説明

水晶振動デバイスおよび水晶振動デバイスの製造方法

【課題】 電気的特性を向上させ、かつ動作信頼性の高い水晶振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 セラミックパッケージ1の内部底面には電極パッド12、13が形成されており、前記電極パッド12,13間には水晶振動素子である平面視矩形形状の水晶振動板2が搭載されている。水晶振動板の引出電極211,221には表裏主面および側面に渡ってシリコーン系樹脂導電性接合材を硬化させた導電固体S1,S1が形成されている。このような導電固体S1,S1が一体的に形成された水晶振動板をシリコーン系樹脂導電性接合材によりセラミックパッケージ1の電極パッド12、13に導電接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる高周波数の水晶振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動素子を用いた厚み振動系水晶振動子は、一般に水晶振動素子の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交流電圧を印加する構成である。このような水晶振動子の諸特性は水晶振動素子(水晶振動板)自体の品質、形状に依存するとともに、励振電極や引出電極の構成、パッケージへの接続構成等にも依存する。特に、水晶振動素子をパッケージに搭載するにあたっては導電性接合材を用いるが、当該導電性接合材の影響により水晶振動子の特性が不安定になることがあった。
【0003】
例えばセラミックパッケージを用いた表面実装型の水晶振動子においては、パッケージの電極パッドにペースト状の導電性接合材を塗布し、その導電性接合材上に表裏一対の励振電極形成された水晶振動素子を搭載する。励振電極からはそれぞれ引出電極が水晶振動素子の端面に引き出され、当該引出電極部分が当該導電性接合材により電気的機械的接合される。
【0004】
ところで水晶振動素子に形成された引出電極は電極膜形成方法によっては、水晶振動素子の側面には形成されにくく、反対主面への回り込み電極形成ができないことがあった。例えば真空蒸着法で成膜を行う場合、水晶振動素子の蒸着源に対する蒸着角度によっては意図した側面に対し電極が形成されないことがあった。
【0005】
特開2000−36716号(特許文献1)の従来技術の項においてはこのような問題点について開示されており、このような問題点を解決する圧電振動素子の接合方法として、パッケージの凹陥部内に表裏両面に励振電極を備えた圧電振動素子を収納した状態で、該凹陥部を気密封止した構造の圧電デバイスの製造工程において、上記凹陥部内の段差上に形成した2つの電極パッド上に導電性接着剤を介して圧電振動素子を接合する際に、予め圧電振動素子の一端縁に表裏の各励振電極から導出されたリード電極に対して圧電素板端縁側から素板の表裏両面及び端面にかけて導電性接着剤を塗布する工程と、上記工程において導電性接着剤の塗布を受けた圧電振動素子を上記各パッド上に各導電性接着剤が対応するように載置して接合する工程、とからなる接合方法が開示されている。また同様の接合方法は、特許第2583866号(特許文献2)にも開示されている。
【0006】
また上述の問題を解決するために導電性接合材を上下複数に塗布する構成が考えられている。例えば特許第3375445号(特許文献3)には、水晶振動片を保持部にて支持する水晶振動片の支持方法において、前記保持部に第1の接着剤を塗布する工程と、前記保持部に塗布された前記第1の接着剤の溶剤を蒸発させて前記第1の接着剤を半硬化以上の状態にする仮キュア工程と、前記第1の接着剤上に第2の接着剤を塗布する工程と、前記水晶振動片の端部が前記第1の接着剤及び前記第2の接着剤と接触するように前記水晶振動片を前記保持部上に載置する工程と、前記水晶振動片の端部を固着するために追加の第2の接着剤を前記水晶振動片の端部表面に塗布する工程と、前記第1及び第2の接着剤をキュア温度で固化する工程とを備え、前記第1及び第2の接着剤の硬化収縮時に前記水晶片が立ち上がるのを前記第1の接着剤によって阻止したことを特徴とする水晶振動片の支持方法。が開示されている。
【0007】
ところで近年水晶振動子に対して、DLD(Drive Level Dependance)特性の安定が求められるようになってきた。これは電子機器の低電圧駆動に伴い極めて低電圧で水晶振動子を駆動する機会が増加したことに伴うものであり、当該DLD特性は水晶振動子に印加する駆動電力を例えば0.001μWから300μWまで変化させ、これを繰り返した際の周波数特性を示すものである。DLD特性悪い水晶振動子は周波数変動幅が大きくなり、また周波数特性に揺らぎが生じたり、場合によっては水晶振動子の発振停止に陥る等、駆動電力変動に対する周波数特性が安定しない、という問題点を有している。
【0008】
このようなDLD特性悪化の要因は様々なものが考えられているが、その一つに水晶振動素子とパッケージを接合する導電性接合材に内在する応力の影響をあげることができ、またパッケージ自体の歪みの影響も考えられる。上記特許文献3に示すように、水晶振動素子を接続する接合材を複数段構成とすることにより、パッケージの歪みの影響を緩和する効果があり好ましいが、次のような欠点があった。1つはペースト状の導電性接合材を用いて水晶振動素子とパッケージとを接合するが、当該導電性接合材の硬化接合後も応力が導電性接合材に内在しており、この応力の影響により水晶振動デバイスの特性を変動させることがあった。また特許文献3にあるような複数段の接合においても導電性接合材毎に応力が内在し、これらが複雑に絡み合って水晶振動デバイスの特性を変動させることがあった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−36716号
【特許文献2】特許第2583866号
【特許文献3】特許第3375445号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、DLD特性等の電気的特性を向上させ、かつ動作信頼性の高い水晶振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明者は、パッケージに対する水晶振動素子の搭載構成について鋭意検討を行った結果、DLD特性等の電気的特性の安定した水晶振動デバイスを、次のような構成により実現したものである。
【0012】
すなわち、請求項1に示すように、表裏面に一対の励振電極および当該励振電極と接続された引出電極が形成された水晶振動素子を、パッケージに搭載した水晶振動デバイスであって、前記水晶振動素子の引出電極に導電固体が形成されるとともに、前記水晶振動素子は前記導電固体がパッケージに形成された電極パッドに対応するようペースト状の導電性接合材を介して搭載され、当該導電性接合材の硬化により水晶振動素子とパッケージとを電気的機械的に接合したことを特徴とする水晶振動デバイスである。当該導電固体は、例えば導電性接合材を硬化させた構成であったり、金属膜を積層させた厚膜構成であったり、あるいは金属バンプであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、導電固体の形成された水晶振動素子を導電性接合材にて接合するので、緩衝機能に優れた複数構成の導電体による水晶振動素子の接合が極めて容易に形成することができる。また水晶振動素子に形成された導電固体は物理的に安定した状態とすることができ、このような導電固体を導電性接合材にて接合するために、従来のように導電性接合材の硬化における応力が水晶振動素子に直接伝わらないので、DLD特性等の電気的特性を良好にすることができる。さらには、導電固体の質量効果により、導電性接合材への接合時に水晶振動素子の自由端部が傾くことなく安定した支持を行うことができる。よって、信頼性が高く、特性の安定した水晶振動デバイスを得ることができる。
【0014】
また前記導電固体は請求項2に示すように、水晶振動素子の片面のみまたは両面または両面と側面に形成された構成であってもよい。片面のみの形成においては、水晶振動素子の電極パッドへの搭載は表裏いずれかの方向性をもった搭載になるが、導電固体や導電性接合材が接合面との反対面に形成されないため、水晶振動デバイスの低背化に有効である。この場合、水晶振動デバイスの側面等を介して反対主面に引出電極を回し込む引き回し電極構成が必要となることがある。
【0015】
導電固体を水晶振動素子の両面に形成する場合は、パッケージの電極パッドへの搭載に関し、表裏の区別を付けることないので表裏の方向性を考慮しない水晶振動素子の搭載を行うことができる。また両面と側面に導電固体を形成する場合は、前述の引き回し電極を形成することなく表裏の電極を導通させることができ、生産性を向上させることができる。
【0016】
また請求項3に示すように、前記導電固体と前記導電性接合材は同材料であってもよい。例えば導電固体はペースト状の導電性接合材を水晶振動素子の引出電極に塗布し、これを硬化させた構成を採用し、これを同じ導電性接合材を用いて前記導電固体と接合されることにより、水晶振動素子とパッケージとを電気的機械的に接合してもよい。このような構成においては、両者が同材料であるため、接合界面における“なじみ”が良好となり接合性を向上させることができる。
【0017】
また逆に請求項4に示すように、前記導電固体と前記導電性接合材は異材料である構成を採用してもよい。例えば導電固体は水晶振動素子あるいはその表面に形成された電極パッドと一体化することが必要であるが、これら水晶振動素子あるいは電極パッドと“なじみ”のよい材料を採用した導電固体とすることにより、両者の接合性を向上させることができる。また導電性接合材は電極パッドと導電固体との接合性の良好なものを選ぶことにより、全体として水晶振動デバイスの特性向上並びに安定に寄与する。
【0018】
さらに請求項5に示すように、前記導電固体は硬化後の前記導電性接合材より硬度が高い構成としてもよい。このような構成によれば、導電性接合材に応力が内在しても、その応力が水晶振動素子まで伝わりにくく、特性を安定させることができる。
【0019】
本発明は、前記水晶振動素子の引出電極に導電固体が形成されるとともに、これをパッケージの電極パッドに導電性接合材により接合するに構成について、この構成に好適なパッケージ構成についても提案している。すなわち請求項6に示すように、前記電極パッドの外周近傍には小堤部が形成されている構成であったり、請求項7に示すように、前記パッケージの電極パッドはパッケージ内部底面に形成された掘込部内に形成され、前記電極パッドの上面はパッケージ内部底面よりも低い構成を提案している。
【0020】
上記各構成によれば、電極パッドから導電性接合材の流出を防止することができるので、導電性接合材の粘度の低い材料あるいはチクソ性の低い材料を選択したとしても、電極パッド相互の短絡事故が生じにくくなる。
【0021】
また請求項7の構成によれば、またこのような構成によれば、掘込部に導電性接合材が供給されることにより、導電性接合材の粘度の低い材料あるいはチクソ性の低い材料を選択したとしても、導電性接合材が掘込部内に留まり、相互の短絡事故が生じにくくなる。さらに、導電固体はその厚さに水晶振動デバイスの低背化を阻害する要因になるが、掘込部に導電固体の一部を収納するような支持構成を採用することができるので、水晶振動デバイスの低背化に寄与する。
【0022】
さらに本発明は、導電固体に導電性樹脂接合材を用いた場合、その導電固体の形成強度を向上させる構成についても提案している。請求項8は、導電固体が導電性樹脂接合材からなり、当該導電固体の形成された引出電極には水晶振動素子の素地露出部が形成され、導電固体は当該素地露出部とも接合されている構成である。導電性樹脂接合材は例えば樹脂系の接合材内に金や銀等の導電フィラーを分散させた構成の接合材であり、一般に水晶振動素子の素地部分との接合性が良好である。このような接合材を用いる場合は積極的に引出電極に例えばスリット状やホール状の素地露出部を形成することにより、水晶振動素子と導電固体との接合強度を向上させることができる。
【0023】
請求項9は、水晶振動デバイスの一連の製造工程のなかに導電固体形成工程を組み込んだ製造方法を提案したものであり、複数の水晶振動素子がパターニングマスクを用いた薄膜形成手段により励振電極と引出電極が形成される電極膜形成工程と、当該電極膜形成工程後、パターンニングマスクによるマスキング状態で前記各引出電極に導電性接合材を塗布しこれを硬化させることにより導電固体を形成する工程と、パッケージの電極パッドに導電性接合材を塗布する工程と、前記水晶振動素子の導電固体を前記導電性接合材上に搭載する工程と、前記導電性接合材を硬化させることにより、水晶振動素子とパッケージとを電気的機械的に接合した工程と、を有する水晶振動デバイスの製造方法。を提案している。
【0024】
電極膜形成工程においてはパターニングマスクに水晶振動素子が整列されているが、このような製造方法においては、この電極膜形成後にパターニングマスクに収納された整列状態を利用して、引出電極部分に導電性接合材を塗布し硬化させることにより導電固体を形成する。またこの導電固体形成状態における整列状態を基本として、パッケージへの搭載を行うことができる。従って、導電固体形成のための新たな水晶振動素子の整列作業が不要になり、効率のよい生産性に優れた水晶振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【0025】
次に本発明品と従来品の検証データについて説明する。比較した水晶振動デバイスはセラミックパッケージに水晶振動素子を気密収納した表面実装型水晶振動子(86.450MHz 基本波)で、基本構成は後述の第1の実施形態に開示した構成であり、水晶振動素子の導電接合構成を異ならせた。従来品の導電接合部分は特許文献3に類する構成であり、ペースト状のシリコーン樹脂系導電性接合材上に水晶振動素子を搭載し、さらに水晶振動素子上にペースト状のシリコーン樹脂系導電性接合材を塗布し、これらを硬化させた構成である。また本発明品の導電接合部分は後述の第1の実施形態に開示した構成に類するもので、ペースト状のシリコーン樹脂系導電性接合材上に導電固体としてシリコーン樹脂系導電性接合材の硬化物を形成した水晶振動素子を搭載し、ペースト状のシリコーン樹脂系導電性接合材を硬化させた構成である。なお、サンプル数は従来品、本発明品それぞれ20個であり、それぞれのDLD特性を測定した。ドライブレベルは0.001μW〜300μW間(横軸)を変化させ、周波数偏差(dF/F ppm)について測定した。図8は従来品のDLD特性、図9は本発明品のDLD特性を示している。従来品については周波数偏差の大きいものが多数存在しているのに対して、本発明品は全体として明らかに周波数偏差が小さく特性が安定していることが理解できる。
【0026】
また上記各サンプルについて、エージング(経時変化)特性についても調べた。具体的には各サンプルを85℃の高温温度環境下で1000時間(横軸)のエージング試験を行い、その周波数偏差(dF/F ppm)について測定した。図10は従来品のエージング特性、図11は本発明品のエージング特性を示している。各図から明らかなとおり、従来品については経時的な周波数偏差が大きく、かつそのばらつきが大きくなっているのに対し、本発明品は全体として周波数偏差が小さく、かつそのばらつきが小さくなっており特性の安定していることが理解できる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、導電固体の形成された水晶振動素子を導電性接合材にて接合するので、緩衝機能に優れた複数構成の導電体による水晶振動素子の接合が極めて容易に得ることができる。また水晶振動素子は導電性接合材に内在する応力も受けにくい。よって、DLD特性やエージング特性等の電気的特性が安定し、信頼性の高い水晶振動デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図1乃至図3とともに説明する。図1は第1の実施の形態を示す断面図、図2はリッドによる気密封止前の平面図、図3は水晶振動素子の搭載状況を示す図である。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有するセラミックパッケージ1と、当該パッケージの中に収納される水晶振動素子である水晶振動板2と、パッケージの開口部に接合されるリッド3とからなる。なお、図1、図2においては水晶振動板2に形成された励振電極および引出電極の記載を省略している。
【0029】
セラミックパッケージ1はアルミナ等のセラミックと導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形で、電子素子収納部10とその周囲に形成された堤部11を有する構成である。電子素子収納部周囲の堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の第1の金属膜層11aが形成されている。当該第1の金属膜層11aの上面も平坦になるよう形成されており、タングステン、ニッケル、金の順で金属膜層を構成している。タングステンはメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0030】
セラミックパッケージ外周の4角には上下方向に伸長するキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成であり、前述のとおりウェハからの小割切断時に必要となる。
【0031】
なお、第1の金属膜層11aはセラミックパッケージ形成されたビアホール(図示せず)あるいは前記キャスタレーション部分に形成された導電膜(図示せず)により、セラミックパッケージ下面(裏面)に形成された外部接続電極(図示せず)に電気的に接続され、最終的にアース接続される。
【0032】
セラミックパッケージ1の内部底面には電極パッド12、13が形成されており、これら電極パッドは連結電極(図示せず)を介して、パッケージ外部の底面に形成された外部接続電極14,15にそれぞれ入出力端子として引き出されている。
【0033】
前記電極パッド12,13間には水晶振動素子である平面視矩形形状の水晶振動板2が搭載されている。水晶振動板2は例えば厚みすべり振動で駆動するATカット水晶振動板であり、その表裏面には対向して平面視矩形形状の励振電極21,22(22は図示せず)が形成されており、各々の励振電極21,22から一短辺に表裏それぞれ引出電極211,221(221は図示せず)が引き出されている。
【0034】
引出電極211,221の短辺側端縁部分には表裏主面および側面に渡って導電固体S1,S1が形成されている。このような構成においては引出電極に反対主面への引き回し電極を形成することなく表裏の電極を導通させることができ、生産性を向上させることができる。本実施に形態においては、導電固体S1,S1にシリコーン系樹脂導電性接合材を硬化させた構成を用いている。当該シリコーン系樹脂導電性接合材はペースト状のシリコーン系の樹脂接合材に金または銀等の導電フィラーを分散させた構成であり、硬化後も弾性による緩衝機能と良好な導電性を備えた導電固体を得ることができる。
【0035】
このような導電固体S1,S1が一体的に形成された水晶振動板をセラミックパッケージ1の電極パッド12、13に導電接合する。導電接合は導電性接合材S2,S2により行い、本実施の形態においては、導電固体に用いたのと同様のシリコーン系樹脂導電性接合材を用いている。なお、導電固体S1,S1の質量効果により、導電性接合材S2,S2への接合時に水晶振動板2の自由端部が傾くことなく安定した支持を行うことができる。
【0036】
セラミックパッケージを気密封止するリッド3は平面視矩形状の平板構成である。当該リッド3は、図示していないが、コバールからなるコア材に第2の金属膜層32として金属ろう材が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、第2の金属膜層である銀ろう層がセラミックーパッケージの第1の金属膜層と接合される構成となる。なお、リッドの平面視外形はセラミックパッケージの当該外形とほぼ同じである。
【0037】
セラミックパッケージ1の電子素子収納部10に導電固体が一体化された水晶振動板2を格納し、電極パッド12,13と導電固体S1,S1とを導電樹脂接合材S2,S2により導電接合する。その後、必要な接合材硬化処理を行い真空雰囲気中にて気密封止を行う。本実施の形態においては、シーム溶接法を用いて前述の銀ろう層を溶融硬化させ、気密封止されている。
【0038】
なお、水晶振動板2に形成された導電固体S1は上記構成に限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示すように水晶振動板の下面側に導電性接合材を形成し、硬化させた構成でもよいし、図4(b)に示すように水晶振動板の上下面に導電性接合材を形成し硬化させた構成でもよい。また図4(c)に示すように水晶振動板の下面側に金属厚膜層を形成してもよい。なお、当該金属厚膜層はスクリーン印刷により複数の膜を積層する等の構成を採用すればよい。
【0039】
図4(a)に示す片面のみの形成においては、水晶振動板の電極パッドへの搭載は表裏いずれかの方向性をもった搭載になるが、導電固体や導電性接合材が接合面との反対面に形成されないため、水晶振動子の低背化に有効である。この場合、電極構成によっては水晶振動子の側面等を介して反対主面に引出電極を回し込む引き回し電極構成が必要となる場合がある。
【0040】
図4(b)に示す導電固体を水晶振動板の両面に形成する場合は、パッケージの電極パッドへの搭載に関し、表裏の区別を付けることないので表裏方向性を考慮しない水晶振動板の搭載を行うことができる。
【0041】
次に本実施の形態による水晶振動子の製造方法について説明する。水晶振動子の製造工程としては、パターニングマスクに水晶振動板2を複数個整列して収納する工程と、当該パターニングマスクに収納された水晶振動板2に対し、真空蒸着法やスパッタリング法等による物理的成膜法により水晶振動板表面にパターニングされた励振電極21,22と引出電極211,221を形成する工程と、パターニングマスクに収納された水晶振動板2の引出電極形成位置にペースト状の導電性接合材を塗布する工程と、当該塗布した導電性接合材を硬化させ導電固体S1,S1を形成する工程と、セラミックパッケージ1の電極パッド12,13に導電性接合材S2,S2を形成する工程と、当該導電性接合材上に前記導電固体が搭載されるよう水晶振動板2をセラミックパッケージ1に搭載する工程と、当該導電性接合材S2,S2を硬化させる工程と、リッド3にてセラミックパッケージ1の開口部を気密封止する工程とからなる。なお、パターニングマスクに収納された状態で導電固体を形成しなくてもよく、他の治工具や塗布装置を用いて導電固体を形成してもよい。
【0042】
上記製造方法を実施するにあたり、例えば、図5に示すようなパターニングマスク上での導電性接合材を塗布してもよい。図5は励振電極と引出電極が形成された水晶振動板2(水晶振動素子)がマトリクス状に配置されたパターニングマスクMを示している。通常パターニングマスクは複数枚の構成体からなり、詳細には図示していないが、水晶振動板を収納するスペーサや、スペーサの上下それぞれにあって、励振電極や引出電極に対応した開口窓が形成された上マスクと下マスクや、上マスクと下マスクを固定する押え板等からなる。このようなパターニングマスクMに収納した状態で各水晶振動板2の引出電極部分にディスペンサ等で導電性接合材を塗布し、そして当該導電性接合材を乾燥炉等で加熱硬化することにより、多数の導電固体S1,S1の形成された水晶振動板2を得ることができる。このような水晶振動板をチャキング機能や吸引機能を有する移載装置にてパターニングマスクから取り出し、パッケージへの搭載を行う。パッケージへの水晶振動板の搭載直前には、電極パッドに導電性接合材がディスペンサ等で塗布されており、図3に示すように、移載装置の吸引ツールTに吸引された水晶振動板2は、導電固体S1が電極パッド12,13に形成されたペースト状の導電性接合材上に搭載される。このように整列されたパターニングマスク搭載状態で水晶振動板2に対し導電性接合材を塗布し、導電固体を形成する製造方法により、極めて効率的に引出電極部分に導電固体を形成することができる。またこの導電固体形成状態における整列状態を基本として、パッケージへの搭載を行うことができる。以上、導電固体形成のための新たな水晶振動素子の整列作業が不要になり、効率のよい生産性に優れた水晶振動子の製造方法を提供することができる。なお、本例においては導電固体、導電性接合材と共にシリコーン系樹脂導電性接合材を用いている。
【0043】
ところで従来は電極パッド上に導電性接合材(第1の接着剤)を塗布し、これを硬化させ、その後硬化した導電性接合材上にさらに導電性接合材(第2の接着剤)を塗布して、さらに水晶振動素子を搭載する構成も考えられる。この場合DLD特性を安定させることは可能であるが、製造面で問題がある。すなわち、水晶振動子の実際の製造においては、水晶振動素子を搭載するパッケージの電極パッドへの接着剤の供給は、位置決めされた状態でディスペンサを電極パッドに近接させ供給する。ここで第2の接着剤の供給は硬化した第1の接着剤上に供給することになるが、接着剤の供給量バラツキにより硬化した第1の接着剤の形状に大小が生じる。このような場合、ディスペンサが硬化した第1の接着剤と接触し、接着剤に損傷を与えることがあった。また硬化した接着剤上に位置決め精度よく供給すること困難であり、製造バラツキの要因になっていた。本発明によれば、このような問題点が生じることもなくなる。
【0044】
本発明による第2の実施の形態について、図6の断面図とともに説明する。本実施の形態はパッケージの工夫により本発明による水晶振動板の搭載性能を向上させるものである。基本的な構成は第1の実施の形態と類似しているが、電極パッドの構成が異なっている。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有するセラミックパッケージ4と、当該パッケージの中に収納される圧電振動板である矩形水晶振動板5と、パッケージの開口部に接合されるリッド6とからなる。
【0045】
セラミックパッケージ4はアルミナ等のセラミックと導電材料を積層した構成であり、断面でみて凹形で、電子素子収納部40を有する構成である。電子素子収納部周囲の堤部41の上面は平坦であり、当該堤部上の全面に周状の第1の金属膜層41aが形成されている。当該第1の金属膜層41aの上面も平坦になるよう形成されており、タングステン、ニッケル、金の層構成を有している。タングステンはメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0046】
なお、第1の金属膜層41aはセラミックパッケージに形成されたビアホール(図示せず)あるいはキャスタレーション部分に形成された導電膜(図示せず)により、セラミックパッケージ下面(裏面)に形成された外部接続電極46(図示せず)に電気的に接続され、最終的にアース接続される。
【0047】
セラミックパッケージ4の電子素子収納部40の内部底面40aには電極パッド42、43(43は図示せず)が形成されており、これら電極パッドは連結電極(図示せず)を介して、パッケージ外部の底面に形成された外部接続電極44,45にそれぞれ入出力端子として引き出されている。底面40aの電極パッド形成位置には掘込部40bが形成され、これら電極パッド42,43はこの掘込部40b内に形成されると共に、電極パッドの上面は底面40aより低い位置になるような構成となっている。これら掘込部は電極パッド42,43毎に形成されているので、底面40aに2つの独立した掘込部が形成された構成となっている。
【0048】
前記電極パッド42,43間には水晶振動素子である平面視矩形形状の水晶振動板5が搭載されている。水晶振動板5は例えば厚みすべり振動で駆動するATカット水晶振動板であり、その表裏面には対向して平面視矩形形状の励振電極(図示せず)が形成されており、各々の励振電極から一短辺に表裏それぞれ引出電極(図示せず)を引き出している。
【0049】
引出電極の短辺側端縁部分には表裏主面および側面に渡って導電固体S1,S1が形成されている。このような構成においては引出電極に反対主面への引き回し電極を形成することなく表裏の電極を導通させることができ、生産性を向上させることができる。なお、ここで用いる導電樹脂接合材はペースト状のエポキシ系の樹脂接合材に金または銀等の導電フィラーを分散させた構成であり、硬化時は比較的硬度が高く、堅い導電固体を得ることができる。
【0050】
このような導電固体S1,S1が一体的に形成された水晶振動板をセラミックパッケージ4の電極パッド42、43に導電接合する。導電接合は導電性接合材S2,S2により行い、本実施に形態においては、導電固体に用いたエポキシ系樹脂導電性接合材よりも高度の低いシリコーン系樹脂導電性接合材を用いている。前述のとおり電極パッドは底面40aの掘込部に設けられ、その上面は底面40aより低い位置にあるので導電性接合材S2,S2は流出することなく掘込部内に溜まる。このような構成によれば、掘込部に導電性接合材が供給されることにより、導電性接合材の粘度の低い材料あるいはチクソ性の低い材料を選択したとしても、導電性接合材が掘込部内に留まり、相互の短絡事故が生じにくくなる。さらに、導電固体はその厚さが水晶振動子の低背化を阻害する要因になるが、掘込部に導電固体の一部を収納するような支持構成を採用することができるので、水晶振動子の低背化に寄与する。
【0051】
セラミックパッケージ4を気密封止するリッド6は平面視矩形状の平板構成である。当該リッド6は、詳細に図示はしていないがコバールからなるコア材に第2の金属膜層として金属ろう材が形成された構成であり、例えば、ニッケル層、コバールコア材、銀ろう層の多層構成であり第2の金属膜層である銀ろう層がセラミックパッケージの第1の金属膜層と接合される構成となる。
【0052】
セラミックパッケージ4の電子素子収納部40に導電固体が一体化された水晶振動板5を格納し、電極パッド42,43と導電固体S1,S1とを水晶振動板4の引出電極が導電樹脂接合材S2,S2により導電接合する。その後、必要な接合材硬化処理を行い真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて気密封止を行う。本実施の形態においては、シーム溶接法を用いて前述の銀ろう層を溶融硬化させ、気密封止されている。本実施の形態においては、導電固体S1の硬度が導電性接合材より高いため、導電性接合材に応力が内在しても、その応力が水晶振動素子まで伝わりにくく、特性を安定させることができる。
【0053】
なお、上記実施の形態において、気密封止方法としてリッドに形成された金属ろう材をシーム溶接により接合した構成であるが、金属リング体をパッケージの開口部に形成し、当該金属リング体とリッドとをシーム溶接あるいは電子ビーム等のエネルギービーム溶接により接合してもよいし、パッケージとリッドとを金属ろう材により加熱雰囲気下で接合する方法を採用することも可能である。
【0054】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、図7に示すように引出電極511,521の導電固体S1(点線丸枠)の形成領域の一部に水晶の素地露出部511a,521aを形成した構成としてもよい。このような構成は導電固体が導電性樹脂接合材からなる場合に特に有効である。導電性樹脂接合材は例えば樹脂系の接合材内に金や銀等の導電フィラーを分散させた構成の接合材であり、一般に水晶振動素子の素地部分との接合性が良好である。このような接合材を用いる場合は積極的に引出電極に例えばスリット状やホール状の素地露出部を形成することにより、水晶振動素子と導電固体との接合強度を向上させることができる。
【0055】
また上述した実施の形態においては、セラミックパッケージを用いた表面実装型の水晶振動子について例示したが、本発明はガラスを主材料としたパッケージや金属を主体としたパッケージに適用することもできる。また水晶フィルタや他の電子素子を一体的に収納した水晶発振器についても適用することができる。
【0056】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
水晶振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明による第1の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明による第1の実施形態の製造方法を示す図である。
【図4】本発明による他の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明によるパターニングマスク構成を示す図である。
【図6】本発明による第2の実施形態を示す断面図図である。
【図7】本発明による他の実施の形態を示す図である。
【図8】DLD特性の比較データを示す図である。
【図9】DLD特性の比較データを示す図である。
【図10】エージング特性の比較データを示す図である。
【図11】エージング特性の比較データを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,4 セラミックパッケージ(パッケージ)
水晶振動板(水晶振動素子)
リッド
S1 導電固体
S2 導電性接合材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面に一対の励振電極および当該励振電極と接続された引出電極が形成された水晶振動素子を、パッケージに搭載した水晶振動デバイスであって、前記水晶振動素子の引出電極に導電固体が形成されるとともに、前記水晶振動素子は前記導電固体がパッケージに形成された電極パッドに対応するようペースト状の導電性接合材を介して搭載され、当該導電性接合材の硬化により水晶振動素子とパッケージとを電気的機械的に接合したことを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項2】
前記導電固体は水晶振動素子の片面のみまたは両面または両面と側面に形成されたことを特徴とする請求項1記載の水晶振動デバイス。
【請求項3】
前記導電固体と前記導電性接合材は同材料であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水晶振動デバイス。
【請求項4】
前記導電固体と前記導電性接合材は異材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水晶振動デバイス。
【請求項5】
前記導電固体は硬化後の前記導電性接合材より硬度が高いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水晶振動デバイス。
【請求項6】
前記電極パッドの外周近傍には小堤部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水晶振動デバイス。
【請求項7】
前記パッケージの電極パッドはパッケージ内部底面に形成された掘込部内に形成され、前記電極パッドの上面はパッケージ内部底面よりも低いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水晶振動デバイス。
【請求項8】
導電固体が導電性樹脂接合材からなり、当該導電固体の形成された引出電極には水晶振動素子の素地露出部が形成され、導電固体は当該素地露出部とも接合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水晶振動デバイス。
【請求項9】
複数の水晶振動素子がパターニングマスクを用いた薄膜形成手段により励振電極と引出電極が形成される電極膜形成工程と、
当該電極膜形成工程後、パターンニングマスクに収納した状態で前記各引出電極に導電性接合材を塗布しこれを硬化させることにより導電固体を形成する工程と、
パッケージの電極パッドに導電性接合材を塗布する工程と、
前記水晶振動素子の導電固体を前記導電性接合材上に搭載する工程と、
前記導電性接合材を硬化させることにより、水晶振動素子とパッケージとを電気的機械的に接合した工程と、
を有する水晶振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−96945(P2007−96945A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285374(P2005−285374)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】