説明

水中スイッチ機構

【課題】 水圧により不用意に操作されることのない押圧操作部材を備えた省スペースの水中スイッチ機構を提供する。
【解決手段】 軸孔41と水圧検知用孔42とを有する外装部材の前カバー2aと、軸孔41に水密に設けられており外装部材の外部から操作可能なパワーボタン31と、前カバー2aの水圧検知用孔42に水密に設けられており水中において水圧に応じた力量を発生するパワーゴム幕35と、パワー軸34周りに回動可能であって水中においてパワーゴム幕35から発生した力量を力点において受けて作用点においてパワーボタン31に作用させることにより該パワーボタン31にかかる水圧を略相殺するようになされたパワーシーソー33と、を備えた水中スイッチ機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中スイッチ機構、より詳しくは、陸上のみならず水中においても使用され得る機器の水中スイッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水中で使用される機器、例えば水中カメラ等の機器は、水中で操作可能な各種の操作スイッチを備えている。このような操作スイッチは、陸上においてのみ用いられる操作スイッチと比べて、水密に設けられているのはもちろん、該水密性が所定の水圧まで耐えられるように設計する必要がある。一般には、機器の使用形態、大きさ、重量、価格等を考慮して、どの程度までの水深に耐えられるものとして設計するかが決定される。このときに設定される水深が深い程、機器にかかる水圧も大きくなるが、静水圧は機器の表面に均等にかかるために、機器の外装部材にかかるだけでなく、当然にして操作スイッチにもかかることになる。
【0003】
ここに、操作スイッチが押圧スイッチのタイプである場合には、該水圧による押圧力により、操作スイッチがオン/オフしてしまう可能性がある。そのために、押圧式のスイッチは、例えば内部にばね等を設けるなどして、水圧に抗し得る付勢力を発生させるようになっている。このとき、設計水深の深い機器であればある程、該付勢力を強くする必要があるために、このような機器を陸上や浅い水深の水中で使用する場合には、操作スイッチを操作する際に大きな押圧力量を要求されることになる。しかも、このような操作スイッチは、操作に必要な押圧力量が水深に応じて変化するために、操作性が良いとはいえない。
【0004】
こうした点を改良し得る技術として、例えば実開昭51−111343号公報には、シャッタレリーズ部材に、その押圧部受圧面とほぼ等しい面積の均衡受圧面を設け、両受圧面にかかる水圧を均衡させるようにした防水カメラのシャッタレリーズ装置が記載されている。より具体的には、押圧部受圧面はカメラの上面側に、均衡受圧面はカメラの下面側に、それぞれ設けられていて、シャッタレリーズ部材は、カメラの上面と下面とを結ぶ縦長形状に形成されたものとなっている。そして、該シャッタレリーズ部材は、カメラの上面と下面とを結ぶ縦方向に移動可能となるように構成されている。このような構成により、水深に依ることなく、シャッタレリーズ部材が水圧により不用意に押圧されるのを未然に防止することができるようになっている。
【特許文献1】実開昭51−111343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記実開昭51−111343号公報に記載されたようなものでは、シャッタレリーズ部材がカメラの上下を貫通する構成となっていて、カメラ側には該シャッタレリーズ部材を配設するための比較的大きなスペースを要するために、カメラの大型化につながってしまう。さらに、機器に複数の押圧式操作スイッチを設ける場合には、各スイッチ毎にこのような構成が必要となるために、より多いスペースを要し、必ずしも実用的とはいえなくなってしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水圧により不用意に操作されることのない押圧操作部材を備えた省スペースの水中スイッチ機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明による水中スイッチ機構は、第1の孔と第2の孔とを有する外装部材と、上記外装部材の第1の孔に対して水密に設けられた押圧操作部材と、上記押圧操作部材の移動によりオン/オフされるスイッチ手段と、上記外装部材の第2の孔に対して水密に設けられた水圧検知手段と、上記外装部材の内部に設けられた回転支持部の周りに回動可能に配置され水中において上記水圧検知手段が水圧によって押圧されることにより発生する水圧検知力量を上記押圧操作部材へ作用させるレバー部材と、を具備し、上記水圧検知力量が、上記押圧操作部材が外力である水圧から受ける外部圧力と、当該外部圧力の作用方向とは反対の方向に作用する力であって上記押圧操作部材が内部の部材から受ける内部力と、の合力以上の大きさとなるように設定されたものである。
【0008】
また、第2の発明による水中スイッチ機構は、上記第1の発明による水中スイッチ機構において、上記内部力が、上記押圧操作部材が移動する際に発生する静止摩擦力および上記レバー部材が上記押圧操作部材を上記外装部材の外側へ移動させるように設けられた付勢手段からの付勢力である。
【0009】
さらに、第3の発明による水中スイッチ機構は、外部操作により外装部材に対して水密に移動可能であって水中において水と空気との境界部における第1の断面積が水圧に応じて発生させる第1の力量を受ける押圧操作部材と、上記押圧操作部材の移動によりオン/オフされるスイッチ手段と、外装部材に対して水密に配置され水と空気との境界部が第2の断面積を有し水中において当該第2の断面積が水圧に応じた第2の力量を発生させる水圧力量発生部材と、上記第2の力量を上記押圧操作部材へ伝達する伝達部材と、を具備し、上記水圧力量発生部材における第2の断面積が、上記押圧操作部材における第1の断面積よりも大きくなるように構成することにより、上記押圧操作部材が受ける第1の力量よりも上記水圧力量発生部材が発生させる第2の力量の方が大きくなるようにしたものである。
【0010】
第4の発明による水中スイッチ機構は、第1の孔と第2の孔とを有する外装部材と、上記外装部材の第1の孔に水密に設けられており該外装部材の外部から操作可能な押圧操作部材と、上記押圧操作部材によりオン/オフされ得るスイッチ手段と、上記外装部材の第2の孔に水密に設けられており水中において水圧に応じた力量を発生する水圧検知部材と、支点周りに回動可能であって水中において上記水圧検知部材から発生した力量を力点において受けて作用点において上記押圧操作部材に作用させることにより該押圧操作部材にかかる水圧を略バランスするようになされたレバー部材と、を具備したものである。
【0011】
第5の発明による水中スイッチ機構は、上記第4の発明による水中スイッチ機構において、上記第1の孔の水圧に対する有効な最小断面積をSa 、上記第2の孔の水圧に対する有効な最小断面積をSb 、上記レバー部材の支点から作用点までの距離をRa 、該レバー部材の支点から力点までの距離をRb 、とすると、該第1の孔、第2の孔、およびレバー部材は、
Sa ×Ra ≦Sb ×Rb
なる関係を満たすように構成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水圧により不用意に操作されることのない押圧操作部材を備えた省スペースの水中スイッチ機構となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1から図17は本発明の実施例1を示したものであり、図1は水中カメラの構成を一部分解部分を含んで正面側から示す斜視図、図2は水中カメラの構成を一部分解部分を含んで背面側から示す斜視図である。
【0015】
このカメラ1は、陸上で使用可能であるとともに、水中においても所定の水深まで使用可能となるように構成された、いわゆる水中カメラとなっている。
【0016】
カメラ1の外装部材2は、前カバー2aと、後カバー2bと、を水密となるように閉蓋し、ビス等を螺合することにより固定して構成されている。
【0017】
カメラ1の正面には、正面側(被写体側)から見たときの右上角部に焦点距離可変のズーム光学系として構成された撮影光学系3が、中央上部に照明光を照射するためのストロボ発光部4が、それぞれ配設されている。
【0018】
カメラ1の上面には、撮影者が右手の人差指等で押圧操作可能な位置に、撮影動作を指示入力するためのレリーズボタン5が配設されている。
【0019】
カメラ1の右側面(撮影者から見て右側の側面)には、下側に、当該カメラ1の電源をオン/オフするための電源ボタン6と、カメラ1の動作モードを例えば静止画撮影モード/動画撮影モード/再生モードなどに切り換え操作するためのモード切換レバー7と、がそれぞれ配設されている。
【0020】
カメラ1の背面には、右上角部に上記撮影光学系3の焦点距離をテレ側とワイド側とへ変更するためのズームレバー8が、このズームレバー8の左側のカメラ背面の大部分に撮影した静止画/動画を表示したりカメラ1に係る各種の情報を表示したりするための表示画面9が、それぞれ配設されている。
【0021】
上述したような、撮影光学系3、ストロボ発光部4、レリーズボタン5、電源ボタン6、モード切換レバー7、ズームレバー8、表示画面9は、いうまでもなく、外装部材2に対して水密となるように各設けられたものとなっている。
【0022】
上記表示画面9は、図2に示すように、例えばTFT等で構成される表示素子9aを、対水圧性を備える窓ガラス9bで水密に覆い、この窓ガラス9bの外側から窓カバー9cを取り付けて構成されている。
【0023】
次に、図3から図8を参照して、上記ズームレバー8の構成について説明する。ここに、図3はズームレバー8の構成を示す図5のD−D断面図、図4はズームレバー8の構成を示す図5のC−C断面図、図5はズームレバー8の構成を示す図4のA−A断面図、図6はズームレバー8の構成を示す図4のB−B断面図、図7はクリックスイッチ16の構成を示す断面図、図8はズームレバー8の一方側が押圧操作されたときの様子を示す図5のC−C断面図である。
【0024】
ズームレバー8は、上述したように、撮影光学系3の焦点距離をテレ側とワイド側とへ変更するためのものであり、一端側を押圧することにより撮影光学系3の焦点距離がテレ側へ変更され、他端側を押圧することにより撮影光学系3の焦点距離がワイド側へ変更されるようになされた、レバー状の部材として構成されている。
【0025】
すなわち、ズームレバー8は、バランス機構を構成するレバー部材11と、このレバー部材11を後カバー2bに取り付けるための押板12およびビス13と、押圧操作部材を構成する2つの軸部材14と、これら2つの軸部材14にそれぞれ取り付けられたOリング15と、上記2つの軸部材14により各押圧されるようになされたクリックスイッチ16と、を有して構成されている。
【0026】
上記クリックスイッチ16は、スイッチ用フレキシブルプリント基板17に実装されており、このスイッチ用フレキシブルプリント基板17はさらにカメラ内部に設けられた固定台18に取り付けられている。
【0027】
上記レバー部材11は、左右一対の押圧操作部11aを、ブリッジ部11bにより連結して構成されている。上記押圧操作部11aには、空気や水を流通するための長孔でなる連通孔11cが各2つずつ設けられている。上記ブリッジ部11bには、後カバー2bから突設されたボス19bを挿通するための孔11dが形成されている。この孔11dは、レバー部材11が揺動してもボス19bと抵触することがないように、該ボス19bの周面よりも一回り大きめの孔として形成されている。また、レバー部材11のブリッジ部11bの、上面には円柱表面形状のR面をなす摺動凸部11eが、下面には円孔内面形状のR面をなす摺動凹部11fが、それぞれ形成されている。後カバー2bの上記ボス19bの両側には、円柱表面形状のR面をなす摺動凸部19dが形成されていて、上記摺動凹部11fと当接し、レバー部材11を揺動可能に支持するようになっている。
【0028】
上記レバー部材11のブリッジ部11b上には、押板12が載置されるようになっている。この押板12は、両端側において摺動凸部11eと当接し、中央部においてボス19bと当接する。そして、該押板12の中央に穿設された孔を介して、ビス13を、ボス19bのビス孔19cと螺合することにより、レバー部材11が後カバー2bに取り付けられるようになっている。
【0029】
レバー部材11は、押圧操作部11aにおける一対の連通孔11cの間の部分の底面で、上記軸部材14を軸方向のカメラ内部側へ押圧するように構成されているとともに、該軸部材14の上端部に形成された側方フランジ14dに嵌合して、該軸部材14を軸方向のカメラ外部側へ引き上げるための係合凸部11gが設けられている。この係合凸部11gの上面は円柱表面形状のR面として形成されていて、上記レバー部材11が揺動して傾いた際にも、軸方向の力を側方フランジ14dへ安定して伝達することができるように構成されている。
【0030】
上記軸部材14は、略円柱形状をなす軸部材であり、上述したように、上部に側方フランジ14dを有しているとともに、下端に押圧凸部14aを有し、また周面14bにはOリング溝14cが形成されている。さらに、該軸部材14の上端面も、円柱表面形状のR面として形成されていて、上記レバー部材11が揺動して傾いた際にも、該レバー部材11の押圧力を、軸部材14を軸方向へ変位させる力として安定して伝達することができるように構成されている。
【0031】
軸部材14のOリング溝14cには、Oリング15が取り付けられている。なお、図3におけるF1 ,F2 は、主としてOリング15により生じる静止摩擦力を示している。
【0032】
このようなOリング15が各取り付けられた2つの軸部材14は、後カバー2bの表面に垂直となるように該後カバー2bに形成された2つの円形をなす軸孔19aに、軸方向に摺動可能となるように嵌合している。このときには、Oリング15の作用により、カメラ内部がカメラ外部に対して水密に保持されるようになっている。また、軸部材14が軸方向に摺動する際の摩擦力を低減するために、軸部材14の周面にはグリス等が塗布されるようになっており、これによってOリング15が取り付けられた状態であっても、軸部材14は比較的円滑に軸方向に変位することが可能である。
【0033】
スイッチ用フレキシブルプリント基板17上に実装されているクリックスイッチ16は、概略、図7に示すように構成されている。
【0034】
すなわち、例えば、絶縁体の材料により略短円筒状をなすように形成された筐体16aの上面には、円孔16bが形成されている。この円孔16bの内部には、該円孔16bを閉蓋するように絶縁性のゴム幕16cが配設され、さらに、このゴム幕16cを上部側へ押圧するように、金属により凸面状に形成されたクリックばね16dが配設されている。このクリックばね16dの下側には、所定距離の空間を挟んで、電気接点16eが形成されている。上記クリックばね16dと、電気接点16eとは、それぞれ信号線を介して図示しない回路側へ接続されている。
【0035】
そして、上記軸部材14が押下されて、押圧凸部14aが円孔16bを介してゴム幕16cおよびクリックばね16dを押圧すると、クリックばね16dと電気接点16eが通電され、これを検出することにより、スイッチがオンしたか否かが分かるようになっている。
【0036】
また、軸部材14の押圧凸部14aからの押圧力がなくなれば、クリックばね16dの復元力により、該クリックばね16dと電気接点16eとが所定距離だけ離間する図7に示すような位置に復帰する。
【0037】
このようなズームレバー8に設けられた2つの押圧操作部11aの一方を、ユーザが指などで押圧操作すると、図8に示すようになる。
【0038】
すなわち、ズームレバー8は、押圧された方の押圧操作部11aの底面が軸部材14を軸方向のカメラ内部側へ変位させ、軸部材14の押圧凸部14aがクリックスイッチ16をオンする。このときには、他方の軸部材14は、側方フランジ14dと係合凸部11gとの係合により、軸方向のカメラ外部側へ変位される。
【0039】
続いて、このようなズームレバー8が水中にあるときの圧力バランスについて説明する。
【0040】
ズームレバー8は、上述したような構成から分かるように、摺動凹部11fと摺動凸部19dとの当接部分を支点として回動する。そして、一方の押圧操作部11a(より詳しくは、押圧操作部11aと軸部材14の上端面との当接位置)を力点とすると、他方の押圧操作部11a(より詳しくは、側方フランジ14dと係合凸部11gとの当接位置)が作用点となる。
【0041】
ここに、支点から一方の押圧操作部11a(第1の力点であり第2の作用点)までの距離をR1 、支点から他方の押圧操作部11a(第1の作用点であり第2の力点)までの距離をR2 、とする。さらに、上記一方の押圧操作部11aにより押圧される軸部材14が挿通される軸孔19aの水圧に対する有効な最小断面積をS1 、上記他方の押圧操作部11aにより押圧される軸部材14が挿通される軸孔19aの水圧に対する有効な最小断面積をS2 とする。すると、次の数式1に示す関係式、
[数1]
S1 ×R1 =S2 ×R2
が成り立つように、2つの軸孔19aの断面積と、支点から2つの押圧操作部11aまでの距離と、が構成されている。
【0042】
つまり、水深D(m)における静水圧(この静水圧には、大気圧も含まれているものとする。以下同様。)をP(D)とすると、この静水圧により一方の軸部材14にかかる力量はP(D)×S1 、他方の軸部材14にかかる力量はP(D)×S2 、となる。そして、このときの支点周りの力のモーメントは、それぞれ、P(D)×S1 ×R1 とP(D)×S2 ×R2 となる。従って、これらの力のモーメントが釣り合う条件は次の数式2に示すように、
[数2]
P(D)×S1 ×R1 =P(D)×S2 ×R2
となるために、水圧により一方のクリックスイッチ16が押されてしまうのを防止するための設計上の条件が上記数式1として求められる。
【0043】
そして、図3から図8に示した例では、ズームアップとズームダウンという反対の機能を有する(つまり、スイッチの使用頻度や重要性に差を付ける必要のない)2つのスイッチに対して、最も自然であると思われる条件、すなわち、S1 =S2 かつR1 =R2 が設定されている。
【0044】
次に、図9および図10を参照して、上記ズームレバー8等の操作スイッチの第1変形例について説明する。図9は操作スイッチの第1変形例を示す断面図、図10は操作スイッチの第1変形例を示す斜視図である。
【0045】
この第1変形例のズームレバー8は、上記レバー部材11と軸部材14とOリング15とを、弾性を有する比較的硬質なゴム等により、一体的に形成したものとなっている。
【0046】
すなわち、レバー軸部材21は、上記押圧操作部11aに相当する2つの押圧操作部21aを、ブリッジ部21bで接続している。このブリッジ部21bの中央部には、上記ビス13を貫通するためのビス孔21dが形成され、また底面側には上記摺動凹部11fと同様の機能を果たす摺動凹部21cが形成されている。また、2つの押圧操作部21aからは、各々上記軸部材14に相当する軸部21eが延出されており、この軸部21eの先端には上記押圧凸部14aに相当する押圧凸部21gが形成されている。さらに、軸部21eの周面には、上記Oリング15と同様の機能を果たすフランジ部21fが形成されている。
【0047】
このような構成によれば、部品点数を削減することができるために、コストを低減することが可能となる。
【0048】
続いて、図11を参照して、上記ズームレバー8と同様の構成の操作スイッチに関する第2変形例について説明する。図11は操作スイッチの第2変形例を示す一部透視図を含む平面図である。
【0049】
この第2変形例は、上述したようなズームレバー8と同様の構造の操作スイッチを、互いの支点を重ね合わせるようにして、直交して配置することにより、十字スイッチ22を構成したものである。
【0050】
すなわち、この十字スイッチ22は、2つの押圧操作部23aをブリッジ部23bで接続して構成される操作レバー23と、2つの押圧操作部24aをブリッジ部24bで接続して構成される操作レバー24と、を十字状に組み合わせて構成されている。
【0051】
なお、ここでは2つの操作レバーを組み合わせて十字スイッチ22を構成するようにしているが、これに限らず、4つの押圧操作部を十字状のブリッジ部で一体に接続するように構成しても構わない。
【0052】
さらに、押圧操作部は4つに限るものではない。例えば、3つの押圧操作部を、3つの分岐を備えるブリッジ部で一体に接続するようにしても構わない。このときには、ある押圧操作部にかかる水圧を、他の2つの押圧操作部にかかる水圧に基づき相殺(バランス)するように、軸孔の断面積や支点からの長さなどを設計すれば良い。
【0053】
このような構成によれば、2つの操作スイッチに限らず、3つ以上の操作スイッチについても、水圧により不用意に押圧されるのを防止することが可能となる。
【0054】
さらに、図12および図13を参照して、上記ズームレバー8等の操作スイッチの第3変形例について説明する。図12は操作スイッチの第3変形例を示す平面図、図13は操作スイッチの第3変形例を示す斜視図である。
【0055】
この第3実施例は、ブリッジ部を折れ線状に折曲したものとなっている。
【0056】
すなわち、レバー部材25は、2つの押圧操作部25aを、L字状に折曲されたブリッジ部25bを介して一体に連結したものとなっている。このブリッジ部25bの折曲部分には、回動軸部25cが設けられていて、図13に示す軸周りにレバー部材25が回動可能となっている。なお、このレバー部材25における支点は、2つの押圧操作部25aを結ぶ直線と、上記回動軸部25cを通る回動軸を延長した直線と、の交点となるために、レバー部材25上には存在していない。
【0057】
そして、この回動軸の中心から一方の押圧操作部25aへ向かう直線と、該回動軸の中心から他方の押圧操作部25aへ向かう直線と、がなす角αは、0°<α≦180°の範囲の値を取り、より実用的には90°≦α≦180°である。
【0058】
なお、ここではブリッジ部を折れ線形状としたが、これに限るものではなく、例えばU字状やS字状などの曲線形状とすることも可能である。
【0059】
このような構成によれば、2つの押圧操作部25aを直線以外のブリッジ部で接続することが可能となるために、カメラにおける部材の配置に関する設計上の自由度が向上する。
【0060】
次に、図14および図15を参照して、上記電源ボタン6の構成について説明する。図14は電源ボタン6の非押圧状態における構成を示す断面図、図15は電源ボタン6の押圧状態における構成を示す断面図である。
【0061】
この電源ボタン6は、押圧操作部材たるパワーボタン31と、Oリング32と、レバー部材であり伝達部材たるパワーシーソー33と、回転支持部たるパワー軸34と、水圧検知手段、水圧検知部材、水圧力量発生部材であり幕部材たるパワーゴム幕35と、スペーサ36と、横蓋37と、パワースイッチ38と、を有して構成されている。
【0062】
上記パワーボタン31は、上面側が指などで押圧可能となっている略円柱形状の軸部材である。このパワーボタン31は、先端側に押圧凸部31aを有し、周面31bにOリング溝31cが、また、周面31bの上部側に上記横蓋37のボタン孔37aと係合して該パワーボタン31の抜け止めを行うためのフランジ31dが、それぞれ形成されている。
【0063】
上記Oリング溝31cには、Oリング32が取り付けられるようになっている。
【0064】
前カバー2aには円形をなす軸孔41が形成されており、この軸孔41にパワーボタン31の周面31bが嵌合し、上記Oリング32がカメラ内部を水密に保持するようになっている。
【0065】
上記パワーシーソー33は、前カバー2a内において摺動凹部33aによりパワー軸34周りに回動可能に構成されたレバー部材であり、一端に二股フォーク部33bが形成されて、この二股フォーク部33bの間から押圧凸部31aを突出するように、上記パワーボタン31の先端側と係合している。また、パワーシーソー33の他端側には腕部33cが形成されており、この腕部33cによりパワーゴム幕35にかかる水圧の力量(水圧検知力量)を受けるようになっている。また、この腕部33cにはばね掛け33dが設けられており、図示しないばね(付勢手段)の一端が掛けられて、該パワーシーソー33を図14の時計回りに付勢している。このばねは、主として陸上(あるいは水深の浅い水中)において、カメラ1を使用する際に、パワーボタン31をパワースイッチ38から離間する方向に付勢することを目的として設けられたものである。従って、該ばねは、水中における水圧に抗する等を目的とはしておらず、それほど強力な付勢力を発生させるものでない。
【0066】
パワーシーソー33の腕部33cに当接するパワーゴム幕35は、前カバー2aに設けられた水圧検知用孔42を水密に閉蓋するものであり、周縁にはOリング部35aが形成されている。
【0067】
上記スペーサ36は、上端側を横蓋37により押圧されることで、パワーゴム幕35のOリング部35aを挟み込むようになされた係合溝36aが形成されている。また、このスペーサ36には、空気や水を流通するための孔36bが形成されている。
【0068】
上記横蓋37は、上記ボタン孔37aが形成されているとともに、スペーサ36の孔36bと連通するようになされた連通孔37bが複数(図1に示す例では5つ)形成されている。
【0069】
この横蓋37は、前カバー2aのボス43e,43fと各係合するための孔37e,37fを対向する角部に有するとともに、長手方向の対向する辺縁に円形孔37c,37dが形成されている。
【0070】
一方、前カバー2aにはビス孔43c,43dが形成されており、上記円形孔37c,37dを介してビス39a,39bをビス孔43c,43dに螺合することにより、横蓋37が前カバー2aに対して取り付けられるようになっている。このときには、上述したように、横蓋37は、パワーボタン31の抜け止めを行っているとともに、スペーサ36を介してパワーゴム幕35のOリング部35aを挟み込み、水圧検知用孔42の水密性を保つようになっている。
【0071】
また、上記パワーボタン31の軸方向における押圧凸部31aの近傍には、上記パワースイッチ38が配設されている。このパワースイッチ38は、電源オフの状態で押圧されるとカメラ1の電源をオンにし、電源オンの状態で押圧されるとカメラ1の電源をオフにするように機能するものとなっている。
【0072】
続いて、このような電源ボタン6が水中にあるときの圧力バランスについて説明する。
【0073】
電源ボタン6は、上述したような構成から分かるように、パワー軸34を支点として回動する。そして、腕部33cを水圧によりパワーゴム幕35から作用する力(水圧検知力量)の力点とすると、二股フォーク部33bが作用点となる。
【0074】
ここに、支点から二股フォーク部33b(作用点)までの距離をRa 、支点から腕部33c(力点)までの距離をRb 、とする。さらに、上記軸孔41の水圧に対する有効な最小断面積(水と空気との境界部における第1の断面積)をSa 、上記水圧検知用孔42の水圧に対する有効な最小断面積(水と空気との境界部における第2の断面積)をSb とする。すると、次の数式3に示す関係式、
[数3]
Sa ×Ra ≦Sb ×Rb
が成り立つように、軸孔41および水圧検知用孔42の断面積と、支点から作用点および力点までの距離と、が構成されている。
【0075】
上述と同様に、水深D(m)における静水圧をP(D)とすると、数式3の両辺にこの静水圧P(D)を掛ければ、次の数式4が得られる。
[数4]
P(D)×Sa ×Ra ≦P(D)×Sb ×Rb
【0076】
数式4の左辺は、静水圧によりパワーボタン31を介して二股フォーク部33bにかかる支点周りの力のモーメントを示し、数式4の右辺は静水圧によりパワーゴム幕35を介して腕部33cにかかる支点周りの力のモーメントを示している。従って、数式4は、水圧がかかったときには、パワーシーソー33が釣り合うか、またはパワーシーソー33に図14の時計方向周りの回転力を生じさせるような力のモーメントが加わることを意味している。つまり、パワーボタン31は、水中においては水圧による力を相殺(バランス)されるか、またはパワースイッチ38から離間する方向の力を与えられることになる。このような構成により、水中において、パワーボタン31が水圧により不用意に押圧されるのを未然に防止するようになっている。
【0077】
このときさらに、上記パワーボタン31が移動する際に発生する静止摩擦力Fa1、および上記パワーシーソー33が上記パワーボタン31を上記外装部材2の外側へ移動させるようにばね掛け33dに掛けられ図示しないばねの付勢力Fa2、でなる内部力を考慮すると、次の数式が満たされるように構成すればよい。
P(D)×Sa ×Ra −(Fa1+Fa2)×Ra ≦P(D)×Sb ×Rb
【0078】
すなわち、パワーシーソー33がパワーボタン31へ作用させる水圧検知力量(力のモーメントで示すと「P(D)×Sb ×Rb 」)が、パワーボタン31が外力である水圧から受ける外部圧力(力のモーメントで示すと「P(D)×Sa ×Ra 」)と、この外部圧力の作用方向とは反対の方向に作用する力であってパワーシーソー33が内部の部材から受ける内部力(力のモーメントで示すと「−(Fa1+Fa2)×Ra 」)と、の合力以上の大きさとなるように設定されていれば良い。
【0079】
そして、図14、図15に示した例では、ほぼRa =Rb の条件が満たされるようにパワーシーソー33が設定されており、これに対して、軸孔41および水圧検知用孔42は、断面積がSa ≦Sb となるように設定されている。
【0080】
このような電源ボタン6を、陸上、すなわち空気中で使用する際の作用は次のようになっている。
【0081】
パワーボタン31に何らの外力が加わっていない場合には、上述した図示しないばねの付勢力により、パワーボタン31は、フランジ31dがボタン孔37a近傍の横蓋37に当接して突き当たり、押圧凸部31aがパワースイッチ38から所定距離だけ離間した位置にある。
【0082】
この状態で、ばねの付勢力やOリング32と軸孔41との間に発生する摩擦力に抗してユーザが指などでパワーボタン31を押下すると、パワーボタン31が軸方向に変位する。そして、押圧凸部31aがパワースイッチ38を押圧して、カメラ1の電源のオン/オフが行われる。
【0083】
その後、ユーザが指をパワーボタン31から離すと、上記ばねの付勢力によりパワーシーソー33が図14の時計回りに回転し、フランジ31dが横蓋37に突き当たったところで、パワーボタン31の軸方向の移動が停止する。このように、陸上においては、ばねの付勢力により、パワーボタン31の自動的な復帰が行われる。
【0084】
次に、電源ボタン6を、水中で使用する際の作用は次のようになっている。
【0085】
数式3を満たすような構成を採用しているために、水深D(m)の水中においては、パワーシーソー33に、数式4の左辺および数式4の右辺に示すような力のモーメントが作用する。すなわち、ユーザの押圧力が加えられていないときのパワーボタン31は、上記ばねの付勢力と、パワーシーソー33からの次の数式5に示すような軸方向カメラ外側向きの押圧力Fと、が作用して、フランジ31dが横蓋37に当て付いている。
[数5]
F=P(D)×Sb ×Rb /Ra −P(D)×Sa
【0086】
この状態で、ばねの付勢力、押圧力F、およびOリング32と軸孔41との間に発生する摩擦力に抗して、ユーザが指などでパワーボタン31を押下すると、パワーボタン31が軸方向に変位する。そして、押圧凸部31aがパワースイッチ38を押圧して、カメラ1の電源のオン/オフが行われる。
【0087】
その後、ユーザが指をパワーボタン31から離すと、上記ばねの付勢力および押圧力Fによりパワーシーソー33が図14の時計回りに回転し、フランジ31dが横蓋37に突き当たったところで、パワーボタン31の軸方向の移動が停止する。このように、水中においては、ばねの付勢力および押圧力Fにより、パワーボタン31の自動的な復帰が行われる。
【0088】
次に、図16および図17を参照して、上記レリーズボタン5の構成について説明する。図16はレリーズボタン5の非押圧状態における構成を示す断面図、図17はレリーズボタン5の押圧状態における構成を示す断面図である。
【0089】
このレリーズボタン5は、レリーズレバー51と、レリーズキャップ52と、軸部材であり防水スイッチ手段たるレリーズ軸53と、Oリング54と、レリーズばね55と、レリーズスイッチ56と、を有して構成されている。
【0090】
上記レリーズスイッチ56は、スイッチ用フレキシブルプリント基板57に実装されており、このスイッチ用フレキシブルプリント基板57はさらにカメラ内部に設けられた固定台58に取り付けられている。
【0091】
上記レリーズレバー51は、支点となる支軸51a周りに回動可能なレバー部材かつ操作部材であって、後述するように、力点と作用点とが該支軸51aから見て同一の側に設けられている。このレリーズレバー51は、中程の部分に下側が開口する収納凹部51bを有しており、該収納凹部51bの上面には円柱表面形状のR面として形成された押圧部たる押圧凸部51cが設けられている。この押圧凸部51cは、作用点となって上記レリーズ軸53の上面を押圧するためのものであり、R面として形成することにより、レリーズレバー51が回動して傾いた際にも、該レリーズレバー51の押圧力を、レリーズ軸53を軸方向へ変位させる力として安定して伝達することができるように構成されている。さらに、この収納凹部51bの側面からは、レリーズ軸53の上端に設けられたフランジ53dの下端面と係合する係合突起51dが設けられている。また、レリーズレバー51の支軸51aから見て先端側には、ばね収納室51eが設けられている。
【0092】
上記レリーズキャップ52は、レリーズレバー51の上面側を被覆する操作部材であり、該レリーズキャップ52の表面がユーザの指等により押圧される操作部の面となる。
【0093】
上記レリーズ軸53は、略円柱形状をなす軸部材であり、上述したように、上部にフランジ53dを有しているとともに、下端に押圧凸部53aを有し、また周面53bにはOリング溝53cが形成されている。
【0094】
レリーズ軸53のOリング溝53cには、Oリング54が取り付けられている。
【0095】
前カバー2aの上面にはレリーズボタン5を配置するための凹部64が設けられており、この凹部64の中程には、前カバー2aの上面に垂直となるように該凹部64に形成された円形をなす軸受孔61が設けられている。この軸受孔61は、凹部64の底面から円筒状に立設して設けられ、該円筒状部の一部を切り欠くように逃げ凹部61aが形成されている。この逃げ凹部61aは、レリーズ軸53のフランジ53dが円筒状部の上端面に当接したときに、上記係合突起51dが入り込むための凹部となっている。
【0096】
このような軸受孔61に、Oリング54が取り付けられたレリーズ軸53が、軸方向に摺動可能となるように嵌合している。このときには、Oリング54の作用により、カメラ内部がカメラ外部に対して水密に保持されるようになっている。また、レリーズ軸53が軸方向に摺動する際の摩擦力を低減するために、レリーズ軸53の周面にはグリス等が塗布されているが、レリーズ操作時の操作感を出すために、レリーズ軸53を軸方向に移動させるにはある程度の力量を要するように構成されている。
【0097】
そして、上記レリーズスイッチ56は、レリーズ軸53の軸方向の移動経路上に配置されている。なお、スイッチ用フレキシブルプリント基板57上に実装されているレリーズスイッチ56は、概略、上記図7に示したクリックスイッチ16と同様に構成されたものとなっている。
【0098】
前カバー2aの上記凹部64には、ばね受け62が突設されており、このばね受け62と、レリーズレバー51およびレリーズキャップ52と、に挟み込まれるように、レリーズばね55が圧縮した状態で配置されている。このレリーズばね55は、レリーズレバー51およびレリーズキャップ52を、図16における支軸51a周りの時計方向に付勢するものである。
【0099】
レリーズレバー51およびレリーズキャップ52の、図16における支軸51a周りの時計方向の回動は、上蓋59のボタン孔59aとの係合により係止されるようになっている。
【0100】
上記上蓋59は、レリーズキャップ52の指などで押圧操作される部分を露呈するためのボタン孔59aを備えている。さらに、この上蓋59は、前カバー2aのボス63d,63e(図2参照)とそれぞれ係合するための孔59d,59eを対向する角部に有するとともに、長手方向の対向する辺縁に円形孔59b,59cが形成されている。
【0101】
一方、前カバー2aにはビス孔63b,63cが形成されており、上記円形孔59b,59cを介してビス60a,60bをビス孔63b,63cにそれぞれ螺合することにより、上蓋59が前カバー2aに対して取り付けられるようになっている。このときには、上述したように、上蓋59は、レリーズレバー51およびレリーズキャップ52の抜け止めを行っていて、位置決め部材となっている。
【0102】
上述したようなレリーズボタン5の力学的な構成は、次のようになっている。
【0103】
レリーズボタン5を押圧操作するときは、レリーズキャップ52の上面の、ユーザの指等により押圧された部分が力点となる。また、支点は、上述したように、支軸51aである。そして、押圧凸部51cとレリーズ軸53の上端面との当接部分が作用点である。
【0104】
次に、ユーザがレリーズボタン5から指などを離したときに、該レリーズボタン5が元の位置に復帰する際は、レリーズばね55の復元力をレリーズレバー51およびレリーズキャップ52が受ける位置が力点となる。また、支点は、同様に、支軸51aである。そして、作用点は、レリーズレバー51の係合突起51dとレリーズ軸53のフランジ53dとの当接部分である。
【0105】
そして、何れの場合においても、図示のように、支点から作用点までの距離よりも、支点から力点までの距離の方が長くなるように構成されている。
【0106】
このような各点の配置において、上記レリーズばね55は、所定の水深よりも浅い水中において、レリーズ軸53にかかる水圧に抗して、レリーズ軸53、レリーズレバー51、およびレリーズキャップ52を図16に示すような初期位置へ復帰させ得る付勢力を備えたものとなっている。
【0107】
すなわち、レリーズボタン5が元の位置に復帰する際の、支点から作用点までの距離をRx 、支点から力点までの距離をRy 、とする。さらに、上記軸受孔61の水圧に対する有効な最小断面積をSx とする。加えて、Oリング54が嵌合されたレリーズ軸53と軸受孔61との間に働く最大の摩擦力(これは、通常、静止摩擦力となる。)をFx 、レリーズばね55が発生する付勢力をFy とする。このとき、静水圧がP(D)となる水深D(m)において、次の数式6に示す関係式が成り立つように、レリーズボタン5の機構が構成されている。
[数6]
Fy ×Ry ≧(P(D)×Sb +Fx )×Rx
【0108】
この数式6から、例えばレリーズばね55に対して要求される付勢力Fy は、次の数式7に示すようになることが分かる。
[数7]
Fy ≧(P(D)×Sb +Fx )×Rx /Ry
【0109】
上述したように、Rx <Ry となるように構成しているために、Rx =Ry として構成した場合に比して、Fy に要求される力量が小さくなっていることが分かる。このように、支点から作用点までの距離Rx よりも、支点から力点までの距離Ry を大きくすることにより、レリーズばね55の力量を小さくして、つまりばねをより小型化することが可能となる。
【0110】
次に、このように構成されたレリーズボタン5の作用について説明する。
【0111】
このレリーズボタン5の作用は、陸上において操作するときと、水中において操作するときとで、基本的に同様となっている。
【0112】
レリーズボタン5を操作する前は、図16に示すような状態となっている。なお、このときには、レリーズキャップ52は、上蓋59の上面よりも上側に突出して、容易に操作することができるようになっている。この状態で、ユーザが、撮影を行うために、レリーズキャップ52の押圧操作面を押圧すると、レリーズキャップ52とレリーズレバー51とが、支軸51a周りに一体に回動する。このときには、ユーザは、レリーズばね55の付勢力、およびOリング54が嵌合されたレリーズ軸53と軸受孔61との摩擦力、に抗して、押圧力を加えることになる。
【0113】
これにより、図17に示すように、レリーズ軸53の先端の押圧凸部53aがレリーズスイッチ56に当接して、撮影動作が行われる。
【0114】
また、その後にユーザが押圧力を加えるのを止めると、レリーズばね55の付勢力により、レリーズレバー51およびレリーズキャップ52が、図17における支軸51a周りの時計方向に回動する。このときのレリーズばね55の付勢力は、上記数式7に示した条件を満たすものであるために、レリーズ軸53にかかる水圧および摩擦力に抗することができるようになっている。こうして、レリーズレバー51およびレリーズキャップ52が上蓋59に当て付いたところで、図16に示すような位置への復帰が完了する。
【0115】
このような実施例1によれば、複数の操作スイッチを備えたズームレバー8等において、ある操作スイッチにかかる水圧を、他の操作スイッチにかかる水圧により相殺(バランス)するようにしたために、水中においても、該水圧により不用意に操作スイッチが押されてしまうことはなく、かつ操作に必要な押圧力量が水深に依ることがない。このとき、水圧の相殺を、シーソー状のレバー部材を用いて行っているために、省スペースで水圧を相殺するバランス機構を構成することが可能となる。
【0116】
そして、レバー部材11と軸部材14とを別体として構成したために、軸部材14は軸方向に垂直に移動することが可能となり、より確実に高い防水性を確保し、操作性を向上することも可能となる。
【0117】
また、レバー部材11と複数の軸部材14とを、弾性を有する材料により一体に構成することにより、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる。
【0118】
さらに、レバー部材11を折れ線形状や曲線形状となるように形成することにより、設計の自由度を向上することができる。
【0119】
そして、電源ボタン6等において、操作スイッチ以外に水圧検知部材(水圧検知手段)を設け、該操作スイッチにかかる水圧を、水圧検知部材にかかる水圧により基本的に相殺するようにしたために、水中においても、水圧により不用意に操作スイッチが押圧されてしまうことはない。このときにも同様に、水圧の相殺を、シーソー状のレバー部材を用いて行っているために、省スペース化を図ることが可能となる。加えて、操作スイッチにかかる水圧よりも、水圧検知部材にかかる水圧の方が大きくなるように構成することにより、より確実に、電源ボタン6が不用意に押圧されるのを防止することができる。このとき、ばねの付勢力や摩擦力も考慮しているために、より広範に適用することができる。
【0120】
また、レリーズボタン5等において、レリーズレバー等のレバー部材を用いてレリーズ軸等の軸部材を軸方向に変位させるようにしたために、軸部材に取り付けられたOリングと軸受孔との摩擦力がある場合でも、押圧力量を低減して適切な力量で操作することが可能となる。加えて、レリーズボタン5を非操作時の位置に復帰させるためのレリーズばね等を、支点から軸部材までの距離よりも遠い位置に設けたために、レリーズばねに要求される力量を低減して、レリーズばねを小型化することが可能になる。このときには、レバー部材の長さ等を調整することにより、汎用のばねをレリーズばねとして用いてコストを低減することも可能となる。
【0121】
そして、水圧力の影響を受けない省スペースの水中スイッチ機構を提供することができる。また、押圧操作部材の操作力量を調節することができる。さらに、水中と非水中とにおける押圧操作部材の操作力量を必要に応じて同じにすることができる。
【0122】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、陸上のみならず水中においても使用され得る機器の水中スイッチ機構に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施例1における水中カメラの構成を一部分解部分を含んで正面側から示す斜視図。
【図2】上記実施例1における水中カメラの構成を一部分解部分を含んで背面側から示す斜視図。
【図3】上記実施例1におけるズームレバーの構成を示す図5のD−D断面図。
【図4】上記実施例1におけるズームレバーの構成を示す図5のC−C断面図。
【図5】上記実施例1におけるズームレバーの構成を示す図4のA−A断面図。
【図6】上記実施例1におけるズームレバーの構成を示す図4のB−B断面図。
【図7】上記実施例1におけるクリックスイッチの構成を示す断面図。
【図8】上記実施例1において、ズームレバーの一方側が押圧操作されたときの様子を示す図5のC−C断面図。
【図9】上記実施例1における操作スイッチの第1変形例を示す断面図。
【図10】上記実施例1における操作スイッチの第1変形例を示す斜視図。
【図11】上記実施例1における操作スイッチの第2変形例を示す一部透視図を含む平面図。
【図12】上記実施例1における操作スイッチの第3変形例を示す平面図。
【図13】上記実施例1における操作スイッチの第3変形例を示す斜視図。
【図14】上記実施例1の電源ボタンの非押圧状態における構成を示す断面図。
【図15】上記実施例1の電源ボタンの押圧状態における構成を示す断面図。
【図16】上記実施例1のレリーズボタンの非押圧状態における構成を示す断面図。
【図17】上記実施例1のレリーズボタンの押圧状態における構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0125】
1…カメラ
2…外装部材
2a…前カバー
2b…後カバー
3…撮影光学系
4…ストロボ発光部
5…レリーズボタン
6…電源ボタン
7…モード切換レバー
8…ズームレバー
9…表示画面
9a…表示素子
9b…窓ガラス
9c…窓カバー
11…レバー部材(バランス機構)
11a…押圧操作部
11b…ブリッジ部
11c…連通孔
11d…孔
11e…摺動凸部
11f…摺動凹部
11g…係合凸部
12…押板
13…ビス
14…軸部材(押圧操作部材)
14a…押圧凸部
14b…周面
14c…リング溝
14d…側方フランジ
15…リング
16…クリックスイッチ(スイッチ手段)
16a…筐体
16b…円孔
16c…ゴム幕
16d…クリックばね
16e…電気接点
17…スイッチ用フレキシブルプリント基板
18…固定台
19a…軸孔
19b…ボス
19c…ビス孔
19d…摺動凸部
21…レバー軸部材
21a…押圧操作部
21b…ブリッジ部
21c…摺動凹部
21d…ビス孔
21e…軸部
21f…フランジ部
21g…押圧凸部
22…十字スイッチ
23…操作レバー
23a…押圧操作部
23b…ブリッジ部
24…操作レバー
24a…押圧操作部
24b…ブリッジ部
25…レバー部材
25a…押圧操作部
25b…ブリッジ部
25c…回動軸部
31…パワーボタン(押圧操作部材)
31a…押圧凸部
31b…周面
31c…リング溝
31d…フランジ
32…リング
33…パワーシーソー(レバー部材、伝達部材)
33a…摺動凹部
33b…二股フォーク部
33c…腕部
33d…ばね掛け
34…パワー軸(回転支持部)
35…パワーゴム幕(水圧検知手段、水圧検知部材、水圧力量発生部材、幕部材)
35a…リング部
36…スペーサ
36a…係合溝
36b…孔
37…横蓋
37a…ボタン孔
37b…連通孔
37c,37d…円形孔
37e,37f…孔
38…パワースイッチ
39a,39b…ビス
41…軸孔
42…水圧検知用孔
43c,43d…ビス孔
43e,43f…ボス
51…レリーズレバー(レバー部材、操作部材)
51a…支軸(回転軸部)
51b…収納凹部
51c…押圧凸部(押圧部)
51d…係合突起
51e…収納室
52…レリーズキャップ(操作部、操作部材)
53…レリーズ軸(軸部材、防水スイッチ手段)
53a…押圧凸部
53b…周面
53c…リング溝
53d…フランジ
54…リング
55…レリーズばね(付勢手段)
56…レリーズスイッチ(スイッチ手段)
57…スイッチ用フレキシブルプリント基板
58…固定台
59…上蓋(位置決め部材)
59a…ボタン孔
59b,59c…円形孔
59d,59e…孔
60a,60b…ビス
61…軸受孔(軸孔)
61a…逃げ凹部
62…ばね受け
63b,63c…ビス孔
63d,63e…ボス
64…凹部
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の孔と第2の孔とを有する外装部材と、
上記外装部材の第1の孔に対して水密に設けられた押圧操作部材と、
上記押圧操作部材の移動によりオン/オフされるスイッチ手段と、
上記外装部材の第2の孔に対して水密に設けられた水圧検知手段と、
上記外装部材の内部に設けられた回転支持部の周りに回動可能に配置され、水中において上記水圧検知手段が水圧によって押圧されることにより発生する水圧検知力量を上記押圧操作部材へ作用させるレバー部材と、
を具備し、
上記水圧検知力量は、上記押圧操作部材が外力である水圧から受ける外部圧力と、当該外部圧力の作用方向とは反対の方向に作用する力であって上記押圧操作部材が内部の部材から受ける内部力と、の合力以上の大きさとなるように設定されていることを特徴とする水中スイッチ機構。
【請求項2】
上記内部力は、上記押圧操作部材が移動する際に発生する静止摩擦力および上記レバー部材が上記押圧操作部材を上記外装部材の外側へ移動させるように設けられた付勢手段からの付勢力であることを特徴とする請求項1に記載の水中スイッチ機構。
【請求項3】
外部操作により外装部材に対して水密に移動可能であって、水中において水と空気との境界部における第1の断面積が水圧に応じて発生させる第1の力量を受ける押圧操作部材と、
上記押圧操作部材の移動によりオン/オフされるスイッチ手段と、
外装部材に対して水密に配置され、水と空気との境界部が第2の断面積を有し、水中において当該第2の断面積が水圧に応じた第2の力量を発生させる水圧力量発生部材と、
上記第2の力量を上記押圧操作部材へ伝達する伝達部材と、
を具備し、
上記水圧力量発生部材における第2の断面積が、上記押圧操作部材における第1の断面積よりも大きくなるように構成することにより、上記押圧操作部材が受ける第1の力量よりも上記水圧力量発生部材が発生させる第2の力量の方が大きくなるようにしたことを特徴とする水中スイッチ機構。
【請求項4】
第1の孔と第2の孔とを有する外装部材と、
上記外装部材の第1の孔に水密に設けられており、該外装部材の外部から操作可能な押圧操作部材と、
上記押圧操作部材によりオン/オフされ得るスイッチ手段と、
上記外装部材の第2の孔に水密に設けられており、水中において、水圧に応じた力量を発生する水圧検知部材と、
支点周りに回動可能であって、水中において、上記水圧検知部材から発生した力量を力点において受けて、作用点において上記押圧操作部材に作用させることにより、該押圧操作部材にかかる水圧を略バランスするようになされたレバー部材と、
を具備したことを特徴とする水中スイッチ機構。
【請求項5】
上記第1の孔の水圧に対する有効な最小断面積をSa 、上記第2の孔の水圧に対する有効な最小断面積をSb 、上記レバー部材の支点から作用点までの距離をRa 、該レバー部材の支点から力点までの距離をRb 、とすると、該第1の孔、第2の孔、およびレバー部材は、
Sa ×Ra ≦Sb ×Rb
なる関係を満たすように構成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の水中スイッチ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−156115(P2006−156115A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344651(P2004−344651)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】