説明

欠陥検査装置及び画像表示方法

【課題】欠陥検査の目的や欠陥の特性等に応じて、最適なカラー表示を行うことができる欠陥検査装置及び画像表示方法を提供する。
【解決手段】フォトマスクの画像を種々の照明条件のもとで撮像し、A/D変換器からの出力信号を用いてフォトマスクの欠陥を検出し、検出された欠陥を含むフォトマスクのカラー画像を出力する信号処理装置とを具える。信号処理装置は、輝度/カラーに関する変換テーブル作成手段23と、フォトマスクの輝度/カラー変換手段24とを有する。変換テーブル作成手段23は、2種類のマスクパターンにそれぞれ割り当てた第1及び第2の2つの階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータに基づいて変換テーブルを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの欠陥検査装置、特に検出された欠陥を縁取りされたカラー画像として表示する欠陥検査装置に関するものである。
また、本発明は、欠陥検査装置により検出された欠陥をカラー画像としてモニタ上に表示する画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの製造工程では、多数のフォトマスクが用いられている。フォトマスクに欠陥が存在すると、欠陥の像がウェハ上に転写されるため、LSIの製造上の歩留りを低下させる不具合が発生する。従って、フォトマスクの欠陥検査は、フォトマスクの製造上の歩留りを高める上で極めて重要である。フォトマスクの欠陥検査方法として、フォトマスクに向けて照明光を投射し、フォトマスクから出射した透過光又は反射光を光検出手段により検出し、ダイ対ダイ検査方式により又はダイ対データベース検査方式により欠陥検査が行われている。これらの欠陥検査方法では、撮像装置から出力される画像信号と基準信号とを比較する際、位置ズレ等の誤差要因や信号ノイズ等による誤検出のために疑似欠陥が発生し、本来正常なフォトマスクであっても欠陥検査装置において欠陥が存在するものと判定されるおそれがある。そのため、一旦欠陥検査を行った後、レビュー工程において検出された欠陥をモニタ上に表示し、オペレータの視認による検査が行われ、検出された欠陥が疑似欠陥であるか否かの判断が行われている。
【0003】
フォトマスクに形成される欠陥として、Haze(ヘイズ)と称されている成長性異物付着による欠陥がある。この成長性異物付着による欠陥の輝度画像は、周囲の正常な部位の輝度と比較して、その輝度差が小さく、輝度が滑らかに変化する輝度画像として撮像される。このような周囲画像と輝度差が小さく且つ輝度が緩やかに変化する欠陥は、疑似欠陥と混同される可能性が高く、検査終了後のレビュー工程において欠陥か否かについて正確に判断する必要がある。しかしながら、輝度差の小さい欠陥は、モニタ上にモノクロ画像(グレイスケール画像)として表示した場合、周囲の画像と区別が付きにくく、欠陥のサイズや形状を正確に把握しにくい問題があった。
【0004】
顕微鏡により撮像された画像をカラー画像として表示する技術が既知である(例えば、特許文献1参照)。このカラー画像表示方法では、顕微鏡により撮像された輝度画像をA/D器を介してデジタル画像信号に変換し、固定された輝度変換テーブルを用い、撮像された画像の輝度階調に応じてR,G,Bのカラーが割り当てられ、カラー画像信号としてモニタに供給されている。
【特許文献1】特開2002−23062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した疑似カラー画像表示方法は、欠陥の画像が周囲の画像とは異なるカラー画像としてモニタ上に表示されるため、レビュー工程において欠陥か否かの判別が比較的容易に行われる利点がある。しかしながら、フォトマスクの欠陥には、成長性異物付着欠陥に代表されるように、周囲の画像との輝度差が小さく且つ輝度が緩やかに変化する欠陥が多数存在する。この様な特性の欠陥を従来の疑似カラー表示方法で表示すると、僅かな濃淡差を含む同一カラーの画像として表示されるため、依然として欠陥か否かの判別が困難であった。しかも、検出された欠陥の周縁が明瞭に表示されにくいため、欠陥の大きさ及び形状を明確に視認しにくい欠点があった。
【0006】
さらに、フォトマスクの欠陥検査装置は、欠陥検査の目的や検出される欠陥の特性等に応じて異なる検査条件で検査されるため、検出される欠陥の特性や欠陥検査の目的等に応じて最適な表示方法が必要である。
【0007】
本発明の目的は、検出された欠陥が周囲画像との輝度差が小さい欠陥であっても、或いは輝度が緩やかに変化する欠陥であっても明瞭に視認できる欠陥検査装置及び画像表示方法を実現することにある。
また、本発明の別の目的は、検出された欠陥について、欠陥検査の目的や検査対象の特性等に応じて、最適なカラー表示を行うことができる欠陥検査装置及び画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による欠陥検査装置は、被検査対象物の画像を種々の照明条件のもとで撮像する撮像装置と、
撮像装置から出力される輝度画像信号を、所定の輝度階調の階調信号に変換するA/D変換器と、
A/D変換器からの出力信号を用いて被検査対象物の欠陥を検出し、検出された欠陥を含む被検査対象物のカラー画像を出力する信号処理装置とを具え、前記信号処理装置は、
前記A/D変換器から出力される出力信号から被検査対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段と、
検出された欠陥を含む被検査対象物の輝度画像情報を記憶するメモリと、
前記撮像装置の撮像条件、各撮像条件において被検査対象物に形成されている2種類のパターンにそれぞれ割り当てられる第1及び第2の2つの階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する入力手段と、
入力されたパラメータに基づいて、階調値とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する変換テーブル作成手段と、
前記変換テーブル作成手段により作成された変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像信号とを受け取り、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する輝度/カラー変換手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明による欠陥検査装置は、フォトマスクの画像を種々の照明条件のもとで撮像する撮像装置と、
撮像装置から出力される輝度画像信号を、所定の輝度階調の階調信号に変換するA/D変換器と、
A/D変換器からの出力信号を用いてフォトマスクの欠陥を検出し、検出された欠陥を含むフォトマスクのカラー画像を出力する信号処理装置とを具え、前記信号処理装置は、
前記A/D変換器から出力される出力信号からフォトマスクの欠陥を検出する欠陥検出手段と、
検出された欠陥を含むフォトマスクの輝度画像情報を記憶するメモリと、
前記検査されるフォトマスクの種類、前記撮像装置の撮像条件、各撮像条件においてフォトマスクに形成されている2種類のマスクパターンにそれぞれ割り当てた第1及び第2の2つの階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する入力手段と、
入力されたパラメータに基づいて、階調値とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する変換テーブル作成手段と、
前記変換テーブル作成手段により作成された変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像信号とを受け取り、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する輝度/カラー変換手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明による欠陥検査装置では、輝度情報として検出された欠陥をレビューする際、撮像条件や表示されるカラー数等のパラメータを用いて輝度/カラー変換テーブルを作成しているので、欠陥検査の目的や欠陥の特性に対して最適なカラー表示を行うことが可能になる。特に、周囲画像との輝度差が小さい欠陥であっても、周縁が別の色で縁取りされたカラー画像として表示されるので、検出された欠陥のサイズや形状を正確に視認することができる。
【0011】
多くのフォトマスクは、2種類のマスクパターンから構成されている。すなわち、バイナリー型フォトマスクの場合、露光光を透過する光透過パターンと露光光を遮光する遮光パターンの2種類のマスクパターンにより構成され、ハーフトーン型フォトマスクの場合露光光を透過する光透過パターンと露光光に位相差を与えるハーフトーンパターンの2種類のマスクパターンにより構成されている。一方、バイナリー型フォトマスクに存在する多くの欠陥は、光透過パターンと遮光パターンとの間の階調値の輝度画像として検出され、特に成長性異物付着による欠陥は光透過パターンの階調値より若干低下した階調値の画像として検出される。また、ハーフトーン型フォトマスクに形成される欠陥の多くは、ハーフトーンパターンの階調値と光透過パターンの階調値との間の階調値の画像又はハーフトーンパターンの階調値より若干低下した階調値の画像として検出される。従って、フォトマスクを被検査対象物とする場合、フォトマスク形成されている2種類のマスクパターンの階調値及びこれら階調値間に割り当てられるRGBのカラー数を規定するだけで、欠陥の特性や欠陥検査の目的に整合した変換テーブルが形成される。この結果、周囲との輝度差が小さい輝度画像として検出される欠陥であっても、1つ又はそれ以上の別の色で縁取りされたカラー画像としてモニタ上に表示することができる。
【0012】
本発明による画像表示方法は、撮像装置により輝度画像として撮像されたフォトマスクの画像を、カラー画像としてモニタ上に表示する画像表示方法であって、
A/D器を用いて、撮像装置からの出力信号を所定の輝度階調の階調信号に変換する工程と、
前記A/D変換器からの出力信号を用いて、フォトマスクの輝度画像をメモリに記憶する工程と、
検査すべきフォトマスクの種類、フォトマスクの画像を撮像する際の撮像装置の撮像条件、各撮像条件毎にフォトマスクに形成されている2種類のマスクパターンにそれぞれ割り当てた第1及び第2の階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する工程と、
入力されたパラメータを用いて、輝度階調とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する工程と、
作成された輝度/カラー変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像とを用いて、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する工程と、
変換されたカラー画像信号をモニタに供給してフォトマスクのカラー画像を表示する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像条件、輝度階調に割り当てられるカラー数等を含むパラメータに基づいて輝度/カラー変換テーブルを作成しているので、欠陥検査の目的や欠陥の特性等に応じて最適なカラー表示を行うことができる。特に、周囲画像との輝度差が小さい欠陥画像であっても、周縁が縁取りされたカラー画像として表示されるので、検出された欠陥のサイズや形状を明確に把握です、疑似欠陥の発生を抑制できると共に欠陥に対して最良の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による欠陥検査装置の一例を示す図である。
【図2】信号処理装置の一例を示す図である。
【図3】変換テーブルの一例を示す図である。
【図4】成長性異物付着による欠陥を本発明によりカラー表示した画像を示す図である。
【図5】マスク検査装置により検出された実際のヘイズ欠陥をモノクロ画像として表示した写真である。尚、もとになる実写真は物件提出書において提出する。
【図6】マスク検査装置により検出された実際のヘイズ欠陥を従来の疑似カラー表示方法でカラー画像として表示した写真である。尚、もとになる実写真は物件提出書において提出する。
【図7】マスク検査装置により検出された実際のヘイズ欠陥を本発明によるカラー画像表示方法でカラー画像として表示した写真である。尚、もとになる実写真は物件提出書において提出する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明による欠陥検査装置の一例を示す図である。本例の欠陥検査装置は、照明条件に応じてフォトマスクの透過像、反射像、及び透過反射同時照明像(透過反射合成画像)の3種類の画像を撮像する。例えば水銀ランプにより構成される第1の照明光源1から透過照明光を放出する。第1の照明光源1から出射した透過照明光は、フィルタ(図示せず)を介して248nmの照明光が取り出され、当該照明光は、集光光学系2により集光され、全反射ミラー3で反射し、コンデンサレンズ4を介してフォトマスク5の裏面に集束性ビームとして入射する。フォトマスク5は、マスクステージ6に装着され、マスクステージのX方向及びこれと直交するY方向移動により全面が走査される。
【0016】
欠陥検査されるフォトマスクとして、ガラス基板上に形成され露光光を遮光するクロム膜により構成される遮光パターン及び露光光を透過させる光透過パターンの2種類のマスクパターンが形成されたバイナリー型フォトマスクが用いられ、或いは、ガラス基板上に形成され位相シフタとして機能するハーフトーン膜により構成されるハーフトーンパターンと露光光を透過させる光透過パターンとの2種類のマスクパターンが形成された位相シフトマスクを検査対象とする。
【0017】
フォトマスク5から出射した透過光は、対物レンズ7により集光され、ハーフミラー8及び結像レンズ9を介して撮像素子10に入射する。撮像素子として、例えばTDIセンサが用いられ、フォトマスクの透過像が撮像される。
【0018】
フォトマスクの反射像を撮像するための第2の照明光源11を配置する。第2の照明光源として、第1の照明光源とは異なる波長光を放出する光源を用いることができ、或いは、第1の照明光源として用いた水銀ランプから出射した同一波長の光を光ファイバを介して放出する光源を用いることができる。第2の照明光源11から出射した照明光は、ハーフミラー8で反射し、対物レンズ9を介して集束ビームとしてフォトマスク5の表面に入射する。フォトマスクの表面で反射した反射光は、対物レンズ7により集光され、ハーフミラー8及び結像レンズ9を介して撮像素子10に入射する。そして、撮像素子10によりフォトマスクの反射像が撮像される。
【0019】
次に、透過反射同時照明画像について説明する。第1の照明光源1及び第2の照明光源11を共に動作させ、フォトマスク5の裏面側から透過用の照明光を投射し、表面側から反射用の照明光を同時に投射する。フォトマスク5から出射した透過光は、対物レンズ、ハーフミラー及び結像レンズを介して撮像素子10に入射する。また、フォトマスクの表面で反射した反射光も、対物レンズ、ハーフミラー及び結像レンズを介して撮像素子11に入射する。従って、撮像素子上には、フォトマスクの同一の部位の反射像及び透過像が重なり合った状態で形成され、透過像と反射像とが合成された合成画像が撮像される。
【0020】
透過像による欠陥検査の場合、主として光透過パターン及びハーフトーンパターン上に付着した異物や成長性異物による欠陥が検出され、反射像による欠陥検査の場合主として遮光パターン上に付着した異物や遮光パターンのリペァムラによる欠陥が検出される。また、透過反射同時照明による欠陥検査の場合光透過パターン及びハーフトーンパターン上の異物付着及び成長性異物付着による欠陥と共に遮光パターン上に付着した異物欠陥の両方が検出される。従って、欠陥検査の目的に応じて、照明条件が決定される。
【0021】
撮像素子10から出力されるアナログの画像信号は、A/D変換器12により、所定の輝度階調の階調信号(デジタル形式の輝度信号)に変換される。本例では、A/D変換器12は、撮像装置から出力されるアナログの輝度画像信号を例えば8ビット(256階調)の階調信号に変換する。A/D変換器から出力された256階調の階調信号は、信号処理装置13に入力する。信号処理装置13では、入力した階調信号(デジタルの輝度信号)について、ダイ対ダイ検査方式又はダイ対データベース検査方式により欠陥を検出する。欠陥が検出された場合、欠陥を含む画像を欠陥のアドレス情報と共に欠陥メモリに記憶する。そして、フォトマスクの全面についての走査が終了した後、欠陥を含むフォトマスクの画像をカラー画像に変換してモニタ14上に表示し、欠陥についてのレビューが行われる。
【0022】
図2は信号処理装置の一例を示す図である。A/D変換器12から出力される256階調の輝度画像信号は、欠陥検査手段20に供給する。欠陥検査手段20では、例えばダイ対ダイ検査方式又はダイ対データベースの検査方式により欠陥を検出する。欠陥が検出された場合、検出された欠陥を含むフォトマスクの画像がアドレス情報と共に欠陥メモリ21に記憶される。すなわち、欠陥メモリには、検出された欠陥の識別番号、アドレス情報、欠陥及びその周囲の輝度画像が各欠陥ごとに記憶する。
【0023】
検出された欠陥のレビューに当たり、オペレータは、例えばキーボードのような入力手段22を介して輝度/カラー変換テーブルを作成するためのパラメータを入力する。入力されるパラメータとして、以下のパラメータを入力する。
a.フォトマスクの種類
バイナリー型フォトマスク又はハーフトーン型フォトマスク等の検査されたフォトマスクの種類を入力する。尚、フォトマスクの種類は必須ではなく、必要に応じて入力する。
b.撮像条件
撮像装置によりフォトマスクを撮像した際の撮像条件、本例では撮像条件として照明条件を用いる。すなわち、反射照明、透過照明、又は透過反射同時照明のいずれかを入力する。
c.マスクパターンの階調値
フォトマスクに形成されているマスクパターン(光透過パターン、ハーフトーンパターン、遮光パターン)に対する256階調の階調値を入力する。バイナリー型フォトマスクの場合、露光光を遮光する遮光パターンと露光光を透過する光透過パターンとの2種類のマスクパターンを有し、ハーフトーン型フォトマスクの場合露光光を透過する光透過パターンと位相シフタとして機能するハーフトーンパターンとの2種類のマスクパターンを有する。従って、これら2種類のマスクパターンに対する階調値をそれぞれ割り当てる。本例では、光透過パターンの階調値を第1の階調値とし、ハーフトーンパターン又は遮光パターンの階調値を第2の階調値とする。これら第1及び第2の階調値は、予め種々のフォトマスクについて照明条件ごとに各マスクパターンから出射する照明光の輝度値を測定し、A/D変換器を介して階調値に変換し、得られた階調値を用いることができる。一例として、本例では、各種のマスクパターンに対して以下の階調値を割り当てる。
(ハーフトーン型フォトマスク)
照明条件 第1の階調値(光透過部) 第2の階調値(ハーフトーン部)
透過光照明 200 100
反射光照明 10 200
反射透過同時照明 100 200
(バイナリー型フォトマスク)
照明条件 第1の階調値(光透過部) 第2の階調値(遮光パターン部)
透過光照明 200 10
反射光照明 10 200
反射透過同時照明 200 100
d.第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調に割り当てられるカラー数
例えば、ハーフトーン型のフォトマスクについて透過照明光検査を行う場合、1つ又はそれ以上のカラー数を入力する。また、バイナリー型フォトマスクの場合2つ以上のカラー数を入力する。この際、入力されるカラー数に応じて検出された欠陥の周囲に形成される縁取りのカラー数が変化する。従って、成長性異物付着による欠陥のように欠陥の周囲画像との輝度差が小さい画像をレビューする場合、割り当てるカラー数を多く設定することか好ましい。
【0024】
次に、変換テーブル作成手段23における変換テーブル作成工程について説明する。本例では、ハーフトーン型フォトマスクについて透過光検査の検査結果についてレビューする場合について説明する。図3は、変換テーブル作成手段23により作成された変換テーブルの一例を示す図であり、図3を参照しながら説明する。
オペレータは、検査したフォトマスクの種類としてハーフトーン型フォトマスクを入力すると共に照明条件として透過光照明を入力する。また、マスクパターンの階調値(輝度値)として、第1の階調値として200(256階調の階調値)及び第2の階調値として100を入力する。さらに、第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調に割り当てられるRGBのカラー数として3つのカラーを入力する。尚、フォトマスクに形成されている光透過パターン及びハーフトーンパターンに対応する階調値の階調領域に対して、例えば赤及び青のカラーを予め割り当てておく。
【0025】
変換テーブル作成手段23は、第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調と割り当てられるRGBのカラー数とを用いて、1つのカラーに対して割り当てられる階調スパンを演算する。演算式を以下に示す。
(第1の階調値−第2の階調値)÷(カラー数+1)×2=50
上記式から導かれるように、光透過部に対応する階調値とハーフトーン部に対応する階調値との間の階調領域に3つのカラーを割り当てる場合、各カラーに対して50階調の階調スパンが割り当てられる。尚、階調スパンが整数にならない場合、除算の余りは例えば中央のカラーに含ませることができる。続いて、各カラーごとに、輝度階調とカラー出力との関係を規定した変換曲線を作成する。変換曲線として、図3に示すように階調スパンの両端の階調値とカラー出力のピーク値とを結ぶ直線で規定することができ、又は、サイン曲線等の各種の曲線や直線で規定することができる。変換曲線を設定するに際し、各カラーの両端の階調値は、隣接するカラーのカラー出力のピークの階調値又はその近傍において零出力となるように設定することが好ましい。このように変換曲線を規定することにより、検出された欠陥の輪郭を原色で縁取りすることが可能になる。
【0026】
続いて、変換テーブル作成手段23は、割り当てられた各カラーに対して色を割り当てる。この色の割り当てに際し、隣接するカラーが同一色とならないように割り当てる。
【0027】
さらに、変換テーブル作成手段は、ハーフトーン部の輝度値に対応する階調値よりも低い階調領域についてカラーを割り当てる。このカラー割り当てに際し、一例として、第1の階調値と第2の階調値との間に割り当てたカラー及び階調スパンと同一のものを順次設定する。このようにして、図3に示す変換テーブルが完成する。
【0028】
生成された変換テーブルは、輝度/カラー変換手段24に供給する。輝度/カラー変換手段24は、欠陥メモリ21から受け取ったフォトマスクの輝度画像信号を変換テーブルを用いてカラー画像信号に変換し、カラー画像信号をモニタ14に出力する。
【0029】
図4は、光透過部に形成された成長性異物付着による欠陥(ヘイズ欠陥)を含む画像を、図3に示す変換テーブルを用いてカラー画像に変換した例を模式的に示す。図4(A)は、輝度差の小さい欠陥を含む輝度画像をモニタ上に表示した状態を示し、図4(B)は検出された欠陥についてII線に沿って示す階調値を示す。成長性異物付着による欠陥は、周囲画像との輝度差が小さく、しかも輝度が周縁から内部に向けて緩やかに変化する特性を有する。従って、欠陥の全体を明瞭に把握することは困難である。
【0030】
本発明による変換テーブルを用いて輝度画像をカラー画像に変換する場合について説明する。検出された欠陥の周囲の光透過部の階調値は200であり、赤の色で表示される。一方、欠陥像の階調値は、欠陥の周縁から内部に向けて緩やかに低下し、欠陥の内部では階調値は約150程度まで低下する。この際、図3の矢印aで示すように、階調値が200から低下するにしたがってカラー出力は、赤から青に徐々に変化し、青の原色の領域を経てさらに緑まで変化する。よって、階調値が徐々に低下する欠陥の縁の部分は、主として青の色の縁取り画像として表示される。従って、成長性異物付着による欠陥のように、周囲との輝度差の小さい画像をモニタ上に輝度画像として表示した場合、赤の周囲画像中に青の狭い領域で縁取りされた緑の画像として表示される。
【0031】
次に、本発明による画像表示方法を用いてフォトマスク上に実際に形成されたヘイズ欠陥をモニタ上に実際に表示した写真データについて説明する。図5は欠陥検査装置を用いて検出されたヘイズ欠陥を実際にモニタ上に表示した実写真を示す。使用した欠陥検査装置は、レーザーテック社製のフォトマスク欠陥検査装置「MATRICSシリーズ」を用いた。検査条件として、透過光照明と反射光照明とを同時に行う同時照明で検出した。図5(A)は検出されたヘイズ欠陥をモノクロ画像として表示した写真であり、図5(B)は同一の画像データを従来の疑似カラー表示方法で表示した写真であり、図5(C)は本発明による画像表示方法を用いて表示し写真である。尚、図5(C)に関して、図面上欠陥の周囲の縁取りが視認しにくいため、欠陥像の周囲を黒線で上書きした。尚、図5(A)〜(C)の原本となる写真は、別途物件提出書として提出しましたので、図5に対応する実際のモノクロ及びカラー写真については、物件提出書を参照ねがいます。
【0032】
図5(A)に示すように、欠陥検査装置により検出されたヘイズ欠陥をモノクロ画像として表示した場合、ヘイズ欠陥は、周囲の正常な部位に対して薄い濃淡像として表示される。よって、モニタ上に表示した場合肉眼では視認しにくい画像である。図5(B)に示すように、従来の疑似カラー表示方法を用いて表示した場合、周囲の画像と同一色のカラー画像(黄色のカラー画像)であって同一色の薄い濃淡像として、すなわち黄色の濃淡画像として表示される。ヘイズ欠陥は、周囲と同一色の濃淡像として表示されるため、肉眼では視認しにくい画像である。図5(C)に示すように、本発明による画像表示方法を用いて表示した場合、正常な部位は紫色(赤色と青色との混色)として表示され、ヘイズ欠陥の中心部分は緑の画像として表示され、緑の画像の周囲は濃い赤の縁取りが形成される。従って、ヘイズ欠陥は、緑で表示される中心部の周囲が赤の画像で縁取りしたカラー画像として表示される。
【0033】
従来のRGBの3つのカラーで表示する疑似カラー表示方法では、周囲との輝度差の小さい欠陥画像の周縁部は同一色の濃淡差で表示されるため、輝度表示画像と同様に、欠陥の周縁を明瞭に特定しにくく、欠陥のサイズや形状を特定することが困難であった。これに対して、本発明による画像表示方法では、検出された欠陥の内部及び周囲並びに欠陥の周縁はそれぞれ別のカラーで表示され、欠陥の周縁が縁取りされた画像として表示されるので、欠陥のサイズ及び形状を明瞭に視認することが可能である。
【0034】
次に、変換テーブル作成手段の変形例について説明する。上述した実施例では、変換テーブルを作成するためのパラメータとして、フォトマスクの種類、照明条件、マスクパターンに割り当てられる階調値、及びRGBのカラー数を用いた。しかし、マスクパターンの階調値は、多くのフォトマスクにおいてほぼ共通しているため、マスクパターンの階調値(光透過部の階調値、ハーフトーン部の階調値、及び遮光パターンの階調値)は変換テーブル作成手段に予め記憶させておくことも可能であり、記憶したマスクパターンの階調値を用いて演算することができる。
【0035】
また、第1の階調値と第2の階調値との間に割り当てられるRGBのカラー数の代りに、割り当てられる各カラーの階調スパンを入力することも可能である。この場合、階調スパンを入力することにより、変換テーブル作成手段は、入力された階調スパンに基づいて変換曲線を規定すると共に割り当てられるRGBの階調数も算出する。従って、入力パラメータとして、カラー数又は階調スパンのいずれかを用いることができ、或いはカラー数と階調スパンの両方を入力することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 第1の照明光源
2 集光レンズ系
3 全反射ミラー
4 集光レンズ
5 フォトマスク
6 マスクステージ
7 対物レンズ
8 ハーフミラー
9 結像レンズ
10 撮像素子
11 第2の照明光源
12 A/D変換器
13 信号処理装置
14 モニタ
20 欠陥検査手段
21 欠陥メモリ
22 入力手段
23 変換テーブル作成手段
24 輝度/カラー変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物の画像を種々の照明条件のもとで撮像する撮像装置と、
撮像装置から出力される輝度画像信号を、所定の輝度階調の階調信号に変換するA/D変換器と、
A/D変換器からの出力信号を用いて被検査対象物の欠陥を検出し、検出された欠陥を含む被検査対象物のカラー画像を出力する信号処理装置とを具え、前記信号処理装置は、
前記A/D変換器から出力される出力信号から被検査対象物の欠陥を検出する欠陥検出手段と、
検出された欠陥を含む被検査対象物の輝度画像情報を記憶するメモリと、
前記撮像装置の撮像条件、各撮像条件において被検査対象物に形成されている2種類のパターンにそれぞれ割り当てられる第1及び第2の2つの階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する入力手段と、
入力されたパラメータに基づいて、階調値とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する変換テーブル作成手段と、
前記変換テーブル作成手段により作成された変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像信号とを受け取り、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する輝度/カラー変換手段とを有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
フォトマスクの画像を種々の照明条件のもとで撮像する撮像装置と、
撮像装置から出力される輝度画像信号を、所定の輝度階調の階調信号に変換するA/D変換器と、
A/D変換器からの出力信号を用いてフォトマスクの欠陥を検出し、検出された欠陥を含むフォトマスクのカラー画像を出力する信号処理装置とを具え、前記信号処理装置は、
前記A/D変換器から出力される出力信号からフォトマスクの欠陥を検出する欠陥検出手段と、
検出された欠陥を含むフォトマスクの輝度画像情報を記憶するメモリと、
前記撮像装置の撮像条件、各撮像条件においてフォトマスクに形成されている2種類のマスクパターンにそれぞれ割り当てられる第1及び第2の2つの階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する入力手段と、
入力されたパラメータに基づいて、階調値とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する変換テーブル作成手段と、
前記変換テーブル作成手段により作成された変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像信号とを受け取り、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する輝度/カラー変換手段とを有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検査装置において、前記検査されるフォトマスクとして、光透過パターンと位相シフタとして機能するハーフトーンパターンとの2種類のマスクパターンが形成されているハーフトーン型のフォトマスク、又は光透過パターンと遮光パターンとの2種類のマスクパターンが形成されているバイナリー型のフォトマスクを用い、
前記ハーフトーン型フォトマスクの画像を表示する場合、前記第1の階調値として光透過パターンに割り当てた階調値を用い、前記第2の階調値としてハーフトーンパターンに割り当てた階調値を用い、
前記バイナリー型のフォトマスクの画像を表示する場合、前記第1の階調値として光透過パターンに割り当てた階調値を用い、前記第2の階調値として遮光パターンに割り当てた階調値を用いることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の欠陥検査装置において、前記撮像条件として撮像装置の照明条件を用い、前記撮像装置は、検査すべきフォトマスクに向けて透過照明光を投射する手段と、反射照明光を投射する手段とを有し、フォトマスクの透過像又は反射像を選択的に撮像することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥検査装置において、前記撮像装置は、検査すべきフォトマスクに向けて透過照明光及び反射照明光を同時に投射し、フォトマスクの透過反射同時照明画像を撮像でき、照明条件を変えることによりフォトマスクの透過画像、反射画像、又は透過反射同時照明画像を選択的に撮像することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の欠陥検査装置において、前記輝度/カラー変換テーブルは、輝度階調の範囲とカラー出力との関係を規定した変換曲線を各カラー毎に含み、各カラーの変換曲線のカラー出力のピークとなる輝度値において隣接する変換曲線のカラー出力が零となるように形成されていることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項7】
撮像装置により輝度画像として撮像された被検査対象物の画像を、カラー画像としてモニタ上に表示する画像表示方法であって、
A/D変換器を用いて、撮像装置から出力される出力信号を所定の輝度階調の階調信号に変換する工程と、
前記A/D変換器からの出力信号を用いて、被検査対象物の輝度画像をメモリに記憶する工程と、
被検査対象物の画像を撮像する際の撮像装置の撮像条件、各撮像条件毎に被検査対象物に形成されている2種類のパターンにそれぞれ割り当てられた第1及び第2の階調値、及び、前記第1の階調値と第2の階調値との間の輝度階調中に割り当てられるRGBのカラー数又は階調スパンを含むパラメータを入力する工程と、
入力されたパラメータを用いて、輝度階調とカラー出力との関係を規定した輝度/カラー変換テーブルを作成する工程と、
作成された輝度/カラー変換テーブルと、前記メモリに記憶されているフォトマスクの輝度画像とを用いて、輝度画像信号をカラー画像信号に変換する工程と、
変換されたカラー画像信号をモニタに供給して被検査対象物のカラー画像を表示する工程とを含むことを特徴とする画像表示方法。
【請求項8】
請求項7に記載の欠陥画像表示方法において、前記被検査対象物として、光透過パターンと位相シフタとして機能するハーフトーンパターンとの2種類のマスクパターンが形成されているハーフトーン型のフォトマスク、又は光透過パターンと遮光パターンとの2種類のマスクパターンが形成されているバイナリー型のフォトマスクを用い、
前記ハーフトーン型フォトマスクの画像を表示する場合、前記第1の階調値として光透過パターンに割り当てた階調値を用い、前記第2の階調値としてハーフトーンパターンに割り当てた階調値を用い、
前記バイナリー型のフォトマスクの画像を表示する場合、前記第1の階調値として光透過パターンに割り当てた階調値を用い、前記第2の階調値として遮光パターンに割り当てた階調値を用いることを特徴とする画像表示方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像表示方法において、前記フォトマスクの画像を撮像する際の撮像条件として撮像装置の照明条件を用い、前記被検査対象物の輝度画像としてフォトマスクの透過画像、反射画像、又は透過反射同時照明画像のいずれかの画像を用いることを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38947(P2011−38947A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187929(P2009−187929)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】