気液反応効率の向上方法
【課題】 気液反応特に脂肪類とアルコールとのエステル交換反応において、低コストで操業上問題点の少ない反応効率の向上方法を開発する。
【解決手段】 反応要素気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の際に生じる活性を利用する。
【解決手段】 反応要素気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の際に生じる活性を利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相物質中に気相物質を吹き込んで、両者の間の反応により有用生成物を得る工程において、該反応の効率を向上させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学反応により有用生成物を得る工程においては、反応効率は生産性に直結するものであるため、その向上については常に関係者の留意するところであり、反応の形態に応じて、種種の方策が適用される。液相物質中に気相物質を吹き込んで、両者の間の反応により所期の生成物を得る工程においては、反応効率を向上させるための方法として一般的なものは、(a)反応温度の上昇 (b)気液接触面積の増大 (c)触媒の使用であり、工業的にも殆どの場合これらの方法が単独で若しくは組み合わされた形で使用されている。また最近では、特殊な場合には、(d)物質の臨界状態における活性の増大を利用する方法も試みられている(例えば特許文献1〜5)。
【0003】
しかしながら、(a)反応温度の上昇はエネルギーコストの増大に加えて、有害な副反応を伴うことも多く、(c)触媒の使用は、触媒の交換・再生のためのコスト増に加えて、混入触媒の分離、廃棄触媒の処理等の問題についての配慮が必要である。また、(d)臨界状態を利用する方法では、高圧・高温を必要とするため、設備コストの増大とともに、安全性に対する慎重な配慮が不可欠である。
【0004】
(b)気液接触面積の増大は、比較的コスト増も少なく、反応生成物に悪影響を及ぼすこともないので、殆ど全ての場合に用いられ、一般に気泡の微小化による気液接触面積の増大、攪拌、攪拌効果の増大と気液接触の経路長を増加させるための構造物の設置等が一般化している。本発明者らは、油脂類とアルコールとのエステル交換反応について検討を進め、これらに加えて、液相を泡沫状として更に気液接触効率を高めると同時に、必要に応じて気相物質の量を液状物質に対して容易に過剰ならしめる方法を提案した。(特許文献6)
【0005】
しかしながら、気泡状態の気体と外部液状物との反応においては,界面に反応成生物が蓄積して反応を阻害し、場合によっては該反応成生物の拡散が反応の律速段階となり、単に気液接触面積の増大を図るのみでは目的を達し得ず、また、反応成生物が界面に強く吸着される時には、攪拌による反応成生物の拡散効果にも限界がある。
【特許文献1】特開2000−143586
【特許文献2】特開2000−109883
【特許文献3】特開2000−204392
【特許文献4】特開2001−302584
【特許文献5】特開2002−308825
【特許文献6】特願2004−231676
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、主として油脂類とアルコールとのエステル交換反応について、更に生産性を向上させるため、上記の問題点を解決し、コスト増を伴わぬ汎用性の高い反応効率の向上を可能とする製造方法を開発しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、油脂類とアルコールとのエステル交換反応について検討を行う過程において、油脂類中ないし油脂類表面のアルコール気泡の挙動と反応効率との関係の観察を続けた結果、機械的な方法によりアルコール気泡の生成・消滅数を増加させることが反応効率の増大を齎すことを見出し、これに基づいて以下の発明を行った。
(1)反応容器内の液状物質中に気体を吹き込み、該液状物質と該気体との間の反応によって有用生成物を得る工程において、主として該気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において目的とする反応若しくは目的とする反応の一部を生起させることを特徴とする、有用生成物の製造方法。
(2)反応容器内の液体状の油脂類中に過熱状態の気化アルコールを吹き込み、微小気泡状態のアルコールと油脂類との間でエステル交換反応を行い、生成物を過剰の過熱気化アルコールと共に気相状態で取得する脂肪酸エステルの製造方法において、主としてアルコール気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において該エステル交換反応若しくは該エステル交換反応の一部を生起させることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
(3)(1)若しくは(2)記載の製造方法において、該気泡の表面張力若しくは表面張力と外部からの圧力との和による該気泡内の気体圧力が該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上であり、且つ該気泡内の気体温度が該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(4)(1)〜(3)記載の何れかの製造方法において、一定若しくは可変周波数の超音波の照射により微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅を行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(5)(1)〜(3)記載の何れかの製造方法において、反応容器内に微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物を設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(6)(5)記載の製造方法において、該構造物が多孔板であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(7)(5)記載の製造方法において、該構造物が、網状物であるか、薄板によって構成される格子状・ハニカム状その他の細隙の集合体若しくはリングその他の形状の充填物であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(8)(6)若しくは(7)記載の製造方法において、該構造物が同一構造のもの又は同種の構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものが複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(9)(6)若しくは(7)記載の製造方法において、該構造物が異種構造のもの又は該異種構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含んで複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(10)(8)若しくは(9)記載の製造方法において、該構造物の多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを複数個直列に設置する場合、液状物質及び気泡が順次孔径の大きなものから小さなものを通過するか、或いは網目精細度若しくは細隙精細度の粗いものから精細なものを通過するように設定することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(11)複数個の多孔板を直列に設置する場合、複数個の邪魔板を併用して、液状物及び気泡の通過経路を延長することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(12)(5)〜(11)記載の何れかの製造方法において、該構造物に機械的振動を与えることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(13)(5)〜(12)記載の何れかの製造方法において、該構造物の材質が該液状物質と該気体との間の反応特にアルコールと油脂類との間のエステル交換反応に対し触媒作用を有するものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(14)(5)〜(13)記載の何れかの製造方法において、該構造物にドラフトチューブを設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(15)(5)〜(14)記載の何れかの製造方法において、微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物若しくは該構造物とそれに付随するドラフトチューブ等の機構(以下総称して反応ユニットと言う)を反応容器中に複数個並列に設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(16)(15)記載の製造方法において、反応ユニットの周囲に1若しくは複数のジャケットを設置し、ジャケット内に熱媒を循環させて反応ユニット内の温度を制御することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(17)(5)〜(16)記載の何れかの製造方法において、気体の吹き込みを、金属製若しくはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(18)(5)〜(17)記載の何れかの製造方法を反復使用するか、若しくは該製造方法のうちの1又は複数と該製造方法以外の気液反応装置とを組み合わせて多段階の反応工程を構築することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特に大きなコスト増を伴うことなく気液反応特に油脂類とアルコールとのエステル交換反応の反応効率が向上し、生産性が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の実施形態:第1の実施形態は、(1)及び(2)に述べた如く、一般に液体中に気体を気泡として存在させる形の反応に対して、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅を促進して反応効率を向上させるものである。本発明者らが見出した、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅による反応効率の向上の理由については、先に述べた反応生成物の蓄積の解消に加えて、気泡の崩壊に伴う界面エネルギーの放出の作用が考えられ、気泡径がミクロン以下の場合には崩壊に伴い局部的に極めて高いエネルギーが発現するとされている。また、界面張力による気泡内の圧力は気泡径の減少と共に急激に増大し、ために気泡内の気体の液中への溶解度が上昇して気泡内の気体が減少し、これが更に気泡径の減少を齎すため、微細化が或る限度を越えると気泡は急激に縮小・消滅するとされ(泡技術p.40:柘植他、工業調査会、2004年)、この際の気体溶解度の増加も反応効率の向上に資するものと考えられる。従って、本発明における、気泡の破壊若しくは微小化・消滅時に反応を生起させる方法は、エステル交換反応の検討中に見出された事実に基づくものではあるが、より広い範囲への適用が可能である。ただし、反応機構の細部には未明の要素も多く、詳細については現時点ではいかなる理論にも拘束されることを好むものではない。
【0010】
第2の実施形態:第2の実施形態は、(3)に述べた如く、微小気泡の破壊・消滅時若しくは破壊・消滅に先立つ近傍の時点において、該微小気泡内の気体圧力を該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上とし、且つ該微小気泡内の気体温度を該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上とすることで、超臨界状態での反応を実現するものである。上述の如く、気泡内の圧力は気泡径の減少と共に急激に上昇し、通常の反応要素となる気体、例えば過熱アルコール等では臨界圧を越える。このとき、該気体の温度が臨界温度以上であれば、該気体は超臨界の状態となり、著しく反応活性が増大し、反応効率を向上させる。超臨界状態を利用した反応は、その特異な反応性により近来多大の注目を集めているが、従来の方法は反応容器内の反応要素全体を高温・高圧として超臨界状態に導くため、多くのエネルギーと高耐圧の装置を必要とし、且つ操業上の危険性も大である。これに対し、本発明は、常圧ないし臨界圧よりもはるかに低い圧力の気体であっても、温度を臨界温度以上に保持して微小気泡とし、該微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅の過程において、反応局所に限定して超臨界状態を作り出すものであって、従来の方法に対し、エネルギー消費・装置コストが小さく、安全性も高い。また、従来の方法においては、高圧のため、気液の均一な混合状態を得るために技術的な困難があったが、本発明においては、常圧ないし臨界圧よりもはるかに低い圧力の気体を微小気泡として分散させるので、均一化の操作は容易なものになる。
【0011】
第3の実施の形態:第3の実施の形態は、(4)に述べた如く、有用生成物を得るための気泡の破壊に超音波を使用するもので、反応容器内若しくは反応容器壁に超音波振動発生素子を設置し、気泡を含む液中に超音波を放射する。液中の気泡については、一般の醸造工業等で消泡に使用される場合と異なり、気泡径に応じた共振周波数が必要であるとも言われており、気泡径に相当の分布が見られる場合には周波数可変の設備が望ましい。超音波による破壊作用は強力ではあるが、設備のためのコスト増は避けがたく、反応効率の向上効果との比較考量が必要である。
【0012】
第4の実施の形態:第4の実施の形態は、(5)〜(11)に述べた如く、反応容器内に固定構造物を設置し、気泡を含む液体を該構造物に導き、気泡の構造物の通過或は気泡と構造物との衝突等により気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の過程を作り出すものである。該構造物の形態は、多孔板、網状物、薄板によって構成される格子状・ハニカム状等の細隙集合体或いはリングその他の形状の充填物のうちの1若しくは複数個が使用されるが、目的に合致するものであれば、特に形態は限定されない。複数個が使用される場合には、必要に応じ同一構造物若しくは同種構造物の多孔板の孔径・孔数又は網状物の網目精細度又は細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを直列に配置するか、異種構造物若しくは該異種構造物の多孔板の孔径又は網状物の網目精細度又は細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含む複数個を直列に配置する。孔径又は網目精細度又は細隙精細度を変化させたものを複数個使用する場合、必要に応じ微小気泡が順次孔径の大きなものから小さいものを、又は精細度の低いものから高いものを通過するように配置する。
【0013】
メタノールと植物油とのエステル交換反応について言えば、構造物の種類は、対象とする油脂類・アルコールの種類と操業条件(反応温度、気化アルコールの流量、攪拌条件等)に応じて適宜選択されるが、最も簡便には多孔板を複数段反応容器中に設置することにより、反応効率の向上が可能である。設置個所、多孔板の孔径・孔数は油脂類・アルコールの種類と操業条件によって定められる。多孔板の設置例を、図1a、1b,2a及び2bに示す。図1aは多孔板5を反応容器1の壁に設置した支持梁6で保持するもの、図1bは多孔板5を中心支持軸7及び支持梁6で保持するもの、図2は多孔板5と邪魔板14とを併用して気液の通過経路の延長を図ったもの、図2bは多孔板5の孔径・孔数を変化させたものである。気液の通過経路の延長を図る方法としては、多孔板によりラセン状経路を形成することも可能である。下方からノズル8又は適宜の気泡微細化装置を介して供給される過熱気化アルコールの気泡は各段の多孔板ごとに細孔を通過して孔径に制御された大きさの気泡を新しく生成し、他方、多孔板との衝突・気泡間の相互作用により微細化若しくは融合を繰り返し、融合した気泡は次の多孔板の細孔を通過して新しい気泡を生成し、全体として上昇につれ微細化・消滅の方向に向かう。本各例では、該気泡は反応容器上部から油脂類供給ノズル9を介して供給される油脂類4と反応し、生じた反応生成物2は過剰の過熱気化アルコールと共に気相として上方から採取される。油脂類の供給は必ずしも本各例のように過熱気化アルコールとカウンターフローの関係を持つとは限らず、下方からパラレルフローとして行うことも可能であり、操業条件によって適宜の方法が取られる。(以下、各製造方法について同様)。
【0014】
通常、反応促進のために気液反応装置に使用される構造物としては、例えばスルザー型に代表されるスタチックミキサーがあるが、本発明にかかる多孔板による構造物はこれらに比べ構造が簡易であり、保守も容易である。
【0015】
第5の実施形態:第5の実施形態は、(12)に述べた如く、(5)〜(11)記載の構造物に機械的振動を付与し、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の効果を更に高めるものである。多孔板については、例えば図1bに示したような中心支持軸7を持つ構造であれば、該中心軸を適宜の装置により加振し、上下振動を行わせることが出来る。
【0016】
第6の実施形態:第6の実施形態は、(13)に述べた如く、(5)〜(12)記載の構造物に触媒作用を付与し、更に気体と液体との反応速度の向上を図るものである。油脂類とアルコールとのエステル交換反応においては、最も簡単には、多孔板を鉛、錫或いは亜鉛製若しくは該金属類によって被覆されたものとすることによって実施することが出来る。
【0017】
第5又は第6の実施形態は、何れも反応効率の向上に寄与するが、コスト増の要因ともなるので、反応効率の向上効果との比較考量が必要である。
【0018】
第7の実施形態:第7の実施形態は、(14)に述べた如く、(5)〜(13)記載の構造物とドラフトチューブとを併用するもので、図3aに多孔板を例にして示したように、多孔板外部にドラフトチューブを設置し、該構造物を通過して上昇した液状物若しくは流速によっては気泡を随伴した該液状物がドラフトチューブ外部を下降して再度ドラフトチューブ内部に入り、気泡と液状物との接触機会を増加させる流れをスムーズに行わせるものである。気泡が液状物に随伴される場合、気泡の上昇速度は気泡径が小さくなるにつれて減少するため、下降する気液混合物中の気泡は、新しく上昇する気液混合物中の気泡よりも微小なものが多く、微小気泡による大型気泡の破壊効果(特願2003−3139636)をも期待することが出来る。ドラフトチューブを細孔板で形成することにより、下降する気液混合物と新しく上昇する気液混合物との混合効率をより高めることも可能である。反応容器中には、時間の経過と共に原料劣化物が蓄積し、反応効率を阻害する場合があるが、ドラフトチューブによるスムーズな循環流は、原料油脂類よりも比重の大きい劣化物の下方への分離を容易にする効果も期待される。図3bはドラフトチューブを多孔板の中央部に設置し、多孔板の有効面積の増大を図ったものである。本形式では、該構造物を通過して上昇した液状物若しくは流速によっては気泡を随伴した該液状物はドラフトチューブ内部を下降する。
【0019】
第8の実施形態:第8の実施形態は、(15)に述べた如く、1個の反応容器中に複数の反応ユニットを並列に設置し、生産効率を向上させるものである。図4aにドラフトチューブ10と多孔板5を有する反応ユニットを、図4bに中心支持軸7を持つ田孔板の反応ユニットを使用したもの一例の模式図を示す。
【0020】
第9の実施形態:第9の実施形態は、(16)に述べた如く、反応ユニットの周囲にジャケットを設置し、反応ユニットの温度制御を容易にするものである。必要に応じ、ジャケットを上下に複数部分に分割し、それぞれに適した温度分布を作る。図5aに中央に気液の共通循環孔13、該孔周辺に反応ユニット設置孔12をもつジャケット11aの例、図5bに該ジャケット11aと反応ユニットとして多孔板5を設置した反応容器例の模式図を示す。本例では気液の循環におけるダウンフローは、中央の共通循環孔を通じて一括して行われる。図6aに共通循環孔を持たず、断面全体に反応ユニット設置孔12を設けたジャケット11bの例、図6bに該ジャケット11bと反応ユニットとしてドラフトチューブ10と多孔板5とを設置した反応容器の例の模式図を示す。図6bの例では、気液循環は反応ユニットごとに独立して行われる。
【0021】
第10の実施例:第10の実施例は、(17)に述べた如く、本発明における製造方法において、気体吹き込みを例えば孔径0.5mmの金属製またはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うものである。本発明においては、単に孔径5mm程度のパイプから気体吹き込みを行っても反応効率の向上が見られるが、油脂の種類、反応ユニットの形式によっては当初から微小化した気泡を送り込むことにより、更に良い結果が得られる。
【0022】
第11の実施例:第11の実施例は、(18)に述べた如く、本発明における同一若しくは異種の製造方法を複数直列に連結して、多段階の反応工程を構築するものである。図7に、ドラフトチューブ10を持つ多孔板5の反応ユニットを使用した2段階工程の例の模式図を示す。通常、第2段階の反応容器の容量は第1段階よりも小さく設定される。油脂類とアルコールとのエステル交換反応について言えば、左側の第1段階の反応容器では、上部から原料油脂類4が油脂類供給ノズル9を介して供給され、下部からノズル8を介して吹き込まれる過熱気化アルコール3と反応して生成した反応生成物2(エステルとグリセリン)は、過剰の過熱気化アルコールとともに気相として上方から採取される。この際、通常過剰の過熱気化アルコールのみでは反応生成物の全てを随伴して気相中に取り込むことが出来ず、1段階のみの反応工程では残留反応生成物は反応容器内に残って蓄積されるが、本例の如き2段階工程では、残留反応生成物は未反応油脂類と共に下方から右側の第2段階の反応容器上部に供給される。第2段階では、反応容器下部から供給される過熱気化アルコール3と未反応油脂類とによって生ずる反応生成物と、第1段階で生じた残留反応生成物とが、共に反応生成物2として共に過剰過熱気化アルコールによって気相として上方から採取される。この方法によって、第1、第2段階に配分する過熱気化アルコールの量を適宜に設定することにより、全体として過熱気化アルコールからのエステル採取効率を向上させることが出来る。また、反応容器内に油脂類の劣化物が蓄積すると、反応効率が減少する恐れがあるが、この方法では第1段階の反応容器中には劣化物が蓄積せず、反応効率は初期の値が保たれ、第2段階において少量づつ劣化物を抜き取ることによって、装置効率の減少を抑制することが容易になる。
【実施例】
【0023】
直径50mmのステンレス製円筒容器に、高さ215mmまで菜種油(純度92%)を満たし、底部から直径5mmのステンレス管を用いて温度290℃の過熱メタノール(純度99.7%)を吹き込み、上部から過剰メタノールと共に反応生成物(脂肪酸メチルエステル)を採取する実験において、細孔板(直径46mm、細孔直径3.6mm、細孔数37)10枚を15mmの間隔で直列に菜種油に設置した場合のエステル取得量(l)/メタノール吹込量(l)を、多孔板無しの場合と比較した結果を図8に示す。折れ線グラフ15、16(16は同一条件での繰り返し実験5回目)は多孔板を使用した場合(メタノール供給速度0.7ml/min)、3は多孔板無しの場合(メタノール供給速度2.4ml/min)であって、実験開始後2〜4時間で反応が略安定状態に達した時点で、細孔板無しの場合のエステル取得比が0.3程度であるのに対し、多孔板を使用した場合0.6〜0.7と顕著な反応効率の増大を示している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、大きなコストの増加の必要なしに、且つ副反応等の悪影響を与えることなく反応効率の向上を図ることを可能とするもので、気液反応特にバイオジーゼル製造の分野における広範囲な実用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】多孔板の配置例の模式図である。
【図1b】多孔板の配置例の模式図である。
【図2a】多孔板と邪魔板を併用した例の模式図である。
【図2b】多孔板の孔径/孔数を変化させた配置例の模式図である。
【図3a】ドラフトチューブを多孔板外部に設置した例の模式図である。
【図3b】ドラフトチューブを多孔板内部(中央部)に設置した例の模式図である。
【図4a】1個の反応容器中にドラフトチューブを持つ複数の反応ユニットを配置する例の模式図である。
【図4b】1個の反応容器中にドラフトチューブを持たぬ複数の反応ユニットを配置する例の模式図である。
【図5a】中央に気液の共通循環路を持つジャケットの例の模式図である。
【図5b】図5aのジャケットを反応容器内に設置した例の模式図である。
【図6a】気液の共通循環路を持たぬジャケットの例の模式図である。
【図6b】図6aのジャケットを反応容器内に設置した例の模式図である。
【図7】多孔板を用いた2段階反応工程を示す模式図である。
【図8】エステル生成量(容積)/メタノール吹込量(容積)に対する細孔板の効果を示す実験結果である。
【記号の説明】
【0026】
1 反応容器
2 反応生成物
3 メタノール
4 油脂類
5 多孔板
6 支持梁
7 中心支持軸
8 過熱気化メタノール吹き込みノズル
9 油脂類供給ノズル
10 ドラフトチューブ
11a ジャケット
11b ジャケット
12 反応ユニット設置孔
13 共通気液循環(流下)孔
14 邪魔板
15 多孔板使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
16 多孔板使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
17 多孔板無使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相物質中に気相物質を吹き込んで、両者の間の反応により有用生成物を得る工程において、該反応の効率を向上させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学反応により有用生成物を得る工程においては、反応効率は生産性に直結するものであるため、その向上については常に関係者の留意するところであり、反応の形態に応じて、種種の方策が適用される。液相物質中に気相物質を吹き込んで、両者の間の反応により所期の生成物を得る工程においては、反応効率を向上させるための方法として一般的なものは、(a)反応温度の上昇 (b)気液接触面積の増大 (c)触媒の使用であり、工業的にも殆どの場合これらの方法が単独で若しくは組み合わされた形で使用されている。また最近では、特殊な場合には、(d)物質の臨界状態における活性の増大を利用する方法も試みられている(例えば特許文献1〜5)。
【0003】
しかしながら、(a)反応温度の上昇はエネルギーコストの増大に加えて、有害な副反応を伴うことも多く、(c)触媒の使用は、触媒の交換・再生のためのコスト増に加えて、混入触媒の分離、廃棄触媒の処理等の問題についての配慮が必要である。また、(d)臨界状態を利用する方法では、高圧・高温を必要とするため、設備コストの増大とともに、安全性に対する慎重な配慮が不可欠である。
【0004】
(b)気液接触面積の増大は、比較的コスト増も少なく、反応生成物に悪影響を及ぼすこともないので、殆ど全ての場合に用いられ、一般に気泡の微小化による気液接触面積の増大、攪拌、攪拌効果の増大と気液接触の経路長を増加させるための構造物の設置等が一般化している。本発明者らは、油脂類とアルコールとのエステル交換反応について検討を進め、これらに加えて、液相を泡沫状として更に気液接触効率を高めると同時に、必要に応じて気相物質の量を液状物質に対して容易に過剰ならしめる方法を提案した。(特許文献6)
【0005】
しかしながら、気泡状態の気体と外部液状物との反応においては,界面に反応成生物が蓄積して反応を阻害し、場合によっては該反応成生物の拡散が反応の律速段階となり、単に気液接触面積の増大を図るのみでは目的を達し得ず、また、反応成生物が界面に強く吸着される時には、攪拌による反応成生物の拡散効果にも限界がある。
【特許文献1】特開2000−143586
【特許文献2】特開2000−109883
【特許文献3】特開2000−204392
【特許文献4】特開2001−302584
【特許文献5】特開2002−308825
【特許文献6】特願2004−231676
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、主として油脂類とアルコールとのエステル交換反応について、更に生産性を向上させるため、上記の問題点を解決し、コスト増を伴わぬ汎用性の高い反応効率の向上を可能とする製造方法を開発しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、油脂類とアルコールとのエステル交換反応について検討を行う過程において、油脂類中ないし油脂類表面のアルコール気泡の挙動と反応効率との関係の観察を続けた結果、機械的な方法によりアルコール気泡の生成・消滅数を増加させることが反応効率の増大を齎すことを見出し、これに基づいて以下の発明を行った。
(1)反応容器内の液状物質中に気体を吹き込み、該液状物質と該気体との間の反応によって有用生成物を得る工程において、主として該気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において目的とする反応若しくは目的とする反応の一部を生起させることを特徴とする、有用生成物の製造方法。
(2)反応容器内の液体状の油脂類中に過熱状態の気化アルコールを吹き込み、微小気泡状態のアルコールと油脂類との間でエステル交換反応を行い、生成物を過剰の過熱気化アルコールと共に気相状態で取得する脂肪酸エステルの製造方法において、主としてアルコール気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において該エステル交換反応若しくは該エステル交換反応の一部を生起させることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
(3)(1)若しくは(2)記載の製造方法において、該気泡の表面張力若しくは表面張力と外部からの圧力との和による該気泡内の気体圧力が該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上であり、且つ該気泡内の気体温度が該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(4)(1)〜(3)記載の何れかの製造方法において、一定若しくは可変周波数の超音波の照射により微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅を行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(5)(1)〜(3)記載の何れかの製造方法において、反応容器内に微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物を設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(6)(5)記載の製造方法において、該構造物が多孔板であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(7)(5)記載の製造方法において、該構造物が、網状物であるか、薄板によって構成される格子状・ハニカム状その他の細隙の集合体若しくはリングその他の形状の充填物であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(8)(6)若しくは(7)記載の製造方法において、該構造物が同一構造のもの又は同種の構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものが複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(9)(6)若しくは(7)記載の製造方法において、該構造物が異種構造のもの又は該異種構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含んで複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(10)(8)若しくは(9)記載の製造方法において、該構造物の多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを複数個直列に設置する場合、液状物質及び気泡が順次孔径の大きなものから小さなものを通過するか、或いは網目精細度若しくは細隙精細度の粗いものから精細なものを通過するように設定することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(11)複数個の多孔板を直列に設置する場合、複数個の邪魔板を併用して、液状物及び気泡の通過経路を延長することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(12)(5)〜(11)記載の何れかの製造方法において、該構造物に機械的振動を与えることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(13)(5)〜(12)記載の何れかの製造方法において、該構造物の材質が該液状物質と該気体との間の反応特にアルコールと油脂類との間のエステル交換反応に対し触媒作用を有するものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(14)(5)〜(13)記載の何れかの製造方法において、該構造物にドラフトチューブを設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(15)(5)〜(14)記載の何れかの製造方法において、微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物若しくは該構造物とそれに付随するドラフトチューブ等の機構(以下総称して反応ユニットと言う)を反応容器中に複数個並列に設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(16)(15)記載の製造方法において、反応ユニットの周囲に1若しくは複数のジャケットを設置し、ジャケット内に熱媒を循環させて反応ユニット内の温度を制御することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(17)(5)〜(16)記載の何れかの製造方法において、気体の吹き込みを、金属製若しくはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
(18)(5)〜(17)記載の何れかの製造方法を反復使用するか、若しくは該製造方法のうちの1又は複数と該製造方法以外の気液反応装置とを組み合わせて多段階の反応工程を構築することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特に大きなコスト増を伴うことなく気液反応特に油脂類とアルコールとのエステル交換反応の反応効率が向上し、生産性が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の実施形態:第1の実施形態は、(1)及び(2)に述べた如く、一般に液体中に気体を気泡として存在させる形の反応に対して、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅を促進して反応効率を向上させるものである。本発明者らが見出した、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅による反応効率の向上の理由については、先に述べた反応生成物の蓄積の解消に加えて、気泡の崩壊に伴う界面エネルギーの放出の作用が考えられ、気泡径がミクロン以下の場合には崩壊に伴い局部的に極めて高いエネルギーが発現するとされている。また、界面張力による気泡内の圧力は気泡径の減少と共に急激に増大し、ために気泡内の気体の液中への溶解度が上昇して気泡内の気体が減少し、これが更に気泡径の減少を齎すため、微細化が或る限度を越えると気泡は急激に縮小・消滅するとされ(泡技術p.40:柘植他、工業調査会、2004年)、この際の気体溶解度の増加も反応効率の向上に資するものと考えられる。従って、本発明における、気泡の破壊若しくは微小化・消滅時に反応を生起させる方法は、エステル交換反応の検討中に見出された事実に基づくものではあるが、より広い範囲への適用が可能である。ただし、反応機構の細部には未明の要素も多く、詳細については現時点ではいかなる理論にも拘束されることを好むものではない。
【0010】
第2の実施形態:第2の実施形態は、(3)に述べた如く、微小気泡の破壊・消滅時若しくは破壊・消滅に先立つ近傍の時点において、該微小気泡内の気体圧力を該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上とし、且つ該微小気泡内の気体温度を該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上とすることで、超臨界状態での反応を実現するものである。上述の如く、気泡内の圧力は気泡径の減少と共に急激に上昇し、通常の反応要素となる気体、例えば過熱アルコール等では臨界圧を越える。このとき、該気体の温度が臨界温度以上であれば、該気体は超臨界の状態となり、著しく反応活性が増大し、反応効率を向上させる。超臨界状態を利用した反応は、その特異な反応性により近来多大の注目を集めているが、従来の方法は反応容器内の反応要素全体を高温・高圧として超臨界状態に導くため、多くのエネルギーと高耐圧の装置を必要とし、且つ操業上の危険性も大である。これに対し、本発明は、常圧ないし臨界圧よりもはるかに低い圧力の気体であっても、温度を臨界温度以上に保持して微小気泡とし、該微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅の過程において、反応局所に限定して超臨界状態を作り出すものであって、従来の方法に対し、エネルギー消費・装置コストが小さく、安全性も高い。また、従来の方法においては、高圧のため、気液の均一な混合状態を得るために技術的な困難があったが、本発明においては、常圧ないし臨界圧よりもはるかに低い圧力の気体を微小気泡として分散させるので、均一化の操作は容易なものになる。
【0011】
第3の実施の形態:第3の実施の形態は、(4)に述べた如く、有用生成物を得るための気泡の破壊に超音波を使用するもので、反応容器内若しくは反応容器壁に超音波振動発生素子を設置し、気泡を含む液中に超音波を放射する。液中の気泡については、一般の醸造工業等で消泡に使用される場合と異なり、気泡径に応じた共振周波数が必要であるとも言われており、気泡径に相当の分布が見られる場合には周波数可変の設備が望ましい。超音波による破壊作用は強力ではあるが、設備のためのコスト増は避けがたく、反応効率の向上効果との比較考量が必要である。
【0012】
第4の実施の形態:第4の実施の形態は、(5)〜(11)に述べた如く、反応容器内に固定構造物を設置し、気泡を含む液体を該構造物に導き、気泡の構造物の通過或は気泡と構造物との衝突等により気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の過程を作り出すものである。該構造物の形態は、多孔板、網状物、薄板によって構成される格子状・ハニカム状等の細隙集合体或いはリングその他の形状の充填物のうちの1若しくは複数個が使用されるが、目的に合致するものであれば、特に形態は限定されない。複数個が使用される場合には、必要に応じ同一構造物若しくは同種構造物の多孔板の孔径・孔数又は網状物の網目精細度又は細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを直列に配置するか、異種構造物若しくは該異種構造物の多孔板の孔径又は網状物の網目精細度又は細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含む複数個を直列に配置する。孔径又は網目精細度又は細隙精細度を変化させたものを複数個使用する場合、必要に応じ微小気泡が順次孔径の大きなものから小さいものを、又は精細度の低いものから高いものを通過するように配置する。
【0013】
メタノールと植物油とのエステル交換反応について言えば、構造物の種類は、対象とする油脂類・アルコールの種類と操業条件(反応温度、気化アルコールの流量、攪拌条件等)に応じて適宜選択されるが、最も簡便には多孔板を複数段反応容器中に設置することにより、反応効率の向上が可能である。設置個所、多孔板の孔径・孔数は油脂類・アルコールの種類と操業条件によって定められる。多孔板の設置例を、図1a、1b,2a及び2bに示す。図1aは多孔板5を反応容器1の壁に設置した支持梁6で保持するもの、図1bは多孔板5を中心支持軸7及び支持梁6で保持するもの、図2は多孔板5と邪魔板14とを併用して気液の通過経路の延長を図ったもの、図2bは多孔板5の孔径・孔数を変化させたものである。気液の通過経路の延長を図る方法としては、多孔板によりラセン状経路を形成することも可能である。下方からノズル8又は適宜の気泡微細化装置を介して供給される過熱気化アルコールの気泡は各段の多孔板ごとに細孔を通過して孔径に制御された大きさの気泡を新しく生成し、他方、多孔板との衝突・気泡間の相互作用により微細化若しくは融合を繰り返し、融合した気泡は次の多孔板の細孔を通過して新しい気泡を生成し、全体として上昇につれ微細化・消滅の方向に向かう。本各例では、該気泡は反応容器上部から油脂類供給ノズル9を介して供給される油脂類4と反応し、生じた反応生成物2は過剰の過熱気化アルコールと共に気相として上方から採取される。油脂類の供給は必ずしも本各例のように過熱気化アルコールとカウンターフローの関係を持つとは限らず、下方からパラレルフローとして行うことも可能であり、操業条件によって適宜の方法が取られる。(以下、各製造方法について同様)。
【0014】
通常、反応促進のために気液反応装置に使用される構造物としては、例えばスルザー型に代表されるスタチックミキサーがあるが、本発明にかかる多孔板による構造物はこれらに比べ構造が簡易であり、保守も容易である。
【0015】
第5の実施形態:第5の実施形態は、(12)に述べた如く、(5)〜(11)記載の構造物に機械的振動を付与し、気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅の効果を更に高めるものである。多孔板については、例えば図1bに示したような中心支持軸7を持つ構造であれば、該中心軸を適宜の装置により加振し、上下振動を行わせることが出来る。
【0016】
第6の実施形態:第6の実施形態は、(13)に述べた如く、(5)〜(12)記載の構造物に触媒作用を付与し、更に気体と液体との反応速度の向上を図るものである。油脂類とアルコールとのエステル交換反応においては、最も簡単には、多孔板を鉛、錫或いは亜鉛製若しくは該金属類によって被覆されたものとすることによって実施することが出来る。
【0017】
第5又は第6の実施形態は、何れも反応効率の向上に寄与するが、コスト増の要因ともなるので、反応効率の向上効果との比較考量が必要である。
【0018】
第7の実施形態:第7の実施形態は、(14)に述べた如く、(5)〜(13)記載の構造物とドラフトチューブとを併用するもので、図3aに多孔板を例にして示したように、多孔板外部にドラフトチューブを設置し、該構造物を通過して上昇した液状物若しくは流速によっては気泡を随伴した該液状物がドラフトチューブ外部を下降して再度ドラフトチューブ内部に入り、気泡と液状物との接触機会を増加させる流れをスムーズに行わせるものである。気泡が液状物に随伴される場合、気泡の上昇速度は気泡径が小さくなるにつれて減少するため、下降する気液混合物中の気泡は、新しく上昇する気液混合物中の気泡よりも微小なものが多く、微小気泡による大型気泡の破壊効果(特願2003−3139636)をも期待することが出来る。ドラフトチューブを細孔板で形成することにより、下降する気液混合物と新しく上昇する気液混合物との混合効率をより高めることも可能である。反応容器中には、時間の経過と共に原料劣化物が蓄積し、反応効率を阻害する場合があるが、ドラフトチューブによるスムーズな循環流は、原料油脂類よりも比重の大きい劣化物の下方への分離を容易にする効果も期待される。図3bはドラフトチューブを多孔板の中央部に設置し、多孔板の有効面積の増大を図ったものである。本形式では、該構造物を通過して上昇した液状物若しくは流速によっては気泡を随伴した該液状物はドラフトチューブ内部を下降する。
【0019】
第8の実施形態:第8の実施形態は、(15)に述べた如く、1個の反応容器中に複数の反応ユニットを並列に設置し、生産効率を向上させるものである。図4aにドラフトチューブ10と多孔板5を有する反応ユニットを、図4bに中心支持軸7を持つ田孔板の反応ユニットを使用したもの一例の模式図を示す。
【0020】
第9の実施形態:第9の実施形態は、(16)に述べた如く、反応ユニットの周囲にジャケットを設置し、反応ユニットの温度制御を容易にするものである。必要に応じ、ジャケットを上下に複数部分に分割し、それぞれに適した温度分布を作る。図5aに中央に気液の共通循環孔13、該孔周辺に反応ユニット設置孔12をもつジャケット11aの例、図5bに該ジャケット11aと反応ユニットとして多孔板5を設置した反応容器例の模式図を示す。本例では気液の循環におけるダウンフローは、中央の共通循環孔を通じて一括して行われる。図6aに共通循環孔を持たず、断面全体に反応ユニット設置孔12を設けたジャケット11bの例、図6bに該ジャケット11bと反応ユニットとしてドラフトチューブ10と多孔板5とを設置した反応容器の例の模式図を示す。図6bの例では、気液循環は反応ユニットごとに独立して行われる。
【0021】
第10の実施例:第10の実施例は、(17)に述べた如く、本発明における製造方法において、気体吹き込みを例えば孔径0.5mmの金属製またはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うものである。本発明においては、単に孔径5mm程度のパイプから気体吹き込みを行っても反応効率の向上が見られるが、油脂の種類、反応ユニットの形式によっては当初から微小化した気泡を送り込むことにより、更に良い結果が得られる。
【0022】
第11の実施例:第11の実施例は、(18)に述べた如く、本発明における同一若しくは異種の製造方法を複数直列に連結して、多段階の反応工程を構築するものである。図7に、ドラフトチューブ10を持つ多孔板5の反応ユニットを使用した2段階工程の例の模式図を示す。通常、第2段階の反応容器の容量は第1段階よりも小さく設定される。油脂類とアルコールとのエステル交換反応について言えば、左側の第1段階の反応容器では、上部から原料油脂類4が油脂類供給ノズル9を介して供給され、下部からノズル8を介して吹き込まれる過熱気化アルコール3と反応して生成した反応生成物2(エステルとグリセリン)は、過剰の過熱気化アルコールとともに気相として上方から採取される。この際、通常過剰の過熱気化アルコールのみでは反応生成物の全てを随伴して気相中に取り込むことが出来ず、1段階のみの反応工程では残留反応生成物は反応容器内に残って蓄積されるが、本例の如き2段階工程では、残留反応生成物は未反応油脂類と共に下方から右側の第2段階の反応容器上部に供給される。第2段階では、反応容器下部から供給される過熱気化アルコール3と未反応油脂類とによって生ずる反応生成物と、第1段階で生じた残留反応生成物とが、共に反応生成物2として共に過剰過熱気化アルコールによって気相として上方から採取される。この方法によって、第1、第2段階に配分する過熱気化アルコールの量を適宜に設定することにより、全体として過熱気化アルコールからのエステル採取効率を向上させることが出来る。また、反応容器内に油脂類の劣化物が蓄積すると、反応効率が減少する恐れがあるが、この方法では第1段階の反応容器中には劣化物が蓄積せず、反応効率は初期の値が保たれ、第2段階において少量づつ劣化物を抜き取ることによって、装置効率の減少を抑制することが容易になる。
【実施例】
【0023】
直径50mmのステンレス製円筒容器に、高さ215mmまで菜種油(純度92%)を満たし、底部から直径5mmのステンレス管を用いて温度290℃の過熱メタノール(純度99.7%)を吹き込み、上部から過剰メタノールと共に反応生成物(脂肪酸メチルエステル)を採取する実験において、細孔板(直径46mm、細孔直径3.6mm、細孔数37)10枚を15mmの間隔で直列に菜種油に設置した場合のエステル取得量(l)/メタノール吹込量(l)を、多孔板無しの場合と比較した結果を図8に示す。折れ線グラフ15、16(16は同一条件での繰り返し実験5回目)は多孔板を使用した場合(メタノール供給速度0.7ml/min)、3は多孔板無しの場合(メタノール供給速度2.4ml/min)であって、実験開始後2〜4時間で反応が略安定状態に達した時点で、細孔板無しの場合のエステル取得比が0.3程度であるのに対し、多孔板を使用した場合0.6〜0.7と顕著な反応効率の増大を示している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、大きなコストの増加の必要なしに、且つ副反応等の悪影響を与えることなく反応効率の向上を図ることを可能とするもので、気液反応特にバイオジーゼル製造の分野における広範囲な実用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】多孔板の配置例の模式図である。
【図1b】多孔板の配置例の模式図である。
【図2a】多孔板と邪魔板を併用した例の模式図である。
【図2b】多孔板の孔径/孔数を変化させた配置例の模式図である。
【図3a】ドラフトチューブを多孔板外部に設置した例の模式図である。
【図3b】ドラフトチューブを多孔板内部(中央部)に設置した例の模式図である。
【図4a】1個の反応容器中にドラフトチューブを持つ複数の反応ユニットを配置する例の模式図である。
【図4b】1個の反応容器中にドラフトチューブを持たぬ複数の反応ユニットを配置する例の模式図である。
【図5a】中央に気液の共通循環路を持つジャケットの例の模式図である。
【図5b】図5aのジャケットを反応容器内に設置した例の模式図である。
【図6a】気液の共通循環路を持たぬジャケットの例の模式図である。
【図6b】図6aのジャケットを反応容器内に設置した例の模式図である。
【図7】多孔板を用いた2段階反応工程を示す模式図である。
【図8】エステル生成量(容積)/メタノール吹込量(容積)に対する細孔板の効果を示す実験結果である。
【記号の説明】
【0026】
1 反応容器
2 反応生成物
3 メタノール
4 油脂類
5 多孔板
6 支持梁
7 中心支持軸
8 過熱気化メタノール吹き込みノズル
9 油脂類供給ノズル
10 ドラフトチューブ
11a ジャケット
11b ジャケット
12 反応ユニット設置孔
13 共通気液循環(流下)孔
14 邪魔板
15 多孔板使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
16 多孔板使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
17 多孔板無使用時のエステル生成量/メタノール吹込量の経時変化を示すグラフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内の液状物質中に気体を吹き込み、該液状物質と該気体との間の反応によって有用生成物を得る工程において、主として該気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において目的とする反応若しくは目的とする反応の一部を生起させることを特徴とする、有用生成物の製造方法。
【請求項2】
反応容器内の液体状の油脂類中に過熱状態の気化アルコールを吹き込み、微小気泡状態のアルコールと油脂類との間でエステル交換反応を行い、生成物を過剰の過熱気化アルコールと共に気相状態で取得する脂肪酸エステルの製造方法において、主としてアルコール気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において該エステル交換反応若しくは該エステル交換反応の一部を生起させることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2記載の製造方法において、該気泡の表面張力若しくは表面張力と外部からの圧力との和による該気泡内の気体圧力が該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上であり、且つ該気泡内の気体温度が該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3記載の何れかの製造方法において、一定若しくは可変周波数の超音波の照射により微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅を行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3記載の何れかの製造方法において、反応容器内に微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物を設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法において、該構造物が多孔板であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項7】
請求項5記載の製造方法において、該構造物が、網状物であるか、薄板によって構成される格子状・ハニカム状その他の細隙の集合体であるか、若しくはリングその他の形状の充填物であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項8】
請求項6若しくは請求項7記載の製造方法において、該構造物が同一構造のもの又は同種の構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものが複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項9】
請求項6若しくは請求項7記載の製造方法において、該構造物が異種構造のもの又は該異種構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含んで複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項10】
請求項8若しくは請求項9記載の製造方法において、該構造物の多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを複数個直列に設置する場合、液状物質及び気泡が順次孔径の大きなものから小さなものを通過するか、或いは網目精細度若しくは細隙精細度の粗いものから精細なものを通過するように設定することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項11】
複数個の多孔板を直列に設置する場合、複数個の邪魔板を併用して、液状物及び気泡の通過経路を延長することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項12】
請求項5〜請求項11記載の何れかの製造方法において、該構造物に機械的振動を与えることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項13】
請求項5〜請求項12記載の何れかの製造方法において、該構造物の材質が該液状物質と該気体との間の反応特にアルコールと油脂類との間のエステル交換反応に対し触媒作用を有するものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項14】
請求項5〜請求項13記載の何れかの製造方法において、該構造物にドラフトチューブを設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項15】
請求項5〜請求項14記載の何れかの製造方法において、微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物若しくは該構造物とそれに付随するドラフトチューブ等の機構(以下総称して反応ユニットと言う)を反応容器中に複数個並列に設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の製造方法において、反応ユニットの周囲に1若しくは複数のジャケットを設置し、ジャケット内に熱媒を循環させて反応ユニット内の温度を制御することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項17】
請求項5〜請求項16記載の何れかの製造方法において、気体の吹き込みを、金属製若しくはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項18】
請求項5〜請求項17記載の何れかの製造方法を反復使用するか、若しくは該製造方法のうちの1又は複数と該製造方法以外の気液反応装置とを組み合わせて多段階の反応工程を構築することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項1】
反応容器内の液状物質中に気体を吹き込み、該液状物質と該気体との間の反応によって有用生成物を得る工程において、主として該気体の気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において目的とする反応若しくは目的とする反応の一部を生起させることを特徴とする、有用生成物の製造方法。
【請求項2】
反応容器内の液体状の油脂類中に過熱状態の気化アルコールを吹き込み、微小気泡状態のアルコールと油脂類との間でエステル交換反応を行い、生成物を過剰の過熱気化アルコールと共に気相状態で取得する脂肪酸エステルの製造方法において、主としてアルコール気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅時において該エステル交換反応若しくは該エステル交換反応の一部を生起させることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2記載の製造方法において、該気泡の表面張力若しくは表面張力と外部からの圧力との和による該気泡内の気体圧力が該気体の臨界圧若しくは臨界圧以上であり、且つ該気泡内の気体温度が該気体の臨界温度若しくは臨界温度以上であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3記載の何れかの製造方法において、一定若しくは可変周波数の超音波の照射により微小気泡の破壊若しくは微小化・消滅を行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3記載の何れかの製造方法において、反応容器内に微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物を設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法において、該構造物が多孔板であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項7】
請求項5記載の製造方法において、該構造物が、網状物であるか、薄板によって構成される格子状・ハニカム状その他の細隙の集合体であるか、若しくはリングその他の形状の充填物であることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項8】
請求項6若しくは請求項7記載の製造方法において、該構造物が同一構造のもの又は同種の構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものが複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項9】
請求項6若しくは請求項7記載の製造方法において、該構造物が異種構造のもの又は該異種構造において多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを含んで複数個直列に設置されたものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項10】
請求項8若しくは請求項9記載の製造方法において、該構造物の多孔板の孔径或いは網状物の網目精細度或いは細隙の集合体の細隙精細度を変化させたものを複数個直列に設置する場合、液状物質及び気泡が順次孔径の大きなものから小さなものを通過するか、或いは網目精細度若しくは細隙精細度の粗いものから精細なものを通過するように設定することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項11】
複数個の多孔板を直列に設置する場合、複数個の邪魔板を併用して、液状物及び気泡の通過経路を延長することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項12】
請求項5〜請求項11記載の何れかの製造方法において、該構造物に機械的振動を与えることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項13】
請求項5〜請求項12記載の何れかの製造方法において、該構造物の材質が該液状物質と該気体との間の反応特にアルコールと油脂類との間のエステル交換反応に対し触媒作用を有するものであることを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項14】
請求項5〜請求項13記載の何れかの製造方法において、該構造物にドラフトチューブを設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項15】
請求項5〜請求項14記載の何れかの製造方法において、微小気泡の生成・破壊若しくは微小化・消滅のための構造物若しくは該構造物とそれに付随するドラフトチューブ等の機構(以下総称して反応ユニットと言う)を反応容器中に複数個並列に設置することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の製造方法において、反応ユニットの周囲に1若しくは複数のジャケットを設置し、ジャケット内に熱媒を循環させて反応ユニット内の温度を制御することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項17】
請求項5〜請求項16記載の何れかの製造方法において、気体の吹き込みを、金属製若しくはセラミックス製の多孔焼結体を介して行うことを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項18】
請求項5〜請求項17記載の何れかの製造方法を反復使用するか、若しくは該製造方法のうちの1又は複数と該製造方法以外の気液反応装置とを組み合わせて多段階の反応工程を構築することを特徴とする、有用生成物若しくは有用生成物のうち特に脂肪酸エステルの製造方法。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−249066(P2006−249066A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225911(P2005−225911)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000100757)アイシーエス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000100757)アイシーエス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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