説明

樹脂被覆装置

【課題】環状のフレームに粘着テープを介して一体化されたワークの表面にスピンコートで液状樹脂を被覆する際、フレームの吸着パッドが吸着する部分への飛散樹脂の付着を防いで、フレームを介してのワークの搬送を円滑にする。
【解決手段】スピンナテーブル30における搬送機構10の吸着パッド13に対応する複数箇所に振り子体50を配設する。振り子体50は、錘部53と、吸着パッド13がフレーム2に吸着する部分(吸着パッド作用部2a)を被覆可能な爪部52と、錘部53と爪部52とを連結する連結部54と、軸部55とを備える。振り子体50は、スピンナテーブル30の静止時には開放位置にあり、スピンコート時にスピンナテーブル30が回転すると、遠心力により軸部55を支点として被覆位置まで揺動し、爪部52がフレーム2の上面を覆ってフレーム2の上面の吸着パッド作用部2aへの飛散樹脂の付着を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークの表面に水溶性等の特性を有する液状樹脂を被覆する樹脂被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
半導体ウェーハのダイシングは、高速回転させた切削ブレードを切り込ませていく方法が一般的であったが、近年では、レーザ光線を照射してウェーハを溶融しながら切断するレーザダイシングも実用化されてきている。このようなレーザダイシングの場合、レーザ光線照射時にデブリと呼ばれる蒸散成分の飛沫がウェーハの表面に付着し、品質を低下させるという問題が起こっていた。そこで本出願人は、ウェーハの表面に樹脂を被覆した状態で当該表面にレーザ光線を照射すれば、デブリは樹脂に付着して直接ウェーハ表面には付着せず、品質を確保することができる技術を提案した(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−322168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献には、環状のフレームの内側にダイシングテープ(粘着テープ)を介してウェーハを一体化し、その状態のウェーハをスピンナテーブルに保持して回転させながらウェーハ表面に水溶性を有する液状樹脂を滴下して均一に被覆するといった技術が開示されている。ところが、このようないわゆるスピンコートによってフレームと一体化したウェーハの表面に液状樹脂を滴下すると、該樹脂が遠心力によってウェーハの外周側のフレームの表面まで飛散して付着する場合がある。ウェーハは、樹脂被覆後にはレーザダイシング等の次の工程に送られるが、通常、ウェーハの搬送はフレームを吸着パッドで吸着して搬送するといった手段が採られている。ここで、目的の場所まで搬送した後に吸着パッドをフレームから離そうとした時に、フレームに付着した樹脂の粘着性によってフレームから吸着パッドが離れず、搬送に障害が起こるといった問題が生じる場合があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、環状のフレームに粘着テープを介して一体化されたワークの表面にスピンコートで液状樹脂を被覆するにあたり、フレームの少なくとも吸着パッド等のフレーム保持手段が作用する部分には樹脂が被覆されないようにして、その後のフレームを介してのワークの搬送を円滑に遂行することを可能とする樹脂被覆装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂被覆装置は、環状のフレームの内側に粘着テープを介して一体に保持されたワークを保持して回転するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルに保持されたワークに液状樹脂を供給する樹脂供給ノズルとを備える樹脂被覆装置であって、フレームは、スピンナテーブルから搬出手段によって搬出され、搬出される際に、該搬出手段が備えるフレーム保持手段が作用する作用部を有し、樹脂被覆装置は、スピンナテーブルの外周部の作用部に対応する箇所に、錘部と、作用部を被覆可能な被覆部と、錘部と被覆部とを連結する連結部と、所定箇所に設けられた軸部とを備えた被覆部材が、軸部を支点として回転自在に取り付けられており、該被覆部材は、スピンナテーブルが回転することによって発生する遠心力により錘部の重力作用に抗して揺動し、該揺動時に、被覆部が作用部を覆うことを特徴としている。本発明で用いられる液状樹脂は、後の工程でワーク表面から除去するものであれば、除去が容易であることから水溶性樹脂が好ましく用いられる。
【0008】
本発明の樹脂被覆装置では、スピンナテーブルによってワークを回転させながら樹脂供給ノズルから液状樹脂がワークに供給される。該樹脂は遠心力によってワーク全面に広がり、被覆される。被覆部材は、スピンナテーブルが回転していない通常時は、錘部によって被覆部がフレームの作用部を覆わない位置に退避している。そして、樹脂をワークに供給すべくスピンナテーブルが回転すると、遠心力により被覆部材が錘部の重力作用に抗して軸部を支点として揺動し、被覆部がフレームの作用部を覆う。このように、ワークへの樹脂供給時にはフレームの作用部が被覆部材の被覆部で覆われるので、ワークに供給されてフレームまで飛散した樹脂が作用部に付着することが防止される。
【0009】
樹脂が被覆された後、搬出手段のフレーム保持手段がフレームの作用部に作用してフレームを保持し、該搬出手段によってワークはフレームごとスピンナテーブルから取り上げられ、次の工程に応じた場所に搬送される。フレーム保持手段が作用部に作用する際、上記のように作用部に樹脂が付着することが防止されているため、フレーム保持手段はフレームに直接作用する。そして、ワークが目的場所まで搬送されたら、フレーム保持手段はフレームの作用部から離されるが、フレーム保持手段は樹脂に接触していないため、従来のように樹脂の粘着性によってフレームからフレーム保持手段が離れないといった不具合は生じず、確実に離脱する。したがって、フレームの作用部に樹脂が付着することによって起こっていた搬送時の障害の発生が防止され、ワークの搬送が円滑に遂行される。
【0010】
また、本発明では、スピンナテーブルの回転で発生する遠心力により被覆部材を揺動させ、フレームの作用部を該被覆部材の被覆部で覆う構成であり、被覆部材を、流体圧シリンダや電気的なアクチュエータなどの他の駆動源によって駆動させるものではない。このため、部品点数の増加や構成の複雑化を招くことがなく、コスト上昇の抑制や省エネルギーが図られるといった利点を有する。
【0011】
本発明の被覆部材は、スピンナテーブルが回転して遠心力により揺動し、被覆部がフレームの作用部を覆った時に、該被覆部がフレームを押圧してスピンナテーブルに保持する形態を含む。この形態では、被覆部材の被覆部がフレームの作用部を覆うのみならず、フレームをスピンナテーブルに保持するため、スピンナテーブルに対するワークの保持状態をより安定させることができる。
【0012】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の上記半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア、シリコン系の基板、各種電子部品、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種ドライバ、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレーム付きのワークをスピンナテーブルとともに回転させながら該ワークに樹脂を供給して被覆する時に、被覆部材が遠心力により揺動して被覆部がフレームの作用部を覆い、該作用部への樹脂の付着が防止されるので、樹脂被覆後の搬送が円滑に遂行されるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施形態を説明する。
[1]樹脂被覆装置の構成
図1の符号20は一実施形態の樹脂被覆装置を示している。該装置20では、スピンナテーブル30上に保持された円板状のワーク1がスピンナテーブル30と一体に回転し、回転中においてワーク1の表面に水溶性を有する液状樹脂が滴下されて被覆される。
【0015】
ワーク1は、図1に示すように、環状のフレーム2の内側に粘着テープ3を介して同心状に一体に保持された状態で、樹脂被覆装置20にセットされる。フレーム2は、金属等の板材からなる剛性を有するものである。粘着テープ3は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム2とウェーハ1が貼着される。ワーク1は、直接保持されずにフレーム2を保持することによりフレーム2ごと搬送される。ワーク1は、例えば厚さ100〜700μm程度の半導体ウェーハであり、このように薄く脆いものでも粘着テープ3およびフレーム2を介して保持することにより、破損させず安全に搬送することができる。
【0016】
粘着テープ3を介してフレーム2に保持されたワーク1は、所定のピックアップステージなどにおいて図1に示す搬送機構(搬出手段)10により保持されるとともに、樹脂被覆装置20のスピンナテーブル30上にセットされる。そして樹脂が表面に滴下されて被覆されたワーク1は、搬送機構10によってスピンナテーブル30から取り上げられ、次の工程に応じた場所に搬送される。
【0017】
搬送機構10は、図示せぬ旋回アームと、この旋回アームの先端から垂下する伸縮ロッド11と、この伸縮ロッド11の先端から放射状に延びる複数のバー12aからなるハンド部12と、ハンド部12の各バー12aの先端に装着された吸着パッド(フレーム保持手段)13とを備えるものであり、各吸着パッド13から空気を吸引する作用によって下方の対象物を吸着、保持するものである。この場合のハンド部12は十字状で4本のバー12aから構成され、各バー12aはフレーム2の半径とほぼ同等の長さとなっている。これにより、全ての吸着パッド13はフレーム2の上面に位置付けられ、フレーム2を吸着、保持することができるようになっている。フレーム2の上面の、各吸着パッド13が吸着する箇所が、吸着パッド作用部2aとされる(図5:鎖線で図示)。この場合の吸着パッド作用部2aは、フレーム2の周方向4等分箇所に設定される。
【0018】
この搬送機構10によれば、吸着パッド13によってフレーム2を保持し、上記旋回アームが旋回してワーク1を樹脂被覆装置20上に位置付け、この後、伸縮ロッド11が下方に延びて空気吸引動作を停止することにより、フレーム2に保持されたワーク1がスピンナテーブル30上に下ろされ載置される。また、樹脂被覆装置20でワーク1が処理された後には、吸着パッド13でフレーム2が吸着、保持され、伸縮ロッド11が縮小してワーク1が持ち上げられた後、旋回アームが旋回して、次の工程に応じた場所にワーク1が搬送される。
【0019】
樹脂被覆装置20の説明に戻ると、該装置20は、図示せぬ基台に固定するための支持台21を有している。支持台21は、水平に設置される板状のベース22と、このベース22上に立設された複数の脚部23と、これら脚部23の上端に固定された受け部24とから構成されている。受け部24は円形の皿状に形成されたもので、この受け部24に、円筒状のケーシング25が上側から嵌め込まれて支持されている。
【0020】
ケーシング25は、軸心がほぼ鉛直方向に沿った状態に受け部24に支持されている。ケーシング25の内部には、円板状のスピンナテーブル30がケーシング25と同心状に配設されている。スピンナテーブル30は、円板状の枠体31の上面に多孔質体からなる円板状の吸着部32が嵌合されて構成されている。
【0021】
吸着部32は枠体31と同心状でスピンナテーブル30の上面の大部分を占めており、吸着部32の上面と、吸着部32の周囲の環状の枠体31の上面とは同一の平面であってワーク1を保持する平坦な保持面30Aとなっている。スピンナテーブル30には空気を吸引する配管を介してバキューム装置が接続されており(いずれも図示略)、バキューム装置を運転すると吸着部32の上方の空気が吸引され、この空気吸引作用により、スピンナテーブル30上に載置されたワーク1が吸着部32に吸着されて保持されるようになっている。
【0022】
図2(b)に示すように、この場合、スピンナテーブル30の外径はフレーム2の外径とほぼ等しく、フレーム2はスピンナテーブル30上に同心状に保持されるようになっている。また、ワーク1の外径はスピンナテーブル30の吸着部32の外径と同等で、フレーム2の幅は枠体31の環状の上面の幅と同等である。したがって、フレーム2に保持されたワーク1がスピンナテーブル30の保持面30A上に同心状に載置されると、フレーム2と枠体31の外周縁がほぼ一致し、フレーム2は枠体31の環状の上面に一致し、さらに、ワーク1が吸着部32に一致した状態となる。
【0023】
図2に示すように、スピンナテーブル30は支持プレート35に回転軸36を介して回転自在に支持されている。支持プレート35は、図示せぬガイドに沿って昇降可能に支持されている。そして支持プレート35は、受け部24に支持された複数のエアシリンダ37が備えるピストンロッド37aが上方に対して伸縮することにより、昇降するようになっている。したがってスピンナテーブル30は、エアシリンダ37によって支持プレート35とともに昇降させられる。スピンナテーブル30は、ピストンロッド37aが伸びるとワーク受け渡し位置まで上昇し、ピストンロッド37aが縮小するとワーク受け渡し位置から下降して樹脂滴下位置に位置付けられるようになっている。
【0024】
図1に示すように、支持台21のベース22上には、スピンナテーブル30を回転させるモータ38が固定されている。このモータ38の図示せぬ駆動軸は上方に延びており、受け部24を貫通してケーシング25内に挿入されている。図2に示すように、支持プレート35の下方には、減速機構を内蔵するジョイント39が固定されている。
【0025】
スピンナテーブル30が下降して樹脂滴下位置に位置付けられると、ジョイント39がモータ38の駆動軸に連結した状態となる。これによりモータ38の駆動力がジョイント39を介して回転軸36に伝わり、スピンナテーブル30が所定速度で一方向に回転するようになっている。また、エアシリンダ37により支持プレート35が上昇させられ、スピンナテーブル30がワーク受け渡し位置に上昇した状態では、ジョイント39はモータ38の駆動軸から離れ、スピンナテーブル30は回転しないようになっている。
【0026】
図1に示すように、ケーシング25内には、樹脂滴下位置に位置付けられたスピンナテーブル30に保持されているワーク1の表面に、水溶性を有する液状の樹脂を滴下する樹脂ノズル(樹脂供給ノズル)41と、洗浄水を噴出する洗浄水ノズル42が、並列した状態で設けられている。これらノズル41,42は、配管基部43に水平旋回可能に支持されており、通常はスピンナテーブル30よりも外周側でワーク1を保持するフレーム2がスピンナテーブル30にセットされる動作を妨げない位置に退避している。
【0027】
樹脂ノズル41から滴下される水溶性の液状樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の水溶性レジストが好ましく用いられる。また、洗浄水ノズル42から噴出される洗浄水は、純水、あるいは静電気防止のためにCOが混入された純水が好ましく用いられる。なお、図示はしていないが、受け部24には、洗浄水や余剰の樹脂を所定の処理設備に排出するための排液口が設けられているとともに、この排液口には排液管が接続されている。
【0028】
図1に示すように、スピンナテーブル30における枠体31の外周縁の所定箇所には、複数の振り子体(被覆部材)50が周方向に等間隔をおいて配設されている。これら4箇所における枠体31には、径方向の外方に延びるステー60がそれぞれ固定されており、これらステー60の先端に振り子体50が取り付けられている。
【0029】
振り子体50は、一定の幅を有する長方形状の板状片であって、図4に示すように、長手方向の一端側(先端側)の片面に、両側方に開放する凹所51が形成されている。そして、凹所51の先端側には爪部(被覆部)52が形成されており、凹所51の他端側は肉厚となった錘部53が形成され、爪部52と錘部53との間が、爪部52と錘部53とを連結する薄肉の連結部54とされている。錘部53の凹所51寄りには、水平方向に延びる軸部55が形成している。
【0030】
振り子体50は、水平な軸部55を介して、スピンナテーブル30の枠体31に固定されたステー60の先端に揺動自在に取り付けられている。軸部55はスピンナテーブル30の接線方向と平行で、凹所51が内側のスピンナテーブル30に面している。振り子体50は、スピンナテーブル30が回転せず静止している時には、図3(a)および図4(a)に示すように、錘部53が爪部52よりも重いという重力作用により、錘部53が下側、爪部52が上側に位置し、かつ、爪部52の先端がスピンナテーブル30の外周縁よりも外方に位置するように、外方に反った姿勢の“開放位置”にある。振り子体50が開放位置にある時には、スピンナテーブル30の保持面30Aに対して上方から着脱されるフレーム2に爪部52が干渉しないようになっている。
【0031】
一方、ワーク1の表面に樹脂を滴下して被覆するためにスピンナテーブル30を回転させると、図3(b)および図4(b)に示すように、振り子体50は軸部55を支点として錘部53の軸部55よりも下側部分が外方に振られるように揺動し、“被覆位置”に達する。振り子体50が被覆位置まで揺動すると、爪部52はスピンナテーブル30上に覆い被さり、フレーム2がスピンナテーブル30上に保持されている場合、爪部52の先端がそのフレーム2の内周縁に当接し、フレーム2の上面を覆う状態となる。
【0032】
爪部52の先端は水平で、被覆位置では、その先端全域がフレーム2の上面に当接するようになっており、また、その幅は、吸着パッド13の吸着領域を十分に覆う寸法とされている。これにより、スピンナテーブル30を回転させながら樹脂をワーク1の表面に滴下して被覆するスピンコートを行った時、樹脂がフレーム2に飛散しても、爪部52で覆われた部分には樹脂が付着せず、樹脂は爪部52に付着するようになっている。
【0033】
[2]樹脂被覆装置の動作
以上の構成からなる本実施形態の樹脂被覆装置20の動作例を説明する。
初期の状態として、図2(a)に示すように、エアシリンダ37のピストンロッド37aが伸び、静止状態のスピンナテーブル30がワーク受け渡し位置に上昇している。フレーム2に保持されたワーク1は、上記ピックアップステージなどで搬送機構10の吸着パッド13がフレーム2を吸着、保持した後、伸縮ロッド11が縮小することにより取り上げられ、次いで上記旋回アームが旋回してハンド部12がスピンナテーブル30の直上に位置付けられる。
【0034】
次いで、スピンナテーブル30が空気吸引状態となり、図2(b)に示すように、伸縮ロッド11が下方に伸びてフレーム2およびワーク1がスピンナテーブル30の保持面30Aに同心状に載置されると同時に吸着、保持される。続いて、搬送機構10の吸着パッド13の空気吸引が中断し、図2(c)に示すように、伸縮ロッド11が縮小して搬送機構10がフレーム2から離脱し、搬送機構10からスピンナテーブル30へワーク1が受け渡される。ワーク1の受け渡し工程時においては、振り子体50は錘部53の重力作用により上記開放位置にあるため、振り子体50の爪部52は下降するフレーム2に干渉せず、ワーク1は円滑にスピンナテーブル30に保持される。
【0035】
次に、図3(a)に示すように、エアシリンダ37のピストンロッド37aが縮小してスピンナテーブル30が樹脂滴下位置に下降し、ジョイント39を介してスピンナテーブル30がモータ38と連結状態となる。そして、樹脂ノズル41が旋回してその先端がスピンナテーブル30上のワーク1の中心付近の直上に位置付けられ、上記の水溶性の液状樹脂Pがワーク1の表面の中心付近に滴下される。樹脂Pの滴下が開始されたら、続いてモータ38を作動させてスピンナテーブル30を回転させ、所定の滴下時間が経過したら回転を停止する。ワーク1に滴下された樹脂Pは、図3(b)に示すように、スピンナテーブル30の回転によって発生している遠心力によって外周側に広がり、ワーク1の表面全面に行き渡ってスピンコートされる。
【0036】
なお、スピンコート時のスピンナテーブル30の回転速度と回転速度は、樹脂Pがワーク1の表面を十分に被覆する程度に設定され、例えば、回転速度は500〜3000rpm程度、回転時間は30〜120秒程度とされる。また、樹脂Pの膜厚は、例えば0.1〜10μm程度とされる。
【0037】
さて、このようにしてスピンコートを行っている間において、振り子体50は遠心力により錘部53の重力作用に抗して軸部55を支点として揺動し、上記被覆位置に達する。これにより爪部52がフレーム2の上面を覆い、スピンコート中に樹脂Pがフレーム2上に飛散してきても、爪部52で覆われた部分には樹脂Pが付着せず、樹脂Pは爪部52に付着するようになっている。図3(c)では、ワーク1の表面から外周側に飛散した樹脂P1が爪部52の表面に付着した様子を示している。
【0038】
スピンナテーブル30の回転が停止すると、振り子体50は爪部52が外側に揺動して上記開放位置に戻る。ここで、スピンナテーブル30が停止する回転角度位置は、図5に示すように、各振り子体50が、搬送機構10の吸着パッド13がフレーム2の上面に吸着する吸着パッド作用部2aに対応する箇所で停止するように制御される。したがってフレーム2の上面の吸着パッド作用部2aには、振り子体50の爪部52で覆われたことにより飛散した樹脂が付着していない。
【0039】
次いで、エアシリンダ37が伸びてスピンナテーブル30がワーク受け渡し位置に上昇し、搬送機構10からスピンナテーブル30へのワーク1の受け渡しとは逆の動作が行われてワーク1が搬送機構10に保持される。すなわち、スピンナテーブル30の上方で待機していた搬送機構10の伸縮ロッド11が伸び、空気吸引状態の吸着パッド13がフレーム2の上面の吸着パッド作用部2aに吸着する。次に、スピンナテーブル30の空気吸引が停止し、伸縮ロッド11が縮小してワーク1がフレーム2ごと取り上げられる。この後、上記旋回アームが旋回して、次の工程に応じた場所にワーク1が搬送される。
【0040】
以上で、ワーク1の表面への樹脂Pの被覆と、樹脂被覆装置20からのワーク1の搬出が完了する。なお、ワーク1が次の工程で所定の処理(例えば、レーザ光線照射によるダイシングなど)がなされた後、ワーク1の表面に被覆された水溶性の樹脂Pを除去する場合には、上記の要領でワーク1を再びスピンナテーブル30にセットし、スピンナテーブル30を回転させながら洗浄水ノズル42から洗浄水をワーク1の表面に噴出することにより、樹脂Pを除去することができる。そして樹脂Pを除去してワーク1が水洗された後は、引き続きスピンナテーブル30を回転させることにより、遠心力で水分を除去してワーク1を乾燥させることができる。
【0041】
[3]実施形態の作用効果
上記実施形態によれば、ワーク1をスピンナテーブル30によって回転させながらワーク1の表面に樹脂Pを滴下して被覆するスピンコート中においては、振り子体50が遠心力により被覆位置まで揺動し、爪部52がフレーム2の上面を覆う。これにより、樹脂Pがフレーム2上に飛散してきても、爪部52で覆われた部分への付着が防止される。爪部52で覆われたフレーム2の上面部分は、ワーク1を搬出する時に搬送機構10の吸着パッド13が吸着する部分であり、このため、吸着パッド13はフレーム2の上面に直接吸着することが可能となっている。
【0042】
そして、搬送機構10によってワーク1が目的場所に搬送されたら、吸着パッド13はフレーム2の上面から離されるが、吸着パッド13は、振り子体50の爪部52で覆われ樹脂Pの付着が防止されたフレーム2の上面に吸着していたため、樹脂Pの粘着性によってフレーム2から離れないといった不具合は生じず、フレーム2から確実に離脱する。したがって、搬送時の障害の発生が防止され、以降行われる多数のワーク1に対する樹脂被覆ならびにワーク1の搬送が円滑に遂行される。
【0043】
また、本実施形態では、スピンナテーブル30の回転で発生する遠心力により振り子体50を揺動させてフレーム2の上面を爪部52で覆う構成であり、振り子体50を、流体圧シリンダや電気的なアクチュエータなどの他の駆動源によって揺動させてはいない。このため、部品点数の増加や構成の複雑化を招くことがなく、コスト上昇の抑制や省エネルギーが図られる。
【0044】
なお、本実施形態では、振り子体50が被覆位置に揺動した時に、フレーム2の上面を覆う爪部52の先端がフレーム2を押圧した状態となり、これによってフレーム2をスピンナテーブル30に保持する力が生じるように構成することもできる。すなわち、振り子体50の爪部52がフレーム2の上面を覆うのみならず、爪部52がフレーム2をスピンナテーブル30に押し付けて保持するもので、これによると、スピンナテーブル30に対するワーク1の保持状態をより安定させることができる。
【0045】
[4]振り子体の支持構造の変形例
図6は振り子体50の支持構造の変形例を示している。上記実施形態では、振り子体50の軸部55が挿入されるステー60の軸孔は円形状であったが、図6で示すステー60の軸孔61は、下側から上側に向かうにつれて外周側に傾斜する長孔に形成されている。振り子体50の軸部55は回転自在、かつ長手方向に沿って摺動しながら移動可能に軸孔61に挿入されている。
【0046】
この変形例では、スピンナテーブル30が回転せず静止して振り子体50が開放位置にある時、軸部55は重力によって軸孔61の下端部に下降している。そしてスピンナテーブル30が回転して遠心力が発生すると、振り子体50は、軸部55が軸孔61内を上昇して上端部に到達するとともに、軸部55を支点として、錘部53が外周側に移動し爪部52が内周側に移動してフレーム2を覆う被覆位置まで揺動する。そして、上記のスピンコートによる樹脂被覆工程が終了してスピンナテーブル30の回転が停止すると、錘部53の重力作用により開放位置に戻る。振り子体50が開放位置に戻る際においては、振り子体50は軸部55を支点として回転すると同時に、錘部53の重力作用で錘部53が軸部55とともに軸孔61に沿って下降する。
【0047】
ところで、スピンコートの最中に飛散する樹脂が、爪部52とフレーム2あるいは粘着テープ3にまたがって付着し、その樹脂が粘着材となって、スピンナテーブル30が被覆位置に止まったままで開放位置に戻らないことが懸念される場合がある。しかしながら、図6に示す形態では、上記のように、スピンナテーブル30が停止すると、振り子体50の錘部53が軸部55とともに軸孔61に沿って下降するといったダイナミックな挙動を示すことから、例え樹脂によって爪部52がフレーム2などに粘着していても、爪部52をフレーム2から確実に離間させて開放位置に復帰させることができる。その結果、スピンコートの後のワーク1の搬出動作でトラブルは起こらず、ワーク1の搬出が安全に遂行される。
【0048】
なお、上記振り子体50は本発明に係る被覆部材の一例であり、該被覆部材としては、スピンナテーブル30の回転で発生する遠心力によって、上記のような開放位置から被覆位置まで揺動する構成のものであれば、いかなる形状や支持構造のものであってもかまわない。例えば、上記振り子体50の軸部55は水平方向に延びており、振り子体50は鉛直面内に沿って揺動するが、軸部55が鉛直方向に延びていて振り子体50が水平面内に沿って揺動するといった構成も本発明は含む。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂被覆装置を示す斜視図である。
【図2】一実施形態の樹脂被覆装置のスピンナテーブルに搬送機構からワークを受け渡す動作を(a)〜(c)の順に示す側面図である。
【図3】一実施形態の樹脂被覆装置によってワーク表面に樹脂をスピンコートする動作を(a)〜(c)の順に示す側面図である。
【図4】一実施形態の振り子体を示す側面図であって、(a)開放位置、(b)被覆位置を示している。
【図5】一実施形態のスピンナテーブルを示す平面図である。
【図6】一実施形態の振り子体の支持構造の変形例を示す側面図であって、(a)開放位置、(b)被覆位置を示している。
【符号の説明】
【0050】
1…ワーク
2…フレーム
2a…吸着パッド作用部
3…粘着テープ
10…搬送機構(搬出手段)
13…吸着パッド(フレーム保持手段)
20…樹脂被覆装置
30…スピンナテーブル
41…樹脂ノズル(樹脂供給ノズル)
50…振り子体(被覆部材)
52…爪部(被覆部)
53…錘部
54…連結部
55…軸部
P,P1…樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームの内側に粘着テープを介して一体に保持されたワークを保持して回転するスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルに保持された前記ワークに液状樹脂を供給する樹脂供給ノズルとを備える樹脂被覆装置であって、
前記フレームは、前記スピンナテーブルから搬出手段によって搬出され、搬出される際に、該搬出手段が備えるフレーム保持手段が作用する作用部を有し、
前記樹脂被覆装置は、
前記スピンナテーブルの外周部の前記作用部に対応する箇所に、錘部と、前記作用部を被覆可能な被覆部と、前記錘部と前記被覆部とを連結する連結部と、所定箇所に設けられた軸部とを備えた被覆部材が、前記軸部を支点として回転自在に取り付けられており、該被覆部材は、前記スピンナテーブルが回転することによって発生する遠心力により前記錘部の重力作用に抗して揺動し、該揺動時に、前記被覆部が前記作用部を覆うことを特徴とする樹脂被覆装置。
【請求項2】
前記被覆部材の前記揺動時に、前記被覆部が前記フレームを押圧して前記スピンナテーブルに保持することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−45233(P2010−45233A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208824(P2008−208824)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】