説明

流体軸受装置およびスピンドルモータ

【課題】小型化・薄型化された軸受において十分なラジアル軸受部長さを確保しつつ、充填された潤滑流体が漏れ出さないようにした流体軸受装置を提供する。
【解決手段】シャフトと、シャフトに対して回転自在であるスリーブと、シャフトに固定され、スリーブとの間にスラスト軸受部を形成する一対のシール部材と、スリーブの端面に形成された環状の凸部と、潤滑流体の界面を有するテーパキャピラリシール部と、一対のスラスト軸受部間を連通するスリーブに設けられた連通路と、を備え、テーパキャピラリシール部の最も狭い部分と連通路の開口部との回転中心軸からの距離が異なっていることにより、ラジアル軸受部長さを確保し、潤滑流体が漏洩しない流体軸受装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置などに使用される流体軸受装置に関するものであり、特に、両端開口型流体軸受装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていた玉軸受装置に代わって、近年、回転精度に優れ、しかも静音性にも優れている流体軸受装置を用いたスピンドルモータを搭載しているハードディスクドライブ(以下、HDDとする)は、パーソナルコンピュータ以外の多くの家電製品などに用いられてきている。
【0003】
この種のHDDに用いられるスピンドルモータに用いられている流体軸受装置としては、片端開口型の流体軸受装置と両端開口型の流体軸受装置がある。特に、両端開口型の流体軸受装置は、軸受剛性などの面で片端開口型の流体軸受装置よりも優れているためにサーバーなどの高信頼性が必要とされるHDD用として多く用いられている。
【0004】
この両端開口型の流体軸受装置として、例えば、図4に図示している特許文献1に開示された流体軸受装置がある。この流体軸受装置200は、一端がベース203に固定されたシャフト201と、シャフト201との間にラジアル軸受部206(206a、206b)を形成し、シャフト201に対して回転可能に取付けられたスリーブ202と、シャフト201に固定されスリーブ202との間にスラスト軸受部を形成すると共に軸受内部を循環する潤滑流体をシールする一対のシール部材204(204a、204b)とを有している。また、スリーブ202には、スラスト軸受部どうしを連通する第1の連通路205が形成されている。更に、スリーブ202には、連通路205とラジアル軸受部206とを連通する第2の連通路207が形成されており、ラジアル軸受部205に形成されている2つの動圧発生部(206a、206b)の間に、第2の連通路207の開口部207aが位置している。
【0005】
この流体軸受装置において、ラジアル軸受隙間、スラスト軸受隙間、第1、第2の連通路の内径および、ラジアル動圧発生溝の形状を所定の寸法、形状に設定し、図6中の矢印方向に潤滑剤が流れるような循環流を形成している。
【0006】
このような循環流を形成することで、シール部近傍の圧力を軽減し、シール部から潤滑剤が漏洩することを防止する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、シール部材204に形成されている傾斜面204cとスリーブ202の内周面202aとの間に形成されているキャピラリシール部208と同心円上に位置するようにスリーブ202に複数の連通路205を設け、連通路205に対向するシール部材204a、204bの角部204aa、204bbを残りのシール部材204a,204bの他の3つの角部よりも大きく切除した構成となっている。この構成によれば、潤滑剤に大気の圧力が伝達し易くなるため、外部からの衝撃や振動により潤滑油が軸受の上下いずれか一方の開口部に偏ったとしても、素早く軸受内に戻るようになり、その結果、潤滑油の漏洩が軽減される技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−48890号公報
【特許文献2】特開2002−70849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、HDDの小型化・薄型化に伴い、両端開口型の流体軸受装置の軸方向長さは、短くしなければならない。軸方向長さを短くするためには、ラジアル軸受部または、キャピラリシール部を短くする必要がある。
【0009】
特許文献1に開示された従来技術では、2つのラジアル軸受部の間に連通路207を確保しなければならないので、必要なラジアル軸受部長さを確保できないので、ラジアル軸受剛性が低下してしまい、ラジアル軸受部にてシャフトとスリーブが接触するという不具合を生じることとなる。
【0010】
また、特許文献2に開示された従来技術では、シール部材204a、204bの角部204aa、204bbを残りのシール部材204a,204bの他の3つの角部よりも大きく切除した構成としなければならなく、シール部分の長さが短くなり、キャピラリ−効果が低下してしまい、潤滑流体が漏洩する可能性が高くなる。
【0011】
つまり、両端開口型の流体軸受装置を小型化・薄型化するにあたり、ラジアル軸受部または、キャピラリシール部のどちらかの軸方向長さを短くする必要があり、流体軸受装置に必要な性能であるラジアル軸受剛性または、潤滑流体漏れ防止構造の一方を犠牲にしなければならないという課題を有していた。
【0012】
加えて、図6に図示しているように、連通孔205が、キャピラリシール部208と同心円上に形成されているので、軸方向の外的な衝撃・振動が流体軸受装置に加わることによりスリーブ202が上下方向に移動し、連通孔205からキャピラリシール部208に向かって急激な潤滑流体の移動が生じることとなり、流体軸受装置内部に潤滑流体が戻る前に、キャピラリシール部208から潤滑流体が漏洩するという課題も有していた。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するもので、流体軸受装置を小型化・薄型化しても、必要なラジアル軸受剛性を確保し、急激な外部からの衝撃・振動などが加わったとしても潤滑流体が外部に洩れたりすることがなく且つ、長時間にわたって良好に流体軸受装置内に潤滑流体を維持できる両端開口型の流体軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流体軸受装置は、シャフトと、シャフトが配置されている軸受穴を有し、シャフトの外周面と軸受穴との間でラジアル軸受部を形成されているシャフトに対して回転自在であるスリーブと、シャフトに固定され、スリーブとの間にスラスト軸受部を形成する一対のシール部材と、スリーブの端面に形成された筒状突出部と、筒状突出部の内周面とシール部材の外周面との間に設けられた潤滑流体の界面を有するテーパキャピラリシール部と、軸受穴とは異なる前記一対のスラスト軸受部間を連通するスリーブに設けられた連通路と、を備え、テーパキャピラリシール部の最も狭い部分と連通路の開口部との回転中心軸からの距離が異なっていることを特徴としたものである。
【0015】
また、本発明は、スラスト軸受部を形成している筒状突出部の半径方向内側であるスリーブの端面には、スラスト軸受部よりも半径方向外方部に溝部が形成されており、シール部材には、溝に間隙を介して配置されている突出部が形成されていることを特徴としたものである。
【0016】
更に、テーパキャピラリシール部の位置とラジアル軸受部の位置が、軸方向にて重なり合っていることを特徴としたものである。
【0017】
上記の構成になっていることで、ラジアル軸受部の長さを短くすることなく、テーパキャピラリシール部を必要な長さだけ確保できるので、高ラジアル剛性で、信頼性の高いシール構成が形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の流体軸受装置によれば、小型化、薄型化された場合でも、十分なラジアル軸受長さを確保できると共に、流体軸受装置の両端部に潤滑剤漏洩防止のためのシール部分を確保することが可能となり、急激な外部からの衝撃・振動などが加わったとしても、軸受性能を安定した状態で長時間にわたって良好に維持できる両端開口型の流体軸受装置を備えたスピンドルモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の流体軸受装置および、スピンドルモータの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態における流体軸受装置2を搭載したスピンドルモータ1の断面図を示す。以下の説明において、理解し易いように、図1に示すように、ハブ42側を上方(上側)、ベース3側を下方(下側)などとして説明するが、実際に使用する場合はこの配置に限るものではないことは当然である。
【0021】
[スピンドルモータ1の全体の構成]
スピンドルモータ1は、図1に示すように、主に、ベース3と、ロータ4と、流体軸受装置2と、ステータ5とを備えている。
【0022】
ベース3は、スピンドルモータ1の固定部を構成しており、記録再生装置(HDD)のハウジングの一部である。また、ベース3は、筒状部31を有しており、筒状部31の内側には、流体軸受装置2のシャフト32の一端が固定されている。
【0023】
ロータ4は、スピンドルモータ1の回転部であって、磁気回路で発生する回転力により回転駆動される。なお、ロータ4の構成については、後段にて詳述する。
【0024】
流体軸受装置2は、図1に示すように、ベース3およびステータ5に対して相対回転可能な状態で支持するための装置である。なお、流体軸受装置2については、後段にて詳述する。
【0025】
ステータ5は、後述するマグネット41とともに磁気回路を構成しており、筒状部31の外周部に固定されている。そして、この磁気回路により発生した回転方向の駆動力により、ベース3およびステータ5に対してロータ4が回転駆動される。
【0026】
[ロータ4の構成]
ロータ4は、図1に示すように、マグネット41とハブ42とを有している。
【0027】
ロータマグネット41は、ステータ5の半径方向における外周側において対向するように配置された環状の部材であって、ハブ42の内周側に固定されている。
【0028】
ハブ42は、記録ディスク(図示せず)が装着される部材であり、後述するスリーブ21(図2参照)の外周側に接着剤などにより固定されている。また、ハブ42は、図1に示すようにハブ本体43と、ディスク載置部44とを有している。
【0029】
ハブ本体43は、記録ディスクを半径方向に支持する筒状の部分であって、スリーブ21の外周側に固定されている。ハブ本体43の外周側には、例えば、2枚の記録ディスクが挿入、配置される。
【0030】
ディスク載置部44は、記録ディスクを載置するための部分であり、ハブ本体43の軸方向における下端部の外周側に形成されている。なお、記録ディスクとしては、例えば、情報アクセス手段(図示せず)によって情報を読み書きできる磁気ディスクなどが含まれる。
【0031】
[流体軸受装置2の構成]
流体軸受装置2は、図2に示すように、スリーブ21の両端が開放された両端開口型の流体軸受装置であって、シャフト32とスリーブ21とを有している。また、この流体軸受装置2は、固定されたシャフト32の周りを回転体が回転するシャフト固定型の流体軸受装置である。
【0032】
(シャフト)
シャフト32は、流体軸受装置2の固定側の部材であって、軸方向における下端部がベース3の筒状部31の内側に形成されている穴31aに固定されている。また、シャフト32は、シャフト本体32aと、第1スラストフランジ32bと、第2スラストフランジ32cとを有している。
【0033】
シャフト本体32aは、シャフト32の主要部を構成する円柱状の部材であって、スリーブ21の内周側にスリーブ21との間に微小隙間を介して配置されている。
【0034】
第1スラストフランジ32bは、例えば、シャフト本体32aに圧入接着された環状の部材であって、軸方向においてスリーブ21の軸方向下側端面と微小隙間を介して対向するようにスリーブ21の第1筒状突出部21bの内周側に配置されている。
【0035】
また、図1に図示されているように、流体軸受装置2をベース3に取付ける際に、第1スラストフランジ32bの軸方向外側の面32bbをベース3の筒状部31の内周側に形成されている面31bに当接させることで、流体軸受装置2(ディスク載置部44)の軸方向高さを容易に位置決めできるようになっており、軸方向外側の面32bbおよび、面31bを接着固定するにより、強固に流体軸受装置をベースに固定することができるようになっている。また、より強固に流体軸受装置をベースに固定するために、スラストフランジ32bの軸方向外側の面32bbに接着用の溝を形成してもよい。
【0036】
第2スラストフランジ32cは、スリーブ21に対して軸方向の第1スラストフランジ32bと反対側に配置された環状の部材であって、例えば、シャフト本体32aに対してレーザ溶接や圧入、接着等によって固定されている。また、第2スラストフランジ32cは、スリーブ21の軸方向上側端面と軸方向に微小隙間を介して対向するようにスリーブ21の第2筒状突出部21cの内周側に配置されている。
【0037】
また、第1・第2スラストフランジ32b・32cには、スリーブ21の一部と対向する側の面に、エッチング等によってスラスト動圧発生溝72a・73aが形成されている。なお、第1・第2スラストフランジ32b・32cに形成されたスラスト動圧発生溝72a・73aについては、後段にて詳述する。
【0038】
(スリーブ21)
スリーブ21は、流体軸受装置2に含まれる上下対称な回転側の筒状部材であって、シャフト32に対して相対回転可能な状態で配置された筒状の部材である。そして、スリーブ21は、例えば、外周面に複数のDカット部分が形成されたインナースリーブ23を、アウタースリーブ24に圧入(嵌挿)して組み立てることによって、後述する連通孔22eを有する筒状の部分を形成している。具体的には、スリーブ21は、前述したように、インナースリーブ23と、アウタースリーブ24とによって構成され、複数のラジアル動圧発生溝71a・71bと、第1筒状突出部21bと、第2筒状突出部21cと、複数の連通孔22eとを有している。また、インナースリーブ23とアウタースリーブ24とは、銅系合金によって形成されており、それぞれ単独にブランク加工が施された後で互いに圧入固定されて一体となる。その後、中加工、精密加工、ラジアル動圧溝加工が施されて、内径形状測定後に無電解Niりんメッキが所定厚み(約1〜10μm厚み)だけ行われる。
【0039】
ラジアル動圧発生溝71a、71bは、スリーブ21の内周面に形成された円周方向に均等に配置されたヘリングボーン形状の溝である。また、ラジアル動圧発生溝71a、71bの間には、スリーブ21の内周側に形成された環状の凹み部(図示しない)が形成されている。
【0040】
第1・第2筒状突出部21b・21cは、スリーブ21の両端部の外周部が軸方向外側に突出する筒状の部分である。第1・第2筒状突出部21b・21cの内周部には、第1・第2のスラストフランジ32b・32cが配置されており、そのため、第1・第2筒状突出部21b・21cの内径は、スリーブ21の内径より大きく設定されている。
【0041】
連通孔22eは、インナースリーブ23とアウタースリーブ24との間に形成されており、スリーブ21を軸方向に貫通するように、例えば、円周方向に均等に配置されている。
シャフト32および、スリーブ21の間には、潤滑流体46が充填されている。そして、第1スラストフランジ32bと第1筒状突出部21bとの間および、第2スラストフランジ32cと第2筒状突出部21cとの間には、後述するテーパキヤピラリシール部48a・48bが形成されている。
【0042】
そして、この流体軸受装置2では、ロータ4を半径方向に支持するラジアル軸受部71が、ラジアル動圧発生溝71a・71bを有するスリーブ21、シャフト32およびその間に介在する潤滑流体46によって構成される。また、ロータ4を軸方向に支持する第1スラスト軸受部72は、スラスト動圧発生溝72aを有する第1スラストフランジ32b、スリーブ21およびその間に介在する潤滑流体46によって構成される。さらに、ロータ4を軸方向に支持する第2スラスト軸受部73は、スラスト動圧発生溝73aを有する第2スラストフランジ32c、スリーブ21およびその間に介在する潤滑流体46によって構成される。
【0043】
ここで、回転側の部材(スリーブ21など)が固定側の部材(シャフト32など)に対して相対回転すると、各軸受部71・72・73においてにおいてシャフト32の半径方向および軸方向において、それぞれ回転側の部材と所定の隙間を空けた状態で支持する力(動圧)が発生する。これにより、回転側の部材と固定側の部材とを非接触状態として効率よくスピンドルモータ1における回転を開始することができる。
【0044】
上述したように、流体軸受装置2を構成するシャフト32、スリーブ21などの間に形成された隙間に、ラジアル動圧発生溝71a・71bおよびスラスト動圧発生溝72a,73aに流入して動圧を発生させる潤滑油46が充填されている。
【0045】
そして、本実施形態では、小型化・薄型化された軸受において十分なラジアル軸受部長さを確保しつつ、充填された潤滑流体46が漏れ出さないようにすることを目的として、図2に示すように第1・第2スラストフランジ32b・32cの外周部にスリーブ21に向かって延びている突出部32bd・32cdが形成され、スリーブ21には、突出部32bd・32cdが配置されている環状凹部24a・24bが形成されている。
【0046】
図3を用いて、さらに詳細に説明する。
図3は、図2における流体軸受装置2のテーパキャピラリシール部48bの拡大図である。第2のスラストフランジ32cは、環状の板状部32dと軸方向内方に突出している突出部32eとを有している。
【0047】
第2のスラストフランジ32cは、環状の板状部32dの内周側面がシャフトに形成されている段部32aaに当接した状態で、環状の板状部32dの内周面32ddがシャフトに圧入接着されることで、固定されている。本実施例では、圧入接着固定としているが、レーザ溶接固定、接着固定、圧入固定などの工法を用いて固定してもよい。
【0048】
また、環状の板状部32dのスリーブ21の端面23bと対向している面32bdには、ヘリングボーン形状の動圧発生溝73aが、エッチング工法にて形成されている。動圧発生溝73aは、スパイラル形状でもよく、また、切削加工、プレス加工などの工法で形成してもよい。
【0049】
また、環状の板状部32dは、第2スラスト軸受部73を形成している部分でもあり、微小隙間を精度よく且つ、歪などが生じにくい剛性の高い材料で構成しなければならないために、ステンレス材、鉄系材などの材質にて形成されている。
【0050】
第2のスラストフランジ32cの突出部32eは、環状の板状部32dの外周部に形成されており、突出部32eの外周面32eeが、スリーブ21の筒状突出部21bに対向するように配置されている。筒状突出部21bと外周面32eeにて形成されている隙間は、軸方向外側に向かって隙間が大きくなるように、外周面32ebに傾斜面が形成されており、テーパキャピラリシール部48bが形成されている。
【0051】
突出部32eは、第2スラスト軸受部73を形成しているのではないので、その材質については、樹脂などの成形し易い材料などでよい。
【0052】
また、第2スラストフランジ32cを形成している環状の板状部32dと突出部32eは、環状の板状部32dをプレス工法にて形成し、インサート成形にて突出部32eを設けている。
【0053】
一方、第2スラストフランジ32cに軸方向で対向しているスリーブ21の端面23bには、連通孔22eと環状凹部24aが形成されている。
【0054】
連通孔22eは、アウタースリーブ24とインナースリーブ23の間に形成されており、第1スラスト軸受部72と第2スラスト軸受部73を連通している。連通孔22eの開口部22eeは、環状の板状部32dに対向しているインナースリーブ23の端面23bに形成されており、第2スラスト動圧発生溝73aより半径方向外側に位置している。
【0055】
環状凹部24aは、筒状突出部21bより半径方向内側のアウタースリーブ24の端面に形成されている。環状凹部24aには、第2スラストフランジの突出部32eが、図3に図示している隙間A・B・Cを介して位置するように配置されている。
【0056】
第2スラストフランジ32cの突出部32eの外周面32eeとスリーブ21の筒状突出部21bおよび、環状凹部24aにて形成されているテーパキャピラリシール部48bおよび、隙間Aが形成されている部分は、スリーブ21(インナースリーブ23)内周面23cとシャフト外周面32zとの間に形成されているラジアル軸受部71とは軸方向で重なるように配置されている。つまり、ラジアル軸受部71の軸方向長さは、テーパキャピラリシール部48bの軸方向長さに関係無く軸方向長さを設定できるので、より最適なラジアル軸受部長さを確保することが可能となり、より最適な軸受剛性を確保することが可能となる。
【0057】
また、第2スラストフランジ32cの外周面32eeに形成されている傾斜面32ebと筒状突出部21に加えて、傾斜面32ebと環状凹部24aとの間にも、テーパキャピラリシール部が形成されているので、潤滑流体46の膨張・収縮などによる界面の変化が生じても、キャピラリ効果を十分に保持することが可能である。
【0058】
また、第2スラストフランジ32cの突出部32eと環状凹部24aとにより形成されている隙間B・Cにも潤滑流体46が保持されており、テーパキャピラリシール部48bの潤滑流体46が蒸発したとしても潤滑流体46の界面46aは、直ぐに軸受部または、連通孔22eに達することがないので、軸受隙間への気泡の混入が防止できるとともに、軸受寿命を延ばすことが可能であり、流体軸受装置としての信頼性が向上する。
【0059】
更に、連通孔22eの開口部22eeが、テーパキャピラリシール部48bより、半径方向内側に形成されているために、外的な衝撃・振動が流体軸受装置に加わり、連通孔22eを通ってテーパキャピラリシール部48bに向かう急激な潤滑流体の流れが生じたとしても、隙間A・B・Cが形成されているために急激な潤滑流体46の流れが分断されることとなり、テーパキャピラリシール部46bの界面46aに伝達しにくく、潤滑流体46の漏洩を防止することが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、潤滑流体を内部に有する、例えば、HDD用スピンドルモータや、高密度光ディスク用スピンドルモータなどに搭載される流体軸受装置に対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1における流体軸受装置を搭載したスピンドルモータの断面図
【図2】本発明の実施の形態1における流体軸受装置の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における流体軸受装置のテーパキャピラリシール部の拡大断面図
【図4】従来の流体軸受装置を搭載したスピンドルモータの断面図
【符号の説明】
【0062】
1 スピンドルモータ
2、200 流体軸受装置
21、202 スリーブ
21b、21c 筒状突出部
22e 連通孔
23 インナースリーブ
24 アウタースリーブ
24a、24b 環状凹部
3、203 ベース
31 筒状部
31a 穴
32、201 シャフト
32a シャフト本体
32b、32c スラストフランジ
32d 環状の板状部
32e 突出部
4 ロータ
41 マグネット
42 ハブ
43 ハブ本体
44 ディスク載置部
46 潤滑流体
48a、48b テーパキヤピラリシール部
5 ステータ
71、206 ラジアル軸受部
71a、71b、72a、73a 動圧発生溝
72、73 スラスト軸受部
202a 内周面
204、204a、204b シール部材
204c 傾斜面
204aa、204bb 角部
205、207 連通路
207a 開口部
208 キャピラリシール部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトが配置されている軸受穴を有し、前記シャフトの外周面と前記軸受穴との間でラジアル軸受部が形成されている前記シャフトに対して回転自在であるスリーブと、
前記シャフトに固定され、前記スリーブとの間にスラスト軸受部を形成する一対のシール部材と、
前記スリーブの端面に形成された筒状突出部と、
前記筒状突出部の内周面と前記シール部材の外周面との間に設けられた前記潤滑流体の界面を有するテーパキャピラリシール部と、
前記軸受穴とは異なる前記スラスト軸受部間を連通する前記スリーブに設けられた連通路と、を備え、
前記テーパキャピラリシール部の最も狭い部分と前記連通路の開口部との回転中心軸からの距離が異なっていることを特徴とする流体軸受装置。
【請求項2】
前記スラスト軸受部を形成している前記筒状突出部の半径方向内側である前記スリーブの端面には、前記スラスト軸受部よりも半径方向外方部に溝部が形成されており、前記シール部材には、前記溝に間隙を介して配置されている突出部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の流体軸受装置。
【請求項3】
前記テーパキャピラリシール部の位置と前記ラジアル軸受部の位置が、軸方向にて重なり合っていることを特徴とする請求項2記載の流体軸受装置。
【請求項4】
前記突出部を有する前記シール部材は、前記突出部が樹脂材であり、その他の部分がステンレスなどの金属材料であり、インサート成形にて製造されていることを特徴とする請求項1〜3に記載の流体軸受装置。
【請求項5】
前記一対のシール部材のうち、一方のシール部材は、前記シャフトと一体成形されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の流体軸受装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の流体軸受装置を備えたスピンドルモータ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−8200(P2009−8200A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171466(P2007−171466)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】