説明

気密封止型電子部品、及びその製造方法

【課題】封止時における不要なガスの発生を抑えた低コストで信頼性の高い気密封止型電子部品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】赤、緑、青の各レーザーダイオード(LD)素子1R、1G、1Bを支持基板2に実装してキャップ3で気密封止した気密封止型電子部品において、支持基板2にガス抜き用の貫通孔8を設け、そこを介して内部に存在する不要なガス成分を外部へ排出うえで、支持基板2に表面活性化接合法を用いて平板状の封止部材12を接合して貫通孔8を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止型電子部品、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気素子がパッケージ内に気密封止された気密封止型電子部品において、パッケージの一部に貫通孔を設け、そこを介してパッケージ内に存在する不要なガス成分を外部へ排出(ガス抜き)したうえで貫通孔を封止部材で閉塞する技術が知られている。
【0003】
図2は従来技術を示す図であり、(A)上面図、(B)断面図である。尚、図2(A)では、構成を分かり易くするため、上部(キャップ)を透かして見た状態を示してある(以下、上面図においては同様)。図2に示す気密封止型電子部品は、電気素子として3つのレーザーダイオード(赤のLD素子1R、緑のLD素子1G、青のLD素子1B)を互いに近接させて支持基板2の同一面上に実装し、キャップ3を被せて気密封止した所謂LDモジュールである。支持基板2には、各LD素子が備えた電極端子の一端が共通して接続される電極配線4と、各LD素子が備えた電極端子の他端が個別に接続される3つの電極端子5が設けられており、それぞれがワイヤ6を介して各LD素子と電気的に接続されている。また、支持基板2には、各LD素子を駆動及び制御する駆動回路7が設けられており、各LD素子と図示しない配線を介して電気的に接続されている。更に、支持基板2の外周部には、LD素子を始めとする各構成要素を覆うようにキャップ3が接合されている。キャップ3は、各LD素子の出射光を外部へ出射させるために、少なくとも一部がガラス等の透光性の材料で構成されている。
【0004】
支持基板2には、LDモジュール内部の不要なガス成分を外部へ排出するための貫通孔8が設けられており、支持基板2にキャップ3を接合した後、真空雰囲気中において適度な加熱により内部から不要なガス成分を積極的に放出させ、それを貫通孔8を介して外部へ排出したうえで、貫通孔8にAu−Ge合金などから成る金属球9を嵌入してレーザーにより溶着させることで閉塞されている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
図3は従来技術を示す図であり、(A)上面図、(B)断面図である。図3に示す気密封止型電子部品は、図2に示したものと同様の基本構成を備え、相違点として、支持基板2に設けられた貫通孔8が平板状の封止板10で閉塞されている。封止板10はシリコンで構成され、支持基板2との間に介在させたAuなどの接合材料11と共に加熱して互いに共晶化させること(共晶接合法)で支持基板2に接合されている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−48273号公報
【特許文献2】特開2000−149790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示した従来技術においては、金属球をレーザーにより溶融しているため、溶融した金属がパッケージ内に流入して内部の構成要素に悪影響を及ぼす虞があると共に、金属の溶融に起因して不要なガスが発生し、パッケージ内に収納された電気素子の特性を変化させてしまう危険性がある。また、封止部材として金属材料を用いているため、材料の種類によっては材料費が高額となり、低価格での大量生産が困難となる。
【0008】
図3に示した従来技術においては、図2に示した従来技術と同様にパッケージ内に溶融した金属が流入する虞があると共に、金属の溶融に起因して不要なガスが発生する虞がある。また、封止時には、比較的高温(数百℃程度)での加熱を要するため、パッケージ内から通常の使用環境では発生しないような大量のガスが発生したり、熱によりパッケージ内の構成要素やパッケージ自体が劣化乃至は破損したりする虞がある。更に、材料の種類によっては接合材料の材料費が高額になるといった問題もある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みて成されたものであり、封止時における不要なガスの発生を抑えた低コストで信頼性の高い気密封止型電子部品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電気素子を第一の基板に実装し、当該第一の基板に第二の基板を接合して前記電気素子を気密封止した気密封止型電子部品において、前記第一の基板または前記第二の基板に貫通孔を設け、当該貫通孔を閉塞するように前記第一の基板または前記第二の基板に表面活性化接合法により第三の基板を接合した気密封止型電子部品とする。
【0011】
前記第一の基板および前記第二の基板のうち前記第三の基板が接合される基板と前記第三の基板とは、共にシリコンから成る気密封止型電子部品とされ得る。
【0012】
前記電気素子は、レーザーダイオードである気密封止型電子部品とされ得る。
【0013】
前記電気素子は、圧電振動子である気密封止型電子部品とされ得る。
【0014】
電気素子を第一の基板に実装し、当該第一の基板に第二の基板を接合して前記電気素子を気密封止した気密封止型電子部品の製造方法であって、第一の基板に電気素子を実装する工程と、前記第一の基板に第二の基板を接合する工程と、前記第一の基板または前記第二の基板に設けた貫通孔を介して前記気密封止型電子部品内部からガス成分を排出する工程と、前記貫通孔を閉塞するように前記第一の基板または前記第二の基板に表面活性化接合法により第三の基板を接合する工程と、を有する気密封止型電子部品の製造方法とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ガス抜き用の貫通孔を封止部材で閉塞するに当たって表面活性化接合法を用いているため、電気素子などの周辺要素に過度の熱がかかって破損するようなことはなく、また、貴金属などの比較的高価な材料やそれ自体がガスを発生したり溶融して流出したりするような材料も不要となり、更には、貫通孔を閉塞する封止部材は従来と同等かそれ以上の強度で接合されることから高い気密の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す図で、(A)上面図、(B)断面図
【図2】従来技術を示す図で、(A)上面図、(B)断面図
【図3】従来技術を示す図で、(A)上面図、(B)断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一実施形態を示す図で、(A)上面図、(B)断面図である。図1に示す気密封止型電子部品は、3つのレーザーダイオード(赤のLD素子1R、緑のLD素子1G、青のLD素子1B)を互いに近接させて支持基板(第一の基板)2の同一面上に実装し、キャップ(第二の基板)3を被せて気密封止した所謂LDモジュールである。支持基板2には、各LD素子が備えた電極端子の一端が共通して接続される電極配線4が設けられると共に、各LD素子が備えた電極端子の他端が個別に接続される3つの棒状の電極端子5が支持基板2を貫通して設けられており、それぞれがワイヤ6を介して各LD素子と電気的に接続されている。支持基板2はシリコンから成り、そこに各LD素子を駆動及び制御する駆動回路7が一体的に作り込まれており、図示しない配線を介して各LD素子と電気的に接続されている。また、支持基板2の外周部には、LD素子を始めとする各構成要素を覆うようにキャップ3が接合されている。キャップ3はシリコンを基材として成り、各LD素子の出射光を外部へ出射させるために、一部がガラス等の透光性の材料で構成されている。
【0018】
支持基板2には、LDモジュール内部の不要なガス成分を外部へ排出するための貫通孔8が2つ設けられており、支持基板2にキャップ3を接合した後、真空雰囲気中において適度な加熱によりLDモジュール内部から不要なガス成分を積極的に放出させ、それを貫通孔8を介して外部へ排出したうえで、平板状の封止部材(第三の基板)12を支持基板2に接合することで閉塞されている。
【0019】
本実施例において、封止部材12はシリコン基板を採用しており、支持基板2と封止部材12の表面を共にプラズマ照射により分子レベルで活性化させたうえで、適度な圧力と必要に応じた適度な加熱をもって互いに圧着することで接合されている。この手法は表面活性化接合法と呼ばれ、共晶接合法などのように過度の加熱を必要としないことから、駆動回路7やLD素子が熱によるダメージを受けることはなく、また、熱により支持基板2が歪んで各構成要素間で位置ずれが発生するようなこともなく、また、LD素子を実装する際に接着剤を用いている場合には、熱によりそこからガスが発生するようなこともなく、更に、接着剤には高い耐熱性が求められなくなることから設計上の自由度が増すという利点もある。また、従来技術のように封止部材が溶融して流入したりガスが発生したりするようなこともなく、更に、表面活性化接合法による接合は比較的強固であることから気密性は従来と同等かそれ以上のものとなる。
【0020】
以上の実施例において、貫通孔8は支持基板2に形成されているが、キャップ3にのみ或いは支持基板2とキャップ3の両方に形成されていてもよく、また、数についても2つに限らず少なくとも1つ形成されていればよい。
【0021】
また、貫通孔8を閉塞する封止部材12は貫通孔8の数に応じて2つ設けられているが、1つの封止部材12で2つの貫通孔8を同時に覆うように構成することも可能である。
【0022】
また、表面活性化接合法は支持基板2にキャップ3を接合する際にも利用することが可能であり、そうすることで支持基板2にキャップ3を接合する際にも同様の効果が得られる。
【0023】
また、支持基板2、キャップ3、封止部材12の材質はシリコンに限定されるものではなく、表面活性化接合法を実施することが可能であれば、シリコンとガラス、ガラスとガラスなどのその他の組み合わせが適宜選択され得る。
【0024】
また、実施例で示した気密封止型電子部品は、支持基板2とキャップ3の2つの部材により電気素子(LD素子)の収納空間が形成されているが、3つ以上の部材で収納空間が構成されているような場合であっても本発明を適用することが可能である。
【0025】
また、本発明は実施例で示したLDモジュールに限定されるものではなく、少なくとも2つの基板を互いに接合することで形成された空間内に電気素子が気密封止された気密封止型電子部品であれば、本発明の主旨を逸脱しない範囲でその他のものに適用することが可能であり、例えば、電気素子を圧電振動子とした所謂圧電デバイスなどにも好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1R 赤のLD素子
1G 緑のLD素子
1B 青のLD素子
2 支持基板(第一の基板)
3 キャップ(第二の基板)
4 電極配線
5 電極端子
6 ワイヤ
7 駆動回路
8 貫通孔
9 金属球
10 封止板
11 接合材料
12 封止部材(第三の基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子を第一の基板に実装し、当該第一の基板に第二の基板を接合して前記電気素子を気密封止した気密封止型電子部品において、
前記第一の基板または前記第二の基板に貫通孔を設け、
当該貫通孔を閉塞するように前記第一の基板または前記第二の基板に表面活性化接合法により第三の基板を接合したことを特徴とする気密封止型電子部品。
【請求項2】
前記第一の基板および前記第二の基板のうち前記第三の基板が接合される基板と前記第三の基板とは、共にシリコンから成ることを特徴とする請求項1に記載の気密封止型電子部品。
【請求項3】
前記電気素子は、レーザーダイオードであることを特徴とする請求項1または2に記載の気密封止型電子部品。
【請求項4】
前記電気素子は、圧電振動子であることを特徴とする請求項1または2記載の気密封止型電子部品。
【請求項5】
電気素子を第一の基板に実装し、当該第一の基板に第二の基板を接合して前記電気素子を気密封止した気密封止型電子部品の製造方法であって、
第一の基板に電気素子を実装する工程と、
前記第一の基板に第二の基板を接合する工程と、
前記第一の基板または前記第二の基板に設けた貫通孔を介して前記気密封止型電子部品内部からガス成分を排出する工程と、
前記貫通孔を閉塞するように前記第一の基板または前記第二の基板に表面活性化接合法により第三の基板を接合する工程と、
を有することを特徴とする気密封止型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108877(P2011−108877A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262931(P2009−262931)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】