説明

流体加熱用ヒータ

【課題】 流体への熱伝達効率を向上させ、ヒータ自身の小型化を図ると共に、必要な温度の温水が供給されるまでの立ち上がり時間が短く、消費電力の少なくい流体加熱用ヒータを提供する。
【解決手段】 セラミックス基板1の一表面上に発熱体2を備え、セラミックス基板1の熱伝導率が50W/m・K以上であり、例えばセラミックス基板が窒化アルミニウムであって、且つ発熱体2を被覆する絶縁層4が形成されている。また、平板状のセラミックス基板1の一表面上に形成した発熱体2を備え、セラミックス基板1が窒化珪素であり、且つ該発熱体2を被覆する絶縁層4が形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体加熱用のヒータに関し、特に温水洗浄便座の洗浄用温水を湯沸かしするのに適した流体加熱用ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、温水洗浄便座は、便座の後方下に設けた所定のノズルから温水を噴射し、その温水で人体の局部を洗浄するものである。また、洗浄に対する快適性を高めるために、従来から所定の温度に加熱された温水が使用されている。
【0003】
しかし、従来の温水洗浄便座では、洗浄時に速やかに温水を使用できるようにするため、予め水を貯水タンクに溜めた後、シーズヒータ等で所定の温度に加熱して、保温する手法が取られている。このため、使用しない間も貯水タンクの水を保温し続けなければならず、ヒータの消費電力が非常に大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、上記の問題を解決するために、最近では洗浄時にのみ水を加熱し、ノズルから噴射する方法が取られている。例えば、特開平11−43978号公報には、水の加熱用に平板状のセラミックス基板に発熱体を設けたセラミックスヒータを用い、このセラミックスヒータの表面に複数の櫛状リブで蛇行水路を形成した流体加熱用ヒータを備えた温水洗浄便座が開示されている。
【特許文献1】特開平11−43978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、最近の温水洗浄便座に使用される流体加熱用ヒータは、平板状のセラミックス基板に発熱体を設けたヒータを用いて洗浄時に湯沸しするため、従来の貯水タンクで温水を保温するタイプのものに比べて保温のための電力が不要になり、消費電力を大幅に削減することができる。
【0006】
しかしながら、このような温水洗浄便座用のセラミックスヒータ、例えば上記特開平11−43978号公報に記載されるようなセラミックスヒータにおいても、必ずしも熱効率が十分に高いとは言えず、また消費電力も比較的大きいという問題があった。また、必要な温度の温水を速やかに供給するため立ち上がり時間を短くしようとすると、熱衝撃でセラミックスヒータが破損しやすいなどの問題もあった。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑み、ヒータから流体への熱伝達効率を向上させることでヒータ自身の小型化を図ると共に、必要な温度の温水が供給されるまでの立ち上がり時間が短く、消費電力の少ない流体加熱用ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明が提供する流体加熱用ヒータは、流体を加熱するためのヒータであって、平板状のセラミックス基板と、該セラミックス基板の一表面上に形成した発熱体とを備え、該セラミックス基板の熱伝導率が50W/m・K以上であり、且つ該発熱体を被覆する絶縁層が形成されていることを特徴とする。好ましくは、前記セラミックス基板が窒化アルミニウムであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明が提供する他の流体加熱用ヒータは、流体を加熱するためのヒータであって、平板状のセラミックス基板と、該セラミックス基板の一表面上に形成した発熱体とを備え、該セラミックス基板が窒化珪素であり、且つ該発熱体を被覆する絶縁層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
これらの本発明の流体加熱用ヒータにおいては、前記セラミックス基板の発熱体が露出していない表面を、流体と接する流体加熱面とすることを特徴とする。また、前記セラミックス基板の流体加熱面に、流体との接触面積を増やすための金属部材が固着されていることが好ましく、その金属部材が銅又はアルミニウムからなることが好ましい。更に、前記金属部材が多数のフィンであることが特に好ましい。
【0011】
また、上記本発明の流体加熱用ヒータにおいては、セラミックス基板の流体加熱面に、交互に折れ曲って蛇行した水路を形成し、該水路内に多数のフィンが配置されていることを特徴とする。また、前記セラミックス基板の少なくとも流体加熱面以外の表面を覆うように、断熱材が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒータから流体への熱伝達効率を向上させることで、必要な温度の温水が供給されるまでの立ち上がり時間が短く、消費電力が少ないうえ、ヒータ自身の小型化を図ることができ、特に温水洗浄便座の湯沸し用ヒータとして好適な流体加熱用ヒータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の流体加熱用ヒータは、その一形態として、平板状のセラミックス基板の一表面上に発熱体を形成した構造を有し、そのセラミックス基板として熱伝導率50W/m・K以上であるセラミックスを用いる。熱伝導率が50W/m・K以上のセラミックス基板を用いることにより、基板の温度上昇が早くなり、流体への熱伝達効率を高めることができる。
【0014】
例えば、温水洗浄便座用ヒータでは、加熱前の水温は最も冷たい場合で0℃且つ加熱後の水温は40℃程度となるが、このように瞬間的に水を加熱する場合、熱伝導率が低いセラミックス基板では発熱体で発生したジュール熱の基板内への拡散が難しい。このため基板の温度上昇速度が遅く、素早く水を加熱することができず、更に基板内に温度ムラが発生し、水の温度をムラなく均一にするために時間がかかる。
【0015】
本発明では、熱伝導率が50W/m・K以上のセラミックス基板を用いることによって、セラミックス基板内の温度をできるだけ均一にし、発熱体で発生した熱を素早く基板表面に伝えることができるため、水をムラなく均一に且つ効率よく、素早く加熱することができる。また、ヒータを瞬間的に温度上昇させると大きな熱衝撃が発生して、セラミックス基板自身が破損しやすいが、熱伝導率50W/m・K以上のセラミックス基板を用いることで破損を防止することが可能である。
【0016】
このように熱伝導率が50W/m・K以上のセラミックス基板としては、具体的には、窒化アルミニウムや炭化ケイ素などがある。中でも窒化アルミニウムは、製法を工夫すれば容易に100W/m・K以上の熱伝導率を得ることができ、基板内の温度分布をより均一にできるため特に好ましい。
【0017】
本発明の流体加熱用ヒータにおける他の形態は、平板状のセラミックス基板の一表面上に発熱体を形成した構造を有し、そのセラミックス基板が窒化珪素である。窒化珪素に関しては、一般に熱伝導率は窒化アルミニウムよりも劣るものの、セラミックス自身の強度が高く、熱衝撃等の外部応力に対して非常に強いために好ましい。
【0018】
また、本発明の流体加熱用ヒータにおいては、図1に示すように、セラミックス基板1の一表面上に発熱体2及び通電用の電極3が形成され、このセラミックス基板1の発熱体2が露出していない表面を流体と接する流体加熱面1aとする。即ち、セラミックス基板1の流体加熱面1aに流体を供給し、流体が流体加熱面1aと接触している間に、発熱体2の熱を流体加熱面1aから流体に伝えて加熱するのである。
【0019】
発熱体2上には、絶縁を確保するための絶縁層4を形成する。一般に絶縁層4の熱伝導率はセラミックス基板1に比較して低く、発熱体2で発生した熱はセラミックス基板1の方に伝わり易く熱抵抗も小さくなるため、絶縁層4を流体加熱面とすることは好ましくない。特にセラミックス基板の熱伝導率が50W/m・K以上の場合には、絶縁層を形成していない側のセラミックス基板表面を流体加熱面とする。
【0020】
更に、セラミックスヒータの熱を流体に一層効率的に伝達するため、セラミックス基板の流体加熱面に、流体との接触面積を増やすため金属部材を固着して、流体への伝熱面積を増大させることができる。かかる金属部材の形状は特に限定されるものではないが、表面積の大きなものが望ましく、一般的に放熱用に用いられるようなフィン形状が好ましい。このようにフィン形状等の表面積の大きい金属部材を設けることで、ヒータの熱が多数のフィン等に伝えられるので、伝熱面積を大幅に増加させ、更に効率的に水を加熱することができる。
【0021】
また、セラミックス基板の流体加熱面に、金属や樹脂からなる壁で交互に折れ曲って蛇行するジグザグな長い水路を形成し、この水路内に多数のフィンを配置することによって、ヒータを3次元的に構成できると共に、伝熱面積を更に飛躍的に増大させることができ、ヒータ全体を小型化できるというメリットがある。尚、これらの金属部材あるいはフィン等は、セラミックス基板の両表面が流体加熱面である場合には、その両表面に形成することも可能である。
【0022】
上記したフィンその他の金属部材としては、アルミニウム又は銅が好ましい。アルルニウムは熱伝導率が200W/m・Kと比較的高く、また金属自身が柔らかいために加工し易いというメリットがある。更にアルミニウムは比重も小さいために、ヒータユニット全体を軽量化できるメリットがある。また、銅は熱伝導率が400W/m・K程度であり、伝熱効率を非常に高くすることができるので好ましい。
【0023】
セラミックス基板上に上記金属部材を固着させる方法としては、公知の手法が利用できる。例えば、金属部材が銅の場合には、活性金属ロウによって接合することができ、またセラミックス基板上にW等のメタライズを施し、更にその上にNi−Pメッキを形成し、このNi−Pメッキを用いて銅の金属部材を接合することも可能である。また、アルミニウムの金属部材に関しては、アルミニウムより融点の低いアルミニウムロウを用いて接合することができる。
【0024】
以上のように、フィン等の金属部材を設けた本発明の流体加熱用ヒータでは、伝熱面積が従来に比較して飛躍的に増加するために、流体への熱伝達効率が大幅に向上し、金属部材を含めたヒータユニット全体を従来に比べて小さくしても、従来と同様の温水を得ることが可能になる。即ち、従来のヒータでは流体への伝熱が平板状のセラミックス基板上のみで行われていたが、本発明では上記のごとく表面積の大きなフィン等の金属部材からも流体への熱伝達が行われるために、従来よりもヒータ及びヒータユニットを小さくしても、従来と同等又はそれ以上の伝熱面積が得られるからである。
【0025】
具体的には、金属部材の形状にもよるが、多数のフィンを設置した場合には、概ねヒータ全体の大きさを半分程度にしても、温水を得る特性に影響はない。このように小型化するメリットとしては、ヒータそのもののコストを低下させることができると共に、ヒータ及びヒータユニットの熱容量を低下させることができるため、消費電力の低減、及び必要な温度の温水が供給されるまでの時間(ヒータの立ち上がり時間)の短縮を図ることができる。従って、本発明の流体加熱用ヒータは、温水洗浄便座の湯沸し用ヒータとして好適である。
【0026】
また、本発明の流体加熱用ヒータに関しては、周囲への熱放散量を小さくすることで消費電力を低減し、より急速にヒータま温度を上昇させるために、少なくとも流体加熱面以外の表面を覆うように、断熱材を取り付けることができる。具体的には、セラミックス基板の流体加熱面以外の表面を包み込むように、セラミックス繊維や樹脂等の熱伝導率の低い断熱材を取り付けることができる。発熱体を被覆するガラス等の絶縁層も断熱効果を有するが、この絶縁層の上を更にセラミックス繊維や樹脂等の断熱材で覆うことによって、熱効率をより一層向上させることもできる。
【0027】
次に、本発明の流体加熱用ヒータの製造方法について一例を述べる。まず、セラミックス基板として窒化アルミニウム又は窒化珪素を用意する。これらのセラミックス基板の製造方法については公知の方法が利用できる。例えば、原料粉末に所定量の焼結助剤を加え、更にバインダーや有機溶剤を加えてボールミル等で混合する。得られたスラリーをドクターブレード法等の手法でシート成形し、所定の寸法に切断した後、窒素中又は大気中で脱脂処理を行い、非酸化性雰囲気中で焼結することによってセラミックス基板が得られる。尚、成形方法に関してはプレス成形や押し出し成形等も利用できる。
【0028】
次に、得られたセラミックス基板に発熱体を形成する。発熱体の材料としてはAg、Pd、Pt、W、Mo等が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。これらの発熱体はセラミックス基板上にスクリーン印刷等の手法によってパターン形成された後、所定の雰囲気中にて基板上に焼き付けられる。また、上記発熱体のうちWやMoに関しては、セラミックス基板との同時焼成によって形成することも可能である。
【0029】
また、この発熱体上には、絶縁を確保するための絶縁層を形成する。絶縁層の材質としては、特に制約は無いが、一般的にはガラス質の絶縁層が使用される。具体的には、ガラス粉末にバインダーと溶剤を加えてペースト状にし、このガラスペーストをスクリーン印刷により所定の形状に形成した後、焼成することにより絶縁層が得られる。更に、セラミックス基板の絶縁層と反対側の流体加熱面に、前記のようにフィン等の金属部材を取り付けることも可能である。
【実施例】
【0030】
実施例1
以下の手順により、下記表1に示す各セラミックスを主成分とする組成1〜5の各セラミックス基板を作製した。まず、各セラミックス原料粉末に下記表1に示す割合で焼結助剤を添加し、更に有機溶剤とバインダーを加え、ボールミルにより24時間混合してスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にて所定の厚みになるようにシート成形を行った。
【0031】
次に、得られた各シートを焼結後の寸法が50mm角になるように切断し、窒素中にて800℃で脱脂処理を行った後、下記表1に示す温度で窒素中にて焼結した。得られた各焼結体を厚さ0.635mmになるように研磨加工して、セラミックス基板とした。また、これらのセラミックス基板について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定し、その結果を下記表1に併せて示した。
【0032】
【表1】

【0033】
上記表1の各セラミックス基板の表面上に、発熱体としてAg−Pdペーストを、また電極として発熱体よりもシート抵抗値の低いAgペーストを、それぞれスクリーン印刷で塗布した。発熱体の形状は、図2に示すように、セラミックス基板1の表面の両端隅にそれぞれ電極3を設け、両方の電極3の間を平行な2本の発熱体2がセラミックス基板1の両端付近で180°折れ曲がりながら蛇行してジグザグに延長した形状とした。
【0034】
続いて、上記ペーストを大気中にて880℃で焼成して焼付け、各セラミックス基板1上に発熱体2と電極3を形成した。その後、SiO−B−ZnOを主成分とするガラスペーストを発熱体2上にスクリーン印刷にて塗布し、大気中にて700℃で焼き付け、絶縁層4を形成した。
【0035】
次に、絶縁層4と反対側のセラミックス基板1の表面(流体加熱面)上に、樹脂製の壁と天井で水の流路を形成し、これらを温水洗浄便座のヒータとして取り付け、ヒータの消費電力及び立ち上がり時間を測定し、その評価を行った。尚、測定条件としては、温水放出時間を30秒及び放出量は180gとした。また、加熱前の水温は20℃、加熱後の水温は37℃になるように設定した。立ち上がり時間の測定は、温水の放出開始から水温が35℃に到達するまでの時間を測定した。これらの結果を、下記表2に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
以上の結果から、熱伝導率が高いセラミックス基板、即ちAlN及びSiCを主成分とするセラミックス基板を使用したヒータは、他のヒータに比べて立ち上がり時間が極めて短くなり、消費電力も低減できることが分かる。
【0038】
実施例2
実施例1と同じ上記組成1〜5を有するシート状の各セラミックス成形体に対して、スクリーン印刷を用いてWペーストの発熱体と電極を図2の形状に塗布した。更に、発熱体を形成していない表面に対しても全面にWペーストをスクリーン印刷した後、これを実施例1と同様の条件で同時焼結した。得られた各セラミックス基板のW発熱体上に、実施例1と同じガラスペーストをスクリーン印刷により塗布した後、W発熱体が酸化しないように窒素中で焼き付けて絶縁層を形成した。
【0039】
次に、上記の各セラミックス基板の電極と、W発熱体の反対側の流体加熱面全面にNi−Pメッキを厚み2μmに形成した。この流体加熱面のメッキ面に対して、図3に示すように、アルミニウム製の壁6と天井(図示せず)で交互に180°折れ曲って蛇行したジグザグな水路を形成すると共に、その水路内に複数の銅製のフィンを配置し、窒素中にて900℃で接合した。
【0040】
その後、銅製のフィンを配置した水路内に水が流れるようにホースを接続し、これらを温水洗浄便座のヒータとして取り付け、実施例1と同様の条件でヒータの消費電力及び立ち上がり時間を測定し、その結果を下記表3に示した。この結果から、銅製のフィンを取り付けた場合、実施例1に比較して、消費電力は若干増加するものの、ヒータの立ち上がり時間は短縮されたことが分かる。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例3
実施例1で使用したものと同じ組成で且つ焼結後の厚みが0.318mmになるようにシートを成形し、内部にWの発熱体を内蔵するセラミックスヒータを作製した。このヒータ形状を形状Aとする。一方、実施例1で使用した片方の表面にガラスの絶縁層を有するセラミックスヒータも同時に用意した。このヒータ形状を形状Bとする。
【0043】
次に、これら形状A及びBの各セラミックスヒータの流体加熱面に、実施例2と同様にして、図3に示すようにジグザグな水路を形成すると共に、水路内に複数のアルミニウム製のフィン5を取り付けた。尚、発熱体を内蔵する形状Aのヒータでは、露出している両方のセラミックス基板表面のうち片方のみを流体加熱面とし、この表面にのみ水路とフィンを取り付けた。
【0044】
更に、図4に示すように、セラミックス基板1のフィン5を取り付けた流体加熱面と反対側の表面(形状Aでは露出したセラミックス面、形状Bでは絶縁層)を、セラミックス繊維又は樹脂の断熱材8で覆った。このときの樹脂としては、耐熱性のあるABS樹脂を使用した。尚、図4において、アルミニウム製の6は壁であり、7は天井である。
【0045】
その後、フィンを配置した水路内に水が流れるようにホースを接続し、これらのヒータを温水洗浄便座に取り付け、実施例1と同様の条件でヒータの消費電力及び立ち上がり時間を測定し、その結果をセラミックス基板の組成ごとに下記表4〜8に示した。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
以上の結果から、セラミックス基板の流体加熱面と反対側の表面に断熱材を設けることによって、ヒータの立ち上がり時間を一層短縮できると共に、消費電力も低減することができ、ヒータの熱効率が向上していることが分かる。
【0052】
比較例1
実施例1と同様にして、アルミニウム製のフィンを取り付けたヒータをそれぞれ作製した。ただし、セラミックス基板上の発熱体を覆うように設けた絶縁層の上にフィンを取り付け、この表面を流体加熱面とした。得られた各ヒータについて、実施例1と同様の評価を行い、その結果を下記表9に示した。
【0053】
【表9】

【0054】
以上の結果から、熱伝導率の高いセラミックス基板のヒータほど、実施例1に比べて立ち上がり時間及び消費電力が共に低下していることが分かる。これは発熱体から絶縁層表面までの熱抵抗が、発熱体からセラミックス基板の反対側の表面までの熱抵抗に比較して大きいためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による流体加熱用ヒータの一具体例を示す概略の断面図である。
【図2】本発明の流体加熱用ヒータにおいて、発熱体を形成したセラミックス基板の一具体例を示す概略の平面図である。
【図3】本発明の流体加熱用ヒータにおいて、流体加熱面にフィンを配置した水路を設けたセラミックス基板の一具体例を示す概略の平面図である。
【図4】本発明の流体加熱用ヒータにおいて、流体加熱面にフィンを配置した水路を設けると共に、反対側に断熱材を配置したセラミックス基板の一具体例を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 セラミックス基板
1a 流体加熱面
2 発熱体
3 電極
4 絶縁層
5 フィン
8 断熱材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱するためのヒータであって、平板状のセラミックス基板と、該セラミックス基板の一表面上に形成した発熱体とを備え、該セラミックス基板の熱伝導率が50W/m・K以上であり、且つ該発熱体を被覆する絶縁層が形成されていることを特徴とする流体加熱用ヒータ。
【請求項2】
前記セラミックス基板が窒化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項3】
流体を加熱するためのヒータであって、平板状のセラミックス基板と、該セラミックス基板の一表面上に形成した発熱体とを備え、該セラミックス基板が窒化珪素であり、且つ該発熱体を被覆する絶縁層が形成されていることを特徴とする流体加熱用ヒータ。
【請求項4】
前記セラミックス基板の発熱体が露出していない表面を、流体と接する流体加熱面とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項5】
前記セラミックス基板の流体加熱面に、流体との接触面積を増やすための金属部材が固着されていることを特徴とする、請求項4に記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項6】
前記金属部材が銅又はアルミニウムからなることを特徴とする、請求項5に記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項7】
前記金属部材が多数のフィンであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項8】
前記セラミックス基板の流体加熱面に、交互に折れ曲って蛇行した水路を形成し、該水路内に多数のフィンが配置されていることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項9】
前記セラミックス基板の少なくとも流体加熱面以外の表面を覆うように、断熱材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の流体加熱用ヒータ。
【請求項10】
温水洗浄便座の湯沸し用ヒータであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の流体加熱用ヒータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−147589(P2006−147589A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356840(P2005−356840)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【分割の表示】特願2000−338716(P2000−338716)の分割
【原出願日】平成12年11月7日(2000.11.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】