説明

洗浄装置及び半導体装置の製造方法

【課題】洗浄部材の汚染物質を継続的に低減可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】半導体基板11を支持回転する回転支持体13と、回転支持体13に対して半導体基板11とは反対側及び半導体基板11から離れた下側に配置され、V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシ部29が形成された洗浄面を有するブラシ洗浄具27と、それぞれの外周部が、回転支持体13に支持された半導体基板11の相対向する被処理面に接触が可能、且つブラシ洗浄具27のV字形の斜面に接触が可能で、等方的な回転対称軸の回りに回転する円柱状のロール部材21と、樹脂粒子18が分散されたスクラブ洗浄液17を半導体基板11の被処理面にそれぞれ供給するスクラブ洗浄液供給部15と、ブラシ洗浄具27の溝に2箇所で接触するように配置されたロール部材21の外周部にそれぞれ純水35を供給する純水供給部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面を洗浄する洗浄装置及び洗浄装置を使用した半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板及び表示用基板等の基板表面を洗浄する方法として、純水等を供給しながら基板表面にスポンジやブラシ等からなる洗浄部材を擦り付けるスクラブ洗浄が行われている。例えば、ロール状のスポンジを洗浄部材として、半導体基板等の表面に擦り付ける洗浄装置(ロール洗浄装置またはスクラブ洗浄装置)が使用される。
【0003】
スクラブ洗浄においては、洗浄部材を直接半導体基板等に接触させて洗浄を行うため、洗浄部材自体が汚染されると、洗浄部材が汚染源となり、半導体基板等の洗浄効果が低減することが起こり得る。洗浄効果を維持するため、汚染した洗浄部材を交換する方法がある。しかし、洗浄部材の交換は、洗浄装置の稼動停止が必要となり、また、交換用の洗浄部材が必要となるため、ランニングコストの増加が避けられなくなる。そこで、例えば、汚染された洗浄部材を石英板等に擦り付けて、汚染物質の除去が行われている。
【0004】
また、スクラブ洗浄において、樹脂粒子を分散した洗浄液を使用することにより、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程後の半導体基板等の表面に付着した研磨粒子及び研磨生成物等の固形の汚染物質を除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、開示された樹脂粒子を分散した洗浄液を使用することにより、樹脂粒子が洗浄部材を汚染する物質になることがあり得る。洗浄部材の樹脂粒子を含む固形の汚染物質による汚染に対して、石英板等に擦り付けて洗浄する方法では、必ずしも清浄化された状態を継続することが十分ではないという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−146582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗浄部材の汚染物質を継続的に低減可能な洗浄装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の洗浄装置は、基板を支持回転する支持体と、前記基板から離れた位置に配置され、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシが形成された洗浄面を有するブラシ洗浄具と、それぞれの外周部が、前記支持体に支持された前記基板の相対向する被処理面に接触が可能、且つ前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触が可能で、等方的な回転対称軸の回りに回転する円柱状の第1及び第2の洗浄部材と、樹脂粒子が分散された第1の洗浄液を前記基板の前記被処理面に供給する第1の洗浄液供給部と、前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触するように配置された前記第1及び第2の洗浄部材の外周部に第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に被処理膜を形成する方法と、前記被処理膜に研磨処理を施す工程と、前記被処理膜に前記研磨処理の施された前記半導体基板の相対向する表面及び裏面に、第1及び第2の洗浄部材の外周部をそれぞれ当接させ、当接領域に一次粒子径が10nm以上60nm以下である樹脂粒子を分散させた第1の洗浄液を供給して、当接領域を移動させながら前記半導体基板を洗浄する工程と、前記第1及び第2の洗浄部材を、それぞれ、前記半導体基板の洗浄位置から離れた位置にあり、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシが設けられた洗浄面を有するブラシ洗浄具の位置に移動させる工程と、前記ブラシ洗浄具の洗浄面に前記第1及び第2の洗浄部材の外周部を、それぞれ、当接させ、当接領域に第2の洗浄液を供給して、前記第1及び第2の洗浄部材を当接領域を移動させながら洗浄する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄部材の汚染物質を継続的に低減可能な洗浄装置及び半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置を含む研磨システムの構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る洗浄装置の構成を模式的に示す斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る洗浄装置の構成を模式的に示す図で、図3(a)は正面方向から見た図、図3(b)は図3(a)の一部の構成を拡大して示す断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に模式的に示す構造断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄液中の樹脂粒子径と残留付着物及び残留粒子との関係を示す図。
【図6】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄効果を比較例と対比して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に示す図では、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る洗浄装置及び洗浄部材の洗浄方法について、図1乃至図6を参照しながら説明する。洗浄装置は、ロール状のスポンジを洗浄部材とするロール洗浄装置またはスクラブ洗浄装置である。
【0014】
図1に示すように、洗浄装置1は、例えば、研磨システム100の中の1つの装置として位置付けられる。研磨システム100は、基板(後述の半導体基板11、図1では省略)の搬入搬出を行う搬入出口110と、搬送系120と、研磨装置130と洗浄装置1、ペンシル洗浄・スピン乾燥装置140とを備えている。
【0015】
製造工程において、例えば、25枚構成の1ロット分の半導体基板11が装着されたカセット(図示略)が搬入出口110にセットされる。カセットの中の半導体基板11は、1枚ずつ、搬送系120によって、研磨装置130に搬送される。半導体基板の表面は研磨テーブル131上で、例えば、CMP法によって研磨される。研磨装置130で研磨が終了すると、搬送系120によって研磨装置130から半導体基板11が搬出され、洗浄装置1に搬送される。洗浄装置1では、半導体基板11の表裏面がロール部材(図2、3の21)によって、スクラブ洗浄が実施される。
【0016】
洗浄装置1のスクラブ洗浄が終了すると、搬送系120によって洗浄装置1から半導体基板11が搬出され、ペンシル洗浄・スピン乾燥装置140に搬送される。ペンシル洗浄・スピン乾燥装置140では、半導体基板11の表面がペンシルブラシ洗浄され、その後、半導体基板11は高速回転の遠心力によって水分が飛ばされてスピン乾燥される。乾燥した半導体基板11は搬送系120によって搬入出口110に搬出され、元のカセットに戻される。
【0017】
図2及び図3に示すように、洗浄装置1は、基板である半導体基板11を支持回転する回転支持体13と、回転支持体13に対して半導体基板11とは反対側及び半導体基板11から離れた下側に配置され、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシ部29が形成された洗浄面を有するブラシ洗浄具27と、それぞれの外周部が、回転支持体13に支持された半導体基板11の相対向する被処理面に接触が可能、且つブラシ洗浄具27の断面V字形の斜面に接触が可能で、等方的な回転対称軸の回りに回転する円柱状の第1及び第2の洗浄部材である上下にそれぞれ配置されるロール部材21と、樹脂粒子18が分散された第1の洗浄液としてのスクラブ洗浄液17を半導体基板11の被処理面にそれぞれ供給する第1の洗浄液供給部であるスクラブ洗浄液供給部15と、ブラシ洗浄具27の断面V字形の斜面に複数箇所で接触するように配置されたロール部材21の外周部にそれぞれ第2の洗浄液である純水35を供給する第2の洗浄液供給部としての純水供給部33とを備える。
【0018】
半導体基板11は、半導体ウェハに限らず、表面に半導体装置に必要な構造物が形成されているものも含む。また、半導体基板11は、主要部がシリコンに限らず、化合物半導体、表面に半導体膜を成長させた酸化物等を含む。半導体基板11は、その他、液晶表示装置、有機EL(Electroluminescence)表示装置、及びプラズマ表示装置等の基板(例えば、ガラス基板)、光ディスク用基板(例えば、樹脂基板)、磁気ディスク用基板(例えば、アルミ基板)、フォトマスク用基板(例えば、ガラス基板)等の種々の基板に置き換えることが可能である。
【0019】
回転支持体13は、ほぼ円形の半導体基板11の外周部を支持して、水平面内で回転させることができる。回転支持体13は、ロール部材21と接触のない位置に、例えば、ほぼ等間隔に6箇所配置されているが、6箇所に限定されるものではない。
【0020】
ロール部材21は、曲面をなす側面及び円形の両底面を有する概略円柱状をなしている。ロール部材21は、半導体基板11の表裏面に対して側面が、上下に相対向して互いに平行に配置される。ロール部材21は、半導体基板11の直径をカバーしている。ロール部材21は、それぞれ、ロール部材支持体25に支持され、ロール部材支持体25の鉛直線に沿った方向の移動により半導体基板11に接近及び離隔して、それぞれ、半導体基板11と接触及び非接触の状態に位置を変えることが可能である。ロール部材支持体25は、ロール部材21が鉛直線に沿った方向に半導体基板11を押す圧力を調整可能である。ロール部材支持体25は、ロール部材21の両底面の中心、つまり円柱の等方的な回転対称軸を軸としてロール部材21に回転駆動力を与える。
【0021】
ブラシ洗浄具27は、回転支持体13に対して半導体基板11とは反対側の側方位置(以下、外側という)及び半導体基板11の下方位置(以下、下側という)に、半導体基板11から離れて配置されている。ロール部材支持体25は、上方のロール部材21を外側のブラシ洗浄具27の位置まで、回転支持体13の上方を越えて移動させることが可能で、下方のロール部材21を下側のブラシ洗浄具27の位置まで移動させることが可能である。
【0022】
スクラブ洗浄液供給部15は、半導体基板11の直上及び直下を避けて、斜め上方及び斜め下方に配置され、半導体基板11とロール部材21との上下の接触部に樹脂粒子18が分散されたスクラブ洗浄液17を供給する。スクラブ洗浄液供給部15は、例えば、ノズル状の射出口を有し、スクラブ洗浄液17を離れた位置から供給可能である。スクラブ洗浄液供給部15は、半導体基板11とロール部材21との接触部に沿うように、それぞれ複数個の配置は可能である。
【0023】
スクラブ洗浄液17は、例えば、純水が使用されるが、イオン交換樹脂を通したイオン交換水でもよいし、汚染物質の洗浄を促進する成分を含む液を用いることも可能である。
【0024】
樹脂粒子18は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、及びポリオキシメチレン等の材質が選択可能である。樹脂粒子18は、単一の材質のもので構成されてもよいし、異なる2種以上の材質のものを組み合わせた構成としてもよい。後述するように、樹脂粒子18の一次粒子径は、10nm以上60nm以下の範囲内で選択される。
【0025】
図3に示すように、純水供給部33は、それぞれブラシ洗浄具27に近接して配置され、ロール部材21とブラシ洗浄具27との接触部に純水35を供給可能である。純水供給部33は、ロール部材21とブラシ洗浄具27との接触部2箇所に沿うように、且つロール部材21を上下に支障なく移動可能なように、ブラシ洗浄具27の両側に配置されている。
【0026】
図3(b)に示すように、ロール部材21は、両底面の中心部を通るほぼ円柱状の芯部22を有し、芯部22の側面の周囲に、最外周部までの厚さがほぼ一定のスポンジ部23が固定されている。スポンジ部23は、例えば、側面の表面に円形の突起が面積の半分程度を占めるように分布している。円形の突起の大きさは、直径が数mm程度、高さが半径程度の形状をなす。スポンジ部23は、例えば、多孔質のPVA(Polyvinyl Acetate)であるが、発泡ウレタン等であってもよい。なお、スポンジ部23の突起が省略されることは可能である。
【0027】
ブラシ洗浄具27は、上面側に、ほぼ90度に開いたV字形の溝を備えた基部28を有し、基部28の溝を構成する斜面に、ブラシ部29が形成されている。ブラシ部29は、細い棒状のブラシが、スポンジ部23より硬い樹脂で形成され、先端が丸められ、基部28の斜面に垂直に分布して配設されている。細い棒状とは、径に対する表面からの長さが大きい場合である。なお、必ずしも細い棒状である必要はなく、径が相対的に大きい、つまり、ブラシ部29の表面に凹凸が分布している状態も可能である。ブラシ部29のブラシの長さは、スポンジ部23の凹凸の高さを超える程度であることが好ましい。なお、基部28の溝を構成する斜面は、溝の底部で必ずしも一体的に形成されている必要はなく、独立した斜面が間隔を置いて配置されてもよい。
【0028】
ブラシ洗浄具27は、V字形の溝の底部、すなわち基部28の高さの最も低い位置に、底面側に抜ける貫通孔が開けられて、純水35等を流出できる。上方から供給される純水35は、ブラシ洗浄具27の表面等を伝って、一方向に貫通孔へ落ちる。なお、V字形の溝の底部が、ブラシ洗浄具27の外側に向かって低くなる傾斜を有していれば、貫通孔は必ずしも必要ない。
【0029】
ブラシ洗浄具27は、ロール部材21とV字形の溝を構成する2つの面で接触することが可能である。また、ブラシ洗浄具27は、超音波発生器31と接続され、ロール部材21と接触した状態で、ブラシ部29を振動させることが可能である。ブラシ洗浄具27は、ロール部材21の回転軸に沿った方向の長さより長い。ブラシ洗浄具27は、少なくともロール部材21の半導体基板11に接触する部分より長いことが望ましい。なお、ブラシ洗浄具27は、超音波より振動数の小さい振動が与えられてもよいし、ロール部材21の外周部を擦るように揺動してもよい。
【0030】
次に、洗浄装置1のロール部材21を清浄化する方法を説明する。図3に示すように、ロール部材21は、半導体基板11を、上下から挟んで、接触面に樹脂粒子18が分散されたスクラブ洗浄液17が供給され、実線矢印方向に回転しながら洗浄する。洗浄終了後、ロール部材21は、ロール部材支持体25に取り付けられた状態で、ブラシ洗浄具27の位置まで搬送される。なお、例えば、ロール洗浄工程の最初に、ロール部材21を洗浄し、その後、ロットの最初の半導体基板11を洗浄装置1にセットすることは可能である。洗浄装置1による清浄化において、半導体基板11の接触面が実質的に研磨されることはない。
【0031】
上側のロール部材21は、外側のブラシ洗浄具27の位置に、例えば、破線矢印で示すように、半導体基板11から上方に、次に外側に、次に下方に搬送され、ブラシ洗浄具27の溝のブラシ部29に2つの領域が接触するように配置される。下側のロール部材21は、下側のブラシ洗浄具27の位置に、例えば、破線矢印で示すように、半導体基板11から下方に搬送され、ブラシ洗浄具27の溝のブラシ部29に2つの領域が接触するように配置される。洗浄済みの半導体基板11は、搬送系120により搬出される。
【0032】
ロール部材21は、ブラシ洗浄具27と2つの領域で接触した状態で、すなわち、ロール部材21をブラシ洗浄具27に押し付けた状態で、ロール部材支持体25からの駆動力により回転させ、純水供給部33から純水35が接触領域に供給され、洗浄される。ブラシ洗浄具27は、超音波発生器31から超音波による振動が加えられる。純水35及び純水35に含まれる固形の汚染物質及び樹脂粒子18は、一方向に流されて、ブラシ洗浄具27のV字形の溝の底部の貫通孔から排出される。
【0033】
ロール部材21のブラシ洗浄具27による洗浄が終わると、超音波、回転、加圧、純水35等が止められて、それぞれのロール部材21は、破線矢印の逆方向に戻される。ロール部材21が上下から挟む前に、半導体基板11が搬送系120により搬入されて、回転支持体13にセットされる。以降、半導体基板11の洗浄、半導体基板11の搬出、ロール部材21の洗浄を経て、次の半導体基板11の搬入が繰り返される。最後の半導体基板11の洗浄後は、ロール部材21の洗浄までを済ませておくことが好ましい。
【0034】
次に、洗浄装置1を半導体装置の製造工程に適用する例を説明する。比較例の製造工程と比較して、その効果を評価した。
【0035】
図4(a)に示すように、半導体ウェハ51上に、無機の絶縁膜52、及び積層された第1及び第2の絶縁膜54、55を介して、バリアメタル膜56及び配線材料膜57を堆積する。半導体ウェハ51の表面部に形成された半導体素子は図示が省略されている。
【0036】
絶縁膜52には、W(タングステン)からなるプラグ53が埋め込まれている。積層絶縁膜は、比誘電率が2.5未満の第1の絶縁膜54と、この第1の絶縁膜上に形成され、比誘電率が第1の絶縁膜54より大きい第2の絶縁膜55とから構成される。第1及び第2の絶縁膜54、55の厚さは、いずれも100nmとすることができる。
【0037】
第1の絶縁膜54は、例えば、ポリシロキサン、ハイドロジェンシロセスキオキサン、ポリメチルシロキサン、メチルシロセスキオキサン等のシロキサン骨格を有する膜、ポリアリーレンエーテル、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾシクロブテン等の有機樹脂を主成分とする膜、及び多孔質シリカ膜等のポーラス膜からなる群から選択される少なくとも一種を用いて形成することができる。こうした材料からなる第1の絶縁膜54は脆弱である。
【0038】
第2の絶縁膜55はキャップ絶縁膜として作用し、例えば、SiC、SiCH、SiCN、SiOC、SiN、及びSiOCHからなる群から選択される少なくとも一種の比誘電率2.5以上の絶縁材料を用いて形成することができる。こうした材質から構成される第2の絶縁膜55の表面は、疎水性を有する。また、SiO、SiOP、SiOF、及びSiON等の親水性を有する絶縁膜でも、CMP後に残留物が付着することがある。こうした絶縁膜に対しても、本実施形態にかかる樹脂粒子18が分散されたスクラブ洗浄液17は好適に用いることができる。
【0039】
バリアメタル膜56及び配線材料膜57は、上述したような積層絶縁膜に配線溝を設けた後、全面に堆積される。バリアメタル膜56は、Taにより膜厚10nmで形成することができ、配線材料膜57は、Cuにより膜厚400nmで形成することができる。
【0040】
なお、図4(a)に示す例においては、バリアメタル膜56及び配線材料膜57が設けられる絶縁膜は、第1の絶縁膜54と第2の絶縁膜55との積層構造であるが、単層の絶縁膜を用いてもよい。この場合の絶縁膜は、例えば、ブラックダイヤモンド(アプライドマテリアル社製)等により形成することができる。こうした材料からなる絶縁膜もまた、表面は疎水性を有する。
【0041】
次に、バリアメタル膜56及び配線材料膜57の不要部分をCMPにより除去し、図4(b)に示すように、第2の絶縁膜55の表面を露出させた。CMPは、配線材料膜57の除去(第1ポリッシュ工程)及びバリアメタル膜56の除去(第2ポリッシュ工程)の2工程で行い、その条件は以下の通りとした。表面に上述の膜等が形成されているものを半導体基板11という。
【0042】
(第1ポリッシュ工程)
スラリー:CMS7401/7452(JSR社製)
流量:300cm/min
研磨パッド:IC1000(ロデールニッタ社製)
荷重:300gf/cm(2.9E4Pa)
半導体基板11を固定するキャリア(図示略)及び研磨テーブル131の回転数は、いずれも100rpmとして、1分間の研磨を行った。
【0043】
(第2ポリッシュ工程)
スラリー:CMS8401/8452(JSR社製)
流量:200cm/min
研磨パッド:IC1000(ロデールニッタ社製)
荷重:300gf/cm(2.9E4Pa)
キャリアおよびテーブル131の回転数は、いずれも100rpmとして、30秒間の研磨を行なった。
【0044】
第2ポリッシュ工程直後には、図4(b)に示すように、研磨粒子61、研磨生成物62、ウォータマーク63等の物質が、第2の絶縁膜55、バリアメタル膜56、及び配線材料膜57上に付着している。研磨粒子61、研磨生成物62、及びウォータマーク63等の付着物質が、欠陥の原因となる。
【0045】
これらの付着物質を、本実施形態の洗浄装置1により洗浄して除去することによって、図4(c)に示すような清浄な表面が得られる。
【0046】
ここで樹脂粒子の最適な一次粒子径の範囲を調べるために、以下の実験を行なった。樹脂粒子としては、一次粒子径の異なるPMMA製粒子を用意した。樹脂粒子の一次粒子径は、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)写真から測定することができる。一次粒子径が5nm〜100nmの各樹脂粒子を用いて、付着物の除去を試みた。
【0047】
具体的には、樹脂粒子が分散された各スクラブ洗浄液を用い、図4(b)に示した段階の表面を次の条件で洗浄した。洗浄は、洗浄装置1を使用し、ロール部材21を被処理面に接触させて、30〜60秒程度擦りつけることにより行なった。
【0048】
スクラブ洗浄液流量:300cm/min
半導体基板11及びロール部材21の回転数:いずれも100rpm
図5に示すように、樹脂粒子の一次粒子径に対して、除去対象の汚染物質の残り(図中の付着物に対応)及び樹脂粒子の残りを、明視野欠陥測定装置により測定して結果を得た。残留物の個数は、半導体基板1枚当たりである。一次粒子径が10nm未満の樹脂粒子は、スクラブ洗浄効果が十分に得られない。一方、一次粒子径が60nmを越えると、この樹脂粒子自体が被処理面に残存して、欠陥の原因となるおそれがある。10nm以上60nm以下の一次粒子径は、汚染物質の残り及び樹脂粒子の残りがゼロとなる範囲である。樹脂粒子18は、一次粒子径が10nm以上60nm以下の範囲にある。なお、樹脂粒子18の一次粒子径は、30nm以上50nm以下がより好ましい。
【0049】
また、図6に示すように、洗浄装置1と類似の洗浄装置において、スクラブ洗浄液中に樹脂粒子が分散されてない場合、及びブラシ洗浄具27を平板の石英板に置き換えた場合を組み合わせた構成を比較例として、半導体基板11上の欠陥数を評価した。 欠陥数は、固形の付着物の他、スクラッチ等の傷も含んでいる。樹脂粒子18の一次粒子径は、約50nmである。横軸に、1ロット25枚分を処理順に並べて、縦軸に半導体基板11当たりの欠陥数を示してある。石英板は、図3のブラシ洗浄具27を置き換えて水平に配設され、ロール部材21とは、上面の1つの領域で接している。純水35は、純水供給部からロール部材21と石英板との接触領域に、ロール部材21と同様に両側から供給される。
【0050】
本実施形態の洗浄装置1で処理した結果は、黒丸で示すように、1ロット25枚分にわたって、欠陥数がゼロであった。一方、洗浄装置1と類似の洗浄装置において、スクラブ洗浄液17を使用し、ブラシ洗浄具27を平板の石英板に置き換えた場合の結果は、三角形で示すように、1ロット内の途中までは、欠陥数がゼロで推移し、その後、欠陥数が20個を超える程度まで徐々に増加の傾向を示した。
【0051】
洗浄装置1と類似の洗浄装置において、樹脂粒子18が分散されてないスクラブ洗浄液を使用した結果は、四角形及び×印で示すように、ブラシ洗浄具27及び平板の石英板にほとんど関係なく、欠陥数が35〜85個の間で変化している。この結果は、樹脂粒子18が半導体基板11の清浄化に大きく寄与し、ブラシ洗浄具27を使用することにより、洗浄効果を維持することが可能であることを示している。逆にいうと、ロール部材21を石英板に擦り付ける方法は、ブラシ洗浄具27によって清浄化する条件で行ったのでは不十分であることを示す。ロール部材21に固形の汚染物質及び樹脂粒子が蓄積するので、石英板に擦り付ける方法は、例えば、より長時間をかけて洗浄することが必要となる。
【0052】
ブラシ洗浄具27は、ロール部材21に接する面にブラシ29が形成され、ロール部材21とは2つの領域で絶えず接することが可能である。ブラシ洗浄具27は、石英板に比較して、表面のより高低差のある凹凸、接する領域の数、及び固形の付着物を含む純水35が一方向に流れること等のそれぞれによって、また、これらが組み合わされることによってロール部材21の清浄化を早めることが可能である。
【0053】
上述したように、洗浄装置1は、10nm以上60nm以下の一次粒子径を有する樹脂粒子18が分散されたスクラブ洗浄液17とロール部材21を使用して、半導体基板11の表面を洗浄し、半導体基板11の表面洗浄の合間毎に、V字形の溝を構成する面にブラシ部29を有するブラシ洗浄具27と純水35を使用して、ロール部材21の表面を洗浄する。
【0054】
洗浄装置1は、ロール部材21に付着した樹脂粒子18を含む固形の汚染物質を絶えず洗浄でき、洗浄されたロール部材21で半導体基板11の表面を洗浄するために、順次送られてくる半導体基板11の表面は継続的に清浄化できる。つまり、ロール部材21に、固形の汚染物質が蓄積することは抑制される。表面の欠陥数が低減されるので、製造される半導体装置の製造歩留まりの悪化を抑制でき、また、交換が必要となるまでのロール部材21の使用可能期間が延長される。従って、洗浄装置1は、半導体装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【0055】
以上、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0056】
例えば、実施形態では、ブラシ洗浄具は、V字形の斜面を形成する2面がほぼ90度をなす関係である例を示したが、ロール部材が、2面で接触可能且つV字形の溝への上下方向への出し入れが可能であれば、V字形を形成する2面が90度より小さくても、大きくてもよい。V字形を形成する2面は平面である例を示したが、曲面であることは可能である。
【0057】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 基板を支持回転する支持体と、前記基板から離れた位置に配置され、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシが形成された洗浄面を有するブラシ洗浄具と、それぞれの外周部が、前記支持体に支持された前記基板の相対向する被処理面に接触が可能、且つ前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触が可能で、等方的な回転対称軸の回りに回転する円柱状の第1及び第2の洗浄部材と、樹脂粒子が分散された第1の洗浄液を前記基板の前記被処理面に供給する第1の洗浄液供給部と、前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触するように配置された前記第1及び第2の洗浄部材の外周部に第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部とを備える洗浄装置。
【0058】
(付記2) 前記第1の洗浄液は、水を主成分とする付記1に記載の洗浄装置。
【0059】
(付記3) 前記第2の洗浄液は、水を主成分とする付記1に記載の洗浄装置。
【符号の説明】
【0060】
1 洗浄装置
11 半導体基板
13 回転支持体
15 スクラブ洗浄液供給部
17 スクラブ洗浄液
18 樹脂粒子
21 ロール部材
22 芯部
23 スポンジ部
25 ロール部材支持体
27 ブラシ洗浄具
28 基部
29 ブラシ部
31 超音波発生器
33 純水供給部
35 純水
51 半導体ウェハ
52 絶縁膜
53 プラグ
54 第1の絶縁膜
55 第2の絶縁膜
56 バリアメタル膜
57 配線材料膜
61 研磨粒子
62 研磨生成物
63 ウォータマーク
100 研磨システム
110 搬入出口
120 搬送系
130 研磨装置
131 研磨テーブル
140 ペンシル洗浄・スピン乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持回転する支持体と、
前記基板から離れた位置に配置され、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシが形成された洗浄面を有するブラシ洗浄具と、
それぞれの外周部が、前記支持体に支持された前記基板の相対向する被処理面に接触が可能、且つ前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触が可能で、等方的な回転対称軸の回りに回転する円柱状の第1及び第2の洗浄部材と、
樹脂粒子が分散された第1の洗浄液を前記基板の前記被処理面に供給する第1の洗浄液供給部と、
前記ブラシ洗浄具の断面V字形の斜面に接触するように配置された前記第1及び第2の洗浄部材の外周部に第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部と、
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記ブラシ洗浄具は、前記断面V字形の斜面が一体的に形成されているとともに、前記溝の底部に貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の洗浄部材の前記外周部は、凹凸形状を有する多孔質のスポンジで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
半導体基板上に被処理膜を形成する方法と、
前記被処理膜に研磨処理を施す工程と、
前記被処理膜に前記研磨処理の施された前記半導体基板の相対向する表面及び裏面に、第1及び第2の洗浄部材の外周部をそれぞれ当接させ、当接領域に一次粒子径が10nm以上60nm以下である樹脂粒子を分散させた第1の洗浄液を供給して、当接領域を移動させながら前記半導体基板を洗浄する工程と、
前記第1及び第2の洗浄部材を、それぞれ、前記半導体基板の洗浄位置から離れた位置にあり、断面V字形の斜面を形成するように上側に開いた溝の表面にブラシが設けられた洗浄面を有するブラシ洗浄具の位置に移動させる工程と、
前記ブラシ洗浄具の洗浄面に前記第1及び第2の洗浄部材の外周部を、それぞれ、当接させ、当接領域に第2の洗浄液を供給して、前記第1及び第2の洗浄部材を当接領域を移動させながら洗浄する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂粒子は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、及びポリオキシメチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−165751(P2011−165751A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24261(P2010−24261)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】