説明

氷結防止除去装置

【課題】物体表面の氷結防止及び除去を容易に、且つ効率的に行うことができる氷結防止除去装置を得る。
【解決手段】絶縁体6をなすガラス層の表面に同心円状の表面側電極4を形成し、ガラスの裏面における導電性の反射層を裏面側電極7として、両電極間にパルス電流供給源11からパルス電流を供給すると、表面側電極4から表面プラズマ17が発生する。この表面プラズマ及びそれにより誘起される誘導気流によりガラス6の表面に生じる氷結を防止し、既に氷結が発生しているときにはこれを除去することができる。このような表面プラズマを利用した氷結防止除去装置は、車等のフロントガラス、飛行機や風力発電機の翼等、広範囲の分野に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は屋外で使用するミラーや車両の窓ガラス等への氷結を防止すること、また付着した氷雪を溶解することを効果的に行うことができるようにした氷結防止除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より特に寒冷地において路側に設置しているカーブミラーには氷雪が付着し、特に危険な地点における安全運転のためのカーブミラーが有効に使用されないことが多く、その対策としてプリント発熱体等の電熱によりカーブミラーを加熱し、或いは電動ファンを用いて加熱空気を吹き付ける等の手法が用いられているほか、更に各種手法が提案されている。
【0003】
また、車両のフロントガラスを初めとする窓ガラスの外側表面には、霜の付着、氷雪の付着(以下これらを「氷結」と略称する)が生じ、特にフロントガラスについては運転に支障を生じるためその除去が必要となる。これらの氷雪の除去に際しては、単にデフロスターでガラス内面から加熱するのみではフロントガラス全体の氷結を除去するには多くの時間を要する。また、外部から直接氷結部分を掻き落とすと窓ガラス表面を傷つけ、温風器で外部から加熱する方法では時間がかかる等の問題もある。更に、予めガラス表面に不凍液を含んだスプレーを吹き付けておくことも行われるが、スプレーの効果は長期間持続しないほか、手数を要する問題がある。
【0004】
なお、本発明は後述するように現在表面プラズマアクチュエータとして研究が行われている表面プラズマを用い留ものであるが、表面プラズマアクチュエータについては下記文献に詳細に記載されている。
【非特許文献1】Roth, J. R., Sherman, D. M., and Wilkinson, S. P. (1998). Boundary layer flow control with a one atmosphere uniform glow discharge. AIAA Paper 98-0328, 36th Aerospace Sciences Meeting and Exhibit, Reno, Nevada.
【非特許文献1】Corke, T. C., Jumper, E. J., Post, M. L., Orlov, D., and McLaughlin, T. E. (2002). Application of weakly-ionized plasmas as wing flow-control devices. AIAA paper 2002-0350, 40th Aerospace Sciences Meeting & Exhibit, Reno, Nevada.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、カーブミラーの氷結防止或いはフロントガラスの氷結防止及びその除去に際して従来より種々の手法が用いられ、また提案されているが、特にカーブミラーやフロントガラス表面に透明電熱線を貼り付け、これに対して必要なときに通電を行い、氷結防止及びその除去を行うことが簡便であり、確実な作動が可能となる。しかしながらこのような電熱線による加熱は、ガラス自体を加熱するものであり、カーブミラーやフロントガラスは大型で熱容量が大きいため、これを加熱するには多くの電気エネルギーを必要とすると共に、多くの時間を必要とする。
【0006】
また、結露や氷結の防止及びその除去は上記のようなカーブミラーや車両のガラスに限らず、車両のサイドミラー、列車や飛行機の窓ガラス等においても問題となる。また、飛行機や風力発電機の翼においては、それらの翼が氷結すると翼性能が著しく低下し、特に飛行機の翼においては失速して重大事故につながる可能性がある。更に、家庭用及び業務用の冷蔵庫等においても氷結は問題となり、効果的な氷結防止及び除去手法の開発が望まれている。
【0007】
したがって本発明は各種の分野で問題となる、物体表面が氷結し、或いは結露する問題を、効率的に、且つ容易に防止し、また除去することができる氷結防止除去装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る氷結防止除去装置は、上記課題を解決するため氷結を生じる面に表面プラズマを発生させてその発生防止及び除去を行うようにしたものである。表面プラズマについては、既に表面プラズマアクチュエータとして多数の研究がなされているが、表面プラズマアクチュエータは例えば図8(a)に示すように、樹脂、セラミックス等の絶縁体61を挟んで表面側電極62と裏面側電極63を設け、両電極に交流電源64によって交流電界を印可すると、表面側電極62の縁部65から絶縁体61の表面に沿ってプラズマジェット66が発生することを利用するものである。特にこの表面プラズマは周囲の気体を誘導し誘導気流67が発生するため、この作用も有効に利用する研究がなされている。
【0009】
その一つとして例えば図8(d)に示すような翼68の表面における、翼面から空気流が剥離しやすい部分に前記のような表面プラズマ発生装置69を設けるものであり、同図には翼の表面に表面側電極62を1列に形成したものを示している。このような表面プラズマ発生装置69を用いると、前記の原理により表面側電極62の縁部65に表面プラズマがプラズマジェットとして発生する。それによりこの翼68の表面を流れる気流に対して前記誘導気流の発生原理によって影響を与え、この部分に生じやすい剥離の防止作用を行うことができる。特にこのような表面プラズマは、翼表面には表面電極として薄い膜を形成するのみでよいので、翼表面を流れる気流に対する空気抵抗等の影響が少なく、且つ機械的な作動部分がないため、故障すること無く安定して作動させることができるものである。
【0010】
特に図8(a)に示すように、交流電源64を制御装置70によって制御可能とし、且つセンサ71によって気体速度や温度を検出して、その信号によって制御装置70が交流電源64を制御することにより、そのときの条件に対応して渦流の発生を防止することができるようになる。このときの制御信号としては、例えば図8(b)に示すように、 所定の狭い幅の交流パルスを図示の例では1/15秒間出力するようにし、更に図示の例ではその後13/30秒間休止してから同じ交流パルスを出力している。このような制御状態からより強いプラズマジェットを発生させようとするときには、例えば図8(c)に示すようにパルスの供給時間を多くするデューティー比制御を行うことにより対応することができる。
【0011】
表面プラズマは現在主として上記のような作動を行うアクチュエータとして利用することが研究されているが、その研究の過程で表面プラズマの特性が更に明らかになり、この表面プラズマは電極の形状や配置により特有のプラズマジェットを発生させることができ、また、より広い分野に利用することが可能であることが明らかとなってきた。
【0012】
表面プラズマを発生させる表面側電極の形状と配置によって種々のプラズマジェットを発生させることができ、例えば図9(a)(b)のように絶縁体81の表面に互いに間隔をもって平行に第1表面側電極72と第2表面側電極83とを対向して配置し、裏面に設けた裏面側電極84との間に高電界を発生させると、表面側電極と裏面側電極の配置関係により、各表側電極の互いに対向する縁部から表面に平行に前記と同様のプラズマジェットが発生する。これらのプラズマジェットは各電極の中間部で衝突し、図9(b)に示すように絶縁体81の表面から立ち上がるようにプラズマジェット85が形成される。その際には周囲の気体は図示するように表面から立ち上がるように誘導される誘導気流86が発生する。
【0013】
その他例えば図9(c)(d)(e)に示すように、表面側電極を中心開口87を備えたリング状、或いは中心開口87を備えた四角形状の表面側電極88とし、裏面に設けた裏面側電極92との間に高電界を発生させると、表面側電極88と裏面側電極92の配置関係により、表面側電極88の中心開口87側の縁部から中心に向けてプラズマジェット89が表面に平行に発生する。このプラズマジェットは中心部において互いに衝突し、表面から立ち上がるプラズマジェット90が形成される。また、そのプラズマジェット90に誘導されて誘導気流91が表面から立ち上がるように発生することとなる。
【0014】
このように、電極の形状や配置により、種々のプラズマジェットを発生させることができ、これを用いて前記のような翼の渦流発生制御による剥離防止作用を行わせるほか、更に各種の用途に利用することが考えられ、本発明はこのような表面プラズマをこの研究分野では検討されたことのない分野である氷結防止及びその除去のために用いると、従来のものに比べて顕著な効果を奏することを見出し、本発明に至ったものである。
【0015】
上記のような本発明について、より具体的には下記のような手法を採用する。即ち本発明に係る氷結防止除去装置は、前記課題を解決するため、絶縁体表面に設けた表面側電極と、前記絶縁体裏面に設けた裏面側電極とを備え、前記表面側電極と裏面側電極に交流電界を印可して表面側電極から表面プラズマを発生させる表面プラズマ発生装置を用い、前記発生した表面プラズマにより、表面側電極を設けている面における結露、氷結を防止し、或いは結露、氷結を除去することを特徴とする。
【0016】
前記表面プラズマ発生装置を鏡に用い、前記鏡の導電性反射層を表面プラズマ発生装置の裏面側電極として用い、その鏡はカーブミラーとし、また前記鏡面プラズマ発生装置を窓ガラスに用い、その際乗り物のフロントガラスに用いる。更にこの表面プラズマ発生装置を翼に用い、その際には翼の剥離防止を兼用するようにしてもよい。また前記表面側電極は同心円状に配置し、また櫛歯状に配置し、或いは格子状に配置する。更に、前記表面プラズマは受光素子により発電した電気エネルギーを用いる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成したので、表面プラズマによって物体表面の結露及び結氷を防止し、また発生した結露及び結氷を容易に除去することができる。その際は表面プラズマジェットで誘起される誘導気流も有効に利用することができる。特に表面プラズマによる氷結防止除去は、物体自体を加熱する必要が無く、物体表面部分に集中してエネルギーを供給することができ、効率の良い氷結防止除去作用を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は物体表面の氷結防止及び除去を容易に且つ効率的に行うという課題を、絶縁体表面に設けた表面側電極と、前記絶縁体裏面に設けた裏面側電極とを備え、前記表面側電極と裏面側電極に交流電界を印可して表面側電極から表面プラズマを発生させる表面プラズマ発生装置を用い、前記発生した表面プラズマにより、表面側電極を設けている面における結露、氷結を防止し、或いは結露、氷結を除去することによって実現した。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明を路側等に設置されているカーブミラー1の氷結防止除去に用いた例を示し、同図(a)は表面プラズマにより氷結を防止し、除去する氷結防止除去装置2の概要を示している。また、同図(b)にはカーブミラー1のミラー表面3に表面プラズマ発生用の表面側電極4を設けた一実施例を示し、同図(c)はカーブミラー1の全体の斜視図を示し、(d)は断面図を示している。
【0020】
本発明による表面プラズマを用いたカーブミラー1の氷結防止除去装置2は図1(a)にその概要を示すように、各種材料からなるフレーム5によって凸面鏡をなすガラス層からなる絶縁体6とその裏に形成した反射層からなる裏面側電極7を備えたミラー8を支持している。同図(b)に示すように同心をなす多重のリング状の表面側電極4と、各リング状の表面側電極4を結線する結線部9を備え、ガラス層の裏側に設けられる反射層をそのまま裏面側電極7として用いている。なお、ミラーの反射層として通常用いられる銀のコーティングと銅の保護層は良好な導電性を有するのでこれをそのまま裏側電極として用いることができるが、別途導電性の裏面側電極を設けても良い。
【0021】
また、表面側電極としては透明電極であるならば任意のものを用いることができるが、各種の分野で用いられている透明なITO電極を蒸着して用いても良い。表面側電極4の電極縁からは図1(d)のような表面プラズマ17を発生し、互いに隣接する表面側電極からのプラズマが互いに交差できる程度の表面プラズマを発生させる。その際必要に応じて付与する電界を強くして図8(a)のように表面から立ち上がるプラズマを発生させても良く、特に氷結が甚だしいときにはそのプラズマにより氷結部分の裏側からプラズマを立ち上げて氷結を溶融させることもできる。
【0022】
上記のような表面側電極4と裏面側電極7に対して、図1(a)に示すようにパルス電流供給源11から図1(a)の上部に示すようなパルス電流を供給する。なお、このとき供給するパルス電流としては、例えば前記図8(b)(c)に示すような交流パルスを供給しても良い。またこのとき、表面側電極4の結線部9の延長部分を裏面側に導き、その端子と裏面側電極7に接続する端子とにパルス電流供給源11からパルス電流を供給することができる。図1の例においてはバッテリ12の直流電流をパルス電流供給源11でパルス電流に変換し、且つセンサ13の信号に応じた出力を行う制御装置14の制御信号により、パルスの全体の通電幅の制御を行い、デューティー比制御を行うことができるようにしている。
【0023】
本発明の作用を確かめる実験においては図2に示すように、ガラス板18の表面に互いに対向する表面側電極19、19を形成し、ガラス板18の裏側に裏面側電極20を形成して、表面側電極19と裏面側電極20との間に、図1(a)に示すように、40,000cycleのパルス電流を2秒間供給し、4秒間の休止期間の後同様のパルス電流を供給する作動を継続した。その結果、−18度C程度の環境下で、ガラス板18の表面に予め形成した氷21を、表面電極19、19間で発生する表面プラズマによって除去することができ、そのときの除去の態様は、表面プラズマが発生していない部分と明確に差異を生じ、効果的に氷結が除去できることを確認した。
【0024】
図1(a)の例においては、直流電源であるバッテリ12には充電装置としての受光素子15を接続しており、受光素子15が太陽光を受光して発電を行うことができる状態において、その発電による電流をバッテリ12に蓄える。それにより特に夜間等カーブミラーの表面に氷結が生じやすい時に昼間時に蓄えた電気エネルギーによって、前記のような交流電界パルスを供給し、同様に表面側電極4からミラー表面3に沿って表面プラズマを発生させる。
【0025】
このような表面プラズマによって、ミラーの表面の氷結を防止し、また氷結を生じているときにはこれを除去することができる。特にセンサ13をミラー表面の温度センサとし、制御装置14によってミラー表面温度が0度C以下になったときに、ミラー表面が氷結する可能性がある、として両電極に通電するように制御することができる。また、その後センサ13により表面温度が上昇したことを検出したとき、或いはタイマーにより通電後所定時間が経過したことを検出したとき、その通電を停止するようにしても良い。
【0026】
また、無線設備を設けることにより、道路管理センター等において気象条件に対応して通電制御を行うようにしても良い。更に、前記実施例においてはバッテリ12を用いる例を示したが、これを用いることなく外部の電灯線等を引き込み、これを前記のような所定のパルス電流或いは交流パルスに成形して供給しても良い。
【0027】
図1に示すカーブミラー1の表面側電極4は同心円状に配置した例を示したが、例えば図3に示すように渦巻き状の表面側電極23としても良く、また図4に示すように周囲の結線電極24に対して互いに平行な表面側電極25を配置しても良く、更には縦横の格子状に表面電極を配置しても良い。
【0028】
上記のように、カーブミラー1の表面に透明な表面側電極4を蒸着等により設け、裏面側電極7としてミラーの反射層を利用し、これらの電極に所定のパルス電流を供給することにより、ミラーの表面3に対する氷結を防止し、また既に氷結が生じているときにはこれを除去することができる。特にプラズマにより発生する誘導気流によって、送風ファンと同様に作動し、更に大きな気流を発生しない熱線を用いたものより効果的に除去を行うことができる。このように、ミラーの反射層を裏面側電極として利用するときには別途裏面側電極を設ける必要が無く、安価に、且つ容易に表面プラズマを発生させることができる。なお、前記のような透明電極としてのITOは透明性はよいが効果であるため、ミラーの性能が悪化しない程度の細い金属線を用いても良い。
【0029】
特に、表面プラズマはミラーの表面のみを加熱し、熱容量の大きなミラーのガラス層を加熱する必要がないため、ミラーの表面のみに対して熱を供給することができ、極めて効率的な氷結防止及び除去を行うことができる。その際、必要に応じてミラーの表面から立ち上がるプラズマを生じさせることにより、表面上に堆積した氷結部分も効率的に溶解除去することもできる。
【実施例2】
【0030】
図5には本発明を車両のフロントガラスに適用した例を示している。図5に示す例においては、同図(c)のような自動車31のフロントガラス32に対して、その表面に同図(b)に概要を示す透明な表面側電極33を設け、同図(a)に示すように絶縁体34としてのガラス層を挟んで裏側、即ち車室側に透明な裏面側電極35を設ける。これらの透明電極は、前記と同様に透明電極として多用されているITO電極を用いることができる。フロントガラスの前面側に設ける表面側電極33は種々の態様で設けることができるが、図示の例では略水平方向に平行に配置し、各電極の両端を全て結線電極40で連結した構成を採用している。
【0031】
このフロントガラス32の曇り止め、或いは結露防止及び除去、更には氷結防止及び除去に際して、前記実施例と同様に図5(a)に示すような表面側電極33と裏面側電極35にパルス電流供給源36を接続し、このパルス電流供給源36に対して車両のバッテリ37から電流を供給可能としている。また、前記実施例と同様にフロントガラスの表面の状態を検出するセンサ39の信号に応じた出力を行う制御装置38の制御信号により、前記交流パルスの全体の通電幅の制御を行い、デューティー比制御を行うことができるようにしている。
【0032】
なお、車両に用いられるバッテリ37は通常12V或いは24Vの直流電源であるが、本発明者等はこの電源を用いた表面プラズマ発生装置を試作し、その装置により氷結を除去できることを確認した。この装置により、従来リヤガラス等に広く用いられている熱線式ヒーターと比較して、ガラス全体を加熱する必要がなく、またプラズマにより誘導気流を発生させることができ、送風ファンを必要としないため、効率的に結露及び氷結の防止と除去を行うことができる。
【0033】
図5に示す例においては互いに略平行な表面側電極33の両側を結線電極40で連結した例を示したが、その他例えば図6(a)に示すように、互いに平行な表面側電極41の片側のみを結線電極42で連結しても良く、また、図6(b)に示すような格子状表面側電極43としても良い。いずれの場合も図6(c)に示すように、絶縁体としてのガラス44の表面側に表面側電極43、裏面側に裏面側電極45が配置され、両電極間にパルス電流を供給することにより表面プラズマ46が発生する。
【0034】
なお、上記の例においては自動車のフロントガラスに本発明を適用した例を示したが、自動車のリヤガラス、サイドミラー等に同様に実施することができる。また前記のような自動車に限らず、高速列車の窓、飛行機等の各種乗り物の窓、更にはビルや一般家庭の建物の窓における氷結や結露の防止及びそれらの除去のために同様に適用することができる。
【実施例3】
【0035】
図7には本発明を翼に適用した例を示す。例えば飛行機の翼には駐機中の結氷や飛行中の結氷等、翼に氷結を生じることがあり、翼の特性が大きく低下するため飛行性能に大きな影響を与え危険である。そのため例えば翼において結氷を生じやすい翼前縁内側にエンジンの排気ガスを導いて加熱する等の手法が用いられることもある。しかしながら翼内部には燃料タンクが設けられ、このような手法は好ましくない。そのため本発明においては前記のような表面プラズマを用いた氷結防止、除去作用を翼に用いるたものである。
【0036】
即ち、図7(a)に示す例においては、翼50の表面全域に表面プラズマ発生用の表面側電極51を格子状に設けている。それにより翼の全面において氷結の発生を防止し、また付着した氷結を除去することができる。図7(b)には翼50において特に氷結の発生しやすい翼前縁部52に表面プラズマ発生用の表面側電極53を配置し、更に同図の例では前記図8(d)と同様に、翼の剥離防止用の表面プラズマアクチュエータとして機能する表面側電極54を配置している。なお、翼の剥離防止をより確実に行うために、前記氷結防止除去装置としての表面プラズマより強力なものとするために、この表面側電極部分を独立させ、別途の交流パルス電流発生源から電力を供給するようにしても良い。
【0037】
上記のように翼における氷結防止、及び氷結除去作用は、前記実施例の飛行機の翼以外に風力発電機の翼のように、大型で室外において用いられる翼にも好適に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は上記のような鏡、窓、翼における氷結防止及び除去の他、一般家庭用、或いは業務用の冷蔵、冷凍庫、エアコン等にも氷結の発生しやすい部分に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明をカーブミラーに適用した実施例を示す図である。
【図2】表面プラズマによりガラス表面の氷結除去を行った実験装置、及びその結果を表す図である。
【図3】表面側電極の他の例を示す図である。
【図4】表面側電極の更に他の例を示す図である。
【図5】本発明を車のフロントガラスに適用した実施例を示す図である。
【図6】(a)(b)は表面側電極の他の例を示す図である。
【図7】本発明を翼に適用した実施例を示す図である。
【図8】従来から研究されている表面プラズマ発生装置とその適用例を示す図である。
【図9】従来から提案されている各種の表面プラズマ発生用電極の例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 カーブミラー
2 氷結防止除去装置
3 ミラー表面
4 表面側電極
5 フレーム
6 絶縁体
7 裏面側電極
8 ミラー
9 結線部
11 パルス電流供給源
12 バッテリ
13 センサ
14 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体表面に設けた表面側電極と、前記絶縁体裏面に設けた裏面側電極とを備え、前記表面側電極と裏面側電極に交流電界を印可して表面側電極から表面プラズマを発生させる表面プラズマ発生装置を用い、
前記発生した表面プラズマにより、表面側電極を設けている面における結露、氷結を防止し、或いは結露、氷結を除去することを特徴とする氷結防止除去装置。
【請求項2】
前記表面プラズマ発生装置を鏡に用い、前記鏡の導電性反射層を表面プラズマ発生装置の裏面側電極として用いることを特徴とする請求項1記載の氷結防止除去装置。
【請求項3】
前記鏡はカーブミラーであることを特徴とする請求項2記載の氷結防止除去装置。
【請求項4】
前記表面プラズマ発生装置を窓ガラスに用いたことを特徴とする請求項1記載の氷結防止除去装置。
【請求項5】
前記窓ガラスは乗り物のフロントガラスであることを特徴とする請求項4記載の氷結防止除去装置。
【請求項6】
前記表面プラズマ発生装置を翼に用いたことを特徴とする請求項1記載の氷結防止除去装置。
【請求項7】
前記表面プラズマ発生装置を表面プラズマアクチュエータとして翼の剥離防止に兼用したことを特徴とする請求項6記載の氷結防止除去装置。
【請求項8】
前記表面側電極は、同心円状に配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の氷結防止除去装置。
【請求項9】
前記表面側電極は、櫛歯状をなすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の氷結防止除去装置。
【請求項10】
前記表面側電極は、格子状をなすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の氷結防止除去装置。
【請求項11】
前記表面プラズマは受光素子により発電した電気エネルギーを用いるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の氷結防止除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−159336(P2008−159336A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345130(P2006−345130)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】