説明

気体溜め込み式排気系の再生方法及びこれを用いた基板処理装置の制御方法

【課題】搬送室内に配設されたクライオパネルを有する気体溜め込み式真空排気系においてクライオパネルから不純物を除去する再生を行う際に,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる気体溜め込み式真空排気系の再生方法及びこれを用いた基板処理装置の制御方法を提供する。
【解決手段】共通搬送室300内に不活性ガスを導入しながら排気することで,共通搬送室内の圧力を高めつつ不活性ガスの流れを形成する。この状態でクライオパネル342を加熱してクライオパネル342から不純物を放出させることにより,その不純物を不活性ガスの粘性流に乗って共通搬送室の外部に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,気体溜め込み式排気系の再生方法およびこれを用いた基板処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体デバイスの製造工程にあっては,被処理基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」ともいう)に対して成膜処理,エッチング処理等の処理が複数回繰り返し行なわれる。近年,半導体デバイスの生産性を向上させるために,ウエハに対して同種または異種の処理を施す複数の処理室と,各処理室に対してウエハを搬出入する搬送室とを備えたクラスタツール型の基板処理装置の普及が進んでいる。この基板処理装置によれば,一の処理室にて処理を施したウエハを大気に晒すことなく他の処理室に搬送して次の処理を施すことができる。そして,このように搬送中のウエハを大気に晒さないようにするために,搬送室にはその内部を排気して所定の真空度に調整するための排気系が備えられている。
【0003】
一般に,このような搬送室の排気系は,例えば搬送室の外部に排気管を介して設けられたターボ分子ポンプやドライポンプによって構成される。ところが,近年では搬送室が大型化するとともに,搬送室内の真空度をより高めて清浄度の高い環境下でウエハを搬送することが求められているため,搬送室の外部に排気管を介して例えばクライオポンプなどの気体溜め込み式ポンプを設け,上記ターボ分子ポンプやドライポンプと組み合わせて真空排気を行うものも提案されている(例えば特許文献1参照)。すなわち,搬送室は一般にその容量も大きいため,ターボ分子ポンプやドライポンプで真空排気するだけでなく,さらに気体溜め込み式ポンプで搬送室内に残留し易い不純物ガスを捕捉して取り除くことで,搬送室内の真空度をより高めることができる。
【0004】
このような気体溜め込み式ポンプは,一般に,そのポンプ内にクライオパネルを設け,このクライオパネルを冷却することによって,搬送室から排出される不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して除去するようになっている。このため,クライオパネルに捕捉された不純物の量が増えるほど排気能力が低下する。従って,気体溜め込み式ポンプでは定期的に捕捉された不純物を取り除く再生処理が必要となる。
【0005】
従来,気体溜め込み式ポンプの再生処理としては,加熱した昇温用ガスをポンプ内に導入することでクライオパネルを再生する温度に加熱して,クライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出するようになっていた(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−104178号公報
【特許文献2】特開平6−346848号公報
【特許文献3】特開平7−29962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,近年では,搬送室内の真空度をより一層高めるため,ポンプ内にクライオパネルを配設する一般的な気体溜め込み式ポンプに代えて,クライオパネルを独立して搬送室内に配設して外部からクライオパネルを冷却するものが提案されている(特許文献3参照)。すなわち,一般的な気体溜め込み式ポンプでは,これが接続される狭い排気管を通じてでなければ気体を捕捉できないので,搬送室内の不純物ガスを効率的に除去するには限界がある。特に不純物ガスとしてHOやOなどは搬送室内に残留し易く,これを効率的に取り除くことで,搬送室内の真空度をより一層高めることができる。この点,クライオパネルを独立して搬送室内に配設する構成によれば,容積の大きい搬送室内に残留するHOやOなどの不純物ガスを極めて効率よく除去することができる。
【0008】
しかしながら,クライオパネルを搬送室内に配設する場合,そのクライオパネルの再生する際に以下のような問題がある。すなわち,従来の気体溜め込み式ポンプの再生と同様に,もし加熱した昇温用ガスを搬送室内に導入することによってクライオパネルを加熱しようとすれば,搬送室内はポンプ内に比して極めて容積が大きいので,クライオパネルの温度を昇温させるには非常に時間がかかるとともに,クライオパネルの加熱効率も極めて悪い。この場合,もしクライオパネルを直接加熱して再生しようとすれば,クライオパネルから気化放出された不純物が搬送室の内壁に付着するという問題がある。
【0009】
また,こうして搬送室の内壁に付着した不純物を取り除くのは非常に時間がかかる。すなわち,搬送室の内壁に不純物が付着した場合は,クライオパネルを加熱する再生処理が終了した後には,さらに搬送室内の洗浄処理を行わなければならない。従って,クライオパネルの再生処理が終了した後にその洗浄処理を行う時間の分だけ,搬送室を所定の真空度にするなど基板処理装置を復帰(リカバリ)させるのに長い時間がかかる。
【0010】
そこで,本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,搬送室内に配設したクライオパネルで選択的に不純物ガスを凝縮補足する気体溜め込み式真空排気系においてクライオパネルの再生を行う際に,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる気体溜め込み式真空排気系の再生方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板に所定の処理を施す処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室に設けられた気体溜め込み式真空排気系の再生方法であって,前記搬送室は,その内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,内部の気体を前記搬送室の外部に排出する排気系とを備え,前記気体溜め込み式真空排気系は,前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,このクライオパネルを加熱するパネル加熱器とを備え,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に前記不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成して,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを所定の再生温度以上に加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする気体溜め込み式真空排気系の再生方法が提供される。
【0012】
このような本発明によれば,搬送室の内部に不活性ガスの流れを形成した上で,その状態のままパネル加熱器によってクライオパネルを加熱するので,クライオパネルに捕捉されている不純物は,クライオパネルから放出された後,不活性ガスの流れに乗って搬送室の外部に排出される。これにより,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる。
【0013】
また,上記気体溜め込み式真空排気系の再生を行っている間,例えば前記クライオパネルから放出された不純物の平均自由行程が前記クライオパネルと前記搬送室の内壁との距離よりも短くなるように,前記搬送室の内部の圧力を調整する。この場合,上記搬送室の内部の圧力を例えば0.1〜10Torrの範囲内の所定の圧力に調整することが好ましい。これにより,クライオパネルから放出された不純物は,搬送室の内壁に到達する前に高い確率で不活性ガスの分子に衝突することになり,搬送室の内壁に付着することなく不活性ガスとともに搬送室の外部へ排出される。
【0014】
また,上記搬送室は,その内壁を構成する壁部を加熱する壁部ヒータを設け,前記気体溜め込み式真空排気系の再生を行っている間,前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱するとともに,前記壁部ヒータによって前記壁部を加熱するようにしてもよい。これによれば,クライオパネルから放出された不純物が,もし搬送室の内壁に到達したとしても,そこに凝縮固着することを防止できる。
【0015】
また,上記ガス導入系は,凝固点の異なるガス種の不活性ガスを切り替え可能に構成し,前記クライオパネルには,その温度を検出する温度センサを設け,前記クライオパネルの温度が上昇している間に前記温度センサで検出される温度に応じて,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に導入する前記不活性ガスのガス種を切り替えるようにしてもよい。なお,ここでのクライオパネルの温度が上昇している間には,クライオパネルの冷却を止めたときに自然に温度が上昇している間の他,クライオパネルが加熱されて温度が上昇している間も含まれる。
【0016】
これによれば,クライオパネルの再生処理を行う直前に,そのクライオパネルの温度がこれから導入しようとするメインの不活性ガスがクライオパネルに捕捉されてしまうほど低温になっている場合であっても,早い段階から別の不活性ガスを導入して再生処理を開始することができる。例えば先ずその低い温度では捕捉されない別の不活性ガスを導入し,その後クライオパネルの温度が上昇してメインの不活性ガスが捕捉されない温度になったら,そのメインの不活性ガスに切り替えて導入することができる。このように,不活性ガスのガス種によって,クライオパネルに捕捉されない温度が異なるので,これを利用して再生処理を開始するタイミングを早めることができる。
【0017】
この場合,上記クライオパネルを加熱した際の温度が所定温度に達するまでの間は,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスとしてNeガスを導入し,前記クライオパネルの温度が前記所定温度を超えたら,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスとしてArガスを導入するようにしてもよい。Arガスは凝固点が約−189℃であるのに対して,Neガスは凝固点が約−249℃とクライオパネルに凝縮捕捉され得る温度が極めて低い。このため,たとえクライオパネルの温度が−200℃前後の低温であっても,クライオパネルの冷却を止めてArガスが凝縮捕捉され得る約−189℃になるまで待つことなく,Neガスを導入して直ちに再生処理を開始することができる。その後,クライオパネルの温度が上昇して約−189℃以上になったところで,Arガスに切り替えることができる。
【0018】
また,上記搬送室にその内部の不純物の分圧を測定する分圧測定器を設け,前記分圧測定器によって前記クライオパネルから気化放出された不純物の分圧を測定して監視し,その分圧が所定の値以下にまで低下した時点で再生が完了したと判断するようにしてもよい。この他,上記クライオパネルを加熱し始めてから所定時間経過後に,前記搬送室の内部への前記不活性ガスの導入を停止するとともに前記排気系による前記搬送室の内部の排気を一定時間停止して,前記搬送室の内部の圧力を測定して,その一定時間内で圧力が所定の値以下であれば再生が完了したと判断するようにしてもよい。このようにして再生完了を判断すれば,気体溜め込み式真空排気系の再生にかかる時間を最小限に抑えることができる。
【0019】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,前記搬送室は,前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器とを備え,前記搬送室と前記各処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記ガス導入系によって前記搬送室に前記不活性ガスを導入するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の気体のうち前記不活性ガスを補足することなく不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を前記各処理室の内部の圧力よりも高く調整し,前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に前記不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成して,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法が提供される。この場合,上記複数の処理室は,例えば化学気相成長法による処理を行う処理室である。
【0020】
このような本発明によれば,搬送室と各処理室との間で基板の搬出入を行う際にはその直前(例えば搬送室と各処理室との間のゲートバルブを開いて連通する直前)に,搬送室の内部の圧力を各処理室の内部の圧力よりも高く調整するため,搬送室側から各処理室側へ雰囲気が流れ込むようになる。したがって,仮に処理室内に不純物が残留していても,搬送室内にその不純物が流れ込んで搬送室内を汚染してしまうことを防止できる。さらに,搬送室の内部の気体のうち不活性ガスを補足することなく不純物ガス(例えばHOや処理ガスの残留ガスなど)をクライオパネルに選択的に凝縮捕捉するため,搬送室内を清浄な状態に保つことができる。
【0021】
また,クライオパネルの再生処理を行う際には,搬送室内に不活性ガスの流れを形成するため,クライオパネルから放出された不純物は不活性ガスの流れに乗って搬送室の外部に排出される。このため,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる。
【0022】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,前記搬送室は,前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器とを備え,前記搬送室と前記各処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記不活性ガスを導入することなく前記排気系によって前記搬送室の内部の気体をこの搬送室の外部に排出するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を到達圧力に調整し,前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成し,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法が提供される。この場合,上記複数の処理室は,例えば物理気相成長法による処理を行う処理室である。
【0023】
このような本発明によれば,搬送室と各処理室との間で基板の搬出入を行う際にはその直前(例えば搬送室と各処理室との間のゲートバルブを開いて連通する直前)に,搬送室の内部の圧力を少なくとも各処理室の内部の圧力以上の到達圧力に調整するため,少なくとも各処理室と搬送室の間では気流が生じないか又は各処理室から搬送室に向かう気流が生じる。これにより,各処理室に搬送室からの雰囲気が流れ込むことを防止できる。さらに,搬送室の内部の気体のうちの不純物ガス(例えばHOや処理ガスの残留ガスなど)をクライオパネルに選択的に凝縮捕捉するため,搬送室内を清浄な状態に保つことができる。これにより,搬送室内を清浄な状態に保つことができるともに,搬送室から各処理室に不純物ガスが入り込むことを防止できる。
【0024】
また,クライオパネルの再生処理を行う際には,搬送室内に不活性ガスの流れを形成するため,クライオパネルから放出された不純物は不活性ガスの流れに乗って搬送室の外部に排出される。このため,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる。
【0025】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,前記搬送室は,前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器とを備え,前記複数の処理室は,低真空度で処理が行われる第1処理室と,高真空度で処理が行われる第2処理室とを有し,前記搬送室と前記第1処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記ガス導入系によって前記搬送室に前記不活性ガスを導入するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の気体のうち前記不活性ガスを補足することなく不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を前記第1処理室の内部の圧力よりも高く調整し,前記搬送室と前記第2処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記不活性ガスを導入することなく前記排気系によって前記搬送室の内部の気体をこの搬送室の外部に排出するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を少なくとも前記第2処理室の内部の圧力に近い圧力又はそれよりも低い圧力に調整し,前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成し,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法が提供される。この場合,前記第1処理室は,例えば前記基板に対して化学気相成長法による処理を行う処理室であり,前記第2処理室は,例えば前記基板に対して物理気相成長法による処理を行う処理室である。
【0026】
このような本発明によれば,搬送室と第1処理室との間で基板の搬出入を行う際にはその直前(例えば搬送室と第1処理室との間のゲートバルブを開いて連通する直前)に,搬送室の内部の圧力を各処理室の内部の圧力よりも高く調整するため,第1処理室内に残留する不純物が搬送室内に流れ込むことを防止できる。さらに,搬送室の内部の気体のうち不活性ガスを補足することなく不純物ガス(例えばHOや処理ガスの残留ガスなど)をクライオパネルに選択的に凝縮捕捉する。このため,搬送室と第1処理室との間で基板の搬出入を行っても,搬送室内は常に清浄な状態に保たれる。従って,搬送室と第2処理室との間で基板の搬出入を行っても,第1処理室内に残留する不純物が搬送室内を介して第2処理室内に流れ込むことを防止できる。
【0027】
また,搬送室と第2処理室との間で基板の搬出入を行う際にはその直前(例えば搬送室と第2処理室との間のゲートバルブを開いて連通する直前)に,搬送室の内部の圧力を少なくとも第2処理室の内部の圧力に近い圧力又はそれよりも低い圧力,例えば到達圧力に調整するため,少なくとも第2処理室と搬送室の間では気流が生じないか又は第2処理室から搬送室に向かう気流が生じる。これにより,第2処理室に搬送室からの雰囲気が流れ込むことを防止できる。
【0028】
また,クライオパネルの再生処理を行う際には,搬送室内に不活性ガスの流れを形成するため,クライオパネルから放出された不純物は不活性ガスの流れに乗って搬送室の外部に排出される。このため,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば,搬送室内に配設したクライオパネルで選択的に不純物ガスを凝縮補足する気体溜め込み式真空排気系においてクライオパネルの再生を行う際に,搬送室内に不活性ガスによる流れを形成するため,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着しないようにできる。また,クライオパネルから放出された不純物が搬送室の内壁に付着しないので,その不純物を取り除く洗浄処理を行う必要がなくなる。これにより,気体溜め込み式真空排気系の再生後に,基板処理装置を復帰させるまでの時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
(基板処理装置の構成例)
まず,本発明の実施形態にかかる基板処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す断面図である。この基板処理装置100は,被処理基板例えばウエハWに対して成膜処理,エッチング処理等の各種の処理を行う処理ユニット110と,この処理ユニット110に対してウエハWを搬出入させる搬送ユニット120と,基板処理装置100全体の動作を制御する制御部400とを備えている。
【0032】
搬送ユニット120は,基板収納容器例えば後述するカセット容器122(122A〜122C)と処理ユニット110との間でウエハを搬出入する搬送室130を有している。搬送室130は,断面略多角形の箱体状に形成されており,搬送室130における断面略多角形の長辺を構成する一側面には,複数のカセット台124(124A〜124C)が並設されている。これらカセット台124A〜124Cはそれぞれ,基板収納容器の一例としてのカセット容器122A〜122Cが載置可能なように構成されている。
【0033】
各カセット容器122には,例えば最大25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっており,内部は例えばNガス雰囲気で満たされた密閉構造となっている。そして,搬送室130は,カセット容器122からその内部へシャッタ(図示せず)を介してウエハWを搬出入可能に構成されている。なお,カセット台124とカセット容器122の数は,図1に示す場合に限られるものではない。
【0034】
搬送室130の端部には,オリエンタ(プリアライメントステージ)126が設けられている。このオリエンタ126は,例えばウエハWのオリエンテーションフラットやノッチ等を検出して位置合わせを行う。
【0035】
搬送室130内には,例えばリニア駆動機構によって長手方向(図1に示す白抜き矢印方向)に沿ってウエハWを搬送する搬送ユニット側搬送機構(搬送室内搬送機構)132が設けられている。なお,搬送ユニット側搬送機構132は,図1に示すような2つのピックを有するダブルアーム機構であってもよく,1つのみのピックを有するシングルアーム機構であってもよい。
【0036】
次に,処理ユニット110の具体的な構成例について説明する。本実施形態にかかる基板処理装置100がクラスタツール型である場合,処理ユニット110は図1に示すように,断面多角形(例えば六角形)に形成された共通搬送室300,その周囲に気密に接続された複数の処理室200(第1〜第4処理室200A〜200D),および第1,第2ロードロック室200M,200Nから構成されている。なお,処理室200の数は,図1に示す場合に限られるものではない。
【0037】
処理室200A〜200Dはそれぞれ,ウエハWに例えば成膜処理(例えば後述するプラズマを用いたCVD処理,PVD処理)やエッチング処理(例えばプラズマエッチング処理)などの所定の処理を施すことが可能なように構成されており,ゲートバルブ202A〜202Dを介して共通搬送室300に接続されている。
【0038】
また,各処理室200A〜200Dは,各処理室200A〜200D内へ処理ガスやパージガスなど所定のガスを導入可能なガス導入系210A〜210D(図1では省略),各処理室200A〜200D内を排気可能な排気系220A〜220D(図1では省略)が接続されている。なお,これらガス導入系と排気系の構成例は後述する。
【0039】
各処理室200A〜200Dは,ウエハWに対して化学気相成長法による処理,所謂CVD(Chemical Vapor Deposition)処理を行う第1処理室(以下,「CVD処理室」という)として構成されたものと,ウエハWに対して物理気相成長法による処理,所謂PVD(Physical Vapor Deposition)処理を行う第2処理室(以下,「PVD処理室」という)として構成されたものを含む。各処理室200A〜200Dのうちのどの処理室をどのタイプの処理室として構成してもよい。例えば処理室200A,200BをPVD処理室で構成し,例えば処理室200C,200DをCVD処理室として構成する。なお,処理室200A〜200DのすべてをPVD処理室として構成してもよく,処理室200A〜200DのすべてをCVD処理室として構成してもよい。また,処理室200A〜200Dの一部の処理室をPVD処理室,CVD処理室として構成し,その他の処理室はエッチング処理など他の処理を行う処理室として構成してもよい。
【0040】
これらのうち,CVD処理室は例えば次のように構成される。すなわち,CVD処理室の内部には上部電極と下部電極とが対向して配設されており,上部電極には上記ガス導入系が接続されている。一方の下部電極はウエハWを載置する載置台を兼ねている。これら上部電極と下部電極にはそれぞれ所定の高周波電力を印加する高周波電源が接続されている。
【0041】
このようなCVD処理室に対して共通搬送室300からウエハWが搬入されて下部電極に載置されると,CVD処理室の内部は,排気系によって排気されて所定の圧力に調整される。そして,上部電極と下部電極には高周波電力が印加されるとともに,ガス導入系からの処理ガスが上部電極を介してウエハWに向けて均一に導入される。これによって上部電極から導入された処理ガスはプラズマ化され,ウエハWの表面に成膜処理が施される。
【0042】
また,PVD処理室は例えば次ぎのように構成される。すなわち,PVD処理室の内部には上部電極と下部電極とが対向して配設されており,上部電極はスパッタターゲットによって構成されている。このスパッタターゲットとしては例えば高純度のCuから成るターゲットが用いられる。一方の下部電極はウエハWを載置する載置台を兼ねている。これら上部電極と下部電極にはそれぞれ所定の高周波電力を印加する高周波電源が接続されている。
【0043】
このようなPVD処理室に対して共通搬送室300からウエハWが搬入されて下部電極に載置されると,PVD処理室の内部は,排気系によって排気されて所定の圧力に調整される。そして,上部電極と下部電極には高周波電力が印加されるとともに,ガス導入系からPVD処理室内にArガスなどのプラズマ励起のためのガスが導入される。これによってPVD処理室内でArガスがプラズマ化してArイオンが生成される。このようにして生成されたArイオンによってスパッタターゲットがスパッタリングされ,ウエハWの表面に成膜処理が施される。
【0044】
このような各処理室200A〜200DにおけるウエハWの処理は,例えば制御部400の記憶手段に予め記憶された処理工程等を示すプロセス・レシピなどのウエハ処理情報に基づいて行われる。ウエハ処理情報は,ウエハの処理の種類や条件によって異なる。
【0045】
上記共通搬送室300は,各処理室200A〜200Dの間,または各処理室200A〜200Dと各第1,第2ロードロック室200M,200Nとの間でウエハWを搬出入する機能を有する。
【0046】
共通搬送室300内には,例えば屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる処理ユニット側搬送機構(共通搬送室内搬送機構)302が設けられている。処理ユニット側搬送機構302は,第1,第2ロードロック室200M,200Nおよび各処理室200A〜200Dとの間でウエハWを搬送する。なお,処理ユニット側搬送機構302は,図1に示すような2つのピックを有するダブルアーム機構であってもよく,1つのみのピックを有するシングルアーム機構であってもよい。
【0047】
第1,第2ロードロック室200M,200Nは,ウエハWを一時的に保持して圧力調整後に,次段へパスさせる機能を有するものであり,各先端は真空側ゲートバルブ202M,202Nを介して共通搬送室300に接続されており,各基端は大気側ゲートバルブ204M,204Nを介して搬送室130における断面略多角形の長辺を構成する他側面に接続されている。また,各第1,第2ロードロック室200M,200Nの内部にはウエハWを載置可能な受渡台が設けられている。
【0048】
制御部400は,上記のように基板処理装置100全体の動作を制御するものである。具体的には,上記の各処理室200A〜200DにおけるウエハWに対する処理の他,搬送ユニット側搬送機構132,処理ユニット側搬送機構302,および各ゲートバルブ202A〜202D,202M,202N,204M,204Nの動作制御,ならびにオリエンタ126におけるウエハWの位置合わせ制御などの制御を行う。
【0049】
各処理室200A〜200Dには,室内にArガスやNガス等の不活性ガス,TiClガスを含む所定の処理ガスを供給するガス供給系が接続されているとともに,室内の雰囲気を排気するための排気系が接続されている。また,共通搬送室300と第1,第2ロードロック室200M,200Nにも,Arガス,Nガス,Neガス等の不活性ガスを供給するガス供給系が接続されているとともに,室内の雰囲気を排気するための排気系が接続されている。これら各処理室200A〜200D,共通搬送室300,および第1,第2ロードロック室200M,200Nには,室内の圧力を検出するための圧力計が設けられている。これらのガス導入系および排気系の具体的な構成例については後述する。
【0050】
このように構成された基板処理装置100が稼働すると,ウエハWに対して所定の処理が施される。まず,搬送ユニット側搬送機構132によってカセット容器122A〜122CのいずれかからウエハWが搬出されてオリエンタ126まで搬送される。そして,オリエンタ126で位置決めされたウエハWは,オリエンタ126から搬出されてロードロック室200Mまたは200N内へ搬入される。このとき,必要なすべての処理が完了した処理完了ウエハWがロードロック室200Mまたは200Nにあれば,処理完了ウエハWを搬出してから,未処理ウエハWを搬入する。
【0051】
第1,第2ロードロック室200Mまたは200Nへ搬入されたウエハWは,処理ユニット側搬送機構302によってロードロック室200Mまたは200Nから搬出され,そのウエハWが処理される処理室200へ搬入されて所定の処理が実行される。そして,処理室200での処理が完了した処理済ウエハWは,処理ユニット側搬送機構302によって処理室200から搬出される。この場合,そのウエハWが連続して複数の処理室200での処理が必要な場合には,次の処理を行う他の処理室200へウエハWを搬入し,その処理室200での処理が実行される。
【0052】
そして,必要なすべての処理が完了した処理完了ウエハは,第1,第2ロードロック室200Mまたは200Nへ戻される。ロードロック室200Mまたは200Nへ戻された処理済ウエハWは,搬送ユニット側搬送機構132によって元のカセット容器122A〜122Cに戻される。
【0053】
(処理室および共通搬送室の配管の構成例)
次に,各処理室200A〜200Dおよび共通搬送室300のガス導入系および排気系にかかる配管の具体的な構成例について図面を参照しながら説明する。なお,本実施形態においては,処理室200A〜200Dのうちの例えば2つの処理室200A,200BがPVD処理室として構成されており,他の2つの処理室200C,200DがCVD処理室として構成されている。
【0054】
PVD処理室では高真空度例えば1×10−9〜1×10−7Torrの到達圧力が要求されるPVD処理が行われる。このようなPVD処理としては例えばCu,W,Ti等をスパッタ成膜する成膜処理が挙げられる。一方,CVD処理室では低真空度例えば50〜100mTorrの到達圧力が要求されるCVD処理が行われる。このようなCVD処理としては,例えばTi,TiN,TaN,WN,W等を成膜する成膜処理が挙げられる。
【0055】
図2は処理室200A〜200Dおよび共通搬送室300の配管構成の概略を説明するためのブロック図である。ここで,PVD処理室である処理室200A,200Bの配管構成は同様であり,CVD処理室である処理室200C,200Dの配管構成は同様である。このためPVD処理室については代表的に処理室200Aの配管構成を説明し,CVD処理室については代表的に処理室200Dの配管構成を説明する。
【0056】
まず,処理室200A,200Dのガス導入系および排気系にかかる配管構成について説明する。図2に示すように,処理室200A,200Dにはそれぞれ,各室内の圧力を検知する圧力センサ260A,260D,各室内へ不活性ガスや処理ガスなど所定のガスを導入可能なガス導入系210A,210D,および各室内を排気するための排気系220A,220Dが設けられている。なお,本明細書において不活性ガスは,化学変化を起こしにくい気体を意味するものであり,例えばArガス,Neガス,Heガスなどの第18族元素(希ガス)のみならず,Nガスなども含む。
【0057】
ガス導入系210Aは例えばガス供給源212Aをマスフローコントローラ214Aとガス導入バルブ216Aを介して処理室200A(PVD処理室)に接続して構成される。ガス供給源212Aから処理室200Aへ導入されるガスの例としては,プラズマ励起のためのArガスが挙げられる。なお,ガス導入系210Aは図2に示す構成に限られるものではない。
【0058】
排気系220Aは例えば真空ポンプ222Aを圧力調整バルブ224Aを介して処理室200Aに接続して構成される。真空ポンプ222Aは例えばターボ分子ポンプなどの主ポンプとこの主ポンプの排気側に接続されるドライポンプなどの補助ポンプで構成される。例えば補助ポンプによって処理室200A内を一定の真空度まで排気する粗引き排気を行い,主ポンプによって処理室200A内を更に高い真空度にまで排気する本引き排気を行う。また,真空ポンプ222Aにクライオポンプを組み込むようにしてもよい。主ポンプ及び補助ポンプとともにクライオポンプを作動させることによって,処理室200Aの内部を極めて高い真空度(例えば,1×10−9〜1×10−7Torr)に調整することができる。
【0059】
ガス導入系210Dはガス導入系210Aと同様に構成される。すなわちガス導入系210Dは例えばガス供給源212Dをマスフローコントローラ214Dとガス導入バルブ216Dを介して処理室200D(CVD処理室)に接続して構成される。ガス供給源212Dから処理室200Dへ導入されるガスの例としては,TiClなどの処理ガスの他,パージガスや圧力調整ガスとして用いられる不活性ガスが挙げられる。なお,ガス導入系210Dは図2に示す構成に限られるものではない。
【0060】
排気系220Dは例えば真空ポンプ222DをAPC(Auto Pressure Controller)バルブ224Dを介して処理室200Dに接続して構成される。真空ポンプ222Dは例えばメカニカルブースタポンプなどの主ポンプとこの主ポンプの排気側に接続されるドライポンプなどの補助ポンプで構成される。例えば補助ポンプによって処理室200D内を一定の真空度まで排気する粗引き排気を行い,主ポンプによって処理室200D内を更に高い真空度にまで排気する本引き排気を行う。APCバルブ224Dは,処理室200Dの内部にガス導入系210Dから所定のガスが導入されたときにその内部の圧力が目標のレベル(例えば,5Torr)に維持されるように,自動的にバルブ弁の開度を変化させて排気コンダクタンスを調整する。
【0061】
次に,共通搬送室300のガス導入系および排気系にかかる配管構成について説明する。図2に示すように共通搬送室300には,その室内の圧力を検知する圧力センサ(P)360,室内へパージガスなど所定のガスを導入可能なガス導入系310,室内を排気するための排気系320が設けられている。
【0062】
ガス導入系310は例えばガス供給源312をマスフローコントローラ314とガス導入バルブ316を介して共通搬送室300に接続して構成される。ガス供給源312から共通搬送室300へ導入されるガスの例としては,パージガスや圧力調整ガスとして用いられる不活性ガスが挙げられる。なお,ガス導入系310は図2に示す構成に限られるものではない。
【0063】
排気系320は例えば真空ポンプ322を圧力調整バルブ324を介して共通搬送室300に接続して構成される。真空ポンプ322は例えばターボ分子ポンプなどの主ポンプとこの主ポンプの排気側に接続されるドライポンプなどの補助ポンプで構成される。例えば補助ポンプによって共通搬送室300内を一定の真空度まで排気する粗引き排気を行い,主ポンプによって共通搬送室300内を更に高い真空度にまで排気する本引き排気を行う。
【0064】
また,共通搬送室300には,上記排気系320に加えて,室内を真空圧力にするための気体溜め込み式真空排気系340が設けられている。この気体溜め込み式真空排気系340は,共通搬送室300内の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネル342,捕捉しようとする気体の凝結温度以下で設定される凝縮温度(冷却温度)になるようにクライオパネル342を冷却するための冷却器(パネル冷却器)344,クライオパネル342を再生温度(加熱温度)になるように加熱するための加熱器(パネル加熱器)346により構成される。
【0065】
このようなクライオパネル342は例えば矩形の板状に構成される。このように,本実施形態ではクライオパネル342を共通搬送室300の内部に配置することで,共通搬送室300の外部にクライオポンプ(クライオパネル)を設けていた従来に比して,不純物(不所望の水分子や共通搬送室300に入り込んだ処理ガスの残留ガスなどの気体分子)を効率よく除去することができる。すなわち,共通搬送室300の大きさに応じてクライオパネル342の形状や大きさを比較的自由に設定することができるため,搬送室300の内部から不純物ガスを効率よく除去して,搬送室300の内部を極めて高い真空状態にすることができる。
【0066】
また,上記冷却器344は,例えばクライオパネル342に設けた流路に所定の冷媒を循環供給可能な冷却器(冷凍装置)で構成する。クライオパネル342の冷却に用いる冷媒は,クライオパネル342の凝縮温度(冷却温度)に応じて選択される。具体的には例えば液体窒素(沸点約−197℃)や液体He(沸点約−279℃)が冷媒として用いられる。
【0067】
なお,冷却器344は,上述したものに限られるものではなく,例えばクライオパネル342に設けた伝熱棒を介して冷却する冷却器(冷凍装置)で構成してもよい。加熱器346は,例えばクライオパネル342に設けた伝熱棒を介して加熱するヒータなどで構成する。なお,加熱器346の構成もこれに限られるものではなく,例えばクライオパネル342に設けた流路に所定の加熱媒体を循環供給可能な構成にしてもよい。
【0068】
このように共通搬送室300に排気系320と気体溜め込み式真空排気系340を備えることによって,処理室200A〜200Dに比べて容積が大きい共通搬送室300でもその内部を極めて高い真空度(例えば,1×10−8〜1×10−7Torr)に調整することができる。
【0069】
上記圧力センサ260A,260D,360はそれぞれ,例えば隔膜真空計(キャパシタンスマノメータなど)によって構成される。これら圧力センサ260A,260D,360からの出力は,基板処理装置100の制御部400へ送られる。また,マスフローコントローラ214A,214D,314,ガス導入バルブ216A,216D,316,真空ポンプ222A,222D,322,圧力調整バルブ224A,324,APCバルブ224D,冷却器344,加熱器346はそれぞれ,制御部400の制御信号によって制御される。制御部400は,圧力センサ260A,260D,360からの出力に基づいて各室のガスの給排気および各室の圧力制御を行う。
【0070】
(ウエハ処理の具体例)
次に,このように構成された基板処理装置100においてウエハWに対して行われる処理の具体例について説明する。ここでは処理室200C,200Dは,ウエハWに形成されているコンタクトホール内にTi膜およびTiN膜をCVD処理によって成膜するCVD処理室であり,処理室200A,200Bは,そのTiN膜上にCu膜(シード膜)をPVD処理によって成膜するPVD処理室である場合を例に挙げて説明する。なお,PVD処理室に導入される処理ガスは,一般的にはプラズマの形成に必要なArガスなどの不活性ガスであるため,PVD処理室外にその処理ガスが流出したとしても他室が汚染される虞はない。これに対して,CVD処理室に導入される各種処理ガスは,CVD処理室外に流出してしまうと他室を汚染する可能性の高いものであり,その一例としてはTiClガスがある。
【0071】
上記のように,搬送ユニット側搬送機構132によってカセット容器122A〜122Cのいずれかから取り出された未処理のウエハWは,オリエンタ126で位置決めされた後,第1,第2ロードロック室200Mまたは200Nのいずれかを経由して共通搬送室300内に搬入される。
【0072】
共通搬送室300内に搬入されたウエハWは,処理ユニット側搬送機構302によってまずTi膜およびTiN膜をCVD処理によって成膜するために処理室200C,200Dのいずれか一方,例えば処理室200D内に搬入される。このとき,処理室200D内に既にTi膜およびTiN膜の成膜処理が施されたウエハWがあれば,未処理のウエハWはその処理済みのウエハWと入れ替えられる。そして,処理室200D内にてウエハWに対するCVD処理,ここではその一例としてTi膜およびTiN膜の成膜処理が施される。
【0073】
次に,処理室200DにてTi膜およびTiN膜の成膜処理が施されたウエハWは,処理ユニット側搬送機構302によって処理室200Dから搬出され,処理室200A,200Bのいずれか一方,例えば処理室200A内へ搬入される。このとき,処理室200A内に既にCu膜の成膜処理が施されたウエハWがあれば,処理室200Dから搬送されてきたウエハWはその処理済みのウエハWと入れ替えられる。そして,処理室200A内にてウエハWに対してPVD処理,ここではCu膜の成膜処理が施される。
【0074】
このようにTi膜,TiN膜,Cu膜の連続処理が完了したウエハWは,上記のように,処理ユニット側搬送機構302によって処理室200Aから第1,第2ロードロック室200Mまたは200Nのいずれか一方に搬送され,更に搬送ユニット側搬送機構132によって元のカセット容器122A〜122Cに戻される。
【0075】
こうして,基板処理装置100では一連の成膜処理が連続して繰り返し行われる。その際,ウエハWに対するPVD処理は,処理室200A,200Bのうち空いている方の処理室にて行われ,ウエハWに対するCVD処理は,処理室200C,200Dのうち空いている方の処理室にて行われる。また,共通搬送室300と処理室200A〜200Dとの間でウエハWを搬出入するとき,および,共通搬送室300と第1,第2ロードロック室200Mまたは200Nとの間でウエハWを搬出入するときには,ゲートバルブ202A〜202D,202M,202Nのうち2つ以上が同時に開状態にならないように制御される。すなわち,いずれか1つのゲートバルブが開状態の時には他のゲートバルブは必ず閉状態になっている。
【0076】
ここで,共通搬送室300と各処理室200A〜200Dとの間でウエハWを搬出入する際の各室でのガスの給排気制御および各室の圧力制御について説明する。プロセス処理中の室内調整圧力(以下,「プロセス圧力」という)について,PVD処理室である処理室200A,200Bと,CVD処理室である処理室200C,200Dとを比較すると両者は下記のように相違する。例えば処理室200A,200BにてCu膜をPVD処理によって成膜する時のプロセス圧力は0.5mTorr程度であり,処理室200C,200DにてTi膜およびTiN膜をCVD処理によって成膜する時のプロセス圧力は5Torr程度である。
【0077】
また上記のように,PVD処理室には,室外に流出しても他室が汚染される虞のないArガスなどの不活性ガスが導入されるのに対して,CVD処理室には,室外に流出してしまうと他室が汚染されてしまう可能性の高いガス(例えばTiClガス)が処理ガスとして導入される。
【0078】
このため本実施形態においては,ゲートバルブ202C,200Dを開いて共通搬送室300と処理室200C,200D(CVD処理室)との間でウエハWの受け渡しを行う場合,常に共通搬送室300の雰囲気がCVD処理室側に流れるように,共通搬送室300とCVD処理室の両方または一方の圧力を調整する。
【0079】
具体的には,上述した基板処理装置100の一連の動作中,ゲートバルブ202A〜202D,202M,202Nがすべて閉じているときには,排気系320および気体溜め込み式真空排気系340によって共通搬送室300内を排気して一定の圧力に維持する。
【0080】
そして,共通搬送室300とCVD処理室例えば処理室200Dとの間でウエハWの受け渡しを行う場合には,ゲートバルブ202Dを開く直前に,処理室200D側ではガス導入系210Dから室内への処理ガスの導入を停止して,APCバルブ224Dを全開にする。したがって,処理室200D内は排気系220Dによって到達圧力(例えば50〜100mTorr)まで排気される。
【0081】
一方,共通搬送室300側では,ガス導入系310からArガス,Neガスなどの不活性ガスを室内に導入しつつ排気系320の圧力調整バルブ324の開度を調整して排気量を減らして排気速度を下げる。これによって共通搬送室300内の圧力が上昇して,処理室200Dの到達圧力より高い圧力(例えば圧力差50mTorr)になったところでゲートバルブ202Dを開いてウエハWの受け渡しを行う。
【0082】
このように共通搬送室300と処理室200C,200Dとの圧力調整を行うことによって,共通搬送室300から処理室200C,200Dへ不活性ガスが流れるようになり,処理室200C,200Dから共通搬送室300への処理ガスおよびパーティクルの流入を抑えることができる。
【0083】
ただし,処理ガスやパーティクルが共通搬送室300に流入することを完全には防止できない。例えば処理室200C,200DにてCVD処理が終了したウエハWの上には僅かではあるが処理ガスが付着して残留しているため,ウエハWを共通搬送室300に搬送する際に,ウエハWとともに処理ガスが共通搬送室300に入り込んでしまう虞がある。
【0084】
上記のように共通搬送室300の排気系320の排気量を減らして排気速度を下げると,処理室200C,200Dから共通搬送室300に流入した処理ガスがそのまま残留する可能性が高まる。しかも,共通搬送室300の内部のHOやOなどの大気中分子については,元来,排気系320によって排気することは容易ではなく,その排気量を減らすと更に多くの大気中分子が共通搬送室300内に残留することになる。このように処理ガスやHO,Oなどの不純物ガスを共通搬送室300内から取り除くことができなければ,搬送中の他のウエハWの表面が酸化したり,処理ユニット側搬送機構302の搬送アームが腐食したりするなどの不具合が発生する虞がある。
【0085】
そこで本実施形態においては,共通搬送室300に対してガス供給系310からArガスなどの不活性ガスを導入しつつ,排気系320によって共通搬送室300内を排気するとともに,共通搬送室300内に配設された気体溜め込み式真空排気系340のクライオパネル342を冷却器344によって冷却して,室内の気体(例えばHO,処理ガスの残留ガスなどの不純物ガス)を選択的に凝縮捕捉する。このときクライオパネル342の温度を,上記不活性ガスを捕捉せずに処理ガスの残留ガスやHO,Oなどの不純物ガスを捕捉する凝縮温度(冷却温度)に調整する。
【0086】
これによってCVD処理室から共通搬送室300への処理ガスやパーティクルの流入を抑えることができるとともに,もし処理ガスやパーティクルの流入があってもこれらをクライオパネル342によって捕捉することができる。またHOやOなどの大気中分子についてもクライオパネル342によって捕捉することができる。したがって,共通搬送室300をより清浄な状態に保つことができる。
【0087】
ところで,もし共通搬送室300内にクライオパネル342を配設しない場合には,例えば共通搬送室300内の圧力をCVD処理室内の圧力よりも高くするために,共通搬送室300の排気量を減らして排気速度を下げると,共通搬送室300内に残留するHOやOなどの不純物ガスの濃度が相対的に高くなってしまう虞がある。この場合,共通搬送室300の外部に排気管を介して一般的なクライオポンプを設けても,排気管から排出される排気量が少ないため,共通搬送室300内に残留するHOやOを十分に除去することができない。この点,本実施形態によれば,共通搬送室300内にクライオパネル342を直接配置するので,たとえ排気量を少なくして排気速度を下げても,HOやOなどをクライオパネル342によって直接捕捉できる。これにより,HOやOなどの不純物ガスの濃度を高めることなく,共通搬送室300内の圧力をCVD処理室内の圧力よりも高くすることができる。
【0088】
また,共通搬送室300とPVD処理室例えば処理室200Aとの間でウエハWの受け渡しを行う場合には,ゲートバルブ202Aを開く直前に,処理室200A側ではガス導入系210Aから室内への処理ガスの導入を停止する。したがって,処理室200A内は排気系220Aによって到達圧力(例えば,1×10−9〜1×10−7Torr)まで排気される。
【0089】
一方,共通搬送室300側でも,ガス導入系310から室内へのArガスなどの不活性ガスの導入を停止する。これによって共通搬送室300内は排気系320によって排気され,更に室内の不純物が気体溜め込み式真空排気系340のクライオパネル342に捕捉され,到達圧力(例えば,1×10−8〜1×10−7Torr)に調整される。このようにして共通搬送室300と処理室200Aがともに到達圧力に達したところでゲートバルブ202Aを開いてウエハWの受け渡しを行う。
【0090】
このとき,共通搬送室300と処理室200Aの到達圧力は等しくはないが,その差は極めて僅かであるため両室の間で雰囲気の移動はほとんど生じない。また,上記のように本実施形態にかかる共通搬送室300の内部にはクライオパネル342が配設されているため,共通搬送室300内の不純物はこのクライオパネル342に効率よく捕捉される。したがって,共通搬送室300内は極めて清浄度が高い状態にあり,ゲートバルブ202Aを開いて共通搬送室300と処理室200Aを連通させたときに,処理室Dよりも高い清浄度が要求される処理室200Aが共通搬送室300の雰囲気によって汚染されることはない。
【0091】
以上のように,共通搬送室300と各処理室200A〜200Dとの間でウエハWを搬出入する際に各室の圧力を制御することによって,室間のクロスコンタミネーションを防止することができる。すなわち,共通搬送室300とCVD処理室との間でウエハの搬出入を行う際は,共通搬送室300の内部の圧力をCVD処理室の内部の圧力よりも高く調整するため,CVD処理室内に残留する不純物が共通搬送室300内に流れ込むことを防止できる。さらに,共通搬送室300の内部の気体のうち不活性ガスを補足することなく不純物ガス(例えばHOや処理ガスの残留ガスなど)をクライオパネル342に選択的に凝縮捕捉する。このため,共通搬送室300とCVD処理室との間でウエハの搬出入を行っても,共通搬送室300内は常に清浄な状態に保たれる。
【0092】
これにより,共通搬送室300とCVD処理室よりも高い清浄度が要求されるPVD処理室との間でウエハの搬出入を行っても,CVD処理室内に残留する不純物が共通搬送室300内を介してPVD処理室内に流れ込むことを防止できる。この結果,CVD処理室,PVD処理室にてウエハWに対して良好な膜質のTi膜,TiN膜,Cu膜などを成膜することができ,かつウエハWを清浄な状態のままカセット容器122A〜122Cに戻すことができる。
【0093】
(気体溜め込み式真空排気系の再生処理の具体例)
ところで,上記のように基板処理装置100がウエハWに対する所定の処理を連続して実行していくうちに,クライオパネル342の表面に凝縮捕捉されている不純物の量が増加していき,これに応じて次第に不純物ガスを捕捉する能力が低下していく。このためクライオパネル342が捕捉して溜め込んだ不純物の量が一定以上になったときにクライオパネル342からその不純物ガスを取り除く気体溜め込み式真空排気系340の再生処理(クライオパネルの再生処理)が必要となる。
【0094】
特に,異種の処理が行われる複数の処理室200A〜200Dが接続される共通搬送室300には室間のクロスコンタミネーションを防止するために高い清浄度が求められている。また,複数の処理室200A〜200Dが共通接続される共通搬送室300の内部空間は,各処理室200A〜200Dに比べて格段に広い。このような共通搬送室300の内部に配設されたクライオパネル342はより多くの不純物を凝縮捕捉することになり,その分クライオパネル342の再生を行う頻度が高まる。したがって,クライオパネル342の再生に長時間を要してしまうと,基板処理装置のスループットが大きく低下することになる。
【0095】
このようなクライオパネル342の再生は,クライオパネル342を加熱器346で加熱することで不純物(処理ガスやHOなど)を気化させて放出することにより行われる。ところが,本実施形態にかかるクライオパネル342は,処理室の外部に備えられて単体で動作する一般的なクライオポンプとは異なり,共通搬送室300内に露出するように配設される。このため,例えば図3に示すように,共通搬送室300の内部に不活性ガスの流れを形成しないで高真空状態(分子流領域)に保ったままクライオパネル342を加熱して不純物(図3では黒丸で示す)を気化させて放出させると,放出した不純物が共通搬送室300の内壁(例えば側壁,天井壁,底壁の内側表面)で再び凝縮固化して付着する虞がある。
【0096】
共通搬送室300の内壁に付着した不純物がHO,Oなどの大気中成分であれば,クライオパネル342を加熱した後に共通搬送室300自体を加熱することによってこれを除去することもできるが,一旦付着したHOなどを除去するには長時間を要するという問題がある。また,共通搬送室300の内壁に処理ガスの成分が付着した場合には,共通搬送室300を加熱するだけでは除去しきれずに残留してしまうという問題がある。この場合は,共通搬送室300の内壁を別途洗浄処理しなければならない。
【0097】
そこで本実施形態にかかる気体溜め込み式真空排気系340の再生処理では,例えば図4に示すように共通搬送室300内に不活性ガス(図4では白丸で示す)を導入しながら排気することで,共通搬送室300内の圧力を高めつつ不活性ガスの流れ(粘性流。図4では白抜き矢印で示す)を形成する。この状態でクライオパネル342を加熱してクライオパネル342から不純物を放出させる。そして,放出された不純物は,不活性ガスの粘性流に乗って共通搬送室300の外部に排出されることになる。したがって,放出された不純物が共通搬送室300の内壁に付着することが防止される。
【0098】
このような本実施形態にかかる気体溜め込み式真空排気系340の再生処理の具体例について図面を参照しながら説明する。図5は,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理の具体例を示すフローチャートである。なお,この再生処理は,所定のプログラムに基づいて制御部400が基板処理装置100の各部を制御することによって行われる。
【0099】
まずステップS110にて共通搬送室300内に不活性ガスを導入しながら排気を行う。具体的には図2に示すガス導入系310によって共通搬送室300内に不活性ガス(例えばArガス)を所定流量導入しながら,共通搬送室300内を排気系320によって排気する。これにより,共通搬送室300内の圧力が上昇するとともに,室内に上方から下方に向かう不活性ガスの粘性流が生じる。
【0100】
このとき共通搬送室300内に不活性ガスを導入して室内の圧力を上昇させるため,排気系320の真空ポンプ322が主ポンプと補助ポンプで構成されている場合,低真空領域での運転に適した補助ポンプ例えばドライポンプのみを用いて共通搬送室300内を排気するようにしてもよい。
【0101】
また,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理中に共通搬送室300内を排気するための低真空対応の排気系を別途備えるようにしてもよい。このように構成する場合には,再生処理中には,排気系320を停止させてその再生処理用の排気系を作動させるようにする。
【0102】
ガス導入系310から共通搬送室300内に導入する不活性ガスの流量については,クライオパネル342から放出された不純物をすべて押し流すことができる粘性流を共通搬送室300内に形成するためにもできるだけ多い方が好ましい。ただし,その流量は排気系320の排気能力に応じて設定される。本実施形態においては,ガス導入系310から共通搬送室300内に例えば3slm(standard liter/min)程度の流量の不活性ガスを導入する。
【0103】
次いでステップS120にて共通搬送室300内の圧力が所定の圧力にまで上昇したか否かを圧力センサ360からの検出圧力に基づいて判断する。所定の圧力にまで上昇していないと判断した場合にはステップS110の処理に戻り,所定の圧力にまで上昇したと判断した場合にはステップS130にて共通搬送室300内を所定の圧力に維持する。具体的には,例えばガス導入バルブ316の開度を制御して不活性ガスの導入量を調整するとともに,圧力調整バルブ324の開度を制御して排気量を調整して所定の圧力を維持する。
【0104】
ところで,ステップS120にて制御部400が判断する共通搬送室300内の圧力の値については,クライオパネル342から放出される不純物の平均自由行程と共通搬送室300の大きさに応じて設定することが好ましい。具体的には,クライオパネル342から放出される不純物の平均自由行程がクライオパネル342と共通搬送室300の内壁(共通搬送室300を構成する容器の内側表面)との間の最短距離よりも短くなるように共通搬送室300の内部の圧力を調整する。本実施形態においては,共通搬送室300の内部の圧力を0.1〜10Torrの範囲内の所定の圧力,例えば2Torrに調整するようにして,ステップS120にて共通搬送室300内の圧力が2Torrにまで上昇したか否かを判断する。
【0105】
このように共通搬送室300内の圧力を調整すれば,クライオパネル342から放出された不純物は,共通搬送室300の内壁に達する前に高い確率で上記粘性流を構成する気体分子に衝突するため,粘性流とともに共通搬送室300の外部へ排出されることになる。
【0106】
なお,共通搬送室300の内部の圧力を0.1〜10Torrの範囲内の所定の圧力に調整すれば,共通搬送室300の内部の圧力がクライオパネル342に捕捉されている不純物の飽和蒸気圧より低い圧力となるため,クライオパネル342から活発に不純物を放出させることができる。
【0107】
共通搬送室300内の圧力を高い状態に保ったまま,ステップS140にて加熱器346によってクライオパネル342を所定時間だけ加熱する。このときのクライオパネル342の再生温度(加熱温度)は不純物が気化して放出される温度(例えば40℃〜100℃)に設定される。なお,この再生温度については,高ければ高いほどクライオパネル342からより多くの不純物を放出することができる。ただし,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理が完了した後,クライオパネル342を再び極低温にまで冷却する必要があるため,その冷却時間を短縮するためにも再生温度を適切に調節することが好ましい。クライオパネル342に捕捉されている不純物のうち気化温度が比較的高いHOについても,共通搬送室300内の圧力が大気圧よりも格段に低い圧力例えば2Torrに調整されているため,クライオパネル342を40℃にまで加熱すれば気化して放出される。
【0108】
ステップS140にて所定時間の加熱が終了すると,ステップS150にて共通搬送室300内への不活性ガスの導入を停止して一連の再生処理を終了する。
【0109】
このような再生処理によれば,クライオパネル342から大量の不純物が放出されたとしても,その放出された不純物のすべてを不活性ガスの粘性流に乗せて共通搬送室300の外部へ排出することができるため,放出された不純物が共通搬送室300の内壁に付着することを防止できる。したがって,クライオパネル342を再生した後に,共通搬送室300の内壁からHOなどを除去するための作業を省略することができ,クライオパネル342の再生後のリカバリにかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0110】
なお,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理は,図5に示すものに限られるものではない。例えば図6に示すように,上記ステップS150にて共通搬送室300内への不活性ガスの導入を停止した後に,更にステップS160にてクライオパネル342の再生が完了したか否かを判断した上で再生処理を終了するようにしてもよい。
【0111】
この場合,クライオパネル342の再生が完了したか否かは,例えば次のように判断する。すなわち,共通搬送室300に例えば図7に示すように内部の不純物の分圧を測定する分圧測定器(R)362を設け,この分圧測定器362によってクライオパネル342から放出された不純物の分圧を測定し,所定の分圧以下になった時点でクライオパネル342の再生が完了したと判断するようにしてもよい。このような分圧測定器362としては,例えばマスフィルタ型質量分析計(Q−Mass:Quadrupole mass)などの残留ガス分析計(RGA:Residual Gas Analyzers)を用いることができる。
【0112】
この他に,ガス導入系310から共通搬送室300内への不活性ガスの導入を停止するとともに,排気系320による排気も一定時間停止して,共通搬送室300内の圧力上昇率(リークアップレート)を測定し,リークアップレートが所定の値以下になっている場合にクライオパネル342の再生が完了したと判断するようにしてもよい。もし,HOなどの不純物が共通搬送室300内から除去しきれていなければ,リークアップレートが大きくなるため,リークアップレートの測定結果からクライオパネル342の再生完了を的確に判断することができる。
【0113】
そして,ステップS160にてクライオパネル342の再生が完了していないと判断した場合には,ステップS110の処理に戻り,ステップS160にてクライオパネル342の再生が完了したと判断されるまでステップS110〜ステップS160の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
【0114】
また,共通搬送室300の構成は,上述したものに限られるものではない。例えば共通搬送室300の内壁を構成する壁部(例えば側壁,天井壁,底壁)に壁部ヒータを設けるようにしてもよい。壁部ヒータとしては,例えば図8に示すように,共通搬送室300の側壁の外周を覆うように設けられたヒータ370と,天井壁および底壁の外側に設けられたヒータ372,374により構成する。そして,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理において,クライオパネル342を加熱器346で加熱すると同時に共通搬送室300の側壁,天井壁,および底壁もヒータ370,372,374によって加熱する。この場合の共通搬送室300の壁部の設定温度(加熱温度)は,クライオパネル342の再生温度(加熱温度)と同じ温度またはそれ以上にすることが好ましい。例えばクライオパネル342に補足された不純物がHOである場合には,クライオパネル342の再生温度が40℃の場合でも壁部の設定温度は100℃にすることが好ましく,またクライオパネル342の再生温度は壁部の設定温度と同じに100℃にしてもよい。
【0115】
これによれば,もしクライオパネル342から放出された不純物が共通搬送室300の内壁に接触しても,その不純物をそこに固着させることなく上述した不活性ガスの粘性流に乗せて共通搬送室300の外部へ確実に排出することができる。したがって,クライオパネル342を再生した後に,共通搬送室300の内壁からHOなどの不純物を除去するための洗浄処理を行う必要がなくなり,クライオパネル342の再生後に搬送室300を所定の真空度にするなど基板処理装置100を復帰(リカバリ)させるのにかかる時間を更に短縮できる。
【0116】
また,共通搬送室300は,例えば図9のようにガス導入系を共通搬送室300の内部に導入する不活性ガスのガス種を切り替え可能に構成してもよい。図9に示す共通搬送室300は,複数種類(ここでは2種類)の不活性ガスを導入可能なガス導入系380を接続する場合の具体例である。
【0117】
ガス導入系380は,例えば第1ガス供給源382をマスフローコントローラ384とガス導入バルブ386を介して共通搬送室300に接続し,これと並列に第2ガス供給源392をマスフローコントローラ394とガス導入バルブ396を介して共通搬送室300に接続して構成される。
【0118】
そして第1ガス供給源382と第2ガス供給源392はそれぞれ,共通搬送室300の内部へ凝固点の異なる種類のガスを導入するように構成されている。第1ガス供給源382からは,例えばメインの不活性ガスとしてArガス(凝固点約−189℃)が導入されるようになっている。これに対して,第2ガス供給源392からは,サブの不活性ガスとしてArガスよりも凝固点が低いNeガス(凝固点約−249℃)が導入されるようになっている。
【0119】
また,図9に示すクライオパネル342には,その温度を測定するために例えば熱電対などの温度センサ(TS)364を設け,クライオパネル342の温度に応じた不活性ガスの供給制御を行うことができるようになっている。
【0120】
このような図9に示す共通搬送室300において,気体溜め込み式真空排気系340の再生処理は,上述した図5又は図6に示すフローチャートに基づいて行われる。この場合,ステップS110においては,クライオパネル342の温度を温度センサ364によって検出して監視し,検出された温度に応じて,その温度では捕捉されない不活性ガスを選択して導入してもよく,またその温度では捕捉されない不活性ガスを再生処理の途中で切り替えるようにしてもよい。
【0121】
例えばクライオパネル342の再生直前の温度がArガスの凝固点(約−189℃)よりも高い温度の場合には,直ちにメインの不活性ガスであるArガスを共通搬送室300に導入してクライオパネル342の再生処理を開始することができる。
【0122】
これに対して,クライオパネル342の再生直前の温度がArガスの凝固点(約−189℃)よりも低い温度の場合には,直ちにArガスを共通搬送室300に導入すると,Arガスが凝固点よりも高くなるまではArガスがクライオパネル342に補足されるので,共通搬送室300の圧力が上昇するのに多少時間がかかる。この場合,クライオパネル342の温度がArガスの凝固点よりも高くなるまで待ってから共通搬送室300内にArガスを導入するようにしてもよいが,その分多少の待ち時間が発生する。
【0123】
そこで,図9に示す共通搬送室300では,クライオパネル342の再生直前の温度がArガスの凝固点(約−189℃)よりも低い温度の場合には,その温度では補足されないサブの不活性ガスであるNeガスを直ちに導入し,クライオパネル342の温度がArガスが凝固点よりも高くなった時点で,Neガスを止めてArガスの導入に切り替える。
【0124】
これによれば,クライオパネル342の再生直後にNeガスを導入しても,クライオパネル342に捕捉されないため,共通搬送室300の圧力をクライオパネル342の再生直後から上昇させることができるとともに,余計な待ち時間も発生しないので,その分クライオパネル342の再生処理にかかる時間を短縮することができる。
【0125】
ここで,共通搬送室300内に導入する不活性ガスの種類とクライオパネル342の温度との関係を図10に示す。図10によれば,例えばクライオパネル342の温度が−210℃である場合には,そのままNeガスを共通搬送室300に導入し,クライオパネル342の温度が−189℃を超えると,Arガスの導入に切り替える。なお,この場合,クライオパネル342の温度が−189℃を超えても,Arガスに切り替えることなく,Neガスをそのまま導入し続けてもよいが,Arガスの方がNeガスに比べて安価であるため,途中でArガスに切り替えることでランニングコストを低下させることができる点でも有利である。
【0126】
このように共通搬送室300内に粘性流を形成するために,複数の不活性ガスを切り替えて共通搬送室300内に導入することによって,クライオパネルの再生処理を行う直前に,そのクライオパネルの温度がこれから導入しようとするメインの不活性ガスがクライオパネルに捕捉されてしまうほど低温になっている場合であっても,早い段階から別の不活性ガスを導入して再生処理を開始することができる。例えば先ずその低い温度では捕捉されない別の不活性ガスを導入し,その後クライオパネルの温度が上昇してメインの不活性ガスが捕捉されない温度になったら,そのメインの不活性ガスに切り替えて導入することができる。このように,不活性ガスのガス種によって,クライオパネルに捕捉されない温度が異なるので,これを利用して再生処理を開始するタイミングを早めることができ,ランニングコストの低下を図ることもできる。
【0127】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0128】
例えば,本発明にかかる気体溜め込み式真空排気系は,クラスタツール型の基板処理装置の搬送室だけでなくあらゆるタイプの基板処理装置の搬送室に適用することが可能である。また,搬送室に接続される処理室は,上記のPVD処理室およびCVD処理室に限定されず,例えば熱処理室や異物除去処理室であってもよい。また,搬送される基板はウエハに限定されず,LCD基板,ガラス基板等についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は,搬送室に備えられた気体溜め込み式排気系の再生方法およびこれを用いた基板処理装置の制御方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態における処理室および共通搬送室の配管構成の概略を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示す共通搬送室内に不活性ガスを形成しない場合にクライオパネルから放出された不純物の挙動を説明するための模式図である。
【図4】図2に示す共通搬送室内に不活性ガスを形成した場合にクライオパネルから放出された不純物の挙動を説明するための模式図である。
【図5】同実施形態における気体溜め込み式真空排気系の再生処理の具体例を示すフローチャートである。
【図6】同実施形態における気体溜め込み式真空排気系の再生処理の他の具体例を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態における共通搬送室の変形例を示すブロック図であって,分圧測定器を設けた場合の具体例である。
【図8】同実施形態における共通搬送室の変形例を示すブロック図であって,壁部ヒータを設けた場合の具体例である。
【図9】同実施形態における共通搬送室の変形例を示すブロック図であって,2種類の不活性ガスの導入が可能にした場合の具体例である。
【図10】図9に示す共通搬送室内に導入する不活性ガスの種類とクライオパネルの温度との関係を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0131】
100 基板処理装置
110 処理ユニット
120 搬送ユニット
122(122A〜122C) カセット容器
124(124A〜124C) カセット台
126 オリエンタ
130 搬送室
132 搬送ユニット側搬送機構
200(200A〜200D) 処理室
200M 第1ロードロック室
200N 第2ロードロック室
202(202A〜202D) ゲートバルブ
202M,202N 真空側ゲートバルブ
204M,204N 大気側ゲートバルブ
210A,210D ガス導入系
212A,212D ガス供給源
214A,214D マスフローコントローラ
216A,216D ガス導入バルブ
220A,220D 排気系
222A,222D 真空ポンプ
224A 圧力調整バルブ
224D APCバルブ
260A,260D 圧力センサ
300 共通搬送室
302 処理ユニット側搬送機構
310 ガス導入系
312 ガス供給源
314 マスフローコントローラ
316 ガス導入バルブ
320 排気系
322 真空ポンプ
324 圧力調整バルブ
340 気体溜め込み式真空排気系
342 クライオパネル
344 冷却器(パネル冷却器)
346 加熱器(パネル加熱器)
360 圧力センサ
362 分圧測定器
364 温度センサ
370,372,374 ヒータ
380 ガス導入系
382 第1ガス供給源
384 マスフローコントローラ
386 ガス導入バルブ
392 第2ガス供給源
394 マスフローコントローラ
396 ガス導入バルブ
400 制御部
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の処理を施す処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室に設けられた気体溜め込み式真空排気系の再生方法であって,
前記搬送室は,その内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,内部の気体を前記搬送室の外部に排出する排気系と,を備え,
前記気体溜め込み式真空排気系は,前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,このクライオパネルを加熱するパネル加熱器と,を備え,
前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に前記不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成して,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを所定の再生温度以上に加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項2】
前記気体溜め込み式真空排気系の再生を行っている間,前記クライオパネルから放出された不純物の平均自由行程が前記クライオパネルと前記搬送室の内壁との距離よりも短くなるように,前記搬送室の内部の圧力を調整することを特徴とする請求項1に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項3】
前記搬送室の内部の圧力は,0.1〜10Torrの範囲内の所定の圧力に調整することを特徴とする請求項2に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項4】
前記搬送室は,その内壁を構成する壁部を加熱する壁部ヒータを設け,
前記気体溜め込み式真空排気系の再生を行っている間,前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱するとともに,前記壁部ヒータによって前記壁部を加熱することを特徴とする請求項1に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項5】
前記ガス導入系は,凝固点の異なるガス種の不活性ガスを切り替え可能に構成し,前記クライオパネルには,その温度を検出する温度センサを設け,
前記クライオパネルの温度が上昇している間に前記温度センサで検出される温度に応じて,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に導入する前記不活性ガスのガス種を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項6】
前記クライオパネルを加熱した際の温度が所定温度に達するまでの間は,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスとしてNeガスを導入し,前記クライオパネルの温度が前記所定温度を超えたら,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスとしてArガスを導入することを特徴とする請求項5に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項7】
前記搬送室にその内部の不純物の分圧を測定する分圧測定器を設け,
前記分圧測定器によって前記クライオパネルから気化放出された不純物の分圧を測定して監視し,その分圧が所定の値以下にまで低下した時点で再生が完了したと判断することを特徴とする請求項1に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項8】
前記クライオパネルを加熱し始めてから所定時間経過後に,前記搬送室の内部への前記不活性ガスの導入を停止するとともに前記排気系による前記搬送室の内部の排気を一定時間停止して,前記搬送室の内部の圧力を測定して,その一定時間内で圧力が所定の値以下であれば再生が完了したと判断することを特徴とする請求項1に記載の気体溜め込み式真空排気系の再生方法。
【請求項9】
基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,
前記搬送室は,
前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,
前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,
前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,
前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器と,を備え,
前記搬送室と前記各処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記ガス導入系によって前記搬送室に前記不活性ガスを導入するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の気体のうち前記不活性ガスを補足することなく不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を前記各処理室の内部の圧力よりも高く調整し,
前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に前記不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成して,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記複数の処理室は,前記基板に対して化学気相成長法による処理を行う処理室であることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置の制御方法。
【請求項11】
基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,
前記搬送室は,
前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,
前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,
前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,
前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器と,を備え,
前記搬送室と前記各処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記不活性ガスを導入することなく前記排気系によって前記搬送室の内部の気体をこの搬送室の外部に排出するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を到達圧力に調整し,
前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成し,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法。
【請求項12】
前記複数の処理室は,前記基板に対して物理気相成長法による処理を行う処理室であることを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置の制御方法。
【請求項13】
基板に所定の処理を施す複数の処理室と,これらの処理室に共通接続されて各処理室に対して前記基板の搬出入を行う搬送室と,を備えた基板処理装置の制御方法であって,
前記搬送室は,
前記搬送室の内部に不活性ガスを導入するガス導入系と,
前記搬送室の内部の気体を外部に排出する排気系と,
前記搬送室の内部に配設されるとともにパネル冷却器に接続され,前記搬送室の内部の気体を凝縮温度に応じて選択的に凝縮捕捉するクライオパネルと,
前記クライオパネルを加熱するパネル加熱器と,を備え,
前記複数の処理室は,
低真空度で処理が行われる第1処理室と,
高真空度で処理が行われる第2処理室と,を有し,
前記搬送室と前記第1処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記ガス導入系によって前記搬送室に前記不活性ガスを導入するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の気体のうち前記不活性ガスを補足することなく不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を前記第1処理室の内部の圧力よりも高く調整し,
前記搬送室と前記第2処理室との間で前記基板の搬出入を行う際にはその直前に,前記不活性ガスを導入することなく前記排気系によって前記搬送室の内部の気体をこの搬送室の外部に排出するとともに,前記パネル冷却器によって前記クライオパネルを所定の凝縮温度に冷却して前記搬送室の内部の不純物ガスを選択的に凝縮捕捉して,前記搬送室の内部の圧力を少なくとも前記第2処理室の内部の圧力に近い圧力又はそれよりも低い圧力に調整し,
前記クライオパネルの再生処理を行う際には,前記ガス導入系によって前記搬送室の内部に不活性ガスを導入しながら前記排気系によって前記搬送室の内部を排気して前記搬送室の内部に前記不活性ガスの流れを形成し,その状態のまま前記パネル加熱器によって前記クライオパネルを加熱してこのクライオパネルに捕捉されている不純物を気化放出させて,前記不活性ガスの流れに乗せて前記搬送室の外部に排出することを特徴とする基板処理装置の制御方法。
【請求項14】
前記第1処理室は,前記基板に対して化学気相成長法による処理を行う処理室であり,
前記第2処理室は,前記基板に対して物理気相成長法による処理を行う処理室であることを特徴とする請求項13に記載の基板処理装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−197266(P2009−197266A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39149(P2008−39149)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】