機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置
【課題】液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を、有効に防止可能な機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】機能液供給手段から供給された機能液を貯留し、機能液滴吐出ヘッド13に送液するタンク本体と、タンク本体の上部・下部に連通した液柱パイプ73の液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサ74cと、を備えている。そして、液位センサ74cの検出結果に基づいて、所定の液位範囲を維持するように機能液供給手段を制御し、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時において、機能液供給手段を駆動し、液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程S1を実施し、その後、タンク本体から機能液を流出させ、タンク本体の液位を液位範囲に戻す液位下降工程S2を実施する。
【解決手段】機能液供給手段から供給された機能液を貯留し、機能液滴吐出ヘッド13に送液するタンク本体と、タンク本体の上部・下部に連通した液柱パイプ73の液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサ74cと、を備えている。そして、液位センサ74cの検出結果に基づいて、所定の液位範囲を維持するように機能液供給手段を制御し、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時において、機能液供給手段を駆動し、液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程S1を実施し、その後、タンク本体から機能液を流出させ、タンク本体の液位を液位範囲に戻す液位下降工程S2を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から機能液の供給を受けると共に、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機能液タンクの管理方法を実施する液滴吐出装置として、メインタンクで構成された機能液供給手段と、機能液供給手段から補給されたインク(機能液)を貯留するタンク本体および液位センシング用の液柱パイプとから成るサブタンク(機能液タンク)と、タンク本体内に貯留した機能液の液面の減液状態および満液状態を検知する低位検出センサおよび高位検出センサと、機能液を機能液滴吐出ヘッドに送液する機能液送液手段と、機能液供給手段および機能液送液手段を制御する制御装置と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この液滴吐出装置では、低位検出センサが、機能液の減液状態を検出するとメインタンクからタンク本体へ機能液の補給が行われ、高位検出センサが、機能液の満液状態を検出したところで補給が停止することで、機能液タンクの液位を管理している。
【特許文献1】特開2007−275795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の液滴吐出装置におけるサブタンクでは、タンク本体内の上部空間が機能液(の溶媒)の飽和気体の雰囲気に保たれており、圧力変動や温度変化等により、上記の飽和気体が凝結して液滴となる場合がある。液滴が液柱パイプ内で凝結したり、凝結した液滴が液柱パイプ内に入り込むと、液滴の位置によっては、上記のセンサに誤検出が生ずる問題があった。このような場合には、タンク本体内に貯留した機能液面の正常な検出ができなくなり、装置全体として異常な動作の原因となる。
【0004】
本発明は、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を、有効に防止することができる機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の機能液タンクの管理方法は、下流側を機能液供給手段に接続され上流側をインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに接続された機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を備え、液位センサの検出結果に基づいて、タンク本体の所定の液位範囲を維持するように機能液供給手段を制御する機能液タンクの管理方法であって、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を駆動し、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程と、液位上昇工程の後、タンク本体から機能液を流出させ、タンク本体の液位を液位範囲に戻す液位下降工程と、を実施することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、液位上昇工程において、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給されるため、少なくとも液位センサが誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれ、続く液位下降工程において、液柱パイプの内面から排除される。また、液滴によっては、凝固する場合も考えられるが、液位上昇工程および液位下降工程を繰り返すことにより、機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を有効に防止することができる。また、液位下降工程において、液位を液位範囲に戻すようにしているため、タンク本体の本来の液位管理に容易に移行させることができる。さらに、上記の工程を、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時に行うようにしているので、液位の上昇および下降が機能液滴吐出ヘッドの吐出動作に影響を及ぼすことがない。また、液位上昇工程および液位下降工程を行うと、タンク本体内に貯留された機能液が攪拌されるため、貯留した機能液の濃度を均一に維持することもできる。
【0007】
この場合、液位下降工程において、機能液吸引手段を用い、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引することにより、タンク本体から機能液を流出させることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルのメンテナンスに、過剰供給した機能液を使用することができる。すなわち、メンテナンス用の機能液吸引手段を活用して、液位下降工程を実施することができる。
【0009】
また、液位センサの検出結果に基づいて、機能液吸引手段を停止させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、吸引による機能液の流出後において、タンク本体の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0011】
また、液位下降工程において、機能液逆流手段を用い、機能液を機能液供給手段側に逆流させて、タンク本体から機能液を流出させることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、過剰供給した機能液を廃棄することなく機能液供給手段に戻すことができる。これにより、機能液を無駄にすることなく、有効に利用することができる。また、溶媒が凝結した液滴を、液位上昇工程により取り込む場合には、タンク本体内の機能液の濃度が薄められる虞があるが、このような場合でも、タンク本体の機能液貯留量に比べ、機能液供給手段の機能液貯留量の方が絶対的に多いため、機能液供給手段側に逆流させる方法では、タンク本体および機能液供給手段における機能液の相対的な濃度変化を最小限に抑えることができる。これにより、機能液の濃度変化による悪影響を軽減することができる。
【0013】
この場合、液位センサの検出結果に基づいて、機能液逆流手段を停止させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、逆流による機能液の流出後において、タンク本体の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0015】
これらの場合、液位上昇工程および液位下降工程を、定期的に実施することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、凝結液滴等が、液柱パイプにおける液位センサの検出位置に付着していたとしても、定期的にリフレッシュすることができる。これにより、液位の誤検出によるトラブルを未然に防ぐことができる。なお、定期的なリフレッシュは、貯留した機能液の物性変化(凝集、凝結等)を抑制することができる最小限の頻度で行われることが好ましい。
【0017】
一方、液位センサの上方に配設され、タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、液位上昇工程および液位下降工程において、オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作をキャンセルすることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作により、上記の工程が阻害されたり、装置に異常が発生するのを防止することができる。
【0019】
また、液位センサの上方に配設され、タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、液位上昇工程では、オーバーフロー液位を越えて機能液の過剰供給を実施することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、タンク本体において機能液のオーバーフローを防止しつつ、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時には、オーバーフロー液位を越えて機能液を満たすことができるので、液柱パイプの内面に付着した液滴によるオーバーフローセンサの誤検出も、有効に防止することができる。
【0021】
この場合、液位上昇工程における機能液の過剰供給は、機能液の供給流量を一定とした機能液供給手段のタイマ制御により実施されることが好ましい。
【0022】
同様に、液位上昇工程における機能液の過剰供給は、機能液の供給時間を一定とした機能液供給手段の流量制御により実施されることが好ましい。
【0023】
これらの構成によれば、機能液供給手段からの機能液の供給量を精度良く制御することができるため、専用のセンサ等を必要とすることなく、機能液の過剰供給を簡単な制御で安定して実施することができる。
【0024】
また、液位センサは、多光軸センサで構成されており、液位上昇工程おける機能液の過剰供給は、多光軸センサの閾値制御により実施されることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、多光軸センサの閾値を制御することにより、液位センサを利用して機能液の過剰供給を精度良く行うことができる。
【0026】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、機能液滴吐出ヘッドのノズル面に密接し、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する機能液吸引手段と、機能液を貯留すると共に、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、機能液吸引手段および機能液供給手段を制御する制御手段と、を備え、機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、制御手段は、液位センサの検出結果に基づいて、機能液供給手段を制御しタンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を制御し、タンク本体に液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、機能液吸引手段を制御し、吐出ノズルから機能液を吸引してタンク本体の液位を液位範囲に戻すことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の他の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、機能液を貯留すると共に、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、機能液タンクの機能液を、機能液供給手段側に逆流させる機能液逆流手段と、機能液供給手段および機能液逆流手段を制御する制御手段と、を備え、機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、制御手段は、液位センサの検出結果に基づいて、機能液供給手段を制御しタンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を制御し、タンク本体に液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、機能液逆流手段を制御し、タンク本体から機能液を逆流させてタンク本体の液位を液位範囲に戻すことを特徴とする。
【0028】
これらの構成によれば、機能液供給手段により、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給されるため、少なくとも液位センサが誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれ、機能液吸引手段または機能液逆流手段により、液柱パイプの内面から排除される。また、液滴が凝固した場合でも、供給および吸引等による排出を繰り返して機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を有効に防止し、液滴吐出装置の安定動作が可能となる。また、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時に、上記の吸引等による排出を行うことで、液位を液位範囲に戻すようにしているため、タンク本体の本来の液位管理に容易に移行でき、液位変動が機能液滴吐出ヘッドの吐出動作に影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明の機能液タンク(サブタンク)の管理方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。
【0030】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース21上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された一対のY軸支持ベース31上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド13が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して機能液滴吐出ヘッド13に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、装置全体を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。チャンバ5の側壁の一部には、機能液供給ユニット6の主体を為すメインタンク61等を収納するためのタンクキャビネット14が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド13を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0031】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置7が設けられており、各ユニットを機能液滴吐出ヘッド13の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置7(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を行う。
【0032】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットすると共にθ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル22と、セットテーブル22をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ23と、上記のフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ24と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ23およびX軸第2スライダ24をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。
【0033】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート32と、13個のブリッジプレート32を両持ちで支持する13組のY軸スライダ(図示省略)と、一対のY軸支持ベース31上に設置され、ブリッジプレート32をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド13を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド13を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。なお、請求項に言う描画手段とは、X軸テーブル2、Y軸テーブル3およびキャリッジユニット4(機能液滴吐出ヘッド13およびヘッドユニット42)から構成されている。
【0034】
各キャリッジユニット4は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド13と、12個の機能液滴吐出ヘッド13を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート41から成るヘッドユニット42と、を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット4は、ヘッドユニット42をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構43と、θ回転機構43を介して、ヘッドユニット42をブリッジプレート32に支持させる吊設部材44と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、その上部にサブタンク62が配設されており(実際には、ブリッジプレート32上に配設)、このサブタンク62から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁85を介して各機能液滴吐出ヘッド13に機能液が供給されるようになっている。
【0035】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド13は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針52を有する機能液導入部51と、複数の吐出ノズル54が、2本のノズル列56を形成したノズル面55を有するノズルプレート53と、を有している。機能液滴吐出ヘッド13は、制御装置から出力された駆動波形が圧電素子に印加されることで、各吐出ノズル54から機能液が吐出される。
【0036】
図6に示すように、吸引ユニット16は、各機能液滴吐出ヘッド13に対応する12個のヘッドキャップ162をキャッププレート163に搭載した13台のキャップユニット161と、支持部材164を介して各キャップユニット161を昇降させる13台の昇降機構(離接機構)165と、吸引チューブ169を介して各キャップユニット161と連通する吸引機構168と、を備えている。昇降機構165は、昇降シリンダ166により、一対のリニアガイド167にガイドされてヘッドキャップ162を直接昇降させる。吸引機構168は、エジェクタにより廃液タンク内を減圧して機能液滴吐出ヘッド13から機能液を吸引する。
【0037】
次に、図1、図7および図8を参照して機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、R・G・B・C・M・Yの6色に対応した6組の機能液供給装置60と、メインタンク61およびサブタンク62等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備65と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備66と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備67と、を備えている。6組の機能液供給装置60は、それぞれR・G・B・C・M・Yの6色に対応した機能液滴吐出ヘッド13に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド13には対応する色の機能液が供給される。
【0038】
図7に示すように、各機能液供給装置60は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク61,61と、各キャリッジユニット4に対応して設けた13個のサブタンク62と、メインタンク61と13個のサブタンク62を接続する上流側機能液流路63と、各サブタンク62と各機能液滴吐出ヘッド13とを接続する13組の下流側機能液流路64と、を備えている。
【0039】
各メインタンク61内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備65からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路63を介して13個のサブタンク62に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備66の圧縮エアーにより、各開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク62は、ガス排気設備67を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク62の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド13の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路64を介して機能液滴吐出ヘッド13に供給される。詳細は後述するが、サブタンク62からの機能液逆送時には、圧縮窒素ガスが各サブタンク62に供給される一方、各メインタンク61は、ガス排気設備67を介して大気開放される。
【0040】
各上流側機能液流路63には、各流路の圧力損失が均等になるように形成された13分岐流路81が介設されており、その下流側は13本に分流され、各サブタンク62に接続されている。また、各上流側機能液流路63には、機能液から気泡を透過除去する気泡除去ユニット82が介設されている。
【0041】
各下流側機能液流路64には、2分岐流路84が介設されており、その下流側は2本に分流され、機能液滴吐出ヘッド13の2連の接続針52に接続されている。また、2分岐流路84の上流側近傍には、圧力調整弁85が介設されている。
【0042】
各サブタンク62の上流側および下流側近傍の各機能液流路63,64には、流入開閉弁83および流出開閉弁86が介設されている。流入開閉弁83および流出開閉弁86は、容積変化なく開閉可能なエアーオペレートバルブで構成されており、開閉弁を開閉した際に発生する機能液の脈動を抑えることができる。そのため、機能液滴吐出ヘッド13に脈動(水頭値変動)が伝わることを抑え、機能液滴吐出ヘッド13による吐出不良を抑えることができる。なお、これらの開閉弁は、ダイヤフラム式のエアーオペレートバルブで構成することが好ましい。これにより、圧縮エアー供給設備66からの圧縮エアーにより開閉が制御できると共に、開閉弁の開閉をゆっくり行うことができるため、容易に容積変化なく開閉可能な構成に為されている。また、エアーオペレートバルブを使用することにより、開閉弁を通過する機能液の温度上昇を抑えることができる。
【0043】
次に、図8を参照して、サブタンク62およびサブタンク62廻りの構造について説明する。サブタンク62は、上部に気体空間(上部空間)を有すると共に機能液を貯留するサブタンク本体71と、サブタンク本体71に落し蓋様に浮かした蓋体フロート72と、サブタンク本体71の側方に配設された透明な液柱パイプ73と、液柱パイプ73に臨み、貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構74と、サブタンク本体71の側方下部に配設された液圧センサ75と、を備えている。
【0044】
サブタンク本体71は、ステンレス等の金属材料で、薄型直方体形状に形成されている。サブタンク本体71の一方の側板の上部には、通気用チューブ76が接続され、他方の側板の上部および下部には、液柱パイプ73の上端および下端がそれぞれ接続されている。さらに、サブタンク本体71の底板は、厚肉に形成され、機能液の流入経路77および流出経路78が「L」字状に屈曲形成されている。そして、流入経路77には上流側機能液流路63が、また流出経路78には下流側機能液流路64が、それぞれ接続されている。
【0045】
通気用チューブ76は、上記したサブタンク本体71の上部空間の略2倍の容積を有しており、サブタンク本体71内の機能液が満液および減液の場合でも、大気開放時には、上部空間の雰囲気が通気用チューブ76内に移動して、外部に飛散することがない。これにより、上部空間が機能液の飽和気体の雰囲気で保たれるので、機能液の液面の凝集等が生じることがない。また、通気用チューブ76の大気開放端側には、2分岐継手87を介してチューブ開閉弁88およびガス圧導入弁89が配設されており、チューブ開閉弁88には、ガス排気設備67が接続され、ガス圧導入弁89には、窒素ガス供給設備65が接続されている。メインタンク61からの送液の際には、チューブ開閉弁88を開弁すると共にガス圧導入弁89を閉弁して、ガス排気設備67により大気開放し、機能液滴吐出ヘッド13への送液または後述するメインタンク61への逆送の際には、ガス圧導入弁89を開弁すると共に、チューブ開閉弁88を閉弁して、窒素ガス供給設備65により加圧制御する。このようにして、必要量の機能液を効率的にサブタンク62内に貯留する。
【0046】
蓋体フロート72は、耐薬品性のステンレス等の金属材料により、内部を中空とし、上面視、サブタンク本体71の内面と略相似形の薄型直方体形状に形成されている。これにより、機能液の波立ちの発生する領域が極めて狭くなるため、液面揺れや波立ちを極力抑えられ、水頭値変動を防止することができる。また、サブタンク62内の機能液面と上部空間の気体との接触面積を小さくすることができるため、サブタンク62内の機能液の波立ちの発生および気泡が溶け込むのを抑えることができる。
【0047】
液位検出機構74は、透明な液柱パイプ73に外側から臨んでおり、上限となる機能液のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサ74aと、下限となる機能液の下限液位を検出する下限センサ74bと、上限・下限の上下中間に位置し、補給時の機能液の液位を検出する液位センサ74cと、を備えている。オーバーフローセンサ74aは、サブタンク62のオーバーフローを防止すべく設けられており、オーバーフローセンサ74aがオーバーフロー液位を検出した場合には、メインタンク61からの送液を停止させる。一方、下限センサ74bは、サブタンク62が空になるのを防止すべく設けられており、下限センサ74bが下限液位を検出した場合には、現時点のワークWの描画が終了したところで液滴吐出装置1を停止させる。なお、液位センサ74cは、一定範囲の液位を検出可能な多光軸センサで構成してもよい。
【0048】
液位センサ74cは、機能液滴吐出ヘッド13の理想の水頭値を考慮した液位(基準液位)を検出するものであり、液位センサ74cにより機能液の液位が検出されると、後述する制御部98との協働により、満液もしくは減液と判断される。すなわち、液位センサ74cより上に液位がある状態から、吐出動作により機能液が減り、液位センサ74cにより基準液位が検出されると減液と判断される。また、液位センサ74cより下に液位がある状態から、補給動作により機能液が増え、液位センサ74cにより基準液位が検出された後、一定時間経過すると満液と判断される。このように、減液状態の液位と満液状態の液位とは、液位センサ74cにより液面制御される所定の液位範囲を構成している。この液位範囲を判断することにより、液位調整にかかる機能液の補給停止および補給開始の制御を、単一の液位センサ74cによる基準液位の検出のみで行うことができる。これにより、本装置を簡単な構成にすることができる。なお、時間の計測には、後述する制御部98のCPU105が標準的に有するタイマ機能を使用する。
【0049】
次に、図9を参照して、液滴吐出装置1の主制御系について説明する。同図に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット42を有する液滴吐出部91と、X軸テーブル2によりワークWを移動させるワーク移動部92と、Y軸テーブル3によりキャリッジユニット4を移動させるヘッド移動部93と、メンテナンス装置7を有するメンテナンス部94と、機能液供給ユニット6を有する機能液供給部95と、各種センサ検出を行う検出部96と、各部を駆動制御する駆動部97と、各部に接続され、液滴吐出装置1全体の制御を行う制御部98と、を備えている。
【0050】
制御部98には、各手段を接続するためのインタフェース101と、制御処理の作業領域であるRAM102と、制御プログラムやデータ等を記憶するROM103と、描画データ等の処理プログラム等を記憶するハードディスク104と、ROM103やハードディスク104に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU105と、これらを互いに接続するバス106と、が備えられている。そして、制御部98は、各手段からの各種データを、インタフェース101を介して入力すると共に、ハードディスク104に記憶されたプログラムに従ってCPU105に演算処理させ、その処理結果を、駆動部97を介して各手段に出力する。これにより、装置全体が制御され、液滴吐出装置1の各種処理が行われる。
【0051】
ここで、サブタンク62に対する機能液の供給動作および排出動作について説明する。これらの動作は、各メインタンク61および各サブタンク62に機能液が貯液されていると共に、各流路に機能液が充液されている状態にて行われるものとする。加えて、窒素ガス供給設備65により、上流側機能液流路63に接続された一方のメインタンク61が加圧されているものとする。
【0052】
まず、機能液滴吐出ヘッド13への機能液供給動作について説明する。サブタンク62の上流側に介設された流入開閉弁83を閉弁した状態で、機能液滴吐出ヘッド13を駆動して機能液滴の吐出を行う。流入開閉弁83が閉弁されているため、メインタンク61からの圧力は縁切りされ、機能液滴吐出ヘッド13のポンプ作用により、機能液が各サブタンク62から各機能液滴吐出ヘッド13に送液される。
【0053】
次に、機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作時における、サブタンク62への機能液の補給について説明する(通常供給)。機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作により、サブタンク62内の機能液が一定量減ると、液位検出機構74によって減液状態であると判断され、流入開閉弁83を開弁してメインタンク61からサブタンク62に機能液を補給する。メインタンク61は加圧されているため、流入開閉弁83を開弁することでメインタンク61の機能液が自動的にサブタンク62に送液される。サブタンク62内の機能液が一定量貯まると、液位検出機構74によって、サブタンク62内が満液状態であると判断される。満液状態と判断されると、流入開閉弁83を閉弁して補給動作を終了する。このようにして、サブタンク62内の機能液が所定の液位範囲に維持される。なお、この際、機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作は継続的に行われる。
【0054】
ここで、サブタンク本体71の上部空間には、貯留した機能液(の溶媒)の飽和気体の雰囲気で保たれており、機能液の温度とサブタンク62本体内面の温度等との微妙な温度差により、或いはサブタンク本体71内の圧力変動により、上部空間において飽和気体が凝結して液滴となる場合がある。この凝結液滴LQが液柱パイプ73内で生じたり、凝結液滴LQが液柱パイプ73内に入り込むことにより、液柱パイプ73内面に付着した場合、付着する場所によっては、液位検出機構74の各センサが正確な液位を検出できなくなる。
【0055】
例えば、図10(a)では、液柱パイプ73における液位センサ74cの検出液位に凝結液滴LQが付着しているため、実際の液位が基準液位よりも下降しているにもかかわらず、制御部98は、サブタンク62内の機能液は所定の液位範囲にあると誤判断してしまう。このまま、機能液が減り続けると、下限センサ74bによる下限液位検出により、サブタンク62内の下限液位を検出しているにもかかわらず、いまだ所定の液位範囲に機能液が存するとの不整合が生じ、その結果、液滴吐出装置1が停止することになる。また、図10(b)では、液柱パイプ73におけるオーバーフローセンサ74aの検出液位に凝結液滴LQが付着しているため、制御部98は、常にオーバーフロー液位を検出し続け、その結果、液滴吐出装置1が停止し続けることとなる。
【0056】
このような液柱パイプ73内の凝結液滴LQを除去するサブタンク62の管理方法について、以下、説明する。この管理方法は、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出駆動時(非描画時)に行うものであり、メインタンク61からサブタンク62への通常供給時よりも機能液を過剰供給する液位上昇工程S1と、その過剰供給した機能液を機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から、或いはメインタンク61に逆流させて排出する液位下降工程S2と、から構成されている。上記した凝結液滴LQは、液位センサ74cが検出する基準液位付近に付着するものが問題となるため、本実施形態では、サブタンク62の所定の液位範囲を越えて機能液を過剰供給することにより、その機能液に凝結液滴LQを取り込ませるようにしている。
【0057】
図11に示すように、まず、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時、好ましくは、吸引ユニット16による強制的な吸引の実施時において、通常供給と同じ供給圧力で、サブタンク62に機能液の補給を開始する(S11)。このとき、通常供給時における満液状態の液位を越えて、且つオーバーフロー液位を越えないように機能液を過剰供給する(液位上昇工程S1)。この過剰供給は、メインタンク61に加えられた圧力を通常供給時と同一に維持した状態で、通常供給時の基準液位検出後、満液と判断される一定時間を延長して、機能液の送液停止制御を遅らせることにより実施される(S12)。すなわち、メインタンク61からサブタンク62へ送液される単位時間当たりの機能液の流量が一定であるため、停止制御の遅延時間(過剰供給時間)を設定することにより、通常供給時に比して機能液を過剰に供給する。過剰供給時間が経過した後に、機能液の供給を停止する(S13)。これにより、少なくとも液位センサ74cが誤検出するような位置に付着している凝結液滴LQは、過剰供給された機能液に取り込むことができる。また、詳しくは後述するが、この過剰供給した機能液は、液位下降工程S2において吸引等によりサブタンク62内から排出される。
【0058】
また、上記の凝結液滴LQが、オーバーフロー液位付近に付着することも考慮すると、上記の液位上昇工程S1では、オーバーフロー液位を僅かに越えてサブタンク62に機能液を過剰供給するようにしてもよい。上記したように、通常供給時は、オーバーフローセンサ74aがオーバーフロー液位を検出すると、メインタンク61からの送液が停止するが、この場合における過剰供給では、オーバーフロー液位を検出した場合でも送液を続けるように制御する。すなわち、オーバーフロー液位検出結果に基づく通常の制御動作がキャンセルされることにより、液位上昇工程S1が阻害されず、サブタンク62に、オーバーフロー液位を僅かに越えて機能液を供給することができる。これにより、オーバーフロー液位付近に付着した凝結液滴LQをも除去することができる。
【0059】
上記のように、本実施形態では停止制御の遅延時間を設定することにより過剰供給を実施しているが、図12に示すように、他の過剰供給の方法(第2実施形態)として、メインタンク61に加えられた圧力を通常供給時よりも高圧に設定し(S14)、通常供給時と同様に供給を開始し(S11)、基準液位検出後、一定時間経過(通常供給時間)を待って、機能液の供給を停止制御するようにしてもよい(S15)。この過剰供給方法では、実際の供給の際、機能液の送液を停止制御しても、液位の上昇は、直ちに停止するわけではなく、僅かな時間差をもって停止することを利用している。したがって、通常供給よりも、機能液を高圧供給することで、停止制御後の単位時間当たりの液位上昇幅が大きくなり、結果として、サブタンク62に機能液が過剰供給されることになる。
【0060】
また、さらに、他の過剰供給の方法(第3実施形態)として、液位センサ74cに、多光軸センサを用いた場合には、多光軸センサの閾値を制御することにより、一定範囲の液位を検出することができる。このため、多光軸センサが検出可能な一定範囲の液位において、所望の液位を検出後に機能液の供給を停止制御することによって、通常供給または過剰供給を多光軸センサの出力のみで制御することができる。
【0061】
次に、図11および図12に示すように、液位上昇工程S1を実施した後、サブタンク62に過剰供給した機能液を、吸引ユニット16を用いて、各機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から強制的に吸引、或いはサブタンク62からメインタンク61に逆送させることで(S21)、基準液位に戻すように排出する(液位下降工程S2)。なお、吸引動作または逆送動作は、作業者によって、どちらかを選択的に切り替え可能な構成とすることが、好ましい。
【0062】
吸引ユニット16を用いた吸引動作の場合には、まず、流出開閉弁86を開弁すると共に流入開閉弁83を閉弁する。次に、各キャリッジユニット4をキャップユニット161上に臨ませ、昇降機構165によりキャップユニット161を上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド13に対応するヘッドキャップ162を密接させる。その後、吸引機構168を駆動させることにより、機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から機能液の吸引を開始する(S21)。そして、液位センサ74cが基準液位を検出したところで(S22)、吸引動作を終了(S23)する。このように、過剰供給した機能液を機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54のメンテナンスに有効利用することができると共に、吸引動作による機能液の流出後において、サブタンク62の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0063】
他方、サブタンク62の機能液をメインタンク61に戻す逆送動作の場合には、流出開閉弁86を閉弁すると共に流入開閉弁83を開弁し、且つメインタンク61への加圧を解除(負圧制御)した後、チューブ開閉弁88を閉弁すると共に、ガス圧導入弁89を開弁し、窒素ガス供給設備65によりサブタンク62内を加圧(加圧制御)して機能液を逆流させる(S21)。そして、液位センサ74cが基準液位を検出したところで(S22)、逆送動作を終了する(S23)。このように、過剰供給した機能液をメインタンク61に戻すことにより、サブタンク62内に過剰供給された機能液を廃棄することなく、機能液を有効利用することができる。また、逆送動作による機能液の流出後において、サブタンク62の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。また、凝結液滴LQを、液位上昇工程S1により取り込む場合には、サブタンク62内の機能液の濃度が薄められる虞が考えられるが、このような場合でも、サブタンク62の機能液貯留量に比べ、メインタンク61の機能液貯留量の方が絶対的に多いため、この逆流動作では、メインタンク61およびサブタンク62における機能液の相対的な濃度変化を最小限に抑えることができる。このため、機能液の濃度変化による描画処理等における悪影響を軽減することができる。
【0064】
なお、液位上昇工程S1および液位下降工程S2は、作業者が手動により定期・不定期に行ってもかまわないが、自動で定期的(一定の稼働時間または一定のワークWの処理枚数)に行うことが好ましい。自動で定期的に実施することで、液柱パイプ73における液位センサ74cの検出位置に凝結液滴LQが付着していたとしても、定期的にリフレッシュすることができる。また、吸引による液位下降工程S2を実施すれば、機能液滴吐出ヘッド13のクリーニングも同時に行うことができる。なお、定期的なリフレッシュは、貯留した機能液の物性変化(凝集、凝結等)を抑制することができる最小限の頻度で行われることが好ましい。この頻度の設定は、機能液の色見変化、粘度変化等、機能液毎にパラメータを設定することができることが好ましい。
【0065】
以上の構成によれば、液位上昇工程S1において、液柱パイプ73に液位範囲を越えて機能液を過剰供給できるため、液位センサ74c等が誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれる。そして、液位下降工程S2における吸引動作または逆送動作により、液柱パイプ73の内面から排除される。また、液柱パイプ73内面に液滴が凝固した場合でも、過剰供給および吸引動作等による排出を繰り返して機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプ73の内面に付着した凝結液滴LQ等による液位センサ74cの誤検出を有効に防止し、液滴吐出装置1の安定動作が可能となる。さらに、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時に、上記の吸引等による排出を行うことで、液位を液位範囲に戻すようにしているため、サブタンク62の本来の液位管理に容易に移行でき、この液位変動が機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作に影響を及ぼすことがない。また、液位上昇工程S1および液位下降工程S2を実施すると、サブタンク62に貯留された機能液が攪拌されるため、貯留された機能液の濃度を均一に維持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の側面図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】吸引ユニットの側面図である。
【図7】機能液供給装置の配管系統図である。
【図8】サブタンク廻りを模式的に表した断面図である。
【図9】液滴吐出装置の主制御系について説明したブロック図である。
【図10】凝結液滴が付着した液柱パイプ内を模式的に表した断面図である。
【図11】過剰供給時間の制御による液位上昇工程および液位下降工程のフローチャートである。
【図12】圧力増加制御による液位上昇工程および液位下降工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1:液滴吐出装置、13:機能液滴吐出ヘッド、16:吸引ユニット、54:吐出ノズル、55:ノズル面、61:メインタンク、62:サブタンク、71:サブタンク本体、73:液柱パイプ、74a:オーバーフローセンサ、74b:下限センサ、74c:液位センサ、98:制御部、LQ:凝結液滴、W:ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から機能液の供給を受けると共に、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機能液タンクの管理方法を実施する液滴吐出装置として、メインタンクで構成された機能液供給手段と、機能液供給手段から補給されたインク(機能液)を貯留するタンク本体および液位センシング用の液柱パイプとから成るサブタンク(機能液タンク)と、タンク本体内に貯留した機能液の液面の減液状態および満液状態を検知する低位検出センサおよび高位検出センサと、機能液を機能液滴吐出ヘッドに送液する機能液送液手段と、機能液供給手段および機能液送液手段を制御する制御装置と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この液滴吐出装置では、低位検出センサが、機能液の減液状態を検出するとメインタンクからタンク本体へ機能液の補給が行われ、高位検出センサが、機能液の満液状態を検出したところで補給が停止することで、機能液タンクの液位を管理している。
【特許文献1】特開2007−275795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の液滴吐出装置におけるサブタンクでは、タンク本体内の上部空間が機能液(の溶媒)の飽和気体の雰囲気に保たれており、圧力変動や温度変化等により、上記の飽和気体が凝結して液滴となる場合がある。液滴が液柱パイプ内で凝結したり、凝結した液滴が液柱パイプ内に入り込むと、液滴の位置によっては、上記のセンサに誤検出が生ずる問題があった。このような場合には、タンク本体内に貯留した機能液面の正常な検出ができなくなり、装置全体として異常な動作の原因となる。
【0004】
本発明は、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を、有効に防止することができる機能液タンクの管理方法および液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の機能液タンクの管理方法は、下流側を機能液供給手段に接続され上流側をインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに接続された機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を備え、液位センサの検出結果に基づいて、タンク本体の所定の液位範囲を維持するように機能液供給手段を制御する機能液タンクの管理方法であって、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を駆動し、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程と、液位上昇工程の後、タンク本体から機能液を流出させ、タンク本体の液位を液位範囲に戻す液位下降工程と、を実施することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、液位上昇工程において、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給されるため、少なくとも液位センサが誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれ、続く液位下降工程において、液柱パイプの内面から排除される。また、液滴によっては、凝固する場合も考えられるが、液位上昇工程および液位下降工程を繰り返すことにより、機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を有効に防止することができる。また、液位下降工程において、液位を液位範囲に戻すようにしているため、タンク本体の本来の液位管理に容易に移行させることができる。さらに、上記の工程を、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時に行うようにしているので、液位の上昇および下降が機能液滴吐出ヘッドの吐出動作に影響を及ぼすことがない。また、液位上昇工程および液位下降工程を行うと、タンク本体内に貯留された機能液が攪拌されるため、貯留した機能液の濃度を均一に維持することもできる。
【0007】
この場合、液位下降工程において、機能液吸引手段を用い、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引することにより、タンク本体から機能液を流出させることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルのメンテナンスに、過剰供給した機能液を使用することができる。すなわち、メンテナンス用の機能液吸引手段を活用して、液位下降工程を実施することができる。
【0009】
また、液位センサの検出結果に基づいて、機能液吸引手段を停止させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、吸引による機能液の流出後において、タンク本体の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0011】
また、液位下降工程において、機能液逆流手段を用い、機能液を機能液供給手段側に逆流させて、タンク本体から機能液を流出させることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、過剰供給した機能液を廃棄することなく機能液供給手段に戻すことができる。これにより、機能液を無駄にすることなく、有効に利用することができる。また、溶媒が凝結した液滴を、液位上昇工程により取り込む場合には、タンク本体内の機能液の濃度が薄められる虞があるが、このような場合でも、タンク本体の機能液貯留量に比べ、機能液供給手段の機能液貯留量の方が絶対的に多いため、機能液供給手段側に逆流させる方法では、タンク本体および機能液供給手段における機能液の相対的な濃度変化を最小限に抑えることができる。これにより、機能液の濃度変化による悪影響を軽減することができる。
【0013】
この場合、液位センサの検出結果に基づいて、機能液逆流手段を停止させることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、逆流による機能液の流出後において、タンク本体の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0015】
これらの場合、液位上昇工程および液位下降工程を、定期的に実施することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、凝結液滴等が、液柱パイプにおける液位センサの検出位置に付着していたとしても、定期的にリフレッシュすることができる。これにより、液位の誤検出によるトラブルを未然に防ぐことができる。なお、定期的なリフレッシュは、貯留した機能液の物性変化(凝集、凝結等)を抑制することができる最小限の頻度で行われることが好ましい。
【0017】
一方、液位センサの上方に配設され、タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、液位上昇工程および液位下降工程において、オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作をキャンセルすることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作により、上記の工程が阻害されたり、装置に異常が発生するのを防止することができる。
【0019】
また、液位センサの上方に配設され、タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、液位上昇工程では、オーバーフロー液位を越えて機能液の過剰供給を実施することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、タンク本体において機能液のオーバーフローを防止しつつ、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時には、オーバーフロー液位を越えて機能液を満たすことができるので、液柱パイプの内面に付着した液滴によるオーバーフローセンサの誤検出も、有効に防止することができる。
【0021】
この場合、液位上昇工程における機能液の過剰供給は、機能液の供給流量を一定とした機能液供給手段のタイマ制御により実施されることが好ましい。
【0022】
同様に、液位上昇工程における機能液の過剰供給は、機能液の供給時間を一定とした機能液供給手段の流量制御により実施されることが好ましい。
【0023】
これらの構成によれば、機能液供給手段からの機能液の供給量を精度良く制御することができるため、専用のセンサ等を必要とすることなく、機能液の過剰供給を簡単な制御で安定して実施することができる。
【0024】
また、液位センサは、多光軸センサで構成されており、液位上昇工程おける機能液の過剰供給は、多光軸センサの閾値制御により実施されることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、多光軸センサの閾値を制御することにより、液位センサを利用して機能液の過剰供給を精度良く行うことができる。
【0026】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、機能液滴吐出ヘッドのノズル面に密接し、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する機能液吸引手段と、機能液を貯留すると共に、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、機能液吸引手段および機能液供給手段を制御する制御手段と、を備え、機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、制御手段は、液位センサの検出結果に基づいて、機能液供給手段を制御しタンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を制御し、タンク本体に液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、機能液吸引手段を制御し、吐出ノズルから機能液を吸引してタンク本体の液位を液位範囲に戻すことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の他の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、機能液を貯留すると共に、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、機能液タンクの機能液を、機能液供給手段側に逆流させる機能液逆流手段と、機能液供給手段および機能液逆流手段を制御する制御手段と、を備え、機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、液柱パイプに外側から臨み、液柱パイプの液位を介してタンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、制御手段は、液位センサの検出結果に基づいて、機能液供給手段を制御しタンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、機能液供給手段を制御し、タンク本体に液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、機能液逆流手段を制御し、タンク本体から機能液を逆流させてタンク本体の液位を液位範囲に戻すことを特徴とする。
【0028】
これらの構成によれば、機能液供給手段により、液柱パイプにおける液位範囲を越えて機能液を過剰供給されるため、少なくとも液位センサが誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれ、機能液吸引手段または機能液逆流手段により、液柱パイプの内面から排除される。また、液滴が凝固した場合でも、供給および吸引等による排出を繰り返して機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプの内面に付着した液滴による液位センサの誤検出を有効に防止し、液滴吐出装置の安定動作が可能となる。また、機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時に、上記の吸引等による排出を行うことで、液位を液位範囲に戻すようにしているため、タンク本体の本来の液位管理に容易に移行でき、液位変動が機能液滴吐出ヘッドの吐出動作に影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明の機能液タンク(サブタンク)の管理方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。
【0030】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース21上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された一対のY軸支持ベース31上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド13が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して機能液滴吐出ヘッド13に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、装置全体を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。チャンバ5の側壁の一部には、機能液供給ユニット6の主体を為すメインタンク61等を収納するためのタンクキャビネット14が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド13を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0031】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置7が設けられており、各ユニットを機能液滴吐出ヘッド13の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置7(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を行う。
【0032】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットすると共にθ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル22と、セットテーブル22をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ23と、上記のフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ24と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ23およびX軸第2スライダ24をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。
【0033】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート32と、13個のブリッジプレート32を両持ちで支持する13組のY軸スライダ(図示省略)と、一対のY軸支持ベース31上に設置され、ブリッジプレート32をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド13を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド13を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。なお、請求項に言う描画手段とは、X軸テーブル2、Y軸テーブル3およびキャリッジユニット4(機能液滴吐出ヘッド13およびヘッドユニット42)から構成されている。
【0034】
各キャリッジユニット4は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド13と、12個の機能液滴吐出ヘッド13を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート41から成るヘッドユニット42と、を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット4は、ヘッドユニット42をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構43と、θ回転機構43を介して、ヘッドユニット42をブリッジプレート32に支持させる吊設部材44と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、その上部にサブタンク62が配設されており(実際には、ブリッジプレート32上に配設)、このサブタンク62から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁85を介して各機能液滴吐出ヘッド13に機能液が供給されるようになっている。
【0035】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド13は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針52を有する機能液導入部51と、複数の吐出ノズル54が、2本のノズル列56を形成したノズル面55を有するノズルプレート53と、を有している。機能液滴吐出ヘッド13は、制御装置から出力された駆動波形が圧電素子に印加されることで、各吐出ノズル54から機能液が吐出される。
【0036】
図6に示すように、吸引ユニット16は、各機能液滴吐出ヘッド13に対応する12個のヘッドキャップ162をキャッププレート163に搭載した13台のキャップユニット161と、支持部材164を介して各キャップユニット161を昇降させる13台の昇降機構(離接機構)165と、吸引チューブ169を介して各キャップユニット161と連通する吸引機構168と、を備えている。昇降機構165は、昇降シリンダ166により、一対のリニアガイド167にガイドされてヘッドキャップ162を直接昇降させる。吸引機構168は、エジェクタにより廃液タンク内を減圧して機能液滴吐出ヘッド13から機能液を吸引する。
【0037】
次に、図1、図7および図8を参照して機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、R・G・B・C・M・Yの6色に対応した6組の機能液供給装置60と、メインタンク61およびサブタンク62等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備65と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備66と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備67と、を備えている。6組の機能液供給装置60は、それぞれR・G・B・C・M・Yの6色に対応した機能液滴吐出ヘッド13に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド13には対応する色の機能液が供給される。
【0038】
図7に示すように、各機能液供給装置60は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク61,61と、各キャリッジユニット4に対応して設けた13個のサブタンク62と、メインタンク61と13個のサブタンク62を接続する上流側機能液流路63と、各サブタンク62と各機能液滴吐出ヘッド13とを接続する13組の下流側機能液流路64と、を備えている。
【0039】
各メインタンク61内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備65からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路63を介して13個のサブタンク62に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備66の圧縮エアーにより、各開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク62は、ガス排気設備67を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク62の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド13の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路64を介して機能液滴吐出ヘッド13に供給される。詳細は後述するが、サブタンク62からの機能液逆送時には、圧縮窒素ガスが各サブタンク62に供給される一方、各メインタンク61は、ガス排気設備67を介して大気開放される。
【0040】
各上流側機能液流路63には、各流路の圧力損失が均等になるように形成された13分岐流路81が介設されており、その下流側は13本に分流され、各サブタンク62に接続されている。また、各上流側機能液流路63には、機能液から気泡を透過除去する気泡除去ユニット82が介設されている。
【0041】
各下流側機能液流路64には、2分岐流路84が介設されており、その下流側は2本に分流され、機能液滴吐出ヘッド13の2連の接続針52に接続されている。また、2分岐流路84の上流側近傍には、圧力調整弁85が介設されている。
【0042】
各サブタンク62の上流側および下流側近傍の各機能液流路63,64には、流入開閉弁83および流出開閉弁86が介設されている。流入開閉弁83および流出開閉弁86は、容積変化なく開閉可能なエアーオペレートバルブで構成されており、開閉弁を開閉した際に発生する機能液の脈動を抑えることができる。そのため、機能液滴吐出ヘッド13に脈動(水頭値変動)が伝わることを抑え、機能液滴吐出ヘッド13による吐出不良を抑えることができる。なお、これらの開閉弁は、ダイヤフラム式のエアーオペレートバルブで構成することが好ましい。これにより、圧縮エアー供給設備66からの圧縮エアーにより開閉が制御できると共に、開閉弁の開閉をゆっくり行うことができるため、容易に容積変化なく開閉可能な構成に為されている。また、エアーオペレートバルブを使用することにより、開閉弁を通過する機能液の温度上昇を抑えることができる。
【0043】
次に、図8を参照して、サブタンク62およびサブタンク62廻りの構造について説明する。サブタンク62は、上部に気体空間(上部空間)を有すると共に機能液を貯留するサブタンク本体71と、サブタンク本体71に落し蓋様に浮かした蓋体フロート72と、サブタンク本体71の側方に配設された透明な液柱パイプ73と、液柱パイプ73に臨み、貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構74と、サブタンク本体71の側方下部に配設された液圧センサ75と、を備えている。
【0044】
サブタンク本体71は、ステンレス等の金属材料で、薄型直方体形状に形成されている。サブタンク本体71の一方の側板の上部には、通気用チューブ76が接続され、他方の側板の上部および下部には、液柱パイプ73の上端および下端がそれぞれ接続されている。さらに、サブタンク本体71の底板は、厚肉に形成され、機能液の流入経路77および流出経路78が「L」字状に屈曲形成されている。そして、流入経路77には上流側機能液流路63が、また流出経路78には下流側機能液流路64が、それぞれ接続されている。
【0045】
通気用チューブ76は、上記したサブタンク本体71の上部空間の略2倍の容積を有しており、サブタンク本体71内の機能液が満液および減液の場合でも、大気開放時には、上部空間の雰囲気が通気用チューブ76内に移動して、外部に飛散することがない。これにより、上部空間が機能液の飽和気体の雰囲気で保たれるので、機能液の液面の凝集等が生じることがない。また、通気用チューブ76の大気開放端側には、2分岐継手87を介してチューブ開閉弁88およびガス圧導入弁89が配設されており、チューブ開閉弁88には、ガス排気設備67が接続され、ガス圧導入弁89には、窒素ガス供給設備65が接続されている。メインタンク61からの送液の際には、チューブ開閉弁88を開弁すると共にガス圧導入弁89を閉弁して、ガス排気設備67により大気開放し、機能液滴吐出ヘッド13への送液または後述するメインタンク61への逆送の際には、ガス圧導入弁89を開弁すると共に、チューブ開閉弁88を閉弁して、窒素ガス供給設備65により加圧制御する。このようにして、必要量の機能液を効率的にサブタンク62内に貯留する。
【0046】
蓋体フロート72は、耐薬品性のステンレス等の金属材料により、内部を中空とし、上面視、サブタンク本体71の内面と略相似形の薄型直方体形状に形成されている。これにより、機能液の波立ちの発生する領域が極めて狭くなるため、液面揺れや波立ちを極力抑えられ、水頭値変動を防止することができる。また、サブタンク62内の機能液面と上部空間の気体との接触面積を小さくすることができるため、サブタンク62内の機能液の波立ちの発生および気泡が溶け込むのを抑えることができる。
【0047】
液位検出機構74は、透明な液柱パイプ73に外側から臨んでおり、上限となる機能液のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサ74aと、下限となる機能液の下限液位を検出する下限センサ74bと、上限・下限の上下中間に位置し、補給時の機能液の液位を検出する液位センサ74cと、を備えている。オーバーフローセンサ74aは、サブタンク62のオーバーフローを防止すべく設けられており、オーバーフローセンサ74aがオーバーフロー液位を検出した場合には、メインタンク61からの送液を停止させる。一方、下限センサ74bは、サブタンク62が空になるのを防止すべく設けられており、下限センサ74bが下限液位を検出した場合には、現時点のワークWの描画が終了したところで液滴吐出装置1を停止させる。なお、液位センサ74cは、一定範囲の液位を検出可能な多光軸センサで構成してもよい。
【0048】
液位センサ74cは、機能液滴吐出ヘッド13の理想の水頭値を考慮した液位(基準液位)を検出するものであり、液位センサ74cにより機能液の液位が検出されると、後述する制御部98との協働により、満液もしくは減液と判断される。すなわち、液位センサ74cより上に液位がある状態から、吐出動作により機能液が減り、液位センサ74cにより基準液位が検出されると減液と判断される。また、液位センサ74cより下に液位がある状態から、補給動作により機能液が増え、液位センサ74cにより基準液位が検出された後、一定時間経過すると満液と判断される。このように、減液状態の液位と満液状態の液位とは、液位センサ74cにより液面制御される所定の液位範囲を構成している。この液位範囲を判断することにより、液位調整にかかる機能液の補給停止および補給開始の制御を、単一の液位センサ74cによる基準液位の検出のみで行うことができる。これにより、本装置を簡単な構成にすることができる。なお、時間の計測には、後述する制御部98のCPU105が標準的に有するタイマ機能を使用する。
【0049】
次に、図9を参照して、液滴吐出装置1の主制御系について説明する。同図に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット42を有する液滴吐出部91と、X軸テーブル2によりワークWを移動させるワーク移動部92と、Y軸テーブル3によりキャリッジユニット4を移動させるヘッド移動部93と、メンテナンス装置7を有するメンテナンス部94と、機能液供給ユニット6を有する機能液供給部95と、各種センサ検出を行う検出部96と、各部を駆動制御する駆動部97と、各部に接続され、液滴吐出装置1全体の制御を行う制御部98と、を備えている。
【0050】
制御部98には、各手段を接続するためのインタフェース101と、制御処理の作業領域であるRAM102と、制御プログラムやデータ等を記憶するROM103と、描画データ等の処理プログラム等を記憶するハードディスク104と、ROM103やハードディスク104に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU105と、これらを互いに接続するバス106と、が備えられている。そして、制御部98は、各手段からの各種データを、インタフェース101を介して入力すると共に、ハードディスク104に記憶されたプログラムに従ってCPU105に演算処理させ、その処理結果を、駆動部97を介して各手段に出力する。これにより、装置全体が制御され、液滴吐出装置1の各種処理が行われる。
【0051】
ここで、サブタンク62に対する機能液の供給動作および排出動作について説明する。これらの動作は、各メインタンク61および各サブタンク62に機能液が貯液されていると共に、各流路に機能液が充液されている状態にて行われるものとする。加えて、窒素ガス供給設備65により、上流側機能液流路63に接続された一方のメインタンク61が加圧されているものとする。
【0052】
まず、機能液滴吐出ヘッド13への機能液供給動作について説明する。サブタンク62の上流側に介設された流入開閉弁83を閉弁した状態で、機能液滴吐出ヘッド13を駆動して機能液滴の吐出を行う。流入開閉弁83が閉弁されているため、メインタンク61からの圧力は縁切りされ、機能液滴吐出ヘッド13のポンプ作用により、機能液が各サブタンク62から各機能液滴吐出ヘッド13に送液される。
【0053】
次に、機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作時における、サブタンク62への機能液の補給について説明する(通常供給)。機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作により、サブタンク62内の機能液が一定量減ると、液位検出機構74によって減液状態であると判断され、流入開閉弁83を開弁してメインタンク61からサブタンク62に機能液を補給する。メインタンク61は加圧されているため、流入開閉弁83を開弁することでメインタンク61の機能液が自動的にサブタンク62に送液される。サブタンク62内の機能液が一定量貯まると、液位検出機構74によって、サブタンク62内が満液状態であると判断される。満液状態と判断されると、流入開閉弁83を閉弁して補給動作を終了する。このようにして、サブタンク62内の機能液が所定の液位範囲に維持される。なお、この際、機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作は継続的に行われる。
【0054】
ここで、サブタンク本体71の上部空間には、貯留した機能液(の溶媒)の飽和気体の雰囲気で保たれており、機能液の温度とサブタンク62本体内面の温度等との微妙な温度差により、或いはサブタンク本体71内の圧力変動により、上部空間において飽和気体が凝結して液滴となる場合がある。この凝結液滴LQが液柱パイプ73内で生じたり、凝結液滴LQが液柱パイプ73内に入り込むことにより、液柱パイプ73内面に付着した場合、付着する場所によっては、液位検出機構74の各センサが正確な液位を検出できなくなる。
【0055】
例えば、図10(a)では、液柱パイプ73における液位センサ74cの検出液位に凝結液滴LQが付着しているため、実際の液位が基準液位よりも下降しているにもかかわらず、制御部98は、サブタンク62内の機能液は所定の液位範囲にあると誤判断してしまう。このまま、機能液が減り続けると、下限センサ74bによる下限液位検出により、サブタンク62内の下限液位を検出しているにもかかわらず、いまだ所定の液位範囲に機能液が存するとの不整合が生じ、その結果、液滴吐出装置1が停止することになる。また、図10(b)では、液柱パイプ73におけるオーバーフローセンサ74aの検出液位に凝結液滴LQが付着しているため、制御部98は、常にオーバーフロー液位を検出し続け、その結果、液滴吐出装置1が停止し続けることとなる。
【0056】
このような液柱パイプ73内の凝結液滴LQを除去するサブタンク62の管理方法について、以下、説明する。この管理方法は、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出駆動時(非描画時)に行うものであり、メインタンク61からサブタンク62への通常供給時よりも機能液を過剰供給する液位上昇工程S1と、その過剰供給した機能液を機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から、或いはメインタンク61に逆流させて排出する液位下降工程S2と、から構成されている。上記した凝結液滴LQは、液位センサ74cが検出する基準液位付近に付着するものが問題となるため、本実施形態では、サブタンク62の所定の液位範囲を越えて機能液を過剰供給することにより、その機能液に凝結液滴LQを取り込ませるようにしている。
【0057】
図11に示すように、まず、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時、好ましくは、吸引ユニット16による強制的な吸引の実施時において、通常供給と同じ供給圧力で、サブタンク62に機能液の補給を開始する(S11)。このとき、通常供給時における満液状態の液位を越えて、且つオーバーフロー液位を越えないように機能液を過剰供給する(液位上昇工程S1)。この過剰供給は、メインタンク61に加えられた圧力を通常供給時と同一に維持した状態で、通常供給時の基準液位検出後、満液と判断される一定時間を延長して、機能液の送液停止制御を遅らせることにより実施される(S12)。すなわち、メインタンク61からサブタンク62へ送液される単位時間当たりの機能液の流量が一定であるため、停止制御の遅延時間(過剰供給時間)を設定することにより、通常供給時に比して機能液を過剰に供給する。過剰供給時間が経過した後に、機能液の供給を停止する(S13)。これにより、少なくとも液位センサ74cが誤検出するような位置に付着している凝結液滴LQは、過剰供給された機能液に取り込むことができる。また、詳しくは後述するが、この過剰供給した機能液は、液位下降工程S2において吸引等によりサブタンク62内から排出される。
【0058】
また、上記の凝結液滴LQが、オーバーフロー液位付近に付着することも考慮すると、上記の液位上昇工程S1では、オーバーフロー液位を僅かに越えてサブタンク62に機能液を過剰供給するようにしてもよい。上記したように、通常供給時は、オーバーフローセンサ74aがオーバーフロー液位を検出すると、メインタンク61からの送液が停止するが、この場合における過剰供給では、オーバーフロー液位を検出した場合でも送液を続けるように制御する。すなわち、オーバーフロー液位検出結果に基づく通常の制御動作がキャンセルされることにより、液位上昇工程S1が阻害されず、サブタンク62に、オーバーフロー液位を僅かに越えて機能液を供給することができる。これにより、オーバーフロー液位付近に付着した凝結液滴LQをも除去することができる。
【0059】
上記のように、本実施形態では停止制御の遅延時間を設定することにより過剰供給を実施しているが、図12に示すように、他の過剰供給の方法(第2実施形態)として、メインタンク61に加えられた圧力を通常供給時よりも高圧に設定し(S14)、通常供給時と同様に供給を開始し(S11)、基準液位検出後、一定時間経過(通常供給時間)を待って、機能液の供給を停止制御するようにしてもよい(S15)。この過剰供給方法では、実際の供給の際、機能液の送液を停止制御しても、液位の上昇は、直ちに停止するわけではなく、僅かな時間差をもって停止することを利用している。したがって、通常供給よりも、機能液を高圧供給することで、停止制御後の単位時間当たりの液位上昇幅が大きくなり、結果として、サブタンク62に機能液が過剰供給されることになる。
【0060】
また、さらに、他の過剰供給の方法(第3実施形態)として、液位センサ74cに、多光軸センサを用いた場合には、多光軸センサの閾値を制御することにより、一定範囲の液位を検出することができる。このため、多光軸センサが検出可能な一定範囲の液位において、所望の液位を検出後に機能液の供給を停止制御することによって、通常供給または過剰供給を多光軸センサの出力のみで制御することができる。
【0061】
次に、図11および図12に示すように、液位上昇工程S1を実施した後、サブタンク62に過剰供給した機能液を、吸引ユニット16を用いて、各機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から強制的に吸引、或いはサブタンク62からメインタンク61に逆送させることで(S21)、基準液位に戻すように排出する(液位下降工程S2)。なお、吸引動作または逆送動作は、作業者によって、どちらかを選択的に切り替え可能な構成とすることが、好ましい。
【0062】
吸引ユニット16を用いた吸引動作の場合には、まず、流出開閉弁86を開弁すると共に流入開閉弁83を閉弁する。次に、各キャリッジユニット4をキャップユニット161上に臨ませ、昇降機構165によりキャップユニット161を上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド13に対応するヘッドキャップ162を密接させる。その後、吸引機構168を駆動させることにより、機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54から機能液の吸引を開始する(S21)。そして、液位センサ74cが基準液位を検出したところで(S22)、吸引動作を終了(S23)する。このように、過剰供給した機能液を機能液滴吐出ヘッド13の吐出ノズル54のメンテナンスに有効利用することができると共に、吸引動作による機能液の流出後において、サブタンク62の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。
【0063】
他方、サブタンク62の機能液をメインタンク61に戻す逆送動作の場合には、流出開閉弁86を閉弁すると共に流入開閉弁83を開弁し、且つメインタンク61への加圧を解除(負圧制御)した後、チューブ開閉弁88を閉弁すると共に、ガス圧導入弁89を開弁し、窒素ガス供給設備65によりサブタンク62内を加圧(加圧制御)して機能液を逆流させる(S21)。そして、液位センサ74cが基準液位を検出したところで(S22)、逆送動作を終了する(S23)。このように、過剰供給した機能液をメインタンク61に戻すことにより、サブタンク62内に過剰供給された機能液を廃棄することなく、機能液を有効利用することができる。また、逆送動作による機能液の流出後において、サブタンク62の所定の液位範囲を維持することができ、本来の液位管理にそのまま移行することができる。また、凝結液滴LQを、液位上昇工程S1により取り込む場合には、サブタンク62内の機能液の濃度が薄められる虞が考えられるが、このような場合でも、サブタンク62の機能液貯留量に比べ、メインタンク61の機能液貯留量の方が絶対的に多いため、この逆流動作では、メインタンク61およびサブタンク62における機能液の相対的な濃度変化を最小限に抑えることができる。このため、機能液の濃度変化による描画処理等における悪影響を軽減することができる。
【0064】
なお、液位上昇工程S1および液位下降工程S2は、作業者が手動により定期・不定期に行ってもかまわないが、自動で定期的(一定の稼働時間または一定のワークWの処理枚数)に行うことが好ましい。自動で定期的に実施することで、液柱パイプ73における液位センサ74cの検出位置に凝結液滴LQが付着していたとしても、定期的にリフレッシュすることができる。また、吸引による液位下降工程S2を実施すれば、機能液滴吐出ヘッド13のクリーニングも同時に行うことができる。なお、定期的なリフレッシュは、貯留した機能液の物性変化(凝集、凝結等)を抑制することができる最小限の頻度で行われることが好ましい。この頻度の設定は、機能液の色見変化、粘度変化等、機能液毎にパラメータを設定することができることが好ましい。
【0065】
以上の構成によれば、液位上昇工程S1において、液柱パイプ73に液位範囲を越えて機能液を過剰供給できるため、液位センサ74c等が誤検出するような位置に付着している液滴は、上昇した機能液に取り込まれる。そして、液位下降工程S2における吸引動作または逆送動作により、液柱パイプ73の内面から排除される。また、液柱パイプ73内面に液滴が凝固した場合でも、過剰供給および吸引動作等による排出を繰り返して機能液に溶け込ませ、排除することができる。これにより、液柱パイプ73の内面に付着した凝結液滴LQ等による液位センサ74cの誤検出を有効に防止し、液滴吐出装置1の安定動作が可能となる。さらに、機能液滴吐出ヘッド13の非吐出動作時に、上記の吸引等による排出を行うことで、液位を液位範囲に戻すようにしているため、サブタンク62の本来の液位管理に容易に移行でき、この液位変動が機能液滴吐出ヘッド13の吐出動作に影響を及ぼすことがない。また、液位上昇工程S1および液位下降工程S2を実施すると、サブタンク62に貯留された機能液が攪拌されるため、貯留された機能液の濃度を均一に維持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の側面図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】吸引ユニットの側面図である。
【図7】機能液供給装置の配管系統図である。
【図8】サブタンク廻りを模式的に表した断面図である。
【図9】液滴吐出装置の主制御系について説明したブロック図である。
【図10】凝結液滴が付着した液柱パイプ内を模式的に表した断面図である。
【図11】過剰供給時間の制御による液位上昇工程および液位下降工程のフローチャートである。
【図12】圧力増加制御による液位上昇工程および液位下降工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1:液滴吐出装置、13:機能液滴吐出ヘッド、16:吸引ユニット、54:吐出ノズル、55:ノズル面、61:メインタンク、62:サブタンク、71:サブタンク本体、73:液柱パイプ、74a:オーバーフローセンサ、74b:下限センサ、74c:液位センサ、98:制御部、LQ:凝結液滴、W:ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側を機能液供給手段に接続され上流側をインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに接続された機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を備え、
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記タンク本体の所定の液位範囲を維持するように前記機能液供給手段を制御する機能液タンクの管理方法であって、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を駆動し、前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程と、
前記液位上昇工程の後、前記タンク本体から機能液を流出させ、前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻す液位下降工程と、を実施することを特徴とする機能液タンクの管理方法。
【請求項2】
前記液位下降工程において、機能液吸引手段を用い、前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引することにより、前記タンク本体から機能液を流出させることを特徴とする請求項1に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項3】
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液吸引手段を停止させることを特徴とする請求項2に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項4】
前記液位下降工程において、機能液逆流手段を用い、機能液を前記機能液供給手段側に逆流させて、前記タンク本体から機能液を流出させることを特徴とする請求項1に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項5】
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液逆流手段を停止させることを特徴とする請求項4に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項6】
前記液位上昇工程および前記液位下降工程を、定期的に実施することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項7】
前記液位センサの上方に配設され、前記タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、
前記液位上昇工程および前記液位下降工程において、前記オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作をキャンセルすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項8】
前記液位センサの上方に配設され、前記タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、
前記液位上昇工程では、前記オーバーフロー液位を越えて機能液の前記過剰供給を実施することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項9】
前記液位上昇工程における機能液の前記過剰供給は、機能液の供給流量を一定とした前記機能液供給手段のタイマ制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項10】
前記液位上昇工程における機能液の前記過剰供給は、機能液の供給時間を一定とした前記機能液供給手段の流量制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項11】
前記液位センサは、多光軸センサで構成されており、
前記液位上昇工程おける機能液の前記過剰供給は、前記多光軸センサの閾値制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項12】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドのノズル面に密接し、前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する機能液吸引手段と、
機能液を貯留すると共に、前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、
前記機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、
前記機能液吸引手段および前記機能液供給手段を制御する制御手段と、を備え、
前記機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、
前記制御手段は、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液供給手段を制御し前記タンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を制御し、前記タンク本体に前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、前記機能液吸引手段を制御し、前記吐出ノズルから機能液を吸引して前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻すことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
機能液を貯留すると共に、前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、
前記機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、
前記機能液タンクの機能液を、前記機能液供給手段側に逆流させる機能液逆流手段と、
前記機能液供給手段および前記機能液逆流手段を制御する制御手段と、を備え、
前記機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、
前記制御手段は、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液供給手段を制御し前記タンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を制御し、前記タンク本体に前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、前記機能液逆流手段を制御し、前記タンク本体から機能液を逆流させて前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻すことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項1】
下流側を機能液供給手段に接続され上流側をインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに接続された機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を備え、
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記タンク本体の所定の液位範囲を維持するように前記機能液供給手段を制御する機能液タンクの管理方法であって、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を駆動し、前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給する液位上昇工程と、
前記液位上昇工程の後、前記タンク本体から機能液を流出させ、前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻す液位下降工程と、を実施することを特徴とする機能液タンクの管理方法。
【請求項2】
前記液位下降工程において、機能液吸引手段を用い、前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引することにより、前記タンク本体から機能液を流出させることを特徴とする請求項1に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項3】
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液吸引手段を停止させることを特徴とする請求項2に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項4】
前記液位下降工程において、機能液逆流手段を用い、機能液を前記機能液供給手段側に逆流させて、前記タンク本体から機能液を流出させることを特徴とする請求項1に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項5】
前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液逆流手段を停止させることを特徴とする請求項4に記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項6】
前記液位上昇工程および前記液位下降工程を、定期的に実施することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項7】
前記液位センサの上方に配設され、前記タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、
前記液位上昇工程および前記液位下降工程において、前記オーバーフローセンサの検出結果に基づく制御動作をキャンセルすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項8】
前記液位センサの上方に配設され、前記タンク本体のオーバーフロー液位を検出するオーバーフローセンサと、を更に備え、
前記液位上昇工程では、前記オーバーフロー液位を越えて機能液の前記過剰供給を実施することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項9】
前記液位上昇工程における機能液の前記過剰供給は、機能液の供給流量を一定とした前記機能液供給手段のタイマ制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項10】
前記液位上昇工程における機能液の前記過剰供給は、機能液の供給時間を一定とした前記機能液供給手段の流量制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項11】
前記液位センサは、多光軸センサで構成されており、
前記液位上昇工程おける機能液の前記過剰供給は、前記多光軸センサの閾値制御により実施されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の機能液タンクの管理方法。
【請求項12】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドのノズル面に密接し、前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する機能液吸引手段と、
機能液を貯留すると共に、前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、
前記機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、
前記機能液吸引手段および前記機能液供給手段を制御する制御手段と、を備え、
前記機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、
前記制御手段は、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液供給手段を制御し前記タンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を制御し、前記タンク本体に前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、前記機能液吸引手段を制御し、前記吐出ノズルから機能液を吸引して前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻すことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
機能液を貯留すると共に、前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、
前記機能液タンクに機能液を供給する機能液供給手段と、
前記機能液タンクの機能液を、前記機能液供給手段側に逆流させる機能液逆流手段と、
前記機能液供給手段および前記機能液逆流手段を制御する制御手段と、を備え、
前記機能液タンクは、機能液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の上部および下部に連通する透光性の液柱パイプと、前記液柱パイプに外側から臨み、前記液柱パイプの液位を介して前記タンク本体内の機能液の液位を検出する液位センサと、を有し、
前記制御手段は、前記液位センサの検出結果に基づいて、前記機能液供給手段を制御し前記タンク本体の液位を所定の液位範囲に維持すると共に、
前記機能液滴吐出ヘッドの非吐出動作時において、
前記機能液供給手段を制御し、前記タンク本体に前記液柱パイプにおける前記液位範囲を越えて機能液を過剰供給した後、前記機能液逆流手段を制御し、前記タンク本体から機能液を逆流させて前記タンク本体の液位を前記液位範囲に戻すことを特徴とする液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−12440(P2010−12440A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176519(P2008−176519)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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