説明

気体を浄化する装置および方法

本発明は、粒子状不純物を含んだ気体を浄化する装置および方法に関する。この装置は、気体用の入口(3)と、気体用の出口(4)と、入口と出口との間に配置されている回転部材(7)と、を有するメインセパレータ(1)を含んでいる。回転部材は、粒子状不純物の主要部分を遠心力によって気体から分離するために気体を回転させるように構成されており、粒子状不純物の残りの部分が気体内に残る。装置は、残りの部分の実質的に全てを分離するように構成されている追加のセパレータ(2)を有している。追加のセパレータは静電フィルタを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状不純物を気体から分離することによる気体の浄化に関する。本発明は、特に、液滴またはミストの形態の油粒子、および/または固体粒子の、気体からの分離に関する。特に、本発明は、内燃機関のクランクケースからの気体の浄化、および、工作機械産業における様々な用途の空気、例えば、様々な種類の工作機械の周囲の空気の浄化に関する。そのような気体およびそのような空気は、様々な大きさの粒子状不純物を含んでいる。しかし、本発明は、気体を、様々な種類および様々な大きさの粒子状不純物から浄化する必要のあるその他の用途にも関する。
【0002】
本発明は、特に、粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する装置であって、気体用の入口と、気体用の出口と、回転部材であって、入口と出口との間に配置され、ロータスピンドルと、ロータスピンドルに取り付けられている複数の回転分離ディスクと、を含んでいる回転部材と、を有しているメインセパレータを含んでおり、回転部材は、粒子状不純物の主要部分を遠心力によって気体から分離するために気体を回転させるように構成されており、粒子状不純物の残りの部分が気体内に残る装置に関する。本発明は、粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する方法であって、気体をメインセパレータの入口に供給するステップと、メインセパレータの、ロータスピンドルと、ロータスピンドルに取り付けられている複数の回転分離ディスクとを有している回転部材によって気体を回転させるステップであって、回転部材は、遠心力によって、気体から粒子状不純物の主要部分を分離し、粒子状不純物の残りの部分は気体内に残る、ステップと、気体をメインセパレータから出口を介して排出するステップと、を有する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関のクランクケース内に含まれている気体は、様々な複数の粒子状不純物を含んでいる。クランクケースには通気孔が形成されており、したがって、周囲の大気に通じているため、クランクケースガスが浄化されなければ、これらの粒子状不純物は周囲の大気に到達する。現在、未浄化のクランクケースガスが野放しに排出されるのを防止するために、この分野の関係機関による要求が、多くの国で増加している。そのような浄化を行う最初に述べた種類の装置が特許文献1に開示されている。回転部材によって、気体からの粒子状不純物の効果的な分離を保証する運動エネルギーを気体に与えることができる。回転部材は、クランクケースガスに一定のポンプ効果を及ぼし、したがって、クランクケースガスをクランクケースから引き出すことができる。したがって、この公知の装置は、クランクケースガスを排出し浄化するのに、クランクケース内の圧力の発生には頼っていない。簡単な圧力調整器によって、クランクケース内に発生しているべき、様々な内燃機関で様々である圧力を、容易に調節することができる。しかし、そのような回転部材によっても、気体が、主要部分に対してわずかな残りの粒子状不純物を含むのを排除することはできない。
【0004】
同様の種類の装置が、特許文献2と特許文献3に開示されている。
【0005】
特許文献4には、内燃機関のクランクケースの換気のための他の種類の装置が開示されている。この装置は、クランクケースから出たクランクケースガスを浄化する、より正確には、クランクケースガスから油を分離するセパレータを含んでいる。特許文献4では、オイルセパレータを電気フィルタとして構成することが提案されている。このオイルセパレータの目的は、クランクケースガスに含まれている油の主要部分を分離することである。オイルセパレータの電気フィルタは、数段のものを含んでいてもよい。さらに、特許文献4には、他のセパレータをオイルセパレータの上流に設けてもよいことが記載されている。この他のセパレータは、クランクケースガスに含まれている油の一部を分離する粗いセパレータである。この粗いセパレータは、様々な種類のセパレータを含んでいてよく、特許文献4には、繊維セパレータのサイクロン、跳ね返り式のセパレータが提案されている。これらの種類の全てのセパレータは、分離に利用できる一定の圧力または一定の運動エネルギーを気体自体が有していることを必要とするという意味で、受動的である。しかし、全ての用途で十分な運動エネルギーが得られるわけではなく、このことは、例えば、エンジンの用途では、クランクケースガスにポンプなどによって運動エネルギーを与えなければならないことを意味する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1273335号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/001201号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/022239号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第685635号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの用途では、セパレータ機具が軽く最小限の空間しか必要としないようにすべきであるという強い要求もある。特に自動車について示されているこれらの要求は、粒子状不純物の効率的で完全な分離を行うのをより困難にしている。
【0007】
本発明の目的は、気体から粒子状不純物を効率的に分離する装置を提供することにある。特に、本発明は、様々な大きさで様々な種類の粒子状不純物の実質的に全ての効率的な分離を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、最初に述べた装置であって、残りの部分の実質的に全てを分離するように構成されている追加のセパレータを含んでおり、追加のセパレータは静電フィルタを含んでいることを特徴とする装置によって達成される。
【0009】
したがって、本発明は回転部材と静電フィルタとの組み合わせによって実現される。そのような組み合わせによって、非常に高度な浄化が達成される。回転部材は、遠心分離機として機能し、それ自体が非常に高度な分離能力を有しており、静電フィルタによって処理する必要があるのは、わずかな残りの部分のみである。したがって、特に、様々な種類と大きさの粒子状不純物、例えば、固体粒子、油の液滴または油のミストの形態の油粒子の全てが、浄化すべき気体から取り除かれる。浄化を、追加の圧力調整器を取り付けることを必要とせずに行うこともできる。浄化すべき気体を、装置を通して流すのに必要なエネルギーは、回転部材によって得られる。装置の重量や大きさを大幅に増大することなく、前述の追加のセパレータを装置内または装置の所に設けることもできる。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、静電フィルタは、第1の極部材と、第2の極部材と、電圧ユニットであって、第1の極部材によって、気体内の粒子状不純物が、第2の極部材に対して電位を持つように帯電させられ、第2の極部材によって、帯電させられた粒子状不純物が引きつけられて気体から分離されるように、第1の極部材と第2の極部材との間に電位差を生じせる電圧ユニットと、を含んでいる。そのような追加のセパレータによって、残りの部分の実質的に全てを容易で効率的に気体から取り除くことができる。
【0011】
本発明の他の実施態様によれば、第2の極部材は第1の極部材の下流に設けられている。そのようにすることで、装置を通って流れる粒子状不純物に、まず電荷を与え、その後、それを、装置を通って引き続き流れている間に第2の極部材に引きつけることができる。
【0012】
本発明の他の実施態様によれば、第2の極部材は入口の下流に設けられている。この場合、第1の極部材を入口の上流または入口内に設けるのが有利である。第2の極部材は、例えば回転部材に設けられていてよい。複数の極部材の少なくとも1つを回転部材に設けることも可能である。
【0013】
本発明の他の態様によれば、回転部材が、第1の極部材と第2の極部材の一方を構成する複数の回転分離ディスクを含んでいる。例えば、複数の回転分離ディスクは、第2の極部材を構成していてよく、したがって、第1の極部材に対して電位差を有するように設けられていてよい。
【0014】
本発明の他の実施態様によれば、複数の回転分離ディスクは第1の極部材を構成し、したがって、第2の極部材に対して電位差を有するように設けられている。したがって、この実施態様によれば、回転分離ディスクは正の電位を有し、粒子状不純物に、それが回転部材を通過している時に電荷を与えることができる。
【0015】
本発明の他の実施態様によれば、第2の極部材は回転部材の下流に設けられている。第1の極部材も回転部材の下流に設けられていてよい。さらに、第2の極部材は出口の下流に設けられていてもよい。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、第1の極部材は出口の下流に設けられている。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、装置は、回転部材が中に設けられているチャンバを形成している静止したハウジングを含んでおり、静止したハウジングは、回転部材によって分離された主要部分を捕捉し、主要部分を排出通路に運ぶように構成されている内壁を有している。この場合、内壁は第2の極部材を構成しており、残りの部分を捕捉して排出通路に運ぶように構成されているのが有利である。
【0018】
本発明の他の実施態様によれば、追加のセパレータは、静止したハウジング内に一体に設けられている。
【0019】
本発明の他の実施態様によれば、装置は、気体の圧力を制御する圧力調整器を有している。圧力調整器は、静止したハウジングに一体に設けられているのが有利である。さらに、第2の極部材は圧力調整器に接続されて設けられていてもよい。第1の極部材も圧力調整器に接続されて設けられていてもよい。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、導電性プレートが圧力調整器のすぐ上流の空間内に設けられており、この導電性プレートは第1および第2の極部材の一方を構成している。より具体的には、第1の導電性プレートと第2の導電性プレートとが、圧力調整器のすぐ上流の空間内に互いに距離を隔てて互いに平行に設けられ、第1の導電性プレートは第1の極部材を構成し、第2の導電プレートは第2の極部材を構成しているのが有利である。
【0021】
本発明の他の実施態様によれば、装置は内燃機関のクランクケースからの気体を受け入れて浄化するように内燃機関に取り付けられるように構成されている。
【0022】
本発明の他の実施態様によれば、装置は工作機械に隣接している領域からの空気を受け入れて浄化するように工作機械に取り付けられるように構成されている。
【0023】
前記の目的は、最初に述べた方法であって、気体は追加のセパレータを通して運ばれ、追加のセパレータは、残りの部分の実質的に全てを分離するように構成されており、追加のセパレータは静電フィルタを含んでいることを特徴とする方法によっても達成される。
【0024】
本発明の有利な用途では、気体は内燃機関のクランクケースからのクランクケースガスからなっている。
【0025】
本発明の他の有利な用途では、気体は、工作機械に隣接している領域からの空気からなっている。
【0026】
メインセパレータは、粒子の大きさが最小で2μm、1.5μm、1μm、または0.8μmまでの粒子状不純物の実質的に全てを取り除くように構成され、静電フィルタは、粒子の大きさが0.05μmから1μmまでの残りの粒子状汚染物の実質的に全てを取り除くことができるのが有利である。さらに、メインセパレータは気体中の粒子状不純物の少なくとも98%を取り除くように構成されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を、様々な実施形態の記載によって、また、添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【0028】
図1〜3は、粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する装置の様々な実施形態を示している。この装置は、メインセパレータ1と、以下でより詳細に説明する静電フィルタの形態の追加のセパレータ2とを有している。メインセパレータ1は、浄化すべき気体用の入口3と気体用の出口4とを有している。この装置は、内部のチャンバ6を形成している静止したハウジング5を有している。入口3は、静止したハウジング5を通ってチャンバ6内に延びている。出口4はチャンバ4から静止したハウジング5を通って延びている。メインセパレータ1は、チャンバ6内の、入口3と出口4との間に設けられている回転部材7も含んでいる。回転部材7は、回転軸線xを中心として回転可能であり、粒子状不純物の主要部分を遠心力によって気体から分離するために入口3からの気体を回転させるように構成されている開放された遠心ロータとして構成されている。静止したハウジング5は、回転部材7によって分離された主要部分を捕捉するように構成されている内壁8を有している。したがって、分離された粒子状不純物は、内壁8の内側でチャンバ6の周りに延びており、排出通路11への出口10を有している収集通路9へと内壁8に沿って下方に流れることができる。
【0029】
回転部材7は、ロータスピンドル13に取り付けられている複数の回転分離ディスク12を有している。図示する複数の実施形態において、回転分離ディスク12は、円錐状で、ロータスピンドル13上に同心状に配置されている。そのようにして、回転分離ディスク12はロータスピンドル13から外向きに延びている。ただし、回転分離ディスク12は、図示する実施形態のように斜め上向きに延びていてもよいし、実質的に半径方向外向きに、または斜め下向きに延びていてもよい。軸線方向に延びており、それぞれが、ロータスピンドル13に接続されている軸線方向内側縁を有している複数の軸線方向分離ディスクを回転部材7が含むようにすることもできる。そのような軸線方向分離ディスクは、ロータスピンドル13から半径方向に、または例えば曲線に沿うように延びていてよい。
【0030】
回転部材7は、図示する実施形態では、円錐状の複数の回転分離ディスク12を含んでおり、これらの回転分離ディスク12は、それらの間に、浄化すべき気体が流れて通る複数の狭い通路14を形成している。複数の回転分離ディスク12は、複数の間隔保持部材(不図示)によって互いに一定の距離に保たれている。この距離は、例えば1mm程度であってよい。一番上の回転分離ディスク12'と一番下の回転分離ディスク12''は、残りの回転分離ディスク12よりも幾分厚く、例えば、全ての回転分離ディスク12を通って延びている複数の軸線方向ロッド(不図示)によって、積み重ねられた複数の回転分離ディスク12を1つに保持している。
【0031】
一番下の回転分離ディスク12'を除く全ての回転分離ディスク12は、ロータスピンドル13の周りに分散して配置されている複数の貫通穴15を有している。これらの貫通穴15と、複数の回転分離ディスク12の間の通路14とは、回転部材7内の中心空間を構成している。この中心空間は、入口4とチャンバ6とに通じている。したがって、中心空間は、浄化すべき気体のための、回転部材7を通る通路を構成している。
【0032】
ロータスピンドル13は、ハウジング5に固定されるように取り付けられている上側軸受18と、底壁20を介してやはりハウジング5に固定されるように取り付けられている下側軸受19とに支持されている。この装置は、回転部材7を駆動する駆動部材21,22も含んでいる。駆動部材21,22は、多くの様々な方法で構成されていてよい。図2に示す第2の実施形態では、駆動部材21は、ロータスピンドル13に直接接続されており、下側軸受19の下方に設けられている電気モータとして構成されている。図1と3に示されている両実施形態では、駆動部材は、流体噴流、例えば、内燃機関の潤滑系統からのオイル噴流によって駆動されるロータとして構成されている。そのような駆動部材は、最初に述べた特許文献3に、より詳細に示されている。
【0033】
装置は、気体の圧力を制御する圧力調整器25も含んでいる。図示する実施形態では、この圧力調整器は出口4の実質的にすぐ下流に設けられている。より具体的には、圧力調整器25は出口4のすぐ外側に位置しており、静止したハウジング5と外壁27によって区切られている空間26内に設けられている。外壁27は、圧力調整器25が、装置の、したがって静止したハウジング5の一体部分となるように、静止したハウジング5に固定されるように接続されているのが有利である。ただし、本発明の範囲内で、圧力調整器25を3つの実施形態に示されている以外の位置、例えば、静止したハウジング5から離れた位置に設けることも可能である。圧力調整器25は、気体出口通路29のすぐ上流に設けられており、気体出口通路29が開く位置と気体出口通路29が閉じる位置との間を動くことができる可動薄膜28を有している。
【0034】
前述のように、この装置は、粒子状不純物の、気体中に残っている残りの部分を分離するように構成されている追加のセパレータ2も含んでいる。追加のセパレータ2の静電フィルタは、第1の極部材41と第2の極部材42とを含んでいる。さらに、第1の極部材41と第2の極部材42との間に高い電圧、すなわち電位差を生じさせる電圧ユニット43が設けられている。両極部材41と42は、装置を通って流れる気体に接触するように設けられている。第1の極部材41と第2の極部材42との間の電位差のために、第1の極部材41によって気体内の粒子状不純物を、第2の極部材42に対して電位差を持つように帯電させることができる。第2の極部材42によって、気体から前述の残りの部分を分離するために、帯電した粒子状不純物を引きつけることができる。図示する実施形態では、第2の極部材42は第1の極部材41の実質的に下流に設けられている。
【0035】
両極部材41と42は、装置内の多くの様々な位置に設けることができる。3つの実施形態は、両極部材41と42の可能な位置の互いに異なる3つの例を示している。ここで、3つの実施形態を、両極部材41,42の位置と機能に関して図1〜3を参照してより詳しく説明する。3つの実施形態において互いに対応する機能を有している構成要素には、同じ参照番号を付している。
【0036】
図1は、入口内で第2の極部材42の上流に配置されている第1の極部材41を示している。第1の極部材41は、この実施形態では、導電性プラスチック、または、アルミニウム、銅および/または鉄を含む金属のような導電性材料の網として構成されている。ワイヤ成形材料からなるそのような網によって、入口3を通って流れる粒子状不純物を好適に帯電させることができる。第1の極部材41は、導電性プラスチックや金属のような導電性材料の細いワイヤとして構成されていてもよい。そのようなワイヤは、どのような適切な経路で入口3内に延びていてもよい。さらに、第1の極部材41は、導電性材料の、入口3内に突き出ている1つまたは幾つかの先端部分として構成されていてもよい。第1の極部材41は、図示する実施形態では正の電圧を出力する電圧ユニット43に接続されている。しかし、電圧ユニット43は、粒子状不純物を負の電荷で帯電させるように負の電圧を出力してもよい。第2の極部材42は、第1の実施形態では、まず第一に、静止したハウジング5の内壁8によって構成されている。第2の極部材42は、静止したハウジング5がグランド導線48を介してグランドに接続されていることによって構成されている。図1に示す実施形態では、静止したハウジング5と回転部材7との間は電気的に絶縁されていない。これは、回転部材7と回転分離ディスク12も、それらが導電性である限り、グランドに接続され、そのために第2の極部材42の一部を構成していることを意味している。回転分離ディスク12は、軽量な任意の材料、例えばプラスチックで作られているのが有利である。回転部材7が第2の極部材42を、または第2の極部材42の一部を構成するようにしたい場合には、回転分離ディスクを導電性プラスチックで作るのが有利である。もちろん、この場合、回転分離ディスク12を適切な任意の材料で作ってもよい。上から分かるように、回転分離ディスク12を非導電性材料、好ましくはプラスチックで作ってもよく、この時、第2の極部材42は回転部材7の実質的に下流に位置することになる。回転部材7を静止したハウジング5から電気的に絶縁することも可能であり、この時、第2の極部材42は回転部材7の完全に下流に設けられていてよい。回転部材7のそのような絶縁の複数の例が、図2の第2の実施形態に示されている。第1の実施形態では、内壁8が、場合によっては回転分離ディスク12も、入口3内で第1の極部材41から電荷を与えられた粒子状不純物を引きつけることができる。このようにして、残っている可能性のある粒子状不純物が内壁8に引きつけられるのが保証され、そこから、その粒子状不純物を、主要部分と共に排出することができる。静電気によるこの分離は、軽い、または小さい粒子、例えば粒子の大きさが0.05μmから1μmの粒子状不純物に対して非常に効果的である。粒子の大きさが最小で0.8μmまでの、より大きいまたはより重い粒子状不純物は、メインセパレータによって、すなわち回転部材7によって効果的に分離することができる。
【0037】
図2は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態では、第1の極部材41は、電圧ユニット43によって正の電位を与えられている回転部材7によって構成されている。したがって、回転部材7は電圧ユニット43に電気接続部49を介して接続されている。電気接続部49は、例えば、すり接触部を含んでいてもよい。第2の極部材42は、第2の実施形態でも、静止したハウジング5、特に内壁8によって構成されている。
【0038】
図3に示されている第3の実施形態では、第1の極部材41と第2の極部材42の両方が回転部材7の下流で、かつ出口4の下流に設けられている。この実施形態では、両極部材41と42は圧力調整器に接続されて設けられており、より正確には、可動薄膜28のすぐ上流の空間26内に設けられている。第1の極部材41は、少なくとも1つの導電性プレート51、図示する例では、互いにわずかな距離だけ離れ互いに平行な2つの導電性プレート51を含んでおり、すなわち、両導電性プレート51は、実質的に平行に延びる部分を有している。第2の極部材42も、少なくとも1つの導電性プレート52、図示する例では2つの導電性プレート52を有している。これらの2つの導電性プレート52も、互いにわずかな距離だけ離れ、実質的に平行に延びる部分を有している。さらに、両導電性プレート51は両導電性プレート52に対して実質的に平行である。したがって、この追加のセパレータ2を通って流れる気体は、図3で明確にわかる、空間26を通る、折り返すように延びている経路を流される。すなわち、気体はまず空間26の内壁の1つと第1の導電性プレート51との間を流れ、その後、気体は向きを変えて2つの第1の導電性プレート51の間を下向きに流れ、その後、気体は再び上向きに向きを変えて第1の導電性プレート51の一方と最初の第2の導電性プレート52との間を流れる。その後、気体は、2つの第2の導電性プレート52の間を再び下向きに流れる。その後、気体は第2の導電性プレート52と可動薄膜28との間の空間26内に分散させられ、可動薄膜28を通過して、気体出口通路29を通って流出する。第3の実施形態の静電フィルタは、高い電圧を供給し、2つの第1の導電性プレート51に電気接続部53を介して接続されている電圧源、すなわち電圧ユニット43も含んでいる。図3は、電圧源、すなわち電圧ユニット43の、低い電圧の給電線を示している。2つの第2の導電性プレート52は共にグランド接続部、すなわちグランド導線48を介してグランドに接続されている。
【0039】
ただし、ハウジング5および/または外壁27は導電性の材料、プラスチック、または金属を含んでいてもよく、この場合、チャンバ6または空間26内で第1の極部材41によって印加される高電圧の電気絶縁が行われる。
【0040】
図4は、本発明による装置の有利な用途を示している。ここでは、装置は、模式的に示している内燃機関61のクランクケースからのクランクケースガスを浄化するように意図されている。したがって、入口3は内燃機関61のクランクケース62に接続されている。クランクケースガスは、メインセパレータ1と追加のセパレータ2とを通して運ばれ、気体出口通路29を通して排出される。図1〜3に示す装置が内燃エンジン61にも取り付けられ、この場合、排出通路11は、内燃エンジン61のクランクケース62に、分離された油を再循環させるように配置される。
【0041】
図5は、ケーシングに囲まれている模式的に示している工作機械71における、本発明の他の有利な用途を示している。ケーシング内の空気が、ケーシングから運び出されて、装置の入口3に運び入れられる。そこから、浄化すべき空気は、メインセパレータ1と追加のセパレータ2とを通して運ばれ、その後、気体出口通路29を通して排出される。
【0042】
本発明は、開示した実施形態には限定されず、請求項の範囲内で変更したり修正したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態の装置を通る模式的な断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の装置を通る模式的な断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の装置を通る模式的な断面図である。
【図4】本発明による装置を有している内燃機関の模式図である。
【図5】本発明による装置を有している工作機械の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する装置であって、前記気体用の入口(3)と、前記気体用の出口(4)と、回転部材(7)であって、前記入口(3)と前記出口(4)との間に配置されており、ロータスピンドル(13)と、該ロータスピンドル(13)に取り付けられている複数の回転分離ディスク(12)と、を有している回転部材(7)と、を有するメインセパレータ(1)を含み、前記回転部材(7)は、前記粒子状不純物の主要部分を遠心力によって前記気体から分離するために前記気体を回転させるように構成されており、前記粒子状不純物の残りの部分が前記気体内に残る、装置において、
前記残りの部分の実質的に全てを分離するように構成されている追加のセパレータ(2)を含んでおり、前記追加のセパレータ(2)は静電フィルタを含んでいることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記静電フィルタは、第1の極部材(41)と、第2の極部材(42)と、電圧ユニット(43)であって、前記第1の極部材(41)によって、前記気体内の前記粒子状不純物が、前記第2の極部材(42)に対して電位を持つように帯電させられ、前記第2の極部材によって、帯電させられた前記粒子状不純物が引きつけられて前記気体から分離されるように、前記第1の極部材(41)と前記第2の極部材(42)との間に電位差を生じさせる電圧ユニット(43)と、を有していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の極部材(42)は前記第1の極部材(41)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の極部材(42)は前記入口(3)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2および3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の極部材(42)は前記回転部材(7)内に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記極部材(41,42)の少なくとも1つが前記回転部材(7)に設けられていることを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記回転部材(7)の、複数の前記回転分離ディスク(12)が、前記第1の極部材(41)と前記第2の極部材(42)の一方を構成していることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記回転分離ディスク(12)は前記第2の極部材(42)を構成しており、したがって、前記第1の極部材(41)に対して前記電位差を有するように設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記回転分離ディスク(12)は前記第1の極部材(41)を構成しており、したがって、前記第2の極部材(42)に対して前記電位差を有するように設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の極部材(42)は前記回転部材(7)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2、3、および9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の極部材(41)は前記回転部材(7)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2および3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の極部材(42)は前記出口(4)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2、3、10、および11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の極部材(41)は前記出口(4)の下流に設けられていることを特徴とする、請求項2、3、および12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記回転部材が中に設けられているチャンバ(6)を形成している静止したハウジング(5)を有しており、該静止したハウジング(5)は、前記回転部材(7)によって分離された前記主要部分を捕捉し、前記主要部分を排出通路(11)に運ぶように構成されている内壁(8)を有していることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記内壁(8)は前記第2の極部材を構成しており、前記残りの部分を捕捉し前記排出通路(11)に運ぶようにも構成されていることを特徴とする、請求項10および14に記載の装置。
【請求項16】
前記追加のセパレータは、前記静止したハウジング(5)に一体に設けられていることを特徴とする、請求項14および15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記気体の圧力を制御する圧力調整器(25)を含んでいることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記圧力調整器(25)は、前記静止したハウジング(5)に一体に設けられていることを特徴とする、請求項14および17に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の極部材(42)は、前記圧力調整器(25)に接続されて設けられていることを特徴とする、請求項17および18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の極部材(41)は前記圧力調整器(25)に接続されて設けられていることを特徴とする、請求項17から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
導電性プレート(51)が前記圧力調整器(25)のすぐ上流の空間(26)内に設けられており、前記導電性プレート(51)は前記第1および第2の極部材(41,42)の一方を構成していることを特徴とする、請求項17から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
第1の導電性プレート(51)と第2の導電性プレート(52)とが前記圧力調整器(25)のすぐ上流の空間(26)内に互いに距離を隔てて互いに平行に設けられており、前記第1の導電性プレート(51)は前記第1の極部材を構成し、前記第2の導電性プレート(52)は前記第2の極部材(41,42)を構成していることを特徴とする、請求項17から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
内燃機関(61)のクランクケース(62)からの気体を受け入れて浄化するように前記内燃機関(61)に取り付けられるように構成されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
工作機械(71)に隣接している領域からの空気を受け入れて浄化するように前記工作機械(71)に取り付けられるように構成されていることを特徴とする、請求項1から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する方法であって、
前記気体をメインセパレータの入口に供給するステップと、
前記メインセパレータの、ロータスピンドルと、該ロータスピンドルに取り付けられている複数の回転分離ディスクと、を含んでいる回転部材によって前記気体を回転させるステップであって、前記回転部材は、遠心力によって、前記気体から前記粒子状不純物の主要部分を分離し、前記粒子状不純物の残りの部分が前記気体内に残る、ステップと、
前記気体を前記メインセパレータから出口を介して排出するステップと、
を含む方法において、
前記気体は追加のセパレータを通して運ばれ、前記追加のセパレータは前記残りの部分の実質的に全てを分離するように構成されており、前記追加のセパレータは静電フィルタを含んでいることを特徴とする、粒子状不純物を含んでいる気体を浄化する方法。
【請求項26】
前記気体は内燃機関のクランクケースからのクランクケースガスからなることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記気体は、工作機械に隣接している領域からの空気からなることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記メインセパレータは、粒子の大きさが最小で2μまでの前記粒子状不純物の実質的に全てを取り除くように構成されていることを特徴とする、請求項25から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記メインセパレータは前記粒子状不純物の少なくとも98%を前記気体から取り除くように構成されていることを特徴とする、請求項25から28のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−501505(P2008−501505A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514976(P2007−514976)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000732
【国際公開番号】WO2005/119020
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500515565)アルファ ラヴァル コーポレイト アクチボラゲット (90)
【Fターム(参考)】