液体搬送基板、分析システム、分析方法
【課題】従来の複数の電極から構成される液体流通路で結ばれた液体搬送基板では,駆動条件からスループットが低下してしまうという問題があった。
【解決手段】導入部から測定部までの液体流通路と測定部から排出部までの液体流通路が重ならないように,導入部と排出部を結んだ液体流通路の途中に測定部を配置し,導入から排出までの操作を基板上で一方向に処理する。
【効果】本発明によれば,多数の分析を行う場合でも,一方向に順次搬送することにより短時間で測定を終えることが可能となる。
【解決手段】導入部から測定部までの液体流通路と測定部から排出部までの液体流通路が重ならないように,導入部と排出部を結んだ液体流通路の途中に測定部を配置し,導入から排出までの操作を基板上で一方向に処理する。
【効果】本発明によれば,多数の分析を行う場合でも,一方向に順次搬送することにより短時間で測定を終えることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上で液体を搬送し,その液体の状態やその液体に含まれる成分量を測定する分析システムに関する。特にハイスループットな処理を必要とする分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,試料中に含まれる成分量を測定する分析システムにおいては,試薬コストの削減や,環境への負荷低減のため,分析に用いる反応液の微量化が求められている。現在の分析システムはプラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬を分注し,これらを混合して反応液とした後,反応液からの発光量や,透過光量を測定することで成分量を測定している。この方式で反応液を微量化した場合,液の取り扱いが困難になり,分注・混合時に気泡が発生し,正確な測定ができなくなるという問題があった。このため的確に微量液体をハンドリングする技術が求められていた。
【0003】
最近,微量液体をハンドリングする技術として,基板上の液体を電気的な制御により搬送する方式が注目されている。この方式には一般的に次の二つの方式が用いられている。
一つ目の方式は,複数の電極を有した二つの対向する基板間に搬送する液体を挟みこみ,二つの対向する板の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで,液体を駆動する方式(例えば[特許文献1])である。通常,片方の基板上に液体を搬送させる液体流通路に沿って多数の電極が配置され,もう一方の基板上に一面にグランドに繋がれた一つの電極を備える。液体がいくつかの電極にまたがって静置している状態で液体下部の電極の一つに電圧を印加すると,電気毛管現象(例えば[特許文献2])により電圧を印加した電極上の液体の濡れ性が良くなり,最終的にその電圧を印加した電極の真上にその液体が移動する。これを繰り返し搬送する。
【0004】
もう一つの方式として,多数の電極を有した一つの基板の上に搬送する液体を供給し,液体付近の電極に電圧を印加して,液体を駆動する方式(例えば[特許文献3])がある。多数の電極は液体を搬送させる液体流通路に沿って配置される。液体の下部に存在する電極と液体付近の電極との間に電界を形成し,電界の力を利用し,駆動させる。これを繰り返し搬送する。
【0005】
これらの両方式とも微量な液体を搬送することが可能である。また二つの微量な液体同士を同じ電極上に移動することにより混合させることが可能であり,さらには一つの液体を二つに分割することも可能である。このような電極を配置した基板上で電圧印加する電極を切り替えることで微量液体を搬送し,分析するシステムの利点は,単一もしくは二枚の基板を利用するため,周囲が壁に囲まれた容器に比べ気泡の影響を受けにくいことや,電極に電圧を印加するだけで基板内の自由な場所で多数の液体を独立して駆動できること,また電圧を印加することにより液体の置かれる場所を指定できるため,試料からの情報を得る測定部を設け測定する場合,試料や反応液がいつ測定部に到達するのか,タイミングを計りやすいことなどが挙げられる。基板上での分析システムを考案したものとしての報告もなされている(例えば[非特許文献1]及び[非特許文献2])。
【0006】
上記文献記載の分析システム例では,基板上に試料を導入する試料導入部,試薬と混合する混合部,測定のための測定部,反応液を排出する排出部が存在し,各部は多数の電極から形成される液体流通路で結ばれている。試料導入部から導入された試料は,液体流通路を搬送され,混合部において試薬と混合され反応液となり,測定部で成分を測定後,再び同じ液体流通路を搬送され,排出部にて排出される。
【0007】
【特許文献1】特開昭60-216324号公報
【0008】
【特許文献2】特開2004-000935号公報
【特許文献3】特開平10-267801号公報
【特許文献4】特開第2004-22165号公報
【特許文献5】特開平第10-267801号公報
【非特許文献1】R. B. Fair et al. ”Electrowetting-based On-Chip Sample Processing for Integrated Microfluidics” IEEE Inter. Electron Devices Meeting 2003
【非特許文献2】Vijay Srinivasan et al. ”Clinical diagnostics on human whole blood, plasma, serum, urine, saliva, sweat, and tears on a digital microfluidic platform” μTAS 2003
【非特許文献3】Eric Bakker, Philippe Buhlmann, and Erno Pretsch Chem. Rev.1977,97,3083-3132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献記載の分析システム例では,多数の分析を行う場合について配慮がされておらず,試料導入部から測定部に搬送するための液体流通路部分と測定部から排出部まで搬送するための液体流通路部分を共用しているために,基板上で試料を分析するために搬送させる分析ルートに重なりが生じていた。これは装置を小型化するために基板内で液体流通路をコンパクトに折り曲げて配置するという理由があってのことであるが,多数の分析を行う際は,前の試料の測定が終わり,排出部まで搬送されるまで,次の試料は分析ルートにおいて重なりを持つ液体流通路部分よりも導入部側で待機しなければならなかった。そのためすべての分析が終わるまで非常に多くの時間がかかるという問題があった。また,測定前の試料と,測定後の試料もしくは試薬と反応した反応液とがぶつからないよう,時間差をもって駆動することが必要となり,スループットが低下してしまうという問題があった。本発明は小型にして,多数の試料分析が可能なスループットの高い装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を踏まえ、複数の電極を具備した基板上で,電極に電圧を印加することで,液体を搬送するシステムであって、第1の基板と、前記第1の基板に設けられた、液体を導入するための導入口と、前記第1の基板に設けられた、前記液体を排出するための排出口と、前記第1の基板に設けられた複数の電極と、前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段を有し、前記複数の電極は、液体が流通する液体流通路と測定部とを形成するものであり、前記液体流通路は前記導入口と前記排出口との間に位置し、前記測定部は前記液体流通路の少なくとも一部に位置するシステムを提供する。すなわち、試料導入部と排出部を結んだ液体流通路の途中に測定部を配置し,導入から排出までの操作を基板上で一方向にパイプライン処理し,前記導入部から測定部までの第1通路と測定部から排出部までの第2通路とが重ならないようにして、分析ルートが重ならない配置とした。
【0011】
試料が搬送される分析ルートに重なりを持たない場合の分析システムの配置の概略図を図1に示す。分析システムは試料導入部203,測定部206,排出部204からなり,試料導入部203と排出部204は第一の液体として試料1を搬送できる液体流通路205で結ばれており,その途中に測定部206が存在する。多数の試料は試料導入部203から液体流通路205を順次搬送され,測定部206で測定された後,排出部204まで搬送される。ここで試料導入部203から測定部206まで要する時間を1分,測定部206での測定時間を1分,測定部206から排出部204まで要する時間を1分とすると1つの試料の分析を終える時間は1+1+1=3分であるが,順次搬送されていくため,10個の試料の分析を終えるのに要する時間は1+1×10+1の12分であり,連続運転した場合,スループットは50個/hourとなる。
【0012】
一方,試料が搬送される分析ルートに重なりを持つ場合の分析システムの配置の概略図を図2に示す。試料導入部203,測定部206,排出部204からなり,試料導入部203と測定部206と排出部204は液体流通路部分205’,205’’,205’’’,で結ばれている。試料は試料導入部203から液体流通路部分205’を搬送され,一つずつ,205’’を通過し測定部206で測定された後,液体流通路部分205’’を通過する。その後205’’’を通過し排出部204まで搬送される。液体流通路部分205’,205’’,205’’’の搬送にかかる時間が30秒,測定部206での測定時間を1分とすると,1個の試料にかかる時間は0.5+(0.5+1+0.5)+0.5=3分であるが,10個の試料の分析を終えるのに要する時間は0.5+(0.5+1+0.5)×10+0.5=21分であり,連続運転した場合,スループットは30/hourとなる。また,分析ルートに重なりを持たない場合,分析ルートに重なりを持つ場合に比べて,誤操作などによって試料同士がぶつかりあいコンタミを起こすこと可能性は少ない。さらに本発明では測定部を備えた液体流通路を複数設け,それぞれの液体流通路に試料を分配し,並列して分析を行うことで,スループットを向上させている。
【0013】
これは,特にハイスループットが要求される臨床検査用自動分析装置への適用の際,有効である。現在の自動分析装置はディスクの円周上に反応容器を設置し,ディスクを回転しながら全ての反応容器内の反応液を一箇所の測定器で測定している。しかしながらこの方式ではディスク上に配置できる反応容器の数が限られるため,例え測定部を増やすことができても,スループットは向上しない。本発明の方式によれば測定部を備えた液体流通路の数を増やすことで,分析の並列処理が可能であり,現在の自動分析装置よりも装置を大型化せずにハイスループットな装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,装置を大型化せずにハイスループットな装置を実現することができる。また,多数の分析を行う場合でも,実質的に一方向に順次搬送することにより短時間で測定を終えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,実施例1を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,測定部において透過光量を測定し,試料の濁度を測定する。
装置構成を図3に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400から構成されている。試料は試料ディスクユニット100内のピペッタ101により試料ディスクユニット100から搬送基板ユニット200内に分注され,搬送基板ユニット200内で基板に配置された電極に順次電圧を印加することにより搬送され,光学ユニット300により検出後,廃液ユニット400内のシッパー401により搬送基板ユニット200内から廃液タンク402に排出される。
【0016】
試料ディスクユニット100の構成を図4に示す。試料1は容器103の中に収められ,試料ディスク102の円周上に複数配置される。試料ディスク102はモーターにより回転する。試料ディスク102の内周側には前処理ディスク104が設けられ,複数配置された前処理容器105にて試料の希釈を行う。
ピペッタ101は上下方向と支柱を中心とした円周方向に移動し,試料ディスク102と前処理ディスク104の回転移動と合わせて,容器103内の試料1を吸引し,前処理容器105内へ吐出,また,前処理容器105から吸引し,搬送基板ユニット200内に第一の液体として試薬1を吐出する。
【0017】
搬送基板ユニット200内の概略図を図3に示す。搬送基板ユニット200内には,試料導入部203,測定部206,排出部204が配置され,試料導入部203と排出部204は第一の液体である試薬1を搬送できる液体流通路205で結ばれ,途中に測定部206が存在する。ピペッタ101により試料導入部203に第一の液体として分注された試料1は,液体流通路205を排出部204まで搬送される間,測定部206にて測定される。その後,廃液ユニット400内のシッパー401により廃液タンク402に排出される。
【0018】
液体流通路205の鉛直方向の断面図を図6に示す。本実施例では二枚の基板間で液体を搬送する方式を用いた。搬送基板ユニット200は下側基板201と上側基板202と両基板を温調できる温調器(ヒーター)211とこれらを取り囲む断熱材210から構成される。本実施例では下側基板201と上側基板202にはガラスを用いたが,セラミックやシリコンを用いてもよい。生化学分析においては反応液の温度を37℃に保つ必要があるが,断熱材210を使用することにより,基板内部を精度よく温調できる。両基板間はスペーサー等により,基板間距離を一定に保っている。液体流通路205は下側基板201上に複数の下側電極212を配列することにより構成され,電極は電圧を印加した際に,第一の液体が電気分解しないようにその上を絶縁膜214で覆われている。上側基板202上には一面にグランドに接続された上側電極(電極層)213を設け,下側電極212同様,絶縁膜214で覆っている。複数の電極からなる下側電極212と電極層たる上側電極とは対面する構成となっており、各々の表面が概略平行、すなわち精度誤差程度の範囲を含む平行性を持つものとしてもよく、また各々の表面が一定の距離を有するように配置するものとしてもよい。
【0019】
上側電極213と下側電極212との間には,下側電極212側に正の電圧を印加できる構成になっている。下側電極212と上側電極213の材質には,ITO(Indium Tin Oxide)を用いているが,Cr,Al,などの金属や,シリコンでもよい。また絶縁膜214にはSiO2を用いたが,Parylene,SiN,酸化タンタルなどの金属酸化物薄膜や金属窒化物薄膜,デュポン社製TeflonAF,旭硝子社製CYTOPなどのフッ素系撥水膜や,シリコーン系の撥水剤,プラズマ蒸着したフルオロカーボン膜でもよい。両基板間の最表面は撥水膜215でコーティングされている。撥水膜にはデュポン社製TeflonAFを用いたが,旭硝子社製CYTOPなどのフッ素系撥水膜や,シリコーン系の撥水剤,プラズマ蒸着したフルオロカーボン膜でもよい。本実施例では基板間を満たす間質216に,第二の液体として,シリコーンオイルを用いたが,フルオロカーボンオイルや,パラフィンオイルを用いてもよく,また液体でなく,空気等の気体としてももよい。間質216にフルオロカーボンオイルを用いる場合は,フルオロカーボンオイルの比重が約1.8g/cm3と大きいため,比重約1.0g/cm3の水溶性試料は浮力で下側基板に接しにくい。
【0020】
第一の液体が基板に接していないと第一の液体と基板との濡れ性変化が小さく,容易に液体を搬送できない。その場合は上側基板202に液体流通路205を形成する複数の電極を配置してもよい。下側電極212は図6のように3電極毎に同一電圧が印加できるように、すなわち2つおきに同期した電圧を印加するように配線をまとめ,試料も2つおきに送るようにした。これは電極1つおきに試料を配置すると,電極に電圧を印加した際,搬送しようとした試料とその前の試料が電圧を印加した電極の上に移動し,混合してしまうためである。従って,試料は電極2つ以上おきに送る必要がある。また試料を2つおきに送ると電圧制御は3電極おきに同じ制御とでき,電圧を印加するためのスイッチは,3電極ごとにまとめることができる。制御するスイッチの数が減るためその分試料の搬送制御が容易となる。
【0021】
前述のように液体流通路205は複数の下側電極212により構成される。図7により下側電極212の配置と液体の搬送方法を説明する。最初,下側電極212’に電圧が印加され,試料1’が下側電極212’上に移動して来た後,下側電極212’の電圧印加が解除され,電気的に電源にもグランドにも繋がっていない浮いた状態になっており,他の電極も電気的に浮いている。図7中,下側電極212’上の試料1’を左から右方向に搬送させるためには,下側電極212’は電気的に浮かしたまま,下側電極212’’に電圧を印加する。すると試料1’は下側電極212’’の位置に移動し,試料1’’として図示したような配置となる。次に下側電極212’’の電位をグランドに落とした後,電気的に浮かし,下側電極212’’’に電圧を印加する。すると試料1’’は下側電極212’’’の位置に移動し,試料1’’’として図示したような配置となる。以上を繰り返すことで試料1’を左から右方向に搬送できる。
【0022】
試料導入部203の断面図を図8に示す。上側基板202には試料導入穴226が設けられ,ピペッタ101は試料1を試料導入穴226より下側基板201内の試料導入部電極217の上の間質216中に吐出し分注する。ピペッタ101を試料導入穴226より抜き出す際には,上側電極213はグランドに接続し,試料導入部電極217に電圧を印加し,電気毛管現象により下側基板201及び上側基板202と試料1との濡れ性を良くする。これにより吐出した試料1をピペッタ101に付着することなく,搬送基板ユニット200側に移すことができる。分注後,導入部電極217の隣の下側電極212と上側電極213間に電圧を印加することで試料1を液体流通路205に搬送する。
【0023】
排出部204の断面図を図9に示す。上側基板202内には排出穴227が設けられ,液体流通路205より排出部204に移動された試料1は排出部電極218上でシッパー401により吸引され,廃液タンク402に移され,他の試料1と混ざり合う。
図10は光学ユニット300の構成及び搬送基板ユニット200内の測定部206の鉛直方向の断面図である。光学ユニット300内には光源301,照射光ファイバ302,集光光ファイバ303,測定器304,照射レンズ306,集光レンズ307からなる検出系が配置されている。測定部206では上側基板,下側基板ともに,断熱材210,ヒーター211に光が通過できるような透過窓228として穴があいている。光源301より出射した光305は照射光ファイバ302と照射レンズ306を通して透過穴228に照射される。上側基板に照射された光は,上側基板202,上側電極213,絶縁膜214,撥水膜215を通過後,測定部電極219上の試料1を通過し,撥水膜215,絶縁膜214,測定部電極219,下側基板201を通過する。下側基板の透過穴228から出た光は集光レンズ307により集光され,集光光ファイバ303を通って測定器304に送られる。測定器304内に入ってきた光はグレーティングにより分光され,波長成分ごとにホトダイオードで受光される。
【0024】
測定の終わった試料1をそれぞれシッパー401により吸引したが,測定の終わった他の試料と基板内で混合後にシッパー401により吸引してもよい。本実施例では血清を薄めることなくそのまま解析するが,試料ディスクユニットで血清を水で希釈することも可能である。また本実施例では試料として血清を用いたが,試料として水やその他の液体を用いてこれらの濁度測定にも応用できる。また本実施例では二枚の基板間に液体を挟み搬送させる方式を用いたが,実際にデバイスを製作する際の工程を簡略化するため,対向させた基板の代わりに例えば[特許文献4]に記載のようにワイヤを用いるか,もしくは,例えば[特許文献5]に記載のように単一の基板上で液体を搬送させてもよい。その場合,上部からの搬送している液体へのアクセスが容易であるので,測定部においてイオン選択膜を表面に被覆した電極(例えば非特許文献3)を備え,試料内のイオン成分量の測定を行ってもよい。
【0025】
以下,実施例2を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,試薬と混合し,測定部において透過光量を測定し,乳酸脱水素酵素の測定を行う。
装置構成を図11に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400,試薬供給ユニット500から構成される。試薬供給ユニット500は第一試薬ディスペンサ501,第二試薬ディスペンサ502からなる。これらのディスペンサより吐出される試薬はそれぞれ別々のタイミングで試料と混合する。第一試薬を第一試薬ディスペンサ501に内蔵もしくは繋がれる試薬収容部に,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502にに内蔵もしくは繋がれる試薬収容部に各々収めている。
【0026】
試料は実施例1の時と同様に,ピペッタ101により試料ディスクユニット100内から搬送基板ユニット200内に第一の液体として分注され,搬送基板ユニット200内で,第一試薬ディスペンサ501から第三の液体として吐出された第一試薬と混合後,測定され,第二試薬ディスペンサ502から吐出された第二試薬と混合後,再度測定される。測定が終了した試料は最終的に排出部204から廃液ユニット400内の廃液タンク402に排出される。
試料ディスクユニット100の装置構成は実施例1と同じである。試薬は,第一化学薬品社製ピュアオートS LDを用いた。
【0027】
搬送基板ユニット200内の各部の配置図を図12に示す。搬送基板ユニット200は,試料導入部203,第一試薬導入部207,第二試薬導入部208,第一試薬混合部221,第二試薬混合部222,3箇所の第一測定部206a,3箇所の第二測定部206b,排出部204からなる。試料導入部203と第一試薬混合部221は液体流通路部分205cにより,第一試薬導入部207と第一試薬混合部221は液体流通路部分205dにより,第一試薬混合部221と第二試薬混合部222は液体流通路部分205aにより,第二試薬導入部221と第二試薬混合部222は液体流通路部分205eにより,第二試薬混合部222と排出部204は液体流通路部分205bにより繋がっている。
【0028】
ピペッタ101により試料導入部203に第一の液体として分注された試料1は,液体流通路部分205cを通過し,第一試薬混合部221まで搬送される。第一試薬ディスペンサ501により第一試薬導入部207に吐出された第一試薬503は,液体流通路部分205dを通過し,第一試薬混合部221まで搬送される。第一試薬混合部221において試料1と第一試薬503は混合され,第一反応液2となり,液体流通路部分205aを通過し,第二試薬混合部222まで搬送される間,途中3箇所の第一測定部206aにおいて測定される。第二試薬ディスペンサ502により第二試薬導入部208に吐出された第二試薬504は,液体流通路部分205eを通過し,第二試薬混合部222まで搬送される。第二試薬混合部222において,第一反応液2と第二試薬504は混合され,第二反応液3となる。第二反応液3は液体流通路部分205bを通過し,排出部204まで搬送される間,途中3箇所の測定部206bにおいて測定される。最終的に第二反応液3は図11にあるように排出部204から搬送基板ユニット200外部の廃液タンク402に排出される。
【0029】
試料導入部203,及び,液体流通路205の構成は実施例1と同等である。第一試薬導入部207,および第二試薬導入部208の構成も実施例1の試料導入部203の構成と同等であるが,ピペッタ101の代わりに第一試薬導入部207は第一試薬ディスペンサ501が,第二試薬導入部208は第二試薬ディスペンサ502がそれぞれ接続する。また液体流通路205の構成も実施例1と同等である。
【0030】
第一試薬混合部221における下側電極212のパターンを図13に示す。試料1と第一試薬503を混合するため,複数の第一混合部電極223を配置した。試料1が第一試薬混合部221に搬送されたときに合わせて第一試薬503を搬送し,第一反応液2とし,第一混合部電極223上で何回か往復させることで混合する。第一の液体は複数の電極に接していたほうが搬送が容易となるため,電極の大きさはそれぞれの搬送する液体の大きさに合わせて,寸法を調整した。本実施例では二枚の基板間の距離を0.5mmであるので,液体が基板間に円柱状に存在すると仮定すると,10μLの液体の基板との接触面は半径約2.5mmの円となる。このとき,電極を一辺3.5mmの正方形,隣合う電極の間隔を100μmとすると,液体は複数の電極に接することができる。本実施例では試料1μL,第一試薬10μLであるため,試料1を搬送するための下側電極212cは1mm角,第一試薬503を搬送するための下側電極212dは3.5mm角,第一反応液2を搬送するための下側電極212aは2.9mm角とした。すなわち、試料の体積が試薬や反応液等の体積よりも小さいことに対応して、試料を搬送するための電極を試薬や反応液等を搬送するための電極よりも小さいものとした。
【0031】
第一混合部電極は第一混合部電極223a,223b,223cに分けられ,それぞれの大きさを2.9mm角,2.0mm角,1.5mm角と変化させた。すなわち,混合部の両端部の電極は混合部の中間部よりも大きいものとし,さらには電極の大きさを位置が中間へ向かうほど小さくなるようにした。図14のように第一反応液2は大きさの異なる電極上を移動する際,電極の大きさに合わせ形状が変化し内部の液体が良く混合される。
【0032】
第二試薬混合部222における下側電極212のパターンを図15に示す。第一試薬混合部221と同様に第一反応液2と第二試薬504を混合するため,複数の第二混合部電極224を配置し,第二反応液3を第二混合部電極224上で何回か往復させることで混合する。また搬送を容易にするために,電極の大きさはそれぞれの搬送する液体の大きさに合わせて,寸法を調整している。本実施例では,第二試薬504の液量は5μLであり,搬送するための下側電極212eは1.6mm角,第二反応液3を搬送するための下側電極212bは3.2mm角とした。すなわち、試料を搬送するための電極を、反応液等を搬送するための電極よりも小さいものとした。
【0033】
光学ユニット300の構成を図16に示す。光学ユニット300は光源301,6つの照射光ファイバ302,6つの集光光ファイバ303,測定器304,6つの照射レンズ306,6つの集光レンズ307からなる。光源301から出射した光は,照射光ファイバ302により測定部206ごとに分配され,照射光ファイバ302から出射される光が効率よく集められ,各測定部に照射されるように配置された照射レンズ306により各測定部206上へ照射される。そしてそれぞれの測定部206を通過した透過光305を効率よく集められるように配置された集光レンズ307で集光し,集光光ファイバ303を通し,それぞれの測定器304に導入する。測定器304ではグレーティングで分光し,ホトダイオードで各測定部206からの透過光量を波長別に測定し,吸光度を得る。
【0034】
排出部204の断面を図17に示す。本実施例では排出部電極218を多数設置し,そこに水平方向に対して山型の傾斜を設けることで,内部に満たした間質が基板外部に漏れないように試料のみ搬送させ,山型傾斜の頂点を越えた後,反応液は重力の補助により電極上を電気的に搬送され,最終的に重力により基板から落下させ,下に設置した廃液タンク402内に排出される。
【0035】
測定操作の手順を説明する。試料1としてはじめに校正液を測定し,得られた結果から,複数存在する測定部間差を補正する。次に乳酸脱水素酵素のキャリブレータを測定し,検量線を取得後,血清を測定する。搬送基板ユニット200は全体が一定温度になるよう温調されている。まず試料1として校正液をピペッタ101により吸い上げ,搬送基板ユニット200内の試料導入部203に分注する。次に乳酸脱水素酵素のキャリブレータ,血清を分注する。続いて分注した各試料を,試料導入部203より液体流通路205に順次導入し,第一試薬混合部221まで搬送する。同時に第一試薬ディスペンサ501より搬送基板ユニット200内の第一試薬導入部207へ,第二試薬ディスペンサ502より第二試薬導入部208へ分注しておく。続いて試料1と第一試薬503を第一試薬混合部221で混合させ,第一反応液2とした後,第二試薬混合部222まで搬送する間,第一測定部206aにおいて透過光量を測定する。試料1と第一試薬503とを混合させて第一反応液2としてから約5分後に,第二試薬混合部221において第一反応液2と第二試薬504とを混合させ,第二反応液3とした後,排出部204まで搬送する間,第二測定部206bにおいて透過光量を測定する。本実施例では、第1測定部、第2測定部各々について複数の電極を対応させる構成としたが、測定対象に応じて適宜、第1測定部のみもしくは第2測定部のみとすることができ、さらに第1測定部と第2測定部各々については単一の電極を対応させることも可能である。
【0036】
本実施例での検査項目は乳酸脱水素酵素であり,本検査項目の検査には第一試薬と第二試薬の2試薬を混合させて用いる。そこで,本実施例では2つの混合部を設けた。測定し終わった反応液は排出部より順次排出タンクに排出される。以上の操作を試料ディスクユニット100より分注された試料すべてについて順次行う。
本実施例では試薬との混合と搬送を順次行うことで,生化学分析の検査項目の一つである乳酸脱水素酵素量を測定する。試料は10秒おきに導入し,最初の測定部206に到達するまで1分,最初の測定部206から最後の測定部206まで10分,最後の測定部206から排出部204まで1分,合計12分要する。しかし試料を連続的に処理することにより40回の分析に必要な時間は40(回)×10(秒)+12(分)=400(秒)+12(分)≒18.6(分)となる。このように,本実施例では連続して順次分析の処理することによって短時間で多数の測定を終えることができる。
【0037】
また本実施例では,第二試薬を混合させた後の5分間の吸光度の時間変化から乳酸脱水素酵素の成分量を算出する。5分間満遍なく,吸光度を測定する回数が多いほど成分量を正確に測定することができる。また第一試薬を混合後の吸光度の時間変化も,乳酸脱水素酵素以外の物質の影響を確認するため重要である。そこで第一試薬を混合後と第二試薬を混合後それぞれ3つの測定部を設けた。すなわち、第一測定部206aに測定部206a1、206a2、206a3を設け、第二測定部206bに測定部206b1、206b2、206b3を設けた。測定部では405nmの波長の透過光量をリファレンスとした340nmの吸光度を測定する。ここで測定部が1つであると,10秒おきに試料が搬送されるため,1つの測定部では最大で10秒間の吸光度の時間変化しか測定できず,正確に成分量を測定することができない。また5分間同一の測定部で測定すると,スループットが低下してしまう。本実施例のように反応液の吸光度の時間変化を複数の測定部にわけて測定することで,ハイスループットで,かつ,正確に成分量を測定することができる。またこれらの測定部間の測定誤差はキャリブレータにより補正することで,より正確に測定することができる。
【0038】
図18に本実施例による各測定部206a1,206a2,206a3,206b1,206b2,206b3での測定結果を合わせて示す。縦軸に吸光度(abs.)及び横軸に第1試薬と混合後の時間(分)をとる。206a1では第1試薬と混合後約1分後,206a2では第1試薬と混合後2分後,206a3では第1試薬と混合後3分後,206b1では第1試薬と混合後約6分後(第2試薬と混合後1分後),206b2では第1試薬と混合後約7.5分後(第2試薬と混合後約2.5分後),206b3では第1試薬と混合後約9分後(第2試薬と混合後4分後)の吸光度を測定した。206a1,206a2,206a3,206b1,206b2,及び206b3の各々での測定結果を,各々1801,1802,1803,1804,1805及び1806で示す。1つの測定部での測定時間はここでは10秒とした。これらの206b1,206b2,206b3の吸光度の時間変化(図18グラフの傾き)が濃度に比例する。キャリブレータの吸光度の時間変化データと照らし合わせ,このときの試料中の乳酸脱水素酵素の濃度は292.2 U/Lとわかった。このように吸光度の時間変化を測定することにより,濃度が測定できる。また測定部が多いほど時間変化のデータを多くとることができ,より正確に成分量を測定できる。
【0039】
以下,実施例3を示す。本実施例では,液体流通路を複数設け,試料導入部からの試料をこれらの液体流通路に分配し,並列して測定を行うことで,スループットを上げている。試料として血清を用い,測定を行う液体流通路を3つ設け,それぞれの液体流通路においてリパーゼ,コレステロール,C反応性蛋白の項目について検査を行う。
【0040】
装置構成を図19に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400,試薬供給ユニット500から構成される。試薬供給ユニット500は第一試薬ディスペンサ501A,501B,501Cと第二試薬ディスペンサ502A,502B,502Cからなる。試薬は,リパーゼの検査にはロッシュ社製リキテックリパーゼカラーを用い,コレステロールの検査には第一化学薬品社製ピュアオートS CHO-Nを用い,C反応性蛋白の検査には第一化学薬品社製ピュアオートS CRPラテックスを用いた。リパーゼ項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Aに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Aに用意した。コレステロール項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Bに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Bに用意した。C反応性蛋白項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Cに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Cに用意した。
【0041】
試料は試料ディスクユニット100からピペッタ101により搬送基板ユニット200内に第一の液体として分注され,搬送基板ユニット200内で,第一試薬ディスペンサ501から第三の液体として吐出された第一試薬503と混合後,測定され,第二試薬ディスペンサ502から第三の液体として吐出された第二試薬504と混合された後,再度測定される。測定終了した試料は最終的に排出部204より廃液ユニット400内の廃液タンク402に排出される。
【0042】
搬送基板ユニット200内の液体流通路205の配置を図20に示す。試料導入部203と複数の液体流通路205A,205B,205Cは液体分配流通路部分205W,205X,205Y,205Zで繋がっている。また,複数の液体流通路205A,205B,205Cと排出部204は液体合流流通路部分205W’,205X’,205Y’,205Z’で繋がっている。本実施例では並列した液体流通路205と一つの排出部204を繋げたが,それぞれの液体流通路205に排出部204を設け,試料を搬送基板ユニット200外部に排出してもよい。試料は試料導入部203から導入後,液体分配流通路部分205Wから205X,205Y,205Zのいずれかに分配,搬送され,それぞれの液体流通路205を搬送中に測定され,液体合流流通路部分205X’,205Y’,205Z’のいずれかから液体合流流通路部分205W’を通り,排出部204から排出される。液体流通路205Aではリパーゼ項目の検査を,液体流通路205Bではコレステロール項目の検査を,液体流通路205CではC反応性蛋白項目の検査を行う。本実施例では液体流通路を3本設けたため,液体流通路が1本のときに比べ,約3倍スループットがあがる。また液体流通路が1本の場合,3つの検査項目にそれぞれに対応した測定部を配置するために,各検査項目の測定部が減り,測定の精度が悪くなりうる。本実施例では検査項目ごとに液体流通路を配置するため,スループットが上がり,さらに高精度に測定ができる。
【0043】
試料導入部203から排出部204までを含めた液体流通路205Aの構成を図21に示す。液体流通路205A,液体流通路205B,液体流通路205Cとも基本的な構成は同じであるが,実施例2の各部の配置に対し,試料導入部203から液体流通路205に至るまでの間は,液体分配流通路部分205W, 205Xで接続され,液体流通路205から排出部204に至るまでの間は液体合流流通路部分205W’,205X ’で接続されている。液体流通路205Aは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Aが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Aが接続される。液体流通路205Bは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Bが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Bが接続される。液体流通路205Cは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Cが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Cが接続される。測定のスループットを下げないようにするため,液体分配流通路部分上の試料搬送速度及び,液体合流流通路部分上の試料搬送速度は,各液体流通路上の試料搬送速度と異なるもの,具体的にはより早いもので,ここでは3倍とした。
【0044】
また制御システムの略図を図22に示す。各液体流通路部分の電圧印加のための制御は制御用コンピュータが独立に行う。制御用コンピュータは内部に,インターフェースからの試料情報の入力に基づいて試料情報に対応する情報をデータベース内の情報から検索するデータベース検索部と,試料情報に対応する情報に含まれる検査項目に応じて各液体流通路への電圧印加を指令する電圧印加制御部とを備える。試料は制御用コンピュータ内の登録された検査項目のデータベースと照らし合わせ,検査項目に応じて電圧印加制御部の制御によって各液体流通路に振り分けられる。液体流通路205A,液体流通路205B,液体流通路205Cそれぞれの液体流通路部分205aでの下側電極212aの配線構成を図23に示す。各液体流通路205内の下側電極212は,実施例1と同様に3電極毎に同一電圧が印加できるように,すなわち2つおきに同期した電圧を印加するように配線をまとめ,試料も2つおきに供給し搬送するようにし,さらにこれらの配線を液体流通路間でもまとめ同期して搬送するようにした。液体流通路の数が多くなった場合,並列に並んだ各液体流通路間で一つのスイッチでまとめられるため,試料の搬送制御が容易となる。
【0045】
本実施例では3つの液体流通路205が並んでおり,一つの液体流通路205には5つ液体流通路部分205a,205b,205c,205d,205eが存在するため,通常,液体流通路では5×3=15個の制御が必要となるが,液体流通路ごとに制御をまとめることで,制御機構の個数は5つとなり,複数の液体流通路を並べたとしても制御が簡易である。また本実施例では一つの液体流通路で一つの検査項目しか検査していないが,検出波長が同じであれば,別のディスペンサを接続し,別の試薬を供給することで別の検査項目を検査してもよい。また異なる液体流通路でも検査数の多い検査項目は複数の液体流通路とも同じ項目として検査してもよい。
【0046】
試料導入部203における下側基板201上の導入部電極225と下側電極212の配置を図24に示す。導入部電極225は導入部電極225a,導入部電極225b,導入部電極225cに分かれる。まずピペッタ101により測定に必要な量より約3倍多くの試料1'が搬送基板ユニット200内の導入部203内,導入部電極225a上に分注される。この状態で導入部電極225b,導入部電極225cに電圧を印加すると,試料1'は導入部電極225b,導入部電極225c上に広がる。ここで導入部電極225bの電圧印加をやめグランドに繋げてから,電気的に浮かし,導入部電極225a,225cには電圧が印加された状態にすると,試料1'は導入部電極225a上と導入部電極225c上に分裂する。次に液体分配流通路部分205Wの下側電極212Wに電圧を印加し,一定量の試料1’’を第一の液体として液体分配流通路部分205Wに搬送させる。
【0047】
測定部206の断面図を図25に示す。本実施例では光源としてLEDを用いている。LEDパッケージ301には二波長の光を発光できるように二つのLED素子が封入されている。またグレーティングによる波長分解は行わずに,二つのLED素子の出力をそれぞれ異なる周波数で変調させることにより一つのホトダイオードで受光後,周波数フィルタを通してそれぞれのLED素子からの出力成分に分離することで波長成分の透過光量を測定している。LEDパッケージ301から照射した光305は,照射レンズで液体搬送基板200に照射され,第一反応液2,もしくは,第二反応液3を通過後,ホトダイオードで透過光として受光され測定される。液体流通路205Aの測定部206においては,光源301として700nmと570nmの波長を出力するLEDを用い,700nmをリファレンスとした570nmの波長の吸光度を測定し,リパーゼの検査を行う。液体流通路205Bの測定部206においては,光源301として700nmと600nmの波長を出力するLEDを用い,700nmをリファレンスとした600nmの波長の吸光度を測定し,コレステロールの検査を行う。液体流通路205Cの測定部206においては,光源301として800nmと600nmの波長を出力するLEDを用い,800nmをリファレンスとした600nmの波長の吸光度を測定しC反応性蛋白項目の検査を行う。なお本実施例では透過光量を測定したが,光源301を用いずに,ホトダイオードで第一反応液2または第二反応液3からの発光光量を測定してもよい。
【0048】
測定操作の手順を説明する。一つの試料に対して3つの検査を行うため,試料は電圧の印加方法により液量の1/3ずつに分裂し,順次液体分配流通路部分205Wに搬送され,それぞれの液体流通路に振り分けられる。順次搬送することにより各液体流通路の測定部で吸光度を測定する。各液体流通路での混合および測定方法は実施例2と同等である。測定を終了した第二反応液3は液体合流流通路部分205W'を通過して排出部204に搬送され,外部の廃液タンクに排出される。排出部204の構造は実施例2と同等である。
試料は3秒おきに導入し,最初の測定部206に到達するまで1分,最初の測定部206から最後の測定部206まで10分,最後の測定部206から排出部204まで1分,合計12分要する。各液体流通路で40回の分析に必要な時間は40(回)×10(秒)+12(分)=400(秒)+12(分)≒18.6(分)であった。本実施例では液体流通路を3つ並べ,並列に処理したため,120回の分析を行えた。実施例2よりも3倍ハイスループットに分析することができる。
【0049】
本実施例における各液体流通路での測定結果は,実施例3と同様のものを得ることができる。すなわち, 206bの吸光度の時間変化が濃度に比例するため,各液体流通路での吸光度の時間変化を測定することにより,各液体流通路に対応した各検査項目の試料中の濃度を測定できる。
【0050】
以下,実施例4を示す。本実施例では,試料として蛍光標識されたDNA断片を含む溶液を用い,試料内のDNA断片の濃度を測定することを目的としている。
装置構成と操作手順は,実施例1と同等であり,搬送基板ユニット200内の測定部206の構成のみ異なる。図26に本実施例の測定部206の構成を示す。光源301から出射したレーザー光308をダイクロイックミラー309で反射させ,顕微鏡用レンズ310を通して搬送基板ユニット200内の測定部電極219上の試料1に照射する。レーザー光源はCoherent社製Sapphire488-20を用いている。試料にはFAM標識のDNAを使用した。ダイクロイックミラーは520nm以下の光は反射し,520nm以上の光は透過するものを用いている。レーザー光308は安全のためレーザーストッパ312に照射させ,外部に漏れないようにしている。液体からの発光蛍光311は顕微鏡用レンズ310で集光し,ダイクロイックミラーを透過し,測定部304のホトダイオードで受光し,解析用PCで解析する。操作手順は実施例1と同等である。
本実施例では測定部は一箇所としたが,レーザー光308をハーフミラーなどで分けることにより複数箇所にレーザーを照射しの蛍光発光を観測することも可能である。
以上に記載した実施例に対応する構成として,本発明は以下の構成とすることも可能である。
【0051】
(1)基板上に複数の電極を並べて設け,前記電極を含む前記基板上を絶縁膜で覆い,その表面を撥水性として概略水平に置かれた第一の基板であって,前記第一の基板の,前記複数の電極のうち一部の電極上部に第一の液体を供給し,前記複数の電極のうち一部の電極に電圧を印加し,電圧を印加する電極を順次切り替えていくことにより前記第一の液体を搬送する液体搬送基板,若しくは,基板の一面全体に電極が設けられ,前記電極を含む基板表面を絶縁膜で覆い,更にその表面を撥水性とした第二の基板を設け,前記第一の基板と前記第二の基板が互いの電極面側が概略平行に一定の距離を保ち向かい合うように保持し,二つの基板間で前記第一の基板の上,かつ,前記複数の電極のうち一部の電極上部に第一の液体を供給し,前記第二の基板の前記電極と前記第一の基板の前記複数の電極のうち一部の電極間に電圧を印加し,第一の基板側の電圧を印加する電極を順次切り替えていくことにより前記第一の液体を搬送する液体搬送基板において,液体を搬送するために前記複数の電極を並べて構成した液体流通路と,前記液体流通路に前記第一の液体を導入するための導入部と,前期液体流通路から前記第一の液体を排出するための排出部と,前記液体流通路の途中に配置され前記第一の液体からの情報を測定するための測定部と,前記複数の電極のそれぞれに前記第一の液体を搬送するための電圧を印加する導電手段を有し,前記測定部が,前記導入部と前記排出部との間に配置されることを特徴とする液体搬送基板。
【0052】
(2)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体は前記導入部から前記測定部を通り,その後前記排出部へ,各部間を一方向に搬送されることを特徴とする液体搬送基板。
【0053】
(3)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路の内,前記導入部から前記測定部までの液体流通路部分と,前記測定部から前記排出部までの液体流通路部分が重なりをもたないことを特徴とする液体搬送基板。
【0054】
(4)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体が,血清,DNA,RNA,タンパク質などの生体物質を含む液体,生体物質と反応する化学物質を含む液体,若しくは,測定器を校正するための校正物質を含む液体であることを特徴とする液体搬送基板。
【0055】
(5)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板上,若しくは,前記第一の基板と前記第二の基板の間が,気体,若しくは,第二の液体としてシリコーンオイル,若しくは,同じく第二の液体としてフロロカーボン系オイルで満たされており,第一の液体は前記気体,若しくは前記シリコーンオイル,若しくは,前記フロロカーボン系オイルを掻き分けて搬送されることを特徴とする液体搬送基板。
【0056】
(6)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板と前記第二の基板の電極の位置関係が上下逆であることを特徴とする液体搬送基板。
【0057】
(7)(5)記載の液体搬送基板において,前記第二の液体がフロロカーボン系オイルであり,前記第一の基板と前記第二の基板の電極の位置関係が上下逆であることを特徴とする液体搬送基板。
【0058】
(8)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板,及び,前記第二の基板がガラス,シリコン,若しくは,セラミックであること特徴とする液体搬送基板。
【0059】
(9)(1)記載の液体搬送基板において,前記測定部が前記液体流通路に複数配置されることを特徴とする液体搬送基板。
【0060】
(10)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体搬送基板に,前記測定部を含めた前記液体流通路を複数本持ち,前記導入部と複数の液体流通路の各液体流通路との間に分配のための液体分配流通路を設け,各液体流通路と排出部との間に合流のための液体合流流通路を設けたことを特徴とする液体搬送基板。
【0061】
(11)(10)記載の液体搬送基板において,前記複数の液体流通路上の前記第一の液体の搬送速度が,前記分配のための液体分配流通路上,及び,合流のための液体合流流通路上の搬送速度とは異なることを特徴とする液体搬送基板。
【0062】
(12)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体からの情報を測定する手段が,1波長,若しくは,複数波長の透過光の減衰量もしくは発光強度もしくは蛍光発光強度を測定するものであることを特徴とする液体搬送基板。
【0063】
(13)(10)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体からの情報を測定する手段が,1波長,若しくは,複数波長の透過光の減衰量もしくは発光強度もしくは蛍光発光強度を測定するものであることを特徴とする液体搬送基板。
【0064】
(14)(13)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体の透過光を測定する際,複数あるそれぞれの前記液体流通路で測定する透過光波長が異なることを特徴とする液体搬送基板。
【0065】
(15)(13)記載の液体搬送基板において,前記測定部の前記第一の液体に照射光を照射するための光源が一つまたは複数の発光ダイオードであることを特徴とする液体搬送基板。
【0066】
(16)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路に,前記第一の液体と,前記第一の液体を希釈する,または,前記第一の液体と反応する第三の液体とを混合するための混合部を一つまたは複数有することを特徴とする液体搬送基板。
【0067】
(17)(1)記載の液体搬送基板の前記導入部において,前記第二の基板の電極に前記第一の液体を分注するためのピペッタが接続できる導入穴が設けてあることを特徴とする液体搬送基板。
【0068】
(18)(1)記載の液体搬送基板において,前記導入部において,前記第一の液体の一部を,前記第一の液体の下に位置する電極に電圧を印加することにより分離させ,前記分離させた液体を液体流通路に導くことを特徴とする液体搬送基板。
【0069】
(19)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板の前記排出部側の前記液体流通路の一部,若しくは,前記排出部の前記液体流通路の一部が,水平に対し前記液体の進行方向に向かって傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【0070】
(20)(10)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板の前記排出部側の前記液体合流流通路の一部,若しくは,前記排出部の前記液体合流流通路の一部が,水平に対し前記液体の進行方向に向かって傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【0071】
(21)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体搬送基板,及び,前記第一の液体,及び,前記第二の液体,及び,前記第三の液体の温度を一定に保つための温調板を供え,かつ,それらを断熱することを特徴とする液体搬送基板。
【0072】
(22)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路上に前記第一の液体を前記電極2つおきに供給し,順次移動することを特徴とする液体搬送基板。
【0073】
(23)(1)記載の液体搬送基板において,前記電極が,2つおきに同期して電圧が印加されるよう配線した前記導電手段を持つことを特徴とする液体搬送基板。
【0074】
(24)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路の前記電極が,前記複数の液体流通路で同期して電圧が印加されるよう,並列に配線した前記導電手段を持つことを特徴とする液体搬送基板。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】分析システムの配置図の例。
【図2】分析システムの配置図の例。
【図3】本発明の実施形態1における装置構成を示す略図である。
【図4】本発明の実施形態1における試料ディスクユニットの詳細を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1における液体搬送基板の液体流通路の断面を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1における液体搬送方法の説明図である。
【図8】本発明の実施形態1における試料導入部の詳細を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1における排出部の詳細を示す図である。
【図10】本発明の実施形態1における測定部の詳細を示す図である。
【図11】本発明の実施形態2における装置構成を示す略図である。
【図12】本発明の実施形態2における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図13】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図14】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図15】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図16】本発明の実施形態2における液体搬送基板と光学ユニットとの配置を示す図である。
【図17】本発明の実施形態2における排出部の詳細を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2における測定結果を示す図である。
【図19】本発明の実施形態3における装置構成を示す略図である。
【図20】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の液体流通路の配置を示す図である。
【図21】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図22】本発明の実施形態3における下側電極の制御に関する構成の例である。
【図23】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の液体流通路内の下側電極の配線構成を説明する図である。
【図24】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の試料導入部の導入方法を説明する図である。
【図25】本発明の実施形態3における測定部の詳細を示す図である。
【図26】本発明の実施形態4おける測定部の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1…試料,1’…試料,1’’…試料,1’’’…試料,2…第一反応液,3…第二反応液,100…試料ディスクユニット,101…ピペッタ,102…試料ディスク,103…容器,104…前処理ディスク,105…前処理容器,200…搬送基板ユニット,201…下側基板,202…上側基板,203…試料導入部,204…排出部,205…液体流通路,205’…液体流通路部分,205a…液体流通路部分,205b…液体流通路部分,205c…液体流通路部分,205d…液体流通路部分,205e…液体流通路部分,205W…液体分配流通路部分,205W’…液体合流流通路部分,205X…液体分配流通路部分,205X’…液体合流流通路部分,205Y…液体分配流通路部分,205Y’…液体合流流通路部分,205Z…液体分配流通路部分,205Z’…液体合流流通路部分,205A…液体流通路,205B…液体流通路,205C…液体流通路,206…測定部,206a…第一測定部,206b…第二測定部,207…第一試薬導入部,208…第二試薬導入部,209a…液体分配流通路,209b…液体合流流通路,210…断熱材,211…ヒーター,212…下側電極,212’…下側電極,212’’…下側電極,212’’’…下側電極,212a…下側電極,212b…下側電極,212c…下側電極,212d…下側電極,212e…下側電極,212W…下側電極,213…上側電極,214…絶縁膜,215…撥水膜,216…間質,217…導入部電極,218…排出部電極,219…測定部電極,221…第一混合部,222…第二混合部,223…第一混合部電極,224…第二混合部電極,225…導入部電極,225a…導入部電極,225b…導入部電極,225c…導入部電極,226…試料導入穴,227…排出穴,228…透過窓,300…光学ユニット,301…光源,302…照射ファイバー,303…集光ファイバー,304…測定部,305…光,306…照射レンズ,307…集光レンズ,308…レーザー光,309…ダイクロイックミラー,310…顕微鏡レンズ,311…発光蛍光,312…レーザーストッパ,400…廃液ユニット,401…シッパー,402…廃液タンク,500…試薬供給ユニット,501…第一試薬ディスペンサ,501A…第一試薬ディスペンサ,501B…第一試薬ディスペンサ,501C…第一試薬ディスペンサ,502…第二試薬ディスペンサ,502A…第二試薬ディスペンサ,502B…第二試薬ディスペンサ,502C…第二試薬ディスペンサ,503…第一試薬,504…第二試薬,1801…測定結果の例,1802…測定結果の例,1803…測定結果の例, 1804…測定結果の例, 1805…測定結果の例, 1806…測定結果の例。
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上で液体を搬送し,その液体の状態やその液体に含まれる成分量を測定する分析システムに関する。特にハイスループットな処理を必要とする分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,試料中に含まれる成分量を測定する分析システムにおいては,試薬コストの削減や,環境への負荷低減のため,分析に用いる反応液の微量化が求められている。現在の分析システムはプラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬を分注し,これらを混合して反応液とした後,反応液からの発光量や,透過光量を測定することで成分量を測定している。この方式で反応液を微量化した場合,液の取り扱いが困難になり,分注・混合時に気泡が発生し,正確な測定ができなくなるという問題があった。このため的確に微量液体をハンドリングする技術が求められていた。
【0003】
最近,微量液体をハンドリングする技術として,基板上の液体を電気的な制御により搬送する方式が注目されている。この方式には一般的に次の二つの方式が用いられている。
一つ目の方式は,複数の電極を有した二つの対向する基板間に搬送する液体を挟みこみ,二つの対向する板の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで,液体を駆動する方式(例えば[特許文献1])である。通常,片方の基板上に液体を搬送させる液体流通路に沿って多数の電極が配置され,もう一方の基板上に一面にグランドに繋がれた一つの電極を備える。液体がいくつかの電極にまたがって静置している状態で液体下部の電極の一つに電圧を印加すると,電気毛管現象(例えば[特許文献2])により電圧を印加した電極上の液体の濡れ性が良くなり,最終的にその電圧を印加した電極の真上にその液体が移動する。これを繰り返し搬送する。
【0004】
もう一つの方式として,多数の電極を有した一つの基板の上に搬送する液体を供給し,液体付近の電極に電圧を印加して,液体を駆動する方式(例えば[特許文献3])がある。多数の電極は液体を搬送させる液体流通路に沿って配置される。液体の下部に存在する電極と液体付近の電極との間に電界を形成し,電界の力を利用し,駆動させる。これを繰り返し搬送する。
【0005】
これらの両方式とも微量な液体を搬送することが可能である。また二つの微量な液体同士を同じ電極上に移動することにより混合させることが可能であり,さらには一つの液体を二つに分割することも可能である。このような電極を配置した基板上で電圧印加する電極を切り替えることで微量液体を搬送し,分析するシステムの利点は,単一もしくは二枚の基板を利用するため,周囲が壁に囲まれた容器に比べ気泡の影響を受けにくいことや,電極に電圧を印加するだけで基板内の自由な場所で多数の液体を独立して駆動できること,また電圧を印加することにより液体の置かれる場所を指定できるため,試料からの情報を得る測定部を設け測定する場合,試料や反応液がいつ測定部に到達するのか,タイミングを計りやすいことなどが挙げられる。基板上での分析システムを考案したものとしての報告もなされている(例えば[非特許文献1]及び[非特許文献2])。
【0006】
上記文献記載の分析システム例では,基板上に試料を導入する試料導入部,試薬と混合する混合部,測定のための測定部,反応液を排出する排出部が存在し,各部は多数の電極から形成される液体流通路で結ばれている。試料導入部から導入された試料は,液体流通路を搬送され,混合部において試薬と混合され反応液となり,測定部で成分を測定後,再び同じ液体流通路を搬送され,排出部にて排出される。
【0007】
【特許文献1】特開昭60-216324号公報
【0008】
【特許文献2】特開2004-000935号公報
【特許文献3】特開平10-267801号公報
【特許文献4】特開第2004-22165号公報
【特許文献5】特開平第10-267801号公報
【非特許文献1】R. B. Fair et al. ”Electrowetting-based On-Chip Sample Processing for Integrated Microfluidics” IEEE Inter. Electron Devices Meeting 2003
【非特許文献2】Vijay Srinivasan et al. ”Clinical diagnostics on human whole blood, plasma, serum, urine, saliva, sweat, and tears on a digital microfluidic platform” μTAS 2003
【非特許文献3】Eric Bakker, Philippe Buhlmann, and Erno Pretsch Chem. Rev.1977,97,3083-3132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献記載の分析システム例では,多数の分析を行う場合について配慮がされておらず,試料導入部から測定部に搬送するための液体流通路部分と測定部から排出部まで搬送するための液体流通路部分を共用しているために,基板上で試料を分析するために搬送させる分析ルートに重なりが生じていた。これは装置を小型化するために基板内で液体流通路をコンパクトに折り曲げて配置するという理由があってのことであるが,多数の分析を行う際は,前の試料の測定が終わり,排出部まで搬送されるまで,次の試料は分析ルートにおいて重なりを持つ液体流通路部分よりも導入部側で待機しなければならなかった。そのためすべての分析が終わるまで非常に多くの時間がかかるという問題があった。また,測定前の試料と,測定後の試料もしくは試薬と反応した反応液とがぶつからないよう,時間差をもって駆動することが必要となり,スループットが低下してしまうという問題があった。本発明は小型にして,多数の試料分析が可能なスループットの高い装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を踏まえ、複数の電極を具備した基板上で,電極に電圧を印加することで,液体を搬送するシステムであって、第1の基板と、前記第1の基板に設けられた、液体を導入するための導入口と、前記第1の基板に設けられた、前記液体を排出するための排出口と、前記第1の基板に設けられた複数の電極と、前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段を有し、前記複数の電極は、液体が流通する液体流通路と測定部とを形成するものであり、前記液体流通路は前記導入口と前記排出口との間に位置し、前記測定部は前記液体流通路の少なくとも一部に位置するシステムを提供する。すなわち、試料導入部と排出部を結んだ液体流通路の途中に測定部を配置し,導入から排出までの操作を基板上で一方向にパイプライン処理し,前記導入部から測定部までの第1通路と測定部から排出部までの第2通路とが重ならないようにして、分析ルートが重ならない配置とした。
【0011】
試料が搬送される分析ルートに重なりを持たない場合の分析システムの配置の概略図を図1に示す。分析システムは試料導入部203,測定部206,排出部204からなり,試料導入部203と排出部204は第一の液体として試料1を搬送できる液体流通路205で結ばれており,その途中に測定部206が存在する。多数の試料は試料導入部203から液体流通路205を順次搬送され,測定部206で測定された後,排出部204まで搬送される。ここで試料導入部203から測定部206まで要する時間を1分,測定部206での測定時間を1分,測定部206から排出部204まで要する時間を1分とすると1つの試料の分析を終える時間は1+1+1=3分であるが,順次搬送されていくため,10個の試料の分析を終えるのに要する時間は1+1×10+1の12分であり,連続運転した場合,スループットは50個/hourとなる。
【0012】
一方,試料が搬送される分析ルートに重なりを持つ場合の分析システムの配置の概略図を図2に示す。試料導入部203,測定部206,排出部204からなり,試料導入部203と測定部206と排出部204は液体流通路部分205’,205’’,205’’’,で結ばれている。試料は試料導入部203から液体流通路部分205’を搬送され,一つずつ,205’’を通過し測定部206で測定された後,液体流通路部分205’’を通過する。その後205’’’を通過し排出部204まで搬送される。液体流通路部分205’,205’’,205’’’の搬送にかかる時間が30秒,測定部206での測定時間を1分とすると,1個の試料にかかる時間は0.5+(0.5+1+0.5)+0.5=3分であるが,10個の試料の分析を終えるのに要する時間は0.5+(0.5+1+0.5)×10+0.5=21分であり,連続運転した場合,スループットは30/hourとなる。また,分析ルートに重なりを持たない場合,分析ルートに重なりを持つ場合に比べて,誤操作などによって試料同士がぶつかりあいコンタミを起こすこと可能性は少ない。さらに本発明では測定部を備えた液体流通路を複数設け,それぞれの液体流通路に試料を分配し,並列して分析を行うことで,スループットを向上させている。
【0013】
これは,特にハイスループットが要求される臨床検査用自動分析装置への適用の際,有効である。現在の自動分析装置はディスクの円周上に反応容器を設置し,ディスクを回転しながら全ての反応容器内の反応液を一箇所の測定器で測定している。しかしながらこの方式ではディスク上に配置できる反応容器の数が限られるため,例え測定部を増やすことができても,スループットは向上しない。本発明の方式によれば測定部を備えた液体流通路の数を増やすことで,分析の並列処理が可能であり,現在の自動分析装置よりも装置を大型化せずにハイスループットな装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,装置を大型化せずにハイスループットな装置を実現することができる。また,多数の分析を行う場合でも,実質的に一方向に順次搬送することにより短時間で測定を終えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,実施例1を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,測定部において透過光量を測定し,試料の濁度を測定する。
装置構成を図3に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400から構成されている。試料は試料ディスクユニット100内のピペッタ101により試料ディスクユニット100から搬送基板ユニット200内に分注され,搬送基板ユニット200内で基板に配置された電極に順次電圧を印加することにより搬送され,光学ユニット300により検出後,廃液ユニット400内のシッパー401により搬送基板ユニット200内から廃液タンク402に排出される。
【0016】
試料ディスクユニット100の構成を図4に示す。試料1は容器103の中に収められ,試料ディスク102の円周上に複数配置される。試料ディスク102はモーターにより回転する。試料ディスク102の内周側には前処理ディスク104が設けられ,複数配置された前処理容器105にて試料の希釈を行う。
ピペッタ101は上下方向と支柱を中心とした円周方向に移動し,試料ディスク102と前処理ディスク104の回転移動と合わせて,容器103内の試料1を吸引し,前処理容器105内へ吐出,また,前処理容器105から吸引し,搬送基板ユニット200内に第一の液体として試薬1を吐出する。
【0017】
搬送基板ユニット200内の概略図を図3に示す。搬送基板ユニット200内には,試料導入部203,測定部206,排出部204が配置され,試料導入部203と排出部204は第一の液体である試薬1を搬送できる液体流通路205で結ばれ,途中に測定部206が存在する。ピペッタ101により試料導入部203に第一の液体として分注された試料1は,液体流通路205を排出部204まで搬送される間,測定部206にて測定される。その後,廃液ユニット400内のシッパー401により廃液タンク402に排出される。
【0018】
液体流通路205の鉛直方向の断面図を図6に示す。本実施例では二枚の基板間で液体を搬送する方式を用いた。搬送基板ユニット200は下側基板201と上側基板202と両基板を温調できる温調器(ヒーター)211とこれらを取り囲む断熱材210から構成される。本実施例では下側基板201と上側基板202にはガラスを用いたが,セラミックやシリコンを用いてもよい。生化学分析においては反応液の温度を37℃に保つ必要があるが,断熱材210を使用することにより,基板内部を精度よく温調できる。両基板間はスペーサー等により,基板間距離を一定に保っている。液体流通路205は下側基板201上に複数の下側電極212を配列することにより構成され,電極は電圧を印加した際に,第一の液体が電気分解しないようにその上を絶縁膜214で覆われている。上側基板202上には一面にグランドに接続された上側電極(電極層)213を設け,下側電極212同様,絶縁膜214で覆っている。複数の電極からなる下側電極212と電極層たる上側電極とは対面する構成となっており、各々の表面が概略平行、すなわち精度誤差程度の範囲を含む平行性を持つものとしてもよく、また各々の表面が一定の距離を有するように配置するものとしてもよい。
【0019】
上側電極213と下側電極212との間には,下側電極212側に正の電圧を印加できる構成になっている。下側電極212と上側電極213の材質には,ITO(Indium Tin Oxide)を用いているが,Cr,Al,などの金属や,シリコンでもよい。また絶縁膜214にはSiO2を用いたが,Parylene,SiN,酸化タンタルなどの金属酸化物薄膜や金属窒化物薄膜,デュポン社製TeflonAF,旭硝子社製CYTOPなどのフッ素系撥水膜や,シリコーン系の撥水剤,プラズマ蒸着したフルオロカーボン膜でもよい。両基板間の最表面は撥水膜215でコーティングされている。撥水膜にはデュポン社製TeflonAFを用いたが,旭硝子社製CYTOPなどのフッ素系撥水膜や,シリコーン系の撥水剤,プラズマ蒸着したフルオロカーボン膜でもよい。本実施例では基板間を満たす間質216に,第二の液体として,シリコーンオイルを用いたが,フルオロカーボンオイルや,パラフィンオイルを用いてもよく,また液体でなく,空気等の気体としてももよい。間質216にフルオロカーボンオイルを用いる場合は,フルオロカーボンオイルの比重が約1.8g/cm3と大きいため,比重約1.0g/cm3の水溶性試料は浮力で下側基板に接しにくい。
【0020】
第一の液体が基板に接していないと第一の液体と基板との濡れ性変化が小さく,容易に液体を搬送できない。その場合は上側基板202に液体流通路205を形成する複数の電極を配置してもよい。下側電極212は図6のように3電極毎に同一電圧が印加できるように、すなわち2つおきに同期した電圧を印加するように配線をまとめ,試料も2つおきに送るようにした。これは電極1つおきに試料を配置すると,電極に電圧を印加した際,搬送しようとした試料とその前の試料が電圧を印加した電極の上に移動し,混合してしまうためである。従って,試料は電極2つ以上おきに送る必要がある。また試料を2つおきに送ると電圧制御は3電極おきに同じ制御とでき,電圧を印加するためのスイッチは,3電極ごとにまとめることができる。制御するスイッチの数が減るためその分試料の搬送制御が容易となる。
【0021】
前述のように液体流通路205は複数の下側電極212により構成される。図7により下側電極212の配置と液体の搬送方法を説明する。最初,下側電極212’に電圧が印加され,試料1’が下側電極212’上に移動して来た後,下側電極212’の電圧印加が解除され,電気的に電源にもグランドにも繋がっていない浮いた状態になっており,他の電極も電気的に浮いている。図7中,下側電極212’上の試料1’を左から右方向に搬送させるためには,下側電極212’は電気的に浮かしたまま,下側電極212’’に電圧を印加する。すると試料1’は下側電極212’’の位置に移動し,試料1’’として図示したような配置となる。次に下側電極212’’の電位をグランドに落とした後,電気的に浮かし,下側電極212’’’に電圧を印加する。すると試料1’’は下側電極212’’’の位置に移動し,試料1’’’として図示したような配置となる。以上を繰り返すことで試料1’を左から右方向に搬送できる。
【0022】
試料導入部203の断面図を図8に示す。上側基板202には試料導入穴226が設けられ,ピペッタ101は試料1を試料導入穴226より下側基板201内の試料導入部電極217の上の間質216中に吐出し分注する。ピペッタ101を試料導入穴226より抜き出す際には,上側電極213はグランドに接続し,試料導入部電極217に電圧を印加し,電気毛管現象により下側基板201及び上側基板202と試料1との濡れ性を良くする。これにより吐出した試料1をピペッタ101に付着することなく,搬送基板ユニット200側に移すことができる。分注後,導入部電極217の隣の下側電極212と上側電極213間に電圧を印加することで試料1を液体流通路205に搬送する。
【0023】
排出部204の断面図を図9に示す。上側基板202内には排出穴227が設けられ,液体流通路205より排出部204に移動された試料1は排出部電極218上でシッパー401により吸引され,廃液タンク402に移され,他の試料1と混ざり合う。
図10は光学ユニット300の構成及び搬送基板ユニット200内の測定部206の鉛直方向の断面図である。光学ユニット300内には光源301,照射光ファイバ302,集光光ファイバ303,測定器304,照射レンズ306,集光レンズ307からなる検出系が配置されている。測定部206では上側基板,下側基板ともに,断熱材210,ヒーター211に光が通過できるような透過窓228として穴があいている。光源301より出射した光305は照射光ファイバ302と照射レンズ306を通して透過穴228に照射される。上側基板に照射された光は,上側基板202,上側電極213,絶縁膜214,撥水膜215を通過後,測定部電極219上の試料1を通過し,撥水膜215,絶縁膜214,測定部電極219,下側基板201を通過する。下側基板の透過穴228から出た光は集光レンズ307により集光され,集光光ファイバ303を通って測定器304に送られる。測定器304内に入ってきた光はグレーティングにより分光され,波長成分ごとにホトダイオードで受光される。
【0024】
測定の終わった試料1をそれぞれシッパー401により吸引したが,測定の終わった他の試料と基板内で混合後にシッパー401により吸引してもよい。本実施例では血清を薄めることなくそのまま解析するが,試料ディスクユニットで血清を水で希釈することも可能である。また本実施例では試料として血清を用いたが,試料として水やその他の液体を用いてこれらの濁度測定にも応用できる。また本実施例では二枚の基板間に液体を挟み搬送させる方式を用いたが,実際にデバイスを製作する際の工程を簡略化するため,対向させた基板の代わりに例えば[特許文献4]に記載のようにワイヤを用いるか,もしくは,例えば[特許文献5]に記載のように単一の基板上で液体を搬送させてもよい。その場合,上部からの搬送している液体へのアクセスが容易であるので,測定部においてイオン選択膜を表面に被覆した電極(例えば非特許文献3)を備え,試料内のイオン成分量の測定を行ってもよい。
【0025】
以下,実施例2を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,試薬と混合し,測定部において透過光量を測定し,乳酸脱水素酵素の測定を行う。
装置構成を図11に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400,試薬供給ユニット500から構成される。試薬供給ユニット500は第一試薬ディスペンサ501,第二試薬ディスペンサ502からなる。これらのディスペンサより吐出される試薬はそれぞれ別々のタイミングで試料と混合する。第一試薬を第一試薬ディスペンサ501に内蔵もしくは繋がれる試薬収容部に,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502にに内蔵もしくは繋がれる試薬収容部に各々収めている。
【0026】
試料は実施例1の時と同様に,ピペッタ101により試料ディスクユニット100内から搬送基板ユニット200内に第一の液体として分注され,搬送基板ユニット200内で,第一試薬ディスペンサ501から第三の液体として吐出された第一試薬と混合後,測定され,第二試薬ディスペンサ502から吐出された第二試薬と混合後,再度測定される。測定が終了した試料は最終的に排出部204から廃液ユニット400内の廃液タンク402に排出される。
試料ディスクユニット100の装置構成は実施例1と同じである。試薬は,第一化学薬品社製ピュアオートS LDを用いた。
【0027】
搬送基板ユニット200内の各部の配置図を図12に示す。搬送基板ユニット200は,試料導入部203,第一試薬導入部207,第二試薬導入部208,第一試薬混合部221,第二試薬混合部222,3箇所の第一測定部206a,3箇所の第二測定部206b,排出部204からなる。試料導入部203と第一試薬混合部221は液体流通路部分205cにより,第一試薬導入部207と第一試薬混合部221は液体流通路部分205dにより,第一試薬混合部221と第二試薬混合部222は液体流通路部分205aにより,第二試薬導入部221と第二試薬混合部222は液体流通路部分205eにより,第二試薬混合部222と排出部204は液体流通路部分205bにより繋がっている。
【0028】
ピペッタ101により試料導入部203に第一の液体として分注された試料1は,液体流通路部分205cを通過し,第一試薬混合部221まで搬送される。第一試薬ディスペンサ501により第一試薬導入部207に吐出された第一試薬503は,液体流通路部分205dを通過し,第一試薬混合部221まで搬送される。第一試薬混合部221において試料1と第一試薬503は混合され,第一反応液2となり,液体流通路部分205aを通過し,第二試薬混合部222まで搬送される間,途中3箇所の第一測定部206aにおいて測定される。第二試薬ディスペンサ502により第二試薬導入部208に吐出された第二試薬504は,液体流通路部分205eを通過し,第二試薬混合部222まで搬送される。第二試薬混合部222において,第一反応液2と第二試薬504は混合され,第二反応液3となる。第二反応液3は液体流通路部分205bを通過し,排出部204まで搬送される間,途中3箇所の測定部206bにおいて測定される。最終的に第二反応液3は図11にあるように排出部204から搬送基板ユニット200外部の廃液タンク402に排出される。
【0029】
試料導入部203,及び,液体流通路205の構成は実施例1と同等である。第一試薬導入部207,および第二試薬導入部208の構成も実施例1の試料導入部203の構成と同等であるが,ピペッタ101の代わりに第一試薬導入部207は第一試薬ディスペンサ501が,第二試薬導入部208は第二試薬ディスペンサ502がそれぞれ接続する。また液体流通路205の構成も実施例1と同等である。
【0030】
第一試薬混合部221における下側電極212のパターンを図13に示す。試料1と第一試薬503を混合するため,複数の第一混合部電極223を配置した。試料1が第一試薬混合部221に搬送されたときに合わせて第一試薬503を搬送し,第一反応液2とし,第一混合部電極223上で何回か往復させることで混合する。第一の液体は複数の電極に接していたほうが搬送が容易となるため,電極の大きさはそれぞれの搬送する液体の大きさに合わせて,寸法を調整した。本実施例では二枚の基板間の距離を0.5mmであるので,液体が基板間に円柱状に存在すると仮定すると,10μLの液体の基板との接触面は半径約2.5mmの円となる。このとき,電極を一辺3.5mmの正方形,隣合う電極の間隔を100μmとすると,液体は複数の電極に接することができる。本実施例では試料1μL,第一試薬10μLであるため,試料1を搬送するための下側電極212cは1mm角,第一試薬503を搬送するための下側電極212dは3.5mm角,第一反応液2を搬送するための下側電極212aは2.9mm角とした。すなわち、試料の体積が試薬や反応液等の体積よりも小さいことに対応して、試料を搬送するための電極を試薬や反応液等を搬送するための電極よりも小さいものとした。
【0031】
第一混合部電極は第一混合部電極223a,223b,223cに分けられ,それぞれの大きさを2.9mm角,2.0mm角,1.5mm角と変化させた。すなわち,混合部の両端部の電極は混合部の中間部よりも大きいものとし,さらには電極の大きさを位置が中間へ向かうほど小さくなるようにした。図14のように第一反応液2は大きさの異なる電極上を移動する際,電極の大きさに合わせ形状が変化し内部の液体が良く混合される。
【0032】
第二試薬混合部222における下側電極212のパターンを図15に示す。第一試薬混合部221と同様に第一反応液2と第二試薬504を混合するため,複数の第二混合部電極224を配置し,第二反応液3を第二混合部電極224上で何回か往復させることで混合する。また搬送を容易にするために,電極の大きさはそれぞれの搬送する液体の大きさに合わせて,寸法を調整している。本実施例では,第二試薬504の液量は5μLであり,搬送するための下側電極212eは1.6mm角,第二反応液3を搬送するための下側電極212bは3.2mm角とした。すなわち、試料を搬送するための電極を、反応液等を搬送するための電極よりも小さいものとした。
【0033】
光学ユニット300の構成を図16に示す。光学ユニット300は光源301,6つの照射光ファイバ302,6つの集光光ファイバ303,測定器304,6つの照射レンズ306,6つの集光レンズ307からなる。光源301から出射した光は,照射光ファイバ302により測定部206ごとに分配され,照射光ファイバ302から出射される光が効率よく集められ,各測定部に照射されるように配置された照射レンズ306により各測定部206上へ照射される。そしてそれぞれの測定部206を通過した透過光305を効率よく集められるように配置された集光レンズ307で集光し,集光光ファイバ303を通し,それぞれの測定器304に導入する。測定器304ではグレーティングで分光し,ホトダイオードで各測定部206からの透過光量を波長別に測定し,吸光度を得る。
【0034】
排出部204の断面を図17に示す。本実施例では排出部電極218を多数設置し,そこに水平方向に対して山型の傾斜を設けることで,内部に満たした間質が基板外部に漏れないように試料のみ搬送させ,山型傾斜の頂点を越えた後,反応液は重力の補助により電極上を電気的に搬送され,最終的に重力により基板から落下させ,下に設置した廃液タンク402内に排出される。
【0035】
測定操作の手順を説明する。試料1としてはじめに校正液を測定し,得られた結果から,複数存在する測定部間差を補正する。次に乳酸脱水素酵素のキャリブレータを測定し,検量線を取得後,血清を測定する。搬送基板ユニット200は全体が一定温度になるよう温調されている。まず試料1として校正液をピペッタ101により吸い上げ,搬送基板ユニット200内の試料導入部203に分注する。次に乳酸脱水素酵素のキャリブレータ,血清を分注する。続いて分注した各試料を,試料導入部203より液体流通路205に順次導入し,第一試薬混合部221まで搬送する。同時に第一試薬ディスペンサ501より搬送基板ユニット200内の第一試薬導入部207へ,第二試薬ディスペンサ502より第二試薬導入部208へ分注しておく。続いて試料1と第一試薬503を第一試薬混合部221で混合させ,第一反応液2とした後,第二試薬混合部222まで搬送する間,第一測定部206aにおいて透過光量を測定する。試料1と第一試薬503とを混合させて第一反応液2としてから約5分後に,第二試薬混合部221において第一反応液2と第二試薬504とを混合させ,第二反応液3とした後,排出部204まで搬送する間,第二測定部206bにおいて透過光量を測定する。本実施例では、第1測定部、第2測定部各々について複数の電極を対応させる構成としたが、測定対象に応じて適宜、第1測定部のみもしくは第2測定部のみとすることができ、さらに第1測定部と第2測定部各々については単一の電極を対応させることも可能である。
【0036】
本実施例での検査項目は乳酸脱水素酵素であり,本検査項目の検査には第一試薬と第二試薬の2試薬を混合させて用いる。そこで,本実施例では2つの混合部を設けた。測定し終わった反応液は排出部より順次排出タンクに排出される。以上の操作を試料ディスクユニット100より分注された試料すべてについて順次行う。
本実施例では試薬との混合と搬送を順次行うことで,生化学分析の検査項目の一つである乳酸脱水素酵素量を測定する。試料は10秒おきに導入し,最初の測定部206に到達するまで1分,最初の測定部206から最後の測定部206まで10分,最後の測定部206から排出部204まで1分,合計12分要する。しかし試料を連続的に処理することにより40回の分析に必要な時間は40(回)×10(秒)+12(分)=400(秒)+12(分)≒18.6(分)となる。このように,本実施例では連続して順次分析の処理することによって短時間で多数の測定を終えることができる。
【0037】
また本実施例では,第二試薬を混合させた後の5分間の吸光度の時間変化から乳酸脱水素酵素の成分量を算出する。5分間満遍なく,吸光度を測定する回数が多いほど成分量を正確に測定することができる。また第一試薬を混合後の吸光度の時間変化も,乳酸脱水素酵素以外の物質の影響を確認するため重要である。そこで第一試薬を混合後と第二試薬を混合後それぞれ3つの測定部を設けた。すなわち、第一測定部206aに測定部206a1、206a2、206a3を設け、第二測定部206bに測定部206b1、206b2、206b3を設けた。測定部では405nmの波長の透過光量をリファレンスとした340nmの吸光度を測定する。ここで測定部が1つであると,10秒おきに試料が搬送されるため,1つの測定部では最大で10秒間の吸光度の時間変化しか測定できず,正確に成分量を測定することができない。また5分間同一の測定部で測定すると,スループットが低下してしまう。本実施例のように反応液の吸光度の時間変化を複数の測定部にわけて測定することで,ハイスループットで,かつ,正確に成分量を測定することができる。またこれらの測定部間の測定誤差はキャリブレータにより補正することで,より正確に測定することができる。
【0038】
図18に本実施例による各測定部206a1,206a2,206a3,206b1,206b2,206b3での測定結果を合わせて示す。縦軸に吸光度(abs.)及び横軸に第1試薬と混合後の時間(分)をとる。206a1では第1試薬と混合後約1分後,206a2では第1試薬と混合後2分後,206a3では第1試薬と混合後3分後,206b1では第1試薬と混合後約6分後(第2試薬と混合後1分後),206b2では第1試薬と混合後約7.5分後(第2試薬と混合後約2.5分後),206b3では第1試薬と混合後約9分後(第2試薬と混合後4分後)の吸光度を測定した。206a1,206a2,206a3,206b1,206b2,及び206b3の各々での測定結果を,各々1801,1802,1803,1804,1805及び1806で示す。1つの測定部での測定時間はここでは10秒とした。これらの206b1,206b2,206b3の吸光度の時間変化(図18グラフの傾き)が濃度に比例する。キャリブレータの吸光度の時間変化データと照らし合わせ,このときの試料中の乳酸脱水素酵素の濃度は292.2 U/Lとわかった。このように吸光度の時間変化を測定することにより,濃度が測定できる。また測定部が多いほど時間変化のデータを多くとることができ,より正確に成分量を測定できる。
【0039】
以下,実施例3を示す。本実施例では,液体流通路を複数設け,試料導入部からの試料をこれらの液体流通路に分配し,並列して測定を行うことで,スループットを上げている。試料として血清を用い,測定を行う液体流通路を3つ設け,それぞれの液体流通路においてリパーゼ,コレステロール,C反応性蛋白の項目について検査を行う。
【0040】
装置構成を図19に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400,試薬供給ユニット500から構成される。試薬供給ユニット500は第一試薬ディスペンサ501A,501B,501Cと第二試薬ディスペンサ502A,502B,502Cからなる。試薬は,リパーゼの検査にはロッシュ社製リキテックリパーゼカラーを用い,コレステロールの検査には第一化学薬品社製ピュアオートS CHO-Nを用い,C反応性蛋白の検査には第一化学薬品社製ピュアオートS CRPラテックスを用いた。リパーゼ項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Aに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Aに用意した。コレステロール項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Bに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Bに用意した。C反応性蛋白項目の第一試薬を第一試薬ディスペンサ501Cに,第二試薬を第二試薬ディスペンサ502Cに用意した。
【0041】
試料は試料ディスクユニット100からピペッタ101により搬送基板ユニット200内に第一の液体として分注され,搬送基板ユニット200内で,第一試薬ディスペンサ501から第三の液体として吐出された第一試薬503と混合後,測定され,第二試薬ディスペンサ502から第三の液体として吐出された第二試薬504と混合された後,再度測定される。測定終了した試料は最終的に排出部204より廃液ユニット400内の廃液タンク402に排出される。
【0042】
搬送基板ユニット200内の液体流通路205の配置を図20に示す。試料導入部203と複数の液体流通路205A,205B,205Cは液体分配流通路部分205W,205X,205Y,205Zで繋がっている。また,複数の液体流通路205A,205B,205Cと排出部204は液体合流流通路部分205W’,205X’,205Y’,205Z’で繋がっている。本実施例では並列した液体流通路205と一つの排出部204を繋げたが,それぞれの液体流通路205に排出部204を設け,試料を搬送基板ユニット200外部に排出してもよい。試料は試料導入部203から導入後,液体分配流通路部分205Wから205X,205Y,205Zのいずれかに分配,搬送され,それぞれの液体流通路205を搬送中に測定され,液体合流流通路部分205X’,205Y’,205Z’のいずれかから液体合流流通路部分205W’を通り,排出部204から排出される。液体流通路205Aではリパーゼ項目の検査を,液体流通路205Bではコレステロール項目の検査を,液体流通路205CではC反応性蛋白項目の検査を行う。本実施例では液体流通路を3本設けたため,液体流通路が1本のときに比べ,約3倍スループットがあがる。また液体流通路が1本の場合,3つの検査項目にそれぞれに対応した測定部を配置するために,各検査項目の測定部が減り,測定の精度が悪くなりうる。本実施例では検査項目ごとに液体流通路を配置するため,スループットが上がり,さらに高精度に測定ができる。
【0043】
試料導入部203から排出部204までを含めた液体流通路205Aの構成を図21に示す。液体流通路205A,液体流通路205B,液体流通路205Cとも基本的な構成は同じであるが,実施例2の各部の配置に対し,試料導入部203から液体流通路205に至るまでの間は,液体分配流通路部分205W, 205Xで接続され,液体流通路205から排出部204に至るまでの間は液体合流流通路部分205W’,205X ’で接続されている。液体流通路205Aは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Aが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Aが接続される。液体流通路205Bは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Bが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Bが接続される。液体流通路205Cは第一試薬導入部207に第一試薬ディスペンサ501Cが接続され,第二試薬導入部208に第二試薬ディスペンサ502Cが接続される。測定のスループットを下げないようにするため,液体分配流通路部分上の試料搬送速度及び,液体合流流通路部分上の試料搬送速度は,各液体流通路上の試料搬送速度と異なるもの,具体的にはより早いもので,ここでは3倍とした。
【0044】
また制御システムの略図を図22に示す。各液体流通路部分の電圧印加のための制御は制御用コンピュータが独立に行う。制御用コンピュータは内部に,インターフェースからの試料情報の入力に基づいて試料情報に対応する情報をデータベース内の情報から検索するデータベース検索部と,試料情報に対応する情報に含まれる検査項目に応じて各液体流通路への電圧印加を指令する電圧印加制御部とを備える。試料は制御用コンピュータ内の登録された検査項目のデータベースと照らし合わせ,検査項目に応じて電圧印加制御部の制御によって各液体流通路に振り分けられる。液体流通路205A,液体流通路205B,液体流通路205Cそれぞれの液体流通路部分205aでの下側電極212aの配線構成を図23に示す。各液体流通路205内の下側電極212は,実施例1と同様に3電極毎に同一電圧が印加できるように,すなわち2つおきに同期した電圧を印加するように配線をまとめ,試料も2つおきに供給し搬送するようにし,さらにこれらの配線を液体流通路間でもまとめ同期して搬送するようにした。液体流通路の数が多くなった場合,並列に並んだ各液体流通路間で一つのスイッチでまとめられるため,試料の搬送制御が容易となる。
【0045】
本実施例では3つの液体流通路205が並んでおり,一つの液体流通路205には5つ液体流通路部分205a,205b,205c,205d,205eが存在するため,通常,液体流通路では5×3=15個の制御が必要となるが,液体流通路ごとに制御をまとめることで,制御機構の個数は5つとなり,複数の液体流通路を並べたとしても制御が簡易である。また本実施例では一つの液体流通路で一つの検査項目しか検査していないが,検出波長が同じであれば,別のディスペンサを接続し,別の試薬を供給することで別の検査項目を検査してもよい。また異なる液体流通路でも検査数の多い検査項目は複数の液体流通路とも同じ項目として検査してもよい。
【0046】
試料導入部203における下側基板201上の導入部電極225と下側電極212の配置を図24に示す。導入部電極225は導入部電極225a,導入部電極225b,導入部電極225cに分かれる。まずピペッタ101により測定に必要な量より約3倍多くの試料1'が搬送基板ユニット200内の導入部203内,導入部電極225a上に分注される。この状態で導入部電極225b,導入部電極225cに電圧を印加すると,試料1'は導入部電極225b,導入部電極225c上に広がる。ここで導入部電極225bの電圧印加をやめグランドに繋げてから,電気的に浮かし,導入部電極225a,225cには電圧が印加された状態にすると,試料1'は導入部電極225a上と導入部電極225c上に分裂する。次に液体分配流通路部分205Wの下側電極212Wに電圧を印加し,一定量の試料1’’を第一の液体として液体分配流通路部分205Wに搬送させる。
【0047】
測定部206の断面図を図25に示す。本実施例では光源としてLEDを用いている。LEDパッケージ301には二波長の光を発光できるように二つのLED素子が封入されている。またグレーティングによる波長分解は行わずに,二つのLED素子の出力をそれぞれ異なる周波数で変調させることにより一つのホトダイオードで受光後,周波数フィルタを通してそれぞれのLED素子からの出力成分に分離することで波長成分の透過光量を測定している。LEDパッケージ301から照射した光305は,照射レンズで液体搬送基板200に照射され,第一反応液2,もしくは,第二反応液3を通過後,ホトダイオードで透過光として受光され測定される。液体流通路205Aの測定部206においては,光源301として700nmと570nmの波長を出力するLEDを用い,700nmをリファレンスとした570nmの波長の吸光度を測定し,リパーゼの検査を行う。液体流通路205Bの測定部206においては,光源301として700nmと600nmの波長を出力するLEDを用い,700nmをリファレンスとした600nmの波長の吸光度を測定し,コレステロールの検査を行う。液体流通路205Cの測定部206においては,光源301として800nmと600nmの波長を出力するLEDを用い,800nmをリファレンスとした600nmの波長の吸光度を測定しC反応性蛋白項目の検査を行う。なお本実施例では透過光量を測定したが,光源301を用いずに,ホトダイオードで第一反応液2または第二反応液3からの発光光量を測定してもよい。
【0048】
測定操作の手順を説明する。一つの試料に対して3つの検査を行うため,試料は電圧の印加方法により液量の1/3ずつに分裂し,順次液体分配流通路部分205Wに搬送され,それぞれの液体流通路に振り分けられる。順次搬送することにより各液体流通路の測定部で吸光度を測定する。各液体流通路での混合および測定方法は実施例2と同等である。測定を終了した第二反応液3は液体合流流通路部分205W'を通過して排出部204に搬送され,外部の廃液タンクに排出される。排出部204の構造は実施例2と同等である。
試料は3秒おきに導入し,最初の測定部206に到達するまで1分,最初の測定部206から最後の測定部206まで10分,最後の測定部206から排出部204まで1分,合計12分要する。各液体流通路で40回の分析に必要な時間は40(回)×10(秒)+12(分)=400(秒)+12(分)≒18.6(分)であった。本実施例では液体流通路を3つ並べ,並列に処理したため,120回の分析を行えた。実施例2よりも3倍ハイスループットに分析することができる。
【0049】
本実施例における各液体流通路での測定結果は,実施例3と同様のものを得ることができる。すなわち, 206bの吸光度の時間変化が濃度に比例するため,各液体流通路での吸光度の時間変化を測定することにより,各液体流通路に対応した各検査項目の試料中の濃度を測定できる。
【0050】
以下,実施例4を示す。本実施例では,試料として蛍光標識されたDNA断片を含む溶液を用い,試料内のDNA断片の濃度を測定することを目的としている。
装置構成と操作手順は,実施例1と同等であり,搬送基板ユニット200内の測定部206の構成のみ異なる。図26に本実施例の測定部206の構成を示す。光源301から出射したレーザー光308をダイクロイックミラー309で反射させ,顕微鏡用レンズ310を通して搬送基板ユニット200内の測定部電極219上の試料1に照射する。レーザー光源はCoherent社製Sapphire488-20を用いている。試料にはFAM標識のDNAを使用した。ダイクロイックミラーは520nm以下の光は反射し,520nm以上の光は透過するものを用いている。レーザー光308は安全のためレーザーストッパ312に照射させ,外部に漏れないようにしている。液体からの発光蛍光311は顕微鏡用レンズ310で集光し,ダイクロイックミラーを透過し,測定部304のホトダイオードで受光し,解析用PCで解析する。操作手順は実施例1と同等である。
本実施例では測定部は一箇所としたが,レーザー光308をハーフミラーなどで分けることにより複数箇所にレーザーを照射しの蛍光発光を観測することも可能である。
以上に記載した実施例に対応する構成として,本発明は以下の構成とすることも可能である。
【0051】
(1)基板上に複数の電極を並べて設け,前記電極を含む前記基板上を絶縁膜で覆い,その表面を撥水性として概略水平に置かれた第一の基板であって,前記第一の基板の,前記複数の電極のうち一部の電極上部に第一の液体を供給し,前記複数の電極のうち一部の電極に電圧を印加し,電圧を印加する電極を順次切り替えていくことにより前記第一の液体を搬送する液体搬送基板,若しくは,基板の一面全体に電極が設けられ,前記電極を含む基板表面を絶縁膜で覆い,更にその表面を撥水性とした第二の基板を設け,前記第一の基板と前記第二の基板が互いの電極面側が概略平行に一定の距離を保ち向かい合うように保持し,二つの基板間で前記第一の基板の上,かつ,前記複数の電極のうち一部の電極上部に第一の液体を供給し,前記第二の基板の前記電極と前記第一の基板の前記複数の電極のうち一部の電極間に電圧を印加し,第一の基板側の電圧を印加する電極を順次切り替えていくことにより前記第一の液体を搬送する液体搬送基板において,液体を搬送するために前記複数の電極を並べて構成した液体流通路と,前記液体流通路に前記第一の液体を導入するための導入部と,前期液体流通路から前記第一の液体を排出するための排出部と,前記液体流通路の途中に配置され前記第一の液体からの情報を測定するための測定部と,前記複数の電極のそれぞれに前記第一の液体を搬送するための電圧を印加する導電手段を有し,前記測定部が,前記導入部と前記排出部との間に配置されることを特徴とする液体搬送基板。
【0052】
(2)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体は前記導入部から前記測定部を通り,その後前記排出部へ,各部間を一方向に搬送されることを特徴とする液体搬送基板。
【0053】
(3)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路の内,前記導入部から前記測定部までの液体流通路部分と,前記測定部から前記排出部までの液体流通路部分が重なりをもたないことを特徴とする液体搬送基板。
【0054】
(4)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体が,血清,DNA,RNA,タンパク質などの生体物質を含む液体,生体物質と反応する化学物質を含む液体,若しくは,測定器を校正するための校正物質を含む液体であることを特徴とする液体搬送基板。
【0055】
(5)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板上,若しくは,前記第一の基板と前記第二の基板の間が,気体,若しくは,第二の液体としてシリコーンオイル,若しくは,同じく第二の液体としてフロロカーボン系オイルで満たされており,第一の液体は前記気体,若しくは前記シリコーンオイル,若しくは,前記フロロカーボン系オイルを掻き分けて搬送されることを特徴とする液体搬送基板。
【0056】
(6)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板と前記第二の基板の電極の位置関係が上下逆であることを特徴とする液体搬送基板。
【0057】
(7)(5)記載の液体搬送基板において,前記第二の液体がフロロカーボン系オイルであり,前記第一の基板と前記第二の基板の電極の位置関係が上下逆であることを特徴とする液体搬送基板。
【0058】
(8)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板,及び,前記第二の基板がガラス,シリコン,若しくは,セラミックであること特徴とする液体搬送基板。
【0059】
(9)(1)記載の液体搬送基板において,前記測定部が前記液体流通路に複数配置されることを特徴とする液体搬送基板。
【0060】
(10)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体搬送基板に,前記測定部を含めた前記液体流通路を複数本持ち,前記導入部と複数の液体流通路の各液体流通路との間に分配のための液体分配流通路を設け,各液体流通路と排出部との間に合流のための液体合流流通路を設けたことを特徴とする液体搬送基板。
【0061】
(11)(10)記載の液体搬送基板において,前記複数の液体流通路上の前記第一の液体の搬送速度が,前記分配のための液体分配流通路上,及び,合流のための液体合流流通路上の搬送速度とは異なることを特徴とする液体搬送基板。
【0062】
(12)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体からの情報を測定する手段が,1波長,若しくは,複数波長の透過光の減衰量もしくは発光強度もしくは蛍光発光強度を測定するものであることを特徴とする液体搬送基板。
【0063】
(13)(10)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体からの情報を測定する手段が,1波長,若しくは,複数波長の透過光の減衰量もしくは発光強度もしくは蛍光発光強度を測定するものであることを特徴とする液体搬送基板。
【0064】
(14)(13)記載の液体搬送基板において,前記第一の液体の透過光を測定する際,複数あるそれぞれの前記液体流通路で測定する透過光波長が異なることを特徴とする液体搬送基板。
【0065】
(15)(13)記載の液体搬送基板において,前記測定部の前記第一の液体に照射光を照射するための光源が一つまたは複数の発光ダイオードであることを特徴とする液体搬送基板。
【0066】
(16)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路に,前記第一の液体と,前記第一の液体を希釈する,または,前記第一の液体と反応する第三の液体とを混合するための混合部を一つまたは複数有することを特徴とする液体搬送基板。
【0067】
(17)(1)記載の液体搬送基板の前記導入部において,前記第二の基板の電極に前記第一の液体を分注するためのピペッタが接続できる導入穴が設けてあることを特徴とする液体搬送基板。
【0068】
(18)(1)記載の液体搬送基板において,前記導入部において,前記第一の液体の一部を,前記第一の液体の下に位置する電極に電圧を印加することにより分離させ,前記分離させた液体を液体流通路に導くことを特徴とする液体搬送基板。
【0069】
(19)(1)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板の前記排出部側の前記液体流通路の一部,若しくは,前記排出部の前記液体流通路の一部が,水平に対し前記液体の進行方向に向かって傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【0070】
(20)(10)記載の液体搬送基板において,前記第一の基板の前記排出部側の前記液体合流流通路の一部,若しくは,前記排出部の前記液体合流流通路の一部が,水平に対し前記液体の進行方向に向かって傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【0071】
(21)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体搬送基板,及び,前記第一の液体,及び,前記第二の液体,及び,前記第三の液体の温度を一定に保つための温調板を供え,かつ,それらを断熱することを特徴とする液体搬送基板。
【0072】
(22)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路上に前記第一の液体を前記電極2つおきに供給し,順次移動することを特徴とする液体搬送基板。
【0073】
(23)(1)記載の液体搬送基板において,前記電極が,2つおきに同期して電圧が印加されるよう配線した前記導電手段を持つことを特徴とする液体搬送基板。
【0074】
(24)(1)記載の液体搬送基板において,前記液体流通路の前記電極が,前記複数の液体流通路で同期して電圧が印加されるよう,並列に配線した前記導電手段を持つことを特徴とする液体搬送基板。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】分析システムの配置図の例。
【図2】分析システムの配置図の例。
【図3】本発明の実施形態1における装置構成を示す略図である。
【図4】本発明の実施形態1における試料ディスクユニットの詳細を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1における液体搬送基板の液体流通路の断面を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1における液体搬送方法の説明図である。
【図8】本発明の実施形態1における試料導入部の詳細を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1における排出部の詳細を示す図である。
【図10】本発明の実施形態1における測定部の詳細を示す図である。
【図11】本発明の実施形態2における装置構成を示す略図である。
【図12】本発明の実施形態2における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図13】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図14】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図15】本発明の実施形態2における混合部の詳細を示す図である。
【図16】本発明の実施形態2における液体搬送基板と光学ユニットとの配置を示す図である。
【図17】本発明の実施形態2における排出部の詳細を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2における測定結果を示す図である。
【図19】本発明の実施形態3における装置構成を示す略図である。
【図20】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の液体流通路の配置を示す図である。
【図21】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の各部の配置を示す図である。
【図22】本発明の実施形態3における下側電極の制御に関する構成の例である。
【図23】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の液体流通路内の下側電極の配線構成を説明する図である。
【図24】本発明の実施形態3における液体搬送基板上の試料導入部の導入方法を説明する図である。
【図25】本発明の実施形態3における測定部の詳細を示す図である。
【図26】本発明の実施形態4おける測定部の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1…試料,1’…試料,1’’…試料,1’’’…試料,2…第一反応液,3…第二反応液,100…試料ディスクユニット,101…ピペッタ,102…試料ディスク,103…容器,104…前処理ディスク,105…前処理容器,200…搬送基板ユニット,201…下側基板,202…上側基板,203…試料導入部,204…排出部,205…液体流通路,205’…液体流通路部分,205a…液体流通路部分,205b…液体流通路部分,205c…液体流通路部分,205d…液体流通路部分,205e…液体流通路部分,205W…液体分配流通路部分,205W’…液体合流流通路部分,205X…液体分配流通路部分,205X’…液体合流流通路部分,205Y…液体分配流通路部分,205Y’…液体合流流通路部分,205Z…液体分配流通路部分,205Z’…液体合流流通路部分,205A…液体流通路,205B…液体流通路,205C…液体流通路,206…測定部,206a…第一測定部,206b…第二測定部,207…第一試薬導入部,208…第二試薬導入部,209a…液体分配流通路,209b…液体合流流通路,210…断熱材,211…ヒーター,212…下側電極,212’…下側電極,212’’…下側電極,212’’’…下側電極,212a…下側電極,212b…下側電極,212c…下側電極,212d…下側電極,212e…下側電極,212W…下側電極,213…上側電極,214…絶縁膜,215…撥水膜,216…間質,217…導入部電極,218…排出部電極,219…測定部電極,221…第一混合部,222…第二混合部,223…第一混合部電極,224…第二混合部電極,225…導入部電極,225a…導入部電極,225b…導入部電極,225c…導入部電極,226…試料導入穴,227…排出穴,228…透過窓,300…光学ユニット,301…光源,302…照射ファイバー,303…集光ファイバー,304…測定部,305…光,306…照射レンズ,307…集光レンズ,308…レーザー光,309…ダイクロイックミラー,310…顕微鏡レンズ,311…発光蛍光,312…レーザーストッパ,400…廃液ユニット,401…シッパー,402…廃液タンク,500…試薬供給ユニット,501…第一試薬ディスペンサ,501A…第一試薬ディスペンサ,501B…第一試薬ディスペンサ,501C…第一試薬ディスペンサ,502…第二試薬ディスペンサ,502A…第二試薬ディスペンサ,502B…第二試薬ディスペンサ,502C…第二試薬ディスペンサ,503…第一試薬,504…第二試薬,1801…測定結果の例,1802…測定結果の例,1803…測定結果の例, 1804…測定結果の例, 1805…測定結果の例, 1806…測定結果の例。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に設けられた、液体を導入するための導入口と、
前記第1の基板に設けられた、前記液体を排出するための排出口と、
前記第1の基板に設けられた複数の電極と、
前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段を有し、
前記複数の電極は、液体が流通する液体流通路と測定部とを形成するものであり、前記液体流通路は前記導入口と前記排出口との間に位置し、前記測定部は前記液体流通路の少なくとも一部に位置することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項2】
前記複数の電極を覆う第1の絶縁膜と、前記絶縁膜と覆う第1の膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項3】
第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた電極層とをさらに有し、
前記複数の電極と前記電極層とは対面することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項4】
前記電極層を覆う第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜を覆う第2の膜とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項5】
前記複数の電極と前記電極層とが概略平行に配置されることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項6】
前記第1の基板と前記第2の基板とは、前記複数の電極と前記電極層とが一定の距離を保つように配置されることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項7】
前記液体流通路は、前記導入部から前記測定部までの第1通路と、前記測定部から前記排出部までの第2通路とを有し、前記第1通路と前記第2通路とは重ならないことを特徴とする請求項1の液体搬送基板。
【請求項8】
前記液体は、生体物質、前記生体物質と反応する化学物質、及び校正物質の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項9】
前記第1の基板と前記第2の基板は、ガラス、シリコン、及びセラミックのいずれかからなること特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項10】
前記測定部を複数有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項11】
前記液体流通路は、各々少なくとも一部に前記測定部を有する複数の分路と、前記導入部と前記複数の分路との間に設けられた液体分配流通路と、前記複数の分路と前記排出部との間に設けられた液体合流流通路とを有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項12】
前記液体流通路に、複数の前記液体を混合するための混合部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項13】
前記排出部は排出部電極を有し、前記液体流通路の前記排出部近傍の一部及び/又は前記排出部が、水平方向に対して傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【請求項14】
前記第1の基板の近傍に温調部及び断熱部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項15】
前記導電手段は、前記複数の電極に、2つおきに同期した電圧を印加するための配線を有することを特徴とする請求項1記載の液体搬送基板。
【請求項16】
第1の液体を収める容器と、前記試料を吸引及び吐出するピペットとを具備する第1のユニットと、
前記ピペットから吐出された前記第1の液体を導入する第1の液体導入部と、前記試料を導出する排出口と、複数の電極を備えてかつ前記第1の液体導入部と前記排出口とをつなぐ液体流通路と、前記液体流通路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記電極に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部に対応する検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を吸引する吸引部と、吸引された液体を収める廃液部とを具備する第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体流通路で搬送させるように前記電極に前記電圧を印加し、前記検出系は前記測定部に搬送された前記第1の液体についての検出を行うことを特徴とする分析システム。
【請求項17】
前記第2のユニットは、前記複数の電極を設置された第1の基板と、電極層を設置された第2の基板とを有し、前記第1の基板上、若しくは、前記第1の基板と前記第2の基板との間には間質が配置されることを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項18】
前記間質は、気体、シリコーンオイル、及びフルオロカーボン系オイルのいずれかであることを特徴とする請求項17に記載の分析システム。
【請求項19】
前記間質がフルオロカーボン系オイルであり、前記第1の基板は、鉛直方向において前記第2の基板の上方に設置されることを特徴とする請求項17に記載の分析システム。
【請求項20】
前記第2のユニットは、発光ダイオードを光源として有することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項21】
前記第2の基板は前記導入部に対応して導入穴を有し、前記導入部は導入部電極を有することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項22】
試薬を収める収容部と、前記収容部から前記試薬を供給するディスペンサとを具備する第5のユニットをさらに有し、前記第2のユニットは試薬導入部をさらに有し、前記ディスペンサは前記試薬を前記至約導入部へ導入することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項23】
液体導入部に第1の液体を導入する工程と、
複数の電極を配置された液体流通路上で、前記電極の少なくとも一部に電圧を印加して、前記第1の液体を液体流通路上で搬送する工程と、
前記液体流通路の少なくとも一部に設けられた測定部で、前記第1の液体について検出を行う工程と、
液体排出部から前記第1の液体を導出する工程とを有し、
前記搬送する工程では、前記電圧を印加する電極を順次切り替えることを特徴とする分析方法。
【請求項24】
前記第1の液体は第1の基板と第2の基板との間に供給され、前記電圧は、前記第1の基板に設けられた前記複数の電極の少なくとも一部と、前記第2の基板に設けられた電極層との間に印加されることを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項25】
前記第1の液体は、前記液体導入部から前記測定部へ、及び前記測定部から前記液体排出部へ、実質的に一方向に搬送されことを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項26】
前記液体流通路は、前記導入部から前記測定部までの第1通路と、前記測定部から前記排出部までの第2通路とを有し、前記第1通路と前記第2通路とは重ならないことを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項27】
前記液体流通路は、各々少なくとも一部に前記測定部を有する複数の分路と、前記導入部と前記複数の分路との間に設けられた液体分配流通路と、前記複数の分路と前記排出部との間に設けられた液体合流流通路とを有することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項28】
前記分路上の前記第1の液体の運搬速度は、前記液体合流流通路上の前記第1の液体の運搬速度と異なることを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項29】
前記検出を行う工程では、前記測定部に光を照射したときの前記第1の液体の透過光、もしくは前記測定部での発光強度、もしくは前記測定部での蛍光発光強度を測定することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項30】
前記分路の各々の測定部では、各々異なる波長の光が照射されて前記異なる波長の光の透過光が測定されることを特徴とする請求項27に記載の分析方法。
【請求項31】
前記液体流通路は少なくとも一部に複数の液体を混合する混合部を有することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項32】
前記液体導入部は導入部電極を複数有し、前記導入部電極の少なくとも一部に電圧を印加して前記第1の液体の一部を分離させ、分離された液体を前記液体流通路へ搬送することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項33】
前記複数の電極は、2つの電極おきに上方に前記第1の液体を保持し、前記第1の液体は、前記電圧を印加の切り替えに応じて、順次移動することを特徴とする性吸光23に記載の分析方法。
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に設けられた、液体を導入するための導入口と、
前記第1の基板に設けられた、前記液体を排出するための排出口と、
前記第1の基板に設けられた複数の電極と、
前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段を有し、
前記複数の電極は、液体が流通する液体流通路と測定部とを形成するものであり、前記液体流通路は前記導入口と前記排出口との間に位置し、前記測定部は前記液体流通路の少なくとも一部に位置することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項2】
前記複数の電極を覆う第1の絶縁膜と、前記絶縁膜と覆う第1の膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項3】
第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた電極層とをさらに有し、
前記複数の電極と前記電極層とは対面することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項4】
前記電極層を覆う第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜を覆う第2の膜とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項5】
前記複数の電極と前記電極層とが概略平行に配置されることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項6】
前記第1の基板と前記第2の基板とは、前記複数の電極と前記電極層とが一定の距離を保つように配置されることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項7】
前記液体流通路は、前記導入部から前記測定部までの第1通路と、前記測定部から前記排出部までの第2通路とを有し、前記第1通路と前記第2通路とは重ならないことを特徴とする請求項1の液体搬送基板。
【請求項8】
前記液体は、生体物質、前記生体物質と反応する化学物質、及び校正物質の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項9】
前記第1の基板と前記第2の基板は、ガラス、シリコン、及びセラミックのいずれかからなること特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項10】
前記測定部を複数有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項11】
前記液体流通路は、各々少なくとも一部に前記測定部を有する複数の分路と、前記導入部と前記複数の分路との間に設けられた液体分配流通路と、前記複数の分路と前記排出部との間に設けられた液体合流流通路とを有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項12】
前記液体流通路に、複数の前記液体を混合するための混合部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項13】
前記排出部は排出部電極を有し、前記液体流通路の前記排出部近傍の一部及び/又は前記排出部が、水平方向に対して傾斜していることを特徴とする液体搬送基板。
【請求項14】
前記第1の基板の近傍に温調部及び断熱部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項15】
前記導電手段は、前記複数の電極に、2つおきに同期した電圧を印加するための配線を有することを特徴とする請求項1記載の液体搬送基板。
【請求項16】
第1の液体を収める容器と、前記試料を吸引及び吐出するピペットとを具備する第1のユニットと、
前記ピペットから吐出された前記第1の液体を導入する第1の液体導入部と、前記試料を導出する排出口と、複数の電極を備えてかつ前記第1の液体導入部と前記排出口とをつなぐ液体流通路と、前記液体流通路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記電極に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部に対応する検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を吸引する吸引部と、吸引された液体を収める廃液部とを具備する第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体流通路で搬送させるように前記電極に前記電圧を印加し、前記検出系は前記測定部に搬送された前記第1の液体についての検出を行うことを特徴とする分析システム。
【請求項17】
前記第2のユニットは、前記複数の電極を設置された第1の基板と、電極層を設置された第2の基板とを有し、前記第1の基板上、若しくは、前記第1の基板と前記第2の基板との間には間質が配置されることを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項18】
前記間質は、気体、シリコーンオイル、及びフルオロカーボン系オイルのいずれかであることを特徴とする請求項17に記載の分析システム。
【請求項19】
前記間質がフルオロカーボン系オイルであり、前記第1の基板は、鉛直方向において前記第2の基板の上方に設置されることを特徴とする請求項17に記載の分析システム。
【請求項20】
前記第2のユニットは、発光ダイオードを光源として有することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項21】
前記第2の基板は前記導入部に対応して導入穴を有し、前記導入部は導入部電極を有することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項22】
試薬を収める収容部と、前記収容部から前記試薬を供給するディスペンサとを具備する第5のユニットをさらに有し、前記第2のユニットは試薬導入部をさらに有し、前記ディスペンサは前記試薬を前記至約導入部へ導入することを特徴とする請求項16に記載の分析システム。
【請求項23】
液体導入部に第1の液体を導入する工程と、
複数の電極を配置された液体流通路上で、前記電極の少なくとも一部に電圧を印加して、前記第1の液体を液体流通路上で搬送する工程と、
前記液体流通路の少なくとも一部に設けられた測定部で、前記第1の液体について検出を行う工程と、
液体排出部から前記第1の液体を導出する工程とを有し、
前記搬送する工程では、前記電圧を印加する電極を順次切り替えることを特徴とする分析方法。
【請求項24】
前記第1の液体は第1の基板と第2の基板との間に供給され、前記電圧は、前記第1の基板に設けられた前記複数の電極の少なくとも一部と、前記第2の基板に設けられた電極層との間に印加されることを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項25】
前記第1の液体は、前記液体導入部から前記測定部へ、及び前記測定部から前記液体排出部へ、実質的に一方向に搬送されことを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項26】
前記液体流通路は、前記導入部から前記測定部までの第1通路と、前記測定部から前記排出部までの第2通路とを有し、前記第1通路と前記第2通路とは重ならないことを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項27】
前記液体流通路は、各々少なくとも一部に前記測定部を有する複数の分路と、前記導入部と前記複数の分路との間に設けられた液体分配流通路と、前記複数の分路と前記排出部との間に設けられた液体合流流通路とを有することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項28】
前記分路上の前記第1の液体の運搬速度は、前記液体合流流通路上の前記第1の液体の運搬速度と異なることを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項29】
前記検出を行う工程では、前記測定部に光を照射したときの前記第1の液体の透過光、もしくは前記測定部での発光強度、もしくは前記測定部での蛍光発光強度を測定することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項30】
前記分路の各々の測定部では、各々異なる波長の光が照射されて前記異なる波長の光の透過光が測定されることを特徴とする請求項27に記載の分析方法。
【請求項31】
前記液体流通路は少なくとも一部に複数の液体を混合する混合部を有することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項32】
前記液体導入部は導入部電極を複数有し、前記導入部電極の少なくとも一部に電圧を印加して前記第1の液体の一部を分離させ、分離された液体を前記液体流通路へ搬送することを特徴とする請求項23に記載の分析方法。
【請求項33】
前記複数の電極は、2つの電極おきに上方に前記第1の液体を保持し、前記第1の液体は、前記電圧を印加の切り替えに応じて、順次移動することを特徴とする性吸光23に記載の分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−125900(P2006−125900A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311716(P2004−311716)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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