説明

流量制御装置および流量制御方法

【課題】流路を流通する流体の流量制御の安定化を図る。
【解決手段】流体が流通する流路の開度を調整可能なバルブ41と、流体の流量を検出する流量検出部34と、流量検出部34の検出結果と流量に関する設定値とに基づいて、バルブ41に供給される駆動電圧をパルス幅変調するバルブ駆動部53と、前記駆動電圧の変動に応じて前記パルス幅変調のパルス幅を補正する制御部57,71と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体等の流体の流量を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流量制御装置として、下記の特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1に記載の流量制御装置は、ソレノイド弁を備え、ソレノイド弁によってガス等の流体の流路の開度を制御することで、流量の制御が可能である。流量を所定の設定値に制御する場合には、流路に設けられたフローセンサ(流れセンサ)の検出値と流量設定値との比較結果(差分)が最小となるように、ソレノイド弁による流路の開度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−205917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソレノイド弁の駆動方式には、電圧駆動方式、電流駆動方式、直接パルス駆動(PWM:Pulse Width Modulation)方式等がある。いずれの方式でも、ソレノイド弁を駆動する電圧に変動が生じると、その変動に伴って制御流量にフラツキが生じて好ましくない状況が生じ得る。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、流量制御の安定化を図ることにある。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流量制御装置の一態様は、流体が流通する流路の開度を調整可能なバルブと、前記流体の流量を検出する流量検出部と、前記流量検出部の検出結果と前記流量に関する設定値との比較結果に応じたパルス幅を有する信号を受けて、前記バルブに供給される駆動電圧をパルス幅変調するバルブ駆動部と、前記駆動電圧の変動に応じて前記パルス幅を補正する制御部と、を備える。
【0007】
ここで、前記制御部は、前記駆動電圧の下降時に、前記パルス幅が大きくなる方向に前記補正を行ない、前記駆動電圧の上昇時に、前記パルス幅が小さくなる方向に前記補正を行なう、こととしてもよい。
【0008】
また、前記補正は、前記変動前後の駆動電圧とパルス幅との積の変動が少なくなる方向に行なう、こととしてもよい。例えば、前記補正は、前記変動後の駆動電圧と前記補正後のパルス幅との積が、前記変動前の駆動電圧と前記補正前のパルス幅との積と変わらないように、前記補正後のパルス幅を決定することができる。
【0009】
さらに、前記バルブは、比例ソレノイドバルブである、こととしてもよい。
【0010】
また、前記バルブ駆動部は、前記信号に応じてスイッチング動作するトランジスタと、前記スイッチング動作に伴い前記比例ソレノイドバルブに生じる逆誘導起電力を消費するダイオードと、を備えることとしてもよい。
【0011】
さらに、本発明の流量制御方法の一態様は、流体が流通する流路の開度を調整可能なバルブを備えた流量制御装置における流量制御方法であって、前記流体の流量を検出する流量検出過程と、前記流量検出過程での検出結果と前記流量に関する設定値との比較結果に応じたパルス幅を有する信号を受けて、前記バルブに供給される駆動電圧をパルス変調するバルブ駆動過程と、前記駆動電圧の変動に応じて前記パルス幅を補正する制御過程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、バルブの駆動電圧の変動に伴うバルブ駆動電力のフラツキを抑制して安定化することができる。結果、流量制御のフラツキを抑制することができ、流量制御の性能改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る流量制御装置(マスフローコントローラ、MFC)の一例を示す図である。
【図2】図1に例示するフローセンサの構成例を示す模式的斜視図である。
【図3】図2に示すVI−VI矢視断面図である。
【図4】図1に例示するMFCのバルブの制御に関係する電気回路に着目したブロック図である。
【図5】図1に例示するCPUによるパルス幅補正処理を説明する模式図である。
【図6】電源電圧変動時の影響を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0015】
図1は、一実施形態に係る流量制御装置(マスフローコントローラ、MFC)の一例を示す図である。図1に例示するMFC21は、内部に流体の流路25が形成された流路ブロック22と、流路ブロック22の入口側に設けられて配管との接続部を成す入口配管接続用ブロック23と、を備える。流体は、空気、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、炭酸ガス(CO2)、酸素(O2)、水素(H)、ヘリウム(He)、都市ガス、メタン(CH4)、プロパン(C38)、ブタン(C410)などの気体(ガス)でもよいし、液体でもよい。以下の説明では、一例として気体(ガス)を対象とする。また、MFC21は、例えば、バーナー等の空燃比制御や、蒸着、スパッタリング、プラズマクリーニング等で用いられる真空チャンバ内のガス量(混合比)制御などに適用可能である。
【0016】
流路ブロック22と入口配管接続用ブロック23との間には、流路25へ流れる流体を整流する整流部材31を介装することができる。整流部材31には、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属製の金網や、樹脂製の格子部材等を適用することができる。整流部材31は、例えば、整流部材31を挟持するスペーサ32を用いて流路ブロック22と入口配管接続用ブロック23との間に固定することができる。整流部材31は、例えば、入口配管接続用ブロック23とスペーサ32との間にゴム等の弾性部材36を挿入してスペーサ32に流路25に向かう方向の圧力を加えることで、反対側の流路ブロック22に設けられた段部33にて係止することができる。
【0017】
流路25を形成する流路ブロック22の内壁には、フローセンサ(流れセンサ)34を設けることができる。フローセンサ34は、流路25を流通する流体の流量を検出する流量検出部の一例であり、例えば、ダイアフラムを有する熱式流量センサを採用することができる(ただし、流体の種類に応じて、超音波式など既知の他の流量センサを適用することも可能である)。
【0018】
例えば図2及び図3に示すように、気体の計測に適したフローセンサ34は、キャビティ16が設けられた基板10、基板10上にキャビティ16を覆うように配置された薄膜15、薄膜15に設けられたヒータ(以下、「抵抗素子」とも称する。)11、薄膜15においてヒータ11を挟んでヒータ11の両サイドに設けられた一対の抵抗素子12及び13、薄膜15のキャビティ16を覆う領域を避けて基板10の一辺側に設けられた周囲温度センサ(以下、「抵抗素子」とも称する。)14等を有している。
【0019】
このような構成を有するフローセンサ34は、例えば図2及び図3中にブロック矢印で示すように、測定対象のガスの流れる方向に沿って、抵抗素子12,ヒータ11及び抵抗素子13が順に並ぶように配置することができる。この場合、抵抗素子12は、ヒータ11よりも上流側に設けられた上流側測温抵抗素子として機能し、抵抗素子13は、ヒータ11よりも下流側に設けられた下流側測温抵抗素子として機能する。
【0020】
薄膜15のキャビティ16を覆う部分は、熱容量が小さく、基板10に対して断熱性を有するダイアフラムをなす。周囲温度センサ14は、流路25を流通するガスの温度を測定する。ヒータ11は、例示的に、キャビティ16を覆う薄膜15の中心に配置されており、周囲温度センサ14が計測した流体の温度よりも一定温度(例えば10℃)高くなるように、加熱される。上流側測温抵抗素子12は、ヒータ11よりも上流側の温度を検出するのに用いられ、下流側測温抵抗素子13は、ヒータ11よりも下流側の温度を検出するのに用いられる。
【0021】
ここで、流路25においてガスが静止している場合、ヒータ11で加えられた熱は、上流方向及び下流方向へ対称的に拡散する。従って、上流側測温抵抗素子12及び下流側測温抵抗素子13の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子12及び下流側測温抵抗素子13の電気抵抗は等しくなる。これに対し、流路25内のガスが上流から下流に流れている場合、ヒータ11で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。従って、上流側測温抵抗素子12の温度よりも、下流側測温抵抗素子13の温度が高くなる。
【0022】
このような温度差は、上流側測温抵抗素子12の電気抵抗と下流側測温抵抗素子13の電気抵抗との間に差を生じさせる。下流側測温抵抗素子13の電気抵抗と上流側測温抵抗素子12の電気抵抗との差は、流路25内のガスの速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子13の電気抵抗と上流側測温抵抗素子12の電気抵抗との差を基に、流路25を流れる流体の速度や流量を算出できる。抵抗素子11、12及び13の電気抵抗の情報は、図2に例示するように基板10(薄膜15)の対角関係にある角部近傍に設けられた電極パッド17を通じて電気信号(センサ信号)として取り出すことができる。電極パッド17は、後述する信号処理回路52(図1参照)と電気的に接続される。
【0023】
なお、図2及び図3に示す基板10の厚みは、例えば0.5mmであり、基板10の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。ただし、基板10の寸法、形状は、これらに限られない。基板10の材料としては、例示的に、シリコン(Si)等が使用可能である。薄膜15の材料としては、例示的に、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。
【0024】
キャビティ16は、基板10の一方の面の略中央部に異方性エッチングやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術等を用いて形成することができる。図2及び図3には、一例として舟形凹状のキャビティ16が形成された様子を例示している。各抵抗素子11,12,13,14のそれぞれの材料には、白金(Pt)等が使用可能である。また、各抵抗素子11,12,13,14の形成には、リソグラフィ法等が適用可能である。
【0025】
図1に戻って、流路ブロック22の出口側には、例示的に、比例ソレノイドバルブ41、流路25からのガスの流れる流路43及び流路44が形成された弁座42、流路43と流路44とを連通する弁室45、弁室45に収納されて流路44を開閉する弁体46、および、流路ブロック22と弁座42との間をシールするシール部材49等が設けられる。
【0026】
比例ソレノイドバルブ(電磁比例弁)41は、流路44から流出するガスの量を制御(調節)する調節弁の一例であり、弁体46に連結された磁性を有するプランジャ47と、入力電力(電流)に応じて発生する電磁力によってプランジャ47を流路ブロック22に近づく又は離れる方向へ連続的に移動可能なコイル48とを備える。
【0027】
つまり、コイル48に供給される電流に応じた電磁力によってプランジャ47が連続的に移動することにより、プランジャ47に連結された弁体46による流路44の開度を連続的に制御することができる。その結果、流路25、流路43、及び流路44を通じて出口へ流出するガス量を連続的に制御することが可能である。なお、調節弁には、比例ソレノイドバルブ41に限らず、電動モータや流体プランジャをアクチュエータとして用いたもの、ボール弁、バタフライ弁等を用いたもの等、様々な応用例を採用することが可能である。
【0028】
上述した流量制御は、例えば、通常運用時(モード)において、フローセンサ34で検出(モニタ)されるガス流量が所定の設定流量(流量設定値)となるようになされる。なお、MFC21の試験、保守点検、診断などの通常運用以外の動作モードでは、流路44の開度を、フローセンサ34の検出結果や設定流量によらずに制御することも可能である。また、流路44の開度を全開あるいは所定開度に固定すると、MFC21は、流量計として使用することも可能である。
【0029】
MFC21は、図1に例示するように、上述したソレノイドバルブ41(以下、単に「バルブ41」ともいう)の制御を行なう制御部51、フローセンサ34からのセンサ信号を処理する信号処理回路52、および、制御部51からの制御に応じてソレノイドバルブ41を駆動制御する駆動回路53を備える。さらに、MFC21は、制御部51に流量設定値を含む所定の指令信号を入力するのに用いられる流量設定部54、MFC21の現在の運転状態を表示するのに用いられる運転状態表示部55、及び/又は、ガスの流量や動作モードを文字表示するデジタルディスプレイ56を備えることもできる。
【0030】
制御部51は、例示的に、CPU(あるいはマイクロコンピュータ)57、ROM59、EEPROM60、及びRAM61等を備えたマイクロコンピュータとして構成できる。CPU57は、信号処理回路52で処理されたガスの流量の検出値、および、流量設定部54からの流量設定値を受信し、これらの値に基づいて駆動回路53を制御してバルブ41、ひいては流路44の開度を制御する。CPU57及び駆動回路53の動作電力(電流)は、例えばコネクタ58に接続される電源から供給可能である。なお、コネクタ58は、CPU57を通じて外部機器との間で信号(情報)を送受信する信号入出力インタフェースを備えていてもよい。
【0031】
ROM59は、ユーザの流量設定部54に対する情報入力操作や、CPU57での演算処理を規定するアルゴリズム、制御プログラムなどを保持している。EEPROM60は、不揮発性メモリの一例であり、MFC21の動作モード等に応じたパラメータ等を記憶する。動作モードに応じたパラメータ等をEEPROM60に記憶することで、停電等があっても動作モードを設定し直す手間を省くことが可能である。RAM61は、CPU57のワークエリアとして用いられ、また、CPU57で演算、測定された流量データなどを記憶する。
【0032】
上述したMFC21は、バルブ41の制御に関係する電気回路に着目すると、図4のように表わすことができる。図4に例示するMFC21は、既述のフローセンサ34、ソレノイドバルブ41(コイル48)、マイクロコンピュータ57、信号処理回路52、駆動回路53、及び流量設定部54を備えるほか、電源電圧検出回路71、既述のコネクタ58に接続された直流(DC)電源72、及び電源回路73を備える。
【0033】
DC電源72は、例えば単相交流100ボルトの元電源から電力の供給を受けて、所定のDC電圧に変換し、例えば24VのDC電圧を、コネクタ58経由で電源回路73に供給する。電源回路73は、コネクタ58からのDC電圧の供給を受けて、例えばマイクロコンピュータ57の動作電力を供給する。DC電圧は、バルブ駆動電圧の一例として、信号ライン(電源ライン)80を介しバルブ41(コイル48)にも供給される。したがって、後述するようにDC電圧の変動は、バルブ41の駆動に影響する。電源ライン80の途中には、直列接続された抵抗R1及び抵抗R2が並列接続されており、抵抗R1及び抵抗R2間の電圧がマイクロコンピュータ57に内蔵のアナログ−デジタル(A/D)コンバータに入力される。
【0034】
抵抗R1及び抵抗R2は、電源ライン80の電圧をそれぞれの抵抗値の比で分圧してA/Dコンバータに入力する電源電圧検出回路(分圧回路)71として機能する。本例において、分圧回路71は、A/Dコンバータへの入力電圧を適正な範囲に収めるように電圧調整(降圧)する役割を果たす。分圧回路71は、制御部51の要素として位置付けてもよい。
【0035】
抵抗R1及びR2の抵抗値は、固定値でもよいし、A/Dコンバータへの入力電圧を適宜に調整可能なように可変としてもよい。また、A/Dコンバータは、マイクロコンピュータ57の外部に設けられてもよい。いずれにせよ、電源電圧検出回路71は、電源ライン80の電圧変動をマイクロコンピュータ57で監視できるよう、電源ライン80をマイクロコンピュータ57に電気的に接続可能な構成であれば足りる。
【0036】
以上の構成により、マイクロコンピュータ57は、電源ライン80を介してバルブ41(コイル48)に供給される駆動電圧(電源電圧)をデジタル値にて取得、監視することが可能となる。
【0037】
駆動回路(バルブ駆動部)53は、バルブ41に制御信号(バルブ駆動信号)を与える。バルブ41を制御(駆動)するのに要する電流は、バルブ41(負荷)の大きさにもよるが、例示的に、100〜400ミリアンペア(mA)程度である。
【0038】
バルブ41の駆動方式には、例えば、電圧駆動方式、電流駆動方式、直接パルス駆動(PWM:Pulse Width Modulation)方式等がある。一例として、PWM駆動方式を採用する場合、マイクロコンピュー57は、フローセンサ34で検出された流量信号と、流量設定部54により設定された流量設定値とを比較演算し、その演算結果である差分に応じたパルス幅(デューティ比)を有する信号(PWM信号)を生成する。駆動回路53は、当該PWM信号に従ってバルブ41を駆動する。すなわち、駆動回路53は、マイクロコンピュータ57からのPWM信号に従ってバルブ41に供給される駆動電圧(DC電圧)をパルス幅変調する。
【0039】
ここで、マイクロコンピュータ57は、フローセンサ34による検出結果と流量設定値との差分が最小となるようにPWM信号のデューティ比を調整するように動作する。なお、マイクロコンピュータ57は、前記比較演算を周期的(例えば、5ミリ秒周期等)に実施して、所定周期(変調速度)のPWM信号を生成、出力することができる。PWM信号の周期(変調速度)は、バルブ41が追従(応答)可能な周期(例えば、数十ミリ秒等)よりも短い周期(例えば1ミリ秒)であればよい。
【0040】
PWM駆動方式の駆動回路(以下、PWM駆動回路ともいう)53は、例示的に、トランジスタをスイッチング素子として用いたスイッチング回路とすることができる。トランジスタには、バイポーラトランジスタ及び電界効果トランジスタ(FET)のいずれを用いてもよい。FETには、MOS(Metal Oxide Semiconductor) FET、パワーMOS FET等も含まれる。一例として、図4には、FETを用いた駆動回路53を示している。図4に例示する駆動回路53は、ゲート(G)、ドレイン(D)及びソース(S)を有するFET Q1と、ダイオード531と、を備える。
【0041】
FET Q1のゲートはマイクロコンピュータ57に接続され、上述した駆動信号の一例としてのPWM信号がマイクロコンピュータ57から入力される。FET Q1のソースは接地され、FET Q1のドレインには、バルブ41のコイル48の一端と、ダイオード531のアノードとがそれぞれ接続され、ダイオード531のカソードは、電源ライン80に接続される。このような構成により、PWM駆動回路53は、PWM信号のオン/オフに応じてFET Q1がスイッチング動作し、このスイッチング動作によって電源ライン80を介してバルブ41に供給される電圧がパルス幅変調される。
【0042】
なお、ダイオード531は、還流ダイオードあるいはフリーホイールダイオードと呼ばれ、FET Q1のスイッチング動作に伴ってコイル48に蓄積される電磁エネルギー(逆誘導起電力)を消費することで、FET Q1のドレイン電圧が許容電圧を超えてFET Q1が破壊されることを防止できる。
【0043】
以上のようなPWM駆動回路53は、構成がシンプルであり、また、FET Q1がスイッチング動作であり、ほとんど発熱しないため、放熱対策が必要ないというメリットがある。
【0044】
ところで、図4に例示する構成のMFC21に供給されるDC電圧が変動すると、信号ライン80の電圧が変動し、バルブ駆動電圧も変動する。電圧変動が緩やかな場合は、マイクロコンピュータ57での前記比較演算によるフィードバック制御が追従できるから、電圧変動を吸収することができる。しかし、短時間に急激な変動が生じると、PWM信号のフィードバック制御が追従できず、電圧変動の影響を吸収できない。
【0045】
例えば、図6に示すように、(1)DC電源72に電圧を供給する交流電源(元電源)(例えばAC100V)が落雷等によって瞬間的に停止したり電圧降下が生じたりすると、(2)DC電源72からMFC21に供給される電圧にも瞬間的な電圧降下が現れる。このような瞬間的な電圧降下は、追従制御の遅れをもたらし、結果として、(3)バルブ駆動電圧にフラツキが生じ、制御流量にフラツキが生じる。このような制御流量のフラツキは、例えば、MFC21をバーナー等の空燃比制御に用いるようなアプリケーションにおいて、空燃比のバランスを崩しかねない。
【0046】
そこで、本例では、既述のように電源電圧検出回路71からマイクロコンピュータ57のA/Dコンバータに電源ライン80の電圧を取り込んで、バルブ駆動電圧の変動をマイクロコンピュータ57にて監視する。そして、マイクロコンピュータ57は、バルブ駆動電圧の変動を検知すると、その変動率に応じて駆動回路53に与えるPWM信号のパルス幅(デューティ比)を補正する。これにより、駆動回路53からバルブ41に与えられるバルブ駆動電圧のパルス幅が補正される。パルス幅の補正は、例えば、電圧下降時にはバルブ駆動信号のオン時間(パルス幅)が大きくなる方向に、逆に、電圧上昇時には小さくなる方向に行なう。
【0047】
一例を図5に示すと、マイクロコンピュータ57は、(1)バルブ駆動電圧の変動(低下)を検出すると、(2)パルス幅(オン時間)を長くする方向に補正することができる。その際、マイクロコンピュータ57は、電圧変動検出前後でPWM信号のオン電圧とオン時間との積(電力)の変動を少なくする方向に、理想的にはその積が変わらないように、補正後のパルス幅を決定することができる。逆に、バルブ駆動電圧の上昇時には、マイクロコンピュータ57は、パルス幅を短くする方向に補正することができる。この場合も、マイクロコンピュータ57は、電圧変動検出前後でバルブ駆動信号のオン電圧とオン時間とが変わらないように、補正後のパルス幅を決定することができる。つまり、バルブ駆動電圧の変動によるバルブ駆動電力の過不足を、PWM信号のオン時間(パルス幅)の調整によって補うことができる。
【0048】
以上のようなパルス幅の補正により、電源電圧変動に伴うバルブ駆動電力のフラツキ、ひいてはMFC21の制御流量のフラツキを抑制することができる。したがって、MFC21の性能改善を図ることが可能となる。MFC21を空燃比制御に用いるようなアプリケーションにおいては、空燃比制御の安定性、安全性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10 基板
11 ヒータ(抵抗素子)
12,13 抵抗素子
14 周囲温度センサ(抵抗素子)
15 薄膜
16 キャビティ
17 電極パッド
21 流量制御装置(MFC)
22 流路ブロック
23 入口配管接続用ブロック
25,43,44 流路
31 整流部材
32 スペーサ
33 段部
34 フローセンサ
36 弾性部材
41 比例ソレノイドバルブ
42 弁座
45 弁室
46 弁体
47 プランジャ
48 コイル
49 シール部材
51 制御部
52 信号処理回路
53 駆動回路
54 流量設定部
55 運転状態表示部
56 デジタルディスプレイ
57 CPU(あるいはマイクロコンピュータ)
58 コネクタ
71 電源電圧検出回路(分圧回路)
72 DC電源
73 電源回路
531 ダイオード
Q1 トランジスタ(FET)
R1,R2 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路の開度を調整可能なバルブと、
前記流体の流量を検出する流量検出部と、
前記流量検出部の検出結果と前記流量に関する設定値とに基づいて、前記バルブに供給される駆動電圧をパルス幅変調するバルブ駆動部と、
前記駆動電圧の変動に応じて前記パルス幅変調のパルス幅を補正する制御部と、
を備えた、流量制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記駆動電圧の下降時に、前記パルス幅が大きくなる方向に前記補正を行ない、前記駆動電圧の上昇時に、前記パルス幅が小さくなる方向に前記補正を行なう、請求項1記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記補正は、
前記変動前後の駆動電圧とパルス幅との積の変動が少なくなる方向に行なう、請求項1又は2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記補正は、
前記変動後の駆動電圧と前記補正後のパルス幅との積が、前記変動前の駆動電圧と前記補正前のパルス幅との積と変わらないように、前記補正後のパルス幅を決定することを含む、請求項3記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記バルブは、比例ソレノイドバルブである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記バルブ駆動部は、
前記信号に応じてスイッチング動作するトランジスタと、
前記スイッチング動作に伴い前記比例ソレノイドバルブに生じる逆誘導起電力を消費するダイオードと、
を備えた、請求項5記載の流量制御装置。
【請求項7】
流体が流通する流路の開度を調整可能なバルブを備えた流量制御装置における流量制御方法であって、
前記流体の流量を検出する流量検出過程と、
前記流量検出過程での検出結果と前記流量に関する設定値とに基づいて、前記バルブに供給される駆動電圧をパルス幅変調するバルブ駆動過程と、
前記駆動電圧の変動に応じて前記パルス幅変調のパルス幅を補正する制御過程と、
を有する、流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−224898(P2010−224898A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71867(P2009−71867)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】