説明

機能制限解除装置

【課題】運転者がどこでも車両機能を制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制する。
【解決手段】ナビゲーションユニット2が、通常は車両の速度リミッターを初期設定値Vに設定し、車両位置が速度制限解除エリア内に位置すると判別された場合、エンジン制御ユニット3を制御することにより速度制限を解除する。これにより、車両が速度制限解除エリア内に位置する場合においてのみ速度制限が解除されるので、運転者がどこでも速度制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能制限解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者により予め設定された走行区間内に車両が進入した際、車両の速度を所定の最高速度に制限する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−511401号公報(段落[0004]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置によれば、運転者が設定した走行区間以外では車速は制限されず、設定された走行区間内でのみ車速が制限されるために、運転者により走行区間が設定されていない場合には、運転者はどこでも車速が制限されることなく車両を走行させることができてしまう。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者がどこでも車両機能を制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制可能な機能制限解除装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る機能制限解除装置は、車両が機能制限解除エリア外に位置する場合は車両の制限速度を初期設定値に制限し、車両が機能制限解除エリア内に位置する場合には車両の制限速度が初期設定値以上の速度となるよう、初期設定値の制限を解除可能とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る機能制限解除装置によれば、通常は車両機能が制限され、車両が機能制限解除エリア内に位置する場合においてのみ車両機能の制限が解除可能となるので、運転者がどこでも車両機能を制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態となる機能制限解除装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すナビゲーションユニットの内部構成を示すブロック図である。
【図3】速度制限解除位置を示すテーブルである。
【図4】本発明の実施形態の機能制限解除処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】本発明の実施形態となる速度制限解除エリアと速度制限エリアを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる機能制限解除装置の構成及びその動作について説明する。
【0010】
〔機能制限解除装置の構成〕
始めに、図1,図2を参照して、本発明の実施形態となる機能制限解除装置の構成について説明する。
【0011】
本発明の実施形態となる機能制限解除装置1は、車両に搭載され、図1に示すように、ナビゲーションユニット2と、エンジン制御ユニット3とを主な構成要素として備える。ナビゲーションユニット2は、図2に示すように、地図データDB(DataBase)4及び記憶部5と、内部で行われる処理機能上、入力処理部6,表示処理部7,位置演算部8,及び制御部9を備える。地図データDB4は、ハードディスク装置等の記憶装置により構成され、地図の描画や経路案内のために必要な地図データを格納する。
【0012】
記憶部5は、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置により構成され、ユーザが操作スイッチ10を使って設定した登録地(例えば自宅位置等)や過去に走行した道路等のデータを記憶する。また記憶部5は、ユーザによる操作スイッチ10の各種操作履歴や、ユーザが施設等の検索を行った結果の履歴を記憶する。また本実施形態では、記憶部5は、後述する速度制限解除エリアを特定するためのテーブル(図3参照)を保存している。
【0013】
入力処理部6は、ユーザが操作スイッチ10によって入力した指令を制御部9に出力する。操作スイッチ10としては、表示部11の表示画面に設けられるタッチパネル式のスイッチ,ジョイスティック,押下式ボタン等を例示できる。表示処理部7は、制御部9からの指令に基づいて、表示部11に各種情報の表示指示を行う。位置演算部8は、GPS(Global Positioning System)アンテナ12で受信された電波及び車速センサ13によって検出された車速に基づいて、車両の現在位置を求める。
【0014】
制御部9は、地図データDB4,記憶部5,入力処理部6,表示処理部7,及び位置演算部8との間で様々なデータをやり取りすると共に、ナビゲーションユニット2全体の動作を制御する総合的な処理を行う。制御部9が行う処理には、後述する機能制限解除動作の他に、施設の検索処理や目的地までの推奨ルートの演算処理が含まれる。また本実施形態では、車両の横Gを検出する横Gセンサ14と車両のアクセルペダル開度を検出するアクセル開度センサ15が制御部9に接続され、横Gセンサ14及びアクセル開度センサ15の検出出力が制御部9に入力されるようになっている。
【0015】
エンジン制御ユニット3は、ナビゲーションユニット2や、スロットル開度センサ,エンジン回転速度センサ等の図示しない各種センサからの出力に従って、エンジン出力制御用アクチュエータを成す電制スロットルを制御することによりエンジン16の駆動状態を制御する。
【0016】
〔機能制限解除処理〕
このような構成を有する機能制限解除装置1は、以下に示す機能制限解除処理を実行することにより、運転者がどこでも車両機能を制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制する。以下、図4に示すフローチャートを参照して、この機能制限解除処理を実行する際の機能制限解除装置1の動作について説明する。
【0017】
図4に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられたタイミングで開始となり、機能制限解除処理はステップS1の処理に進む。
【0018】
ステップS1の処理では、制御部9が、位置演算部8を制御することにより車両の現在位置を演算し、演算された車両位置が速度制限解除エリア内にあるか否かを判別する。具体的には、制御部9は、図3に示すような速度制限解除エリアの代表点座標(x,y)を示すテーブルを記憶部5から読み出し、図5に示すように読み出された代表点Aを中心点とする所定エリアを速度制限解除エリア(図5に示す例では代表点Aを中心とする円領域R1)として、速度制限解除エリア内に車両が位置するか否かを判別する。
【0019】
本実施形態では、速度制限解除エリアとして、サーキット,テストコース,試験場等の私有地を含む公道以外のエリア(非公道エリア)が規定されている。公道とは、広義においては公共一般に広く供されている道路を意味し、狭義においては国や地方公共団体(都道府県,市町村や特別区)が指定,建設,管理する道路のことを意味する。また本実施形態では、代表点を中心とする所定エリアを速度制限解除エリアとして設定したが、私有地の形状や代表点の位置に応じて速度制限解除エリアの形状や設定位置を適宜変更してもよい。
【0020】
判別の結果、車両位置が速度制限解除エリア内にない場合、制御部9は、機能制限解除処理をステップS1の処理に戻し、車両の最高速度を制限する速度リミッターを初期設定値Vに設定して車速制限を継続する。一方、車両の位置が速度制限解除エリア内にある場合には、制御部9は機能制限解除処理をステップS2の処理に進める。
【0021】
ステップS2の処理では、制御部9が、表示処理部7を制御することにより「速度制限を解除可能です。速度制限を解除される場合には車速制限解除スイッチを押して下さい」等のメッセージと共に速度制限を解除するための速度制限解除スイッチを表示部11に表示する。これにより、ステップS2の処理は完了し、機能制限解除処理はステップS3の処理に進む。
【0022】
ステップS3の処理では、制御部9が、入力処理部6を介して運転者が速度制限解除スイッチを押下操作したか否かを判別する。そして制御部9は運転者が速度制限解除スイッチを押下したタイミングで機能制限解除処理をステップS4の処理に進める。
【0023】
ステップS4の処理では、制御部9が、エンジン制御ユニット3を制御することにより初期設定値V以上の車速を出せるように車速制限を解除する。これにより、ステップS4の処理は完了し、機能制限解除処理はステップS5の処理に進む。
【0024】
ステップS5の処理では、制御部9が、位置演算部8を制御することにより車両の現在位置を演算し、演算された車両位置が速度制限エリア内にあるか否かを判別する。具体的には、制御部9は、速度制限解除エリアの代表点Aを中心点とする所定エリア外を速度制限エリア(図5に示す例では代表点Aを中心とする円領域R2外)として、速度制限エリア内に車両が位置するか否かを判別する。そして制御部9は、車両の位置が速度制限エリア内に入ったタイミングで機能制限解除処理をステップS6の処理に進める。
【0025】
本実施形態では、速度制限解除エリア(図5に示す例では円領域R1)よりも大きいエリア(図5に示す例では円領域R2)の外を速度制限エリアとして設定し、速度制限解除エリアの境界線を車両が少しはみ出た程度では速度制限が行われないようになっている。このような構成によれば、車両が速度制限解除エリアの境界線付近を走行している場合に車速が制限される誤作動が発生することを防止できる。また本実施形態では、代表点を中心とする所定エリアを速度制限エリアとして設定したが、私有地の形状や代表点の位置に応じて速度制限エリアの形状や設定位置を適宜変更してもよい。
【0026】
ステップS6の処理では、制御部9が、横Gセンサ14の検出結果に基づいて車両の横Gが所定値以下であるか否かを判別する。そして判別の結果、横Gが所定値以下でない場合、制御部9は、車両が安定走行状態にない(例えば車両が旋回状態にある場合)と判断し、機能制限解除処理をステップS5の処理に戻す。一方、横Gが所定値以下である場合には、制御部9は機能制限解除処理をステップS7の処理に進める。
【0027】
ステップS7の処理では、制御部9が、アクセル開度センサ15の検出結果に基づいて車両のアクセルペダル開度が所定値以下であるか否かを判別する。そして判別の結果、アクセルペダル開度が所定値以下でない場合、制御部9は、車両が安定走行状態にない(例えば車両が追い越し時等の加速状態である場合)と判断し、機能制限解除処理をステップS5の処理に戻す。一方、アクセルペダル開度が所定値以下である場合には、制御部9は、車両が安定走行状態にあると判断し、機能制限解除処理をステップS8の処理に進める。
【0028】
本実施形態では、制御部9は、車両の横Gとアクセルペダル開度を用いて車両が安定走行状態にあるか否かを判断したが、車両のブレーキペダル踏力,ブレーキペダル踏み込み速度、ステアリング操舵角,ステアリング操舵速度、車速(車輪速),車両の前後G,車両の上下G等のその他のパラメータを用いて車両が安定走行状態にあるか否かを判断してもよい。
【0029】
ステップS8の処理では、制御部9は、車両の性能上の最高速度値VMAXから所定の減速度値Aを引いた値を車速制限値VLIMITに設定し、設定した車速制限値VLIMIT以上の車速がでないようにエンジン制御ユニット3を制御する。本実施形態では、車両の性能上の最高速度値VMAXから所定の減速度値Aを引いた値を車速制限値VLIMITに設定したが、車速センサ13により検出されたその時の車速から所定の減速度値Aを引いた値を車速制限値VLIMITに設定してもよい。また減速度値Aは運転者が意図せず加速又は減速されても大きな違和感を感じることのないように0.3G以下に設定することが望ましい。これにより、ステップS8の処理は完了し、機能制限解除処理はステップS9の処理に進む。
【0030】
ステップS9の処理にでは、制御部9が、ステップS8の処理により設定された車速制限値VLIMITが初期設定値Vと同じであるか否かを判別する。判別の結果、車速制限値VLIMITが初期設定値Vと同じでない場合、制御部9は機能制限解除処理をステップS5の処理に戻す。一方、車速制限値VLIMITが初期設定値Vと同じである場合には、制御部9は機能制限解除処理をステップS1の処理に戻す。
【0031】
本実施形態では、速度制限が解除されている時に車両が速度制限エリア内に進入した場合、車両がその後再び速度制限解除エリア内に入ったとしても車速制限値VLIMITを段階的に初期設定値Vまで戻すこととしたが、車両が再び速度制限解除エリア内に入った時に速度制限を解除するようにしてもよい。また機能制限解除処理中にエンジン16が停止した場合には、車両の最高速度を初期設定値Vに戻すことが望ましい。
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる機能制限解除装置1によれば、制御部9が、通常は車両の最高速度を初期設定値Vに制限し、位置演算部8により求められた車両位置が速度制限解除エリア内に位置するか否かを判別し、車両位置が速度制限解除エリア内に位置すると判別された場合、エンジン制御ユニット3を制御することにより速度制限を解除する。
【0033】
このような構成によれば、車両が速度制限解除エリア内に位置する場合においてのみ速度制限が解除されるので、運転者がどこでも速度制限されることなく車両を走行させてしまうことを抑制できる。また速度制限解除エリア内では車両が本来有する機能や性能を発揮することができる。
【0034】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば本実施形態では、車両位置に応じて速度制限を解除したが、車両位置に応じてスタビリティコントロール機能,VDC(Vehicle Dynamics Control)機能,ABS(Anti-Block Brake System)機能等のその他の車両機能を解除するようにしてもよい。また本実施形態では、速度制限解除エリア内に車両が位置する限りは車両機能の制限は継続して解除されることとしたが、速度制限解除エリア内において車両の走行状態がある条件になった場合(例えば安定走行状態ではなくなった場合)に車速を強制的に制限することが望ましい。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0035】
1:機能制限解除装置
2:ナビゲーションユニット
3:エンジン制御ユニット
4:地図データDB
5:記憶部
6:入力処理部
7:表示処理部
8:位置演算部
9:制御部
10:操作スイッチ
11:表示部
12:GPSアンテナ
13:車速センサ
14:横Gセンサ
15:アクセル開度センサ
16:エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制限速度を初期設定値に制限する機能制限部と、
前記車両の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された車両位置が機能制限解除エリア内に位置するか否かを判別し、車両位置が機能制限解除エリア内に位置すると判別された場合、車両の制限速度が前記初期設定値以上の速度となるよう、前記初期設定値の制限を解除可能とする機能制限解除部と
を備えることを特徴とする機能制限解除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168274(P2011−168274A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82862(P2011−82862)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2007−228797(P2007−228797)の分割
【原出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】