説明

洗浄組成物、洗浄方法、及び、半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板のタングステンの腐食を抑制でき、かつ、半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性に優れた洗浄組成物、並びに、前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法及び洗浄方法を提供すること。
【解決手段】(成分a)水、(成分b)糖、(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩、(成分d)第4級アンモニウム化合物、並びに、(成分e)有機酸、を含み、pHが6〜9であることを特徴とする半導体基板洗浄用の洗浄組成物。前記洗浄組成物を用いた洗浄方法、及び、半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄組成物、洗浄方法、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造において、大規模化、高密度化、微細化が進んでいる。集積回路の製造には、ポジ型又はネガ型のフォトレジストを使用した、リソグラフィ工程が採用されている。半導体基板に塗設されたレジスト膜は、フォトマスクなどの露光原版を通して露光される。レジスト膜中に光化学変化により生じたパターンは、現像により露光原板に対応した形状を有するレジストパターンとなる。レジストパターンの耐エッチング性を向上するために、必要に応じて、ポストベークやUVキュアリングが施される。得られたレジストパターンをマスクにして、半導体基板のエッチングやイオン注入が施される。
【0003】
レジストパターンをマスクとして、プラズマエッチングにより半導体基板上の金属層や絶縁層をエッチングする際には、フォトレジストや金属層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じる。プラズマエッチングにより基板上に生じた残渣を除去するために、洗浄組成物を用いた洗浄が行われる。
【0004】
また、不要となったレジストパターンは、その後半導体基板から除去される。除去する方法には、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法と、アッシングによる乾式の方法とがある。アッシングとしては、例えば、プラズマアッシングが挙げられる。プラズマアッシングによる方法では、真空チャンバー内において、酸素プラズマに電場を与えて電界方向に加速してレジストパターンを灰化する。アッシングにより基板上に生じた残渣を除去するために、洗浄組成物が使用される。
【0005】
特許文献1には、レジスト膜剥離後の金属配線を有する基体の洗浄に用いられるリンス液であって、防食剤及び水を含有し、前記防食剤が、糖アルコール化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の中から選ばれる少なくとも1種であるリンス液が記載されている。
特許文献2には、レジストの側壁保護堆積膜を除去するためのレジスト用剥離液であって、(a)糖アルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンよりなる群から選ばれる物質少くとも1種と(b)アルコールアミンと(c)水と必要に応じさらに、(d)第4級アンモニウム水酸化物とを含み、前記(a)がジメチルスルホキシドである場合は、第4級アンモニウム水酸化物を含むことを特徴とする、前記レジスト用剥離液が記載されている。
特許文献3には、ポスト−エッチ残留物、フォトレジスト残留物の除去に用いられるリンス液であって、水と、実質的にヒドロキシルアミン、少なくも1種類のヒドロキシアンモニウム塩、少なくも1種類の水溶性有機酸、少なくも1種類のアミノ酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくも1種類の水溶性腐食インヒビタとを含むことを特徴とするリンス液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206301号公報
【特許文献2】特許第3302120号公報
【特許文献3】特表2001−517863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体基板のタングステンの腐食を抑制でき、かつ、半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性に優れた洗浄組成物、並びに、前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法及び洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記<1>、<17>又は<20>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<16>、<18>、<19>、<21>及び<22>と共に以下に示す。
<1>(成分a)水、(成分b)糖、(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩、(成分d)第4級アンモニウム化合物、並びに、(成分e)有機酸、を含み、pHが6〜9であることを特徴とする半導体基板洗浄用の洗浄組成物、
<2>成分aが、洗浄組成物の全重量に対して50〜99.5重量%含まれる、<1>に記載の洗浄組成物、
<3>成分bが、炭素数4以上の糖アルコールである、<1>又は<2>に記載の洗浄組成物、
<4>成分bが、ソルビトール、キシリトール、及び、エリトリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<5>成分cが、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、及び、ヒドロキシルアミンリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<6>成分dが、テトラアルキルアンモニウム水酸化物である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<7>成分dが、洗浄組成物の全重量に対して0.01〜20.0重量%含まれる、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<8>成分eが、1官能性、2官能性又は3官能性有機酸である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<9>成分eが、乳酸、クエン酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、及び、りんご酸よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<10>成分eが、洗浄組成物の全重量に対して0.01〜20.0重量%含まれる、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<11>さらに(成分f)水溶性有機溶剤を含有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<12>成分fが、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、2−ブタノール、ピナコール、及び、1−アミノ−2プロパノールよりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、<11>に記載の洗浄組成物、
<13>さらに(成分g)アミノ基含有カルボン酸を含有する、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<14>成分gが、ヒスチジン及び/又はアルギニンである、<13>に記載の洗浄組成物、
<15>半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣除去用である、<1>〜<14>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<16>アルミニウム、銅又はタングステンを含む金属膜のプラズマエッチング後に生じた残渣除去用である、<1>〜<15>のいずれか1つに記載の洗浄組成物、
<17><1>〜<16>のいずれか1つに記載の洗浄組成物を用意する工程、並びに、前記洗浄組成物により、半導体基板を洗浄する洗浄工程を含む、洗浄方法、
<18>前記半導体基板が、アルミニウム、銅又はタングステンを含む、<17>に記載の洗浄方法、
<19>前記洗浄工程が、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する洗浄工程である、<17>又は<18>に記載の洗浄方法、
<20>半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、<1>〜<16>のいずれか1つに記載の洗浄組成物により、半導体基板を洗浄する洗浄工程を含む、半導体装置の製造方法、
<21>前記半導体基板が、アルミニウム、銅、又は、タングステンを含む、<20>に記載の半導体装置の製造方法、
<22>前記洗浄工程が、前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する洗浄工程である、<20>又は<21>に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体基板のタングステンの腐食を抑制でき、かつ、半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性に優れた洗浄組成物、並びに、前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法及び洗浄方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様における通常時の配線パターンを示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様におけるミスアライメント時の配線パターンを示す概略断面図である。
【図3】アッシング後におけるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣が付着した状態を示す半導体装置の概略断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の他の一実施態様における概要を示す工程断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法のさらに他の一実施態様における概要を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
半導体装置の製造プロセスにおいては、レジストパターン等をマスクとして用いたプラズマエッチングにより半導体基板上の金属層、半導体層、絶縁層などをエッチングし、金属層や半導体層をパターニングしたり、絶縁層にビアホールや配線溝等の開口部を形成することが行われる。
上記プラズマエッチングにおいては、マスクとして用いたレジストや、エッチングされる金属層、半導体層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにプラズマエッチングにより生じた残渣を「プラズマエッチング残渣」と称する。
【0012】
また、マスクとして用いたレジストパターンは、エッチング後に除去される。レジストパターンの除去には、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法、又は例えばプラズマ、オゾンなどを用いたアッシングによる乾式の方法が用いられる。
上記アッシングにおいては、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣が変質した残渣や、除去されるレジストに由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにアッシングにより生じた残渣を「アッシング残渣」と称する。
【0013】
このようなエッチング後の残渣(Post Etch Residue)であるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣は、洗浄組成物を用いて洗浄除去される。本発明の洗浄組成物は、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシングにより生じたアッシング残渣を除去するためのものである。
本発明の洗浄組成物は、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣のいずれか一方を除去するために使用することができるが、プラズマエッチングに引き続いて行われるプラズマアッシング後において、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去するために使用することが好ましい。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り、「A以上B以下」を意味し、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味する。
【0015】
(洗浄組成物)
本発明の洗浄組成物は、(成分a)水、(成分b)糖、(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩、(成分d)第4級アンモニウム化合物、並びに、(成分e)有機酸、を含み、pHが6〜9であることを特徴とする半導体基板洗浄用の洗浄組成物である。好ましくは、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣除去用の洗浄組成物である。
本発明の洗浄組成物は、後述するように、アルミニウム、銅、又は、タングステンを含む金属膜のプラズマエッチング後に生じたプラズマエッチング残渣除去用であることが好ましい。具体的には、半導体装置の配線構造における配線、配線間を接続するビア、又は、ワイヤボンディング等により外部電極が接続されるパッドを形成する際のプラズマエッチング又はプラズマアッシングにより生じた残渣の除去に好適に使用することができる。
以下、本発明の洗浄組成物に必須の(成分a)〜(成分e)及びpHについて順に説明する。
【0016】
<(成分a)水>
本発明の洗浄組成物は、溶媒として水を含有する水溶液である。水の含有量は、洗浄組成物全体の重量に対して、50重量%以上が好ましく、60〜99.5重量%がより好ましく、65〜99重量%であることがさらに好ましい。このように、水を主成分とする洗浄組成物は、従来の有機溶剤の比率の高い洗浄組成物と比較して、環境に害を与えない点で好ましい。
水としては、半導体製造に使用される超純水が好ましい。
【0017】
<(成分b)糖>
本発明の洗浄組成物は、(成分b)糖を含有する。糖を含有しない場合、洗浄組成物に接触したタングステン及びその合金が腐食されることがある。
ここで、糖とは、少なくとも1つのアルデヒド基(−CHO)、及び、2以上のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシアルデヒド(アルドース)、又は、少なくとも1つのカルボニル基(−C(=O)−)、及び、2以上のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシケトン(ケトース)をいう。
【0018】
糖には、単糖類、2つの単糖類が結合した二糖類、3〜10個の単糖類が結合したオリゴ糖、10個を超える単糖類が結合した多糖類が含まれる。
単糖類としては、アルデヒド基を持つアルドース、ケトン基を持つケトースが挙げられ、炭素数3〜7のものが好ましい。
アルドースとしては、グリセルアルデヒド等のアルドトリオース;エリトロース、トレオース等のアルドテトロース;リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース;アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース等が挙げられる。
ケトースとしては、ジヒドロキシアセトン等のケトトリオース;エリトルロース等のケトテトロース;キシルロース、リブロース等のケトペントース;プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。本発明においては、単糖類としては、アルドヘキソースが好ましく、グルコースがより好ましい。
単糖類には、単糖類のアルデヒド基又はケトン基を還元した糖アルコール(アルジトール)、単糖を臭素水を用いて酸化したアルドン酸、単糖を硝酸を用いて酸化したアルダル酸等の単糖の酸化物、アセタールやケタールの形をとっている配糖体、糖のヒドロキシ基の少なくとも1つがエーテルに変換されたエーテル化合物、糖のヒドロキシ基の少なくとも1つがエステル化されたエステル化合物、単糖のC1位及びC2位のヒドロキシ基とフェニルヒドラジン試薬等とを縮合したオサゾン等の単糖の誘導体が含まれ、中でも、糖アルコールが好ましい。
【0019】
糖には、二糖類が含まれる。単糖類のアノマー炭素(単糖中、二つの酸素原子に結合している炭素原子)は、アルコールのヒドロキシ基と反応してグリコシド(配糖体)と呼ばれるアセタールを形成する。このヒドロキシ基が単糖類のヒドロキシ基であれば、配糖体は二糖類となる。アノマー炭素は、他の糖のどのヒドロキシ基とも反応し、二糖を形成する。本発明においては、1,4’−結合したグリコシド結合、1,6’−結合したグリコシド結合、又は、1,1’−結合したグリコシド結合を有する二糖が好ましい。二糖類を形成する単糖としては、前記単糖類が好ましく挙げられる。
二糖類の具体例としては、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、セロビオース、トレハロース等が挙げられる。
【0020】
糖には、3〜10個の単糖類がグリコシド結合により結ばれて形成されたオリゴ糖、10個を超える単糖類がグリコシド結合により結ばれて形成された多糖類が含まれる。
オリゴ糖としては、グルコースが5個以上結合したシクロデキストリン(CD)が好ましく、6〜8個結合したものがより好ましく、7個結合したβ−シクロデキストリン(β−CD)がさらに好ましい。
多糖類としては、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、アラビノガラクタン、ペクチン、樹液(ゴム)等の植物多糖類;アルギン酸、ポリウロン酸塩、寒天、カラギーナン、硫酸化ガラクタン等の海藻多糖類;バクテリア多糖;グルカン、マンナン等の菌類と地衣類の多糖;グリコーゲン、キチン等の哺乳類多糖;デキストラン、カードラン、プルラン、キサンタン等の微生物由来の多糖が挙げられる。
【0021】
タングステン及びその合金の防食性に優れること及び洗浄組成物の保存安定性に優れることから、前記糖は、前記単糖類に由来する糖アルコールであることが好ましい。ここで、糖アルコールには、アルドース及びケトースのカルボニル基が還元された鎖状の多価アルコール(アルジトール)、及び、環式糖アルコール(シクリトール)が含まれる。本発明においては、糖は、鎖状の多価アルコールであることが好ましい。
前記糖アルコールの炭素数は、タングステン及びその合金の防食性に特に優れることから、炭素数4以上が好ましく、炭素数4〜8がより好ましく、炭素数4〜6がさらに好ましく、炭素数5又は6が特に好ましい。
また、前記糖アルコールは、ヒドロキシ基を分子内に4個以上有する4価以上の糖アルコールであることが好ましく、4〜8価の糖アルコールがより好ましく、4〜6価の糖アルコールがさらに好ましく、5価又は6価の糖アルコールが特に好ましい。
【0022】
糖アルコールとしては、グリセリン等のトリトール(C35(OH)3);エリトリトール、(D−又はL−)トレイトール等のテトリトール(C46(OH)4);(D−又はL−)アラビニトール、キシリトール、リビトール(アドニトール)等のペンチトール(C57(OH)5)、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、ソルビトール(D−グルシトール)、マンニトール等のヘキシトール(C68(OH)6);ボレミトール、ペルセイトール等のヘプチトール(C79(OH)7);D−エリトロ−D−ガラクト−オクチトール等のオクチトール(C810(OH)8)が挙げられ、中でも、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトールが好ましく、エリトリトール、キシリトール、ソルビトールがより好ましく、キシリトール、ソルビトールがさらに好ましい。
【0023】
タングステン及びその合金の腐食防止に優れる糖の適切な含有量範囲が存在し、少な過ぎても、多過ぎても腐食防止効果を発揮しないことがある。糖の含有量は、本発明の洗浄組成物の全重量に対して、0.1〜4.0重量%が好ましく、0.2〜3.0重量%がより好ましく、0.5〜2.0重量%がさらに好ましい。
【0024】
<(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩>
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つのヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含有する。ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含有しない場合には、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去できない場合がある。
ヒドロキシルアミンの塩は、ヒドロキシルアミンの無機酸塩又は有機酸塩であることが好ましく、Cl、S、N、Pなどの非金属が水素と結合してできた無機酸の塩であることがより好ましく、塩酸、硫酸、硝酸いずれかの酸の塩であることがさらに好ましい。
本発明に使われるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミン硝酸塩(HANとも称される。)、ヒドロキシルアミン硫酸塩(HASとも称される。)、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などが例示できる。
また、ヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、具体的には、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩が例示できる。また、ヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミンフッ化水素酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン硫酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン硝酸塩なども例示できる。
これらヒドロキシルアミンの塩のうち、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などの無機酸塩が、アルミニウムや銅、チタンなどの金属に対して不活性なので好ましい。特に、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が好ましい。
これらヒドロキシルアミン及び/又はその塩は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
ヒドロキシルアミン及び/又はその塩は、本発明の洗浄組成物の全重量に対して、0.01〜30重量%の範囲内で含有させることが好ましく、0.1〜15重量%含有させることがより好ましく、1〜10重量%含有させることが特に好ましい。上記の範囲内であると、ヒドロキシルアミン及び/又はその塩は、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去を容易にし、金属基板の腐食を防止する。
【0026】
<(成分d)第4級アンモニウム化合物>
本発明の洗浄組成物は、(成分d)第4級アンモニウム化合物を含有する。
前記第4級アンモニウム化合物としては、第4級アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムフッ化物、第4級アンモニウム臭化物、第4級アンモニウムヨウ化物、第4級アンモニウムの酢酸塩、第4級アンモニウムの炭酸塩などが挙げられ、中でも、第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
本発明の洗浄組成物の第4級アンモニウム化合物として使われる第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましく、低級(炭素数1〜4)アルキル基又は置換基としてヒドロキシ基もしくは炭素数12以下の芳香族基を有する置換アルキル基によって置換されたテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、ベンジルのいずれかのアルキル基又は置換アルキル基を4つ有するテトラアルキルアンモニウム水酸化物が挙げられる。
【0027】
テトラアルキルアンモニウム水酸化物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)などが挙げられる。
さらに第4級アンモニウム水酸化物としてトリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)なども挙げられる。それに加え、アンモニウム水酸化物と1つあるいはそれ以上の第4級アンモニウム水酸化物の組み合わせも使用することができる。
また、後述するような第4級アンモニウム塩系界面活性剤も例示できる。
これらの中でも、TMAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリンがより好ましく、TMAH、TBAHが特に好ましい。
これら第4級アンモニウム水酸化物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
第4級アンモニウム化合物は本発明の洗浄組成物のpHを調整するために適宜、量を調整して使用される。
第4級アンモニウム化合物の含有量は、本発明の洗浄組成物の全重量に対して、0.01〜20.0重量%であることが好ましく、1.0〜10.0重量%であることがより好ましい。
【0029】
<(成分e)有機酸>
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つの有機酸を含有する。有機酸を含有しない場合には、半導体基板のタングステンの腐食抑制性、半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性が低下することがある。
該有機酸は、1官能性、2官能性又は3官能性有機酸であることが好ましい。有機酸は、金属の腐食防止剤として役立つ。
有機酸の中でも、カルボン酸が、アルミニウム、銅、タングステン、及び、それらの合金の金属腐食を有効に防止するため好ましく、ヒドロキシ基を有するヒドロキシカルボン酸が金属腐食の防止に特に有効であるためより好ましい。カルボン酸はこれらの金属に対してキレート効果を有する。好ましいカルボン酸には、モノカルボン酸及びポリカルボン酸が含まれる。カルボン酸としては、これらに限定されないが、乳酸、クエン酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸、バレリアン酸、イソバレリアン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、グルコン酸、ジグリコール酸、アセトヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、フタルヒドロキサム酸、安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸及びそれらの混合物が例示できる。中でも、乳酸、クエン酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、及び、リンゴ酸が好ましく、ヒドロキシカルボン酸がより好ましく、リンゴ酸、クエン酸、乳酸がさらに好ましい。
なお、カルボン酸は、構成元素をC、H、及びOのみとするものであることが好ましく、アミノ基を有しないことがより好ましい。
また、これら有機酸は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、金属の腐食を効果的に防止する観点から、2種以上を併用することが好ましい。
【0030】
有機酸は、本発明の洗浄組成物の全重量に対して、好ましくは0.01〜20.0重量%の間で加えられ、より好ましくは0.05〜10.0重量%加えられ、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%加えられる。
【0031】
<pH>
本発明の洗浄組成物のpHは6〜9であり、7.0〜8.5であることが好ましく、7.0〜8.4であることがより好ましく、7.1〜8.0であることがさらに好ましい。pHが上記の数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、及び、アッシング残渣を十分に除去しながら金属の防食を両立することができる。このpH領域にすることにより、酸化ケイ素と金属層をプラズマエッチングしてビアパターンを形成した場合の残渣を完全に除去することができる。
pHの測定方法としては、市販のpHメーターを用いて測定することができる。
洗浄組成物を所定のpHに調整するためには、第4級アンモニウム水酸化物、及び、有機酸の添加量を調節した滴定により行うことができる。
【0032】
本発明において、pHの選定は非常に重要である。残渣の洗浄に関与しているヒドロキシルアミンの共役酸のpKaは約6であり、洗浄組成物のpHが6未満になると洗浄性は落ちてしまう。一方、pHが7以上になると洗浄性が飛躍的に向上する。残渣の洗浄性能のみを考えた場合、pHは7以上が良く、高ければ高いほど洗浄性は向上する。しかしながらpHが高すぎると腐食が生じてしまい、pHが9を超えると満足する防食性能を達成することができない。
【0033】
本発明の洗浄組成物は、上記の成分(成分a)〜(成分e)以外に、以下に列挙するような1又は2以上の任意成分(成分f)〜(成分j)を含有することができる。
【0034】
<(成分f)水溶性有機溶剤>
本発明の洗浄組成物は、(成分f)水溶性有機溶剤を含有していてもよい。本発明の洗浄組成物は水溶性有機溶剤を含有することにより、半導体基板のタングステンの腐食抑制性に優れ、また、特に半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性に優れる。
なお、本発明における水溶性有機溶剤は、成分b〜成分eに該当する化合物以外の化合物であるものとする。
また、本発明における「水溶性」とは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であることを示し、好ましくは1.0g/L以上である。
【0035】
水溶性有機溶剤としては、前記糖アルコール以外の第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物が挙げられる。
前記ヒドロキシ化合物としては、第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するものが好ましく、特に限定されるものではないが、少なくとも第2級水酸基を有する化合物がより好ましく、少なくとも第2級水酸基と、第1級乃至第3級水酸基のいずれかとを有する化合物がさらに好ましい。なお、前記ヒドロキシ化合物は、カルボキシ基を有さないものである。
また、前記ヒドロキシ化合物は、モノアルコール化合物であってもポリアルコール化合物であってもよいが、ジオール化合物であることが好ましい。
洗浄組成物に前記ヒドロキシ化合物を含有させることにより、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣中の有機物を十分に溶解させることができ、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を十分に洗浄除去することができる。特に、半導体装置におけるパッドを露出する開口部を絶縁膜に形成する際に生じるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を十分に洗浄除去することができる。
【0036】
前記ヒドロキシ化合物としては、そのハンセンの溶解度パラメータ(HSP:Hansen Solubility Parameter)の値(HSP値)が、溶解すべきプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣のHSP値に近い又はこれと同等であるものを選択することが好ましい。
【0037】
前記ヒドロキシ化合物の具体例としては、ジプロピレングリコール(1,1’−オキシジ(2−プロパノール))、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−ブタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、ピナコール、1−アミノ−2−プロパノールなどが挙げられ、中でも、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0038】
また、前記ヒドロキシ化合物の他の水溶性有機溶剤を含有してもよく、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、エーテル系、アミド系、含硫黄系溶剤で、さらに好ましくは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。水溶性有機溶剤は単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
洗浄組成物中における水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄組成物の全重量に対して、好ましくは0〜40重量%の濃度で使用され、より好ましくは0〜20重量%の濃度で使用される。さらに好ましくは、0.0001〜15重量%の濃度で使用される。水溶性有機溶剤を洗浄組成物に添加することで金属膜の腐食を防止することができるため好ましい。
【0040】
<(成分g)アミノ基含有カルボン酸>
本発明の洗浄組成物は、アミノ基含有カルボン酸を含有してもよい。アミノ基含有カルボン酸は、金属腐食を効率よく防止する点で好ましい。
アミノ基含有カルボン酸としては、グリシン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、システイン、チロシン、フェニルアラニンなどのアミノ酸、及び/又は以下から成るアミノポリカルボン酸塩群{エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸塩(DHEDDA)、ニトリロ三酢酸塩(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩(HIDA)、β−アラニン二酢酸塩、アスパラギン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、イミノ二コハク酸塩、セリン二酢酸塩、ヒドロキシイミノ二コハク酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など}などが挙げられる。
なお、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)塩などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのアミノ基含有カルボン酸の中でも、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、EDTA、DTPA、HIDAが好ましく、アルギニン、ヒスチジンがより好ましい。
これらアミノ基含有カルボン酸は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
本発明の洗浄組成物において、アミノ基含有カルボン酸を含有させる場合、その添加量は、適宜選択できるが、本発明の洗浄組成物の全重量に対して、0.01〜5.0重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0042】
<(成分h)界面活性剤>
本発明の洗浄組成物は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。
【0043】
本発明で使用される界面活性剤としては、添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができる点、及び、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、ノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤、などを用いることができる。
中でも好ましくは、ポリアルキレンオキサイド(以下PAO)アルキルエーテル系界面活性剤で、PAOデシルエーテル、PAOラウリルエーテル、PAOトリデシルエーテル、PAOアルキレンデシルエーテル、PAOソルビタンモノラウレート、PAOソルビタンモノオレエート、PAOソルビタンモノステアレート、テトラオレイン酸ポリエチレンオキサイドソルビット、PAOアルキルアミン、PAOアセチレングリコールから選択されるポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤である。ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はポリブチレンオキサイドの重合体が好ましい。
【0044】
また、本発明で使用される界面活性剤としては、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、カチオン性界面活性剤も好ましく用いることができる。カチオン性界面活性剤として、好ましくは、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、又はアルキルピリジウム系界面活性剤である。
【0045】
第4級アンモニウム塩系界面活性剤として、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化1】

(式(1)中、X-は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、又は硝酸イオンを表す。R5は炭素数8〜18のアルキル基を表す。R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を表す。R8は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0047】
式(1)中、X-はカウンターアニオンを表し、具体的には水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、又は硝酸イオンを表す。
【0048】
式(1)中、R5は、炭素数8〜18のアルキル基(炭素数12〜18が好ましく、例えば、セチル基、ステアリル基など)である。
【0049】
式(1)中、R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシエチルなど)、アリール基(例えば、フェニル基など)、又はベンジル基を表す。
【0050】
式(1)中、R8は炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)を表す。
【0051】
式(1)で表される化合物の具体例として、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン又は水酸化物イオンでもよい。
【0052】
また、アルキルピリジウム系界面活性剤として具体的には、セチルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン又は水酸化物イオンでもよい。
【0053】
洗浄組成物中の界面活性剤の含有量は、洗浄組成物の全重量に対して、好ましくは0.0000001〜1重量%であり、より好ましくは0.000001〜0.1重量%である。界面活性剤を洗浄組成物に添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0054】
<(成分i)腐食防止剤>
本発明の洗浄組成物は腐食防止剤を含有してもよい。
腐食防止剤は複素環化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール及びその誘導体であることがより好ましい。前記誘導体としては、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール(DBTA)、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール(DCEBTA)、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(HEABTA)、1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール(HMBTA)が好ましい。
本発明で用いる腐食防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明で用いる腐食防止剤は、常法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。
【0055】
また、腐食防止剤の添加量は好ましくは0.01〜5重量%であり、より好ましくは0.05〜1重量%である。
【0056】
<(成分j)無機酸及び/又はその塩>
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つの無機酸及び/又はその塩を含有してもよい。
洗浄組成物に含有される無機酸及び/又はその塩により、半導体基板などの洗浄対象物におけるアルミニウムの表面を平滑化するとともに、洗浄性を向上することができる。さらに、アルミニウムの腐食を防止ないし抑制することができる。また、洗浄組成物に無機酸及び/又はその塩が含有されていることで、これらが含有されていない場合と比較して、腐食を防止ないし抑制しつつ十分な洗浄を実現できる洗浄組成物の温度範囲及び洗浄対象物の洗浄組成物への浸漬時間の範囲を拡大することができる。
本発明の洗浄組成物に使用される無機酸としては、リン酸、ホウ酸、六フッ化リン酸、及びそれらの混合物が例示できる。
また、洗浄組成物に前記無機酸の塩を使用することもでき、前記無機酸のアンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、六フッ化リン酸アンモニウム及びそれらの混合物が例示できる。
これらの中でも、リン酸、リン酸塩が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0057】
本発明の洗浄組成物には、0.01〜1.0重量%の前記無機酸及び/又はその塩を含有させることが好ましく、0.1〜0.5重量%含有させることがより好ましく、0.15〜0.3重量%含有させることがさらに好ましい。
【0058】
(洗浄方法)
次に、本発明の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法は、上記本発明の洗浄組成物を用意する工程、並びに、前記洗浄組成物により、半導体基板、好ましくは半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄する洗浄工程を含むものである。
【0059】
前記本発明の洗浄組成物を用意する工程は、好ましくは本発明の洗浄組成物を調製する工程である。本発明の洗浄組成物は、前述した必須成分である成分a〜成分e、及び、必要に応じて任意成分である成分f〜成分jを混合し、pHを調整することにより調製される。
【0060】
前記洗浄工程は、本発明の洗浄組成物により、半導体基板、好ましくは半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する工程である。
前記洗浄工程において洗浄除去されるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣は、プラズマエッチングを行うエッチング工程において、プラズマエッチングにより半導体基板上に形成されたものである。
前記エッチング工程においては、プラズマエッチングの際のマスクとしてレジストパターンが用いられる場合がある。この場合、前記エッチング工程の後、前記洗浄工程の前に、例えばプラズマ、オゾンなどを用いたアッシングにより、レジストパターンを除去するアッシング工程を行うことが好ましい。前記洗浄工程において洗浄除去されるアッシング残渣は、前記アッシング工程において、アッシングにより半導体基板上に形成されたものである。
前記半導体基板は、例えばビアや配線などの金属層が形成されたものであることが好ましく、アルミニウム、銅又はタングステンを含むものであることがより好ましい。
【0061】
前記洗浄工程における洗浄の態様は、少なくともプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣が形成された半導体基板の面を本発明の洗浄組成物に接触させる態様であれば、特に限定されるものではないが、本発明の洗浄組成物に該半導体基板を浸漬する態様が好ましい。
【0062】
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の半導体装置の製造方法について詳述する。
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、本発明の洗浄組成物により、半導体基板を洗浄する工程、好ましくは前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する洗浄工程を含むものである。具体的には、本発明の半導体装置の製造方法は、ビアホール又は配線を形成した後の半導体基板の洗浄において、本発明の洗浄組成物を適用するものであることが好ましい。
以下にいくつかの実施形態を例示する。
【0063】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法の概要について図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様における通常時の配線パターンを示す概略断面図である。
図2は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様におけるミスアライメント時の配線パターンを示す概略断面図である。
また、図3は、アッシング後におけるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣が付着した状態を示す半導体装置の概略断面図である。
【0064】
図1は、半導体基板101上の層間絶縁膜102間に形成されたタングステンプラグ104上に、配線パターン(Al合金膜110、チタン膜108及び窒化チタン膜106により形成されている構造)を有する基板100を表す。
本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法としては、まず、通常の半導体装置の製造プロセスにより、シリコンウエハ等の半導体基板101上に、トランジスタその他の素子や1層又は2層以上の配線を形成する(図示せず)。次いで、素子等が形成された半導体基板101上に、層間絶縁膜102(SiO2膜)を形成する。層間絶縁膜102の材質としては、特に制限はなく、公知の材質を用いることができる。
層間絶縁膜102上に、フォトレジスト膜(図示せず)を形成し、次いで、フォトリソグラフィーにより、開口部を有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、層間絶縁膜102をエッチングし、層間絶縁膜102に開口部(図示せず)を形成する。フォトレジスト膜を薬液を用いたウェット処理やプラズマを用いたアッシングにより除去する。
開口部を有する層間絶縁膜102の全面に、例えばCVD法により、タングステン(W)層を積層し、表面を化学的機械的研磨(CMP)により、研磨することにより、タングステンプラグ104を形成する。
【0065】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜106と、例えば膜厚約20nmのチタン膜108と、例えば膜厚約500nmのAl合金膜110とを順次積層する。なお、Al合金膜110は、例えば0.1〜5%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。
【0066】
次いで、Al合金膜110上に、フォトリソグラフィーにより、配線パターンを有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマエッチングによりAl合金膜110、チタン膜108及び窒化チタン膜106を順次エッチングする。こうして、Al合金膜110、チタン膜108及び窒化チタン膜106をパターニングし、これら導体膜よりなる配線(配線パターン、図1又は図2におけるAl合金膜110、チタン膜108及び窒化チタン膜106により形成されている構造)を形成する。
【0067】
次いで、薬液を用いたウェット処理により、マスクとして用いたフォトレジスト膜の大部分を剥離除去する。続いて、プラズマを用いたアッシング(プラズマアッシング)により、フォトレジスト膜の残部を除去する(図1参照)。
【0068】
配線を形成するためのエッチング及びフォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシングにおいては、図3に示すように、配線の上面及び側面を含む基板100の表面に、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣114が付着する。また、図3に示すような図1に対応する基板100上の構造だけでなく、図2に対応する基板100上の構造においても、同様にプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣114が付着する。このプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣114は、変質したフォトレジスト膜、Al合金膜110、チタン膜108、及び、窒化チタン膜106に由来する。
そこで、フォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、配線までが形成された基板100を洗浄する。こうして、配線までが形成された基板100の表面に付着したプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する。
これにより、図1に示すようなタングステンプラグ104上に配線パターン(Al合金膜110、チタン膜108及び窒化チタン膜106により形成されている構造)を有する基板100が得られる。
【0069】
当該基板100の一部においては、図2に示すようなタングステンプラグ104と配線パターンとの位置がずれた、すなわち、ミスアライメントが生じている場合がある。
基板100の表面に付着したプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣114の除去時において、ミスアライメントが生じている配線近傍では、タングステンプラグ104の表面が露出しており(露出部分112)、洗浄時にタングステンプラグ104が腐食されないことが重要であることを本発明者等は見いだした。
本発明の洗浄組成物を用いることにより、半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣の除去性に優れるだけでなく、半導体基板上のタングステンの腐食も抑制することができる。
【0070】
<第2実施形態>
図4は、本発明の半導体装置の製造方法の他の一実施態様(第2及び第3実施形態)における概要を示す工程断面図である。
まず、通常の半導体装置の製造プロセスにより、シリコンウエハ等の半導体基板10上に、トランジスタその他の素子や1層又は2層以上の配線を形成する。次いで、素子等が形成された半導体基板10上に、層間絶縁膜(図示せず)を形成する。
次いで、全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、例えば膜厚約500nmのAl合金膜12と、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜14とを順次積層する。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とを順次積層してなる導体膜を形成する。なお、Al合金膜12は、例えば0.1〜5%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。
次いで、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより、導体膜をパターニングする。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16を形成する。
【0071】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約500nmのシリコン酸化膜18を形成する。
次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により、シリコン酸化膜18の表面を研磨し、シリコン酸化膜18の表面を平坦化する(図4(a)参照)。
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、シリコン酸化膜18をエッチングする。このとき、シリコン酸化膜18下の窒化チタン膜14の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18に、配線16の窒化チタン膜14に達するビアホール(ビアパターン)20を形成する(図4(b)参照)。シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14の上部のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0072】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
ビアホール20を形成するためのドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいては、ビアホール20周辺の表面を含む基板表面に、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18、及び、ビアホール20底に露出した窒化チタン膜14に由来する残渣(プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣)が付着する。
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、ビアホール20までが形成された半導体基板10を洗浄する。こうして、ビアホール20までが形成された半導体基板10の表面に付着したプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する。
次いで、全面に、例えばCVD法により、タングステン膜を形成する。
次いで、例えばCMP法により、シリコン酸化膜18の表面が露出するまでタングステン膜を研磨する。こうして、ビアホール20内に、タングステンよりなるビアを埋め込む。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法の概要について、同じく図4を用いて説明する。
本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法は、配線16のAl合金膜12に達するビアホール22を形成する点で、第2実施形態による半導体装置の製造方法とは異なる。
まず、第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体基板10上に、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16、及び、シリコン酸化膜18を形成する(図4(a)参照)。
【0074】
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14をエッチングする。このとき、窒化チタン膜14下のAl合金膜12の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14に、配線16のAl合金膜12に達するビアホール22(ビアパターン)を形成する(図4(c)参照)。シリコン酸化膜18、窒化チタン膜14、及びAl合金膜12の上部のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0075】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
本実施形態の場合、ビアホール22を形成するためのドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいて、ビアホール22周辺の表面及びビアホール22の壁面を含む基板表面に、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣が付着する。本実施形態の場合、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣は、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14だけでなく、ビアホール22底に露出したAl合金膜12にも由来する。
【0076】
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、ビアホール22までが形成された半導体基板10を洗浄する。こうして、ビアホール22までが形成された半導体基板10の表面に付着したプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する。
次いで、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、ビアホール22に埋め込まれたビアを形成する。
【0077】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法の概要について図5を用いて説明する。
図5は、本発明の半導体装置の製造方法のさらに他の一実施態様(第4実施形態)における概要を示す工程断面図である。
本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板上の多層配線構造における最上部に形成されたパッド(パッド電極)を露出する開口部をパッシベーション膜などの絶縁膜に形成するものである。
【0078】
半導体基板上に形成された多層配線構造においては、積層された層間絶縁膜中に、配線パターンが形成されている。また、配線パターン間を接続するビアが層間絶縁膜中に適宜形成されている。
【0079】
図5(a)は、パッドまで形成された多層配線構造の最上部の一例を示すものである。図示するように、半導体基板(図示せず)上に形成された層間絶縁膜38中には、配線パターン44が形成されている。配線パターン44は、TiNやTi膜などのバリアメタル膜40と、バリアメタル膜40に覆われたAl膜42とを有している。
配線パターン44が形成された層間絶縁膜38上には、層間絶縁膜46が形成されている。層間絶縁膜46中には、配線パターン44に接続されたビア52が形成されている。ビア52は、窒化チタン膜などのバリアメタル膜48と、バリアメタル膜48に覆われたタングステン膜50とを有している。
ビア52が形成された層間絶縁膜46上には、ビア52を介して配線パターン44に接続されたパッド(パッド電極)60が形成されている。パッド60は、順次積層された密着膜54とAl膜56と密着膜58とを有している。密着膜54、58は、チタン/窒化チタンの積層構造又は窒化チタンの単層構造を有している。
このようにパッド60が形成された層間絶縁膜46上に、例えば高密度プラズマCVD法により、シリコン酸化膜62を形成する(図5(b)参照)。
【0080】
次いで、シリコン酸化膜62上に、例えばプラズマCVD法により、シリコン窒化膜よりなるパッシベーション膜64を形成する(図5(c)参照)。
次いで、パッシベーション膜64上に、フォトリソグラフィーにより、パッド60に達する開口部の形成領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62をエッチングする。このとき、パッド60の密着膜58及びAl膜56の上部もエッチングされ得る。こうして、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62に、パッド60を露出する開口部66を形成する(図5(d)参照)。パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0081】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
開口部66を形成するためのフォトレジスト膜の形成、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62のドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいては、開口部66周辺の表面を含む基板表面に残渣(プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣)が付着する。この残渣は、変質したフォトレジスト膜、パッシベーション膜64、シリコン酸化膜62、及び密着膜58、Al膜56などに由来する。
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、パッド60を露出する開口部66までが形成された半導体基板を洗浄する。こうして、開口部66までが形成された半導体基板の表面に付着したプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する。
【0082】
本発明の洗浄組成物によれば、前述したビアホールや配線を形成する際に半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣のみならず、パッドを露出する開口部を形成する際に半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣をも十分に洗浄除去することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、Al合金膜12を含む配線16を形成する場合について説明したが、配線の材料は上述したものに限定されるものではない。配線としては、Al又はAl合金よりなるAlを主材料とする配線のほか、Cu又はCu合金よりなるCuを主材料とする配線を形成することができる。
また、上記実施形態では、順次積層された密着膜54とAl膜56と密着膜58とを有するパッド60を形成する場合について説明したが、パッドの材料は上述したものに限定されるものではない。パッドの材料としては、種々の金属材料を用いることができる。また、シリコン窒化膜よりなるパッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62にパッド60を露出する開口部66を形成する場合について説明したが、パッドを露出する開口部を形成する絶縁膜もこれらに限定されるものではない。このような絶縁膜としては、種々の絶縁膜を用いることができる。
【0084】
また、本発明の洗浄組成物は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)及び/又はタングステン(W)を含む半導体基板からプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄する工程に広く用いることができ、アルミニウム、銅及び/又はタングステンは半導体基板上に形成された配線構造中に含まれることが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0086】
<走査型電子顕微鏡による残渣の観察>
パターンウエハとして、露出部分112を有するタングステンプラグ104を有する基板(図2)を用いた。洗浄組成物による洗浄前に、パターンウエハを走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察したところ、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた。また、上記実施形態について、配線形成後、本発明の洗浄組成物による洗浄前に、パターンウエハをSEMにより観察したところ、配線の上面及び側面にプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた。
【0087】
<実施例1〜22、比較例1〜5>
続いて、以下の表1に示す組成の洗浄組成物(実施例1〜22、比較例1〜5)を調製した。液温を70℃に調製した各洗浄組成物にパターンウエハの切片(約2cm×2cm)を浸漬し、30分間の浸漬時間後にパターンウエハの切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、窒素雰囲気下で乾燥を行った。乾燥後のパターンウエハの切片の断面及び表面をSEMで観察し、フォトレジスト及び残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)の除去性、並びに、アルミニウム配線(Al配線)及びタングステンプラグ(Wプラグ)の腐食性について下記の判断基準に従って評価を行った。各評価の評価基準を以下に示す。
【0088】
<Al配線の腐食>
無:Al配線の腐食は見られない。
有:Al配線の腐食が見られた。又は、Al配線が完全に消失していた。
【0089】
<残渣除去評価>
○:フォトレジスト及び残渣がほぼ完全に除去された。
△:フォトレジスト及び残渣の一部が残存していた。
×:フォトレジスト及び残渣がほとんど除去されていなかった。
○、△を合格とした。なお、○が好ましい。
【0090】
<Wプラグの腐食>
5:Wプラグの腐食は見られない。
4:Wプラグの約1割が腐食した。
3:Wプラグの約3割が腐食した。
2:Wプラグの約6割が腐食した。
1:Wプラグの約8割以上が腐食した。
3〜5を合格とした。なお、4又は5が好ましく、5がより好ましい。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に記載された各成分の略号を説明する。
(成分b)糖
・βCD:β−シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)
(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩
・HAS:ヒドロキシルアンモニウム硫酸塩
・HA:ヒドロキシルアミン
・HAN:ヒドロキシルアンモニウム硝酸塩
(成分d)第4級アンモニウム化合物
・TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
・TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
(成分f)水溶性有機溶媒
・DPG:ジプロピレングリコール
・PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0093】
上記の表1に示すように、本発明の洗浄組成物を用いた実施例1〜22において、Al配線の腐食がなく、フォトレジスト、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣の除去性に優れ、Wプラグの腐食が抑制されていた。
実施例1〜6の評価結果から、糖の中でも糖アルコールを用いた場合に、Wプラグの腐食の抑制に関して良好な結果が得られた。糖アルコールの中でも、ソルビトール、及び、キシリトールがWプラグの腐食の抑制に関して良好な結果が得られた。また、比較例1の結果から、糖を含有しない場合には、Wプラグの腐食が生じることがわかった。
実施例7の結果から、使用する第4級アンモニウム化合物を変更しても優れた洗浄性及び防食性が得られることがわかった。
実施例8〜12の結果から、使用する有機酸を変更しても優れた洗浄性及び防食性が得られることがわかった。中でも、有機酸としてリンゴ酸、マロン酸、クエン酸を使用した実施例において、良好な結果が得られた。また、比較例5の結果から、有機酸を添加しない場合には、残渣の除去性が低下することがわかった。
実施例13及び14の評価結果から、アミノ基含有カルボン酸を使用することにより、Wプラグの防食性が向上することがわかった。
実施例3、15及び16の評価結果から、使用するヒドロキシルアミン及び/又はその塩を変更しても優れた洗浄性及び防食性が得られることがわかった。また、比較例2の結果から、ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含まない場合には、残渣を除去することができないことがわかった。
実施例17〜20の評価結果から、pHを6〜9の範囲で変更しても、残渣除去、及び、防食性に優れていることがわかった。また、比較例3の結果から、pHが6未満の場合には、残渣を除去することができないことがわかった。また、比較例4の結果から、pHが9を超える場合には、Wプラグの腐食が進行することがわかった。
実施例21及び22の評価結果から、水溶性有機溶媒を添加した場合も、残渣除去、及び、防食性に優れていることがわかった。
本発明の洗浄組成物を用いた洗浄では、浸漬温度、浸漬時間を比較的自由に選ぶことができ、低温度、短時間での洗浄が可能であった。さらに、本発明の洗浄組成物を用いた洗浄では、浸漬時間延長の強制条件においても、Al配線、Wプラグの腐食の進行がなかった。
一方、各比較例では、浸漬時間、浸漬温度の調整を行っても十分な除去性、防食性を示すものがなかった。
【符号の説明】
【0094】
10:半導体基板
12:Al合金膜
14:窒化チタン膜
16:配線
18:シリコン酸化膜
20:ビアホール
22:ビアホール
38:層間絶縁膜
40:バリアメタル膜
42:Al膜
44:配線パターン
46:層間絶縁膜
48:バリアメタル膜
50:タングステン膜
52:ビア
54:密着膜
56:Al膜
58:密着膜
60:パッド
62:シリコン酸化膜
64:パッシベーション膜
66:開口部
100:基板
101:半導体基板
102:層間絶縁膜
104:タングステンプラグ
106:窒化チタン膜
108:チタン膜
110:Al合金膜
112:露出部分
114:プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分a)水、
(成分b)糖、
(成分c)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩、
(成分d)第4級アンモニウム化合物、並びに、
(成分e)有機酸、を含み、
pHが6〜9であることを特徴とする
半導体基板洗浄用の洗浄組成物。
【請求項2】
成分aが、洗浄組成物の全重量に対して50〜99.5重量%含まれる、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
成分bが、炭素数4以上の糖アルコールである、請求項1又は2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
成分bが、ソルビトール、キシリトール、及び、エリトリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項5】
成分cが、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、及び、ヒドロキシルアミンリン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項6】
成分dが、テトラアルキルアンモニウム水酸化物である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項7】
成分dが、洗浄組成物の全重量に対して0.01〜20.0重量%含まれる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項8】
成分eが、1官能性、2官能性又は3官能性有機酸である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項9】
成分eが、乳酸、クエン酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、及び、りんご酸よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項10】
成分eが、洗浄組成物の全重量に対して0.01〜20.0重量%含まれる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項11】
さらに(成分f)水溶性有機溶剤を含有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項12】
成分fが、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、2−ブタノール、ピナコール、及び、1−アミノ−2プロパノールよりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項11に記載の洗浄組成物。
【請求項13】
さらに(成分g)アミノ基含有カルボン酸を含有する、請求項1〜12のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項14】
成分gが、ヒスチジン及び/又はアルギニンである、請求項13に記載の洗浄組成物。
【請求項15】
半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣除去用である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項16】
アルミニウム、銅又はタングステンを含む金属膜のプラズマエッチング後に生じた残渣除去用である、請求項1〜15のいずれか1つに記載の洗浄組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の洗浄組成物を用意する工程、並びに、
前記洗浄組成物により、半導体基板を洗浄する洗浄工程を含む、
洗浄方法。
【請求項18】
前記半導体基板が、アルミニウム、銅又はタングステンを含む、請求項17に記載の洗浄方法。
【請求項19】
前記洗浄工程が、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する洗浄工程である、請求項17又は18に記載の洗浄方法。
【請求項20】
半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、
半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、
請求項1〜16のいずれか1つに記載の洗浄組成物により、半導体基板を洗浄する洗浄工程を含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記半導体基板が、アルミニウム、銅、又は、タングステンを含む、請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記洗浄工程が、前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去する洗浄工程である、請求項20又は21に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−9513(P2012−9513A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141961(P2010−141961)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】