、前記シャフト部の回転速度を50〜200rpmとすることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項12に記載の樹脂組成物塗布方法は、請求項9から請求項11のいずれかに記載の樹脂組成物塗布方法であって、前記吐出部の温度を30〜40℃の範囲で一定に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、従来はシリンジからノズル取付け部分への樹脂組成物の通路であったチューブ構造部分を無くして、シリンジとノズル取付け部分とを一体化するとともに、回転機構部の先端部のみに形成されたネジ部を直接シリンジ内に投入することにより、樹脂組成物にせん断負荷のかかる距離を短縮し、樹脂組成物への余分なせん断負荷を無くすことができる。
【0020】
そのため、樹脂組成物の粘性や硬化性の作製時からの変化を低減して連続した安定塗布を実現することができるとともに、従来のようにチューブ構造の通路での樹脂組成物の残留を無くして樹脂組成物を最後まで無駄なく使い切って効率的に使用することができる。
【0021】
さらに、樹脂組成物の残留に対する清掃作業をネジ部とノズル部分のみとして簡素化し、製造工程全体での工数を著しく減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を示す樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明の樹脂組成物塗布装置による樹脂組成物塗布方法では、シリンジ内に充填された樹脂組成物に定常的に圧力を加えることにより、シリンジ下部へ樹脂組成物を供給する工程と、シリンジ内に、回転機構として先端部にネジ部を設けたシャフト部を回転させることにより、ノズルの先端部から樹脂組成物を吐出させる工程とを有する。
【0023】
これにより、ハウジング内での樹脂組成物の硬化を無くし、従来の方法ではチューブ構造の通路内に残留していた樹脂組成物を、残留させること無く使い切ることが可能である。また、シリンジ交換時に空隙が生じる恐れもない。さらに、回転機構はネジ部の回転とほぼ同時に樹脂組成物がノズルから吐出するため、0.12〜0.07secの高速タクトにも追従できる。
【0024】
従って、圧力、ネジ部の回転速度および回転時間を適正値に設定すれば、塗布量バラツキや空打ち、材料のチクソ比が適正でないときの糸引きや飛びによる基板電極の汚損などが生じることもない。また、ネジ部が短いため樹脂組成物へせん断がかかりにくく、樹脂組成物をその作製時に近い状態で塗布できるので、樹脂組成物を変化させることもなく、連続して安定した塗布が可能である。
【0025】
以上のような樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法を、図1〜図4を用いて具体的に説明する。
図1は本実施の形態の塗布装置を用いた塗布方法における前工程のフロー説明図である。図2は図1(a)の工程における詳細説明図である。図3は図1(b)〜図1(c)の工程における詳細説明図である。図4は本実施の形態の塗布装置を用いた塗布方法における後工程のフロー説明図である。
【0026】
図1〜図4において、1はシリンジ、2は蓋部、3はノズル、4は接続部、5は吐出部、6は設置部位、7はネジ部、8はシャフト部、9は繋ぎ部、10は回転軸、11は中空管、12は塗布機本体、13は回路基板、14は樹脂組成物である。
【0027】
シリンジ1は、吐出部5の内面とシャフト部8におけるネジ部7の山の頂との距離が0.1〜0.2mmになるように設計され、図1に示すように、吐出部5が接続部4を介してノズル3と連結されており、その状態で、シリンジ1内の下部に樹脂組成物14を充填し、さらに樹脂組成物14の上面に、外部からの加圧によりシリンジ1内を下方向に移動できる蓋部2を載置する(図1(a))。
【0028】
なお、蓋部2には、その中心部に、シャフト部8との距離が0.01〜0.1mmとなる内面を有する穴部2aが設けられている。また、図2(a)〜図2(c)に示すように、接続部4は、O(オー)−リングO1を介してノズル3と連結され、六角留めネジN1で結合されている。その上部より、予め樹脂組成物が充填されたシリンジ1の吐出部5が挿入され、O(オー)−リング(図示せず)にて固定されている。
【0029】
これら(図1(a)の状態)を、塗布機本体12内に予め固定しておいた設置部位6に固定する(図1(b)〜図1(c))。
なお、図3(a)〜図3(d)に示すように、設置部位6は、上部が塗布機本体12と結合する円筒型ネジ部6a、中央部がシリンジセッティング用の半円筒型部6b、下部が接続部4と結合する馬蹄形部6cからなっている。まず、設置部位6を図1(b)の状態まで降ろし、図3(a)〜図3(b)に示すように、設置部位6の下部にある馬蹄形部6cに、図1(a)の状態のまま接続部4を縦方向に挿入する。次に、図3(b)〜図3(c)に示すように、接続部4を馬蹄形部6c内で90度回転させることにより、設置部位6の馬蹄形部6cに形成された突部2cと接続部4の溝部2bを連結する。
【0030】
また、シャフト部8は、予め繋ぎ部9を介して回転軸10と連結して固定されており、ネジ部7は、長さが10〜20mm、ピッチが1〜2mm、ネジ山の高さが0.1〜0.5mmとなるように形成されている。
【0031】
そして、シャフト部8を回転軸10により20〜50rpmで回転させながら、設置部位6を塗布機本体12の内面との間に空隙を作らないようにして持ち上げて行き、さらに回転させることにより、ネジ部7が蓋部2の穴部2aを経由してシリンジ1内に充填された樹脂組成物14内を通過しさらに吐出部5を通過してノズル3に到達するまで、シャフト部8をシリンジ1内に挿入する(図1(c)〜図1(d))。
【0032】
次に、塗布機本体12とともにノズル3を、回路基板13上で樹脂組成物14を塗布すべき所定位置の上方に移動し、図4に示すように、回転軸10によりシャフト部8の回転速度を50〜200rpmに上げるとともに、シリンジ1内に充填された樹脂組成物14に対して、外部から中空管11を通して蓋部2を介して定常的に圧力を加えることにより、シリンジ1内に充填された樹脂組成物14を、シリンジ1の下部へと供給し、さらにネジ部7を通過してノズル3から吐出させる(図4(a))。
【0033】
このとき、従来の塗布方法とは異なり、シリンジ1内に充填された樹脂組成物14がネジ部7に対してあらゆる方向から入り込むため、空隙を抑制し塗布量が安定する。この際の圧力は、実装に必要な塗布量を確保するため、0.1〜0.3MPaであることが望ましい。
【0034】
以上のような状態で、塗布機本体12とともにノズル3を下降させることにより、回路基板13上の所定位置に樹脂組成物14を付着させ、暫時塗布機本体12とともにノズル3を停止させた状態で、さらに回転軸10によりシャフト部8を回転させることにより、樹脂組成物14を必要とする塗布径になるまで濡れ広がらせる(図4(a)〜図4(b))。
【0035】
その後、塗布機本体12とともにノズル3を上昇させることにより、回路基板13上の所定位置に樹脂組成物14をドット状に残留させた状態で(図4(b)〜図4(c))、塗布機本体12とともにノズル3を、回路基板13上で次に樹脂組成物14を塗布すべき箇所の上方に平行移動させる(図4(d))。
【0036】
以上の塗布方法において、樹脂組成物14の物性変化を防止し、塗布を連続して安定させるという点から、ノズル3の先端部における樹脂組成物14の温度を30〜40℃の範囲で一定に保って実施することが望ましい。温度を一定に保つ手段としては、電熱コイル、ウォータバス、圧電素子などの温度調節装置が例として挙げられる。
【0037】
なお、本発明の塗布方法に用いられる樹脂組成物は、低粘度液状樹脂、硬化剤および充填剤からなる樹脂組成物である。低粘度液状樹脂は、常温で低粘度の液状であればよい。低粘度液状樹脂を用いるため、樹脂組成物も低粘度となり、高速タクトに追従できるようになる。この場合、低粘度液状樹脂の粘度は、E型粘度計を用いて30℃でロータ回転数0.5rpmで測定した場合に5〜10Pa・sであることが好ましい。
【0038】
ここで、光硬化型樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、それらの構成モノマーの共重合体などのアクリル系樹脂があり、熱硬化型樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などがある。
【0039】
また、光硬化型樹脂に用いられる硬化剤としては、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイルなどの有機過酸化物があり、熱硬化型樹脂に用いられる硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、アミンアダクト、ポリメルカプタン、酸無水物、液状フェノール樹脂などがある。また、充填剤としては、シリカ、タルク、マイカ、アルミナ、カオリンなどの無機充填剤の他、紙繊維、木屑、樹脂粉末などの有機充填剤が用いられる。
【0040】
なお、硬化後の樹脂組成物に充分な接着強度を付与する観点から、充填剤の樹脂組成物における配合率は、6〜30重量%、さらには7〜25重量%であり、充填剤の平均粒径は、0.1〜150μmで、さらには1〜50μmが望ましい。
【0041】
また、前記の樹脂組成物は、ノズル上昇時に寸断されやすく、糸曳きや飛び散りを防止する観点から、チクソ性付与剤を含有することが好ましい。チクソ性付与剤は、環境に対して無害であるという点から、無機物の微粒子であることが好ましい。
【0042】
また、樹脂組成物にせん断応力が加わったときに粒子間の摩擦が生じにくく、流動性を増加させやすいという点から、チクソ性付与剤は球状の微粒子であることが好ましい。さらに、チクソ性付与剤の平均粒径は、樹脂組成物にせん断応力が加わっていないときには粒子同士が凝集して流動性を失いやすいという点から、10〜20nmで、さらには10〜15nmであることが好ましい。また、チクソ性付与剤の樹脂組成物における配合率は、ディスペンス法による塗布に最適なチクソ比を確保できるという点から、1.5〜3重量%で、さらには2〜3重量%であることが好ましい。
【0043】
ここで、チクソ性付与剤の具体例としては、例えば四塩化珪素を酸性水溶液などにより加水分解させて得られる疎水性シリカ微粉末(商品名:アエロジル)が挙げられる。疎水性シリカ微粉末を含有する樹脂組成物は、静止しているときは、その粉末の粒子表面に存在するシラノール基の作用により粒子が凝集しているため粘度が高くなる。また、せん断応力を加えると、凝集状態が崩れ、球形粒子であるため粒子間で摩擦を起こすこともないため流動性が上昇して粘度が下がる。
【0044】
なお、前記の樹脂組成物の粘度は、高速タクトに追従できるという点から、E型粘度計を用いて35℃で、ロータ回転数0.5rpmで測定した場合に、100〜250Pa・sで、さらには150〜250Pa・sであることが好ましい。また、スリップすることなくネジ部の回転により吐出され、塗布量のバラツキや空打ちを防止できるという点から、E型粘度計を用いて35℃で、ロータ回転数50rpmで測定した場合に、3〜10Pa・sで、さらには4〜8Pa・sであることが好ましい。
【0045】
また、前記の樹脂組成物のチクソ比は、ノズル上昇時に樹脂組成物が寸断されやすく、糸曳きや飛び散りを防止することができる点から、4.5〜7.5であることが好ましい。なお、チクソ比とは、ここでは、高せん断時の粘度(前記ロータ回転数50rpmで測定したときの粘度)に対する低せん断時の粘度(前記ロータ回転数0.5rpmで測定したときの粘度)の比をいう。
【0046】
以下、上記において図1〜図4を用いて説明した本実施の形態の樹脂組成物塗布装置および方法による効果が得られる部材条件(ネジ部7のネジ山の頂とシリンジ1の吐出部5内面との距離、ネジ部7の長さ、シャフト部8と穴の距離)およびプロセス条件(温度、圧力、回転速度)を確認決定するために実施した実験について、具体的に説明する。
(実施の形態1)
まず、熱硬化型低粘度液状樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の重量比1:1の混合物に、ポリメルカプタン系マイクロカプセル型の硬化剤が配合された混合物(味の素(株)製のXBM−3300(商品名)、30℃でロータ回転数0.5rpmで測定した粘度は6Pa・s)を48.3g、チクソ性付与剤である平均粒径12nmの球形疎水性シリカ微粉末(日本アエロジル(株)製のアエロジルRY200(商品名))を1.5g、および、タルク系充填剤(日本ミストロン(株)製のミストロンCB(商品名))を12.5g計量して混練機に投入し、25分間混練した。
【0047】
次に、前記の樹脂組成物の粘度を、E型粘度計で35℃でロータ回転数0.5rpmおよび50rpmでそれぞれ測定し、チクソ比を求めた。
また、塗布におけるプロセス条件(ノズル内の樹脂組成物の温度:35℃、定常圧力(空気圧):0.14MPa、ネジ部の回転速度:160rpm)と部材条件(ネジ部のネジ山の頂とシリンジ吐出部内面との距離:0.15mm、ネジ部の長さ:15mm、ネジ部のピッチ:1.5mm、ネジ山の高さ:0.35mm、シャフト部と穴の距離:0.05mm)を設定した。
【0048】
さらに、1タクトあたりのネジ部の回転時間を15msec、塗布タクトを0.07secに設定し、図1に示すようなネジ部シリンジ一体型の樹脂組成物塗布装置により、従来のネジ式ディスペンサーと比較するため、以下のような評価を行った。
【0049】
ここでは、塗布径0.6mmを目標に100000点の塗布を毎日決まった時間に行い、何日間、教示値の認識エラーや接着剤硬化なく安定塗布が可能かを評価した。また、初日に関しては塗布不良率(糸曳き、飛び散り)測定を行っている。
【0050】
以上のような塗布方法で、まず、プロセス条件(温度、圧力、回転速度)を変更して実験を行った。この場合の塗布結果と総合評価を表す説明図を図5に示す。
(実施の形態2)
次に、実施の形態1の場合と同様の樹脂組成物を得、部材条件(ネジ部のネジ山の頂とシリンジ吐出部内面との距離、ネジ部の長さ、シャフト部と穴の距離)を変更し、同様の実験を行った。この場合の塗布結果と総合評価を表す説明図を図6に示す。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法は、樹脂組成物の粘性や硬化性の作製時からの変化を低減して連続した安定塗布を実現することができるとともに、従来のようにチューブ構造の通路での樹脂組成物の残留を無くして樹脂組成物を最後まで無駄なく使い切って効率的に使用することができるもので、例えば基板の表面実装における接着・接合材料塗布技術等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の樹脂組成物塗布装置を用いた樹脂組成物塗布方法における前工程のフロー説明図
【図2】図1(a)の工程における詳細説明図
【図3】図1(b)〜図1(c)の工程における詳細説明図
【図4】同実施の形態の樹脂組成物塗布装置を用いた樹脂組成物塗布方法における後工程のフロー説明図
【図5】本発明の実施の形態1の樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法における塗布結果と総合評価の説明図
【図6】本発明の実施の形態2の樹脂組成物塗布装置および樹脂組成物塗布方法における塗布結果と総合評価の説明図
【図7】従来の樹脂組成物塗布装置を用いた樹脂組成物塗布方法におけるフロー説明図
【符号の説明】
【0053】
1 シリンジ
2 蓋部
3 ノズル
4 接続部
5 吐出部
6 設置部位
7 ネジ部
8 シャフト部
9 繋ぎ部
10 回転軸
11 中空管
12 塗布機本体
13 回路基板
14 樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の樹脂組成物をノズルから基板に塗布する樹脂組成物塗布装置において、
前記樹脂組成物を保持するシリンジと、
前記シリンジ内の樹脂組成物に圧力を加える加圧機構と、
前記シリンジ内に位置するネジ部を有し前記ネジ部を回転可能なシャフト部とを備え、
前記ノズルは、
前記シリンジの先端に設けられ、
前記加圧機構が前記樹脂組成物を加圧するとともに前記シャフト部が前記ネジ部を回転することにより、
前記樹脂組成物を吐出するよう構成した
ことを特徴とする樹脂組成物塗布装置。
【請求項2】
前記シリンジは、その上部の径が下部の径より大きく、前記下部において、前記シャフト部の回転により前記樹脂組成物を前記ノズルから吐出するよう構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項3】
前記シリンジ内の前記樹脂組成物に定常的に加えられる圧力は0.1〜0.3MPaである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項4】
前記ネジ部のネジ山の頂と前記シリンジの下部に形成された吐出部の内面との距離は0.1〜0.2mmである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項5】
前記ネジ部は、長さが10〜20mm、ネジ山の高さが0.1〜0.5mm、ピッチが1〜2mmである
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項6】
前記加圧機構は、加圧により前記シリンジ内を下方向に移動して前記シリンジ内の樹脂組成物に圧力を加える蓋部を有し、
前記蓋部は、その中心部に前記シャフト部との距離が0.01〜0.1mmの穴部を設け、
前記シャフト部は、前記穴部に前記ネジ部を通した状態で回転するよう構成した
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項7】
前記シャフト部の回転速度は50〜200rpmである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項8】
前記シリンジは、前記吐出部の温度を30〜40℃の範囲で一定に保つよう構成した
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の樹脂組成物塗布装置。
【請求項9】
液状の樹脂組成物をノズルから基板に塗布する樹脂組成物塗布方法であって、
前記樹脂組成物をシリンジで保持し、
前記シリンジ内の樹脂組成物に一定の圧力を加えながら、
前記シリンジ内に位置するネジ部を有するシャフト部で前記ネジ部を回転させることにより、
前記シリンジの先端に設けられた前記ノズルから、前記樹脂組成物を吐出させる
ことを特徴とする樹脂組成物塗布方法。
【請求項10】
前記シリンジ内の前記樹脂組成物に定常的に加えられる圧力を0.1〜0.3MPaとする
ことを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物塗布方法。
【請求項11】
前記シャフト部の回転速度を50〜200rpmとする
ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の樹脂組成物塗布方法。
【請求項12】
前記吐出部の温度を30〜40℃の範囲で一定に保つ
ことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の樹脂組成物塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6218(P2009−6218A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168310(P2007−168310)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】