説明

水切り部材

【課題】幕板を設けなくとも、その外観を秀麗に仕上げることができるとともに、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材と下方の外装材との間の幅の狭い隙間でも容易に取り付けることができる水切り部材。
【解決手段】予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11を上下階に配置し、これら上下階の外装材付き壁パネル10、11の上階外装材10bと下階外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付ける水切り部材Aにおいて、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入し、かつ、少なくとも前記下階外装材11bの上面11cに設置することによって、幅狭部Hに仮固定される複数の下地部材1と、前記幅狭部Hに、その長手方向に沿って挿入することで、前記下地部材1に係合し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆うようにして、建物躯体に固定する水切り本体2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上階の外装材付き壁パネルの外装材と、下階の外装材付き壁パネルの外装材との間の幅狭部等、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材と下方の外装材との間に生じる幅の狭い隙間に取り付けられる水切り部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の構築についてはその工業化が進み、例えば壁や床、屋根といった構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てることにより住宅を構築するパネル工法が一部に採用されている。
【0003】
このようなパネル工法では、建物の構造壁となる壁パネルと、この壁パネルの外面側を覆うように設けられる防水透湿シートと、この防水透湿シート上から胴縁を介して壁パネルに取り付けられる外装材とから外装材付き壁パネルを構成し、この外装材付き壁パネルを現場へ搬送することで、現場での施工効率を大幅に向上している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−152566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に示すように、建物の上階に設けられる外装材付き壁パネルには、該壁パネルの下端から下方に突出するように外装材が設けられており、下階に設けられる外装材付き壁パネルにおいては、外装材が、その上端が該壁パネルの上端よりも下方に位置するように設けられていた。
これら上階および下階の外装材付き壁パネルの間には胴差や床パネルが設けられていることから、上階の外装材の下端部と、下階の外装材の上端部との間に隙間が生じ、さらに、この隙間を塞ぐために幕板が設けられていた。
【0005】
しかし、幕板は外装材と同質材や塩化ビニル鋼板等で形成されており、このように大きな隙間を覆うものであることから、製作や搬送、取り付け作業等の面で難点を伴った。
【0006】
そこで、幕板を設けなくともその外観を秀麗に仕上げることができるように、上階の外装材の下端部を、上階の壁パネルの下端部から上階の床部の下端部近傍まで突出させるとともに、下階の外装材の上端部を、下階の壁パネルの上端部とほぼ同じ高さ位置まで覆うように取り付ける技術が試みられている。
【0007】
この場合、上階の外装材付き壁パネルの外装材と、下階の外装材付き壁パネルの外装材との間に幅の狭い隙間が形成されるが、この隙間に対して、雨水等の水の侵入を防止する水切り部材を取り付けなければならかった。
【0008】
一方、下階の外装材の上端部を、上階と下階との間の胴差よりも上方に延出させたり、また、上階の外装材の下端部を、前記胴差よりも下方に延出させたりすることによって、見映え良く構築された建物等が知られている。
【0009】
このような建物においては、上階もしくは下階の外壁パネルの中間部近傍に、上方の外装材の下端部と下方の外装材の上端部とが位置する状態となる。
このような場合にも、前記上方の外装材の下端部と下方の外装材の上端部との間に、上述のような幅の狭い隙間が形成されるが、この隙間に対して、雨水等の水の侵入を防止する水切り部材を取り付けなければならなかった。
【0010】
本発明の課題は、幕板を設けなくとも、その外観を秀麗に仕上げることができるとともに、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材と下方の外装材との間の幅の狭い隙間でも容易に取り付けることができる水切り部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、例えば図2または図6に示すように、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられる水切り部材Aにおいて、
前記建物躯体の表面に設けるとともに、前記下方の外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付ける支持体1と、
前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入するとともに、前記支持体1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方の外装材11bの上端部を覆うようにして設ける水切り本体2とを備えていることを前記課題の解決手段とした。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられる水切り部材Aにおいて、
前記建物躯体の表面に設けるとともに、前記下方の外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付ける支持体1と、
前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入するとともに、前記支持体1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方の外装材11bの上端部を覆うようにして設ける水切り本体2とを備えていることから、前記上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hを、前記水切り部材Aを構成する水切り本体2によって覆うことができるので、従来とは異なり、幕板を設けなくとも、秀麗な外観に仕上げることができる。
また、前記水切り部材Aを構成する支持体1を、前記建物躯体の表面に設けるとともに、前記下方の外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付けるので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても、前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項1に記載の水切り部材Aにおいて、
予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11を上下階に配置し、これら上下階の外装材付き壁パネル10、11の上階外装材10bである前記上方の外装材10bと下階外装材11bである前記下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けるものであり、
前記支持体1を、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入して前記建物躯体の表面に設け、かつ、少なくとも前記下階外装材11bの上面11cに設置することによって、幅狭部Hに仮固定される複数の下地部材1として構成しており、
前記水切り本体2を、前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入することで、前記下地部材1に係合して連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆うようにして設けていることを前記課題の解決手段とした。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11を上下階に配置し、これら上下階の外装材付き壁パネル10、11の上階外装材10bである前記上方の外装材10bと下階外装材11bである前記下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けるものであり、
前記支持体1を、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入して前記建物躯体の表面に設け、かつ、少なくとも前記下階外装材11bの上面11cに設置することによって、幅狭部Hに仮固定される複数の下地部材1として構成しており、
前記水切り本体2を、前記幅狭部Hに、その長手方向に沿って挿入することで、前記下地部材1に係合して連結し、前記幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆うようにして設けていることから、前記幅狭部Hを前記水切り本体2によって覆うことができるので、秀麗な外観に仕上げることができるとともに、前記下地部材1を前記幅狭部Hに予め仮固定し、この仮固定された下地部材1に対して、前記水切り本体2を係合させて建物躯体に固定するので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても容易に取り付けることができる。
また、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入する下地部材1に対して、この下地部材1に係合する前記水切り本体2を、前記幅狭部Hの長さ方向に沿って挿入するので、前記水切り本体2に覆われた幅狭部Hにおいて、所定間隔に挿入した前記下地部材1、1間に隙間を形成でき、この下地部材1、1間の隙間を水・通気経路として確保することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項2に記載の水切り部材Aにおいて、
前記下地部材1を、前記水切り本体2とともに建物躯体に固定される下地部材本体3と、この下地部材本体3に連結され、かつ、前記下階外装材11bの上面11cに設置される取り付け補助部材4とから構成していることを前記課題の解決手段とした。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記下地部材1を、前記水切り本体2とともに建物躯体に固定される下地部材本体3と、この下地部材本体3に連結され、かつ、前記下階外装材11bの上面11cに設置される取り付け補助部材4とから構成していることによって、前記下地部材本体3に連結された状態の取り付け補助部材4を前記下階外装材11bの上面11cに設置することにより、これら下地部材本体3および取り付け補助部材4を幅狭部Hに仮固定しておくことができ、しかも、このように仮固定された下地部材本体3を前記水切り本体2とともに建物躯体に取り付け固定する際においても、予め仮固定されているので位置ずれ等が生じることも無く、前記幅狭部Hのような幅の狭い隙間でも容易に取り付けることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項3に記載の水切り部材Aにおいて、
前記下地部材本体3の表面に第1および第2のレール部3f、3gを上下に離間して形成しており、前記第1のレール部3fの上溝部3hに、前記水切り本体2の一部を挿入し、この第1のレール部3fの下溝部3iと前記第2のレール部3gの溝部3jとに、前記取り付け補助部材4の一部を嵌合させていることを前記課題の解決手段とした。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、前記下地部材本体3の表面に第1および第2のレール部3f、3gを上下に離間して形成しており、前記第1のレール部3fの上溝部3hに、前記水切り本体2の一部を挿入し、この第1のレール部3fの下溝部3iと前記第2のレール部3gの溝部3jとに、前記取り付け補助部材4の一部を嵌合させていることから、前記下地部材本体3と前記水切り本体2、前記下地部材本体3と前記取り付け補助部材4を容易に組み付けることができるので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項3または4に記載の水切り部材Aにおいて、
前記下地部材本体3の裏面に、この下地部材本体3を前記上階の外装材付き壁パネル10の一部に支持させる第1および第2の脚部3a、3bと、前記下階の外装材付き壁パネル11の一部に支持させる第3の脚部3cを形成していることを前記課題の解決手段とした。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、前記下地部材本体3の裏面に、この下地部材本体3を前記上階の外装材付き壁パネル10の一部に支持させる第1および第2の脚部3a、3bと、前記下階の外装材付き壁パネル11の一部に支持させる第3の脚部3cを形成していることから、前記下地部材本体3を、前記第1および第2の脚部3a、3b、前記第3の脚部3cによって、前記上階の外装材付き壁パネル10にも、前記下階の外装材付き壁パネル11にも支持させることができるので、下地部材本体3を安定的に取り付けることができる。したがって、この下地部材本体3に水切り本体2を確実に取り付けることができるので、水切り部材Aを確実に取り付けることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項2〜5のいずれか一項に記載の水切り部材Aにおいて、
前記水切り本体2の上端部裏面に形成された係止部2eと、前記水切り本体2の下端部裏面に形成された下端係止部2f間に、互いに隣接すべき水切り本体2、2どうしを連結するジョイナー部材6を前記水切り本体2の裏面に沿って取り付けていることを前記課題の解決手段とした。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、前記水切り本体2の上端部裏面に形成された係止部2eと、前記水切り本体2の下端部裏面に形成された下端係止部2f間に、互いに隣接すべき水切り本体2、2どうしを連結するジョイナー部材6を前記水切り本体2の裏面に沿って取り付けていることから、互いに隣接する水切り本体2、2どうしを確実に連結することができるとともに、連結強度を向上させることができ、さらに、これら隣接すべき水切り本体2、2間から雨水等が侵入することも無く、防水性に優れる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、例えば図6に示すように、請求項1に記載の水切り部材Aにおいて、
予め外壁パネル10a(11a)表面の上下方向に取り付けられた上方外装材10bである前記上方の外装材10bと下方外装材11bである前記下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられるものであり、
前記支持体1を、前記水切り本体2を支持する下地材1として、前記外壁パネル10a(11a)の表面に設けるとともに、前記下方外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付け、
前記水切り本体2を、前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入するとともに、前記下地材1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方外装材11bの上端部を覆うようにして設けていることを前記課題の解決手段とした。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、予め外壁パネル10a(11a)表面の上下方向に取り付けられた上方外装材10bである前記上方の外装材10bと下方外装材11bである前記下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられるものであり、
前記支持体1を、前記水切り本体2を支持する下地材1として、前記外壁パネル10a(11a)の表面に設けるとともに、前記下方外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付け、
前記水切り本体2を、前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入するとともに、前記下地材1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方外装材11bの上端部を覆うようにして設けていることから、前記上方外装材10bと下階外装材との間の幅狭部Hを、前記水切り部材Aを構成する水切り本体2によって覆うことができるので、従来とは異なり、幕板を設けなくとも、秀麗な外観に仕上げることができる。
また、前記水切り部材Aを構成する下地材1を、前記外壁パネル10a(11a)の表面に設けるとともに、前記下方外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付けるので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても、前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、例えば図6に示すように、請求項7に記載の水切り部材Aにおいて、
前記下地材1を、前記水切り本体2とともに外壁パネル10a(11a)に固定される胴縁3と、前記下方外装材11bの上面11cに配置し、かつ、前記胴縁3とともに前記外壁パネル10a(11a)に固定する取り付け補助部材4とから構成していることを前記課題の解決手段とした。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、前記下地材1を、前記水切り本体2とともに外壁パネル10a(11a)に固定される胴縁3と、前記下方外装材11bの上面11cに配置し、かつ、前記胴縁3とともに前記外壁パネル10a(11a)に固定する取り付け補助部材4とから構成していることによって、前記下地材1を、位置ずれ等を生じさせることも無く幅狭部Hに取り付けることができるので、前記幅狭部Hのような幅の狭い隙間でも、前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、例えば図6に示すように、請求項7または8に記載の水切り部材Aにおいて、
前記水切り本体2の上端部裏面に形成された係止部2eと、前記水切り本体2の下端部裏面に形成された下端係止部2f間に、互いに隣接する水切り本体2、2どうしを連結するジョイナー部材6を前記水切り本体2の裏面に沿って取り付けていることを前記課題の解決手段とした。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、前記水切り本体2の上端部裏面に形成された係止部2eと、前記水切り本体2の下端部裏面に形成された下端係止部2f間に、互いに隣接する水切り本体2、2どうしを連結するジョイナー部材6を前記水切り本体2の裏面に沿って取り付けていることから、互いに隣接する水切り本体2、2どうしを確実に連結することができるとともに、連結強度を向上させることができ、さらに、これら隣接すべき水切り本体2、2間から雨水等が侵入することも無く、防水性に優れる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の水切り部材によれば、予め表面に外装材が取り付けられた外装材付き壁パネルが上下階に配置された場合の、これら上下階の外装材付き壁パネルの上階外装材と下階外装材との間や、予め外壁パネル表面の上下方向に取り付けられた場合の上方外装材と下方外装材との間など、上方の外装材と下方の外装材との間の幅狭部を、前記水切り部材を構成する水切り本体によって覆うことができるので、従来とは異なり、幕板を設けなくとも、秀麗な外観に仕上げることができる。
また、複数の下地部材もしくは下地材として構成された支持体を、前記建物躯体の表面に設けるとともに、前記下方の外装材の上面に設置して、前記幅狭部に取り付けるので、前記幅狭部のような狭い隙間においても、前記水切り部材を容易に取り付けることができる。
さらに、前記水切り部材を構成する下地部材を前記幅狭部に予め仮固定し、この仮固定された下地部材に対して、前記水切り本体を係合させて建物躯体に固定するので、前記幅狭部のような狭い隙間においても容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係る水切り部材Aの実施の形態について説明する。
【0031】
本実施の形態の水切り部材Aは、図2または図6に示すように、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられるものであり、
前記建物躯体の表面に設けられるとともに、前記下方の外装材11bの上面11cに設置されて、前記幅狭部Hに取り付けられる支持体1と、
前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入されるとともに、前記支持体1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方の外装材11bの上端部を覆うようにして設けられる水切り本体2とを備えている。
【0032】
このように、本実施の形態の水切り部材Aは、建物躯体の外表面を覆う上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに設けられるものであり、予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11が上下階に配置された場合の、これら上下階の外装材付き壁パネル10、11の上階外装材10bと下階外装材11bとの間の幅狭部Hや、予め外壁パネル10a(11a)表面の上下方向に取り付けられた場合の上方外装材10bと下方外装材11bとの間の幅狭部Hなどに取り付けることができる。
そして、これら両方の幅狭部Hに取り付けられる水切り部材Aの、それぞれの実施の形態を説明するに際し、予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11が上下階に配置された場合の幅狭部Hに取り付けられる水切り部材Aについては、以下、第1の実施の形態として説明し、予め外壁パネル10a(11a)表面の上下方向に取り付けられた場合の幅狭部Hに取り付けられる水切り部材Aについては、以下、第2の実施の形態として説明する。
【0033】
[第1の実施の形態]
本実施の形態の水切り部材Aは、図1に示すように、予め表面に外装材10b、11bが取り付けられた外装材付き壁パネル10、11が上下階に配置され、これら上下階の外装材付き壁パネル10、11の上階外装材10bである前記上方の外装材10bと下階外装材11bである下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられるものであり、
前記支持体1は、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入されて前記建物躯体の表面に設けられ、かつ、少なくとも前記下階外装材11bの上面11cに設置されることによって、幅狭部Hに仮固定される複数の下地部材1として構成されており、
前記水切り部材Aは、前記下地部材1に係合して連結した状態で前記幅狭部Hに、その長手方向に沿って挿入され、前記幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆うようにして設けられている。
【0034】
なお、本実施の形態の水切り部材Aは、主としてアルミニウムの押出成型によって形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、鋼製やプラスチック製のものでも良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
前記下地部材1は、前記水切り本体2とともに建物躯体に固定される下地部材本体3と、この下地部材本体3に連結され、かつ、前記下階外装材11bの上面11cに設置される取り付け補助部材4とから構成されている。
【0036】
前記水切り本体2は、前記幅狭部Hの長手方向に沿って、この幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆うように取り付けられており、前記下地部材1とともに前記幅狭部Hに取り付けられる下地部材連結部2aと、この下地部材連結部2aの下端部2d近傍から水平方向に延出する延出部2bと、この延出部2bの先端部近傍から下方に向かって、前記幅狭部Hおよび前記下階外装材11bの上端部を覆う水切り部2cとが備えられている。
また、前記幅狭部Hに所定間隔で挿入される下地部材1に対して、この下地部材1に係合される前記水切り本体2が、前記幅狭部Hの長さ方向に沿って挿入されるので、前記水切り本体2に覆われた幅狭部Hにおいて、所定間隔に挿入した前記下地部材1、1間に隙間が形成されて、この下地部材1、1間の隙間が水・通気経路として確保されている。
【0037】
前記下地部材本体3は、その裏面に、この下地部材本体3を前記上階の外装材付き壁パネル10の一部に支持させる第1および第2の脚部3a、3bと、前記下階の外装材付き壁パネル11の一部に支持させる第3の脚部3cとが備えられている。
また、これら脚部3a、3b、3cに支持されて、前記水切り本体2の下地部材連結部2aと連結し、この下地部材連結部2aとともに前記幅狭部Hに取り付けられる水切り本体連結部3dと、この水切り本体連結部3dの下方に位置し、前記取り付け補助部材4と当接する取り付け補助部材4当接部3eとが備えられている。
一方の表面には、前記水切り本体連結部3dと前記取り付け補助部材4当接部3eとの中間付近に位置し、前記水切り本体2の下地部材連結部2aの下端部2dが挿入される上溝部3hと、前記取り付け補助部材4の垂直板部4aの上端部が嵌合される下溝部3iとを有する第1のレール部3fと、前記取り付け補助部材4の垂直板部4aの下端部が嵌合される溝部3jを有する第2のレール部3gとが上下に離間して備えられている。
【0038】
前記取り付け補助部材4は、断面略L字状に形成されており、前記下地部材本体3と連結されるとともに、その上端部を前記第1のレール部3fの下溝部3iに、その下端部を前記第2のレール部3gの溝部3jに嵌合する垂直板部4aと、この垂直板部4aの下端部近傍から段状部4cを介して水平に外側に向かって延出する水平板部4bとが備えられている。
なお、前記取り付け補助部材4は、本実施の形態では断面略L字状の取り付け補助部材4としたが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
前記水密材5は、前記取り付け補助部材4の水平板部4bの下面に貼り付けられ、この状態で前記下階外装材11bの上面11cに載置されており、弾性を有するとともに、柔軟性を有し、かつ、水が浸透しにくい材料からなっている。他にも例えば、多数の独立気泡を有する低発泡性の樹脂からなる発泡EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマ)や防水用シリコン材、各種ゴム、その他の弾性と柔軟性および可撓性を有する合成樹脂を用いることができる。
【0040】
また、前記水切り本体2の前記延出部2bの下面に形成された係止部2eと前記水切り部2cの下端部に形成された下端係止部2f間に、前記水切り部2cの裏面に沿って、ジョイナー部材6が取り付けられており、このジョイナー部材6が取り付けられることによって、前記水切り本体2に隣接すべき水切り本体2との連結を確実に行うことができ、接合強度を向上させることができる。その上、水切り本体2、2間の隙間から雨水等が侵入するのを防ぐことも可能となり、防水性に優れる。
さらに、前記延出部2bの上面と、前記上階外装材10bの下面10cとの間に、シーリング材7が充填されており、このシーリング材7と前記水切り本体2によって前記幅狭部Hを隙間無く覆うことができ、外観性を向上させることができるとともに防水性を向上させることができる。
そして、このシーリング材7の裏側、ビス9との中間部分にバックアップ材8が挿入されており、このバックアップ材8によって前記シーリング材7が支持されて、シーリング材7の充填状態が向上する。
【0041】
上記のような構成の水切り部材Aが取り付けられる外壁の構造は、図3に示すように、前記上階の外装材付き壁パネル10と、下階の外装材付き壁パネル11とが上階の床部12を介して連結されており、特に、前記上階の外装材付き壁パネル10の上階外装材10bと、前記下階の外装材付き壁パネル11の下階外装材11bとの間に、前記水切り部材Aが取り付けられる幅狭部Hが形成されている。
そして、この幅狭部Hでは、上階の壁パネル10aの下端部10eから前記上階の床部12の下端部近傍まで突出するようにして設けられた下耳部材10dの下端部外面に、前記上階外装材10bの下側から延出する防水透湿シート13aと、下階外装材11bの下側から延出する防水透湿シート13bとが重ね合わされ、両面テープ14bによって貼り付けされて納められている。
【0042】
前記上階の外装材付き壁パネル10は、構造壁となる壁パネル10aの表面に上階外装材10bが防水透湿シート13aと胴縁3(図示せず)を介して取り付けられている。壁パネル10aの下端部10e外面には、該壁パネル10aの下端から下方に突出するようにして前記下耳部材10dが設けられている。
前記下耳部材10dは壁パネル10aの下端部10eと上階外装材10bの下端部との間に介在されており、前記上階外装材10bは、前記下耳部材10dの下端より下方に突出するように設けられている。また、前記上階外装材10bと下耳部材10dとの間には水抜きパッキン材15が設けられている。
【0043】
ここで、壁パネルとは、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助棧材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。また、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0044】
前記上階の外装材付き壁パネル10の上階外装材10bは、上階の壁パネル10aの表面に予め取り付けられているとともに、この壁パネル10aと上階外装材10bとの間に、前記下耳部材10dが取り付けられている。そして、前記上階外装材10bおよび下耳部材10dの下端部は壁パネル10aの下端部10eから前記上階の床部12の下端部近傍まで突出するようにして設けられている。これによって、壁パネル10aの表面を上階外装材10bで覆うだけでなく、上階の床部12の表面も上階外装材10bで覆うことができるとともに、現場で上階外装材10bを取り付ける手間を省くことができる。
【0045】
前記下耳部材10dは、前記壁パネル10aの下端部10eから前記上階の床部12の下端部近傍まで突出するようにして設けられているが、前記上階の床部12の表面との間には僅かな隙間が形成されている。この隙間を埋めて上階外装材10bの破損を防ぐようにするために、調整材16aが予め取り付けられている。また、この調整材16aと対応して合わさる調整材16bが上階の床部12の表面にも予め取り付けられている。
また、この下耳部材10dの下端部近傍の表面には、予め第1の両面テープ14aが貼り付けられ、後工程にて離型紙14cが剥がされて、この第1の両面テープ14aに下階から延出する防水透湿シート13bが貼り付けられる構成となっている。
【0046】
前記下階の外装材付き壁パネル11は、前記上階の外装材付き壁パネル10と同様に、下階の壁パネル11aの表面を覆うようにして下階外装材11bが取り付けられてなるもので、この下階外装材11bは胴縁11dを介して取り付けられている。また、この下階外装材11bの上面11cは、壁パネル11aの上端面とほぼ同じ位置まで取り付けられている。
前記下階の外装材付き壁パネル11の下階外装材11bは、下階の壁パネル11aの表面に胴縁11dを介して予め取り付けられており、これら下階の壁パネル11aと胴縁11dとの間には防水透湿シート13bが貼られている。
【0047】
前記上階の床部12は、上階床パネル12aと、この上階床パネル12aと同厚の胴差12bとから構成されており、前記上階床パネル12aの端面に、前記胴差12bの端面を当接させて、前記下階の外装材付き壁パネル11の上端部11eに配置されている。これら上階床パネル12aおよび胴差12bの上部には、前記上階の外装材付き壁パネル10が立設されている。
【0048】
前記防水透湿シート13a、13bは、上階および下階の壁パネル10a、11aの表面を覆うようにして設けられているとともに、上階および下階から所定の長さ分延出され、さらに、この延出された長さ分の防水透湿シート13a、13bが上階外装材10bと下階外装材11bとの間に形成される幅狭部Hにおいて重ね合わせられている。
そのうち、上階から延出する防水透湿シート13aは、上階の壁パネル10aの下端から下方に延出されて、前記下耳部材10dの表面を覆うとともに、前記上階外装材10bの下端よりさらに延出されて、下階外装材11bの上端部まで設けられている。
なお、この上階外装材10bの下端より延出された防水透湿シート13aは、図4に示すように、外側に折り曲げて、外壁の組み立て作業の妨げとならないようにしておくと望ましい。
【0049】
下階から延出する防水透湿シート13bは、下階の壁パネル11aの上端から上方に延出されて、この下階の壁パネル11aの表面を覆うとともに、前記下階外装材11bよりさらに延出されて、この下階外装材11bの上端部を経由し、かつ、上階外装材10bの下端部まで達するようにして設けられている。
なお、この下階外装材11bの上端より延出された防水透湿シート13bにおいても、図4に示すように、前記上階から延出する防水透湿シート13aと同様に、外側に折り曲げて外壁の組み立て作業の妨げにならないように処理されていると望ましい。
【0050】
前記下階から延出する防水透湿シート13bの上端部外面には、予め第2の両面テープ14bが貼り付けられ、後工程にて離型紙14cが剥がされて、この第2の両面テープ14bに上階から延出する防水透湿シート13aが貼り付けられる構成となっている。
【0051】
ここで、防水透湿シート13としては、例えば、商品名「タイベック(デュポン社製)」等を採用できる。この場合には、室内からの湿気は、断熱材に留まらずに防水透湿シートを介して室外側へ放散されるため、壁体構造の内部には結露が生じない。また、室外が屋外となる場合には、防水透湿シートにより、屋外からの雨水等の浸入を防止でき、壁体構造を保護できる。
【0052】
前記水抜きパッキン材15は、図3に示すように、前記上階外装材10bの下端部と壁パネル10aの下端部10eとの間に下耳部材10dが介在することによって、上階外装材10bの裏面側の水を容易に抜いて、下耳部材10d上に水が溜まるのを防ぐために設けられるものであり、弾性を有する合成樹脂が帯板状に形成されてなるものである。
【0053】
以上のような構成の外壁を構築するには、図4に示すように、所定の位置に立設させた下階の外装材付き壁パネル11の上端面に、胴差12bの側面と床パネル12aの側面とを当接させて上階の床部12を設置する。また、前記胴差12bの表面には予め調整材16bを取り付けておき、この調整材16bを下階の壁パネル11aの表面よりも若干内側に位置するようにして上階の床部12の設置を行う。
【0054】
そして、下階の外装材付き壁パネル11上に設置された上階床部12上に、上階の外装材付き壁パネル10を立設させる。この時、前記下耳部材10dに取り付けられた調整材16aと、前記胴差12bの表面に取り付けられた調整材16bとの位置を合わせるようにしながら、下階の外装材付き壁パネル11の直上に位置するように上階の外装材付き壁パネル10を立設させる。
【0055】
この時、上階および下階の外装材付き壁パネル10、11には、予め外装材10b、11bが取り付けられているので、これら上階および下階の外装材付き壁パネル10、11を組み付けるだけで、上階外装材10bと下階外装材11bとの間に幅狭部Hが形成される。
【0056】
次に、幅狭部Hの防水透湿シート13a、13bの処理方法としては、まず、図5に示すように、前記下耳部材10dに予め貼り付けられた第1の両面テープ14aの離型紙14cを剥がし、この第1の両面テープ14aに対して、前記下階から延出する防水透湿シート13bを貼り付ける。
そして、この下階から延出する防水透湿シート13bに予め貼り付けられた第2の両面テープ14bの離型紙14cを剥がし、この第2の両面テープ14bに対して、前記上階から延出する防水透湿シート13aを貼り付ける。
【0057】
以上のように構築された幅狭部Hに、前記水切り部材Aを取り付けるには、図2に示すように、まず、前記下地部材本体3と前記取り付け補助部材4とを連結する。連結に際しては、前記下地部材本体3に形成された第1のレール部3fの下溝部3iと、第2のレール部3gの溝部3jとに、前記取り付け補助部材4の垂直板部4aを嵌合させて連結する。
この際、前記取り付け補助部材4を前記下地部材本体3の側方から、前記下溝部3iと前記溝部3jとの間に差し込むようにして取り付けて連結させる。
【0058】
次に、前記取り付け補助部材4の水平板部4bの下面に前記水密材5を貼り付けておき、このように構成された下地部材1を前記下階外装材11bの上面11cに設置して仮固定する。また、この下地部材1を前記幅狭部Hに所定間隔で挿入し、それぞれ仮固定しておく。
【0059】
その後、前記水切り本体2の下地部材連結部2aの下端部2dを、前記下地部材本体3の第1のレール部3fの上溝部3hに挿入して、これら水切り本体2と下地部材本体3とを仮取り付けしておく。
また、これら水切り本体2と下地部材本体3とを仮取り付けした際に、前記第1のレール部3fの上溝部3hに前記下地部材連結部2aの下端部2dを挿入するだけでなく、この第1のレール部3fは、上側先端が水平方向に屈曲した構造となっているので、前記水切り本体2を支持することができる。
【0060】
このような状態のまま、この水切り部材Aを躯体に取り付けるが、まず、前記下地部材本体3に形成された第1および第2の脚部3a、3bを前記下耳部材10dに当接させるとともに、前記第3の脚部3cを前記下階の外装材付き壁パネル11の壁パネル11a表面に当接させる。
この時、前記上階および下階から延出する防水透湿シート13a、13bを前記下地部材本体3の脚部3a、3b、3cによって押さえ付けるので、これら防水透湿シート13a、13bが剥がれたり、位置ずれしたりすることが無いので、防水性を向上させることができる。
【0061】
そして、仮取り付けされた状態の前記水切り本体2と前記下地部材本体3とを連結する際には、これら水切り本体2および下地部材本体3のそれぞれの連結部分に予めビス孔9aを開けておき、このビス孔9aから前記下耳部材10d、前記調整材16b、前記胴差12bに至るまでをビス9留めして、前記水切り本体2と前記下地部材本体3とを前記上階の外装材付き壁パネル10に取り付ける。
【0062】
次に、前記水切り本体2の延出部2bおよび水切り部2cに形成された係止部2eと下端係止部2fとの間に、前記ジョイナー部材6を取り付ける。このジョイナー部材6を取り付けるには、前記水切り本体2の側方から差し込むようにして取り付けるようにする。
【0063】
次に、前記水切り本体2の延出部2bの上面と、前記上階外装材10bの下面10cとの間に、前記幅狭部Hの長さ方向に沿ってシーリング材7を充填し、さらに防水性の向上を図るようにする。
なお、この時、シーリング材7の裏側、ビス9との中間部分にバックアップ材8を挿入しておき、このバックアップ材8によって前記シーリング材7を受け止めることができるとともに支持することができるので、前記シーリング材7の充填状態を向上させることが可能となる。
【0064】
以上のように取り付けた水切り部材Aによれば、上階外装材10bと下階外装材11bとの間の幅狭部Hを、前記水切り部材Aを構成する水切り本体2によって覆うことができるので、従来とは異なり、幕板を設けなくとも、秀麗な外観に仕上げることができる。
また、前記水切り部材Aを構成する下地部材1を前記幅狭部Hに予め仮固定し、この仮固定された下地部材1に対して、前記水切り本体2を係合させて建物躯体に固定するので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても容易に取り付けることができる。
【0065】
なお、以上のような水切り部材Aの取り付け箇所は、本実施の形態に記載した胴差12b部に限られず、例えば、吹抜け部やバルコニー手摺り壁、パネル中間部等の幅狭部Hにも取り付けることが可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
[第2の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明に係る水切り部材Aにおける第2の実施の形態を説明する。なお、説明の便宜上、本実施の形態の水切り部材Aについては上述した第1の実施の形態における水切り部材Aとの異なる構成部分を主体として説明する。
また、本実施の形態の水切り部材Aを取り付ける幅狭部Hは、建物躯体の表面に取り付けられる上方および下方の外装材10b、11bのうち、前記下方の外装材11bの上端部を、上階と下階との間の胴差よりも上方に延出させた場合の、前記上方の外装材10bと下方の外装材11bとの間の幅狭部Hであり、この幅狭部Hは建物の上階側の壁体である外壁パネル10aの中間部に位置している。
【0067】
本実施の形態の水切り部材Aは、図6に示すように、予め外壁パネル10a表面の上下方向に取り付けられた上方外装材10bである前記上方の外装材10bと下方外装材11bである前記下方の外装材11bとの間の幅狭部Hに取り付けられるものであり、
前記支持体1は、前記水切り本体2を支持する下地材1として、前記外壁パネル10aの表面に設けられるとともに、前記下方外装材11bの上面11cに設置されて、前記幅狭部Hに取り付けられ、
前記水切り本体2は、前記幅狭部Hの長手方向に沿って挿入されるとともに、前記下地材1の一部と連結し、かつ、前記幅狭部Hおよび前記下方外装材11bの上端部を覆うようにして設けられている。
【0068】
前記下地材1は、前記水切り本体2とともに外壁パネル10aに固定される胴縁3と、前記下方外装材11bの上面11cに配置され、かつ、前記胴縁3とともに前記外壁パネル10aに固定される取り付け補助部材4とから構成されている。
【0069】
前記水切り本体2は、前記幅狭部Hの長手方向に沿って、この幅狭部Hおよび前記下方外装材11bの上端部を覆うように取り付けられており、前記下地材1とともに前記幅狭部Hに取り付けられる下地材連結部2aと、この下地材連結部2aの下端部2d近傍から水平方向に延出する延出部2bと、この延出部2bの先端部近傍から下方に向かって、前記幅狭部Hおよび前記下方外装材11bの上端部を覆う水切り部2cとが備えられている。
また、前記下地材連結部2aには、この水切り本体2と前記下地材1とをビス9によって連結させるためのビス孔9aが予め形成されている。
【0070】
一方、前記水切り本体2の前記延出部2bの下面に形成された係止部2eと前記水切り部2cの下端部に形成された下端係止部2f間に、前記水切り部2cの裏面に沿って、ジョイナー部材6が取り付けられており、このジョイナー部材6が取り付けられることによって、前記水切り本体2に隣接すべき水切り本体2との連結を確実に行うことができ、接合強度を向上させることができる。その上、水切り本体2、2間の隙間から雨水等が侵入するのを防ぐことも可能となり、防水性に優れる。
さらに、前記延出部2bの上面と、前記上方外装材10bの下面10cとの間に、シーリング材7が充填されており、このシーリング材7と前記水切り本体2によって前記幅狭部Hを隙間無く覆うことができ、外観性を向上させることができるとともに防水性を向上させることができる。
そして、このシーリング材7の裏側、ビス9との中間部分にバックアップ材8が挿入されており、このバックアップ材8によって前記シーリング材7が支持されて、シーリング材7の充填状態が向上する。
【0071】
前記胴縁3は、前記外壁パネル10aの表面に水平に横架される水平材であり、前記幅狭部Hの位置する外壁パネル10aの表面に設けられて、前記水切り本体2および取り付け補助部材4とともに前記外壁パネル10aに固定されている。
【0072】
前記取り付け補助部材4は、断面略L字状に形成されており、前記胴縁3と連結するための垂直板部4aと、この垂直板部4aの下端部近傍から段状部4cを介して水平に外側に向かって延出する水平板部4bとが備えられている。
また、前記垂直板部4aには、この取り付け補助部材4と前記下地材1とをビス9によって連結させるためのビス孔9bが予め形成されている。
【0073】
さらに、前記取り付け補助部材4の水平板部4bの下面には水密材5が貼り付けられており、この状態で前記下方外装材11bの上面11cに載置されており、弾性を有するとともに、柔軟性を有し、かつ、水が浸透しにくい材料からなっている。
【0074】
上記のような構成の水切り部材Aが取り付けられる建物躯体の構造には、外壁パネル10aが用いられる。この外壁パネル10aは、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助棧材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、図6に示すように、この枠体の両面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。そして、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0075】
また、前記外壁パネル10aの表面に、前記上方外装材10bと下方外装材11bとが、前記外壁パネル10a表面の上下方向に胴縁10fを介して取り付けられている。そして、これら上方外装材10bと下方外装材11bとの間には幅の狭い隙間である幅狭部Hが生じる。
【0076】
さらに、このような構造の建物躯体は、例えば、下方の外装材11bの上端部を、上階と下階との間の胴差よりも上方に延出させたり、また、上方の外装材10bの下端部を、前記胴差よりも下方に延出させたりすることによって、建物を見映え良く構築しようというものである。
【0077】
なお、本実施の形態の建物躯体の構造には、外壁パネル10aが用いられるが、これに限られず、例えば、上方の外装材10bの下端部を、前記胴差よりも下方に延出させることにより、前記幅狭部Hを下階側の外壁パネル11aの中間部に位置させても良い。
【0078】
また、前記外壁パネル10aの表面には、図示はしないが防水透湿シート13a(13b)が貼り付けられており、この防水透湿シート13a(13b)によって室内の湿気を室外へ放散させるとともに、屋外からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0079】
以上のように構築された建物躯体の幅狭部Hに、前記水切り部材Aを取り付けるには、図6に示すように、まず、前記胴縁3と前記取り付け補助部材4とを連結する。連結に際しては、前記取り付け補助部材4の水平板部4bの下面に前記水密材5を貼り付けておき、さらに、この水密材5の下面の位置に前記胴縁3の下面を合わせ、次に、前記取り付け補助部材4の垂直板部4aに設けられたビス孔9bから前記胴縁3にビス9を込めて、これら胴縁3と取り付け補助部材4とを仮に連結するようにする。
なお、この他の方法でも、例えば、前記胴縁3を接着剤や釘打ち等によって前記外壁パネル10aの所定の位置に予め取り付けおくようにしても良い。
【0080】
次に、前記取り付け補助部材4の水平板部4bを、前記下方外装材11bの上面11cに設置して、この状態のまま、前記ビス9を前記外壁パネル10aに捻じ込み、前記胴縁3と取り付け補助部材4とを共に外壁パネル10aに固定する。
【0081】
そして、前記取り付け補助部材4の直上の位置に、前記水切り本体2を挿入して、この水切り本体2の下地材連結部2aに形成されたビス孔9aにビス9を捻じ込んで、前記水切り部材Aと胴縁3とを共に、前記外壁パネル10aに固定する。
【0082】
次に、前記水切り本体2の延出部2bおよび水切り部2cに形成された係止部2eと下端係止部2fとの間に、前記ジョイナー部材6を取り付ける。このジョイナー部材6を取り付けるには、前記水切り本体2の側方から差し込むようにして取り付けるようにする。
これによって、互いに隣接する水切り本体2、2どうしを確実に連結することができるとともに、連結強度を向上させることができ、さらに、これら隣接すべき水切り本体2、2間から雨水等が侵入することも無く、防水性に優れる。
【0083】
次に、前記水切り本体2の延出部2bの上面と、前記上階外装材10bの下面10cとの間に、前記幅狭部Hの長さ方向に沿ってシーリング材7を充填し、さらに防水性の向上を図るようにする。
なお、この時、シーリング材7の裏側、ビス9との中間部分にバックアップ材8を挿入しておき、このバックアップ材8によって前記シーリング材7を受け止めることができるとともに支持することができるので、前記シーリング材7の充填状態を向上させることが可能となる。
【0084】
以上のように取り付けた水切り部材Aによれば、前記上方外装材10bと下階外装材との間の幅狭部Hを、この水切り部材Aを構成する水切り本体2によって覆うことができるので、従来とは異なり、幕板を設けなくとも、秀麗な外観に仕上げることができる。
また、前記水切り部材Aを構成する下地材1を、前記外壁パネル10aの表面に設けるとともに、前記下方外装材11bの上面11cに設置して、前記幅狭部Hに取り付けるので、前記幅狭部Hのような狭い隙間においても、前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
さらに、前記下地材1が、前記水切り本体2とともに外壁パネル10aに固定される胴縁3と、前記下方外装材11bの上面11cに配置し、かつ、前記胴縁3とともに前記外壁パネル10aに固定される取り付け補助部材4とから構成されていることによって、前記下地材1を、位置ずれ等を生じさせることも無く幅狭部Hに取り付けることができるので、前記幅狭部Hのような幅の狭い隙間でも、前記水切り部材Aを容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】幅狭部に取り付けられた水切り部材を示す斜視図である。
【図2】幅狭部に取り付けられた水切り部材を拡大して示す断面図である。
【図3】幅狭部を形成する外壁構造の一例を示す断面図である。
【図4】図3に示す外壁の構築過程を示す断面図である。
【図5】幅狭部における防水透湿シートの貼り合わせ構造を示す断面図である。
【図6】前記上方外装材と下階外装材との間の幅狭部に取り付けられた水切り部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
A 水切り部材
H 幅狭部
1 支持体(下地部材)(下地材)
2 水切り本体
3 下地部材本体(胴縁)
4 取り付け補助部材
5 水密材
6 ジョイナー部材
7 シーリング材
10 上階の外装材付き壁パネル
10b 上階外装材(上方外装材)
11 下階の外装材付き壁パネル
11b 下階外装材(下方外装材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の外表面を覆う上方の外装材と下方の外装材との間の幅狭部に取り付けられる水切り部材において、
前記建物躯体の表面に設けられるとともに、前記下方の外装材の上面に設置されて、前記幅狭部に取り付けられる支持体と、
前記幅狭部の長手方向に沿って挿入されるとともに、前記支持体の一部と連結し、かつ、前記幅狭部および前記下方の外装材の上端部を覆うようにして設けられる水切り本体とを備えていることを特徴とする水切り部材。
【請求項2】
請求項1に記載の水切り部材において、
予め表面に外装材が取り付けられた外装材付き壁パネルが上下階に配置され、これら上下階の外装材付き壁パネルの上階外装材である前記上方の外装材と下階外装材である前記下方の外装材との間の幅狭部に取り付けられるものであり、
前記支持体は、前記幅狭部に所定間隔で挿入されて前記建物躯体の表面に設けられ、かつ、少なくとも前記下階外装材の上面に設置されることによって、幅狭部に仮固定される複数の下地部材として構成されており、
前記水切り本体は、前記幅狭部の長手方向に沿って挿入されることで、前記下地部材に係合して連結し、かつ、前記幅狭部および前記下階外装材の上端部を覆うようにして設けられていることを特徴とする水切り部材。
【請求項3】
請求項2に記載の水切り部材において、
前記下地部材は、前記水切り本体とともに建物躯体に固定される下地部材本体と、この下地部材本体に連結され、かつ、前記下階外装材の上面に設置される取り付け補助部材とから構成されていることを特徴とする水切り部材。
【請求項4】
請求項3に記載の水切り部材において、
前記下地部材本体の表面に第1および第2のレール部が上下に離間して形成されており、前記第1のレール部の上溝部には、前記水切り本体の一部が挿入され、この第1のレール部の下溝部と前記第2のレール部の溝部とには、前記取り付け補助部材の一部が嵌合されていることを特徴とする水切り部材。
【請求項5】
請求項3または4に記載の水切り部材において、
前記下地部材本体の裏面には、この下地部材本体を前記上階の外装材付き壁パネルの一部に支持させる第1および第2の脚部と、前記下階の外装材付き壁パネルの一部に支持させる第3の脚部が形成されていることを特徴とする水切り部材。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水切り部材において、
前記水切り本体の上端部裏面に形成された係止部と、前記水切り本体の下端部裏面に形成された下端係止部間に、互いに隣接する水切り本体どうしを連結するジョイナー部材が前記水切り本体の裏面に沿って取り付けられていることを特徴とする水切り部材。
【請求項7】
請求項1に記載の水切り部材において、
予め外壁パネル表面の上下方向に取り付けられた上方外装材である前記上方の外装材と下方外装材である前記下方の外装材との間の幅狭部に取り付けられるものであり、
前記支持体は、前記水切り本体を支持する下地材として、前記外壁パネルの表面に設けられるとともに、前記下方外装材の上面に設置されて、前記幅狭部に取り付けられ、
前記水切り本体は、前記幅狭部の長手方向に沿って挿入されるとともに、前記下地材の一部と連結し、かつ、前記幅狭部および前記下方外装材の上端部を覆うようにして設けられていることを特徴とする水切り部材。
【請求項8】
請求項7に記載の水切り部材において、
前記下地材は、前記水切り本体とともに外壁パネルに固定される胴縁と、前記下方外装材の上面に配置され、かつ、前記胴縁とともに前記外壁パネルに固定される取り付け補助部材とから構成されていることを特徴とする水切り部材。
【請求項9】
請求項7または8に記載の水切り部材において、
前記水切り本体の上端部裏面に形成された係止部と、前記水切り本体の下端部裏面に形成された下端係止部間に、互いに隣接する水切り本体どうしを連結するジョイナー部材が前記水切り本体の裏面に沿って取り付けられていることを特徴とする水切り部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−97451(P2006−97451A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320826(P2004−320826)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】