説明

気密封止パッケージ及びこの気密封止パッケージの製造方法

【課題】デバイス用ウエハと封止ウエハとを真空中で直接接合して成る気密封止パッケージにおいて、量産においても気密封止性と電気接続性とを安定に実現できる気密封止パッケージ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水晶振動子11の形成された素子用ウエハと封止用ウエハとを直接接合した気密封止パッケージ10において、水晶振動子11に電気信号の入出力を行う電極パッド16について、封止用ウエハに隙間領域34を介して対向するように形成する。また、この電極パッド16と、封止用ウエハの貫通孔配線22との間に反応金属層5を配置して、ウエハ同士を直接接合した後、これらウエハの外側から反応金属層5にエネルギーを供給して、反応金属層5を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの形成された領域を気密に封止した気密封止パッケージ及びこの気密封止パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子や振動部分を有する振動子あるいはジャイロセンサ等のデバイスは、機械加工やウエットエッチング加工され、セラミックスパッケージや金属製パッケージに搭載されていたが、近年のデバイスの小型化、高性能化の要求に対応するために、デバイスをウエハレベルで製造し、その後個片化するという、いわゆるウエハレベルパッケージング技術によって製造する方法が注目されている。即ち、水晶振動子の場合には、水晶振動子が作り込まれた水晶ウエハと、これを気密封止するための2枚のキャップの役割を持つ封止ウエハとを互いに接合し、その後例えばダイシングなどにより個片化される。また、前記振動部分を有する振動子あるいはジャイロセンサなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子の場合には、素子の形成されたウエハを半導体加工技術を使ってウエハレベルで製造し、このウエハと封止ウエハを接合した後、同様に個片化される。
【0003】
ここで、ウエハ接合には、金属やガラス、接着剤を用いてデバイスの形成されたウエハ(以下、「デバイス用ウエハ」と言う)と封止ウエハとを接合する「間接接合」と、陽極接合や表面活性化接合等の手法によりデバイス用ウエハと封止ウエハとを接合する「直接接合」とが知られている。一方、デバイスの電極パッド(入出力パッド)とパッケージ外部に設けられる端子との電気接続には、例えば特許文献1のように、デバイス用ウエハと封止ウエハとの間の接合境界部から横方向に取り出す構造と、例えば特許文献2、3に記載されているように、デバイス用ウエハあるいは封止ウエハの貫通孔を使って取り出す構造とがある。
【0004】
電気接続を接合境界部から横方向に取り出すには、配線部と接合部に段差ができるので、ウエハ同士の接合には直接接合法を用いることができないばかりか、絶縁をとる必要があるので、低融点ガラスまたは絶縁性接着剤が採用される。しかしながら、ガラスや絶縁性接着剤は接合時に発生するアウトガスにより、デバイスの特性が変化してしまう、あるいは段差部にできやすい未接合部分からのリーク等、信頼性に乏しいという問題もある。
【0005】
一方、貫通孔配線による電気接続と、例えばAu(金)同士の接合やAuSn(スズ)はんだ等の金属シールによる間接接合とを組み合わせた気密封止パッケージングでは、ウエハ同士を接合させるためには、前記金属シールをウエハの面内に亘って加圧及び溶融させる必要がある。そのため、この手法では高温及び高圧が必要になり、接合装置が大型化するのみならず、昇降温に長時間必要になるなど製造コストに課題があるばかりか、特に接合されるウエハ同士が互いに異なる材料で構成される場合、両者の熱膨張率差によって発生する熱応力のために、デバイスの特性が変化してしまう問題もある。
【0006】
このように、低融点ガラスやはんだなどの金属をシールに使う間接接合には上述の課題があるため、貫通孔による配線引き出しと直接接合とを組み合わせた気密封止パッケージがいくつか提案されている。例えば、特許文献4には、貫通孔配線の先端部に導電性のバンプを設けた封止ウエハ(特許文献4ではイオン結合性材料のウエハ)と、デバイス用ウエハ(特許文献4では水晶振動子)とが水酸基結合を介した直接接合により接合されたパッケージ構造について記載され、さらに特許文献5〜7には、貫通孔配線の先端部に導電性のバンプを設けた封止ウエハ(特許文献5〜7では蓋ウエハ)と、デバイス用ウエハ(特許文献5〜7では水晶振動子)とが常温での直接接合により接合されたパッケージ構造について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−148758
【特許文献2】特開2006−173599
【特許文献3】特開2009−59941
【特許文献4】特開平6−350376
【特許文献5】特開2009−201065
【特許文献6】特開2009−201066
【特許文献7】特開2006−201067
【特許文献8】特表2004−501047
【特許文献9】特表2006−528556
【特許文献10】特表2007−502214
【特許文献11】特開2006−55909
【特許文献12】特表2007−520352
【特許文献13】特開2003−243550
【特許文献14】特開2009−255146
【特許文献15】特表2009−519834
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4〜7のいずれのパッケージ構造においても、ウエハ同士の接合される領域には、接着の役割を果たす接着層(低融点ガラスや金属材料など)がないために、封止ウエハあるいはデバイス用ウエハに形成される、接合面との段差、あるいは貫通孔配線の先端部に設けられるバンプについて、夫々段差形成時、バンプ形成時に高さ寸法を精密にコントロールしておかないと、気密封止ができなかったり、電気接続が不完全だったりするという問題が生じる。
【0009】
即ち、特許文献4の場合には、図40(a)、(b)に示すように、封止ウエハ100の貫通孔配線101の先端部と封止面との段差寸法をt、デバイス用ウエハ102の電極パッド103の厚み寸法をt1、バンプ104の厚み寸法をt2とすると、t=t1+t2でなければならない。更に、デバイス用ウエハ102の電極パッド103の表面、あるいはバンプ104の表面は、特別な処理を施さない限りミクロな凹凸があり、決して平坦な表面を有していない。従って、仮に電極パッド103の厚み寸法t1やバンプ104の厚み寸法t2をt=t1+t2を満足するように設定できたとしても、平坦でない(ミクロな凹凸がある)面同士の直接接合では、接合部でのコンタクトが不十分で良好な電気接続ができない。直接接合では、接合時に印加される圧力はそれ程大きくないので、バンプ104が大きく変形することは期待できない。
【0010】
即ち、バンプ104の厚み寸法t2が設計値よりも厚い(t2>t−t1)場合は気密封止不良(図40(b))、逆にバンプ104の厚み寸法t2が設計値よりも薄い(t2<t−t1)場合は電気接続不良(図40(a))が発生することになる。量産時に、封止ウエハ100に設ける段差の寸法t、並びに電極パッド103の表面やバンプ104の表面の平坦性を高めつつ、厚み寸法t1、t2を一定に揃えるのは困難であると言わざるを得ない。接合面との段差がデバイス用ウエハ102に形成される特許文献5〜7についても、全く同じことが言える。
【0011】
特許文献8〜10には、バルク材の接合に用いられる従来のロウ材あるいははんだの代替材料である反応性多層膜について記載されており、また特許文献11〜15には反応性多層フォイルやMEMSデバイスについて記載されているが、既述の問題については検討されていない。
【0012】
本発明は、前記問題を解決し、特に、デバイス用ウエハ102と封止ウエハ100とを真空中で直接接合して成る気密封止パッケージにおいて、量産においても気密封止性と電気接続性とを安定に実現できる気密封止パッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の気密封止パッケージは、
デバイス素子の形成された素子用基板と絶縁体からなる封止用基板とを直接接合により互いに接合して、前記デバイス素子の置かれる領域を気密に封止した気密封止パッケージにおいて、
前記封止用基板に隙間領域を介して対向するように前記素子用基板に形成され、前記デバイス素子に対して電気信号の入出力を行うための電極パッドと、
前記電極パッドに対向する前記封止用基板に形成され、当該封止用基板の板厚方向に貫通するように形成された導電路と、
前記電極パッドと前記導電路との間に設けられ、前記素子用基板及び前記封止用基板が互いに封止された後、これら基板の外側から伝達されるエネルギーにより溶融して、前記電極パッドと前記導電路とを互いに電気的に接続するための金属層と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記気密封止パッケージは、以下の構成を採っても良い。即ち、前記金属層と、当該金属層に対向する前記電極パッドまたは前記導電路との間には、隙間領域が介在している構成。前記隙間領域の高さ寸法は、1μm以下である構成。前記デバイス素子は、前記素子用基板に平面的に複数箇所に形成されている構成。
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分と発熱反応を起こして当該金属層を溶融させる第2の金属成分と、を備えた反応金属層であり、
前記エネルギーは、これら第1の金属成分と第2の金属成分との発熱反応を開始させるためのものである構成。
前記反応金属層は、以下の(a)〜(f)のいずれかを含む構成。
(a)第1の金属成分:ニッケル 第2の金属成分;アルミニウム
(b)第1の金属成分:チタン 第2の金属成分;アルミニウム
(c)第1の金属成分:ジルコニウム 第2の金属成分;アルミニウム
(d)第1の金属成分:ハフニウム 第2の金属成分;アルミニウム
(e)第1の金属成分:ニッケル 第2の金属成分;シリコン
(f)第1の金属成分:ニオブ 第2の金属成分;シリコン
【0015】
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分と共晶化する第2の金属成分と、を備えた共晶合金層であり、
前記エネルギーは、この共晶合金層を共晶温度以上に加熱するためのものである構成。
前記共晶合金層は、以下の(a)〜(k)のいずれかの構成を含むか、あるいは(e)の構成に加えて第3の金属成分として銅を含んでいる構成。
(a)第1の金属成分:金 第2の金属成分:スズ
(b)第1の金属成分:金 第2の金属成分:シリコン
(c)第1の金属成分:金 第2の金属成分:ゲルマニウム
(d)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:銅
(e)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:銀
(f)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:亜鉛
(g)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:ビスマス
(h)第1の金属成分:鉛 第2の金属成分:スズ
(i)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:ゲルマニウム
(j)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:シリコン
(k)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:亜鉛
【0016】
前記電極パッド及び前記導電路の少なくとも一方は、第1の金属成分及び第2の金属成分のうち一方の金属成分を含み、
前記共晶合金層は、第1の金属成分及び第2の金属成分を備えていることに代えて、第1の金属成分及び第2の金属成分のうち他方の金属成分により構成されている構成。
【0017】
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分よりも融点が高い第2の金属成分とを備えた前駆体層であり、
前記エネルギーは、この前駆体層を第1の金属成分の融点以上の温度に加熱して金属間化合物を形成するためのものである構成。金属間化合物を形成した後に行われる熱処理によって当該金属間化合物が溶融しないように、この金属間化合物の融点は、前記熱処理の加熱温度よりも高い構成。
前記前駆体層は、前記導電路及び前記電極パッドにおける互いに対向する面に各々形成された第2の金属成分を含む第2の金属層と、これら第2の金属層間に介在され、前記第1の金属成分を含む第1の金属層と、を備えている構成。
第1の金属成分は、インジウム及びスズの少なくとも一つであり、
第2の金属成分は、銅、銀、金及びニッケルのうち少なくとも一つである構成。
【0018】
前記電極パッド及び前記導電路の少なくとも一方は、第2の金属成分により構成され、
前記前駆体層は、第1の金属成分及び第2の金属成分を備えていることに代えて、第1の金属成分からなる構成。
前記金属層は、第1の金属成分を含む第1の金属層と、第2の金属成分を含む第2の金属層と、を交互に積層した積層膜である構成。
前記金属層は、インジウム及びスズの少なくとも一方により構成され、
前記エネルギーは、この金属層を当該金属層の融点以上の温度に加熱するためのものである構成。
【0019】
前記電極パッドと前記金属層との間、及び前記導電路と前記金属層との間の少なくとも一方には、導電膜により構成されたバッファ層が介在している構成。前記素子用基板と前記封止用基板とは、互いに同じ材質である構成。前記デバイス素子はMEMS素子である構成。
前記デバイス素子は水晶振動子であり、
前記素子用基板は、当該素子用基板を板厚方向に貫通する貫通溝が前記水晶振動子の周囲を囲むように形成されると共に、この水晶振動子を側方側から片持ちないしは両持ちで支持する支持部を備え、
前記素子用基板における前記封止用基板と反対側の面には、前記貫通溝の周囲の領域に対して直接接合により周方向に亘って気密に接合されると共に、前記水晶振動子に対して隙間領域を介して対向する補助封止用基板が配置されている構成。前記エネルギーは、電気スパーク、レーザー光及びフラッシュ光の少なくとも1つである構成。
【0020】
本発明の気密封止パッケージの製造方法は、
デバイス素子の形成された素子用基板と絶縁体からなる封止用基板とを直接接合により互いに接合して、前記デバイス素子の置かれる領域を気密に封止した気密封止パッケージの製造方法において、
前記素子用基板に前記デバイス素子を形成する工程と、
前記封止用基板に隙間領域を介して対向するように、前記デバイス素子に対して電気信号の入出力を行う電極パッドを前記素子用基板に形成する工程と、
前記電極パッドに対向する前記封止用基板に、当該封止用基板の板厚方向に貫通する導電路を形成する工程と、
前記電極パッドと前記導電路との間に金属層を配置する工程と、
次いで、前記素子用基板及び前記封止用基板を直接接合により互いに接合する工程と、
前記素子用基板及び前記封止用基板により封止された領域の外側からエネルギーを前記金属層に供給し、当該金属層を反応させて前記電極パッドと前記導電路とを互いに電気的に接続する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、デバイス素子の形成された素子用基板と絶縁体からなる封止用基板とを直接接合した気密封止パッケージにおいて、デバイス素子に対して電気信号の入出力を行う電極パッドについて、封止用基板に隙間領域を介して対向するように形成している。また、この電極パッドと、この電極パッドに対向するように封止用基板を板厚方向に貫通して設けられた導電路との間に金属層を配置して、前記基板同士を直接接合すると共に、素子用基板及び封止用基板により封止された領域の外側からエネルギーを供給して金属層を溶融させることによって、電極パッドと導電路とを互いに電気的に接続している。そのため、気密封止パッケージの気密性を確保しながら、電極パッドと導電路とを容易に導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態における気密封止パッケージを示す分解斜視図である。
【図2】前記気密封止パッケージを示す縦断面図である。
【図3】前記気密封止パッケージを表面側から見た平面図である。
【図4】前記気密封止パッケージを裏面側から見た平面図である。
【図5】前記気密封止パッケージの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】前記気密封止パッケージが形成される各ウエハを示す斜視図である。
【図7】前記気密封止パッケージの製造方法を示すフロー図である。
【図8】前記気密封止パッケージの製造方法を示す縦断面図である。
【図9】前記気密封止パッケージの製造方法を示す縦断面図である。
【図10】前記気密封止パッケージの製造方法を示す縦断面図である。
【図11】前記気密封止パッケージの製造方法を示す一部拡大縦断面図である。
【図12】前記気密封止パッケージの反応金属層を反応させる装置の一例を示す縦断面図である。
【図13】前記第1の実施の形態の他の例を示す一部拡大縦断面図である。
【図14】前記第1の実施の形態の他の例を示す一部拡大縦断面図である。
【図15】前記第1の実施の形態の他の例を示す一部拡大縦断面図である。
【図16】前記第1の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図17】前記第1の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図18】前記装置の他の例を示す縦断面図である。
【図19】前記装置の他の例を示す縦断面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態における気密封止パッケージを示す分解斜視図である。
【図21】前記第2の実施の形態の気密封止パッケージを示す平面図である。
【図22】前記気密封止パッケージを示す縦断面図である。
【図23】前記気密封止パッケージを示す縦断面図である。
【図24】前記第2の実施の形態の気密封止パッケージの製造方法を示す縦断面図である。
【図25】前記製造方法を示す縦断面図である。
【図26】前記製造方法を示す断面図である。
【図27】前記第2の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図28】前記第2の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図29】前記第2の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図30】前記第2の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図31】本発明の第3の実施の形態における気密封止パッケージを示す縦断面図である。
【図32】前記第3の実施の形態における製造方法を示す縦断面図である。
【図33】前記第3の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図34】前記第3の実施の形態の他の例における製造方法を示す縦断面図である。
【図35】本発明の記第4の実施の形態における気密封止パッケージを示す縦断面図である。
【図36】前記第4の実施の形態における製造方法を示す縦断面図である。
【図37】前記第4の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図38】前記第4の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図39】前記第4の実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図40】従来の気密封止パッケージを示す一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態:水晶、反応金属層]
本発明の気密封止パッケージの第1の実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。図1〜図4は、第1の実施の形態における気密封止パッケージ10であり、図6に示すように、デバイス素子である水晶振動子11が形成された素子用ウエハ(水晶振動子ウエハ)2を封止用ウエハ1、3により上下から挟み込むように積層し、ウエハレベルで表面活性化接合のような接合法などにより互いに直接接合した後、個片化して形成した1チップを示している。以下に、これらウエハ(基板)1〜3の接合について詳述する前に、各々のウエハ1〜3の構成について簡単に説明する。尚、図5は、素子用ウエハ2の一部(後述の反応金属層5)を拡大して模式的に示しており、図6では、各々のウエハ1〜3について、図示の簡略化のため、一つの(中央部の)領域だけに気密封止パッケージ10の形成領域を描画している。
【0024】
始めに、3枚のウエハ1〜3のうち中央の素子用ウエハ2について説明する。このウエハ2は、水晶により構成されており、水晶振動子11が例えば縦横に多数形成されている。即ち、各々の水晶振動子11における表面側(封止用ウエハ1側)及び裏面側(封止用ウエハ3側)には、例えば多結晶の金(Au)などからなる励振電極12a、12bが夫々形成されており、図1中Y方向を左右方向と呼ぶと、水晶振動子11は、図1、図3及び図4に示すように、左側から片持ちの状態で支持されている。具体的には、素子用ウエハ2には、当該素子用ウエハ2を板厚方向に貫通する貫通溝13が水晶振動子11の周囲を囲むように形成されており、水晶振動子11は、この貫通溝13の外側の領域である枠状体14から伸びる支持部15により、左側において支持されている。この例では、支持部15は、互いに離間するように2箇所に設けられている。
【0025】
図1中X方向を前後方向と呼ぶと、水晶振動子11よりも左側における素子用ウエハ2の表面側には、互いに前後方向に離間するように配置された電極パッド(入出力パッド)16a、16bが形成されており、これら電極パッド16a、16bは、夫々奥側及び手前側に配置されている。奥側の電極パッド16aは、2本の支持部15、15のうち奥側の支持部15の表面側に形成された引き回し電極17を介して、水晶振動子11の表面側の励振電極12aに接続されている。電極パッド16a、16bの膜厚t1は、図5に示すように、例えば0.5μmとなっている。
【0026】
電極パッド16bの下方側における素子用ウエハ2には、図2に示すように、当該素子用ウエハ2を上下に貫通する開口部18が形成されている。この電極パッド16bは、図4に示すように、開口部18内及び手前側の支持部15の裏面側に形成された引き回し電極17を介して、水晶振動子11の裏面側の励振電極12bに接続されている。電極パッド16a、16b及び引き回し電極17は、各々例えば多結晶の金などの導電性金属により構成されている。尚、図2は、気密封止パッケージ10を図3におけるA−A線にて切断した縦断面図を示している。
【0027】
続いて、上側の封止用ウエハ1及び下側の封止用ウエハ3について説明する。これら封止用ウエハ1、3は、各々水晶により構成されており、図1及び図2に示すように、水晶振動子11(励振電極12a、12b)や電極パッド16a、16bに接触しないように、これら水晶振動子11及び電極パッド16a、16bに対向する領域が窪んで凹部(キャビティ)21をなしている。この凹部21の高さ寸法tは、図5に示すように、例えば10μmとなっている。封止用ウエハ3は、補助封止用基板をなしている。
【0028】
封止用ウエハ1における既述の電極パッド16a、16bに各々対向する位置には、当該封止用ウエハ1を板厚方向に貫通するように、例えば銅(Cu)などにより構成された貫通孔配線22、22が導電路として形成されている。これら貫通孔配線22、22の上端部は、封止用ウエハ1の上面において気密封止パッケージ10を外部の電子部品に接続するために形成された接続電極23、23に各々接続されている。そして、貫通孔配線22の下方側には、図2に示すように、素子用ウエハ2の電極パッド16に対向するように、本発明の要部の一部である既述の反応金属層5がバンプとして配置されている。
【0029】
この反応金属層5は、外部より供給される電気スパーク、レーザー光やフラッシュ光のエネルギーによって容易に反応して発熱反応を起こし、溶融する物質により構成されている。そして、反応金属層5のある一部が反応すると、この反応により発生した反応熱が当該反応金属層5における他の部位に速やかに伝達され、反応が当該反応金属層5の全体に亘って進行する。この反応金属層5は、図5の下側に拡大して示すように、具体的には例えばチタン(Ti)からなる第1の金属膜(第1の金属成分)31と、例えばアルミニウム(Al)からなる第2の金属膜(第2の金属成分)32と、からなる積層膜33が1〜100層この例では93層もの多層に亘って積層されて構成されている。これら金属膜31、32の各々の膜厚d1、d2は、各々1〜100nmこの例では50nmとなっている。従って、反応金属層5の膜厚t2は、例えば9.3μm(=(50nm+50nm)×93層)となっている。また、積層膜33の膜厚(金属膜31、32の周期長)dは、例えば2〜200nmこの例では100nmとなっている。反応金属層5を平面的に(X−Y平面で)見た時の面積は、例えば40,000μmとなっている。
【0030】
ここで、図5の上側に示すように、反応金属層5と電極パッド16との間には、高さ寸法Δt(Δt=t−t1−t2)の隙間領域34が介在している。高さ寸法Δtは、この例では0.2μm(=10μm−0.5μm−9.3μm)となっている。従って、各々のウエハ1〜3を互いに接合しただけでは、貫通孔配線22と電極パッド16とが導通していない状態となっている。このような隙間領域34を形成した理由について、気密封止パッケージ10の作製方法と共に図7〜図11を参照して以下に詳述する。尚、図8〜図11では、ある一つの気密封止パッケージ10に着目して図示しているが、実際には気密封止パッケージ10は、既述のようにウエハレベルで多数作製され、その後個片化される。
【0031】
先ず、図8に示すように、各々のウエハ1〜3を個別に作製する(ステップS11)。具体的には、封止用ウエハ1、3については、例えば水晶インゴットから切り出して研磨された後の水晶板に対して、フォトレジストマスクを用いたフォトリソグラフィー及びウエットエッチングやドライエッチングにより凹部21を各々形成する。また、上側の封止用ウエハ1については、凹部21を形成した後、同様にフォトリソグラフィー及びエッチングにより貫通孔を形成すると共に、当該貫通孔内に例えば無電解メッキにより貫通孔配線22を埋め込む。そして、フォトリソグラフィー及びスパッタなどにより、封止用ウエハ1の表面側に接続電極23を形成する。
【0032】
続いて、例えば公知のデュアルソースマグネトロンスパッタ装置を用いて、封止用ウエハ1における貫通孔配線22の下面に、既述の反応金属層5を積層する。具体的には、反応金属層5の形成される領域以外に例えば有機物からなるマスクの形成された封止用ウエハ1について、例えば当該領域が上側(スパッタ源側)を向くように、封止用ウエハ1を前記装置の真空容器内に載置する。次いで、前記真空容器内を真空雰囲気に設定した後、第1の金属ターゲットからなるスパッタ源と第2の金属ターゲットからなるスパッタ源とを順次切り替えて、既述の第1の金属膜31と第2の金属膜32とを交互に積層する。その後、例えば有機溶媒に封止用ウエハ1を浸漬して、マスクと共に当該マスク上に堆積した余分な金属膜を除去する。
【0033】
また、素子用ウエハ2については、フォトリソグラフィー及びエッチングにより水晶板に貫通溝13及び開口部18を形成し、例えば無電解メッキにより開口部18内に引き回し電極17の一部となる金属体を埋め込む。次いで、素子用ウエハ2の表面に例えば有機物からなる塗布膜を形成し、この塗布膜に対して電極パッド16、引き回し電極17及び励振電極12aの配置される領域が露出するようにパターニングしてフォトレジストマスクを形成する。続いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法などを用いて金からなる金属膜を素子用ウエハ2の表面に成膜して、その後リフトオフ法により余剰な金属膜をフォトレジストマスクと共に除去する。素子用ウエハ2の裏面側についても、同様に引き回し電極17及び励振電極12bを形成する。
【0034】
次いで、以上作製した各ウエハ1〜3を互いに直接接合する(ステップS12)。具体的には、各々のウエハ1〜3において互いに接合される面を各々清浄化し、真空雰囲気中において上側のウエハ1と中央のウエハ2とを直接接合させた後、上側のウエハ1と中央のウエハ2とが接合した状態の積層ウエハと下側のウエハ3とを順次接合し、ウエハ1〜3が接合された積層ウエハ4を得る。即ち、封止用ウエハ1の下面における凹部21の外周面と素子用ウエハ2の枠状体14の上面とを接合させると共に、素子用ウエハ2の枠状体14の下面と封止用ウエハ3の上面における凹部21の外周面とを接合させる。この時、反応金属層5と電極パッド16との間に既述の隙間領域34が介在しているので、これら反応金属層5及び電極パッド16が衝突(干渉)せずに、封止用ウエハ1と素子用ウエハ2とが互いに接触する。
【0035】
上記の直接接合は、例えば表面活性化接合法により行う。具体的には、真空中で、接合面同士を対向させた状態で、接合面に向かってイオンビームあるいは中性子ビームを照射し、対向する接合面を清浄化する。その後、接合面パターンのアライメントを行い、直ちに2つのウエハを接合させる。接合時には、5〜20kg/cm程度の圧力を印加するものの、加熱は不要である。この接合法では、ウエハ材料の破壊強度に匹敵する接合強度が得られる。また、接合するウエハ材料同士が異なっていても、熱膨張率差に由来する熱応力が発生しないため、接合によるデバイス特性の劣化がない。こうして図9に示すように、各ウエハ1〜3同士が互いに直接接合されて、各々の水晶振動子11の置かれる領域が真空雰囲気となるように気密封止パッケージ10が気密に封止される。この時、既に詳述したように、反応金属層5と電極パッド16とは電気的に接触していない状態となっている。
【0036】
続いて、図10に示すように、例えば貫通孔配線22の上方側における接続電極23に対して、電気スパーク、レーザー光あるいはフラッシュ光(紫外線から可視光までの波長の光)などのエネルギーこの例では電気スパークを供給する。このエネルギーは、接続電極23及び貫通孔配線22を介して反応金属層5に到達し、当該反応金属層5が発熱反応を起こし、例えば1500℃程度の温度に速やかに加熱する。既述のように、反応金属層5は外部からの刺激を受けて瞬間的に且つ局所的に発熱反応を起こして溶融するために、該反応金属層5の上下に配置された貫通孔配線22並びに電極パッド16b材料を巻き込んで溶融する。
【0037】
すなわち、反応金属層5が上下方向に亘って溶融すると、当該反応金属層5は、表面張力により球状になろうとする。従って、この反応金属層5の下端部は、下方側に向かって盛り上がっていき、既述の隙間領域34を通過して電極パッド16に到達する。そして、この反応金属層5の反応により発生した熱により、貫通孔配線22の下端部及び電極パッド16の上端部についても溶融するので、反応金属層5の反応終了時には、これら反応金属層5、貫通孔配線22の下端部及び電極パッド16の上端部は、図11に示すように、互いに合金化して合金層6として一体化する(ステップS13)。
【0038】
従って、既述の接続電極23、23は、水晶振動子11に対する電気信号の入力と、この入力信号に基づいて水晶振動子11が発振して得られる発振信号の出力と、を行うことができるように、貫通孔配線22、合金層6、電極パッド16a、16b及び引き回し電極17を介して、水晶振動子11の励振電極12a、12bに電気的に接続される。その後、例えばダイシングなどにより、各々の気密封止パッケージ10が個片化される(ステップS14)。
【0039】
ここで、既述の電気スパークを気密封止パッケージ10(接続電極23)に供給する装置について、図12を参照して簡単に説明する。この装置は、積層ウエハ4を載置するテーブル41と、このテーブル41を収納する処理容器42と、を備えている。処理容器42の天井面には、積層ウエハ4に対して電気スパークを供給するための点火電極(イグニッション)43が支持部材44により昇降自在に設けられており、この点火電極43には、スイッチ45を介して高圧電源部46が接続されている。そして、前記テーブル41の下方側には、縦横に配置されたXレール及びYレールからなる駆動部47が処理容器42の床面に配置されており、この駆動部47によって、点火電極43に対して積層ウエハ4における各々の気密封止パッケージ10が相対的に走査されるように、テーブル41が水平方向に移動自在に構成されている。図12中48は、処理容器42の搬送口49の開閉を行うシャッターである。
【0040】
この装置において既述の反応金属層5を反応させる時には、処理容器42内に積層ウエハ4を搬入してテーブル41上に載置する。次いで、積層ウエハ4上のある気密封止パッケージ10が点火電極43の下方側に位置するようにテーブル41を移動させると共に、当該気密封止パッケージ10の接続電極23に点火電極43を接触させる。続いて、スイッチ45を閉状態にして、高圧電源部46から例えば数百mA程度の電流を点火電極43を介して接続電極23に供給すると、この点火電極43と接続電極23との間に電気スパークが発生し、既述のように反応金属層5が反応して合金層6が形成される。こうしてテーブル41を移動させながら各々の気密封止パッケージ10に対して順次電気スパークを供給することにより、面内に亘って合金層6が形成される。
【0041】
上述の実施の形態によれば、水晶振動子11の形成された素子用ウエハ2と封止用ウエハ1、3とを直接接合した気密封止パッケージ10において、水晶振動子11に電気信号の入出力を行う電極パッド16について、封止用ウエハ1に隙間領域34を介して対向するように形成している。また、この電極パッド16と、封止用ウエハ1の貫通孔配線22との間に反応金属層5を配置して、ウエハ1〜3同士を直接接合した後、これらウエハ1〜3の外側から反応金属層5にエネルギーを供給して、反応金属層5を反応させている。そのため、気密封止パッケージ10を気密に封止した状態で貫通孔配線22、電極パッド16及び反応金属層5を合金化できるので、気密封止パッケージ10の気密性を確保しながら、貫通孔配線22と電極パッド16とを容易に電気的に接続できる。
【0042】
本発明のポイントは、封止用ウエハ1側に形成される、接合面との段差部(凹部21)で、素子用ウエハ2上の電極パッド16と、封止用ウエハ1側に設けられる貫通孔配線22との間に反応金属層5を有し、該反応金属層5は、ウエハ1〜3接合直後においては、外部着火源により発熱反応を起こす2つの金属膜31、32が交互に積層された反応金属層5であって、該反応金属層5の厚さ寸法t2が、封止用ウエハ1側に形成される、接合面との段差t、素子用ウエハ2上の電極パッド16の厚さ寸法t1とした時、t2≦t−t1であることを特徴とし、真空中でのウエハ1〜3の直接接合後に行われる外部からの着火処理によって、貫通孔配線22の接合部に接する部分、反応金属層5、そして素子用ウエハ2の電極パッド16に亘る領域が、貫通孔配線22を構成する材料と、反応金属層5を形成する材料、ならびに素子用ウエハ2上の電極パッド16の材料とが溶融して成る合金層6となっていることを特徴とする。
【0043】
本発明の意図するところは、水晶振動子11が作り込まれた素子用ウエハ2と、この素子用ウエハ2を気密封止するためのキャップの役割を持つ封止用ウエハ1、3とを互いに接合するにあたり、従来は、気密封止接合と貫通孔配線22による電気接続を同時に行っていたのに対し、本発明では、直接接合による気密封止を優先的に行い、直接接合による気密封止完了後に、貫通孔配線22と素子用ウエハ2上の電極パッド16との間の電気的接続を行う、というものである。即ち、直接接合による気密封止を優先するために、電気接続部は、t≧t1+t2を満足するように設定する。このため、ウエハ1〜3を接合した後は、気密封止性は確保されるものの、電気的には接続不良状態である。貫通孔配線22と素子用ウエハ2側の電極パッド16との間に配置した反応金属層5は、外部着火源により発熱反応を起こし、瞬間的且つ局所的に高温となって、反応金属層5を構成する第1の金属膜31及び第2の金属膜32のみならず、両側の貫通孔配線22及び電極パッド16と共に溶融、合金化が起こるために、貫通孔配線22と電極パッド16とを電気的に接続できる。
【0044】
この時、素子用ウエハ2における電極パッド16の形成や、封止用ウエハ1、3の凹部21の形成、ならびに反応金属層5の積層の各製造工程のばらつきを考慮すると、t=t1+t2を満足するように工程管理することは困難であるが、t>t1+t2を満たすような工程管理は容易である。従って、反応金属層5を用いることにより、気密封止パッケージ10を容易に製造できる。
【0045】
また、反応金属層5が容易に反応して発熱反応を起こすことから、当該反応金属層5を反応させるにあたって、励振電極12、電極パッド16及び引き回し電極17が溶融してしまう程あるいは水晶振動子11の特性が劣化してしまう程の大きなエネルギーを加える必要がない。そのため、水晶振動子11の特性劣化を抑えながら、またこれら励振電極12、電極パッド16及び引き回し電極17の形状を保ったままで、接続電極23と励振電極12とを電気的に接続できる。また、反応金属層5が容易に反応することから、またウエハ1〜3を加圧する必要がないことから、気密封止パッケージ10を作製する装置(直接接合装置、スパッタ装置、図12のスパークを生成させる装置)の構成を簡略化できる。
【0046】
ここで、反応金属層5について補足する。この反応金属層5は、反応性多層膜、反応性多層フォイル、あるいは反応性多層箔などとも呼ばれており、既述の背景の欄で述べた特許文献8〜10に記載されているように、バルク材の加熱が必要であった従来のロウ材やはんだの代替となる材料であり、室温下であっても、接合したいバルク材料の間に反応性多層膜のフィルムを挟み、バルク材を両側から押圧し、反応性多層膜に着火することで、発熱反応が瞬時に伝搬し、局所的に温度が上がり接合を行うことができる。一方、本発明では、反応金属層5をウエハ1〜3同士の接合に用いるのではなく、電気接続部を溶融するための熱源に用いている。そのため、外部着火時に、反応金属層5が両側から押圧されている必要はない。
【0047】
[第1の実施の形態の変形例]
続いて、第1の実施の形態の変形例について、図13〜図17を参照して以下に説明する。尚、以降の図13〜図17において、既述の第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
図13は、反応金属層5を電極パッド16上に配置した例を示している。また、図14は、反応金属層5を電極パッド16上に配置すると共に、当該反応金属層5と電極パッド16との間に、膜厚寸法t3が例えば0.5μmの第1のバッファー層51を設けた例を示している。この第1のバッファー層51は、電極パッド16と反応金属層5との密着性を高める、あるいは反応金属層5が発熱反応を起こす際に、電極パッド16と反応金属層5との合金化を促進する役割を持つ。従って、第1のバッファー層51は、電極パッド16と合金を形成しやすい材料により構成され、例えば電極パッド16が金の場合には、シリコンあるいは金を含む合金(例えば金−スズ合金、金−ゲルマニウム合金など)またはアルミニウムなどが用いられる。
【0049】
この例では、反応金属層5が反応すると、貫通孔配線22、反応金属層5、第1のバッファー層51及び電極パッド16が溶融して合金化し、既述の第1の実施の形態よりも反応金属層5と電極パッド16との合金化反応が容易に起こる。この場合には、電気スパークのエネルギーは、接続電極23、貫通孔配線22及び貫通孔配線22と反応金属層5との間の隙間領域34を介して反応金属層5に伝達される。
【0050】
図15は、既述の図14における第1のバッファー層51に加えて、例えば金、金−スズ合金あるいはシリコンなどからなる第2のバッファー層52を貫通孔配線22の下面側に形成した例を示している。この第2のバッファー層52は、厚さ寸法t4がt≧t1+t2+t4となるように形成されており、反応金属層5が発熱反応を起こす際に、貫通孔配線22と反応金属層5との合金化を促進する役割を持つ。この例では、反応金属層5が発熱反応を起こすと、電極パッド16、貫通孔配線22、第1のバッファー層51及び第2のバッファー層52が溶融して合金化する。この時、第1のバッファー層51を設けずに、第2のバッファー層52を配置しても良い。
【0051】
図16は、封止用ウエハ1、3に凹部21を設けることに代えて、素子用ウエハ2側に凹部21を設けた例を示している。即ち、封止用ウエハ1、3は、各々平板状に形成され、素子用ウエハ2は、表面側及び裏面側が各々逆メサ状に加工されて各々凹部21、21が形成されている。図17は、封止用ウエハ1については平板状に形成すると共に、素子用ウエハ2及び封止用ウエハ3については表面側に各々凹部21を形成した例を示している。即ち、各ウエハ1〜3は、反応金属層5、電極パッド16、バッファー層51、52が封止用ウエハ1と素子用ウエハ2との接触(接合)を阻害しないように、反応金属層5と貫通孔配線22または電極パッド16との間に隙間領域34が介在するように形成される。これら図16及び図17の各例についても、貫通孔配線22と電極パッド16との間に第1のバッファー層51や第2のバッファー層52を設けても良い。
【0052】
また、以上の各例では、素子用ウエハ2において2つの電極パッド16a、16bを各々封止用ウエハ1側(上方側)に配置したが、例えば一方の電極パッド16bについては封止用ウエハ3側(下方側)に配置すると共に、当該電極パッド16bに対して反応金属層5を介して対向するように、封止用ウエハ3に貫通孔配線22を形成しても良い。
更に、水晶振動子11を左側から支持部15によって片持ちで支持したが、当該水晶振動子11の右側にも支持部15を形成し、いわば水晶振動子11を両持ちで支持するようにしても良い。
【0053】
ここで、反応金属層5の発熱反応を引き起こす外部着火源としては、既述の電気スパークを発生させる装置以外にも、レーザ光やパルス状の温度変化を与える装置を用いても良い。以下に、このような装置について説明する。尚、既述の図12と同じ構成の部位については同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図18は、積層ウエハ4に対してレーザー光を照射する装置を示しており、既述の図12に示した装置における点火電極43に代えて、レーザ光を照射する照射部61を設けた例を示している。図18中、62はレーザー光の発振部である。この装置では、積層ウエハ4をテーブル41に載置すると共に、接続電極23に対してレーザー光を照射すると、接続電極23及び貫通孔配線22を介してレーザー光の熱が反応金属層5に伝達され、当該反応金属層5が既述のように反応する。そして、既述の例と同様に、照射部61に対して積層ウエハ4が相対的にスキャンされる。
【0055】
図19は、積層ウエハ4に対してRTA(Rapid Thermal Anneal)する装置を示しており、既述の図12の装置における点火電極43に代えて、処理容器42の上方側には、紫外線から可視光までの波長のフラッシュ光を下方側に向けて照射するためのフラッシュランプ63が設けられている。このフラッシュランプ63の下方側における処理容器42の天井面には、例えばガラスや石英などからなる透明窓64が配置されている。
この装置では、テーブル41に積層ウエハ4を載置して、次いで積層ウエハ4にフラッシュ光を照射すると、当該積層ウエハ4上の反応金属層5が面内に亘って一括して反応する。
【0056】
[第2の実施の形態:MEMS、反応金属層]
以上の各例では、デバイス素子として水晶振動子11を例に挙げたが、第2の実施の形態では、このデバイス素子としてMEMS素子70を用いた例について説明する。このMEMS素子70についても、以下に説明するように、半導体加工技術を用いて各々作製された素子用ウエハ2と封止用ウエハ1とをウエハレベルで直接接合して、次いで反応金属層5を反応させた後、ダイシングなどにより個片化される。第2の実施の形態では、各ウエハ1、2は、各々多結晶シリコンにより構成されており、特に断らない限り、これらウエハ1、2により構成される部位についても同様に多結晶シリコンにより構成されているものとする。また、第1の実施の形態と同じ部位や工程については説明を省略する。
【0057】
MEMS素子70は、図20〜図23に示すように、概略円板状のディスク71からなる振動体と、このディスク71を振動させるために当該ディスク71の側方側に配置された励振電極72と、を備えている。ディスク71の下面側中央部には、棒状に伸びる支持部73の一端側が接続されており、この支持部73の他端側は、素子用ウエハ2の表面において図22中左右方向(X方向)に伸びる概略板状のバイアス電極74に支持されている。尚、図22は、図21におけるA−A線にて切断した縦断面を示している。このバイアス電極74は、ディスク71に対してバイアス用の電圧を印加するためのものであり、当該バイアス電極74における右側の端部がディスク71の下方領域よりも右側に伸び出している。バイアス電極74の厚み寸法は、例えばt1この例では2μmとなっている。バイアス電極74と素子用ウエハ2との間には、例えば二酸化シリコンからなる絶縁膜(図示せず)が介在している。励振電極72及びバイアス電極74は、各々電極パッドをなす。尚、図23は、図21におけるB−B線にて切断した縦断面を示している。
【0058】
既述の励振電極72は、概略角柱状に形成されており、ディスク71を挟んで前後方向(Y方向)に相対向するように2箇所に設けられている。各々の励振電極72、72は、ディスク71側の側面部がディスク71の外縁に倣うように、またこの外縁との間に空隙75が形成されるように、当該側面部が上下方向に亘って円弧状に切り欠かれている。ディスク71の厚み寸法は、例えばT1となっている。各々の励振電極72、72と素子用ウエハ2との間には、図示しない絶縁膜が配置されている。
【0059】
封止用ウエハ1は、図21〜図23に示すように、素子用ウエハ2におけるディスク71及び励振電極72、72の形成された領域を収納するように、且つ当該領域の外側において周方向に亘って下端部が素子用ウエハ2と接触するように、下面側に凹部21が形成されている。図22において、例えば励振電極72、72における各々の左端の部位と封止用ウエハ1の下端面との間の寸法は例えばTとなっており、バイアス電極74の右端の部位と封止用ウエハ1の下端面との間の寸法は例えばtこの例では10μmとなっている。
【0060】
そして、前記部位に対向する封止用ウエハ1には、各々貫通孔配線22が形成されており、これら貫通孔配線22の下面側には、厚さ寸法がt2この例では7.8μmの反応金属層5が各々設けられている。この例では、反応金属層5における第1の金属膜31及び第2の金属膜32は、夫々例えばチタン及びアルミニウムにより構成されている。これら金属膜31、32の膜厚d1、d2は、各々50nmとなっている。また、積層膜33の繰り返し数は、78となっている。
【0061】
以上の凹部21、励振電極72、72、バイアス電極74及び反応金属層5は、各寸法がt2≦t−t1及びt2≦T−T1となるように形成されている。従って、反応金属層5と励振電極72、72との間及び反応金属層5とバイアス電極74との間には、高さ寸法がΔt(Δt=t−t1−t2=T−T1−t2)の隙間領域34が各々形成されている。貫通孔配線22の上面側には、図20に示すように、既述の接続電極23が各々形成されている。
【0062】
この第2の実施の形態において気密封止パッケージ10を製造する時には、図24に示すように、始めに各ウエハ1、2に対して半導体加工技術を用いて個別に作製する。具体的には、素子用ウエハ2については、インゴットから切り出して研磨したシリコンウエハに対して、多結晶シリコン膜や絶縁膜の成膜、フォトリソグラフィー、エッチング、犠牲膜の成膜及び熱酸化処理などを組み合わせて、既述のディスク71や励振電極72を作製する。また、封止用ウエハ1については、シリコンウエハに対して、同様にフォトリソグラフィー、エッチング、スパッタ及び電解メッキを組み合わせて、凹部21、貫通孔配線22、反応金属層5及び接続電極23を形成する。この例では、貫通孔配線22は、例えば銅(Cu)により構成される。
【0063】
次いで、図25に示すように、素子用ウエハ2と封止用ウエハ1とを真空雰囲気において互いに直接接合する。この時、励振電極72、72と反応金属層5との間及びバイアス電極74と反応金属層5との間には、既述のように隙間領域34が各々介在しているので、これら励振電極72、72、バイアス電極74及び反応金属層5がウエハ1、2同士の接触に干渉せず(邪魔にならず)、従って貫通孔配線22と励振電極72、72及びバイアス電極74との間は電気的に導通していない。
【0064】
続いて、ウエハ1、2同士を接合した積層ウエハ4に対して電気スパークなどのエネルギーを供給すると、図26に示すように、反応金属層5が既述の例と同様に反応して、貫通孔配線22と励振電極72、72及びバイアス電極74とが互いに導通する。そして、面内に亘って反応金属層5を反応させた後、ダイシングなどによって気密封止パッケージ10が個片化される。
【0065】
こうして励振電極72、72に接続電極23を介して交流電圧を印加すると共に、バイアス電極74に接続電極23を介して直流のバイアス電圧を印加すると、静電結合によってディスク71がある周波数において輪郭振動で振動する。そして、ディスク71の振動は、静電結合を介して励振電極72、72から電気信号として取り出される。この第2の実施の形態においても、既述の各例と同様の効果が得られる。
【0066】
第2の実施の形態についても、図27のように、反応金属層5を素子用ウエハ2側に配置しても良いし、図28及び図29に示すように、貫通孔配線22と励振電極72、72やバイアス電極74との間に、バッファー層51、52を介在させても良い。第2のバッファー層52は、この例ではチタン、クロム、タンタル(Ta)、アルミニウム、ジルコニウムあるいはタングステン(W)などにより構成される。また、図30に示すように、封止用ウエハ1については平板状に形成しても良い。この場合には、素子用ウエハ2に凹部21を形成すると共に、バイアス電極74の表面の高さ位置が励振電極72、72の表面と高さ位置と同じ寸法となるように、当該バイアス電極74の下方側に例えば絶縁体からなる支持部76を配置する。
【0067】
[その他の例]
反応金属層5における第1の金属膜31と第2の金属膜32としては、以下の(a)〜(f)のいずれかを含むように構成される。従って、以下の(a)〜(f)の積層膜33の少なくとも2つを組み合わせて用いても良い。
(a)第1の金属膜:ニッケル 第2の金属膜;アルミニウム
(b)第1の金属膜:チタン 第2の金属膜;アルミニウム
(c)第1の金属膜:ジルコニウム(Zr) 第2の金属膜;アルミニウム
(d)第1の金属膜:ハフニウム(Hf) 第2の金属膜;アルミニウム
(e)第1の金属膜:ニッケル 第2の金属膜;シリコン
(f)第1の金属膜:ニオブ(Nb) 第2の金属膜;シリコン
【0068】
第1の金属膜31及び第2の金属膜32の膜厚については、互いに異なる膜厚に設定にしても良い。また、反応金属層5における各金属膜31、32の各層の膜厚、金属膜31に対する金属膜32の膜厚比、積層膜33の積層枚数については、電極パッド16の材質、膜厚t1、貫通孔配線22の材質、凹部21の高さ膜厚tなどに依存して設計パラメータとして適宜選択される。また、反応金属層5の発熱反応によって当該反応金属層5や貫通孔配線22あるいは電極パッド16が昇温する温度は、前記金属膜31、32の組み合わせや、積層膜33の繰り返し数及び反応金属層5の膜厚t2に影響される。
【0069】
ここで、反応金属層5の構成材料が同じであれば、積層膜33の繰り返し数が多いほど、また膜厚t2が厚いほど、当該反応金属層5の発熱反応により到達する温度が高くなるので、各金属膜31、32の膜厚を薄くすると共に、t<t1+t2の範囲内で可能な限り、前記繰り返し数を多くすると共に、膜厚t2を厚くすることが望ましい。
【0070】
また、既述の例ではt2<t−t1となるように凹部21、反応金属層5及び電極パッド16の各寸法を設定したが、膜厚t1及びt2があまりにも小さすぎると、反応金属層5の溶融によっても貫通孔配線22と電極パッド16とをコンタクトさせにくくなってしまうことから、ta<t1+t2<tとなるように各寸法を設定することが好ましい。膜厚taは、具体的には膜厚tで規定すると例えば0.01×t〜0.1×t程度であり、実際の寸法としては例えば0.1μm〜1μm程度である。更に、この反応金属層5のX−Y平面における面積についても、小さすぎると電極パッド16または貫通孔配線22に到達するまでの体積にはなり難いため、100μm×100μm〜300μm×300μm程度であることが好ましい。また、t2=t−t1となるように各寸法を設定しても良い。
【0071】
更に、既述の各例ではウエハレベルで多数の気密封止パッケージ10を製造した後個片化したが、ウエハ1〜3(1、2)同士を互いに直接接合した後個片化して、その後反応金属層5を反応させるようにしても良いし、更にまた、各ウエハ1〜3(1、2)を夫々個片化した後、これらウエハ1〜3(1、2)を互いに直接接合し、その後反応金属層5を反応させても良い。また、反応金属層5としては、金属膜31、32の積層体に代えて、これら金属膜31、32を夫々構成する金属粉末を互いに混合した混合粉末を用いても良い。この場合には、前記混合粉末にバインダーを混練してシート状に成形し、次いで仮焼によりバインダーを除去した状態の成形体が用いられる。
【0072】
また、積層ウエハ4に対して電気スパークなどのエネルギーを供給する時は、封止用ウエハ1側を上に向けて反応金属層5を反応させたが、封止用ウエハ3側を上に向けて、当該封止用ウエハ3を介してエネルギーを反応金属層5に伝達するようにしても良い。更に、反応金属層5にエネルギーを供給することにより当該反応金属層5、貫通孔配線22及び電極パッド16を合金化したが、これら反応金属層5、貫通孔配線22及び電極パッド16が合金化していなくても、反応金属層5が少なくとも溶融あるいは軟化することによって貫通孔配線22と電極パッド16とを電気的に接続していれば良い。更にまた、ウエハ1〜3(1、2)を直接接合した後、反応金属層5を反応させたが、これらウエハ1〜3(1、2)を直接接合しながら反応金属層5を反応させても良い。
【0073】
[第3の実施の形態:共晶金属層]
既述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、水晶振動子11やMEMS素子70における各電極(電極パッド16、励振電極72及びバイアス電極74)と貫通孔配線22とを互いに電気的に接続するにあたり、反応金属層5を用いたが、以下に説明する第3の実施の形態では、この反応金属層5に代えて、共晶金属層80を用いている。即ち、前記各電極と貫通孔配線22との間を導通させる時に、これら水晶振動子11やMEMS素子70と貫通孔配線22との間に金属からなる液相を形成するにあたって、第3の実施の形態では共晶を利用している。以下に、共晶金属層80について、第1の実施の形態で述べた水晶振動子11を例に挙げて説明する。尚、既述の第1の実施の形態と同じ部位については同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
図31に示すように、貫通孔配線22の下面側には、厚さ寸法t2が例えば500nmとなるように設定された共晶金属層80が設けられている。この共晶金属層80は、図32の下段に示すように、例えば金などからなる第1の金属成分である第1の金属膜81と、例えばスズなどからなる第2の金属成分である第2の金属膜82と、が交互に積層された構成を採っている。これら第1の金属膜81及び第2の金属膜82は、第1の金属膜81と第2の金属膜82との重量比が8:2となるように、即ち共晶金属層80における各金属膜81、82が共晶を起こす組成比となるように、例えば各々の膜厚寸法が設定されている。従って、この場合における共晶金属層80の共晶温度は、例えば278℃となっている。この実施の形態では、段差t及び厚さ寸法t1が夫々800nm及び200nmとなっており、電極パッド16の下側には、例えばクロムなどからなる図示しない密着層が例えば10nm程度の厚さ寸法となるように形成されている。従って、高さ寸法Δtは、90nm(=800−500−200−10)となっている。
【0075】
この共晶金属層80を用いた場合においても、各ウエハ1〜3を互いに直接接合する(ステップS12)と、電極パッド16と貫通孔配線22とは、互いに離間していて導通しない。次いで、共晶金属層80が共晶温度以上の処理温度例えば290℃程度となるように、外部からエネルギーを加える(ステップS13)。具体的には、図19に示したRTA装置や、通常の加熱炉(電気炉)、拡散炉あるいは図12、図13及び図18の装置などを用いて、積層ウエハ4の全体を前記処理温度に加熱する。このエネルギーにより、第1の金属膜81と第2の金属膜82とは、図32に示すように、共晶合金となるように(互いに混ざり合うように)溶融して液相となる。こうして共晶金属層80を冷却することにより、当該共晶金属層80を介して、同様に電極パッド16と貫通孔配線22とが導通する。この時、電極パッド16や貫通孔配線22の溶融温度や水晶振動子11の特性が劣化してしまう温度まで加熱していないので、当該水晶振動子11の特性劣化や例えば貫通孔配線22の断線などが防止される。
【0076】
共晶金属層80を共晶化させる時の処理温度としては、共晶温度よりも5℃〜20℃程度高い温度であれば良い。また、共晶金属層80を構成する第1の金属膜81と第2の金属膜82との組成比について、当該共晶金属層80が全て共晶合金化しなくても、電極パッド16と貫通孔配線22との間を電気的に接続できる程度の液相が生成するように、前記重量組成比が例えば金:スズ=76:24〜82:18程度になるように設定しても良い。更に、第1の金属膜81及び第2の金属膜82について、既述のようにこれら金属膜81、82を積層した構成に代えて、元素状あるいは粉末状で金属層81、82を互いに混合させた共晶金属層80または一度共晶化させた合金体をシート状に形成した共晶金属層80を用いても良い。
【0077】
また、共晶金属層80について、貫通孔配線22側に配置したが、既述の図13のように、電極パッド16側に配置しても良い。更に、図14及び図15のように、共晶金属層80と電極パッド16との間、及び共晶金属層80と貫通孔配線22との間の少なくとも一方に、例えばチタン、クロム、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム及びタングステンのいずれかからなるバッファー層51(52)を介在させても良い。電極パッド16が金により構成されている時には、この電極パッド16と共晶金属層80との間に配置するバッファー層51としては、シリコンや金を含む合金例えば金―スズ合金、金―ゲルマニウム合金あるいはアルミニウムなどを用いても良い。
【0078】
バッファー層51(52)を配置することにより、当該バッファー層51(52)を介して電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間における合金化が促進されるので、共晶金属層80と電極パッド16との間の導通を確実に容易に行うことができる。また、バッファー層51(52)を用いることにより、バッファー層51(52)の膜厚分だけ共晶金属層80の薄膜化を図ることができる。従って、共晶金属層80として例えば金などの高価な元素を用いる場合には、気密封止パッケージ10のコストダウンを図ることができる。
【0079】
この時、第1の金属膜81と第2の金属膜82との間だけでなく、電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間において合金化反応が生じる場合には、バッファー層51(52)として、例えばモリブデン(Mo)、タンタル、タングステン、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)あるいはチタンータングステン化合物(TiW)などの高融点材料を用いても良い。即ち、電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間において合金化反応が生じると、用いる材料によっては、これら電極パッド16や貫通孔配線22が浸食されて隙間領域34側に移動して、電極パッド16と貫通孔配線22との間の導通が取れなくなってしまう場合がある。そこで、このような場合には、バッファー層51(52)は、電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間の密着性を高めることに代えて、あるいは電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間の密着性を高めると共に、これら電極パッド16や貫通孔配線22と共晶金属層80との間における合金化反応を防止するためのバリア金属層としての役割を果たすことになる。また、図16や図17のように、凹部21を素子用ウエハ2側に設けても良い。
【0080】
また、第1の金属成分及び第2の金属成分としては、既述の金―20重量%スズの構成に代えて、他の共晶合金を形成する2元系の共晶金属層80を用いても良い。具体的には、共晶金属層80として、以下の表1に示す(a)〜(k)のうちのいずれかを含む構成としても良い。尚、この表1における右側の欄には、各々の共晶金属層80の共晶温度を示しており、既に説明した共晶金属層80についても(a)として併記している。
【0081】
(表1)

【0082】
この表1において、ハイフン(−)の左側及び右側の元素が夫々第1の金属成分及び第2の金属成分を示しており、当該右側の元素に付した数字が共晶金属層80に含まれる第2の金属成分の割合(重量パーセント)を意味している。また、3元系の共晶金属層80を用いても良く、表1の(l)には、第3の金属成分として銅を用いた例を示しており、これら第1の金属成分、第2の金属成分及び前記第3の金属成分の組成比についても、既述の組成範囲となるように各々設定しても良い。これら(a)〜(l)のうち、既述の水晶振動子11においては、共晶金属層80の熱処理時に水晶振動子11がキューリー点を越えないように、共晶温度が例えば400℃以下の共晶金属層80が用いられる。
【0083】
更に、以上説明した共晶金属層80をMEMS素子70に適用しても良い。具体的には、例えばバイアス電極74の厚み寸法t1が2μm、バイアス電極74の上端面と封止用ウエハ1の下端面との間の寸法tが10μmであり、貫通孔配線22が銅により構成されている場合には、共晶金属層80として表1の(a)〜(l)のうち例えば(c)の構成を用いても良い。共晶金属層80は、貫通孔配線22側あるいは励振電極72及びバイアス電極74側に配置される。そして、共晶金属層80の厚さ寸法t2が例えば7.8μmに設定されると共に、例えば380℃にて共晶金属層80が溶融され、貫通孔配線22と励振電極72及びバイアス電極74とが夫々互いに導通する。
このMEMS素子70の場合においても、表1に示した共晶金属層80のいずれか一つあるいは表1の共晶金属層80の複数を組み合わせて用いても良いし、同様にバッファー層51(52)を用いても良い。
【0084】
ここで、表1に挙げた金属膜81、82のうち例えば銅や金などは、電極パッド16や貫通孔配線22を構成する材料となっている。従って、共晶金属層80における第1の金属膜81及び第2の金属膜82のいずれか一方について、これら電極パッド16や貫通孔配線22の一方に兼用させても良い。この場合には、共晶金属層80は、第1の金属膜81及び第2の金属膜82を備えることに代えて、これら第1の金属膜81及び第2の金属膜82の他方により構成しても良い。具体的には、図33に示すように、共晶金属層80をスズにより構成すると、例えば250℃程度の熱処理を行うことにより、当該共晶金属層80が溶融する。そして、図34に示すように、電極パッド16側では金―スズからなる共晶合金が形成され、貫通孔配線22側では銅―スズからなる共晶合金が形成される。こうして共晶金属層80を介して電極パッド16と貫通孔配線22とが導通する。
【0085】
[第4の実施の形態:金属間化合物]
この第4の実施の形態では、電極パッド16や、励振電極72及びバイアス電極74と貫通孔配線22とを互いに電気的に接続するにあたり、反応金属層5や共晶金属層80に代えて、金属間化合物を利用している。具体的には、水晶振動子11の例について説明すると、図35に示すように、電極パッド16と貫通孔配線22との間には、加熱によって金属間化合物を形成する前駆体層90が介在している。この前駆体層90は、例えばインジウム(融点:156℃)及びスズ(融点:231℃)の少なくとも一方この例ではインジウムにより構成された第1の金属成分を含む第1の金属膜91と、この第1の金属膜91よりも融点の高い第2の金属膜92とにより構成されている。第2の金属膜92は、例えば銅、銀、金及びニッケルの少なくともいずれかを含んでおり、この例では銀により構成されている。
【0086】
電極パッド16の上面及び貫通孔配線22の下面には、各々厚み寸法tL及び厚み寸法tH1が各々例えば0.5μmに設定された第2の金属膜92が各々形成されており、貫通孔配線22の下側の第2の金属膜92の裏面側には、厚み寸法tH2が例えば2μmに設定された第1の金属膜91が配置されている。尚、電極パッド16及び貫通孔配線22と第2の金属膜92との間には、膜厚寸法が例えば0.1μmのクロムなどからなる図示しない密着層が各々介在している。この例では、膜厚t1及び高さ寸法tが夫々0.5μm及び4μmであり、従ってt≧t1+tH1+tH2+tL(4≧0.5+0.5+2+0.5=3.5、厚み寸法tH1、tLは前記密着層の膜厚寸法を各々含む)となっている。
【0087】
この第4の実施の形態においても、各ウエハ1〜3を互いに直接接合する(ステップS12)と、第1の金属膜91と電極パッド16側の第2の金属膜92との間には、高さ寸法Δtの隙間領域34が形成されるので、これら第1の金属膜91と第2の金属膜92とは導通しない。次いで、第3の実施の形態と同様の手法により、積層ウエハ4に対して第1の金属膜91の融点以上の処理温度例えば160℃〜250℃程度この例では175℃で2時間の熱処理を行うと、図36に示すように、始めに第1の金属膜91が溶融して、既述の隙間領域34が埋められていく。そして、第1の金属膜91と第2の金属膜92とが互いに液相拡散して、これら金属膜91、92がある一定比となった金属間化合物(例えばAg3InやAgIn2)93が形成される。こうして積層ウエハ4を冷却することにより、金属間化合物93を介して電極パッド16と貫通孔配線22とが互いに電気的に接続される。
【0088】
この時、第2の金属膜92の厚み寸法tL、tH1を既述のように設定していることから、電極パッド16の上面及び貫通孔配線22の下面は、各々第2の金属膜92により被覆されたままとなり、即ち未反応の第2の金属膜92が電極パッド16側及び貫通孔配線22側に僅かに残るので、第1の金属膜91とは接触しない。そのため、電極パッド16及び貫通孔配線22と第1の金属膜91との反応(電極パッド16や貫通孔配線22への第1の金属膜91の拡散)が抑制される。また、金属間化合物93を形成する時の熱処理温度として、第1の金属膜91の融点と第2の金属膜92の融点との間の温度、言い換えると電極パッド16や貫通孔配線22が溶融せず、且つ水晶振動子11へのダメージを抑制できる温度にしている。そのため、電極パッド16と貫通孔配線22とが導通するように隙間領域34を埋めつつも、例えば水晶振動子11の特性劣化を抑えることができる。尚、第1の金属膜91の厚み寸法tH2によって(厚い場合)は、既述の金属間化合物93と共に未反応の第1の金属膜91が残る場合もある。
【0089】
ここで、前駆体層90の熱処理によって生成した既述の金属間化合物93は、融点が例えば880℃程度であり、第1の金属膜91や第2の金属膜92の融点と比べて極めて高い。従って、気密封止パッケージ10を形成した後、当該パッケージ10を例えば電子部品に搭載する(固定すると共に電気的に接続する)ためにはんだを用いて熱処理を行う時、数百℃程度の熱処理を行っても、金属間化合物93は溶融しない。そのため、電極パッド16と貫通孔配線22とが前記熱処理によって絶縁されることを防止できる。
【0090】
この第4の実施の形態においても、高さ寸法tに応じて、熱処理によって隙間領域34が埋められるように各厚み寸法tH1、tH2、tLを適宜設定しても良い。また、第1の金属膜91及び第2の金属膜92の組み合わせとしては、水晶振動子11に許容される熱処理温度を勘案して適宜選択される。図35における第1の金属膜91について、貫通孔配線22側の第2の金属膜92の下面側に形成することに代えて、電極パッド16側の第2の金属膜92の上層側に配置しても良い。
【0091】
以上の第4の実施の形態では、第1の金属膜81としてインジウムを例に挙げて説明したが、この第1の金属膜81としてインジウムに代えてスズを用いる場合には、金属間化合物93を形成する時の熱処理温度及び熱処理時間としては、例えば以下の表2に示す値に設定しても良い。
【0092】
(表2)

【0093】
従って、第1の金属膜91及び第2の金属膜92として夫々スズ及び銅や銀、あるいは金を用いる時には、これら第1の金属膜91と第2の金属膜92との組成比によっては、前駆体層90は、既述の第3の実施の形態における共晶金属層80を構成する場合もある。このような場合には、前駆体層90(共晶金属層80)に対して熱処理を行うと、前記組成比によって、金属間化合物93及び共晶金属層80のいずれか一方からなる単一層や、金属間化合物93及び共晶金属層80の混合物が生成する。
【0094】
以上説明した金属間化合物93の融点が気密封止パッケージ10を形成した後に行われる熱処理の温度よりも高いことは既に述べたが、この融点について、金属間化合物93の代表的な例について以下の表3に示しておく。
(表3)

【0095】
次に、第4の実施の形態の変形例について、以下に説明する。図37は、電極パッド16の上面及び貫通孔配線22の下面に各々第1の金属膜91を形成すると共に、貫通孔配線22側の第1の金属膜91の下面に第2の金属膜92を介在させた例を示している。即ち、第4の実施の形態では、電極パッド16と貫通孔配線22との間に、前駆体層90の熱処理によって生成する金属間化合物93が隙間領域34を埋める(電極パッド16と貫通孔配線22との間を導通させる)ように、第1の金属膜91及び第2の金属膜92を形成すれば良い。
【0096】
また、図38は、貫通孔配線22の下面側に第2の金属膜92を形成すると共に、この第2の金属膜92の下面側に第1の金属膜91を配置して、1層の第1の金属膜91と1層の第2の金属膜92とにより前駆体層90を構成した例を示しており、この場合においても既述の各例と同様の作用効果が得られる。このような構成においても、第1の金属膜91と第2の金属膜92との上下方向の順番を互いに入れ替えても良いし、あるいはこれら第1の金属膜91と第2の金属膜92とからなる前駆体層90を電極パッド16上に配置しても良い。
【0097】
ここで、第2の金属膜92を金により構成しても良いことは既に述べたが、図38では、第1の金属膜91に対して隙間領域34を介して下方側に位置する電極パッド16を金により構成しているので、当該電極パッド16は、前駆体層90の一部をなしているとも言える。即ち、図38は、既述の図35において、電極パッド16の上面の第2の金属膜92について、銀に代えて金により構成すると共に、当該第2の金属膜92を電極パッド16と一体化した構成を採っているとも言える。
【0098】
更に、図39は、前駆体層90について、第1の金属膜91により構成すると共に、貫通孔配線22の下面側に形成した例を示している。即ち、図38で説明したように、電極パッド16が金により構成されている時には、当該電極パッド16が前駆体層90の一部を構成していると言える。また、この前駆体層90の上方側の貫通孔配線22が銅により構成されており、従って貫通孔配線22についても前駆体層90の一部をなしていると言える。従って、この前駆体層90に対して熱処理を行うと、前駆体層90が溶融すると共に、この前駆体層90が電極パッド16側及び貫通孔配線22側に拡散して、当該前駆体層90、電極パッド16及び貫通孔配線22によって金属間化合物93が形成される。具体的には、貫通孔配線22側では、インジウム及び銅からなる金属間化合物93が形成され、電極パッド16側ではインジウム及び金からなる金属間化合物93が形成され、こうして既述の例と同様の作用効果が得られる。
【0099】
ここで、図39において、電極パッド16や貫通孔配線22がインジウムやスズからなる前駆体層90と金属間化合物93を形成しない金属により構成されている場合であっても、熱処理により前駆体層90が溶融すると、隙間領域34を埋めるようにインジウムやスズからなる液相が形成される。従って、本発明で用いる金属層としては、これらインジウム及びスズのいずれか一方を用いても良いし、インジウム及びスズの混合体を用いても良い。この第4の実施の形態においても、前駆体層90を第1の金属膜91及び第2の金属膜92により構成する場合には、これら金属膜91、92を粉末状で混合した前駆体層90を用いても良い。
第4の実施の形態においても、電極パッド16と前駆体層90との間及び、貫通孔配線22と前駆体層90との間の少なくとも一方に、バッファー層51(52)を介在させても良い。
【0100】
この第4の実施の形態をMEMS素子70に適用しても良い。即ち、例えばバイアス電極74の厚み寸法t1が2μm、バイアス電極74の上端面と封止用ウエハ1の下端面との間の寸法tが4μmであり、貫通孔配線22が銅により構成されている場合には、前駆体層90を以下のように配置しても良い。具体的には、励振電極72の表面、バイアス電極74の表面及び貫通孔配線22の下面に各々第2の金属膜92を形成すると共に、貫通孔配線22側の第2の金属膜92の下層側に第1の金属膜81を形成する。そして、これら厚み寸法tH1、tH2、tLは、既述の図35と同じ値に各々設定される。こうして熱処理を行うことにより金属間化合物93が形成されて励振電極72及びバイアス電極74と貫通孔配線22とが各々互いに電気的に接続される。MEMS素子70の場合にも、バッファー層51(52)やクロムからなる密着層を用いても良いし、既述の図37〜図39などのように前駆体層90を構成しても良い。
【0101】
以上述べた第1の金属膜31、81、91及び第2の金属膜32、82、92としては、既述の金属からなる単体により構成しても良いし、他の金属を不純物レベルあるいは熱処理による液相の形成が阻害されない程度に混入しても良い。また、反応金属層5や共晶金属層80について、前駆体層90と同様に、電極パッド16及び貫通孔配線22側に各々設けても良い。
【符号の説明】
【0102】
1、3 封止用ウエハ
2 素子用ウエハ
5 反応金属層
10 気密封止パッケージ
11 水晶振動子
12a 12b 励振電極
16a、16b 電極パッド
21 凹部
22 貫通孔配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス素子の形成された素子用基板と絶縁体からなる封止用基板とを直接接合により互いに接合して、前記デバイス素子の置かれる領域を気密に封止した気密封止パッケージにおいて、
前記封止用基板に隙間領域を介して対向するように前記素子用基板に形成され、前記デバイス素子に対して電気信号の入出力を行うための電極パッドと、
前記電極パッドに対向する前記封止用基板に形成され、当該封止用基板の板厚方向に貫通するように形成された導電路と、
前記電極パッドと前記導電路との間に設けられ、前記素子用基板及び前記封止用基板が互いに封止された後、これら基板の外側から伝達されるエネルギーにより溶融して、前記電極パッドと前記導電路とを互いに電気的に接続するための金属層と、を備えたことを特徴とする気密封止パッケージ。
【請求項2】
前記金属層と、当該金属層に対向する前記電極パッドまたは前記導電路との間には、隙間領域が介在していることを特徴とする請求項1に記載の気密封止パッケージ。
【請求項3】
前記隙間領域の高さ寸法は、1μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の気密封止パッケージ。
【請求項4】
前記デバイス素子は、前記素子用基板に平面的に複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項5】
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分と発熱反応を起こして当該金属層を溶融させる第2の金属成分と、を備えた反応金属層であり、
前記エネルギーは、これら第1の金属成分と第2の金属成分との発熱反応を開始させるためのものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項6】
前記反応金属層は、以下の(a)〜(f)のいずれかを含むことを特徴とする請求項5に記載の気密封止パッケージ。
(a)第1の金属成分:ニッケル 第2の金属成分:アルミニウム
(b)第1の金属成分:チタン 第2の金属成分:アルミニウム
(c)第1の金属成分:ジルコニウム 第2の金属成分:アルミニウム
(d)第1の金属成分:ハフニウム 第2の金属成分:アルミニウム
(e)第1の金属成分:ニッケル 第2の金属成分:シリコン
(f)第1の金属成分:ニオブ 第2の金属成分:シリコン
【請求項7】
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分と共晶化する第2の金属成分と、を備えた共晶合金層であり、
前記エネルギーは、この共晶合金層を共晶温度以上に加熱するためのものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項8】
前記共晶合金層は、以下の(a)〜(k)のいずれかの構成を含むか、あるいは(e)の構成に加えて第3の金属成分として銅を含んでいることを特徴とする請求項7に記載の気密封止パッケージ。
(a)第1の金属成分:金 第2の金属成分:スズ
(b)第1の金属成分:金 第2の金属成分:シリコン
(c)第1の金属成分:金 第2の金属成分:ゲルマニウム
(d)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:銅
(e)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:銀
(f)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:亜鉛
(g)第1の金属成分:スズ 第2の金属成分:ビスマス
(h)第1の金属成分:鉛 第2の金属成分:スズ
(i)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:ゲルマニウム
(j)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:シリコン
(k)第1の金属成分:アルミニウム 第2の金属成分:亜鉛
【請求項9】
前記電極パッド及び前記導電路の少なくとも一方は、第1の金属成分及び第2の金属成分のうち一方の金属成分を含み、
前記共晶合金層は、第1の金属成分及び第2の金属成分を備えていることに代えて、第1の金属成分及び第2の金属成分のうち他方の金属成分により構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の気密封止パッケージ。
【請求項10】
前記金属層は、第1の金属成分と、この第1の金属成分よりも融点が高い第2の金属成分とを備えた前駆体層であり、
前記エネルギーは、この前駆体層を第1の金属成分の融点以上の温度に加熱して金属間化合物を形成するためのものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項11】
金属間化合物を形成した後に行われる熱処理によって当該金属間化合物が溶融しないように、この金属間化合物の融点は、前記熱処理の加熱温度よりも高いことを特徴とする請求項10に記載の気密封止パッケージ。
【請求項12】
前記前駆体層は、前記導電路及び前記電極パッドにおける互いに対向する面に各々形成された第2の金属成分を含む第2の金属層と、これら第2の金属層間に介在され、前記第1の金属成分を含む第1の金属層と、を備えていることを特徴とする請求項10または11に記載の気密封止パッケージ。
【請求項13】
第1の金属成分は、インジウム及びスズの少なくとも一つであり、
第2の金属成分は、銅、銀、金及びニッケルのうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項14】
前記電極パッド及び前記導電路の少なくとも一方は、第2の金属成分により構成され、
前記前駆体層は、第1の金属成分及び第2の金属成分を備えていることに代えて、第1の金属成分により構成されていることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項15】
前記金属層は、第1の金属成分を含む第1の金属層と、第2の金属成分を含む第2の金属層と、を交互に積層した積層膜として構成されていることを特徴とする請求項5ないし14のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項16】
前記金属層は、インジウム及びスズの少なくとも一方により構成され、
前記エネルギーは、この金属層を当該金属層の融点以上の温度に加熱するためのものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項17】
前記電極パッドと前記金属層との間、及び前記導電路と前記金属層との間の少なくとも一方には、導電膜により構成されたバッファ層が介在していることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか一つの気密封止パッケージ。
【請求項18】
前記素子用基板と前記封止用基板とは、互いに同じ材質により構成されていることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項19】
前記デバイス素子はMEMS素子であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項20】
前記デバイス素子は水晶振動子であり、
前記素子用基板は、当該素子用基板を板厚方向に貫通する貫通溝が前記水晶振動子の周囲を囲むように形成されると共に、この水晶振動子を側方側から片持ちないしは両持ちで支持する支持部を備え、
前記素子用基板における前記封止用基板と反対側の面には、前記貫通溝の周囲の領域に対して直接接合により周方向に亘って気密に接合されると共に、前記水晶振動子に対して隙間領域を介して対向する補助封止用基板が配置されていることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項21】
前記エネルギーは、電気スパーク、レーザー光及びフラッシュ光の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし20のいずれか一つに記載の気密封止パッケージ。
【請求項22】
デバイス素子の形成された素子用基板と絶縁体からなる封止用基板とを直接接合により互いに接合して、前記デバイス素子の置かれる領域を気密に封止した気密封止パッケージの製造方法において、
前記素子用基板に前記デバイス素子を形成する工程と、
前記封止用基板に隙間領域を介して対向するように、前記デバイス素子に対して電気信号の入出力を行う電極パッドを前記素子用基板に形成する工程と、
前記電極パッドに対向する前記封止用基板に、当該封止用基板の板厚方向に貫通する導電路を形成する工程と、
前記電極パッドと前記導電路との間に金属層を配置する工程と、
次いで、前記素子用基板及び前記封止用基板を直接接合により互いに接合する工程と、
前記素子用基板及び前記封止用基板により封止された領域の外側からエネルギーを前記金属層に供給し、当該金属層を溶融させて前記電極パッドと前記導電路とを互いに電気的に接続する工程と、を含むことを特徴とする気密封止パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2013−55632(P2013−55632A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97747(P2012−97747)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】