説明

気化原料供給装置、これを備える基板処理装置、及び気化原料供給方法

【課題】キャリアガス中の液体原料の蒸気の飽和度を向上可能な気化原料供給装置を提供する。
【解決手段】液体原料を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクを第1の温度に制御する第1の温度制御部と、前記貯留タンク内にキャリアガスを導入するキャリアガス導入管と、前記貯留タンクに接続され、前記キャリアガス導入管から前記貯留タンク内に導入された前記キャリアガスに前記液体原料の蒸気が含まれることにより生成される処理ガスを前記貯留タンクから流出させる処理ガス導出管と、前記処理ガス導出管が接続される流入口、前記流入口から流入する前記処理ガスを流出させる流出口を備える容器と、前記容器内の前記流入口と前記流出口の間に設けられ、前記処理ガスの流れを妨げる障害部材と、前記容器を前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御する第2の温度制御部とを備える気化原料供給装置により上述の課題が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体原料を気化することにより得られる気体原料を供給する気化原料供給装置、これを備える基板処理装置、及び気化原料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に使用される半導体製造装置には、例えば溶剤や疎水化処理剤などの常温で液体の原料を気化(又は蒸発)させて気体原料として用いるものがある。液体原料を気化するため、例えば、キャリアガスにより液体をバブリングすることによりキャリアガス中に液体の蒸気を取り込むバブラータンクが知られている(例えば特許文献1及び2)。バブラータンクは、液体を貯留するタンクと、タンク内に貯留される液体中にキャリアガスを導入するキャリアガス導入管と、キャリアガス導入管からタンク内に導入され、液体原料の蒸気を取り込んだキャリアガスを半導体製造装置の処理室へ供給する供給配管とを有している(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−22905号公報
【特許文献2】特開2011−44671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バブラータンクにおいては、タンク内に貯留される液体の中をキャリアガスが流れる際に、キャリアガス中に液体の蒸気が取り込まれる。例えばキャリアガスの流量が多く、タンク内を大きな流速でキャリアガスが流れる場合には、キャリアガス中に蒸気が飽和していないおそれがある。この場合には、所望の量の原料を供給することができず処理ガスの濃度を制御することが困難な事態となる。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされ、キャリアガス中の液体原料の蒸気の飽和度を向上可能な気化原料供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、液体原料を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクを第1の温度に制御する第1の温度制御部と、前記貯留タンク内にキャリアガスを導入するキャリアガス導入管と、前記貯留タンクに接続され、前記キャリアガス導入管から前記貯留タンク内に導入された前記キャリアガスに前記液体原料の蒸気が含まれることにより生成される処理ガスを前記貯留タンクから流出させる処理ガス導出管と、前記処理ガス導出管が接続される流入口、及び前記流入口から流入する前記処理ガスを流出させる流出口を備える容器と、前記容器内の前記流入口と前記流出口の間に設けられ、前記処理ガスの流れを妨げる障害部材と、前記容器を前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御する第2の温度制御部とを備える気化原料供給装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による気化原料供給装置における前記容器の前記流出口から前記処理ガスを導く第1の配管と、前記第1の配管が接続され、前記処理ガスが導入されるチャンバと、前記チャンバ内に配置され、前記処理ガスによる処理の対象となる基板が載置される載置部とを備える基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、液体原料を貯留する貯留タンクを第1の温度に維持するステップと、前記第1の温度に前記貯留タンク内にキャリアガスを供給し、前記液体原料の蒸気と前記キャリアガスとを含む処理ガスを生成するステップと、前記第1の温度よりも低い第2の温度に前記処理ガスを冷却するステップとを含む、気化原料供給方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、キャリアガス中の液体原料の蒸気の飽和度を向上可能な気化原料供給装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による気化原料装置におけるバブラーを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態による気化原料装置におけるガス飽和器を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態による気化原料装置を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態による基板処理装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0012】
始めに、本発明の実施形態による気化原料供給装置が備えるバブラーについて図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、バブラー10は、例えば溶剤や疎水化処理剤などの常温で液体の原料Lを貯留するタンク11と、タンク11の周りに配置され、タンク11及びその内部の液体原料Lを加熱する外部ヒータ13と、タンク11及び外部ヒータ13を取り囲むように配置される断熱部材15とを備える。
【0013】
タンク11は、ほぼ円筒形の形状を有し、タンク11内に貯留される液体原料に対して耐蝕性を有する例えばステンレススチールやアルミニウムなどの金属、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂により作製されている。タンク11の下方部分には、側周部を貫通し内底部に沿って延びるキャリアガス導入管11aが設けられている。キャリアガス導入管11aは、キャリアガス供給源(後述)に接続され、キャリアガス供給源からのキャリアガスをタンク11内へ供給する。また、キャリアガス導入管11aのうちタンク11内に位置する部分には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のオリフィス11bが形成されている。キャリアガス供給源からのキャリアガスは、キャリアガス導入管11aからタンク11内へ導入され、オリフィス11bを通して液体原料L中に噴出される。このキャリアガスは、液体原料L内を上方に流れる際に液体原料Lの蒸気を取り込み、また、液体原料Lの上方の空間に充満する液体原料Lの蒸気と混合されるため、キャリアガスと液体原料Lの蒸気とからなる処理ガスが得られる。タンク11の上方部分には処理ガス導出管11cが接続されており、処理ガスは、処理ガス導出管11cを通してタンク11の外へ流出する。
なお、キャリアガスとしては、ヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガスなどの希ガスや窒素ガスなどを用いることができる。
【0014】
また、タンク11内には、主に液体原料Lを加熱する液体ヒータ11dと、タンク11内において液体原料Lの上方の空間を満たす処理ガスを加熱する内部ヒータ11eと、処理ガスの温度を測定する温度センサ17とが設けられている。液体ヒータ11d及び内部ヒータ11eには、図示しない電源装置及び温調器がそれぞれ設けられており、温度センサ17による測定値に基づいて液体ヒータ11d及び内部ヒータ11eが所定の温度(第1の温度)に調整される。これにより、液体原料L及び処理ガスの温度が第1の温度に維持される。第1の温度は、使用する液体原料Lの性質や、必要とされる処理ガスの供給量に基づいて決定することができる。例えば液体原料Lとして疎水化処理剤の一種であるヘキサメチルジシラザン(Hexamethyl-disilazane;HMDS)を用いる場合には、第1の温度は、約24℃から約40℃までの範囲にあってよく、例えば約30℃であると好ましい。
【0015】
外部ヒータ13は、タンク11の外周面を取り囲むように配置されている。また、外部ヒータ13には、図示しない温度センサ、電源装置、及び温調器が設けられており、外部ヒータ13もまた第1の温度に調整される。これにより、タンク11内の液体原料L及び処理ガスを第1の温度に維持するのが容易となる。なお、外部ヒータ13はタンク11の外周面だけでなく、タンク11の上面及び下面を覆うように配置されてもよい。
【0016】
断熱部材15は、熱伝導率の小さい例えばシリカガラスなどからなる繊維状のガラスウールまたは粉末状の充填物と、このシリカガラスを覆うように設けられた例えば布などの梱包材をなす外皮層とを含む断熱材により構成され得る。また、断熱部材15は、外部ヒータ13の外面に面する例えばアルミニウムなどの金属の膜を有してよい。さらに、例えばポリエチレンなどの樹脂からなる2枚のフィルムと、これらのフィルムの間に収容されるシリカガラスからなる繊維や粉末とから構成され、フィルム間の空間が真空に維持された真空断熱体により断熱部材15を構成してもよい。
次に、上述のバブラーと接続される、本発明の実施形態による気化原料供給装置が備えるガス飽和器について図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、ガス飽和器20は、ケース21と、ケース21の周りを取り囲む断熱部材23とを有している。
【0017】
ケース21は、例えばほぼ直方体の形状を有し、ケース21内に導入される処理ガスに対して耐蝕性を有する例えばステンレススチールやアルミニウムなどの金属、又はPTFEやポリテトラフルオロエチレン(PFA)などの樹脂により作製されている。ケース21の上方部分における一端側に流入口21aが設けられており、流入口21aには所定の継ぎ手によりバブラー10からの処理ガス導出管11cが接続されている。これにより、バブラー10により得られた処理ガスが、処理ガス導出管11c及び流入口21aを通してケース21内へ導入される。また、ケース21の上方部分において、流入口21aが設けられた一端側と反対側に流出口21bが設けられている。流出口21bには、基板処理装置(後述)と接続される処理ガス供給管21cが接続されている。これにより、流入口21aからケース21内へ導入された処理ガスが基板処理装置へ供給される。
【0018】
また、ケース21の6つの内面には温度調整板21hが配置されている(図2において4個の温度調整板21hを示す)。温度調整板21h内には、流体が流れる導管(図示せず)が形成されている。図示しない温度調整器により温度調整された流体を温度調整板21hと温度調整器との間で循環させることにより、温度調整板21hの温度が調整され、ケース21の温度が所定の温度(第2の温度)に維持される。第2の温度は例えば室温(23℃)であって良い。
【0019】
また、ケース21の内部には、複数のバッフル板21dが設けられている。バッフル板21dには、温度調整板21hと同様に導管(図示せず)が設けられ、温度調整された流体が導管を流れることにより、バッフル板21dの温度が調整される。バッフル板21dの温度は、温度調整板21hの温度と等しいことが好ましく、例えば室温(23℃)であって良い。また、本実施形態におけるバッフル板21dは、扁平な直方体の立体形状を有している。この扁平な直方体の4つの側面のうちの3つの側面は、対応する3つの温度調整板21hに接している一方、残りの一つの側面は温度調整板21hから離間している。バッフル板21dの一つの側面が温度調整板21hから離間することにより、バッフル板21dと温度調整板21hとの間にガスの流通路Sが形成される。
【0020】
また、一つのバッフル板21dが一の温度調整板21hと離間する場合、そのバッフル板21dの隣のバッフル板21dは、一の温度調整板21hと対向する温度調整板21hと離間するように、複数のバッフル板21dが配置される。これにより、流通路Sが互い違いに配置され、ケース21内には迷路状の長いガス流路が形成されることとなる。このため、流入口21aからケース21内に導入された処理ガスは矢印A1で示すように、バッフル板21dや温度調整板21hにより流れの方向が複数回変更されつつ、流出口21bに向かって流れる。これにより、処理ガスは第1の温度から第2の温度に冷却され、第2の温度に維持される。
【0021】
また、複数のバッフル板21dはケース21内の所定の領域に設けられており、この領域と流出口21bとの間の空間には、一又は複数のフィルタ21fが設けられている。具体的には、フィルタ21fは、ケース21内の処理ガスが流れる方向と交差する方向に延びている。このため、処理ガスは、フィルタ21を透過して流出口21bに到達する。また、フィルタ21fの目開き(開口径)は、タンク11に貯留される液体原料の性質(例えば粘性等)に基づいて決定して良い。また、図2に示す例では、4つのフィルタ21fが配置されており、この場合、4つのフィルタ21fは異なる目開きを有している。しかも、これら4つのフィルタ21fは、処理ガスの流れの方向に沿って目開きが小さくなるように配置されている。また、フィルタ21fは、例えばポリエチレンやPTFEなどの材料で作製することが好ましい。また、ステンレススチールやアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料でフィルタ21fを作製すれば、フィルタ21fの温度を温度調整板21hやバッフル板21dの温度と等しくすることが可能となる。
【0022】
また、ケース21の底部には、一又は複数の液体ポート21gが形成されており、液体ポート21gには戻り配管21jが接続されている。より具体的には、液体ポート21gは、ケース21の底部に配置された温度調整板21hに接する2つの隣接するバッフル板21dの間に設けられている。これにより、それらのバッフル板21dの間に溜まる液体原料L(後述)が液体ポート21gから戻り配管21jへと流出する。戻り配管21jは、バブラー10のタンク11に接続されている。これにより、ガス飽和器20のケース21に溜まった液体原料Lは、バブラー10のタンク11へと戻され得る。
また、ケース21の周りを取り囲む断熱部材23は、タンク11に用いられる断熱部材15と同様に構成されている。
【0023】
次に、上述のバブラー10及びガス飽和器20を含む、本発明の実施形態による気化原料供給装置を、図3を参照しながら説明する。なお、図3においては、バブラー10及びガス飽和器20を簡略化している。
【0024】
図3に示すように、本実施形態による気化原料供給装置30は、上述のバブラー10及びガス飽和器20に加えて、キャリアガス供給源40に接続された配管31と、配管31から継ぎ手39aにより分岐したキャリアガス導入管11aの途中に設けられ、キャリアガスの流量を制御する流量制御器32とを有している。また、配管31は、ガス飽和器20の処理ガス供給管21cに継ぎ手39bを介して合流しており、配管31における継ぎ手39a及び39bの間には、配管31を流れるキャリアガスの流量を制御する流量制御器33が設けられている。流量制御器32及び33としては、例えばマスフローコントローラを好適に使用することができる。
【0025】
さらに、本実施形態においては、処理ガス供給管21cにおける継ぎ手39bよりも下流側の位置に三方バルブ34が設けられている。また、三方バルブ34にはバイパス管34aが接続され、バイパス管34aは、三方バルブ34の下流側において継ぎ手39cを介して処理ガス供給管21cに合流している。三方バルブ34は、通常時には、処理ガス供給管21c内を流れる処理ガスを矢印A2で示すようにそのまま処理ガス供給管21cへ流し、開いたときには処理ガスを矢印A3で示すようにバイパス管34aに流す。バイパス管34aには、バイパス管34aを流れる処理ガスの流量を測定する流量計35が設けられている。流量計35としては、マスフローメータやフロート式の流量計を好適に使用することができる。
【0026】
また、バブラー10とガス飽和器20を繋ぐ処理ガス導出管11cには、断熱部材12が設けられている。これにより、処理ガス導出管11cを、バブラー10で得られた処理ガスの温度に維持することが可能となる。したがって、処理ガス導出管11cを流れる処理ガス中の液体原料Lの蒸気が、処理ガス導出管11c内で凝縮するのを防ぐことができ、処理ガス導出管11cが液体原料Lで詰まるのを避けることができる。
また、上述のとおり、ガス飽和器20のケース21の底部に形成される液体ポート21gには、戻り配管21jが接続されており、戻り配管21jは、バブラー10の上方部分に接続されている。戻り配管21jには、ポンプ36、フィルタ37、及び開閉バルブ38が設けられている。ガス飽和器20のケース21の底部に溜まった液体原料は、開閉バルブ38を開くとともにポンプ36を起動することにより、ケース21からタンク11へと還流する。
【0027】
次に、上述のとおり構成される気化原料供給装置30の動作(作用)について説明する。キャリアガス供給源40から供給されるキャリアガスは、配管31からキャリアガス導入管11aへ流れ、キャリアガス導入管11aに設けられた流量制御器32により流量制御され、流量が制御されたキャリアガスがバブラー10へ導入される。図1を参照しながら説明したように、キャリアガスは、キャリアガス導入管11aの複数のオリフィス11bから噴出され、液体原料L中を通過して液体原料Lの上方の空間に至る。このとき液体原料Lは、バブラー10の外部ヒータ13、液体ヒータ11d、内部ヒータ11e、及び温度センサ17などにより第1の温度に維持されており、第1の温度で決まる蒸気圧で液体原料Lの蒸気がキャリアガス中に含まれ、キャリアガスと液体原料Lの蒸気(又はガス)とからなる処理ガスが生成される。このようにして生成された処理ガスは、処理ガス導出管11cを通してガス飽和器20へ導入される。
【0028】
ガス飽和器20においては、温度調整板21h及びバッフル板21dが、第1の温度よりも低い第2の温度(例えば室温(23℃))に維持されている。このため、ケース21内に導入された処理ガスは、温度調整板21h及びバッフル板21dにより画成される流路を流れる間に、温度調整板21hやバッフル板21dに何度も衝突しながら第1の温度に冷却される。これにより、処理ガス中の液体原料Lの蒸気の飽和度を高くすることができる。
【0029】
このようにして液体原料Lの蒸気の飽和度が高められた処理ガスは、バッフル板21dが設けられた領域を通り抜けてフィルタ21fに到達する。処理ガス中には、第2の温度に冷却されたことにより生じるミスト等が含まれている可能性があるが、フィルタ21fを通過することによりミスト等が除去される。フィルタ21fを通過した処理ガスは、流出口21bから処理ガス供給管21cへ流出する。そして、処理ガス供給管21cを通して基板処理装置(後述)に処理ガスが供給される。
【0030】
以上のように、本発明の実施形態による気化原料供給装置30によれば、バブラー10においてキャリアガスと、第1の温度に維持される液体原料Lの蒸気とからなる処理ガスが生成され、この処理ガスが、ガス飽和器20において、バブラー10における液体原料Lの第1の温度よりも低い第2の温度に冷却されるため、液体原料Lの蒸気の飽和度が向上された処理ガスを基板処理装置へ供給することが可能となる。また、処理ガス中の液体原料Lの蒸気圧が飽和するように第1の温度と第2の温度を決定すれば、ケース21内では処理ガス中の蒸気が凝縮し、処理ガス中の液体原料Lの蒸気をほぼ飽和蒸気圧にまで飽和させることが可能となる。
【0031】
また、特に、処理ガス中の液体原料Lの蒸気圧が飽和するように第2の温度を制御した場合には、ケース21内のバッフル板21dや温度調整板21hには液体原料Lが結露する。結露した液体原料Lは、バッフル板21dや温度調整板21hを流れ落ちて、ケース21の底部に溜まることとなる。ケース21の底部に溜まった液体原料Lは、戻り配管21jに設けられた開閉バルブ38を開き、ポンプ36(図3)を起動することにより、タンク11へ戻される。したがって、液体原料Lを無駄に消費することがなく、基板処理装置における基板処理のコストを低減することができる。
【0032】
その際、仮にケース21内の液体原料にパーティクルなどが含まれていたとしても、フィルタ37によりパーティクルなどが除去され、清浄な液体原料をバブラー10のタンク11に戻すことができる。
【0033】
また、処理ガス供給管21cに継ぎ手39bにより合流する配管31を通して、処理ガス供給管21cにキャリアガスを供給することにより、ガス飽和器20からの処理ガスを希釈しても良い。この場合、配管31に設けられた流量制御器33により、キャリアガスの供給量を制御するとともに、開閉バルブ34を開くことにより、配管31からのキャリアガスで希釈された処理ガスをバイパス管34aに適宜バイパスさせると好ましい。これによれば、バイパス管34aに設けられた流量計35により測定された流量と、配管31の流量制御器33で調整されたキャリアガス流量とにより、ガス飽和器20からの処理ガスの流量(流量計35の測定値−流量制御器33の設定流量)を求めることができる。特に、ガス飽和器20において、処理ガス中の液体原料Lの蒸気を飽和させれば、希釈された処理ガス中の液体原料Lの蒸気の濃度を計算することができ、基板処理装置への液体原料Lの蒸気の供給量を精度良く知ることができる。流量制御器33により処理ガス中の液体原料Lの蒸気の濃度を調整することも可能となる。
【0034】
次に、本発明の実施形態による気化原料供給装置30を好適に適用可能な基板処理装置について、図4を参照しながら説明する。
【0035】
図4を参照すると、基板処理装置100は、上端が開口する容器本体202と、この容器本体202の上部開口を覆うように設けられた蓋体203とを備えている。容器本体202は、円形の上面形状を有する枠体221と、枠体221の底部から内側に延びる鍔状の底部222と、底部222に支持されるウエハ載置台204とを備えている。ウエハ載置台204の内部には加熱部204hが設けられ、これによりウエハ載置台204上に載置されるウエハWを加熱することができる。
【0036】
一方、蓋体203は、蓋体203の周縁部231が容器本体202の枠体221の上面に近接するように容器本体202を覆っており、これらの間に処理室220が区画されている。
【0037】
ウエハ載置台204には、外部の搬送装置(不図示)との間でウエハWの受け渡しを行なうための複数本の昇降ピン241が設けられており、この昇降ピン241は昇降機構242により昇降自在に構成されている。図中の参照符号243は、載置台204の裏面側に設けられた、この昇降機構242の周囲を囲むカバー体である。容器本体202と蓋体203は、互いに相対的に昇降自在に構成されている。この例では、昇降機構(不図示)により蓋体203が、容器本体202と接続される処理位置と、容器本体202の上方側に位置する基板搬出入位置との間で昇降自在である。
【0038】
また、蓋体203の裏面側中央部には、載置台204上に載置されるウエハWに対して処理ガスを供給する処理ガス供給部205が設けられている。また、蓋体203の内部には、処理ガス供給部205と連通するガス供給路233が形成されている。この例では、ガス供給路233は蓋体203の上方側にて屈曲されて略水平に伸びるように形成され、ガス供給路233は上端においてガス供給管261と接続され、ガス供給管261の上流端は、処理ガス供給管21cを介して、気化原料供給装置30のガス飽和器20に接続されている。これにより、キャリアガスと液体原料Lの蒸気とからなる処理ガスが気化原料供給装置30から基板処理装置100の処理室220へ供給され、ウエハ載置台204に載置されるウエハWが処理ガスに曝される。
【0039】
また、蓋体203には、ウエハ載置台204上のウエハWよりも外側から処理室220内を排気するための排気路281が形成されている。また蓋体203の上壁部232の内部には、処理ガス供給部205が設けられる中央領域以外の領域に面状に伸び、例えばリング状の平面形状を有する扁平な空洞部282が形成されている。前述した排気路281の下流端はこの空洞部282に接続されている。さらにこの空洞部282には、例えば蓋体203の中央近傍領域にて、複数本例えば6本の排気管283が接続されている。また、排気管283の下流端は排気流量調整バルブV4を介して排気手段284をなすエジェクターに接続されている。
【0040】
このような構成によれば、気化原料供給装置30の処理ガス供給管21cから、ガス供給管261、ガス供給路233、及び処理ガス供給部205を通して、ウエハ載置台204上に載置されるウエハWに対して処理ガスが供給され、排気路281から空洞部282及び排気管283を通して排気手段284により排気される。
基板処理装置100には気化原料供給装置30が接続されているため、基板処理装置100の使用に際しても、気化原料供給装置30による効果が発揮される。
【0041】
上記の実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されさるものではなく、添付の請求の範囲の要旨内で変形や変更が可能である。
【0042】
例えば、上述の実施形態においては、キャリアガス導入管11aはタンク11の側周部を貫通し、タンク11の内底部に沿って延びているが、これに代わり、タンク11の上部(蓋部)を貫通し、タンク11に貯留される液体原料中(好ましくは底面近傍)にまで延びるキャリアガス導入管をタンク11に設けてもよい。
【0043】
タンク11内の液体ヒータ11d及び内部ヒータ11eは、ニッケル−クロム合金や、鉄−ニッケル−クロム合金、鉄−クロム−アルミニウム合金等からなる電熱線に限らず、耐薬液性に優れている例えばシースヒータやセラミックヒータにより構成してもよい。
タンク11に貯留される液体原料としてHMDSを例示したが、これに限らず、他の疎水化処理材や、現像液、リンス液(シンナー)、純水、過酸化水素水などの液体原料を基板処理に応じて貯留し、その蒸気(又は気体)とキャリアガスとからなる処理ガスを基板処理装置へ供給してもよい。
また、上述の実施形態においては、タンク11に外部ヒータ13及び断熱部材15が設けられているが、これらに代わり恒温槽を用いてもよい。また、ガス飽和器20には温度調整板21h及び断熱部材23が設けられているが、これらに代わり恒温槽を用いてもよい。この場合、バッフル板21dは温度調整可能であっても無くても良い。また、温度調整板21hを用いない場合には、ケース21の内壁とバッフル板21dとの間に隙間ができ、これによりガス流路が形成される。
【0044】
また、バブラー10とガス飽和器20とを繋ぐ処理ガス導出管11cには、断熱部材12の代わりに又は加えて、テープヒータやリボンヒータなどのフレキシブルなヒータ部材を処理ガス導出管11cに巻き付けることによりヒータを設けても良い。電源、温度センサ、及び温調器によりこのヒータを温度調整することにより、処理ガス導出管11cをより確実に所定の温度に維持することができる。この温度は、例えば上述の第1の温度と等しいか、又は高い温度であると好ましい。
【0045】
また、上述の実施形態においては、ガス飽和器20の温度が室温の場合を説明したが、室温よりも高い温度にガス飽和器を制御してもよい。この場合、タンク11内の処理ガスの温度と処理ガス導出管11cの温度とをガス飽和器20の温度よりも高くすべきことは明らかである。また、ガス飽和器20を室温よりも高い温度に維持する場合には、ガス飽和器20から基板処理装置100までの処理ガス供給管21cを、ガス飽和器20の温度(第2の温度)と等しい温度又は高い温度に制御することが好ましい。
【0046】
また、ガス飽和器20のケース21とバブラー10のタンク11とを接続する戻り配管21jにはポンプ36が設けられ、ポンプ36によりケース21の底部に溜まった液体原料をタンク11へ戻しているが、例えばガス飽和器20をタンク11よりも高い位置に配置すれば、ケース21底部の液体原料を自重によりタンク11へ戻すことができる。したがって、ポンプ36を用いることなく、開閉バルブ38を開くことにより、液体原料をタンク11へ戻すことが可能となる。
また、戻り配管21jは、タンク11の上方部分にではなく、側面部に接続されても良い。
【0047】
さらに、ガス飽和器20のケース21内に液面計(図示せず)を設け、ケース21の底部に溜まる液体原料Lの量をモニターすることが好ましい。また、液面計の測定結果に基づいて、開閉バルブ38の開閉やポンプ36の起動を制御することにより、ケース21内の液体原料Lを自動的にタンク11へ戻すようにしても良い。
【0048】
また、ガス飽和器20内には、所定の大きさの開口部を有し、4つの辺のすべてにおいてケース21の内面(又は温度調整板21)と接するバッフル板を設けても良い。この場合、ケース21内の処理ガスの流れの方向に沿って開口部が揃わないように(流れの方向に沿って開口部が互い違いとなるように)バッフル板を配置することが好ましい。これにより、処理ガスがバッフル板(の開口部以外の部分)に衝突する際に、処理ガスが冷却され得る。また、バッフル板を多孔質材料で形成し、処理ガスが孔を通して流れるようにしても良い。言い換えると、バッフル板21としてフィルタ21fを用いてもよい。また、バッフル板21の代わりに、複数箇所で折れ曲がることにより迷路状のガス流路を提供し、温度調整可能に構成される屈曲管を用いてもよい。
また、ガス飽和器20内において、フィルタ21fの代わりにミストトラップを設けても良い。
【0049】
また、戻り配管21jにヒータを設けて戻り配管21jを第1の温度に制御してもよい。これにより、液体原料Lの還流に伴う、バブラー10のタンク11内の液体原料Lの温度の変動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10・・・バブラー、11・・・タンク、11a・・・キャリアガス供給管、11b・・・オリフィス、11c・・・処理ガス導出管、11d・・・液体ヒータ、11e・・・内部ヒータ、13・・・外部ヒータ、15・・・断熱部材、17・・・温度センサ、20・・・ガス飽和器、21・・・ケース、21a・・・流入口、21b・・・流出口、21d・・・バッフル板、21f・・・フィルタ、21g・・・液体ポート、21h・・・温度調整板、23・・・断熱部材、30・・・気化原料供給装置、31・・・配管、32,33・・・流量制御器、34・・・開閉バルブ、34a・・・バイパス管、35・・・流量計、36・・・開閉バルブ、38・・・ポンプ、40・・・キャリアガス供給源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクを第1の温度に制御する第1の温度制御部と、
前記貯留タンク内にキャリアガスを導入するキャリアガス導入管と、
前記貯留タンクに接続され、前記キャリアガス導入管から前記貯留タンク内に導入された前記キャリアガスに前記液体原料の蒸気が含まれることにより生成される処理ガスを前記貯留タンクから流出させる処理ガス導出管と、
前記処理ガス導出管が接続される流入口、及び前記流入口から流入する前記処理ガスを流出させる流出口を備える容器と、
前記容器内の前記流入口と前記流出口の間に設けられ、前記処理ガスの流れを妨げる障害部材と、
前記容器を前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御する第2の温度制御部と
を備える気化原料供給装置。
【請求項2】
前記流出口に接続される処理ガス供給管と、
前記処理ガス供給管に接続され、前記処理ガス供給管に前記キャリアガスを供給するキャリアガス供給管と
を更に備える、請求項1に記載の気化原料供給装置。
【請求項3】
前記流出口に接続される処理ガス供給管と、
前記処理ガス供給管から分岐し、当該処理ガス供給管に合流するバイパス管と、
前記バイパス管に設けられる流量計と
を更に備える、請求項1に記載の気化原料供給装置。
【請求項4】
前記容器が、前記障害部材と前記流出口との間に配置され、前記処理ガスの流通を許容する一又は二以上のフィルタ部材を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の気化原料供給装置。
【請求項5】
前記容器と前記貯留タンクとを接続し、前記容器内で凝縮した前記液体原料を前記貯留タンクへ流す液体原料配管を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の気化原料供給装置。
【請求項6】
前記処理ガス導出管を前記第1の温度に調整する第3の温度調整部を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の気化原料供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の気化原料供給装置における前記容器の前記流出口から前記処理ガスを導く第1の配管と、
前記第1の配管が接続され、前記処理ガスが導入されるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記処理ガスによる処理の対象となる基板が載置される載置部と
を備える基板処理装置。
【請求項8】
液体原料を貯留する貯留タンクを第1の温度に維持するステップと、
前記第1の温度に前記貯留タンク内にキャリアガスを供給し、前記液体原料の蒸気と前記キャリアガスとを含む処理ガスを生成するステップと、
前記第1の温度よりも低い第2の温度に前記処理ガスを冷却するステップと
を含む、気化原料供給方法。
【請求項9】
前記冷却するステップにおいて前記第2の温度に冷却された前記処理ガスに対してキャリアガスを追加するステップを更に含む、請求項8に記載の気化原料供給方法。
【請求項10】
前記追加するステップにおいて前記キャリアガスの流量と、当該キャリアガスが追加された前記処理ガスの流量とから、当該キャリアガスが追加される前の前記処理ガスの流量を求めるステップを更に含む、請求項9に記載の気化原料供給方法。
【請求項11】
前記冷却するステップにおいて前記処理ガスを冷却することにより結露した前記液体原料を前記貯留タンクに戻すステップを更に含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の気化原料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115208(P2013−115208A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259434(P2011−259434)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】